JP4336382B2 - 感熱転写用二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、感熱転写用二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、印刷時の濃度ムラの少ない、高精細な画像を与えることができる感熱転写用二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法に関する。
感熱転写方式のインクリボンは、溶融型・昇華型共に、ベースとなるポリエステルフィルムの片面にインク層を有しており、転写時には、フィルムを、インク層とは反対の面からサーマルヘッド等で加熱し、この熱をインク層に伝えることによってインクを溶融あるいは昇華させて選択的に被転写体に転写させる。この時、反対面に加えられた熱は、フィルムの厚み方向を貫通する形で伝わり、インク層まで到達する。したがって、フィルムの厚みが厚ければ熱が伝わり難く、逆に薄ければ熱が伝わりやすい。すなわち、フィルムに厚み変動があると、厚い部分では印字濃度が薄くなり、薄い部分では印字濃度が濃くなる現象が生じる。この現象は、文字や単純なカラー画像等の画質を問わない用途であれば問題は少ない。しかしながら、感熱転写方式の印刷は、最近のパーソナルコンピューターやデジタルカメラ等の普及に伴い、画像の高画質化の傾向が顕著であり、特に写真画像を印刷するような高精細なフルカラー印刷が必要な場合、インクリボンのベースフィルムの厚さ変動による印字濃度変動が、画像の色調を不本意に変えてしまったり、色調の再現性をなくしてしまったりするなどの不具合となり、極めて大きな問題となっている。
ところで感熱転写用インクリボンのベースフィルムとして汎用されているポリエステルフィルムは、その表面に感熱転写用としての特殊な機能を付与するためにコーティングを施されているものがある。このコーティングは、一般に、水を媒体とした有機高分子化合物を含む塗液をフィルムに塗布した後、乾燥・延伸・結晶化を行う、いわゆるインラインコーティングにより適用されている。インラインコーティングには、たとえば縦延伸を終えたフィルムに水を媒体とした塗液を塗布し、次の横延伸工程の予熱ゾーンを利用して乾燥を行う方法が、工程の簡便さおよび熱効率の点で好ましく、広く用いられている。
このようなインラインコーティングプロセスでは、水を多量に含む塗液をポリエステルフィルムの上に塗布するため、フィルムの延伸のために与えられた熱量は、まず先に水の蒸発潜熱により奪われてしまう。そして塗液の水分が十分に蒸発した後に、フィルムの温度が上昇することになるため、インラインコーティングを施さない場合と比べて、フィルムの温度ムラが生じやすく、その結果、フィルムの厚み変動が大きくなる。
さらに感熱転写用として比較的薄いフィルムを生産する場合には、フィルムの厚みに対する塗液の厚みの比率、すなわちポリエステル量に対する水分量の比率が必然的に大きくなり、前述したフィルムの厚み変動は一層顕著なものとなる。
インラインコーティングを施さないポリエステルフィルムの厚み変動を抑える技術としては、たとえばポリエチレンナフタレートフィルムに関する改良(特開昭63−60730号公報、特開昭63−60731号公報、特開昭63−60732号公報)、ポリエステル系収縮フィルムに関する改良(特開昭63−146940号公報)、口金周辺の音圧レベルを一定値以下とする製造方法(特開昭63−162215号公報)、厚さムラの波形をフーリエ変換した際のスペクトル強度和の比を規定した技術(特願平9−254254号公報)などが知られているが、インラインコーティングが施されていて、しかも厚さ変動の少ないポリエステルフィルム、およびそれを製造する技術に関しては、従来知られていない。
本発明の課題は、濃度変動の少ない色調再現性の良好な印刷を行うことができる感熱転写用インクリボンを提供するベースフィルムの製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、塗布層を形成するための塗液を乾燥する際、振動によるフィルムの振幅を特定値以下として製造した特定の厚さ変動の領域にあるポリエステルフィルムを用いて感熱転写用インクリボンを製造したならば、高精細なフルカラー印刷を行っても、印字濃度変動が少なくなることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、水溶性または水分散性の有機高分子化合物を含む塗液を、配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布し、ついで、乾燥区間の振動によるフィルムの振幅を5cm以下として乾燥し、延伸・熱処理を施すことによって塗布層を形成することを含んでなる、厚み20μm以下の感熱転写用二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法であって、当該塗布フィルムの長手方向の任意の15m長区間における厚さムラが10%以下である製造方法に存する。
