JP2717508B2 - 法枠用コイルを使用する格子法枠体の施工方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は法枠用コイルを使用する
格子法枠体の施工方法に関し、たとえば、地山などの傾
斜地盤や土地造成地及び道路などの法面上に張設したラ
ス金網などの網状体の上に設置され、展延させることに
より格子状に設置した後モルタル又はコンクリートを吹
付けて格子法枠体を形成し、この後、該格子法枠体内の
網状体に植物種子や有機客土などから成る植生材料を吹
付けて植生基盤層を形成し法面を安定させたり、良質植
生基材を厚層吹付けして前記格子法枠体内を緑化させる
ための法枠用コイルを使用する格子法枠体の施工方法に
関するものである。

【０００２】

【従来の技術】法面状に金網を敷設し、その上に鉄筋を
格子状に配筋して格子枠を形成した後アンカー打設を行
い、その上からモルタル又はコンクリート（以下、単に
モルタルという）を吹付けて格子法枠体を形成し、この
格子法枠体内に厚層緑化基材を吹付けて緑化するソイル
クリート工法とよばれる簡易法枠緑化工法がある。この
工法は、法面を格子法枠体にて保護し、緑化が可能な工
法であると共に施工性に優れているので多く設計されて
いる。

【０００３】しかしながら、格子法枠体を形成する際、
その幅、高さ等を規定する目安が何もないために、格子
法枠体の規格が統一されずにバラバラになり易く、品質
管理上の問題があった。

【０００４】また、鉄筋の配筋位置が金網上であって低
いために格子法枠体の枠強度がでないことと、無形枠で
あるために形成した格子法枠体にクラックが発生し易い
ことも問題であった。

【０００５】そこで、近年、それらの問題点を解決する
ために、金網形型枠を用いることなく該金網形型枠の格
子法枠よりも簡易なコイルを法枠として使用してモルタ
ル吹付けにより格子法枠体を施工する簡易法枠緑化工法
が提案されている［実公平３−２０３５１号公報、特開
昭５７−１８７４２７号公報］。

【０００６】この法枠用コイルを使用した工法は、法面
上に金網などの網状体を設置し、その上にコイル断面が
円形形状、三角形形状の法枠用コイルを設置し、この法
枠用コイルを展延させることにより格子状に設置し、そ
の上に１〜３本の鉄筋を配筋した後格子状に設置された
法枠用コイルの上からモルタルを吹付けて格子法枠体を
形成するようにしたものであり、上記したソイルクリー
ト工法の欠点である、（１）鉄筋を形成する法枠の上部
に配筋できないので枠強度がでないこと、（２）無枠体
であるために形成した格子法枠体にクラックが入りやす
いことといった欠点を解決できることから優れた工法と
いえる。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記し
たソイルクリート工法は、下端幅が３０〜３５ｃｍで高
さが１０〜１５ｃｍの半円弧状の法枠体であり、上記の
法枠用コイル（以下、コイルという）の形状に吹付ける
モルタル等をあわせようとすると、下端の吹付幅と吹付
け高さが同じになるために、必要以上に大きな法枠体と
なってしまい不経済である。また、現在の土木基準にお
いては、所要強度の法枠体を得るための品質基準とし
て、鉄筋の腐食による法枠体の強度低下を防ぐという意
味から、鉄筋を覆うモルタルの厚さを５ｃｍ以上にする
こと（これをカブリ厚という）が義務づけられており、
コイルの外側に鉄筋を配設する従来のコイルによる法枠
体では、カブリ厚をどの面からも５ｃｍ以上とろうとす
ると、どうしても法枠体の幅を多くとる必要があり、高
さ１０ｃｍ程度のコイルでは幅も同じであることから、
その吹付幅を規定することができなかった。

【０００８】したがって、従来のコイルを使用した工法
にあっては、コイル断面が円形形状、三角形形状のコイ
ルを用いているので、規定された格子法枠体の幅を満た
そうとすると、コイルの高さが必要以上に高くなり、幅
方向において５ｃｍ以上のカブリ厚をとろうとすると、
とてつもない大きさの法枠体にならざるをえなかった。

