JP2699326B2 - 車両用ベルト式無段変速機の油圧制御装置 - Google Patents
車両用ベルト式無段変速機の油圧制御装置Info
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Description
【発明の詳細な説明】
技術分野
本発明は車両用ベルト式無段変速機の油圧制御装置に
係り、特に高圧側の第1ライン油圧を速度比の定常偏差
に基づいて制御するようにした油圧制御装置に関するも
のである。 従来技術 一次側回転軸および二次側回転軸にそれぞれ設けられ
た一対の一次側可変プーリおよび二次側可変プーリと、
それら一対の可変プーリに巻き掛けられて動力を伝達す
る伝動ベルトと、前記一対の可変プーリの有効径をそれ
ぞれ変更する一対の一次側油圧シリンダおよび二次側油
圧シリンダとを備えた車両用ベルト式無段変速機が知ら
れている。そして、かかる車両用ベルト式無段変速機の
油圧制御装置として、(a)油圧源から作動油が供給さ
れる第1ライン油路内の油圧を第1ライン油圧に調圧す
る第1調圧弁と、(b)前記第1ライン油路内の作動油
を前記一次側油圧シリンダおよび二次側油圧シリンダの
一方に供給すると同時に他方内の作動油を第2ライン油
路へ流出させることにより、前記一次側可変プーリおよ
び二次側可変プーリの有効径を変化させて前記無段変速
機の速度比を調節する変速制御弁と、(c)前記第2ラ
イン油路内の油圧を前記第1ライン油圧よりも低い第2
ライン油圧に調圧する第2調圧弁と、(d)実際の速度
比が車両の運転状態に応じて求められた目標速度比と一
致するように、比例動作の制御式に従って前記変速制御
弁をフィードバック制御する速度比制御手段とを有する
ものが考えられている。例えば、本願出願人が先に出願
した特願昭61-37576号に記載されている装置はその一例
である。 このような油圧制御装置においては、第1ライン油圧
および第2ライン油圧が第1調圧弁および第2調圧弁に
よってそれぞれ調圧されるため、第1ライン油圧が速度
比変化速度すなわち変速応答性が充分に得られ且つ動力
損失が生じない必要且つ充分な値となるように第1調圧
弁を制御する一方、第2ライン油圧が伝動ベルトの滑り
が生じない必要且つ充分な値となるように第2調圧弁を
制御することにより、車両の動力損失をできるだけ低く
維持しつつ、速度比制御の充分な過渡応答特性が得られ
るようになる。 発明が解決しようとする問題点 ところで、かかる従来の油圧制御装置において前記第
1ライン油圧を調圧する際には、先ず、トルク伝達に必
要なベルト挟圧力を与える従動側可変プーリの推力を求
め、その推力値と、目標速度比およびエンジン出力トル
クに応じて予め定められた推力比、すなわち従動側可変
プーリの推力と駆動側可変プーリの推力との比率とに基
づいて駆動側可変プーリの推力を算出する。次に、この
駆動側可変プーリの推力算出値から駆動側油圧シリンダ
に必要な油圧を算出し、この油圧の算出値に余裕油圧を
加えて第1ライン油圧を決定し、この第1ライン油圧が
得られるように前記第1調圧弁を制御するようになって
いる。 ここで、前記速度比制御手段は比例動作の制御式、例
えば速度比制御値(変速制御弁の弁体の移動量に相当)
をV0、制御定数をK、目標速度比をe*、実際の速度比を
eとすると、V0=K(e*−e)/eに従って変速制御弁を
フィードバック制御するものであるため、(e*−e)/e
=V0/Kで表される定常偏差が生じ、この定常偏差を小さ
くする上で上記余裕油圧が必要となる。すなわち、前記
変速制御弁の出力油圧特性は、例えば第4図に示されて
いるようなもので、今、両油圧シリンダ内の油圧が○印
で示されている油圧においてある速度比が実現されてい
るとすると、その速度比と目標速度比との間にはΔV0に
対応する大きさの定常偏差が生じるのであるが、この定
常偏差は、第1ライン油圧Pl1を大きくすれば油圧特性
の傾斜が急になるため小さくなり、第1ライン油圧Pl1
を小さくすれば油圧特性の傾斜が緩やかになるため大き
くなるのである。しかし、第1ライン油圧Pl1を大きく
するとそれだけポンプの駆動損失も増大するため、上記
余裕油圧は、互いに相反する駆動損失と定常偏差との均
衡点において決定される。 一方、ベルト式無段変速機を構成する各部品の個体差
により、前記予め定められた推力比特性と実際の無段変
速機の特性とは必ずしも一致するものではなく、また、
実際の無段変速機の推力比特性は、摺動抵抗の変化や潤
滑油の劣化等に起因して少なからず経時変化するが、こ
のような経時変化を見込んで推力比特性を設定すること
は極めて困難である。また、第1調圧弁および第2調圧
弁を含む調圧システムの精度上の問題から、第1ライン
油圧や第2ライン油圧が必ずしも計算通りに調圧される
とは限らない。 したがって、速度比の定常偏差がある値より小さくな
るように制御しようとすると、上述した駆動側油圧シリ
ンダの油圧算出値の誤差や第1ライン油圧および第2ラ
イン油圧の調圧誤差等を見込んで上記余裕油圧を大き目
に設定しておく必要があった。このため、誤差の少ない
運転域や経時変化が起きていない時期においては不必要
に高い第1ライン油圧が用意されることとなり、ポンプ
の駆動損失、更にはエンジンの動力損失を招いて車両の
燃費が損なわれるという不都合があったのである。 問題点を解決するための手段 本発明は以上の事情を背景として為されたものであ
り、その要旨とするところは、前記(a)第1調圧弁
と、(b)変速制御弁と、(c)第2調圧弁と、(d)
速度比制御手段とを有する車両用ベルト式無段変速機の
油圧制御装置であって、(e)前記実際の速度比と前記
目標速度比との定常偏差が所定の目標偏差値と一致する
ように、前記第1ライン油圧を調圧する前記第1調圧弁
をフィートバック制御する第1のライン油圧制御手段
と、(f)前記速度比を検出する速度比検出手段と、
(g)エンジンの出力トルクを検出する出力トルク検出
手段と、(h)前記定常偏差が前記目標偏差値と略一致
した時のライン油圧の値を、前記速度比検出手段によっ
て検出される速度比および前記出力トルク検出手段によ
って検出される出力トルクと関連させて記憶装置に記憶
する記憶手段と、(i)前記速度比検出手段によって検
出された速度比および前記出力トルク検出手段によって
検出された出力トルクに基づいて前記記憶装置から前記
第1ライン油圧の値を読み出し、その第1ライン油圧の
値に基づいて前記第1調圧弁を制御する第2の第1ライ
ン油圧制御手段とを有することにある。 作用および発明の効果 すなわち、本発明は、前記第1調圧弁,変速制御弁お
よび第2調圧弁を有する油圧制御装置においては、第1
ライン油圧を大きくする程実際の速度比と目標速度比と
の定常偏差は小さくなることに着目し、その定常偏差を
制御量として目標偏差値と一致するように第1の第1イ
ラン油圧制御手段により第1調圧弁をフィードバック制
御することにより、第1ライン油圧を調圧するようにし
たのである。このようにすれば、定常偏差が目標偏差値
と一致させられることにより、第1ライン油圧はその目
標偏差値を含んだ速度比を実現するのに必要な最低限の
油圧に制御されるため、従来のように種々の誤差等を見
込んで余裕油圧を加算した油圧に制御する場合に比較し
て、ポンプの駆動損失、更にはエンジンの動力損失が低
減されて車両の燃費が向上させられる。 ここで、上記目標偏差値は、例えば、10モード走行な
どの車両の総合的な運転状態において、実験またはシミ
ュレーション等により所定の目的を達成する上で最適な
一定の速度比定常偏差を求め、その一定値を目標偏差値
として設定したり、種々の運転状態において要求される
定常偏差の最小値を目標偏差値として設定したりして
も、或いは無段変速機の速度比,エンジンの出力トル
ク,エンジン回転速度等によって定められる車両の運転
状態に応じて最適な目標偏差値をデータマップ,演算式
等により求めるようにしたするなど、種々の態様を採用
できる。 また、このようにすれば第1ライン油圧および第2ラ
イン油圧の調圧誤差に拘らず、実際の第1ライン油圧は
常に必要最低限の油圧に制御されるため、第1調圧弁お
よび第2調圧弁を含む調圧システムの調圧精度が低くて
も差支えない。また、速度比の定常偏差は変速制御弁の
特性によっても左右されるが、実際の速度比の定常偏差
に基づいて第1ライン油圧を調圧するため、かかる変速
制御弁の特性にばらつきがあっても影響を受けることは
ない。したがって、調圧システムや変速制御弁として必
ずしも高精度のものを採用する必要がなく、それ等の製
造コストの低減を図ることができる。 一方、このようにして速度比定常偏差が目標偏差値と
略一致させられた場合には、その時の第1ライン油圧の
値を、速度比検出手段によって検出される速度比および
出力トルク検出手段によって検出される出力トルクと関
連させて記憶装置に記憶するようになっているため、そ
の後に同じ運転状態すなわち同じ速度比および同じ出力
トルクとなった場合には、第2の第1ライン油圧制御手
段によりその記憶装置から対応する第1ライン油圧の値
を読み出して、その第1ライン油圧の値に基づいて第1
調圧弁を制御することにより、最適な第1ライン油圧を
速やかに実現することができる。すなちわ、目標偏差値
を含む速度比を実現するのに必要な最低限の油圧に第1
ライン油圧を直ちに調圧できるのであり、前記第1の第
1ライン油圧制御手段により常時フィードバック制御に
よって調圧する場合に比較し、一層効率的な燃費低減が
達成される。特に、変速時にフィードバック制御を行う
と第1ライン油圧は非常に大きくなってしまうため、変
速時にはフィードバック機能を制限または停止させる等
の必要があるのに対し、本発明においては変速時であっ
ても、第2の第1ライン油圧制御手段により第1ライン
油圧を必要最低限の油圧に調圧し得る利点がある。 なお、上記第1ライン油圧を記憶する際には、その第
1ライン油圧に遠心力による油圧増加分を加算して速度
比とエンジン出力トルクとの二次元マップから成る記憶
装置に記憶することが望ましい。これは、速度比とエン
ジン出力トルクが同じであっても、可変プーリの回転速
度が異なれば遠心力による推力が異なり、最適な第1ラ
イン油圧も変化してしまうため、第1ライン油圧の値を
そのまま記憶する場合には可変プーリの回転速度を含む
三次元マップを用いなければならず、大容量のメモリが
必要となって好ましくないからである。 実施例 以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明
する。 第1図において、車両に設けられたエンジン10の出力
はクラッチ12を介してベルト式無段変速機14の一次側回
転軸16へ伝達される。 ベルト式無段変速機14は、一次側回転軸16および二次
側回転軸18と、それら一次側回転軸16および二次側回転
軸18に取りつけられた有効径が可変な一次側可変プーリ
20および二次側可変プーリ22と、それら一次側可変プー
リ20および二次側可変プーリ22に巻き掛けられて動力を
伝達する伝動ベルト24と、一次側可変プーリ20および二
次側可変プーリ22の有効径を変更する一次側油圧シリン
ダ26および二次側油圧シリンダ28とを備えている。これ
ら一次側油圧シリンダ26および二次側油圧シリンダ28は
同等の受圧面積となるように形成されており、上記一次
側可変プーリ20および二次側可変プーリ22の外径が同等
とされてベルト式無段変速機14が小型となっている。そ
して、上記一次側可変プーリ20および二次側可変プーリ
22は、一次側回転軸16および二次側回転軸18にそれぞれ
固定された固定回転体31および32と、上記一次側回転軸
16および二次側回転軸18にそれぞれ相対回転不能かつ軸
方向の移動可能に設けられて前記固定回転31および32と
の間にV溝を形成する可動回転体34および36とから成
る。 上記ベルト式無段変速機14の二次側回転軸18からの出
力は、図示しない副変速機、差動歯車装置などを経て車
両の駆動輪へ伝達されるようになっている。 このように構成された車両の動力伝達装置を作動させ
るための油圧制御回路は以下に説明するように構成され
る。すなわち、図示しない還流路を経てオイルタンク38
に還流した作動油はストレーナ40および吸入油路41を介
してオイルポンプ42に吸引され、変速制御弁44の入力ポ
ート46および第1調圧弁48と接続された第1ライン油路
50へ圧送される。このオイルポンプ42は、本実施例の油
圧源を構成し、図示しない駆動軸を介して前記エンジン
10により駆動される。第1調圧弁48は、後述の第1駆動
信号VD1にしたがって第1ライン油路50内の作動油の一
部を第2ライン油路52へ流出させることにより第1ライ
ン油路50内の油圧(第1ライン油圧)を制御する。第2