本発明の感熱転写用二軸配向ポリエステルフィルムは、感熱転写用として特殊な機能を付与するためのコーティングを有しており、しかもそのコーティングはフィルムの製膜工程中に水を媒体にして施されて積層されたものであるにもかかわらず、フィルムの厚さムラが少ない。この結果、本発明のフィルムを用いたインクリボンによれば、濃度変動の少ない色調再現性の良好な印刷を行うことができる。
本発明で用いるポリエステルフィルムのポリエステルとは、その繰り返し単位の80モル%以上、好ましくは90モル%以上が、エチレンテレフタレート、あるいはエチレン−2、6−ナフタレート、およびシクロヘキサンジメチレンテレフタレートの少なくとも一種に由来する繰り返し単位であるものを指す。上記繰り返し単位の割合が80モル%以上であれば、他の繰り返し単位を含むコポリエステルであってもよい。他の繰り返し単位を形成する共重合成分の例には、グリコール成分としてエチレングリコール、プロピレンングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメチレングリコール、ポリアルキレングリコール等のジオール成分など、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸などが挙げられる。各種ポリエステルの中でも、品質・経済性を総合的に考慮すると、ポリエチレンテレフタレートが最も好ましい。
本発明で用いるポリエステルフィルムは、必要に応じて無機粒子・有機系潤滑剤・帯電防止剤・安定剤・染料・顔料・有機高分子等を添加成分として含有していてもよい。特に、転写記録画像の光沢調整のため、あるいはポリエステルフィルムの製造時やインクリボンにした際の走行性を改良するために、無機粒子や有機粒子をポリエステルフィルムに含有させ、ポリエステルフィルムの表面を粗面化することが好ましい。フィルムの平均表面粗さを0.03〜0.2μm、さらには0.04〜0.1μmとした場合に、走行性と高精細な画像を得ることが両立できて特に好ましい。
また、製造途中で発生するフィルムのスクラップをリサイクル使用するときに、後述するフィルム表面のコート層成分が混入してもよい。
本発明で用いるポリエステルフィルムは、フェノール/テトラクロルエタン混合溶媒(重量比50/50)中30℃で測定した場合、0.45〜1.20dl/g、より好ましくは0.50〜0.80dl/gの範囲の固有粘度を有することが、製膜時の連続性維持のためと、厚さムラを特定の範囲内とするために好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、感熱転写材のベースフィルムとして用いるので、その機械的強度、熱伝導性あるいは感熱転写材の製造時の操作性等が良好であることが必要である。とりわけ、高精細な画像を得るために、(塗布フィルムの)総厚みは20μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以下である。総厚みの下限は、通常0.5μm、好ましくは1μmである。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルムの長手方向およびこれと垂直方向(幅方向)に二軸延伸されて配向しているフィルムであり、未延伸の状態あるいは一軸延伸フィルムでは、機械的強度や寸法安定性が劣り、高精細な転写画像を得ることができない。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、水溶性または水分散性の有機高分子化合物を含む塗液を、配向結晶化が完了する前のフィルムの少なくとも片面に塗布し、ついで乾燥・延伸・熱処理を施して得られる塗布フィルムである。
水溶性有機高分子化合物としては、冷水または温水に可溶であるか、あるいはpHを調整すれば可溶化するものが好ましく、具体的には、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸、ゼラチン、カゼイン、デキストラン、セルロースなどや、これらの誘導体を挙げることができる。
水分散性の有機高分子化合物としては、水中で安定に微分散できるものが好ましく、具体的には、サスペンジョン平均粒径の範囲は、0.001〜50μmであることが好ましく、安定性は25℃で3時間放置した後のサスペンジョン平均粒径の変化率が±10%以内であることが好ましい。
有機高分子化合物の微分散液は、もともと乳化重合で作られた分散液、機械的な剪断を強くかけて分散する方法、有機高分子分化合物溶液に水を加えた後に溶剤を留去する方法等を用いて調製した分散液であってよく、有機高分子化合物を水に分散させるために、分散剤を使用することもできる。
