JP2694326B2 - 現場打ち法枠工法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、例えば道路や造成地
などの法面を緑化するようなときに使用される現場打ち
法枠工法に関する。

【０００２】

【従来の技術】前記現場打ち法枠工法として、例えば特
公昭５８−２０３３８号公報に示される「法面安定工
法」がある。この工法は、法面に金網などの網状体を敷
設した後、この網状体上に鉄筋を格子状に敷設し、この
格子状鉄筋にモルタルまたはコンクリート（以下、モル
タル等と言う）を吹き付けてモルタル等よりなる格子状
法枠を形成するようにしたものであるので、従来のプレ
ハブ式や現場打ち法枠工法などに比べて、施工性や強度
に優れているとともに、使用する器材が少なく安価であ
るといった利点がある。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところで、現行の土木
基準では、前記格子状鉄筋を覆うモルタル等の厚み（こ
れを被り厚と言う）が鉄筋のどの面からも５ｃｍ以上で
あることが、所要強度の格子状法枠を得るための品質管
理基準として義務付けられている。しかしながら、前記
現場打ち法枠工法は、型枠を用いない現場打ち法枠工法
であるとともに、モルタル等の吹き付けは、法面上の不
安定な場所で現場作業として行われることから、格子状
鉄筋に対するモルタル等の吹付け厚さや幅が不均一とな
りやすく、所定寸法の格子状法枠を形成するのに相当の
熟練度を要するとともに、格子状法枠の寸法や強度にバ
ラツキを生じることを避けることができなかった。

【０００４】この発明は、上述の事柄に留意してなされ
たもので、型枠を用いない現場打ち法枠工法において、
規格通りの寸法および強度を有するモルタル等よりなる
格子状法枠を熟練を要することなく簡単に形成すること
ができる現場打ち法枠工法を提供することを目的として
いる。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、この発明は、法面に網状体を敷設した後、この網状
体上に鉄筋を格子状に配置し、この格子状鉄筋にモルタ
ルまたはコンクリートを吹き付けてモルタルまたはコン
クリートよりなる格子状法枠を形成する現場打ち法枠工
法において、所定の高さと幅を有する弓状部材とこの弓
状部材どうしを連結する連結部材とからなり、モルタル
またはコンクリートの吹き付け幅および吹き付け高さの
目安となる検測枠を、弓状部材が前記鉄筋を跨ぐように
して、適宜の間隔をおいて配置した状態で、モルタルま
たはコンクリートを前記検測枠にしたがって吹き付ける
ことを特徴としている。

【０００６】この場合、弓状部材の両下端部を折曲して
沈み防止部を形成してあったり、また、検測枠に鉄筋を
浮設保持する保持部材を着脱自在に設けるようにした
り、そして、検測枠を構成する部材を防錆加工を施した
針金から構成してあってもよい。

【０００７】

【作用】この発明で用いる検測枠Ｋは、モルタルまたは
コンクリートの吹き付け幅および吹き付け高さの目安と
なるものであって、例えば図４に示すように、所定の高
さＨ（例えば１０ｃｍ）と幅Ｗ（例えば３０ｃｍ）とを
有する二っの弓状部材１とこれら二つの弓状部材１どう
しを連結する二つの連結部材２とからなるとともに、弓
状部材１の両下端部を例えば互いに向き合う方向に折曲
して沈み防止部４を形成してなるものである。この検測
枠Ｋを構成する弓状部材１および連結部材２は、防錆加
工を施した適宜太さの針金よりなり、それらは溶接また
はハンダ付けによって連結されている。

【０００８】そして、法面に所定のモルタル等よりなる
格子状法枠１２を形成するに際しては、法面５を整形し
た後、図１に示すように、法面５全体に菱形金網などの
網状体６を敷設し、この網状体６上に鉄筋８を格子状に
配置する。そして、図２に示すように、検測枠Ｋを、弓
状部材１が鉄筋８を跨ぐようにして、適宜の間隔をおい
て配置し、その後、図１および図３に示すように、格子
枠を形成する鉄筋８にモルタル等１１を前記検測枠にし
たがって吹き付けるのである。

【０００９】このようにすることにより、鉄筋８に対し
てモルタル等１１を所定幅および高さになるように正確
に吹き付けることができ、所定強度を有するモルタル等
よりなる格子状法枠１２を法面５に確実に形成すること
ができる。