ライン油路52は前記変速制御弁44の第1排出ポート54お
よび第2排出ポート56と第2調圧弁58とにそれぞれ制御
されている。第2調圧弁58は、後述の第2駆動信号VD2
にしたがって第2ライン油路52内の作動油の一部をドレ
ン油路60へ流出させることにより、その第2ライン油路
52内の油圧(第2ライン油圧)を前記第1ライン油圧よ
りも相対的に低い値に制御する。上記第1調圧弁48およ
び第2調圧弁58は、所謂電磁比例リリーフ弁から構成さ
れている。 前記変速制御弁44は、所謂比例制御用電磁弁であっ
て、前記入力ポート46,第1排出ポート54および第2排
出ポート56,前記一次側油圧シリンダ26および二次側油
圧シリンダ28に接続油路29および30を介してそれぞれ接
続された一対の第1出力ポート62および第2出力ポート
64にそれぞれ連通するようにバルブボデー65に形成され
たシリンダボア66と、そのシリンダボア66内に摺動可能
に嵌合された1本のスプール弁子68と、このスプール弁
子68の両端部から中立位置に向かって付勢することによ
りそのスプール弁子68を中立位置に保持する一対の第1
スプリング70および第2スプリング72と、上記スプール
弁子68の両端部にそれぞれ設けられてスプール弁子68を
第2スプリング72または第1スプリング70の付勢力に抗
して連続的に移動させる第1電磁ソレノイド74および第
2電磁ソレノイド76とを備えている。上記スプール弁子
68には4つのランド78,80,82,84が一端から順次形成さ
れているとともに、中間部に位置する一対のランド80お
よび82はスプール弁子68が中立位置にあるときスプール
弁子68の軸方向において前記第1出力ポート62および第
2出力ポート64と同じ位置に形成されている。また、シ
リンダボア66の内周面であって、スプール弁子68が中立
位置にあるとき一対のランド80および82と対向する位
置、すなわち上記第1出力ポート62および第2出力ポー
ト64がシリンダボア66の内周面に開口する位置には、そ
のランド80および82よりも僅かに大きい幅寸法の一対の
第1環状溝86および第2環状溝88が形成されている。こ
の第1環状溝86および第2環状溝88はランド80および82
との間で作動油の流通を制御するために連続的に流通断
面積が変化する絞りを形成している。 これにより、スプール弁子68が中立位置にあるときに
は、前記第1出力ポート62および第2出力ポート64が前
記入力ポート46および排出ポート54,56に僅かな流通面
積で均等に連通させられ、漏れを補充する程度の量の作
動油が一次側油圧シリンダ26および二次側油圧シリンダ
28に供給され、また、僅かな量の作動油が排出ポート5
4,56から流出させられる。 しかし、スプール弁子68が中立位置からその一軸方
向、たとえば第2電磁ソレノイド76に接近する方向(す
なわち図の右方向)へ移動させられるに伴って、第1出
力ポート62と第1排出ポート54との流通断面積が連続的
に増加させられる一方、第2出力ポート64と入力ポート
46との流通断面積が連続的に増加させられるので、第1
出力ポート62から一次側油圧シリンダ26へ出力する作動
油圧は、第2出力ポート64から二次側油圧シリンダ28へ
出力する作動油圧に比較して低くなる。このため、ベル
ト式無段変速機14における一次側油圧シリンダ26および
二次側油圧シリンダ28の推力の平衡が崩れるので、二次
側油圧シリンダ28内へ作動油が流入する一方、一次側油
圧シリンダ26内の作動油が流出し、ベルト式無段変速機
14の速度比e(二次側回転軸18の回転速度Nout/一次側
回転軸16の回転速度Nin)が小さくなる。 反対に、スプール弁子68が中立位置から第1電磁ソレ
ノイド74に接近する方向、すなわち図の左方向へ移動さ
せられるに伴って、第1出力ポート62と入力ポート46と
の流通断面積が連続的に増加させられる一方、第2出力
ポート64と第2排出ポート56との流通断面積が連続的に
増加させられるので、第1出力ポート62から一次側油圧
シリンダ26へ出力する作動油圧は、第2出力ポート64か
ら二次側油圧シリンダ28へ出力する作動油圧に比較して
高くなる。このため、ベルト式無段変速機14における一
次側油圧シリンダ26および二次側油圧シリンダ28の推力
の平衡が崩れるので、一次側油圧シリンダ26内へ作動油
が流入する一方、二次側油圧シリンダ28内の作動油が流
出し、ベルト式無段変速機14の速度比eが大きくなる。
このように、上記変速制御弁44は、油圧シリンダ26およ
び28の一方へ高圧の作動油を供給し他方へ低圧の作動油
を供給する切り換え弁機能と、連続的に作動油の流量を
調節する流量制御弁機能とを併有しているのである。 また、前記第2ライン油路52と一次側油圧シリンダ26
(接続油路29)との間には、作動油の流通を制限する絞
り110を備えた絞り油路112が接続されている一方、その
第2ライン油路52と二次側油圧シリンダ28(接続油路3
0)との間には、作動油の流通を制限する絞り114を備え
た絞り油路116が接続されている。これにより、それら
絞り油路112または絞り油路116を通して高圧側(駆動
側)の油圧シリンダ26または28から第2ライン油路52へ
作動油が流されるので、第4図に示すように、変速制御
弁44の出力油圧(一次側油圧シリンダ26の油圧Pinおよ
び二次側油圧シリンダ28の油圧Pout)がスプール弁子68
の中立位置において第2ライン油圧Pl2と近接させられ
る。したがって、低圧側(従動側)の油圧シリンダ26ま
たは28内の油圧PinまたはPoutが第2ライン油圧Pl2と略
一致させられるようになる。 一方、ベルト式無段変速機14には、一次側回転軸16の
回転速度Ninを検出するための第1回転センサ90、およ
び二次側回転軸18の回転速度Noutを検出するための第2
回転センサ92が設けられており、それら第1回転センサ
90および第2回転センサ92からは回転速度Ninを表す回
転信号SR1および回転速度Noutを表す回転信号SR2がコン
トローラ94へ出力される。また、エンジン10には、車両
の要求出力を表す量としてスロットル弁開度θthを検出
するためのスロットルセンサ96と、エンジン回転速度Ne
を検出するためのエンジン回転センサ98が設けられてお
り、それらスロットルセンサ96およびエンジン回転セン
サ98からはスロットル弁開度θthを表すスロットル信号
Sθおびエンジン回転速度Neを表す回転信号SEがコント
ローラ94へ出力される。 上記コントローラ94は、CPU102,ROM104,RAM106などを
含む所謂マイクロコンピュータである。上記CPU102は、
RAM106の記憶機能を利用しつつ予めROM104に記憶された
プログラムにしたがって入力信号を処理し、第1ライン
油圧および第2ライン油圧を制御するために第1調圧弁
48および第2調圧弁58へ第1駆動信号VD1および第2駆
動信号VD2をそれぞれ供給すると同時に、速度比eを制
御するために第1電磁ソレノイド74および第2電磁ソレ
ノイド76を駆動するための速度比信号RA1およびRA2をそ
れらに供給する。 以下、本実施例の作動を第2図および第3図のフロー
チャートにしたがって説明する。 先ず、ステップS1が実行されることにより、一次側回
転軸16の回転速度Nin,二次側回転軸18の回転速度
Nout,スロットル弁開度θth,エンジン回転速度Neが回
転信号SR1およびSR2,スロットル信号Sθ,回転軸SEに
基づいてRAM106に読み込まれる。次いで、ステップS2で
は予めROM104に記憶された次式(1)に従って上記回転
速度NinおよびNoutから実際の速度比eを算出する。こ
のステップS2は、前記回転センサ90,92と共に速度比検
出手段を構成している。また、ステップS3では、ROM104
に記載された次式(2)の関係からスロットル弁開度θ
thに基づいて一次側回転軸16の目標回転速度Nin *を決定
する。これは、例えば第5図に示すものであって、第6
図に示す最小燃費率曲線上でエンジン10が専ら作動する
ように予め求められたものである。そして、ステップS4
においては、次式(3)に従って上記目標回転速度Nin *
と実際の回転速度Noutから目標速度比e*を算出する。 e=Nout/Nin ・・・(1) Nin *=f(θth) ・・・(2) e*=Nout/Nin * ・・・(3) 続くステップS5では、予めROM104に記憶された比例動
作の制御式である次式(4)に従って速度比制御値V0を
算出する。後述のステップS26においては、この速度比
制御値V0が正である場合にはスプール弁子68が左方向へ
移動させられて二次側回転軸18の回転速度Noutが増加す
るように前記速度比信号RA2が出力され、負である場合
にはスプール弁子68が右方向へ移動させられて一次側回
転軸16の回転速度Ninが増加するように前記速度比信号R
A1が出力される。また、速度比制御値V0の大きさは速度
比信号RA1または速度比信号RA2の大きさ、すなわちスプ
ール弁子68の移動量に対応する。したがって、次式
(4)から明らかなように、上記速度比制御値V0は実際
の速度比eと目標速度比e*とを一致させるように決定さ
れるのである。なお、(4)式のKは制御定数である。 V0=K(e*−e)/e ・・・(4) 続くステップS6では、予めROM104に記憶された次式
(5)の関係からスロットル弁開度θthおよびエンジン
回転速度Neに基づいてエンジン10の実際の出力トルクTe
が決定される。このステップS6は、前記スロットルセン
サ96およびエンジン回転センサ98と共に出力トルク検出
手段を構成している。 Te=f(θth,Ne) ・・・(5) そして、ステップS7ではエンジン10の実際の出力トル
クTeが正であるか否か、すなわちエンジン10から動力が
出力されている正トルク状態かあるいはエンジンブレー
キ状態であるかが判断されるのである。このような判断
が必要な理由は、正トルク状態とエンジンブレーキ状態
とで動力伝達方向が異なるため油圧シリンダの速度比e
に対する油圧変化特性が変化するからである。たとえ
ば、第7図および第8図は正トルク状態およびエンジン
ブレーキ状態における一次側油圧シリンダ26内の油圧P
inおよび二次側油圧シリンダ28内の油圧Poutの油圧変化
特性をそれぞれ示しており、油圧Pinと油圧Poutとの大
小関係が反対となり、何れも駆動側の油圧が従動側の油
圧よりも大きくなっている。この現象は本来は一次側油
圧シリンダ26および二次側油圧シリンダ28の推力相互間
にて論じられるものであるが、本実施例では一次側油圧
シリンダ26および二次側油圧シリンダ28の受圧面積が同
等であるので、油圧の大小関係にそのまま現れているの
である。 ステップS7において出力トルクTeが正であると判断さ
れた場合には、続いてステップS8が実行されることによ
り、予めROM104に記憶された次式(6)の関係から、伝
動ベルト24に対する挟圧力を必要且つ充分に発生させる
ために必要な二次側油圧シリンダ28の推力Woutがエンジ
ン10の実際の出力トルクTeおよび実際の速度比eに基づ
いて算出され、ステップS9では次式(7)に従って上記
推力Wout,二次側油圧シリンダ28の受圧面積Aout,二次
側回転軸18の回転速度Noutに基づいて二次側油圧シリン
ダ28に供給すべき油圧、すなわち第2ライン油圧Pl2が
決定される。また、ステップS10では、次式(8)に従
って一次側回転軸16の回転速度Ninから一次側油圧シリ
ンダ26内における作動油の遠心力による油圧増加分(補
正油圧)Pcが算出される。 Wout=f(Te,e) ・・・(6) Pc=C1Nin 2 ・・・(8) 上記(6)式は伝動ベルト24の張力、すなわち伝動ベ
ルト24に対する挟圧力を必要かつ充分な値とするために
予め求められたものであり、推力Woutは出力トルクTeお
よび速度比eの商とともに比例的に増加させられる。ま
た、(7)式の関係において、第2項は回転速度Noutと
ともに増大する遠心力による油圧増加分を第1項から差
し引いて油圧Pl2を補正するためのものである。なお、
(7)式,(8)式のC2,C1は遠心力補正係数であり、
それぞれ二次側油圧シリンダ28,一次側油圧シリンダ26
の諸元および作動油の比重から予め決定される。 一方、前記ステップS7において車両がエンジンブレー
キ状態であると判断された場合には、ベルト式無段変速
機14における動力伝達方向が逆となるので、前記ステッ
プS8およびS9と略同様なステップS11およびS12が実行さ
れることにより、従動側の一次側油圧シリンダ26に供給
すべき油圧(第2ライン油圧)Pl2が決定される。すな
わち、先ずステップS11において、予めROM104に記憶さ
れた次式(9)に示す関係から出力トルクTe,速度比e
