JP2671843B2 - 半導体光集積素子とその製造方法 - Google Patents

半導体光集積素子とその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体光集積素子、特
に、同一半導体基板上に半導体レーザと半導体受光素子
を集積化した半導体光集積素子に関する。
【0002】
【従来の技術】将来のビデオ−オン−ディマンド(VO
D)システムなどのマルチメデイアシステムに欠くこと
のできない技術として、双方向光通信技術が注目されて
いる。この通信技術は、従来の一方通行型の光通信と異
なり、一つの光端末が送信,受信両方の機能を合わせ持
つ特徴を有する。このような光端末に用いる送受信光デ
バイスとして、従来はレーザダイオード(以下LD),
フォトダイオード(以下PD)等を石英系導波路/チッ
プに組み込んだモジュールなどが用いられており、研究
開発が進められている。
【0003】しかし、このようなモジュールでは、多数
の光部品を組み合わせるため、それぞれの光接続点にお
いてアライメントが必要であり、モジュール組立コスト
が上昇し、また、モジュールサイズの小型化が難しいと
いう問題点がある。そこで、最近ではLD,PD,半導
体導波路などを同一の半導体基板上に集積化することに
より、モジュール組立工数,コストの低減と、サイズ小
型化の試みがなされ始めている。
【0004】このような半導体光集積素子の一例が、
“Integrated Photonics Res
earch,Feb.,1994,PD1”に報告され
ており、これを図14,図15に示す。図14は素子全
体の平面図を、図15はLD,PD部分の断面図を示し
ている。この集積素子では、1.55μm帯のLD51
と、1.3μm帯のPD52と、WDMカップラー53
とを同一の半導体基板であるn−InP基板54上に集
積化しており、1.55μm帯の信号光を送信し、1.
3μm帯の信号光を受信する機能を持つ。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】図14,図15に示し
た例では、LD51のInGaAsP活性層55の発す
る光の一部は導波路に沿って導波せずに、基板裏面のn
電極56での反射などを介してPD52のInGaAs
光吸収層57へ入射する。したがって、送信信号の一部
が同一の光端末の受信系に現れるという、いわゆる漏話
の問題が生じる。
【0006】本発明の目的は、同一半導体基板上に半導
体レーザと半導体受光素子を集積化した半導体光集積素
子において、漏話の少ない高性能な素子を提供すること
にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の半導体光集積素
子は、同一半導体基板上に少なくとも半導体レーザおよ
び半導体受光素子を集積する半導体光集積素子におい
て、前記半導体基板上に半導体レーザの光を吸収する半
導体遮光層、バッファ層が順次積層され、前記バッファ
層上に半導体レーザ及び半導体受光素子が形成されてい
ることを特徴とする。また同一半導体基板上に少なくと
も半導体レーザおよび半導体受光素子を集積化する半導
体光集積素子において、(001)面を有する半導体基
板上の半導体レーザと半導体受光素子に挟まれた一領域
にストライプ方向が[110]方向で、メサ側面と前記
基板とのなす角が約55度の半導体メサ構造を有するこ
とを特徴とする。さらに同一半導体基板上に少なくとも
半導体レーザおよび半導体受光素子を集積する半導体光
集積素子において、(001)面を有する半導体基板上
に半導体レーザの光を吸収する半導体遮光層が積層さ
れ、この基板上に半導体レーザ及び半導体受光素子が形
成され、前記半導体レーザと半導体受光素子に挟まれた
一領域にストライプ方向が[110]方向で、メサ側面
と前記基板とのなす角が約55度の半導体メサ構造を有
することを特徴とする。また前記半導体遮光層と半導体
レーザの間にはバッファ層が設けられていることを特徴
とする。
【0008】
【実施例】以下、本発明の実施例について、図面を参照
して詳細に説明する。