水に微分散が可能な有機高分子化合物として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ酪酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、芳香族または脂肪族ポリエステル、芳香族または脂肪族ポリアミド、芳香族または脂肪族ポリウレタン、芳香族または脂肪族ポリエーテル、芳香族または脂肪族ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアリールケトン、芳香族または脂肪族エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、シアネート樹脂、ポリフルオロエチレン、ポリオルガノシロキサン、天然または合成ワックス、ポリアミノ酸などの化合物、およびこれらの誘導体を挙げることができる。
これらの有機高分子化合物は、ホモポリマーであってもよいし、2種以上の繰り返し単位を含むランダムあるいはブロックあるいはグラフトコポリマーであってもよい。さらに、初めから目的の有機高分子化合物を水中に存在させるだけでなく、反応性モノマーあるいはポリマーを共存あるいは存在させて、塗布を行った後に架橋反応あるいは重合反応を行うことも可能であるし、この際には触媒を併用してもよい。
本発明においては、二軸延伸ポリエステルフィルムに塗布する塗液には、上述の有機高分子化合物のほかに、例えば無機微粒子、帯電防止剤、防カビ剤、酸化防止剤、安定剤等の添加剤を必要に応じた量で添加することができる。
本発明における有機高分子化合物を含む塗液の媒体は、水であることが好ましいが、有機高分子化合物を分散するため、あるいは塗膜の可撓性(延伸時の追従性)を改善するために、水に可溶な有機溶媒を併用することができる。ただしこの場合、その濃度の上限は、用いる有機溶媒の大気中での濃度が爆発限界以下となるように設定するのが好ましい。
上述した有機高分子化合物を含む塗液は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布されるが、この塗布工程は、ポリエステルフィルムの製造工程内で行う必要がある。すなわち、ポリエステル未延伸フィルムに塗布し、逐次あるいは同時に二軸延伸する方法、一軸延伸されたポリエステルフィルムに塗布し、さらにこの一軸延伸方向と直角の方向に延伸する方法、あるいは二軸延伸ポリエステルフィルムに塗布し、さらに横および/または縦方向に延伸する方法を用いる必要がある。これらの中でも特に、一軸延伸後のポリエステルフィルムに塗布する方法が、フィルムの厚さ変動を抑え、しかも生産性を損なわないため、最も好ましい方法である。
上述した塗布液をポリエステルフィルムに塗布するには、通常の塗布装置、例えば、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアードクタコーター等を用いることができる。
上述した有機高分子化合物を含むコート層は、
1)ポリエステルフィルムとインク層との中間層として、
a)昇華転写用インク層バインダーとの接着性改良
b)溶融転写用インクとの接着性改良・離型性改良;
2)ポリエステルフィルムと背面層との中間層として、
インクリボン背面層との接着性改良;
3)インクリボン背面層そのものとして、あるいは
4)インクリボンに帯電防止性能を付加する
等の目的で、設けられるものである。
本発明の感熱転写用二軸配向ポリエステルフィルムは、長手方向の任意の15m長区間で、厚さムラが10%以下であることが必要である。この厚さムラは、フィルムの長手方向に任意の15m長区間を設定した時に、その区間での最大厚みと最小厚みとの差を、フィルムの平均厚みで除した値である。
厚さムラが10%を越える場合には、これをベースフィルムとして用いたインクリボンで高精細なフルカラー画像を印刷した時に、濃度変動による色調の差が目視でも分かるようになり、画像品位が損なわれる結果となる。厚さムラの範囲は7%以下が好ましく、さらに5%以下であるならば、色調の差はほとんど問題にならないレベルとなる。下限は0%となることが本来理想であるが、様々な要因で、通常は2%程度が限界となることが多い。
一方、幅方向に関しても厚さムラが少ないことが好ましいが、ほとんどの場合、幅方向には通常15mの有効幅を取ることができないため、測定長を3mとして厚さムラを測定する。このとき幅方向の厚さムラも、10%以下、さらに7%以下、特に5%以下であることが好ましい。
本発明の感熱転写用二軸配向ポリエステルフィルムは、水溶性または水分散性の有機高分子化合物を含む塗液を配向結晶化が完了する前に塗布し、ついで乾燥・延伸・熱処理を施す、いわゆるインラインコーティングを用いて積層したフィルムであり、しかも長手方向の厚さムラが小さいことが必要である。ところが前述したように、上記インラインコーティングプロセスを行った場合、水を多量に含む塗液をポリエステルフィルムの上に塗布することが原因で、インラインコーティングを施さない場合と比べて、その後の延伸工程でフィルムの温度ムラを生じやすく、この結果フィルムの厚み変動が大きくなる問題が存在する。