に基づいて最適な一次側油圧シリンダ26の推力Winが算
出され、続くステップS12では、次式(10)に従って上
記推力Win,一次側油圧シリンダ26の受圧面積Ain,一次
側回転軸16の回転速度Ninに基づいて第2ライン油圧Pl2
が決定されるのである。また、ステップS13では、次式
(11)に従って補正油圧Pcが二次側回転軸18の回転速度
Noutから算出される。 Win=f(Te,e) ・・・(9) PC=C2Nout 2 ・・・(11) このようにして、第2ライン油圧Pl2および補正油圧P
Cが決定されると、次にステップS14が実行され、予めRO
M104に記憶された次式(12)の関係から第2ライン油圧
制御値V2が決定される。これは、上記第2ライン油圧Pl
2が得られるように、第2調圧弁58の特性を考慮して記
憶されたデータマップ、或いは演算式などから求められ
る。 V2=f(Pl2) ・・・(12) その後、ステップS15が実行され、実際の速度比偏差
|e*−e|/eと目標偏差値εとの差が予め定められた一定
値Dより小さいか否かが判断される。この一定値Dは充
分に小さく設定されており、速度比偏差|e*−e|/eと目
標偏差値εとの差が一定値Dより小さい場合には、それ
等は略一致していることを意味する。ここで、目標偏差
値εは燃費が最小となる一定値であり、例えば、10モー
ド走行などの車両の総合的な運転状態において最良の燃
費が得られる値として、実験またはシミュレーション等
によって求めたり、或いは種々の運転状態において燃費
を最小とするのに要求される速度比偏差の最小値を目標
偏差値εとするなど、種々の手段によって設定される。 そして、上記ステップS15の判断がNOの場合、すなわ
ち実際の速度比偏差|e*−e|/eが未だ目標偏差値εと略
一致する状態でない場合には、次にステップS16が実行
され、無段変速機14が定常状態であるか変速状態である
かが判断される。これは、例えば目標速度比e*または速
度比eの変化率の絶対値|de*/dt|,|de/dt|がある値よ
り大きいか否か等により判断され、定常状態であると判
断された場合には続いてステップS17およびS18が実行さ
れる。 これ等のステップS17,S18は、上記速度比偏差(定常
偏差)|e*−e|/eが目標偏差値εと一致するように、第
1調圧弁48にて制御すべき第1ライン油圧Pl1を決定す
るため、それ等の偏差を制御量としてフィードバックを
かけるもので、ステップS17では次式(13)に従って比
例動作(P動作)項FPが算出され、ステップS18では次
式(14)に従って積分動作(I動作)項FIが算出され
る。なお、KP,KIはそれぞれ予め定められた正の比例定
数である。 このようにして比例動作項FPおよび積分動作項FIが求
められると、続いてステップS23が実行され、記憶装置
としてのRAM106に記憶されたマップから第1ライン油圧
(補正値)Pl1′が呼び出される。このマップは速度比
eと出力トルクTeとの二次元マップであり、フィードバ
ック制御により最適な第1ライン油圧Pl1が決定される
毎に、後述のステップS19,S20においてその第1ライン
油圧Pl1に遠心力による補正油圧PCを加算した油圧Pl1′
が記憶されるようになっている。なお、運転開始直後に
おいては、未だ最適な第1ライン油圧Pl1が決定されて
いないため、予めROM104に記憶された油圧Pl1′がRAM10
6のマップに転送されるようになっている。 そして、次のステップS24では、次式(15)に従って
上記呼び出された第1ライン油圧Pl1′から前記ステッ
プS10またはS13において算出された補正油圧PCが減算さ
れ、更に前記ステップS17,S18で算出された比例動作項F
Pおよび積分動作項FIが加算されて第1ライン油圧Pl1が
決定される。また、続くステップS25では、予めROM104
に記憶された次式(16)の関係から第1ライン油圧制御
値V1が決定される。これは、第1ライン油圧Pl1が得ら
れるように第1調圧弁48の特性を考慮して記憶されたデ
ータマップ、或いは演算式などから求められる。最後に
ステップS26が実行され、上記第1ライン油圧制御値V1
と共にそれ以前のステップにおいて決定された速度比制
御値V0および第2ライン油圧制御値V2が出力される。ス
テップS5およびS26は速度比制御手段に相当する。 Pl1=Pl1′−PC+FP+FI ・・・(15) V1=f(Pl1) ・・・(16) このようなステップが繰返されることにより、速度比
偏差|e*−e|/eは次第に目標偏差値εに接近させられ、
第1ライン油圧Pl1はその速度比eを実現するのに必要
な最低限の油圧に調圧される。すなわち、変速制御弁44
の出力油圧特性は前記第4図に示されているが、例えば
一次側油圧シリンダ26の油圧Pinおよび二次側油圧シリ
ンダ28の油圧Poutがそれぞれ○印で示す油圧においてあ
る速度比eが実現されているとすると、速度比制御値V0
はΔV0となり、このΔV0は前記(4)式にて表されると
ころから目標速度比e*と速度比eとの間にはΔV0に対応
する大きさの偏差|e*−e|/eが生じるが、この速度比偏
差|e*−e|/eは、第1ライン油圧Pl1を大きくすれば油
圧特性の傾斜が急になるため小さくなり、第1ライン油
圧Pl1を小さくすれば油圧特性の傾斜が緩やかになるた
め大きくなる。したがって、実際の第1ライン油圧Pl1
が本来あるべき値より小さい場合には、速度比偏差|e*
−e|/eは大きくなっているため|e*−e|/e−εは正の値
となり、前記比例動作項FP,積分動作項FIも正となって
第1ライン油圧Pl1は次第に上昇させられ、速度比偏差
|e*e|/eが小さくされて最終的に目標偏差値εと一致さ
せられる。また、実際の第1ライン油圧Pl1が本来ある
べき値より大きい場合には、速度比偏差|e*e|/eは小さ
くなっているため、|e*−e|/e−εは負の値となり、前
記比例動作項FP,積分動作項FIも負となって第1ライン
油圧Pl1は次第に下降させられ、速度比偏差|e*−e|/e
が大きくされて最終的に目標偏差値εと一致させられ
る。 そして、速度比偏差|e*−e|/eと目標偏差値εとが一
致させられた時には、実際の第1ライン油圧はその時の
運転状態において目標偏差値εを含んだ速度比eを実現
するのに必要な最低限の油圧値となる。すなわち、前記
ステップS17,S18,S23,S24,S25およびS26は、速度比偏差
|e*−e|/eが目標偏差値εと一致するように第1ライン
油圧を調圧するように第1調圧弁48をフィードバック制
御する作用を為しているのであり、第1の第1ライン油
圧制御手段に相当する。なお、本実施例では予めROM104
に記憶された油圧Pl1′が転送されるようになっている
ため、フィードバック制御による補正量が少なくて済
み、速度比偏差|e*−e|/eは比較的速やかに目標偏差値
εと一致させられる。 一方、このようにして速度比偏差|e*−e|/eと目標偏
差値εとが略一致させられ、それ等の差が一定値Dより
も小さくなると、前記ステップS15の判断はYESとなるた
め、ステップS19が実行される。このステップS19におい
ては、次式(17)に従ってその時の第1ライン油圧Pl1
に前記ステップS10またはS13で算出された補正油圧PCを
加算することにより、第1ライン油圧(補正値)Pl1′
が算出され、続いて実行されるステップS20において、
その第1ライン油圧Pl1′がその時の車両の運転状態と
関連させて、具体的には前記出力トルクTeと速度比eと
の二次元マップに記憶れさる。ステップS19およびS20は
記憶手段に相当する。 Pl1′=Pl1+PC ・・・(17) ここで、第1ライン油圧Pl1の値をそのまま記憶しよ
うとすると、出力トルクTe(または一次側回転トルクT
in),速度比e,エンジン回転速度Ne(または一次側回転
軸回転速度Nin)の三次元マップにて記憶する必要があ
る。これは、出力トルクTeと速度比eが同じであって
も、可変プーリ20,22の回転速度が異なれば遠心力によ
る推力が異なり、最適な第1ライン油圧Pl1も変化して
しまうからである。しかし、このような三次元マップは
大きなメモリ容量を必要とするため好ましくない。ステ
ップS19の油圧補正はこのような理由から為されたもの
であり、最適な第1ライン油圧Pl1に遠心力による推力
に相当する補正油圧PCを加算することにより、出力トル
クTeと速度比eとの二次元マップに記憶し得るようにし
たものである。なお、このような遠心力による油圧増加
分を補正し得るのは油圧シリンダ26,28の内の油圧Pin,
Poutに対してであり、それ等の油圧Pin,Poutより高圧
の第1ライン油圧Pl1に対しては厳密には適用し得ない
のであるが、上記のような方法を用いても誤差は僅かな
ものと考えられる。 このようにして第1ライン油圧Pl1′が二次元マップ
に記憶されると、次にステップS21およびS22が実行さ
れ、前記ステップS17,S18の比例動作項FP,積分動作項F
lが共に0とされるとともに、積分動作項Flの積分値を
記憶するメモリもリセットされる。これは、最適な第1
ライン油圧Pl1に対応するPl1′が二次元マップに記憶さ
れ、ステップS23においてはその油圧Pl1′が呼び出され
るため、最早フィードバックによる補正を必要としない
からである。 続いてステップS23,S24が実行され、上記第1ライン
油圧Pl1′が二次元マップから呼び出されるとともに、
前記(15)式に従って第1ライン油圧Pl1が決定され
る。この時、比例動作項FPおよび積分動作項FIは0であ
るため、第1ライン油圧Pl1は油圧Pl1′から補正油圧PC
を減算することによって決定されるが、このようにして
決定された第1ライン油圧Pl1は、その時の運転状態に
おいて速度比偏差|e*−e|/eが目標値偏差εと略一致す
る最適な油圧値である。そして、ステップS25,S26が実
行されることにより、前述したようにその第1ライン油
圧Pl1が得られるように第1調圧弁48が制御される。 また、前記ステップS16において無段変速機14が変速
状態であると判断された場合には、続いてステップS21,
S22が実行され、前述したように比例動作項FPおよび積
分動作項FIが共に0とされるとともに、積分動作項FIの
積分値を記憶するメモリもリセットされる。これは、そ
の後に定常状態となった場合に0の状態からフィードバ
ック制御をスタートさせるためである。 続いてステップS23以下が実行され、前述したように
二次元マップから第1ライン油圧Pl1′が呼び出され、
その油圧Pl1′から補正油圧PCが減算されることによ
り、その時の運転状態において最適な第1ライン油圧Pl
1が決定され、その第1ライン油圧Pl1が得られるように
第1調圧弁48が制御される。すなわち、本実施例におい
ては無段変速機14が変速状態にある場合で、第1ライン
油圧Pl1は二次元マップに記憶された第1ライン油圧P
l1′に基づいて最適な油圧値となるように時々刻々と制
御されるのである。なお、変速状態においては速度比偏
差|e*−e|/eが過大となり、前記比例動作項FP並びに積
分動作項FIは非常に大きくなるため、変速状態ではフィ
ードバック制御を行わないようになっている。 このように変速状態においても第1ライン油圧Pl1は
二次元マップに記憶された第1ライン油圧Pl1′に基づ
いて制御されるところから、その後定常状態となって
も、ステップS23の二次元マップに記憶されている第1
ライン油圧Pl1′が最適値である限り、第1ライン油圧P
l1は速度比偏差|e*−e|/eが目標偏差値εと略一致する
最適な油圧値に制御される。したがって、定常状態にお
いても通常はステップS15の判断がYESとなり、フィード
バック制御が行われることはなく、二次元マップに記憶
された第1ライン油圧Pl1′のみに基づいて第1ライン
油圧Pl1は決定される。このため、フィードバック制御
によって徐々に第1ライン油圧Pl1を補正する場合に比
較して、速度比偏差|e*−e|/eを目標偏差値εと一致さ
せるまでの時間が短縮される。前記ステップS21,S22,S2
3,S24,S25,S26は第2の第1ライン油圧制御手段に相当
する。 しかし、二次元マップに記憶された第1ライン油圧Pl
1′が不適当で、その第1ライン油圧Pl1′のみに基づい
て決定された第1ライン油圧Pl1では、速度比偏差|e*
−e|/eが目標偏差値εと一致しない場合には、ステップ
S15の判断はNOとなってフィードバック制御が行われ
る。そして、このフィードバック制御により速度比偏差
|e*−e|/eが目標偏差値εと略一致させられると、前記
ステップS19,S20が実行され、その時の第1ライン油圧P
l1に補正油圧PCを加算することによって算出された新た
