JP2691961B2 - 変性クロロプレン合成ゴム系接着剤組成物 - Google Patents

変性クロロプレン合成ゴム系接着剤組成物

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由郎 馬場
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、接着剤組成物に関し、
さらに詳しくは自動車内装材の接着等に好ましく使用で
きるクロロプレン合成ゴム系接着剤組成物に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】従来、自動車内装材に用いられる真空成
形用接着剤として、二液形のクロロプレン合成ゴム系接
着剤が使用されている。この二液形クロロプレン合成ゴ
ム系接着剤はクロロプレン合成ゴムをトリイソシアナー
ト化合物で硬化させるものであって、その他に老化防止
剤、補強性樹脂、粘着付与樹脂等を含有している。通常
は、上記成分のうちトリイソシアナート化合物とその他
の成分とを分けた二液形となっており、使用直前に二液
を混合して均一溶液にしてから使用するものである。こ
のような二液形クロロプレン合成ゴム系接着剤において
は、粘着保持時間は粘着付与樹脂によって調節され、耐
熱性はトリイソシアナートの化学構造および添加量によ
って調節されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、自動車産業
では、生産性を極端に重んじており、上記したように二
液形クロロプレン合成ゴム系接着剤においては、二液を
計量、混合する手間や、ポットライフ切れによる接着剤
の無駄は、作業性においてかなりの経費の損失となる。
そのため、接着剤の一液化が望まれている。また、自動
車の内装材接着は、真空成形接着法と呼ばれる技術によ
って一体接着されている。このような接着剤に要求され
る性質として、室温から130℃までの温度範囲内にお
いて長い粘着保持時間が要求され、接着直後には複雑な
形状の接着における被着材の反撥弾性に、130℃から
室温の温度範囲においても耐えられる耐熱性が要求され
る。しかしながら、従来の一液形クロロプレン合成ゴム
系接着剤は、粘着保持時間の長いタイプでは耐熱性が低
く、逆に耐熱性が高いタイプでは粘着保持時間が短いと
いう欠点があった。一方、二液形は粘着保持時間が長く
かつ耐熱性も高いため望ましいものであるが、上記した
ように作業性に難点がある。そこで本発明の目的は、一
液形で耐熱性に優れかつ粘着保持時間が長いクロロプレ
ン合成ゴム系接着剤組成物を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、粘着保持
時間と耐熱性という相反する性質を合わせ持つクロロプ
レン合成ゴム系接着剤組成を開発するために、粘着付与
樹脂を配合することにより粘着保持時間の調節を行い、
クロロプレン合成ゴムを加硫することにより耐熱性を高
めることを考えた。クロロプレン合成ゴムの加硫は、通
常は亜鉛華(ZnO)や酸化マグネシウム(MgO)の
ような金属酸化物により行われ、2−メルカプトイミダ
ゾリン、チオカルバニリド、2−メルカプトチアゾリン
等の加硫促進剤を添加することによって加硫促進がなさ
れる。しかし、このようにして得られたクロロプレン合
成ゴム系接着剤を自動車内装材の真空成形接着に使用し
たところ、満足するような結果は得られなかった。
【0005】本発明者らは、さらに種々研究を重ねた結
果、クロロプレン合成ゴムにビニル基を有するシランカ
ップリング剤をグラフト重合させた変性クロロプレン合
成ゴムがスズ化合物触媒の存在下で容易に架橋して耐熱
性に優れた架橋ゴムになること、従って接着剤組成物中
に変性クロロプレン合成ゴムとスズ化合物触媒を含有さ
せて変性クロロプレン合成ゴムを架橋ゴムとすることに
より耐熱性を高めることができることを見出し、本発明
を完成させたものである。
【0006】即ち、本発明のクロロプレン合成ゴム系接
着剤組成物は、クロロプレン合成ゴムにビニル基を有す
るシランカップリング剤をグラフト重合させた変性クロ
ロプレン合成ゴムを主成分として有機溶剤中に含有する
接着剤であって、変性 クロロプレン合成ゴム、 老化防止剤1〜4重量部、 補強性樹脂10〜100重量部、 粘着付与樹脂0〜30重量部、 スズ化合物触媒1〜2重量部、 (変性クロロプレン合成ゴムは、クロロプレン合成ゴム
100重量部にビ ニル基を有するシランカップリング剤
2−20重量部をグラフト重合し た反応液である。)を
含有することを特徴とするものである。
【0007】本発明における変性クロロプレン合成ゴム
は、ビニルトリエトキシシランやビニル−トリス(β−
メトキシエトキシ)シランのごときビニル基を有するビ
ニルシランをクロロプレン合成ゴムにグラフト重合させ
て、クロロプレン合成ゴム分子中にアルコキシシラン基
を導入させることにより得られる。このビニルトリエト
キシシランやビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)
シランのごときビニル基を有するシランカップリング剤
の配合量であるが、実験値により2〜20重量部が好ま
しい。より好ましくは5〜15重量部である。2重量部
未満のビニル基を有するシランカップリング剤の量で
は、本発明の目的である耐熱性に難点があり、一方、2
0重量部以上のビニル基を有するシランカップリング剤
量では架橋した時の接着剤被膜が硬くなりすぎて被着材
に対する接着性が悪くなることおよび価格が高くなりす
ぎることの理由により好ましくない。この変性クロロプ
レン合成ゴムは、下記に示すようなモデル分子構造を有
する。なお構造中のRはアルキル基を表す。
【0008】
【化1】
【0009】かような変性クロロプレン合成ゴム中のア
ルコキシシラン基は、スズ化合物触媒の存在下で、接着
剤組成物中および空気中の水分と反応してシラノール基
となり、容易に架橋して耐熱性の優れた架橋ゴムとな
る。この反応式を以下に示す。
【0010】
【化2】
【0011】ここでいうスズ化合物触媒とは、一般式R
nSnY4−nで表され、Rはブチル、n−オクチルが
代表的であり、Yとしてはラウレ−ト、マレ−ト、メル
カプチドが用いられる。ジブチル・すず・ジラウレ−
ト,ジブチル・すず・ジアセチルアセトナ−トなどが特
に有効である。添加量は、接着剤としての保存安定性、
架橋スピ−ド等を考慮して1〜2重量部が好ましい。
【0012】グラフト重合反応は以下の方法により行う
ことができる。クロロプレン合成ゴムをトルエンに溶解
して15%トルエン溶液を調製する。この溶液を80〜
85℃に加熱し、添加しようとするビニルシランの1%
に相当するベンゾイルパーオキシドを重合開始剤として
添加した後、窒素気流中において必要量のビニルシラン
を徐々に添加する。ビニルシランの全量を添加した後も
窒素気流中で80〜85℃の加熱を1〜2時間継続す
る。反応終了は、反応溶液を室温まで冷却するとともに
老化防止剤(BHT)を添加することによりなされる。
ビニルシランの添加量は、クロロプレン合成ゴム100
重量部に対して2重量部以上であればよいが、製造コス
トおよび要求される耐熱性のバランスを考えて2〜20
重量部とする。
【0013】本発明の接着剤組成物は、必要量の老化防
止剤を添加して反応を終了させた上記のグラフト重合反
応溶液に、さらに必要量の老化防止剤、補強性樹脂、粘
着付与樹脂、スズ化合物触媒および適量の有機溶剤を添
加溶解させることによって調製することができる。老化
防止剤は主成分である、ビニルシランをグラフト重合さ
せた変性クロロプレン合成ゴムが、酸化、熱、光、オゾ
ン、銅、マンガン、機械疲労などにより劣化するのを防
ぎ、製品寿命を延長させるために配合される。老化防止
剤としては、ナフチルアミン系、ジフエニルアミン系、
P−フェニレンジアミン系、フエノ−ル系などがあり、
何れも有効であるが、なかでもBHT(2.6−ジ−第
三−ブチル−4−メチルフェノ−ル)は価格面を考慮し
てしばしば利用される。添加量は1〜4重量部が好まし
いが、2部使用が一般化している。補強性樹脂とは、ビ
ニルシランをグラフト重合させた変性クロロプレン合成
ゴムに配合することにより被着剤への接着性を向上させ
るために配合されるもので、熱反応性のアルキルフェノ
−ル樹脂が使用されてる。添加量は被着材により異なる
が10〜100重量部が一般化している。粘着付与樹脂
は接着材の主成分に対して接着初期に必要な粘着性を付
与するために配合されるものである。市販粘着付与樹脂
としては次の表1、表2に示したものが使用され、添加
量は30部までの使用が一般化している。
【0014】
【表1】
【0015】
【表2】
【0016】
【実施例】以下に本発明を、実施例および比較例を挙げ
て説明する。各実施例および比較例の接着剤組成を表3
に示す。
【0017】
【表3】
【0018】グラフト重合反応溶液の調製:クロロプレ
ン合成ゴムとして“A−90”(電気化学工業社製、ム
ーニー粘度90、高結晶タイプ)または“WHV”(デ
ュポン社製、ムーニー粘度120、中結晶タイプ)また
は両者の混合物を、ビニルシランとしてビニルトリエト
キシシラン[表3中のビニルシラン(A)]またはビニ
ル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン[表3中の
ビニルシラン(B)]を使用した。クロロプレン合成ゴ
ムを脱水トルエンに溶解して15%溶液を作成する。こ
の溶液を80〜85℃に加熱し、添加しようとするビニ
ルシランの1%に相当する量のベンゾイルパーオキシド
を窒素気流中で加える。次いで、所定量のビニルシラン
を2〜3回に分けて添加する。ビニルシランを添加した
後も、窒素気流中で80〜85℃で1〜2時間加熱攪拌
を継続する。反応の終了は、室温まで冷却すると同時
に、老化防止剤(BHT)を反応溶液中に添加すること
により行なう。