本発明者らは、この問題を解決すべくさらに鋭意検討を行ったところ、基材のベースフィルムの振動が原因で、流動性の残っている塗膜が不均一な厚み分布となり、この結果、乾燥→予熱→横延伸と続く工程中にベースフィルムの温度分布も不均一となって、これが長手方向の厚さ変動に極めて大きな影響を及ぼすことが要因であるとの結論に到達した。すなわち、この振動を少なくするか、あるいは振動があってもその影響を受け難くすることで、ポリエステルフィルムの長手方向の厚さ変動を抑えられることが判明した。
塗液をコートした後、乾燥工程に供されてから塗液中の水分が十分に蒸発する(塗膜中の水分量で1重量%を目安とする)までの間(以後、乾燥区間と略称する)に、フィルムに発生する振動の多くの部分は、テンタークリップでフィルムの耳部を把持する際に発生する衝撃によるもの、およびテンターでの熱風の吹き出しでフィルムが煽られることによるものである。
これらの振動を少なくするためには、例えば、テンターでの熱風をインバーター制御として脈動を抑える方法、熱風の風量自体を下げる方法、フィルムが加熱されることにより膨張する分だけクリップ幅を徐々に広げて、両端をクリップで把持されたフィルムの中央に弛みを生じさせない方法、テンタークリップがフィルムの耳を把持する際に、衝撃が少なくなるようにクリップに緩衝材を用いる方法などを採用することができる。また、振動があってもその影響を受け難くするために、乾燥区間において、コーターからテンタークリップでフィルムの耳を把持する箇所までの距離をできるだけ短くして、振動の振幅を小さく抑える方法、片面塗布の場合には、乾燥区間において塗布面とは反対のフィルム面に、駆動あるいはフリーロールを単独であるいは複数個接触させて、振動の伝搬を短い区間で遮断する方法などを用いることができる。もちろんこれらの2つ以上の方法を併用することも可能である。
上記のような方法を採用することにより、乾燥区間内のフィルムの振動、特に振幅が大きな振動を抑えることで、結果として二軸配向・熱固定が施されたフィルムにおける長手方向の厚さムラの発生を小さく抑えることができる。この際に、乾燥区間の振動によるフィルムの振幅は、テンターの幅、フィルムの厚み、塗布厚みにもよるが、通常5cm以下であり、さらには3cm以下とするのが好ましい。
本発明においては、インラインコーティングに起因する厚さムラの上記防止方法のほかに、公知の厚さムラ防止方法を併用できる。本発明者らの経験によれば、フィルムの厚さムラは、最も不良となるプロセスに足を引きずられて、そのレベルが決まってしまう傾向にある。したがって、本発明によってインラインコーティングプロセスは改善できたとしても、それだけでは必ずしも十分とは言えず、総合的な対策が必要となる。
以下、本発明のフィルムを得るために好ましく用いることのできるプロセスの好ましい態様を説明するが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
ポリエステル原料の溶融押し出しを行う際には、吐出の脈動を押さえる目的で、押し出し機のメルトラインにギヤーポンプを設置するのが好ましい。このほか、溶融ポリエステルのメルトラインでの温度分布を均一化させるため、スタティックミキサーを設置するのも好ましい。
溶融ポリエステルをキャスティングして固化させ、未延伸フィルムを得るプロセスには、いわゆる静電密着法を用いるのが好ましい。静電密着法は、電極として、エッジ部の厚みが50μm以下のアモルファス金属電極(特開平1−152031号公報参照)や、電気絶縁体の少なくとも片面に厚さ0.01〜10μmの導電性薄膜を設けてなる積層ブレード電極(特開平1−156036号公報参照)など用いて、溶融ポリエステルを効果的に冷却ドラムへ密着させつつ行うことが好ましい。静電密着法を有効に行うため、原料として用いるポリエステルの溶融時の比抵抗を1×1010Ω・cm以下、さらには1×109〜1×106Ω・cmの範囲とすることが好ましい。また同じ目的で、特開昭57−190040号公報、特開昭58−225123号公報、特開昭59−91121号公報、特開昭59−172542号公報、特開昭59−182840号公報、特開昭59−229314号公報、特開昭60−141751号公報、特開昭60−248737号公報、特開昭62−218416号公報、特開昭62−236722号公報、特開昭62−236722号公報などに記載されている方法も用いることもできる。
さらに、溶融ポリエステルを口金から吐出する際には、口金スリット間隙/冷却固化した未延伸フィルムの厚みの比を5〜20、さらには8〜15に調節すれば、未延伸フィルムの厚さムラを少なくすることができて好ましい。
上記手法のほか、冷却ドラムの回転ムラを極力小さくすること、風等を遮ることで、キャスティング時の溶融ポリエステルをできるだけ振動させないで冷却ドラムへ密着させる等の処方も用いることができる。これらの方法を採用し、シート状の溶融ポリエステルが冷却ドラムに接地する際に、冷却ドラム上に幅方向に広がる線状の接地部(以後、接地ラインと略称する)のゆらぎの幅が、有効製品幅に相当する領域で、1mm以下、さらに0.5mm以下となるようにするのが好ましい。