な第1ライン油圧Pl1′が二次元マップに記憶される。
このため、例えば運転開始直後の冷間時と充分に暖機さ
れた後の作動油の粘度の違いにより変速制御弁44の油圧
特性に変動があった場合,変速制御弁44や第1調圧弁48
に経時変化があって調圧精度が変化した場合,その他何
等かの理由により異常な値が第1ライン油圧Pl1′とし
て記憶された場合等においても、第1ライン油圧Pl1′
はその運転状態における最適値に逐次書き換えられ、そ
の第1ライン油圧Pl1′に基づいて決定される第1ライ
ン油圧Pl1は、常に速度比偏差|e*−e|/eを目標偏差値
εと一致させるのに必要な最低限の油圧に制御されるこ
ととなる。 このように、本実施例においては、速度比偏差|e*−
e|/eが目標偏差値εと一致するように第1調圧弁48がフ
ィードバック制御されるため、その第1調圧弁48によっ
て調圧される実際の第1ライン油圧は、その目標偏差値
εを含む速度比eを実現するのに必要最低の油圧値とさ
れ、ポンプ42の駆動損失、更にはエンジン10の動力損失
が低減されて、車両の燃費が向上させられるのである。
特に、本実施例では目標偏差値εが、車両の燃費を最小
とする値に設定されているため、車両の燃費は大幅に向
上する。 また、速度比偏差|e*−e|/eに基づいて第1ライン油
圧を調圧するようになっているため、第1調圧弁48,第
2調圧弁56を含む調圧システムにおいて第1ライン油
圧,第2ライン油圧の調圧誤差があったり、変速制御弁
44の特性のばらつきがあったりしても、実際の第1ライ
ン油圧は常に必要最低限の油圧値に制御される。すなわ
ち、第1ライン油圧制御値V1と実際の第1ライン油圧と
の間に一定の相関関係が確保されていれば、油圧の絶対
値はそれ程正確でなくても差支えないのである。したが
って、調圧システムや変速制御弁44として必ずしも高精
度のものを採用する必要がなく、それ等の製造コストの
低減を図ることができるのである。 一方、上記フィードバック制御により速度比偏差|e*
−e|/eが目標偏差値εと略一致させられた場合には、そ
の時の第1ライン油圧Pl1に補正油圧Pcを加算した油圧P
l1′を出力トルクTeと速度比eとの二次元マップに記憶
し、その後に同じ運転状態となった時にはその記憶され
た油圧Pl1′に基づいて第1ライン油圧Pl1を決定するよ
うになっているため、第1ライン油圧Pl1は目標偏差値
εを含む速度比eを実現する最適な油圧値に直ちに調圧
されることとなり、常時フィードバック制御によって調
圧する場合に比較して一層効率的な燃費低減が達成され
る。 特に、本実施例では無段変速機14が変速状態にある場
合でも、第1ライン油圧Pl1は二次元マップに記憶され
た油圧Pl1′に基づいて最適な油圧値に制御されるた
め、変速時におけるポンプ42の駆動損失が大幅に低減さ
れる利点がある。因に第9図は、スロットル弁開度θth
を小さくした時、すなわち速度比eが大きくなる増速変
速時における第1ライン油圧Pl1の変化わ示す図で、実
際は本実施例によるものであり、一点鎖線は速度比偏差
に基づいてPI動作によりフィードバック制御した場合、
二点鎖線は積分動作項FIの加算機能を停止し、且つ比例
動作項FPのゲインを減少させることにより一次的にフィ
ードバックの働きを制限した場合である。かかる第9図
から明らかなように、本実施例では変速中の各速度比に
おいて必要最低限の油圧値に制御されるが、フィードバ
ック制御よる場合には必要以上の油圧となってポンプ42
の駆動損失を生じるのである。 また、本実施例では二次元マップに記憶された第1ラ
イン油圧Pl1′に基づいて決定された第1ライン油圧Pl1
では速度比偏差|e*−e|/eと目標偏差値εとが一致しな
い場合には、その第1ライン油圧Pl1′が逐次書き換え
られるようになっているため、第1調圧弁48の調圧精度
が変化した場合等においても、常に最適な第1ライン油
圧Pl1が直ちに実現される利点がある。 これに対し、従来は、例えば正トルク状態の場合には
次式(18)〜(21)に従って第1ライン油圧Pl1を決定
していた。すなわち、先ず、予めROM104に記憶された
(18)式の関係から目標速度比e*およびエンジン10の出
力トルクTeに基づいて推力比γ+(二次側油圧シリンダ2
8の推力Wout/一次側油圧シリンダ26の推力Winを算出す
るとともに、(19)式から上記推力比γ+および二次側
油圧シリンダ28の推力Woutから一次側油圧シリンダ26の
推力Winを求める。次に、(20)式から一次側油圧シリ
ンダ26の推力Win,一次側油圧シリンダ26の受圧面積
Ain,一次側回転軸16の回転速度Ninに基づいて、目標速
度比e*の実現する上において一次側油圧シリンダ26に必
要な油圧Pinを算出し、更に(21)式に従って油圧Pinに
余裕油圧ΔP1を加算することにより第1ライン油圧Pl1
を決定していたのである。 γ+=f(e*,Te) ・・・(18) Pl1=Pin+ΔP1 ・・・(21) ここで、上記(21)式の余裕油圧ΔP1は、速度比の定
常偏差|e*−e|/eを小さくする上で必要なものである。
すなわち、本実施例においては、前記第4図に示されて
いるように常にΔV0に対応する定常偏差|e*−e|/eを生
じるのであるが、この定常偏差|e*−e|/eは、第1ライ
ン油圧Pl1を大きくすれば油圧特性の傾斜が急になるた
め小さくなり、第1ライン油圧Pl1を小さくすれば油圧
特性の傾斜が緩やかになるため大きくなるのである。し
かし、第1ライン油圧Pl1を大きくするとそれだれポン
プ42の駆動損失も増大するため、上記余裕油圧ΔP1は、
互いに相反する駆動損失と定常偏差との均衡点において
決定されることとなる。 一方、上記(18)式〜(20)式により求められる油圧
Pinは、無段変速機14を構成する各部品の個体差や経時
変化、或いは第1調圧弁48の調圧誤差等により、必ずし
も目標速度比e*における一次側油圧シリンダ26の実際の
油圧と完全に一致するとは限らない。したがって、定常
偏差|e*−e|/eが常にある値より小さくなるように制御
しようとすると、上記算出された油圧Pinの算出誤差や
第1調圧弁48の調圧誤差等を見込んで余裕油圧ΔP1を大
き目に設定しておく必要があった。このため、誤差の少
ない運転域や経時変化が起きていない時期においては不
必要に高い第1ライン油圧Pl1が用意されることとな
り、ポンプ42の駆動損失、更にはエンジン10の動力損失
を招いて車両の燃費が損なわれていたのである。 以上、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明
したが、本発明は他の態様で実施することもできる。 例えば、前記実施例では運転開始直後等において最適
な第1ライン油圧Pl1が未だ実現されていない場合に
は、予めROM104に記憶された油圧Pl1′がRAM106の二次
元マップに転送されるようになっているが、従来のよう
に(18)式〜(21)式にて求めた第1ライン油圧(算出
値)Pl1を用いたり、或はフィードバック制御のみによ
って第1ライン油圧Pl1を決定したりすることもでき
る。フィードバック制御のみで決定する場合には、ハン
チングを防止するため微粉動作(D動作)項を加えるこ
とが望ましい。 また、前記実施例のフィードバック制御は所謂PI動作
によって第1ライン油圧Pl1を決定するようになってい
るが、P動作,I動作の何れか一方のみに基づいて制御す
ることも可能である。 また、前記実施例では定常偏差として偏差|e*−e|/e
が用いられているが、|e*−e|を制御量としてフィード
バック制御することも可能である。 また、前記実施例ではマップに記憶された第1ライン
油圧Pl1′が逐次最適な油圧に書き換えられるようにな
っているが、一度最適な第1ライン油圧Pl1′が記憶さ
れた後は、その値を書き換えることなく常にその油圧Pl
1′に基づいて第1ライン油圧Pl1を決定するようにして
も差支えない。 また、前記実施例では第1ライン油圧Pl1に遠心力に
よる補正油圧PCを加算した油圧Pl1′を出力トルクTeと
速度比eとの二次元マップに記憶するようになっている
が、出力トルクTe,速度比eおよびエンジン回転速度Ne
から成る三次元マップ等に第1ライン油圧Pl1をそのま
ま記憶することも可能である。 また、前記実施例では目標偏差値εが車両の燃費を最
小とする一定値に設定されているが、この目標偏差値ε
は目標に応じて適宜設定されるものであり、また、車両
まの運転状態に応じて最適な目標偏差値εをデータマッ
プ,演算式等により求めるようにすることもできる。 さらに、前記実施例では速度比偏差|e*−e|/eに基づ
いてフィードバック制御するようになっているが、二次
側回転軸18の回転速度Noutが定まれば速度比eと一次側
回転軸16の回転速度Ninとは一定の関係になるため、そ
の回転速度Ninと目標回転速度Nin *との定常偏差|Nin−
Nin *|/Nin *に基づいてフィードバック制御することによ
り、速度比偏差|e*−e|/eを目標偏差値εと一致させる
ようにすることも可能である。 その他一々例示はしないが、本発明はその精神を逸脱
することなく当業者の知識に基づいて種々の変更,改良
を加えた態様で実施することができる。
係り、特に高圧側の第1ライン油圧を速度比の定常偏差
に基づいて制御するようにした油圧制御装置に関するも
のである。 従来技術 一次側回転軸および二次側回転軸にそれぞれ設けられ
た一対の一次側可変プーリおよび二次側可変プーリと、
それら一対の可変プーリに巻き掛けられて動力を伝達す
る伝動ベルトと、前記一対の可変プーリの有効径をそれ
ぞれ変更する一対の一次側油圧シリンダおよび二次側油
圧シリンダとを備えた車両用ベルト式無段変速機が知ら
れている。そして、かかる車両用ベルト式無段変速機の
油圧制御装置として、(a)油圧源から作動油が供給さ
れる第1ライン油路内の油圧を第1ライン油圧に調圧す
る第1調圧弁と、(b)前記第1ライン油路内の作動油
を前記一次側油圧シリンダおよび二次側油圧シリンダの
一方に供給すると同時に他方内の作動油を第2ライン油
路へ流出させることにより、前記一次側可変プーリおよ
び二次側可変プーリの有効径を変化させて前記無段変速
機の速度比を調節する変速制御弁と、(c)前記第2ラ
イン油路内の油圧を前記第1ライン油圧よりも低い第2
ライン油圧に調圧する第2調圧弁と、(d)実際の速度
比が車両の運転状態に応じて求められた目標速度比と一
致するように、比例動作の制御式に従って前記変速制御
弁をフィードバック制御する速度比制御手段とを有する
ものが考えられている。例えば、本願出願人が先に出願
した特願昭61-37576号に記載されている装置はその一例
である。 このような油圧制御装置においては、第1ライン油圧
および第2ライン油圧が第1調圧弁および第2調圧弁に
よってそれぞれ調圧されるため、第1ライン油圧が速度
比変化速度すなわち変速応答性が充分に得られ且つ動力
損失が生じない必要且つ充分な値となるように第1調圧
弁を制御する一方、第2ライン油圧が伝動ベルトの滑り
が生じない必要且つ充分な値となるように第2調圧弁を
制御することにより、車両の動力損失をできるだけ低く
維持しつつ、速度比制御の充分な過渡応答特性が得られ
るようになる。 発明が解決しようとする問題点 ところで、かかる従来の油圧制御装置において前記第
1ライン油圧を調圧する際には、先ず、トルク伝達に必
要なベルト挟圧力を与える従動側可変プーリの推力を求
め、その推力値と、目標速度比およびエンジン出力トル
クに応じて予め定められた推力比、すなわち従動側可変
プーリの推力と駆動側可変プーリの推力との比率とに基
づいて駆動側可変プーリの推力を算出する。次に、この
駆動側可変プーリの推力算出値から駆動側油圧シリンダ
に必要な油圧を算出し、この油圧の算出値に余裕油圧を
加えて第1ライン油圧を決定し、この第1ライン油圧が
得られるように前記第1調圧弁を制御するようになって
いる。 ここで、前記速度比制御手段は比例動作の制御式、例
えば速度比制御値(変速制御弁の弁体の移動量に相当)
をV0、制御定数をK、目標速度比をe*、実際の速度比を
eとすると、V0=K(e*−e)/eに従って変速制御弁を
フィードバック制御するものであるため、(e*−e)/e
=V0/Kで表される定常偏差が生じ、この定常偏差を小さ
くする上で上記余裕油圧が必要となる。すなわち、前記
変速制御弁の出力油圧特性は、例えば第4図に示されて
いるようなもので、今、両油圧シリンダ内の油圧が○印
で示されている油圧においてある速度比が実現されてい
るとすると、その速度比と目標速度比との間にはΔV0に
対応する大きさの定常偏差が生じるのであるが、この定
常偏差は、第1ライン油圧Pl1を大きくすれば油圧特性
