JP2717143B2 - 摩擦による建築物の振動抑制方法 - Google Patents

摩擦による建築物の振動抑制方法

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JP2717143B2 JP63151385A JP15138588A JP2717143B2 JP 2717143 B2 JP2717143 B2 JP 2717143B2 JP 63151385 A JP63151385 A JP 63151385A JP 15138588 A JP15138588 A JP 15138588A JP 2717143 B2 JP2717143 B2 JP 2717143B2
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Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 この発明は、建築物の柱と梁とで構成される架構の内
側に摩擦ダンパーを配置することで、この建築物の地震
動等の揺れを抑制する摩擦による建築物の振動抑制方法
に関するものである。
「従来の技術及びその課題」 近年、日本国内においても高層建築物が多数構築され
るようになっている。この場合、世界有数の地震国であ
る日本においては、大地震時において建築物の崩壊を防
止するといった耐震安全性の確保は勿論のこと、中小地
震等において建築物の揺れをできるだけ抑制する制震・
免震機能を建築物に持たせることで、居住者に与える心
理的不安感を緩和することが望まれている。
また、近年インテリジェントビルに代表されるよう
に、建築物内には電子計算機、OA機器、通信施設等の重
要機器が収納されることが多くなってきている。もし、
これらの重要機器が地震によって破壊されたならば、そ
れによる社会的影響は計り知れない大きいものがある
が、これらの重要機器はそれ自体がすべて耐震設計され
ているとは限らないため、建築物側で何等かの手段を講
じておく必要がある。
この発明は前記事情に鑑みてなされたもので、建築物
が地震動等によって揺れた際にこれを効率良く抑制する
ことの可能な摩擦による建築物の振動抑制方法の提供を
目的としている。
「課題を解決するための手段」 本発明は、建築物の柱と梁とで構成される架構内に交
叉されて配置されたブレースの交叉部に、積層された複
数枚の摩擦板が軸心を中心として相対的回動自在な状態
で圧接されて構成される摩擦ダンパーを配置し、建築物
が振動した際に前記ブレースに使用する軸力を用いて前
記摩擦板を互いに回動させると共に、これら摩擦板間の
摩擦力により建築物の振動を抑制するようにした建築物
の振動抑制方法であって、前記摩擦ダンパーにおける前
記各摩擦板の圧接面の外周縁部にそれら摩擦板の相対回
動に対して摩擦抵抗力を発揮する摩擦材を設けておくと
ともに、前記各摩擦板に対する各ブレースの連結点を前
記摩擦材の位置よりも内周側に設定しておき、前記建築
物が振動した際における前記ブレースの軸方向の変位を
前記摩擦材に対して拡大して与えるようにしたものであ
る。
「実施例」 以下、この発明の実施例について図面を参照して説明
する。
第1図ないし第3図は、この発明の一実施例に適用さ
れる摩擦ダンパーを示す図である。これら図において、
符号1は柱、符号2は梁であり、いずれも鉄骨で形成さ
れている。そして、これら1対の柱1、1及び梁2、2
で構成される架構内側の対角線L上には、一対のブレー
ス3、3が交叉されて配置されていると共に、これらブ
レース3、3の交叉部には、摩擦ダンパー4が配置され
ている。
この摩擦ダンパー4は、第2図ないし第3図に示すよ
うに、同軸上に配置された2枚の円板状の摩擦板5、5
から概略構成されている。摩擦板5の一方の面は、水平
面に形成された周縁部5aと、この周縁部5aよりも窪んで
形成された中央部5bとから構成されている。摩擦板5の
軸心にはこれを厚さ方向に貫通する貫通孔6が形成され
ている。これら摩擦板5、5の外径は略同一とされ、そ
の周縁部5a、5aを互いに接した状態で同軸上に配置さ
れ、かつ、これらの貫通孔6、6にボルト7、ナット8
が挿通、緊締されることで、相対的回動自在な状態で互
いに圧接されている。なお、これら摩擦板5、5の回動
をスムースにする目的で、ボルト7、ナット8と摩擦板
5、5との間にはグリースが塗布されたり、あるいは含