【０００９】すなわち、円形コイルを用いて格子法枠体
Ａを形成するには、図７に示すように、まず、法面５０
上に設置されたラス金網などの網状体（図示せず）に、
例えば、円形形状のコイル断面を有する円形コイル５１
を展延させる。このコイル展延時に鉄筋５２，５３を円
形コイル５１上の所定の高さＢの位置に浮設させ、格子
状にコイル５１を設置し、続いて、各格子枠（図示せ
ず）内を養生シートで覆った後、コイル５１の上からモ
ルタル５４を吹付けて格子法枠体Ａを形成する。この
際、コイル５１の円形形状に沿って規定の吹付厚ｈ（例
えば、５ｃｍ・・・カブリ厚）になるまでモルタル５４
を吹付けると、鉄筋５２，５３は高さ方向においては上
端からも地上部からも前記規定の吹付厚ｈを満たすよう
にモルタル層内に位置させることができるけれども、そ
の反面、前記コイル幅Ｄ通りにモルタルを吹付けたので
は吹付厚ｈをＴで示す幅方向にはとることができないと
共に、下端の吹付幅Ｅについては、何も規定するものが
ないために吹付幅Ｅを格子法枠体Ａの規格幅Ｆ通りにす
ることはできなかった。

【００１０】このことは、円形コイル５１と同様のコイ
ルの高さが必要以上に高い、コイル断面が三角形形状
で、コイル幅Ｈの三角形コイル５５（図７参照）を用い
て格子法枠体Ａを形成した場合にも、規定の吹付厚ｈを
維持しようとすると高さ方向（Ｃ方向）においては吹付
厚ｈを得ることはできるけれども、その反面、コイル幅
Ｈ通りにモルタル５４を吹付けても吹付厚ｈを幅方向
（Ｔ方向）にとることはできず、また、下端の吹付幅Ｅ
については、何も規定するものがないために、吹付幅Ｅ
を格子法枠体Ａの規格幅Ｆ通りにすることはできなかっ
た。

【００１１】本発明は以上のような問題に鑑みてなした
もので、その目的は、金網形型枠を用いることなく規格
通りのモルタルの吹付厚（カブリ厚）および吹付幅を同
時に得ることができる法枠用コイルを使用する格子法枠
体の施工方法を提供することにある。

【００１２】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の法枠用コイルを使用する格子法枠体の施工
方法は、法面上に、一本の芯材を螺旋状に巻いて、断面
が長方形形状を有する芯材部分を形成してなる法枠用コ
イルを展延させ、かつ、鉄筋を該法枠用コイル上の所定
の高さの位置に浮設させ、法枠用コイルを格子状に設置
し、前記法枠用コイルの上からモルタル又はコンクリー
トを、前記法枠用コイルのコイル幅通りに吹付けるとと
もに、格子枠体の高さ管理用の検測ピンにあわせて吹付
けて、前記鉄筋を覆う厚さが幅方向及び高さ方向におい
て規格通りのモルタルまたはコンクリートの吹付厚を満
たす格子法枠体を形成することを特徴とする。

【００１３】

【作用】

【００１４】法枠用コイルとして一本の芯材を螺旋状に
巻いて断面が長方形形状を有する芯材部分を形成してな
るコイルを用いていることから、この法枠用コイルの方
が、従来のようなコイル断面が円形形状、三角形形状の
コイルに比して、コイルの高さが必要以上に高くなるこ
とはない。したがって、本発明においては、コイル展延
時に鉄筋を法枠用コイル上の所定の高さの位置に浮設さ
せ、法枠用コイルの上からコイル幅通りモルタルを吹付
けても、高さが必要以上に高くなることがなく、円形形
状や三角形形状に沿ってモルタル等を吹付けることによ
ってモルタルの層がはみ出してしまうという従来の問題
点を回避でき、規格幅通りの法枠体を形成できる。

【００１５】その後、規格通りのモルタルの吹付厚（カ
ブリ厚）になるように、例えば検測ピンを用いること
で、この検測ピンに合わせてモルタル等を吹付けるだけ
で、鉄筋を、高さ方向において上端からも地上部からも
規定の吹付厚を満たすようにモルタル等の枠内に位置さ
せることができる。

【００１６】要するに、現在の土木基準においては、所
要強度の法枠体を得るための品質基準として、鉄筋の腐
食による法枠体の強度低下を防ぐという意味から、鉄筋
を覆うモルタルの厚さを５ｃｍ以上にすること（カブリ
厚）が義務づけられており、コイルの外側に鉄筋を配設
する従来の円形や三角形のコイルによる法枠体では、カ
ブリ厚をどの面からも５ｃｍ以上とろうとすると、どう
しても法枠体の幅を多くとる必要があり、高さ１０ｃｍ
程度のコイルでは下端の吹付幅を規定することができな
かったという従来の欠点を本発明は回避できる。