の傾斜が急になるため小さくなり、第1ライン油圧Pl1
を小さくすれば油圧特性の傾斜が緩やかになるため大き
くなるのである。しかし、第1ライン油圧Pl1を大きく
するとそれだけポンプの駆動損失も増大するため、上記
余裕油圧は、互いに相反する駆動損失と定常偏差との均
衡点において決定される。 一方、ベルト式無段変速機を構成する各部品の個体差
により、前記予め定められた推力比特性と実際の無段変
速機の特性とは必ずしも一致するものではなく、また、
実際の無段変速機の推力比特性は、摺動抵抗の変化や潤
滑油の劣化等に起因して少なからず経時変化するが、こ
のような経時変化を見込んで推力比特性を設定すること
は極めて困難である。また、第1調圧弁および第2調圧
弁を含む調圧システムの精度上の問題から、第1ライン
油圧や第2ライン油圧が必ずしも計算通りに調圧される
とは限らない。 したがって、速度比の定常偏差がある値より小さくな
るように制御しようとすると、上述した駆動側油圧シリ
ンダの油圧算出値の誤差や第1ライン油圧および第2ラ
イン油圧の調圧誤差等を見込んで上記余裕油圧を大き目
に設定しておく必要があった。このため、誤差の少ない
運転域や経時変化が起きていない時期においては不必要
に高い第1ライン油圧が用意されることとなり、ポンプ
の駆動損失、更にはエンジンの動力損失を招いて車両の
燃費が損なわれるという不都合があったのである。 問題点を解決するための手段 本発明は以上の事情を背景として為されたものであ
り、その要旨とするところは、前記(a)第1調圧弁
と、(b)変速制御弁と、(c)第2調圧弁と、(d)
速度比制御手段とを有する車両用ベルト式無段変速機の
油圧制御装置であって、(e)前記実際の速度比と前記
目標速度比との定常偏差が所定の目標偏差値と一致する
ように、前記第1ライン油圧を調圧する前記第1調圧弁
をフィートバック制御する第1のライン油圧制御手段
と、(f)前記速度比を検出する速度比検出手段と、
(g)エンジンの出力トルクを検出する出力トルク検出
手段と、(h)前記定常偏差が前記目標偏差値と略一致
した時のライン油圧の値を、前記速度比検出手段によっ
て検出される速度比および前記出力トルク検出手段によ
って検出される出力トルクと関連させて記憶装置に記憶
する記憶手段と、(i)前記速度比検出手段によって検
出された速度比および前記出力トルク検出手段によって
検出された出力トルクに基づいて前記記憶装置から前記
第1ライン油圧の値を読み出し、その第1ライン油圧の
値に基づいて前記第1調圧弁を制御する第2の第1ライ
ン油圧制御手段とを有することにある。 作用および発明の効果 すなわち、本発明は、前記第1調圧弁,変速制御弁お
よび第2調圧弁を有する油圧制御装置においては、第1
ライン油圧を大きくする程実際の速度比と目標速度比と
の定常偏差は小さくなることに着目し、その定常偏差を
制御量として目標偏差値と一致するように第1の第1イ
ラン油圧制御手段により第1調圧弁をフィードバック制
御することにより、第1ライン油圧を調圧するようにし
たのである。このようにすれば、定常偏差が目標偏差値
と一致させられることにより、第1ライン油圧はその目
標偏差値を含んだ速度比を実現するのに必要な最低限の
油圧に制御されるため、従来のように種々の誤差等を見
込んで余裕油圧を加算した油圧に制御する場合に比較し
て、ポンプの駆動損失、更にはエンジンの動力損失が低
減されて車両の燃費が向上させられる。 ここで、上記目標偏差値は、例えば、10モード走行な
どの車両の総合的な運転状態において、実験またはシミ
ュレーション等により所定の目的を達成する上で最適な
一定の速度比定常偏差を求め、その一定値を目標偏差値
として設定したり、種々の運転状態において要求される
定常偏差の最小値を目標偏差値として設定したりして
も、或いは無段変速機の速度比,エンジンの出力トル
ク,エンジン回転速度等によって定められる車両の運転
状態に応じて最適な目標偏差値をデータマップ,演算式
等により求めるようにしたするなど、種々の態様を採用
できる。 また、このようにすれば第1ライン油圧および第2ラ
イン油圧の調圧誤差に拘らず、実際の第1ライン油圧は
常に必要最低限の油圧に制御されるため、第1調圧弁お
よび第2調圧弁を含む調圧システムの調圧精度が低くて
も差支えない。また、速度比の定常偏差は変速制御弁の
特性によっても左右されるが、実際の速度比の定常偏差
に基づいて第1ライン油圧を調圧するため、かかる変速
制御弁の特性にばらつきがあっても影響を受けることは
ない。したがって、調圧システムや変速制御弁として必
ずしも高精度のものを採用する必要がなく、それ等の製
造コストの低減を図ることができる。 一方、このようにして速度比定常偏差が目標偏差値と
略一致させられた場合には、その時の第1ライン油圧の
値を、速度比検出手段によって検出される速度比および
出力トルク検出手段によって検出される出力トルクと関
連させて記憶装置に記憶するようになっているため、そ
の後に同じ運転状態すなわち同じ速度比および同じ出力
トルクとなった場合には、第2の第1ライン油圧制御手
段によりその記憶装置から対応する第1ライン油圧の値
を読み出して、その第1ライン油圧の値に基づいて第1
調圧弁を制御することにより、最適な第1ライン油圧を
速やかに実現することができる。すなちわ、目標偏差値
を含む速度比を実現するのに必要な最低限の油圧に第1
ライン油圧を直ちに調圧できるのであり、前記第1の第
1ライン油圧制御手段により常時フィードバック制御に
よって調圧する場合に比較し、一層効率的な燃費低減が
達成される。特に、変速時にフィードバック制御を行う
と第1ライン油圧は非常に大きくなってしまうため、変
速時にはフィードバック機能を制限または停止させる等
の必要があるのに対し、本発明においては変速時であっ
ても、第2の第1ライン油圧制御手段により第1ライン
油圧を必要最低限の油圧に調圧し得る利点がある。 なお、上記第1ライン油圧を記憶する際には、その第
1ライン油圧に遠心力による油圧増加分を加算して速度
比とエンジン出力トルクとの二次元マップから成る記憶
装置に記憶することが望ましい。これは、速度比とエン
ジン出力トルクが同じであっても、可変プーリの回転速
度が異なれば遠心力による推力が異なり、最適な第1ラ
イン油圧も変化してしまうため、第1ライン油圧の値を
そのまま記憶する場合には可変プーリの回転速度を含む
三次元マップを用いなければならず、大容量のメモリが
必要となって好ましくないからである。 実施例 以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明
する。 第1図において、車両に設けられたエンジン10の出力
はクラッチ12を介してベルト式無段変速機14の一次側回
転軸16へ伝達される。 ベルト式無段変速機14は、一次側回転軸16および二次
側回転軸18と、それら一次側回転軸16および二次側回転
軸18に取りつけられた有効径が可変な一次側可変プーリ
20および二次側可変プーリ22と、それら一次側可変プー
リ20および二次側可変プーリ22に巻き掛けられて動力を
伝達する伝動ベルト24と、一次側可変プーリ20および二
次側可変プーリ22の有効径を変更する一次側油圧シリン
ダ26および二次側油圧シリンダ28とを備えている。これ
ら一次側油圧シリンダ26および二次側油圧シリンダ28は
同等の受圧面積となるように形成されており、上記一次
側可変プーリ20および二次側可変プーリ22の外径が同等
とされてベルト式無段変速機14が小型となっている。そ
して、上記一次側可変プーリ20および二次側可変プーリ
22は、一次側回転軸16および二次側回転軸18にそれぞれ
固定された固定回転体31および32と、上記一次側回転軸
16および二次側回転軸18にそれぞれ相対回転不能かつ軸
方向の移動可能に設けられて前記固定回転31および32と
の間にV溝を形成する可動回転体34および36とから成
る。 上記ベルト式無段変速機14の二次側回転軸18からの出
力は、図示しない副変速機、差動歯車装置などを経て車
両の駆動輪へ伝達されるようになっている。 このように構成された車両の動力伝達装置を作動させ
るための油圧制御回路は以下に説明するように構成され
る。すなわち、図示しない還流路を経てオイルタンク38
に還流した作動油はストレーナ40および吸入油路41を介
してオイルポンプ42に吸引され、変速制御弁44の入力ポ
ート46および第1調圧弁48と接続された第1ライン油路
50へ圧送される。このオイルポンプ42は、本実施例の油
圧源を構成し、図示しない駆動軸を介して前記エンジン
10により駆動される。第1調圧弁48は、後述の第1駆動
信号VD1にしたがって第1ライン油路50内の作動油の一
部を第2ライン油路52へ流出させることにより第1ライ
ン油路50内の油圧(第1ライン油圧)を制御する。第2
ライン油路52は前記変速制御弁44の第1排出ポート54お
よび第2排出ポート56と第2調圧弁58とにそれぞれ制御
されている。第2調圧弁58は、後述の第2駆動信号VD2
にしたがって第2ライン油路52内の作動油の一部をドレ
ン油路60へ流出させることにより、その第2ライン油路
52内の油圧(第2ライン油圧)を前記第1ライン油圧よ
りも相対的に低い値に制御する。上記第1調圧弁48およ
び第2調圧弁58は、所謂電磁比例リリーフ弁から構成さ
れている。 前記変速制御弁44は、所謂比例制御用電磁弁であっ
て、前記入力ポート46,第1排出ポート54および第2排
出ポート56,前記一次側油圧シリンダ26および二次側油
圧シリンダ28に接続油路29および30を介してそれぞれ接
続された一対の第1出力ポート62および第2出力ポート
64にそれぞれ連通するようにバルブボデー65に形成され
たシリンダボア66と、そのシリンダボア66内に摺動可能
に嵌合された1本のスプール弁子68と、このスプール弁
子68の両端部から中立位置に向かって付勢することによ
りそのスプール弁子68を中立位置に保持する一対の第1
スプリング70および第2スプリング72と、上記スプール
弁子68の両端部にそれぞれ設けられてスプール弁子68を
第2スプリング72または第1スプリング70の付勢力に抗
して連続的に移動させる第1電磁ソレノイド74および第
2電磁ソレノイド76とを備えている。上記スプール弁子
68には4つのランド78,80,82,84が一端から順次形成さ
れているとともに、中間部に位置する一対のランド80お
よび82はスプール弁子68が中立位置にあるときスプール
弁子68の軸方向において前記第1出力ポート62および第
2出力ポート64と同じ位置に形成されている。また、シ
リンダボア66の内周面であって、スプール弁子68が中立
位置にあるとき一対のランド80および82と対向する位
置、すなわち上記第1出力ポート62および第2出力ポー
ト64がシリンダボア66の内周面に開口する位置には、そ
のランド80および82よりも僅かに大きい幅寸法の一対の
第1環状溝86および第2環状溝88が形成されている。こ
の第1環状溝86および第2環状溝88はランド80および82
との間で作動油の流通を制御するために連続的に流通断
面積が変化する絞りを形成している。 これにより、スプール弁子68が中立位置にあるときに
は、前記第1出力ポート62および第2出力ポート64が前
記入力ポート46および排出ポート54,56に僅かな流通面
積で均等に連通させられ、漏れを補充する程度の量の作
動油が一次側油圧シリンダ26および二次側油圧シリンダ
28に供給され、また、僅かな量の作動油が排出ポート5
4,56から流出させられる。 しかし、スプール弁子68が中立位置からその一軸方
向、たとえば第2電磁ソレノイド76に接近する方向(す
なわち図の右方向)へ移動させられるに伴って、第1出
力ポート62と第1排出ポート54との流通断面積が連続的
に増加させられる一方、第2出力ポート64と入力ポート
46との流通断面積が連続的に増加させられるので、第1
出力ポート62から一次側油圧シリンダ26へ出力する作動
油圧は、第2出力ポート64から二次側油圧シリンダ28へ
出力する作動油圧に比較して低くなる。このため、ベル
ト式無段変速機14における一次側油圧シリンダ26および
二次側油圧シリンダ28の推力の平衡が崩れるので、二次
側油圧シリンダ28内へ作動油が流入する一方、一次側油
圧シリンダ26内の作動油が流出し、ベルト式無段変速機
14の速度比e(二次側回転軸18の回転速度Nout/一次側
回転軸16の回転速度Nin)が小さくなる。 反対に、スプール弁子68が中立位置から第1電磁ソレ
ノイド74に接近する方向、すなわち図の左方向へ移動さ
せられるに伴って、第1出力ポート62と入力ポート46と
の流通断面積が連続的に増加させられる一方、第2出力
ポート64と第2排出ポート56との流通断面積が連続的に