キャスティング工程で未延伸フィルムとしたポリエステルは、次にロール延伸法を用いた縦延伸を行うのが好ましい。この時に用いる延伸条件は、用いるポリエステルの組成によって異なるが、ポリエチレンテレフタレート(PET)の場合を例にとると、90〜110℃の温度範囲で延伸倍率2.0〜3.0倍の1段目の延伸を行った後、70〜90℃の温度範囲で延伸倍率1.2〜2.0倍の2段目の延伸を行うというように、縦延伸を2段階に分けて実施し、しかも2段目の延伸温度を1段目よりも低く設定することが好ましい。またこの際には、各々の延伸段階において、低速ロールおよび高速ロール上の延伸区間で、塑性変形が開始する位置および終了する位置のゆらぎが発生しないように、適切な位置にニップロールあるいは静電密着法を用いて、各ロールにフィルムを押さえ付けながら行うことが好ましい。
縦延伸を終えた一軸配向フィルムは、前述したインラインコーティングの工程に供される。
この後、テンターで横延伸を行うが、横延伸の条件も縦延伸と同様に、用いるポリエステルの組成によって異なる。PETを例にとれば、85℃〜130℃の温度範囲で3.0〜5.0倍に延伸倍率を設定することができる。この際に、テンター内でフィルムを加熱・冷却するための空気の吹き出しは、インバーター制御を行って脈動を極力抑えるのが好ましく、また、特開平5−301284号公報に記載されているように、吹き出し口の角度を経時的に変化させて、幅方向の厚さムラを改善する方法も採用できる。
横延伸を終えた二軸配向フィルムは、さらに再縦延伸および/または再横延伸を行うことも可能であるが、再縦延伸はロール延伸法で、再横延伸はテンター法でそれぞれ行うのが好ましく、これらの際には前述したロール延伸法およびテンター延伸法で用いた厚さムラ対策と同様の方法を用いることができる。
延伸工程をすべて終了した二軸配向フィルムは、次に熱固定工程へ供される。熱固定にはテンター法を用いるのが好ましいが、この際にも横延伸と同様の厚さムラ対策を行うことができる。熱固定の際、好ましくは、温度は180〜245℃の範囲で、時間は0.5〜60秒の範囲である。また熱固定の際には、幅方向の熱収縮率を改善する目的で、最高到達温度領域および/または冷却領域において、幅方向に1〜10%の弛緩処理を行うことも可能である。
かくして得られた二軸配向ポリエステルフィルムは、長手方向および幅方向の破断強度が、いずれも25kgf/mm2 以上で、かつ180℃3分間における収縮率が、長手方向および幅方向共に5%以下となることが好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお実施例中の「部」または「%」は、特に断りのない限り、「重量部」または「重量%」である。
特性の測定方法および効果の評価方法は以下のとおりである。
(1)フィルム厚み
「フィルム厚み」として、ベースフィルムおよび有機高分子化合物を含む塗布層の積層体の総厚みを、マイクロメーターを用いて測定した。
(2)フィルムの厚さムラ
アンリツ株式会社製連続フィルム厚さ測定器(電子マイクロメーター使用)により、長手方向は二軸配向フィルムの15m長区間を、幅方向は3m長区間を、それぞれ無作為に20区間抽出した。それぞれのサンプル毎に最大厚み(μm)および最小厚み(μm)を測定し、さらにその区間での平均厚み(μm)から以下の式に従って厚さムラを算出し、最も大きな値を、そのサンプルの厚さムラとした。
Figure 0004336382
なお、ここで用いた平均厚みは、測定したサンプルの面積、重量および密度から算出した値であり、このとき密度は、ポリエチレンテレフタレートでは1.397、ポリエチレンナフタレートでは1.354、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートでは1.270を用いた。
(3)平均表面粗さ
平均表面粗さは、ポリエステルベースフィルムの表面粗さを測定した。塗布層が片面のみの場合には反塗布面の表面粗さを、両面塗布の場合にはMEKやアセトン等を用いて表面形状が変わらないように注意深く塗布層を剥がして現われた表面での粗さを測定を行った。
測定は、マイクロマップ社製2光束干渉式非接触表面形状計測システム(Micromap 512。対物レンズ20倍)を使用して行い、SRaを測定した。測定は20視野について行い、平均値を平均表面粗さとした。
(4)ポリエステルフィルムの固有粘度
ポリエステルフィルムの固有粘度は、塗布層をMEKやアセトン等の有機溶剤を用いて完全に除去した後、十分に乾燥したフィルムを用いて、フェノール/テトラクロルエタン混合溶媒(50/50重量)に溶解させて、30℃の温度下で測定した。
(5)サスペンジョンの平均粒径
有機高分子化合物を含むサスペンジョンについて、日機装社製粒度分析計UPA9340(レーザードップラー/周波数解析方式)を用いて、粒度分布を測定し、平均粒径を算出した。
(6)印刷画像の濃度変動の程度