【0009】図1は、本発明による半導体光集積素子の
第1の実施例の作製工程を示す図である。図1,図4,
図6,図8は各工程における素子の断面模式図(LD
部,PD部における導波方向に垂直な断面)を示し、図
2,図3,図7,図9は基板表面側から見た平面図を示
し、図5はLD部および隣接する領域の導波方向に沿っ
た断面図を示している。
【0010】まず、図1に示すように、(001)面を
有するn型InP基板1上にInGaAs遮光層2を2
μm,n- −InPバッファ層3を2μmと、順次積層
する。
【0011】次に、図2に示すように、n- −InPバ
ッファ層3上のLD部9に干渉露光とエッチングにより
グレーティング4を形成する。
【0012】次に、図3に示すように、SiO2 膜5を
熱CVD法により基板上に形成し、通常のフォトレジス
ト工程,エッチング工程により選択成長マスクパターン
を形成する。S字導波路部7を除いて、ストライプ方向
は[110]である。このパターンのマスク幅は、図3
に示したようにPD部8で最も広く、LD部9では次に
広く、WDMカップラー部6,S字導波路部7ではこれ
より狭くなっている。
【0013】次に、図4,図5に示すように、この基板
上にn+ −InGaAsPガイド層10(1×1018
-3)と、n+ −InPバッファ層11(1×1018
-3)と、MQW(InGaAsPウエル/InGaA
sPバリア)コア層12A,12B,12C(2×10
15cm-3)と、p+ −InGaAsP上部SCH層13
(1×1018cm-3)と、p+ −InPクラッド層14
(1×1018cm-3)とを、SiO2 膜5を選択成長マ
スクとして有機金属気相成長法により形成する。このと
き、MQWコア層12A,12B,12Cそれぞれのバ
ンドギャップ波長はそれぞれ異なるものが得られ、PD
部8におけるMQWコア層12Aでは1.55μmを、
LD部9におけるMQWコア層12Bでは1.3μm
を、およびWDMカップラー部6とS字導波路部7にお
けるMQWコア層12Cでは1.15μmとなる(参考
文献;特開平4−243216号公報)。
【0014】すなわち、この素子では波長1.55μm
の信号光を受信し、波長1.3μmの信号光を出射する
が、いずれの波長に対してもWDMカップラー部6とS
字導波路部7ではMQWコア層12Cは十分低損失なコ
ア層として、また、MQWコア層12AはPD部8にお
いて1.55μmの入射信号光に対して十分高感度な光
吸収層として、MQWコア層12BはLD部9において
は1.3μm光に対して十分な利得を持つ活性層として
働く。ここで、MQWコア層12A,12B,12Cそ
れぞれのバンドギャップ波長の差を生ずるのは、SiO
2 膜5のマスク幅のみに依存しており、これらMQWコ
ア層は同時にかつ連結して形成される。
【0015】次に、図6,図7に示すように、SiO2
膜で新たに形成した選択成長マスクを用いてPD部8
と、LD部9をp+ InP埋め込み層15(1×1018
cm-3)で、WDMカップラー部6とS字導波路部7を
- −InP埋め込み層16(2×1015cm-3)で埋
め込む。
【0016】その後、図8,図9に示すように絶縁膜と
してのSiN膜17と、p電極としてのTi/Au膜1
8と、n電極としてのAuGeNi/AuNi膜19と
を形成し、それぞれ熱処理を施して素子を完成する。
【0017】以上説明した本発明の第1の実施例では、
図10に示したようにLD部9から発し基板裏面に向か
った非導波光は、LD部9の下部に形成されたInGa
As遮光層2により吸収されるので、図15に示した従
来例のような基板裏面での反射を介した漏話の問題が生
じない。またこのとき、本実施例ではInGaAs遮光
層2の上にn- −InPバッファ層3を設けているの
で、導波路に沿って導波する光はInGaAs遮光層2
によって吸収損失を受けることはない。また遮光層は半
導体レーザまたは半導体受光素子、あるいはこれら両方
の下部にあればよい。
【0018】次に、本発明の第2の実施例について、図
11を用いて説明する。本実施例では、第1の実施例に