増加させられるので、第1出力ポート62から一次側油圧
シリンダ26へ出力する作動油圧は、第2出力ポート64か
ら二次側油圧シリンダ28へ出力する作動油圧に比較して
高くなる。このため、ベルト式無段変速機14における一
次側油圧シリンダ26および二次側油圧シリンダ28の推力
の平衡が崩れるので、一次側油圧シリンダ26内へ作動油
が流入する一方、二次側油圧シリンダ28内の作動油が流
出し、ベルト式無段変速機14の速度比eが大きくなる。
このように、上記変速制御弁44は、油圧シリンダ26およ
び28の一方へ高圧の作動油を供給し他方へ低圧の作動油
を供給する切り換え弁機能と、連続的に作動油の流量を
調節する流量制御弁機能とを併有しているのである。 また、前記第2ライン油路52と一次側油圧シリンダ26
(接続油路29)との間には、作動油の流通を制限する絞
り110を備えた絞り油路112が接続されている一方、その
第2ライン油路52と二次側油圧シリンダ28(接続油路3
0)との間には、作動油の流通を制限する絞り114を備え
た絞り油路116が接続されている。これにより、それら
絞り油路112または絞り油路116を通して高圧側(駆動
側)の油圧シリンダ26または28から第2ライン油路52へ
作動油が流されるので、第4図に示すように、変速制御
弁44の出力油圧(一次側油圧シリンダ26の油圧Pinおよ
び二次側油圧シリンダ28の油圧Pout)がスプール弁子68
の中立位置において第2ライン油圧Pl2と近接させられ
る。したがって、低圧側(従動側)の油圧シリンダ26ま
たは28内の油圧PinまたはPoutが第2ライン油圧Pl2と略
一致させられるようになる。 一方、ベルト式無段変速機14には、一次側回転軸16の
回転速度Ninを検出するための第1回転センサ90、およ
び二次側回転軸18の回転速度Noutを検出するための第2
回転センサ92が設けられており、それら第1回転センサ
90および第2回転センサ92からは回転速度Ninを表す回
転信号SR1および回転速度Noutを表す回転信号SR2がコン
トローラ94へ出力される。また、エンジン10には、車両
の要求出力を表す量としてスロットル弁開度θthを検出
するためのスロットルセンサ96と、エンジン回転速度Ne
を検出するためのエンジン回転センサ98が設けられてお
り、それらスロットルセンサ96およびエンジン回転セン
サ98からはスロットル弁開度θthを表すスロットル信号
Sθおびエンジン回転速度Neを表す回転信号SEがコント
ローラ94へ出力される。 上記コントローラ94は、CPU102,ROM104,RAM106などを
含む所謂マイクロコンピュータである。上記CPU102は、
RAM106の記憶機能を利用しつつ予めROM104に記憶された
プログラムにしたがって入力信号を処理し、第1ライン
油圧および第2ライン油圧を制御するために第1調圧弁
48および第2調圧弁58へ第1駆動信号VD1および第2駆
動信号VD2をそれぞれ供給すると同時に、速度比eを制
御するために第1電磁ソレノイド74および第2電磁ソレ
ノイド76を駆動するための速度比信号RA1およびRA2をそ
れらに供給する。 以下、本実施例の作動を第2図および第3図のフロー
チャートにしたがって説明する。 先ず、ステップS1が実行されることにより、一次側回
転軸16の回転速度Nin,二次側回転軸18の回転速度
Nout,スロットル弁開度θth,エンジン回転速度Neが回
転信号SR1およびSR2,スロットル信号Sθ,回転軸SEに
基づいてRAM106に読み込まれる。次いで、ステップS2で
は予めROM104に記憶された次式(1)に従って上記回転
速度NinおよびNoutから実際の速度比eを算出する。こ
のステップS2は、前記回転センサ90,92と共に速度比検
出手段を構成している。また、ステップS3では、ROM104
に記載された次式(2)の関係からスロットル弁開度θ
thに基づいて一次側回転軸16の目標回転速度Nin *を決定
する。これは、例えば第5図に示すものであって、第6
図に示す最小燃費率曲線上でエンジン10が専ら作動する
ように予め求められたものである。そして、ステップS4
においては、次式(3)に従って上記目標回転速度Nin *
と実際の回転速度Noutから目標速度比e*を算出する。 e=Nout/Nin ・・・(1) Nin *=f(θth) ・・・(2) e*=Nout/Nin * ・・・(3) 続くステップS5では、予めROM104に記憶された比例動
作の制御式である次式(4)に従って速度比制御値V0を
算出する。後述のステップS26においては、この速度比
制御値V0が正である場合にはスプール弁子68が左方向へ
移動させられて二次側回転軸18の回転速度Noutが増加す
るように前記速度比信号RA2が出力され、負である場合
にはスプール弁子68が右方向へ移動させられて一次側回
転軸16の回転速度Ninが増加するように前記速度比信号R
A1が出力される。また、速度比制御値V0の大きさは速度
比信号RA1または速度比信号RA2の大きさ、すなわちスプ
ール弁子68の移動量に対応する。したがって、次式
(4)から明らかなように、上記速度比制御値V0は実際
の速度比eと目標速度比e*とを一致させるように決定さ
れるのである。なお、(4)式のKは制御定数である。 V0=K(e*−e)/e ・・・(4) 続くステップS6では、予めROM104に記憶された次式
(5)の関係からスロットル弁開度θthおよびエンジン
回転速度Neに基づいてエンジン10の実際の出力トルクTe
が決定される。このステップS6は、前記スロットルセン
サ96およびエンジン回転センサ98と共に出力トルク検出
手段を構成している。 Te=f(θth,Ne) ・・・(5) そして、ステップS7ではエンジン10の実際の出力トル
クTeが正であるか否か、すなわちエンジン10から動力が
出力されている正トルク状態かあるいはエンジンブレー
キ状態であるかが判断されるのである。このような判断
が必要な理由は、正トルク状態とエンジンブレーキ状態
とで動力伝達方向が異なるため油圧シリンダの速度比e
に対する油圧変化特性が変化するからである。たとえ
ば、第7図および第8図は正トルク状態およびエンジン
ブレーキ状態における一次側油圧シリンダ26内の油圧P
inおよび二次側油圧シリンダ28内の油圧Poutの油圧変化
特性をそれぞれ示しており、油圧Pinと油圧Poutとの大
小関係が反対となり、何れも駆動側の油圧が従動側の油
圧よりも大きくなっている。この現象は本来は一次側油
圧シリンダ26および二次側油圧シリンダ28の推力相互間
にて論じられるものであるが、本実施例では一次側油圧
シリンダ26および二次側油圧シリンダ28の受圧面積が同
等であるので、油圧の大小関係にそのまま現れているの
である。 ステップS7において出力トルクTeが正であると判断さ
れた場合には、続いてステップS8が実行されることによ
り、予めROM104に記憶された次式(6)の関係から、伝
動ベルト24に対する挟圧力を必要且つ充分に発生させる
ために必要な二次側油圧シリンダ28の推力Woutがエンジ
ン10の実際の出力トルクTeおよび実際の速度比eに基づ
いて算出され、ステップS9では次式(7)に従って上記
推力Wout,二次側油圧シリンダ28の受圧面積Aout,二次
側回転軸18の回転速度Noutに基づいて二次側油圧シリン
ダ28に供給すべき油圧、すなわち第2ライン油圧Pl2が
決定される。また、ステップS10では、次式(8)に従
って一次側回転軸16の回転速度Ninから一次側油圧シリ
ンダ26内における作動油の遠心力による油圧増加分(補
正油圧)Pcが算出される。 Wout=f(Te,e) ・・・(6) Pc=C1Nin 2 ・・・(8) 上記(6)式は伝動ベルト24の張力、すなわち伝動ベ
ルト24に対する挟圧力を必要かつ充分な値とするために
予め求められたものであり、推力Woutは出力トルクTeお
よび速度比eの商とともに比例的に増加させられる。ま
た、(7)式の関係において、第2項は回転速度Noutと
ともに増大する遠心力による油圧増加分を第1項から差
し引いて油圧Pl2を補正するためのものである。なお、
(7)式,(8)式のC2,C1は遠心力補正係数であり、
それぞれ二次側油圧シリンダ28,一次側油圧シリンダ26
の諸元および作動油の比重から予め決定される。 一方、前記ステップS7において車両がエンジンブレー
キ状態であると判断された場合には、ベルト式無段変速
機14における動力伝達方向が逆となるので、前記ステッ
プS8およびS9と略同様なステップS11およびS12が実行さ
れることにより、従動側の一次側油圧シリンダ26に供給
すべき油圧(第2ライン油圧)Pl2が決定される。すな
わち、先ずステップS11において、予めROM104に記憶さ
れた次式(9)に示す関係から出力トルクTe,速度比e
に基づいて最適な一次側油圧シリンダ26の推力Winが算
出され、続くステップS12では、次式(10)に従って上
記推力Win,一次側油圧シリンダ26の受圧面積Ain,一次
側回転軸16の回転速度Ninに基づいて第2ライン油圧Pl2
が決定されるのである。また、ステップS13では、次式
(11)に従って補正油圧Pcが二次側回転軸18の回転速度
Noutから算出される。 Win=f(Te,e) ・・・(9) PC=C2Nout 2 ・・・(11) このようにして、第2ライン油圧Pl2および補正油圧P
Cが決定されると、次にステップS14が実行され、予めRO
M104に記憶された次式(12)の関係から第2ライン油圧
制御値V2が決定される。これは、上記第2ライン油圧Pl
2が得られるように、第2調圧弁58の特性を考慮して記
憶されたデータマップ、或いは演算式などから求められ
る。 V2=f(Pl2) ・・・(12) その後、ステップS15が実行され、実際の速度比偏差
|e*−e|/eと目標偏差値εとの差が予め定められた一定
値Dより小さいか否かが判断される。この一定値Dは充
分に小さく設定されており、速度比偏差|e*−e|/eと目
標偏差値εとの差が一定値Dより小さい場合には、それ
等は略一致していることを意味する。ここで、目標偏差
値εは燃費が最小となる一定値であり、例えば、10モー
ド走行などの車両の総合的な運転状態において最良の燃
費が得られる値として、実験またはシミュレーション等
によって求めたり、或いは種々の運転状態において燃費
を最小とするのに要求される速度比偏差の最小値を目標
偏差値εとするなど、種々の手段によって設定される。 そして、上記ステップS15の判断がNOの場合、すなわ
ち実際の速度比偏差|e*−e|/eが未だ目標偏差値εと略
一致する状態でない場合には、次にステップS16が実行
され、無段変速機14が定常状態であるか変速状態である
かが判断される。これは、例えば目標速度比e*または速
度比eの変化率の絶対値|de*/dt|,|de/dt|がある値よ
り大きいか否か等により判断され、定常状態であると判
断された場合には続いてステップS17およびS18が実行さ
れる。 これ等のステップS17,S18は、上記速度比偏差(定常
偏差)|e*−e|/eが目標偏差値εと一致するように、第
1調圧弁48にて制御すべき第1ライン油圧Pl1を決定す
るため、それ等の偏差を制御量としてフィードバックを
かけるもので、ステップS17では次式(13)に従って比
例動作(P動作)項FPが算出され、ステップS18では次
式(14)に従って積分動作(I動作)項FIが算出され
る。なお、KP,KIはそれぞれ予め定められた正の比例定
数である。 このようにして比例動作項FPおよび積分動作項FIが求
められると、続いてステップS23が実行され、記憶装置
としてのRAM106に記憶されたマップから第1ライン油圧
(補正値)Pl1′が呼び出される。このマップは速度比
eと出力トルクTeとの二次元マップであり、フィードバ
ック制御により最適な第1ライン油圧Pl1が決定される
毎に、後述のステップS19,S20においてその第1ライン
油圧Pl1に遠心力による補正油圧PCを加算した油圧Pl1′
が記憶されるようになっている。なお、運転開始直後に
おいては、未だ最適な第1ライン油圧Pl1が決定されて
いないため、予めROM104に記憶された油圧Pl1′がRAM10
6のマップに転送されるようになっている。 そして、次のステップS24では、次式(15)に従って
上記呼び出された第1ライン油圧Pl1′から前記ステッ
プS10またはS13において算出された補正油圧PCが減算さ
れ、更に前記ステップS17,S18で算出された比例動作項F
Pおよび積分動作項FIが加算されて第1ライン油圧Pl1が
決定される。また、続くステップS25では、予めROM104
に記憶された次式(16)の関係から第1ライン油圧制御