片面にインク易接着塗布層を有する二軸配向ポリエステルサンプルの塗布層面に、昇華性インク層を形成し、反対面に背面層をコートして、インクリボンを作成した。
コーディングが施されていないフィルムの場合には、任意の面にインク層を付与して、反対面に背面層をコートした。下記に示した組成の昇華性インクビヒクルおよび背面層ビヒクルを、各々乾燥した後に1g/m2の塗布量となるように、グラビアコートで順次塗布した後、乾燥し、裁断して、インクリボンを作成した。
インクおよび背面層ビヒクルの組成
イエロー:
マイクレックスイエロー6G (バイエル社製) 2部
ポリビニルアセトアセタール KS−5D (積水化学社製) 3部
トルエン/MEK=1/1(重量比) 95部
マゼンダ:
バイミクロンVPSN2670 (バイエル社製) 3部
ポリビニルアセトアセタール KS−5D (積水化学社製) 4部
トルエン/MEK=1/1(重量比) 93部
シアン:
カヤセットブルー714 (日本化薬社製) 4部
ポリビニルアセトアセタールKS−5D (積水化学社製) 4部
トルエン/MEK=1/1(重量比) 92部
背面層:
ポリビニルブチラール,エスレックBX−1(積水化学社製) 2部
ポリイソシアネート バーノック D750-45(大日本インキ社製) 9部
リン酸エステル滑剤プライサーフ A208S(第一工業製薬社製) 2部
タルク,ミクロエースL−1 (日本タルク社製) 0.3部
トルエン/MEK=1/1(重量比) 86.7部
これらのインクリボンを、市販の昇華転写型カラープリンターに組み込んで、昇華転写モードでテスト印刷を行った。なお印刷紙は、プリンター標準の専用紙を用いた。
テストでは、人の顔写真のデジタルデータ(データサイズ約32Mb、A4サイズ画像)を基に、同じ画像を連続して5枚印刷し、色調の再現性を評価した。評価は、5枚の画像について、目視で注意深く全体の色調を比較すること、および東京電色社製カラーアナライザーTC−1800MKII型を用いて、5枚それぞれについて、肌色部分の同じ個所を測定し、色差の最大値(ΔE)を求めた。目視での評価の基準は、色調の再現性について次の3つのランクに分けた。
A:画像の色調に、全く差を認められず再現性が良好である
B:画像に色調の差が認められるが、よほど注意深く見ないと認識できない
C:画像に色調の差が認められ、一目見て差が認識できる
ランクCは、不適格である。
(7)フィルムの破断強度
インテスコ社製引張試験機インテスコモデル2001型を用いて、温度23℃、湿度50%RHに調節された室内において、長さ50mm、幅15mmの試料フィルムを、200m/分の速度で引張り、引張応力−ひずみ曲線より、破断時における荷重(kg)を試験片の元の断面積(mm2)で除した数値を破断強度とした。
(8)フィルムの熱収縮率
タバイ社製熱風循環式オーブンを用いて、試料フィルムを180℃で3分間、自由端熱処理を行い、フィルムの処理前後で縦方向および横方向の寸法変化を%で表した。
実施例1
平均粒子径1.2μmのシリカ粒子を0.3%含有する固有粘度0.66のポリエチレンテレフタレ−トペレットを、十分に加熱乾燥した後、押出機に供給し、290℃で溶融押出して未延伸フィルムを製造した。この際、押出機には、異物除去のために10μmカットのフィルター、脈動を抑えて計量吐出するためのギヤーポンプを設置し、かつ、メルトラインには溶融ポリエステルの温度分布を均一化させるためのスタティックミキサーを設置した。Tダイよりフィルム状に押出し、これを静電密着法を用いて表面温度40℃の冷却ドラムに巻きつけて冷却固化させた。Tダイの口金のスリット間隙は1.1mmであり、冷却固化した未延伸フィルムの厚みは91μmであった(スリット間隙/冷却固化した未延伸フィルムの厚みの比は約12.1)。またこの静電密着法では、厚さ20μm、幅2mmのコバルト−クロム−モリブデン−カーボンのアモルファス金属ブレードを用いて、6kVの電圧を印加した。さらにキャスティングを行うゾーンを小部屋として囲い、空調機等の風による影響を遮断した。この結果、溶融ポリエステルが冷却ドラムに接地する接地ラインのゆらぎを、有効製品幅全域でほぼ0とすることができた。
得られた未延伸フィルムを、縦延伸工程へと導いた。縦延伸はロール延伸法を用いて行い、1段目の延伸は100℃で延伸倍率2.70倍で行い、さらに2段目の延伸は87℃で延伸倍率1.60倍で行った。この際、1段目および2段目の延伸は共に、周速差を利用して延伸を行う低速ロールと高速ロールには、各々ロールからフィルムが離れる位置、およびロールにフィルムが接する位置にニップロールを設置して、延伸区間で塑性変形が開始する位置および終了する位置のゆらぎが発生しないようにフィルムをロールに押さえ付けて、行った。
得られた一軸延伸フィルムの片面に空気中でコロナ放電処理を施し、その処理面にグラビアコート方式で、次に示す組成となるように各成分の水分散液を混合した混合物を塗布した。水分散液の塗布量は6g/m2 で、水分散液中の固形分量は10重量%とした。
水分散液組成