【0019】接着剤の調製:反応を終了させた上記のグ
ラフト重合反応溶液中に、補強性樹脂として必要量のフ
ェノール樹脂(“CKM−1636”、昭和高分子社
製)、および粘着付与樹脂として必要量のテルペンフェ
ノール樹脂(“PT214”、ヘキスト社製)、さらに
は、適量の有機溶剤(トルエン4部/酢酸エチル3部/
n−ヘキサン3部からなる混合溶剤)を添加し、室温で
6時間以上攪拌して溶解させる。最後にスズ化合物触媒
として所定量のジブチルチンジアセチルアセトナートを
添加し、30分間攪拌して接着剤とする。なお、接着剤
の粘度は有機溶剤の添加量により調節する。
【0020】接着剤の性能評価:ABSとポリプロピレ
ンフォーム(“PPAM”、東レ社製、25倍発泡)と
を被着材として用い、ABS面の片面にエアースプレー
で約150g/m2 の塗付量となるように、各実施例お
よび比較例で調製した接着剤を塗付した。次いで、AB
Sは70℃×3分間、ポリプロピレンフォームは140
℃×3分間それぞれ乾燥した後、0.7kgf/cm2
で10秒間圧着することにより両者を接着した。
【0021】この試験片について(イ)密着性試験、
(ロ)室温クリープ試験、(ハ)90℃耐熱クリープ試
験を行った。各試験方法は以下の通りである。 (イ)密着性試験は、接着24時間後、手で剥離して観
察した。 (ロ)室温クリープ試験は、接着後直ちに、図1に示す
ようにして600gの荷重を90°方向にかけ、1時間
後のズレあるいは落下までの時間を測定した。 (ハ)90℃耐熱クリープ試験は、接着72時間後、図
1に示すようにして100g及び200gの荷重を90
°方向にかけ、24時間後、72時間後、200時間後
のズレあるいは落下までの時間を測定した。 各々の試験結果を表4に示す。
【0022】
【表4】
【0023】表4からわかるように、実施例1〜6によ
る本発明の接着剤を使用したものは、密着性、90℃耐
熱クリープ試験、室温クリープ試験のいずれにおいても
優れた性能を示している。これに対して、ビニルシラン
で変性していないクロロプレン合成ゴムを用いて、スズ
化合物触媒も配合していない比較例の接着剤を使用した
ものは、いずれの試験結果も本発明の接着剤より劣って
いる。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のクロロプ
レン合成ゴム系接着剤においては、ビニルシランをグラ
フト重合してアルコキシシラン基を導入させた変性クロ
ロプレン合成ゴムとスズ化合物触媒とを組成物中に含有
させることによって、耐熱姓に優れた架橋ゴムが組成物
中で生成され、一方、粘着付与樹脂によって粘着保持時
間を調節することができる。その結果、耐熱性に優れし
かも粘着保持時間の長い一液形のクロロプレン合成ゴム
系接着剤組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】接着剤組成物の性能試験方法を概略的に示す説
明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 (C09J 151/04 201:00)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クロロプレン合成ゴムにビニル基を有す
    るシランカップリング剤をグラフト重合させた変性クロ
    ロプレン合成ゴムを主成分として有機溶剤中に含有する
    接着剤であって、変性 クロロプレン合成ゴム、 老化防止剤1〜4重量部、 補強性樹脂10〜100重量部、 粘着付与樹脂0〜30重量部、 スズ化合物触媒1〜2重量部、 (変性クロロプレン合成ゴムは、クロロプレン合成ゴム
    100重量部にビ ニル基を有するシランカップリング剤
    2−20重量部をグラフト重合し た反応液である。)を
    含有することを特徴とする変性クロロプレン合成ゴム系
    接着剤組成物。
  2. 【請求項2】 前記変性クロロプレン合成ゴムは、クロ
    ロプレン合成ゴム100重量部にビニル基を有するシラ
    ンカップリング剤2〜20重量部をグラフト重合させる
    ことによってクロロプレン合成ゴム中にアルコキシシラ
    ン基を導入したものである請求項1記載の変性クロロプ
    レン合成ゴム系接着剤組成物。
  3. 【請求項3】 クロロプレン合成ゴム100重量部にビ
    ニル基を有するシランカップリング剤2〜20重量部を
    グラフト重合させることによってクロロプレン合成ゴム
    中にアルコキシシラン基を導入して変性せしめ、このグ
    ラフト重合反応溶液中に、 老化防止剤1〜4重量部、 補強性樹脂10〜100重量部、 粘着付与樹脂0〜30重量部、 スズ化合物触媒1〜2重量部、 および適量の有機溶剤を添加して攪拌溶解することを特
    徴とする変性クロロプレン合成ゴム系接着剤の製造方
    法。
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