油軸受材が介在されたりするが、他の周知手段を用いて
も良いことは勿論である。
これら摩擦板5、5の相接する周縁部5a、5aの少なく
とも一方の面には、第4図に示すように、その周方向に
間隔をおいて摩擦材9、9、…が貼付されている。この
摩擦材9には、例えば燐青銅、真鍮、カーボングラファ
イト、焼結材等を薄板状に形成したものが用いられる
が、摩擦熱による焼き付け防止及び均質な摩擦力が得ら
れる材質であれば周知の材質から適宜選択されれば良
い。あるいは、摩擦力を向上させる目的でブレーキライ
ニング材を用いても良いことは勿論である。また、摩擦
材9の貼付面積及び貼付間隔も任意であり、摩擦ダンパ
ー4により得ようとする摩擦力に応じて適宜選択されれ
ば良い。
前記ブレース3は、それぞれ2本の斜材10、10に分割
構成されている。そして、摩擦ダンパー4は、これら4
本の斜材10、10、…を介して前記柱1、1及び梁2、2
に連結されている。斜材10は、その一端が柱・梁の接合
部Cに取り付けられたガセットプレート11にピン接合さ
れ、かつその他端がいずれか一方の摩擦板5の外面、す
なわち周縁部5aが形成されていない他方の面にボルト12
を介してピン接合されている。このボルト12と摩擦板5
との間にも、前述と同様に斜材10と摩擦板5との間の相
対的回動をスムースにする手段が講じられている。ブレ
ース3を構成する2本の斜材10、10は、それぞれ同一の
摩擦板5に連結され、その取付位置は、摩擦板5の軸心
を挾んで前記対角線Lから偏心した位置で、かつ、前記
摩擦材9を臨む位置より内側の位置とされている。
次に、前述の如き構成を用いて、この発明の一実施例
である摩擦による建築物の振動抑制方法について説明す
る。
摩擦ダンパー4が取り付けられた建築物に地震力が作
用すると、柱1、1及び梁2、2で構成される架構に変
形が生じ、ブレース3を構成する斜材10、10にそれぞれ
圧縮力又は引張力が作用する。例えば、第5図に示すよ
うに、斜材10、10に圧縮方向の軸力Pがそれぞれ生じた
とすると、斜材10、10の取付位置の偏心量をaとすれ
ば、一対の斜材10、10によって2aPの偶力が作用して摩
擦板5が一方向に回転(図示例の場合は右回り)する。
地震時に前記架構が変形すると、斜材10、10、…には引
張・圧縮の軸力が交互に作用するから、2枚の摩擦板
5、5はそれぞれ逆方向に回転する。そして、これら摩
擦板5、5の回転により相接する周縁部5a、5aの面(摩
擦材9、9表面)に摩擦力が発生するため、建築物の振
動エネルギーの一部がこの摩擦力に抗して摩擦板5、5
を回転させるエネルギーに消費され、このエネルギーは
摩擦材9、9での熱エネルギーに変換されて吸収され
る。よって、この実施例の建築物の振動抑制方法によれ
ば、建築物の振動エネルギーを摩擦ダンパー4における
摩擦板5、5(摩擦材9、9)の摩擦力で吸収すること
で、建築物の振動を抑制することができる。
ここで、摩擦板5への斜材10、10、…の取付位置が摩
擦材9、9、…の内側にあるので、摩擦板5の軸心から
摩擦材9までの距離をrとすれば、斜材10、…の軸方向
の移動は摩擦材9、…の面上においてr/a倍に拡大さ
れ、これにより前述した摩擦によるエネルギーの吸収効
率が向上する。すなわち、第5図に示すように、一方の
摩擦板5の回転角をθとすれば、摩擦材9、…の面上の
動きは2rθとなる。一例として、r/a=2とし、斜材1
0、10が摩擦板5の取付部においてそれぞれ1cmずつ変位
したとすれば、摩擦材9、…の相対すべり量は4cmにな
る。
回転角θによって失われるエネルギーEは、摩擦材
9、…に作用する圧力をP、摩擦計数をμとすれば、 E=2rθμP となる。すなわち、摩擦ダンパー4によって消費される
エネルギーは、回転角θと全圧力Pに比例する。この全
圧力Pは、摩擦板5、5を互いに連結するボルト7、ナ
ット8の締付け力によって導入される圧力である。従っ
て、これら摩擦板5、5に所定の軸力が導入されるよう
に、ボルト7、ナット8を締め付ける必要がある。実際
には、予め締付けトルクと軸力との較正試験を行い、所
定の締付けトルクによってボルト締めすることで、摩擦
板5、5に所定の軸力を導入する。しかし、この軸力を
正確に管理する必要がある場合には、例えば第7図に示
すように、ボルト7と摩擦板5との間にスプリング13等
の弾性部材を介在しておけば良い。