【００１０】

【実施例】図１〜図４はこの発明の現場打ち法枠工法の
一例を示すものである。まず、この発明において用いる
検測枠Ｋについて、図４を参照しながら説明する。図４
に示すように、検測枠Ｋは、モルタルまたはコンクリー
トの吹き付け幅および吹き 付け高さの目安となるもので
あって、所定の高さＨ（例えば１０ｃｍ）と幅Ｗ（例え
ば３０ｃｍ）とを有する二つの弓状部材１とこれら二つ
の弓状部材１どうしをその適宜高さの位置において連結
する二つの連結部材２とからなり、蒲鉾状の形状に構成
されている。弓状部材１および連結部材２は、防錆加工
を施した適宜太さ（例えば直径４ｍｍ）の針金よりな
り、連結部材２の両端部は、溶接またはハンダ付けによ
って弓状部材１の下端部よりやや上方位置に固着３され
ている。そして、この実施例においては、弓状部材１の
両下端部を適宜長さ（例えば５ｃｍ程度）例えば互いに
向き合う方向に折曲して沈み防止部４を形成している。
なお、連結部材２の長さＬは、法面５に鉄筋８によって
形成される格子枠の一つの辺の長さよりも短く、例えば
４０〜５０ｃｍ程度でよい。

【００１１】次に、上記検測枠Ｋを用いて行う現場打ち
法枠工法の一例について、図１〜図３をも参照しながら
説明する。予め整形された法面５に目合いが例えば５〜
６ｃｍ程度の菱形金網などの網状体６を敷設し、アンカ
ー７を適宜の間隔で法面５に打ち込んで網状体６を法面
５に固定する（図３参照）。

【００１２】前記網状体６の上に例えば直径が６〜１０
ｍｍ程度の鉄筋８を一辺が１〜２ｍ程度の格子状に組み
合わせて配置する（図１参照）。鉄筋８の交点には例え
ば直径１６ｍｍ、長さ４０〜５０ｃｍ程度のアンカー９
を法面５から１０ｃｍ程度突出させた状態で打ち込み、
鉄筋８を適宜の結束線１０を用いてアンカー９の突出部
に結束する（図２および図３参照）。なお、前記交点と
交点との間にも、例えば直径９ｍｍ、長さ３０ｃｍ程度
のアンカー（図示してない）を法面５に打ち込み、交点
におけると同様に鉄筋８をアンカーに結束するのがよ
い。

【００１３】そして、鉄筋８からなる格子枠の各辺のほ
ぼ中央に前記検測枠Ｋを、その弓状部材１が鉄筋８を跨
ぐようにして、網状体６上に配置する（図１および図２
参照）。この検測枠Ｋは、モルタル等１１の吹き付け幅
および吹き付け高さの目安となるものであるから、格子
枠の各辺に少なくとも一つ設けてあればよく、この実施
例のように、辺の長さが１〜２ｍ、検測枠Ｋの長さＬが
４０〜５０ｃｍのときは、各辺に一つの検測枠Ｋを設け
るだけでよい。また、前記辺の長さがより大きくなった
ときは、前記寸法の検測枠Ｋを２以上設けてもよいが、
検測枠Ｋの長さＬをより大きく（例えば１．３〜１．５
ｍ程度）設定してもよい。

【００１４】以上のように構成した格子状鉄筋８に、例
えば含水率が７〜８％程度の低スランプのモルタル等１
１をモルタルガン機などの土木用吹付機（図示してな
い）によって吹き付ける。この場合、鉄筋８によって形
成される格子枠の各辺には、モルタル等１１の吹き付け
幅および吹き付け高さの目安となる検測枠Ｋが設けてあ
るので、この検測枠Ｋにしたがってモルタル等１１の吹
き付けを行うだけで、所定寸法のモルタル等よりなる格
子状法枠１２を容易に形成することができる。すなわ
ち、この実施例においては、下端幅３０〜３５ｃｍ、高
さ１０〜１５ｃｍ程度のモルタル等よりなる格子状法枠
１２を形成することができ、所定寸法および所定強度の
モルタル等よりなる格子状法枠１２を確実に形成できる
のである。なお、図１および図３において、符号１３は
モルタル等１１を吹き付けるためのノズルである。

【００１５】以上のようにして法面５に形成されたモル
タル等よりなる格子状法枠１２内に、土壌、有機質材、
保水材（土壌改良材）などと芝草、野草、低木類などの
種子とを混合してなる植生材料を動力吹付け機などを用
いて吹き付けて植生層１４（図１参照）を形成したり、
また、これに代えて、前記植生材料を粗目の袋体に充填
した植生袋（図示してない）を配置するなどして、従来
不可能とされていた岩盤法面などにも植生を導入するこ
とが可能となり、法面の景観の向上および植生の根や茎
などによる法面の恒久的安定に寄与するところが大き
い。

【００１６】この発明は、上述の実施例に限られるもの
ではなく、種々に変形して実施できる。例えば図５に示
すように、両端にフック部１５ａ，１５ｂを有する保持
部材１５を用い、この保持部材１５の一方のフック部１
５ａを弓状部材１に係合し、他方のフック部１５ｂによ
って、鉄筋８を網状体６とともに浮設保持するようにし
てもよい。この場合、保持部材１５が防錆加工を施した
針金から構成してあればよく、さらに、鉄筋８の浮設高
さを被り厚が規定値（５ｃｍまたはこれ以上）となるよ
うに、各部材の寸法を設定しておくことが望ましい。