ポリエステル系樹脂 40部(固形分比)
アクリル系樹脂 40部(固形分比)
オキサゾリン系架橋剤 20部(固形分比)
なお、上記ポリエステル系樹脂の分散液は、テレフタル酸55モル%、イソフタル酸40モル%、5−ソジウムスルホイソフタル酸5モル%、エチレングリコール60モル%、ジエチレングリコール13モル%および1,4−ブタンジオール27モル%よりなるポリエステル系樹脂水分散体であり、アクリル系樹脂の分散体は、エチルアクリレート50モル%、イソブチルメタクリレート35モル%、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10モル%、メタクリル酸5モル%よりなるアクリル系樹脂水分散体であり、オキサゾリン系架橋剤の分散体は、スチレン58.2重量%、アクリル酸ブチル21.8重量%、2−ビニル−2−オキサゾリン20重量%よりなる重合物水分散体であった。
この塗布処理の後に、フィルムを乾燥・予熱工程に導いたが、このとき水分散体が塗布されたフィルムができるだけ振動しないように次の手段を講じた。
まずグラビアコーターとテンター入り口までの間隔(2m)に、2本のフリーロールを等間隔となるように設置して、水分散体が塗布してある面とは反対の面に、フィルムの抱き角が2゜となるように接触させた。次にテンタークリップでフィルムの両端部(耳部)を把持し、インバーター制御で脈動を抑えた熱風をフィルムに当てて、水分散体から水分を除去した。この際に塗布層の水分がなくなるに従って徐々にフィルムの温度が上昇し、この結果フィルムが熱膨張して中央部が弛む現象が見られた。そこで中央部の弛みがなくなるように、テンターの奥へ行くほど広くなるようにクリップ幅をわずかに広げた。
上記手段を講じることで、塗布液のコーター出口から塗布層の水分が十分に蒸発するまでの乾燥区間内で、フィルムが受けた振動の最大振幅は、1.5cmであった。
次いで、横方向に105℃で延伸倍率4.5倍で延伸し、連続したテンター内で、230℃で2秒間の熱処理を行った。この後、210℃でクリップ幅を5%縮めて弛緩処理を行い、冷却ゾーンを通過させて、厚さ0.1μmの塗布層が積層された、総厚み4.5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムの特性を下記表1に示す。
得られたフィルムは、インラインコーティングにより昇華性インク易接着層が片面に付与されており、しかも厚さムラの少ないポリエステルフィルムであるため、これを用いて作成したインクリボンは、印刷した時の濃度変動が少ないものであった。
比較例1
実施例1と同じポリエステル原料を用いて、実施例1とまったく同様に押し出し、キャスティング、縦延伸およびコロナ放電処理を行い、さらに同様の水分散液を同じ方法で塗布した。
この後、実施例1で行った乾燥区間内のフィルム振動対策のうち、グラビアコーターとテンター入り口までの間隔に、フリーロール設置を行わずに、テンタークリップでフィルムの両端部(耳部)を把持した。この後、インバーター制御で脈動を抑えた熱風をフィルムに当てて、水分散体の水分の除去を行った。この際に、テンターの奥へ行くほど広くなるようにクリップ幅をわずかに広げることをせずに、中央部に弛みができた状態で乾燥区間を通過させた。乾燥区間内で、フィルムが受けた振動の最大振幅は、7cmであった。
次いで実施例1とまったく同様に横延伸、熱固定および幅弛緩を行い、塗布層の厚さ0.1μmの塗布層が積層された、総厚み4.5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
得られたフィルムは、インラインコーティングにより昇華性インク易接着層が片面に付与されているが、厚さムラが多いポリエステルフィルムであるため、これを用いて作成したインクリボンは、印刷した時の濃度変動が多く、フルカラー画像の印刷には不向きであった。
比較例2
実施例1と同じポリエステル原料を用いて、実施例1とまったく同様に押し出し、キャスティング、縦延伸およびコロナ放電処理を行った。ここで、実施例1で行った水分散液を塗布することなしに、グラビアコーターを素通しさせた。この後、比較例1と全く同様に、乾燥区間内のフィルム振動対策のうち、グラビアコーターとテンター入り口までの間隔に、フリーロール設置を行わずに、テンタークリップでフィルムの両端部(耳部)を把持した。この後、インバーター制御で脈動を抑えた熱風をフィルムに当てて搬送した。この際に、テンターの奥へ行くほど広くなるようにクリップ幅をわずかに広げることをせずに、中央部に弛みができた状態で乾燥区間を通過させた。乾燥区間内で、フィルムが受けた振動の最大振幅は、7cmであった。
次いで実施例1とまったく同様に横延伸、熱固定および幅弛緩を行い、塗布層を有さない総厚み4.4μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