おいて図6,図7で示したp+ −InP埋め込み層15
と、n- −InP埋め込み層16とを形成する工程にお
いて、これら工程と同時に図11に示したようなInP
遮光メサ20Aを選択成長により形成する。このInP
遮光メサ20Aは、PD部8,LD部9とに挟まれた領
域で、かつPD部8になるべく近い位置に形成する。メ
サ20Aのストライプ方向は[110]である。他の素
子作製工程は、第1の実施例と同様である。
【0019】この第2の実施例では、PD部8とLD部
9とに挟まれた領域上に遮光メサ20Aを形成し、この
メサはストライプ方向は[110]で選択成長により形
成するので、メサ側壁と基板とのなす角は約55度とな
ること、また、InPの1.3μm光に対する屈折率は
約3.2であることから、図12に示したようなモデル
で考えれば、メサのLD側の側壁での反射,屈折、PD
側壁での全反射によりLDからPDへ向かった非導波光
は遮光され、漏話の問題を防ぐことができる。図10に
は、遮光層12により吸収される様子を示している。
【0020】次に、本発明の第3の実施例について、図
13を用いて説明する。本実施例では、第1の実施例に
おけるInGaAs遮光層2と、n- −InPバッファ
層3と、第2の実施例における遮光メサとを併せ持つ。
ただし本実施例における遮光メサ20Bは、PD部8と
同一の結晶層構造を有する。また、第1あるいは第2の
実施例におけるp+ −InGaAsP上部SCH層1
3,p+ −InPクラッド層14の代わりに、それぞれ
- −InGaAsP上部SCH層21(1×1016
-3)と、n- −InPクラッド層22(2×1015
-3)とを成長する。さらに、第1あるいは第2の実施
例では図6,図7で示した工程においてPD部8,LD
部9をp+ −InP埋め込み層15で、WDMカップラ
ー部6とS字導波路部7をn- −InP埋め込み層16
で埋め込んだが、本実施例では図13に示したように全
てn- −InP埋め込み層16で埋め込む。そして、S
iN膜17をマスクとしてPD部8,LD部9にのみn
- −InGaAsP上部SCH層21中にpn接合が形
成されるようZnの熱拡散を施し、p+ 領域23を形成
する。他の素子作製工程は、第1あるいは第2の実施例
と同様である。
【0021】本発明の第3の実施例では、InGaAs
遮光層2と、遮光メサ20Bとを併せ持つので漏話はさ
らに抑制される。しかも、本実施例における遮光メサ2
0BはPD部8と同一の結晶層構造を持つので、MQW
コア層12Aにおける光吸収も遮光効果に寄与する。ま
た、成長する結晶層はすべてn型とし、PD部8とLD
部9にのみ選択熱拡散によりpn接合を形成しているの
で、WDMカップラー6,S字導波路部7ではp型半導
体層により価電子帯間吸収損失,寄生容量が生じない。
【0022】
【発明の効果】本発明によれば、同一半導体基板上に半
導体レーザと半導体受光素子を集積化した半導体光集積
素子において、漏話の少ない高性能な素子を提供するこ
とが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を説明する断面模式図で
ある。
【図2】本発明の第1の実施例を説明する平面図であ
る。
【図3】本発明の第1の実施例を説明する平面図であ
る。
【図4】本発明の第1の実施例を説明する断面模式図で
ある。
【図5】本発明の第1の実施例を説明する断面図であ
る。
【図6】本発明の第1の実施例を説明する断面模式図で
ある。
【図7】本発明の第1の実施例を説明する平面図であ
る。
【図8】本発明の第1の実施例を説明する断面模式図で
ある。
【図9】本発明の第1の実施例を説明する平面図であ
る。
【図10】本発明の効果を説明する図である。
【図11】本発明の第2の実施例を説明する断面模式図
である。
【図12】本発明の効果を説明する図である。
【図13】本発明の第3の実施例を説明する断面模式図
である。
【図14】従来の技術の一例を示す平面図である。
【図15】図14の断面図である。
【符号の説明】