【００１７】図６は、図５の実施例において、鉄筋８の
みを浮設保持した実施態様を示している。このようにし
た場合、格子状法枠１２での植生層１４が５ｃｍ未満の
場合、網状体６が吹き付け基材としての植生材料の流亡
防止材として有効に作用する。

【００１８】また、図７に示すように、適宜のスペーサ
１６を用いて、網状体６を浮設保持し、鉄筋８の被り厚
が規定値になるようにしてもよい。なお、前記スペーサ
１６としては、例えば本願出願人に係る昭和６３年意匠
登録願第４４１８号の「法面保護用ラススペーサー」
や、本願出願人に係る実公平５−４２１１８号公報の
「スペーサーピン」を用いることができる。

【００１９】そして、上記いずれの実施例においても、
連結部材２の設置高さは任意であるが、鉄筋８の被り厚
を確保した場合は、弓状部材１の高い位置に固定するの
が望ましい。また、例えば検測枠Ｋをプラスチックによ
って一体成形によって形成してもよい。さらに、弓状部
材１は３以上設けてあってもよい。さらにそして、一つ
の辺に設けられる鉄筋８は必ずしも１本でなくても複数
本でもよく、その場合、鉄筋の交点付近に４本の長目の
アンカーを法面４に打ち込み、鉄筋を井桁状に支承結束
し、これを一段あるいは数段重ねるようにしてもよい。

【００２０】

【発明の効果】以上説明したように、この発明において
は、法面に網状体を敷設した後、この網状体上に鉄筋を
格子状に配置し、この格子状鉄筋にモルタルまたはコン
クリートを吹き付けてモルタルまたはコンクリートより
なる格子状法枠を形成する現場打ち法枠工法において、
所定の高さと幅を有する弓状部材とこの弓状部材どうし
を連結する連結部材とからなり、モルタルまたはコンク
リートの吹き付け幅および吹き付け高さの目安となる検
測枠を、弓状部材が前記鉄筋を跨ぐようにして、適宜の
間隔をおいて配置した状態で、モルタルまたはコンクリ
ートを前記検測枠にしたがって吹き付けるようにしてい
るので、モルタルまたはコンクリートの吹き付けムラが
なくなり、鉄筋のまわりに所定の被り厚を有する規格通
りの寸法および強度を有するモルタルまたはコンクリー
トよりなる格子状法枠を容易に法面に形成することがで
きる。

【００２１】そして、前記弓状部材に沈み防止部を形成
した場合には、法面が盛土で形成されているような場合
であっても、検測枠の沈みを防止でき、前記モルタル等
よりなる格子状法枠を所定寸法に確実に形成できる。

【００２２】また、検測枠に鉄筋を浮設保持する保持部
材を着脱自在に設けてある場合には、鉄筋の保持位置が
より確実に行われる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の現場打ち法枠工法の一例を示す図で
ある。

【図２】前記工法の要部を示す図である。

【図３】前記工法の要部を示す正面図である。

【図４】前記工法で用いる検測枠の一例を示す斜視図で
ある。

【図５】前記工法で用いる検測枠の他の例を示す断面図
である。

【図６】図５で示した検測枠による鉄筋の他の浮設態様
を示す断面図である。

【図７】網状体の他の浮設態様を示す断面図である。

【符号の説明】

１…弓状部材、２…連結部材、４…沈み防止部、５…法
面、６…網状体、８…鉄筋、１１…モルタルまたはコン
クリート、１２…格子状法枠、１５…保持部材、Ｋ…検
測枠。

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 法面に網状体を敷設した後、この網状体
   上に鉄筋を格子状に配置し、この格子状鉄筋にモルタル
   またはコンクリートを吹き付けてモルタルまたはコンク
   リートよりなる格子状法枠を形成する現場打ち法枠工法
   において、所定の高さと幅を有する弓状部材とこの弓状
   部材どうしを連結する連結部材とからなり、モルタルま
   たはコンクリートの吹き付け幅および吹き付け高さの目
   安となる検測枠を、弓状部材が前記鉄筋を跨ぐようにし
   て、適宜の間隔をおいて配置した状態で、モルタルまた
   はコンクリートを前記検測枠にしたがって吹き付けるこ
   とを特徴とする現場打ち法枠工法。
2. 【請求項２】 弓状部材の両下端部を折曲して沈み防止
   部を形成してなる請求項１に記載の現場打ち法枠工法。
3. 【請求項３】 検測枠に鉄筋を浮設保持する保持部材を
   着脱自在に設けてなる請求項１または２に記載の現場打
   ち法枠工法。
4. 【請求項４】 検測枠を構成する部材が防錆加工を施し
   た針金からなる請求項１〜３のいずれかに記載の現場打
   ち法枠工法。