【００１７】

【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。な
お、本発明はそれによって限定を受けるものではない。
図１〜図５は本発明の実施例を示す。図１〜図５におい
て、法枠用コイル１は、鉄線（芯材）２を螺旋状に巻い
て断面が長方形形状Ｕ（図４参照）を有する芯材部分３
を形成してなるコイルで構成されている。

【００１８】そして、長方形形状Ｕの法枠用コイル１を
用いて格子法枠体Ａを形成するには、まず、図１、図２
および図５に示すように、法面４上に設置された金網な
どの網状体５に法枠用コイル１を展延させる。このコイ
ル展延時に鉄筋６を法枠用コイル１上の所定の高さＢ
（例えば、５ｃｍ）の位置（図２参照）に浮設させ、格
子状に法枠用コイル１を設置し（図５参照）、続いて、
各格子枠ａ，ｂ，ｃ，ｄ（図５参照）内を養生シート８
で覆った後、法枠用コイル１の上からモルタル又はコン
クリート（以下、単にモルタル等という）９を吹付けて
格子法枠体Ａを形成する。

【００１９】この際、まず、法枠用コイル１の上からコ
イル幅Ｄ通りモルタル等９を吹付けて幅方向（Ｔ方向）
において規格通りの吹付幅（例えば、３０ｃｍ）Ｅを得
る。すなわち前記吹付幅Ｅと格子法枠体Ａの規格幅Ｆを
略一致させることができる。

【００２０】その後、規格通りのモルタル等の吹付厚
（カブリ厚）ｈになるように、例えば、検測ピン７を用
いることで、この検測ピン７にあわせてモルタル等９を
吹付けるだけで、鉄筋６を高さ方向（Ｃ方向）におい
て、上端からも地上部からも規定の吹付厚ｈを満たすよ
うにモルタル等の枠内に位置させることができる。

【００２１】このように、本実施例では、吹付幅Ｅと格
子法枠体Ａの規格幅Ｆを略一致させた後、格子法枠体Ａ
の高さの管理を検測ピン７で行なったので、格子法枠体
Ａの高さを規定通りに設定できる。

【００２２】したっがって、コイル幅Ｄ通りモルタル等
９を吹付ければ、Ｃ方向において規格通りのモルタル等
の吹付厚ｈを有し、かつＴ方向においては規格通りの吹
付幅Ｅを有する格子法枠体Ａを形成できる。

【００２３】なお、図１，図２における符号１０は、展
延した法枠用コイル１を各芯材部分３が所定間隔になる
よう一部の芯材部分３に仮り止めを施すためのアンカー
である。

【００２４】また、完成された格子法枠体Ａ内には、図
５に示すように、例えば、格子法枠体Ａ内の網状体５に
植物種子や有機客土などから成る植生材料を吹付けて植
生基盤層を形成し法面を安定させたり、良質植生基材１
１を厚層吹付けして格子法枠体Ａ内を緑化させることが
できる。

【００２５】このように本実施例では、法枠用コイル１
として一本の芯材を螺旋状に巻いて断面が長方形形状Ｕ
を有する芯材部分３を形成してなるコイルを用いている
ことから、この法枠用コイル１の方が、従来のようなコ
イル断面が円形形状、三角形形状のコイルに比して、コ
イルの高さが必要以上に高くなることはない。したがっ
て、前記円形形状、三角形形状のコイルでは規定された
格子法枠体の幅を満たそうとすると、コイルの高さが必
要以上に高くなり、幅方向において５ｃｍ以上のカブリ
厚をとろうとすると、とてつもない大きさの格子法枠体
にならざるをえなかったという問題点を本実施例では克
服できる。

【００２６】すなわち、本実施例においては、コイル展
延時に鉄筋６を法枠用コイル１上の所定の高さの位置Ｂ
に浮設させ、まず、法枠用コイル１の上からコイル幅Ｄ
通りモルタル等９を吹付け、下端において規格通りの吹
付幅Ｅを得る。すなわち、吹付幅Ｅと格子法枠体Ａの規
格幅Ｆを略一致させることができる。

【００２７】その後、規格通りのモルタル等の吹付厚
（カブリ厚）ｈになるように、例えば、検測ピン７をＣ
方向の管理に用いることで、この検測ピンにあわせてモ
ルタル等９を吹付けるだけで、鉄筋６を、Ｃ方向におい
て上端からも地上部からも規定の吹付厚ｈを満たすよう
にモルタル等９の枠内に位置させることができる。