値V1が決定される。これは、第1ライン油圧Pl1が得ら
れるように第1調圧弁48の特性を考慮して記憶されたデ
ータマップ、或いは演算式などから求められる。最後に
ステップS26が実行され、上記第1ライン油圧制御値V1
と共にそれ以前のステップにおいて決定された速度比制
御値V0および第2ライン油圧制御値V2が出力される。ス
テップS5およびS26は速度比制御手段に相当する。 Pl1=Pl1′−PC+FP+FI ・・・(15) V1=f(Pl1) ・・・(16) このようなステップが繰返されることにより、速度比
偏差|e*−e|/eは次第に目標偏差値εに接近させられ、
第1ライン油圧Pl1はその速度比eを実現するのに必要
な最低限の油圧に調圧される。すなわち、変速制御弁44
の出力油圧特性は前記第4図に示されているが、例えば
一次側油圧シリンダ26の油圧Pinおよび二次側油圧シリ
ンダ28の油圧Poutがそれぞれ○印で示す油圧においてあ
る速度比eが実現されているとすると、速度比制御値V0
はΔV0となり、このΔV0は前記(4)式にて表されると
ころから目標速度比e*と速度比eとの間にはΔV0に対応
する大きさの偏差|e*−e|/eが生じるが、この速度比偏
差|e*−e|/eは、第1ライン油圧Pl1を大きくすれば油
圧特性の傾斜が急になるため小さくなり、第1ライン油
圧Pl1を小さくすれば油圧特性の傾斜が緩やかになるた
め大きくなる。したがって、実際の第1ライン油圧Pl1
が本来あるべき値より小さい場合には、速度比偏差|e*
−e|/eは大きくなっているため|e*−e|/e−εは正の値
となり、前記比例動作項FP,積分動作項FIも正となって
第1ライン油圧Pl1は次第に上昇させられ、速度比偏差
|e*e|/eが小さくされて最終的に目標偏差値εと一致さ
せられる。また、実際の第1ライン油圧Pl1が本来ある
べき値より大きい場合には、速度比偏差|e*e|/eは小さ
くなっているため、|e*−e|/e−εは負の値となり、前
記比例動作項FP,積分動作項FIも負となって第1ライン
油圧Pl1は次第に下降させられ、速度比偏差|e*−e|/e
が大きくされて最終的に目標偏差値εと一致させられ
る。 そして、速度比偏差|e*−e|/eと目標偏差値εとが一
致させられた時には、実際の第1ライン油圧はその時の
運転状態において目標偏差値εを含んだ速度比eを実現
するのに必要な最低限の油圧値となる。すなわち、前記
ステップS17,S18,S23,S24,S25およびS26は、速度比偏差
|e*−e|/eが目標偏差値εと一致するように第1ライン
油圧を調圧するように第1調圧弁48をフィードバック制
御する作用を為しているのであり、第1の第1ライン油
圧制御手段に相当する。なお、本実施例では予めROM104
に記憶された油圧Pl1′が転送されるようになっている
ため、フィードバック制御による補正量が少なくて済
み、速度比偏差|e*−e|/eは比較的速やかに目標偏差値
εと一致させられる。 一方、このようにして速度比偏差|e*−e|/eと目標偏
差値εとが略一致させられ、それ等の差が一定値Dより
も小さくなると、前記ステップS15の判断はYESとなるた
め、ステップS19が実行される。このステップS19におい
ては、次式(17)に従ってその時の第1ライン油圧Pl1
に前記ステップS10またはS13で算出された補正油圧PCを
加算することにより、第1ライン油圧(補正値)Pl1′
が算出され、続いて実行されるステップS20において、
その第1ライン油圧Pl1′がその時の車両の運転状態と
関連させて、具体的には前記出力トルクTeと速度比eと
の二次元マップに記憶れさる。ステップS19およびS20は
記憶手段に相当する。 Pl1′=Pl1+PC ・・・(17) ここで、第1ライン油圧Pl1の値をそのまま記憶しよ
うとすると、出力トルクTe(または一次側回転トルクT
in),速度比e,エンジン回転速度Ne(または一次側回転
軸回転速度Nin)の三次元マップにて記憶する必要があ
る。これは、出力トルクTeと速度比eが同じであって
も、可変プーリ20,22の回転速度が異なれば遠心力によ
る推力が異なり、最適な第1ライン油圧Pl1も変化して
しまうからである。しかし、このような三次元マップは
大きなメモリ容量を必要とするため好ましくない。ステ
ップS19の油圧補正はこのような理由から為されたもの
であり、最適な第1ライン油圧Pl1に遠心力による推力
に相当する補正油圧PCを加算することにより、出力トル
クTeと速度比eとの二次元マップに記憶し得るようにし
たものである。なお、このような遠心力による油圧増加
分を補正し得るのは油圧シリンダ26,28の内の油圧Pin,
Poutに対してであり、それ等の油圧Pin,Poutより高圧
の第1ライン油圧Pl1に対しては厳密には適用し得ない
のであるが、上記のような方法を用いても誤差は僅かな
ものと考えられる。 このようにして第1ライン油圧Pl1′が二次元マップ
に記憶されると、次にステップS21およびS22が実行さ
れ、前記ステップS17,S18の比例動作項FP,積分動作項F
lが共に0とされるとともに、積分動作項Flの積分値を
記憶するメモリもリセットされる。これは、最適な第1
ライン油圧Pl1に対応するPl1′が二次元マップに記憶さ
れ、ステップS23においてはその油圧Pl1′が呼び出され
るため、最早フィードバックによる補正を必要としない
からである。 続いてステップS23,S24が実行され、上記第1ライン
油圧Pl1′が二次元マップから呼び出されるとともに、
前記(15)式に従って第1ライン油圧Pl1が決定され
る。この時、比例動作項FPおよび積分動作項FIは0であ
るため、第1ライン油圧Pl1は油圧Pl1′から補正油圧PC
を減算することによって決定されるが、このようにして
決定された第1ライン油圧Pl1は、その時の運転状態に
おいて速度比偏差|e*−e|/eが目標値偏差εと略一致す
る最適な油圧値である。そして、ステップS25,S26が実
行されることにより、前述したようにその第1ライン油
圧Pl1が得られるように第1調圧弁48が制御される。 また、前記ステップS16において無段変速機14が変速
状態であると判断された場合には、続いてステップS21,
S22が実行され、前述したように比例動作項FPおよび積
分動作項FIが共に0とされるとともに、積分動作項FIの
積分値を記憶するメモリもリセットされる。これは、そ
の後に定常状態となった場合に0の状態からフィードバ
ック制御をスタートさせるためである。 続いてステップS23以下が実行され、前述したように
二次元マップから第1ライン油圧Pl1′が呼び出され、
その油圧Pl1′から補正油圧PCが減算されることによ
り、その時の運転状態において最適な第1ライン油圧Pl
1が決定され、その第1ライン油圧Pl1が得られるように
第1調圧弁48が制御される。すなわち、本実施例におい
ては無段変速機14が変速状態にある場合で、第1ライン
油圧Pl1は二次元マップに記憶された第1ライン油圧P
l1′に基づいて最適な油圧値となるように時々刻々と制
御されるのである。なお、変速状態においては速度比偏
差|e*−e|/eが過大となり、前記比例動作項FP並びに積
分動作項FIは非常に大きくなるため、変速状態ではフィ
ードバック制御を行わないようになっている。 このように変速状態においても第1ライン油圧Pl1は
二次元マップに記憶された第1ライン油圧Pl1′に基づ
いて制御されるところから、その後定常状態となって
も、ステップS23の二次元マップに記憶されている第1
ライン油圧Pl1′が最適値である限り、第1ライン油圧P
l1は速度比偏差|e*−e|/eが目標偏差値εと略一致する
最適な油圧値に制御される。したがって、定常状態にお
いても通常はステップS15の判断がYESとなり、フィード
バック制御が行われることはなく、二次元マップに記憶
された第1ライン油圧Pl1′のみに基づいて第1ライン
油圧Pl1は決定される。このため、フィードバック制御
によって徐々に第1ライン油圧Pl1を補正する場合に比
較して、速度比偏差|e*−e|/eを目標偏差値εと一致さ
せるまでの時間が短縮される。前記ステップS21,S22,S2
3,S24,S25,S26は第2の第1ライン油圧制御手段に相当
する。 しかし、二次元マップに記憶された第1ライン油圧Pl
1′が不適当で、その第1ライン油圧Pl1′のみに基づい
て決定された第1ライン油圧Pl1では、速度比偏差|e*
−e|/eが目標偏差値εと一致しない場合には、ステップ
S15の判断はNOとなってフィードバック制御が行われ
る。そして、このフィードバック制御により速度比偏差
|e*−e|/eが目標偏差値εと略一致させられると、前記
ステップS19,S20が実行され、その時の第1ライン油圧P
l1に補正油圧PCを加算することによって算出された新た
な第1ライン油圧Pl1′が二次元マップに記憶される。
このため、例えば運転開始直後の冷間時と充分に暖機さ
れた後の作動油の粘度の違いにより変速制御弁44の油圧
特性に変動があった場合,変速制御弁44や第1調圧弁48
に経時変化があって調圧精度が変化した場合,その他何
等かの理由により異常な値が第1ライン油圧Pl1′とし
て記憶された場合等においても、第1ライン油圧Pl1′
はその運転状態における最適値に逐次書き換えられ、そ
の第1ライン油圧Pl1′に基づいて決定される第1ライ
ン油圧Pl1は、常に速度比偏差|e*−e|/eを目標偏差値
εと一致させるのに必要な最低限の油圧に制御されるこ
ととなる。 このように、本実施例においては、速度比偏差|e*−
e|/eが目標偏差値εと一致するように第1調圧弁48がフ
ィードバック制御されるため、その第1調圧弁48によっ
て調圧される実際の第1ライン油圧は、その目標偏差値
εを含む速度比eを実現するのに必要最低の油圧値とさ
れ、ポンプ42の駆動損失、更にはエンジン10の動力損失
が低減されて、車両の燃費が向上させられるのである。
特に、本実施例では目標偏差値εが、車両の燃費を最小
とする値に設定されているため、車両の燃費は大幅に向
上する。 また、速度比偏差|e*−e|/eに基づいて第1ライン油
圧を調圧するようになっているため、第1調圧弁48,第
2調圧弁56を含む調圧システムにおいて第1ライン油
圧,第2ライン油圧の調圧誤差があったり、変速制御弁
44の特性のばらつきがあったりしても、実際の第1ライ
ン油圧は常に必要最低限の油圧値に制御される。すなわ
ち、第1ライン油圧制御値V1と実際の第1ライン油圧と
の間に一定の相関関係が確保されていれば、油圧の絶対
値はそれ程正確でなくても差支えないのである。したが
って、調圧システムや変速制御弁44として必ずしも高精
度のものを採用する必要がなく、それ等の製造コストの
低減を図ることができるのである。 一方、上記フィードバック制御により速度比偏差|e*
−e|/eが目標偏差値εと略一致させられた場合には、そ
の時の第1ライン油圧Pl1に補正油圧Pcを加算した油圧P
l1′を出力トルクTeと速度比eとの二次元マップに記憶
し、その後に同じ運転状態となった時にはその記憶され
た油圧Pl1′に基づいて第1ライン油圧Pl1を決定するよ
うになっているため、第1ライン油圧Pl1は目標偏差値
εを含む速度比eを実現する最適な油圧値に直ちに調圧
されることとなり、常時フィードバック制御によって調
圧する場合に比較して一層効率的な燃費低減が達成され
る。 特に、本実施例では無段変速機14が変速状態にある場
合でも、第1ライン油圧Pl1は二次元マップに記憶され
た油圧Pl1′に基づいて最適な油圧値に制御されるた
め、変速時におけるポンプ42の駆動損失が大幅に低減さ
れる利点がある。因に第9図は、スロットル弁開度θth
を小さくした時、すなわち速度比eが大きくなる増速変
速時における第1ライン油圧Pl1の変化わ示す図で、実
際は本実施例によるものであり、一点鎖線は速度比偏差
に基づいてPI動作によりフィードバック制御した場合、
二点鎖線は積分動作項FIの加算機能を停止し、且つ比例
動作項FPのゲインを減少させることにより一次的にフィ
ードバックの働きを制限した場合である。かかる第9図
から明らかなように、本実施例では変速中の各速度比に
おいて必要最低限の油圧値に制御されるが、フィードバ
ック制御よる場合には必要以上の油圧となってポンプ42
の駆動損失を生じるのである。 また、本実施例では二次元マップに記憶された第1ラ
イン油圧Pl1′に基づいて決定された第1ライン油圧Pl1
では速度比偏差|e*−e|/eと目標偏差値εとが一致しな
い場合には、その第1ライン油圧Pl1′が逐次書き換え
られるようになっているため、第1調圧弁48の調圧精度
が変化した場合等においても、常に最適な第1ライン油