なお、第6図に、摩擦力F(=μP)とすべり量μθ
との履歴特性を示す。この履歴特性の面積が1サイクル
によって失われるエネルギーに相当する。図に示すよう
に、摩擦ダンパー4は他のオイルダンパー等の粘性ダン
パーや鋼棒ダンパー等の履歴ダンパーに比較して履歴特
性の面積が広く、従ってエネルギー吸収能も大きいこと
が特徴である。
なお、この発明の摩擦による建築物の振動抑制方法
は、その細部構成が前記実施例に限定されず、種々の変
形例が可能である。一例として、上記実施例における摩
擦板5、5の軸力の管理はスプリング13等を用いていた
が、例えば油圧制御により建築物の揺れに応じて適宜軸
力を与えれば、建築物に地震等による大振幅の揺れが発
生した時のみ大軸力を与えれば良く、しかも揺れが止ま
る寸前に軸力を弱めてやれば、摩擦板5、5同士がロッ
クする現象を抑えることができ大変好適である。
「発明の効果」 以上詳細に説明したように、この発明によれば、建築
物の柱と梁とで構成される架構内に交叉されて配置され
たブレースの交叉部に、複数枚の摩擦板が相対的回動自
在な状態で圧接されて構成される摩擦ダンパーを配置
し、建築物が振動した際に前記ブレースに作用する軸力
を用いて前記摩擦板を互いに回動させると共に、これら
摩擦板間の摩擦力により建築物の振動を抑制するような
建築物の振動抑制方法を構成したので、建築物に地震力
が作用すると摩擦板の相接する面に摩擦力が発生するた
め、建築物の振動エネルギーの一部が摩擦材での熱エネ
ルギーに変換されて吸収され、建築物の振動が抑制され
る。しかも、この発明においては、摩擦ダンパーにおけ
る各摩擦板の圧接面の外周縁部にそれら摩擦板の相対回
動に対して摩擦抵抗力を発揮する摩擦材を設けておくと
ともに、各摩擦板に対する各ブレースの連結点を摩擦材
の位置よりも内周側に設定しておくことにより、建築物
が振動した際におけるブレースの軸方向の変位を摩擦材
に対して拡大して与えるようにしたので、振動エネルギ
ーの吸収効率に優れるものであり、かつ、従来用いられ
ているオイルダンパー等の粘性ダンパーや鋼棒ダンパー
等の履歴ダンパーに比較して履歴特性の面積が広く、従
ってエネルギー吸収能も大きい。よって、この発明によ
れば、建築物が地震動等によって揺れた際にこれを効率
良く抑制することの可能な建築物の振動抑制方法を実現
することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図ないし第3図はこの発明の一実施例である摩擦に
よる建築物の振動抑制方法に用いられる摩擦ダンパーを
示す図であって、第1図は建築物に取り付けられた状態
を示す正面図、第2図は要部を拡大視した正面図、第3
図は第1図のIII−III′線に沿う矢視断面図、第4図は
摩擦材の取付状態を示す正面図、第5図は摩擦ダンパー
に作用する力を説明するための図、第6図は摩擦ダンパ
ーの履歴特性を示す図、第7図はこの発明の他の実施例
である摩擦による建築物の振動抑制方法に用いられる摩
擦ダンパーを示す断面図である。 1……柱、2……梁、3……ブレース、4……摩擦ダン
パー、5……摩擦板、9……摩擦材、10……斜材。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】建築物の柱と梁とで構成される架構内に交
    叉されて配置されたブレースの交叉部に、積層された複
    数枚の摩擦板が軸心を中心として相対的回動自在な状態
    で圧接されて構成される摩擦ダンパーを配置し、建築物
    が振動した際に前記ブレースに作用する軸力を用いて前
    記摩擦板を互いに回動させると共に、これら摩擦板間の
    摩擦力により建築物の振動を抑制するようにした建築物
    の振動抑制方法において、 前記摩擦ダンパーにおける前記各摩擦板の圧接面の外周
    縁部にそれら摩擦板の相対回動に対して摩擦抵抗力を発
    揮する摩擦材を設けておくとともに、前記各摩擦板に対
    する各ブレースの連結点を前記摩擦材の位置よりも内周
    側に設定しておき、前記建築物が振動した際における前
    記ブレースの軸方向の変位を前記摩擦材に対して拡大し
    て与えることを特徴とする摩擦による建築物の振動抑制
    方法。
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