【００２８】なお、本実施例では、鉄筋６を法枠用コイ
ル１上の所定の高さＢの位置（図２参照）に浮設させる
際に、鉄筋６を一列に配筋したものを示したが、二列の
鉄筋を左右対象に浮設させても、あるいは、三列以上の
配筋でもよく、適宜配筋できる。

【００２９】

【発明の効果】以上説明したように本発明では、法枠用
コイルとして一本の芯材を螺旋状に巻いて断面が長方形
形状を有する芯材部分を形成してなるコイルを用いてい
ることから、この法枠用コイルの方が、従来のようなコ
イル断面が円形形状、三角形形状のコイルに比して、コ
イルの高さが必要以上に高くなることはない。したがっ
て、前記円形形状、三角形形状のコイルでは、規定され
た格子法枠体の幅を満たそうとすると、コイルの高さが
必要以上に高くなり、幅方向において５ｃｍ以上のカブ
リ厚をとろうとすると、とてつもない大きさの格子法枠
体にならざるをえなかったという問題点を本発明では克
服できる。

【００３０】すなわち、本発明においては、コイル展延
時に鉄筋を法枠用コイル上の所定の高さに浮設させ、ま
ず、法枠用コイルの上からコイル幅通りモルタル等を吹
付け、下端において規格通りの吹付幅を得る。すなわ
ち、前記吹付幅と格子法枠体の規格幅を略一致させるこ
とができる。

【００３１】その後、規格通りのモルタル等の吹付厚
（カブリ厚）になるように、例えば、検測ピンを用いる
ことで、この検測ピンにあわせてモルタル等を吹付ける
だけで、鉄筋を、高さ方向において上端からも地上部か
らも規定の吹付厚を満たすようにモルタル等の枠内に位
置させることができる。

【００３２】このように、本発明では、コイル幅通りモ
ルタル等を吹付ければ、高さ方向において規格通りのモ
ルタル等の吹付厚（カブリ厚）を有し、かつ幅方向にお
いては規格通りの吹付幅を有する格子法枠体を形成でき
る。

【００３３】要するに、現在の土木基準においては、所
要強度の法枠体を得るための品質基準として、鉄筋の腐
食による法枠体の強度低下を防ぐという意味から、鉄筋
を覆うモルタル等の厚さを５ｃｍ以上にすること（カブ
リ厚）が義務付けられており、コイルの外側に鉄筋を配
設する従来のコイルによる法枠体では、カブリ厚をどの
面からも５ｃｍ以上とろうとすると、どうしても法枠体
の幅を多くとる必要があり、高さ１０ｃｍ程度のコイル
では下端の吹付幅を規定することができなかったという
従来の欠点を本発明は回避できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を説明するための要部斜視図
である。

【図２】上記実施例における要部構成説明図である。

【図３】上記実施例で使用する法枠用コイルを示す要部
構成説明図である。

【図４】上記実施例で使用する法枠用コイルの芯材部分
を示す図である。

【図５】上記実施例における施工方法の作業過程を説明
するための構成図である。

【図６】従来例を示す要部構成説明図である。

【図７】別の従来例を示す要部構成説明図である

【符号の説明】

１…法枠用コイル、２…一本の鉄線（芯材）、３…芯材
部分、４…法面、５…金網などの網状体、６…鉄筋、７
…検測ピン、８…養生シート、９…モルタル又はコンク
リート、１０…アンカーピン、１１…植生基材、Ｕ…長
方形形状、Ａ…格子法枠体。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 法面上に、一本の芯材を螺旋状に巻い
   て、断面が長方形形状を有する芯材部分を形成してなる
   法枠用コイルを展延させ、かつ、鉄筋を該法枠用コイル
   上の所定の高さの位置に浮設させ、法枠用コイルを格子
   状に設置し、前記法枠用コイルの上からモルタル又はコ
   ンクリートを、前記法枠用コイルのコイル幅通りに吹付
   けるとともに、格子枠体の高さ管理用の検測ピンにあわ
   せて吹付けて、前記鉄筋を覆う厚さが幅方向及び高さ方
   向において規格通りのモルタルまたはコンクリートの吹
   付厚を満たす格子法枠体を形成することを特徴とする法
   枠用コイルを使用する格子法枠体の施工方法。