厚さムラのレベルは良好であったが、インラインコーティングによる昇華性インク易接着層が付与されておらず、このフィルムを用いて作成したインクリボンでは、インク層が剥がれてしまい、印刷を行うことができなかった。
実施例2
平均粒子径1.2μmのシリカ粒子を0.3%含有する固有粘度0.55のポリエチレンナフタレート(PEN)ペレットを、十分に加熱乾燥した後、押出機に供給して305℃で溶融押出して未延伸フィルムとした。この際押出機には、実施例1と同様のフィルター、ギヤーポンプ、およびスタティックミキサーが各々設置されている。Tダイよりフィルム状に押出し、得られたフィルムを、静電密着法を用いて表面温度60℃の冷却ドラムに巻きつけて、冷却固化させた。Tダイの口金は、スリット間隙が1.1mmであり、冷却固化した未延伸フィルムの厚みは107μmであった(スリット間隙/冷却固化した未延伸フィルムの厚みの比は約10.3)。またこの静電密着法では、実施例1と同じアモルファス金属ブレードを用いて、同じ電圧を印加した。さらに実施例1と同様に、キャスティング行うゾーンを小部屋として囲い、空調機等の風による影響を遮断した。この結果、溶融ポリエステルが冷却ドラムに接地する接地ラインのゆらぎを、有効製品幅全域でほぼ0とすることができた。
この未延伸フィルムを、次に縦延伸工程へと導いた。縦延伸は、ロール延伸法を用いて行い、1段目の延伸は130℃で延伸倍率2.70倍で行った後、さらに2段目の延伸を123℃で延伸倍率1.80倍で行った。この際、1段目および2段目の延伸は共に、低速ロールと高速ロールには、実施例1と同様の位置にニップロールを設置して、延伸区間で塑性変形が開始する位置および終了する位置のゆらぎが発生しない様に、フィルムをロールに押さえ付けて、行った。
この一軸延伸フィルムの片面に空気中でコロナ放電処理を施し、その処理面にグラビアコート方式で、実施例1と全く同じ組成の水分散液を、同じ塗布量で塗布した。
この塗布処理の後に、乾燥・予熱工程に導いたが、このとき水分散体が塗布されたフィルムができるだけ振動しないように、実施例1と全く同様の手段を講じた。この処方を講じることで、塗布液のコーター出口から塗布層の水分が十分に蒸発するまでの乾燥区間内で、フィルムが受けた振動の最大振幅は、1.5cmであった。
次いで、横方向に135℃で4.7倍延伸し、連続したテンター内で、230℃で2秒間の熱処理を行った。この後、210℃でクリップ幅を5%縮めて弛緩処理を行い、冷却ゾーンを通過させて、最終的に厚さ0.1μmの塗布層が積層された、総厚み4.5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
PENを用いた場合においてもPETを用いた実施例1と同様に、得られたフィルムは、インラインコーティングによる昇華性インク易接着層が片面に付与されており、しかも厚さムラの少ないポリエステルフィルムであるため、これを用いて作成したインクリボンは、印刷した時の濃度変動が少ないものであった。
比較例3
実施例2と同じポリエステル原料を用いて、実施例2とまったく同様に押し出し、キャスティング、縦延伸およびコロナ放電処理を行い、さらに同様の水分散液を同じ方法で塗布した。
この後、実施例2で行った乾燥区間内のフィルム振動対策のうち、グラビアコーターとテンター入り口までの間隔に、フリーロール設置を行わずに、テンタークリップでフィルムの両端部(耳部)を把持した。この後、インバーター制御で脈動を抑えた熱風をフィルムに当てて、水分散体の水分の除去を行った。この際に、テンターの奥へ行くほど広くなるようにクリップ幅をわずかに広げることをせずに、中央部に弛みができた状態で乾燥区間を通過させた。乾燥区間内で、フィルムが受けた振動の振幅は、最大で7cmであった。
次いで実施例2とまったく同様に横延伸、熱固定および幅弛緩を行い、塗布層の厚さ0.1μmの塗布層が積層された、総厚み4.5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
インラインコーティングにより、昇華性インク易接着層が片面に付与されているが、厚さムラが多いポリエステルフィルムであるため、これを用いて作成したインクリボンは、印刷した時の濃度変動が多く、フルカラー画像の印刷には不向きであった。
Figure 0004336382

Claims (1)

  1. 水溶性または水分散性の有機高分子化合物を含む塗液を、配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布し、ついで、乾燥区間の振動によるフィルムの振幅を5cm以下として乾燥し、延伸・熱処理を施すことによって塗布層を形成することを含んでなる、厚み20μm以下の感熱転写用二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法であって、当該塗布フィルムの長手方向の任意の15m長区間における厚さムラが10%以下であることを特徴とする製造方法。
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