圧Pl1が直ちに実現される利点がある。 これに対し、従来は、例えば正トルク状態の場合には
次式(18)〜(21)に従って第1ライン油圧Pl1を決定
していた。すなわち、先ず、予めROM104に記憶された
(18)式の関係から目標速度比e*およびエンジン10の出
力トルクTeに基づいて推力比γ+(二次側油圧シリンダ2
8の推力Wout/一次側油圧シリンダ26の推力Winを算出す
るとともに、(19)式から上記推力比γ+および二次側
油圧シリンダ28の推力Woutから一次側油圧シリンダ26の
推力Winを求める。次に、(20)式から一次側油圧シリ
ンダ26の推力Win,一次側油圧シリンダ26の受圧面積
Ain,一次側回転軸16の回転速度Ninに基づいて、目標速
度比e*の実現する上において一次側油圧シリンダ26に必
要な油圧Pinを算出し、更に(21)式に従って油圧Pinに
余裕油圧ΔP1を加算することにより第1ライン油圧Pl1
を決定していたのである。 γ+=f(e*,Te) ・・・(18) Pl1=Pin+ΔP1 ・・・(21) ここで、上記(21)式の余裕油圧ΔP1は、速度比の定
常偏差|e*−e|/eを小さくする上で必要なものである。
すなわち、本実施例においては、前記第4図に示されて
いるように常にΔV0に対応する定常偏差|e*−e|/eを生
じるのであるが、この定常偏差|e*−e|/eは、第1ライ
ン油圧Pl1を大きくすれば油圧特性の傾斜が急になるた
め小さくなり、第1ライン油圧Pl1を小さくすれば油圧
特性の傾斜が緩やかになるため大きくなるのである。し
かし、第1ライン油圧Pl1を大きくするとそれだれポン
プ42の駆動損失も増大するため、上記余裕油圧ΔP1は、
互いに相反する駆動損失と定常偏差との均衡点において
決定されることとなる。 一方、上記(18)式〜(20)式により求められる油圧
Pinは、無段変速機14を構成する各部品の個体差や経時
変化、或いは第1調圧弁48の調圧誤差等により、必ずし
も目標速度比e*における一次側油圧シリンダ26の実際の
油圧と完全に一致するとは限らない。したがって、定常
偏差|e*−e|/eが常にある値より小さくなるように制御
しようとすると、上記算出された油圧Pinの算出誤差や
第1調圧弁48の調圧誤差等を見込んで余裕油圧ΔP1を大
き目に設定しておく必要があった。このため、誤差の少
ない運転域や経時変化が起きていない時期においては不
必要に高い第1ライン油圧Pl1が用意されることとな
り、ポンプ42の駆動損失、更にはエンジン10の動力損失
を招いて車両の燃費が損なわれていたのである。 以上、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明
したが、本発明は他の態様で実施することもできる。 例えば、前記実施例では運転開始直後等において最適
な第1ライン油圧Pl1が未だ実現されていない場合に
は、予めROM104に記憶された油圧Pl1′がRAM106の二次
元マップに転送されるようになっているが、従来のよう
に(18)式〜(21)式にて求めた第1ライン油圧(算出
値)Pl1を用いたり、或はフィードバック制御のみによ
って第1ライン油圧Pl1を決定したりすることもでき
る。フィードバック制御のみで決定する場合には、ハン
チングを防止するため微粉動作(D動作)項を加えるこ
とが望ましい。 また、前記実施例のフィードバック制御は所謂PI動作
によって第1ライン油圧Pl1を決定するようになってい
るが、P動作,I動作の何れか一方のみに基づいて制御す
ることも可能である。 また、前記実施例では定常偏差として偏差|e*−e|/e
が用いられているが、|e*−e|を制御量としてフィード
バック制御することも可能である。 また、前記実施例ではマップに記憶された第1ライン
油圧Pl1′が逐次最適な油圧に書き換えられるようにな
っているが、一度最適な第1ライン油圧Pl1′が記憶さ
れた後は、その値を書き換えることなく常にその油圧Pl
1′に基づいて第1ライン油圧Pl1を決定するようにして
も差支えない。 また、前記実施例では第1ライン油圧Pl1に遠心力に
よる補正油圧PCを加算した油圧Pl1′を出力トルクTeと
速度比eとの二次元マップに記憶するようになっている
が、出力トルクTe,速度比eおよびエンジン回転速度Ne
から成る三次元マップ等に第1ライン油圧Pl1をそのま
ま記憶することも可能である。 また、前記実施例では目標偏差値εが車両の燃費を最
小とする一定値に設定されているが、この目標偏差値ε
は目標に応じて適宜設定されるものであり、また、車両
まの運転状態に応じて最適な目標偏差値εをデータマッ
プ,演算式等により求めるようにすることもできる。 さらに、前記実施例では速度比偏差|e*−e|/eに基づ
いてフィードバック制御するようになっているが、二次
側回転軸18の回転速度Noutが定まれば速度比eと一次側
回転軸16の回転速度Ninとは一定の関係になるため、そ
の回転速度Ninと目標回転速度Nin *との定常偏差|Nin−
Nin *|/Nin *に基づいてフィードバック制御することによ
り、速度比偏差|e*−e|/eを目標偏差値εと一致させる
ようにすることも可能である。 その他一々例示はしないが、本発明はその精神を逸脱
することなく当業者の知識に基づいて種々の変更,改良
を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例である車両用ベルト式無段変
速機の油圧制御装置の構成を示す図である。第2図およ
び第3図は第1図の実施例の作動を説明するためのフロ
ーチャートである。第4図は第1図の変速制御弁の出力
油圧特性を示す図である。第5図は第1図の実施例にお
けるスロットル弁開度と一次側回転軸目標回転速度との
関係を示す図である。第6図は第1図のエンジンの最小
燃費率曲線を示す図である。第7図および第8図は第1
図の実施例において速度比に対する各部の油圧の変化特
性をそれぞれ示す図であり、第7図は正トルク状態を、
第8図はエンジンブレーキ状態を示している。第9図は
第1図の実施例における速度比変化に対する第1ライン
油圧の変化を示す図で、フィードバック制御のみによる
場合も併せて示した図である。 14:ベルト式無段変速機 16:一次側回転軸、18:二次側回転軸 20:一次側可変プーリ 22:二次側可変プーリ 24:伝動ベルト 26:一次側油圧シリンダ 28:二次側油圧シリンダ 44:変速制御弁、48:第1調圧弁 58:第2調圧弁、94:コントローラ 90,92:回転センサ(速度比検出手段) 96:スロットルセンサ(出力トルク検出手段) 98:エンジン回転センサ(出力トルク検出手段) 106:RAM(記憶装置) ステップS2:速度比検出手段 ステップS5,S26:速度比制御手段 ステップS6:出力トルク検出手段 ステップS17,S18,S23〜S26:第1の第1ライン油圧制御
手段 ステップS19,S20:記憶手段 ステップS21〜S26:第2の第1ライン油圧制御手段
速機の油圧制御装置の構成を示す図である。第2図およ
び第3図は第1図の実施例の作動を説明するためのフロ
ーチャートである。第4図は第1図の変速制御弁の出力
油圧特性を示す図である。第5図は第1図の実施例にお
けるスロットル弁開度と一次側回転軸目標回転速度との
関係を示す図である。第6図は第1図のエンジンの最小
燃費率曲線を示す図である。第7図および第8図は第1
図の実施例において速度比に対する各部の油圧の変化特
性をそれぞれ示す図であり、第7図は正トルク状態を、
第8図はエンジンブレーキ状態を示している。第9図は
第1図の実施例における速度比変化に対する第1ライン
油圧の変化を示す図で、フィードバック制御のみによる
場合も併せて示した図である。 14:ベルト式無段変速機 16:一次側回転軸、18:二次側回転軸 20:一次側可変プーリ 22:二次側可変プーリ 24:伝動ベルト 26:一次側油圧シリンダ 28:二次側油圧シリンダ 44:変速制御弁、48:第1調圧弁 58:第2調圧弁、94:コントローラ 90,92:回転センサ(速度比検出手段) 96:スロットルセンサ(出力トルク検出手段) 98:エンジン回転センサ(出力トルク検出手段) 106:RAM(記憶装置) ステップS2:速度比検出手段 ステップS5,S26:速度比制御手段 ステップS6:出力トルク検出手段 ステップS17,S18,S23〜S26:第1の第1ライン油圧制御
手段 ステップS19,S20:記憶手段 ステップS21〜S26:第2の第1ライン油圧制御手段
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.一次側回転軸および二次側回転軸にそれぞれ設けら
れた一対の一次側可変プーリおよび二次側可変プーリ
と、該一対の可変プーリに巻き掛けられて動力を伝達す
る伝動ベルトと、前記一対の可変プーリの有効径をそれ
ぞれ変更する一対の一次側油圧シリンダおよび二次側油
圧シリンダとを備えた車両用ベルト式無段変速機におい
て、 油圧源から作動油が供給される第1ライン油路内の油圧
を第1ライン油圧に調圧する第1調圧弁と、 前記第1ライン油路内の作動油を前記一次側油圧シリン
ダおよび二次側油圧シリンダの一方に供給すると同時に
他方内に作動油を第2ライン油路へ流出させることによ
り、前記一次側可変プーリおよび二次側可変プーリの有
効径を変化させて前記無段変速機の変速比を調節する変
速制御弁と、 前記第2ライン油路内の油圧を前記第1ライン油圧より
も低い第2ライン油圧に調圧する第2調圧弁と、 実際の速度比が車両の運転状態に応じて求められた目標
速度比と一致するように、比例動作の制御式に従って前
記変速制御弁をフィードバック制御する速度比制御手段
と を有する油圧制御装置であって、 前記実際の速度比と前記目標速度比との定常偏差が所定
の目標偏差値と一致するように、前記第1ライン油圧を
調圧する前記第1調圧弁をフィードバック制御する第1
の第1ライン油圧制御手段と、 前記速度比を検出する速度比検出手段と、 エンジンの出力トルクを検出する出力トルク検出手段
と、 前記定常偏差が前記目標偏差値と略一致した時の第1ラ
イン油圧の値を、前記速度比検出手段によって検出され
る速度比および前記出力トルク検出手段によって検出さ
れる出力トルクと関連させて記憶装置に記憶する記憶手
段と、 前記速度比検出手段によって検出された速度比および前
記出力トルク検出手段によって検出された出力トルクに
基づいて前記記憶装置から前記第1ライン油圧の値を読
み出し、該第1ライン油圧の値に基づいて前記第1調圧
弁を制御する第2の第1ライン油圧制御手段と を有することを特徴とする車両用ベルト式無段変速機の
油圧制御装置。 2.前記記憶手段は、前記第1ライン油圧に遠心力によ
る油圧増加分を加算して前記速度比と前記出力トルクと
の二次元マップから成る前記記憶装置に記憶するもので
ある特許請求の範囲第1項に記載の車両用ベルト式無段
変速機の油圧制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP61183120A JP2699326B2 (ja) | 1986-08-04 | 1986-08-04 | 車両用ベルト式無段変速機の油圧制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP61183120A JP2699326B2 (ja) | 1986-08-04 | 1986-08-04 | 車両用ベルト式無段変速機の油圧制御装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS6338042A JPS6338042A (ja) | 1988-02-18 |
JP2699326B2 true JP2699326B2 (ja) | 1998-01-19 |
Family
ID=16130137
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP61183120A Expired - Lifetime JP2699326B2 (ja) | 1986-08-04 | 1986-08-04 | 車両用ベルト式無段変速機の油圧制御装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2699326B2 (ja) |
-
1986
- 1986-08-04 JP JP61183120A patent/JP2699326B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPS6338042A (ja) | 1988-02-18 |
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