1 n型InP基板 2 InGaAs遮光層 3 n- −InPバッファ層 4 グレーティング 5 SiO2 膜 6 WDMカップラー部 7 S字導波路部 8 PD部 9 LD部 10 n+ −InGaAsPガイド層 11 n+ −InPバッファ層 12A,12B,12C MQWコア層 13 p+ −InGaAsP上部SCH層 14 p+ −InPクラッド層 15 p+ −InP埋め込み層 16 n- −InP埋め込み層 17 SiN膜 18 Ti/Au膜 19 AuGeNi/AuNi層 20A InP遮光メサ 20B 遮光メサ 21 n- −InGaAsP上部SCH層 22 n- −InPクラッド層 23 p+ 領域
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−224406(JP,A) 特開 平4−162782(JP,A) 特開 昭63−102379(JP,A) 特開 昭62−4385(JP,A) 実開 昭59−151459(JP,U)

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 同一半導体基板上に少なくとも半導体レ
    ーザおよび半導体受光素子を集積する半導体光集積素子
    において、前記半導体基板上に形成された半導体レーザ
    の光を吸収する半導体遮光層、バッファ層が順次積層さ
    れ、前記バッファ層上に半導体レーザ及び半導体受光素
    子が形成されていることを特徴とする半導体光集積素
    子。
  2. 【請求項2】 同一半導体基板上に少なくとも半導体レ
    ーザおよび半導体受光素子を集積化する半導体光集積素
    子において、(001)面を有する半導体基板上の半導
    体レーザと半導体受光素子に挟まれた一領域にストライ
    プ方向が[110]方向で、メサ側面と前記基板とのな
    す角が約55度の半導体メサ構造を有することを特徴と
    する半導体光集積素子。
  3. 【請求項3】 同一半導体基板上に少なくとも半導体レ
    ーザおよび半導体受光素子を集積する半導体光集積素子
    において、(001)面を有する半導体基板上に半導体
    レーザの光を吸収する半導体遮光層が積層され、この基
    板上に半導体レーザ及び半導体受光素子が形成され、前
    記半導体レーザと半導体受光素子に挟まれた一領域にス
    トライプ方向が[110]方向で、メサ側面と前記基板
    とのなす角が約55度の半導体メサ構造を有することを
    特徴とする半導体光集積素子。
  4. 【請求項4】 前記半導体遮光層と半導体レーザの間に
    はバッファ層が設けられていることを特徴とする請求項
    記載の半導体光集積素子。
  5. 【請求項5】 同一半導体基板上に少なくとも半導体レ
    ーザおよび半導体受光素子を集積する半導体光集積素子
    の製造方法において、(001)面を有する半導体基板
    上に半導体レーザと半導体受光素子を形成し、両者に挟
    まれた一領域に開口部のストライプ方向が[110]の
    パターンマスクを設け、エピタキシャル成長により前記
    開口部に半導体メサ構造を形成することを特徴とする半
    導体光集積素子の製造方法。
  6. 【請求項6】 同一半導体基板上に少なくとも半導体レ
    ーザおよび半導体受光素子を集積する半導体光集積素子
    の製造方法において、(001)面を有する半導体基板
    上に半導体レーザの光を吸収する半導体遮光層を積層
    し、この基板上に半導体レーザと半導体受光素子を形成
    し、両者に挟まれた一領域に開口部のストライプ方向が
    [110]のパターンマスクを設け、エピタキシャル成
    長により前記開口部に半導体メサ構造を形成することを
    特徴とする半導体光集積素子の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記半導体遮光層の成長後、バッファ層
    を成長することを特徴とする請求項6記載の製造方法。
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