JP2669052B2 - 酸化物超電導薄膜およびその製造方法 - Google Patents

酸化物超電導薄膜およびその製造方法

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JP2669052B2 JP1118979A JP11897989A JP2669052B2 JP 2669052 B2 JP2669052 B2 JP 2669052B2 JP 1118979 A JP1118979 A JP 1118979A JP 11897989 A JP11897989 A JP 11897989A JP 2669052 B2 JP2669052 B2 JP 2669052B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、100K以上の高臨界温度が期待されるタリウ
ムを含む酸化物超電導薄膜及びその製造方法に関するも
のである。
従来の技術 高温超電導体として、A15型2元系化合物として窒化
ニオブ(NbN)やゲルマニウムニオブ(Nb3Ge)などが知
られていたが、これらの材料の超電導転移温度はたかだ
か23Kであった。一方、ペロブスカイト系化合物は、さ
らに高い転移温度が期待され、Ba−La−Cu−O系の高温
超電導体が提案された[ジェイ・ジー・ベドノルツ ア
ンド ケー・エー・ミュラー,(ツァイトシュリフト・
フュア・フィジーク ベー)−コンデンスト マター
(J.G.Bednorz and K.A.Muller,(Zetshrift Fur Physi
kB)−Condensed Matter Vol.64,189−193(198
6))]。
さらに、Bi−Sr−Ca−Cu−O系の材料が100K以上の転
移温度を示すことも発見された[エイチ・マエダ、ワイ
・タナカ、エム・フクトミ アンド ティー・アサノ,
(ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィ
ジックス)(H.Maeda,Y.Tanaka,M.Fukutomi and T.Asan
o,(Japanese Journal of Applied Physics)Vol.27,L2
09−210(1988))]。加えてこのBi系よりも超電導転
移温度の高いTl−Ba−Ca−Cu−O系の材料が発見される
に至った[ゼット・ゼット・シエング アンド エー・
エム・ヘルマン、(ネイチャー)(Z.Z.Shengand A.M.H
ermann,(Nature)Vol.322,138−139(1988).)]。
この種の材料の超電導機構の詳細は明らかではないが、
転移温度が室温以上に高くな可能性があり、高温超電導
体として従来の2元系化合物より、より有望な特性が期
待される。
さらに超電導体と絶縁物とを交互に積層することによ
り、より高い超電導転移温度が従来から期待されていた
[エム・エイチ・コーエン アンド ディー・エイチ・
ダグラス、ジュニア、(フィジカル・レビュー・レター
ズ)(M.H.Cohen and D.H.Douglass,Jr.,(Physical Re
view Letters)Vol.19,118−121(1967))]。
発明が解決しようとする課題 しかしながら、Ti−Ba−Ca−Cu−O系の材料は、現在
の技術では主として焼結という過程でしか形成できない
ため、セラミックの粉末あるいはブロックの形状でしか
得られない。一方、この種の材料を実用化する場合、薄
膜状に加工することが強く要望されているが、従来の技
術では、良好な超電導特性を有する薄膜作製は難しいも
のであった。すなわち、Ti−Ba−Ca−Cu−O系には超電
導転移温度の異なるいくつかの相が存在することが知ら
れているが、特に転移温度が100K以上の相を薄膜の形態
で達成するのは、非常に困難とされていた。
また、従来このTl系において良好な超電導特性を示す
薄膜を形成するためには少なくとも600℃以上の熱処理
あるいは形成時の加熱が必要であり、そのため高い超電
導転移温度が期待される絶縁膜との周期的な積層構造を
得ることは極めて困難と考えられ、またこの構造を利用
した集積化デバイスを構成することもたいへん困難であ
るとされていた。
本発明は、このような従来技術の課題を解決すること
を目的とする。
課題を解決するための手段 第1の本発明の酸化物超電導薄膜は、主体成分が少な
くともタリウム(Tl)、銅(Cu),およびアルカリ土類
(II a族)を含む層状酸化物超電導薄膜と、主体成分が
少なくともBiとチタン(Ti)を含む層状酸化物薄膜が交
互に積層された構造を持つことを特徴とする酸化物超電
導薄膜である。
さらに第2の本発明の酸化物超電導薄膜の製造方法
は、基体上に、少なくともTlを含む酸化物と少なくとも
銅およびアルカリ土類(II a族)を含む酸化物とを周期
的に積層させて形成する酸化物薄膜と、少なくともBiを
含む酸化物と少なくともTiを含む酸化物を周期的に積層
させて形成する酸化物薄膜とを、さらに交互に積層させ
て得ることを特徴とする酸化物超電導薄膜の製造方法で
ある。
ここでアルカリ土類は、II a族元素のうちの少なくと
も一種あるいは二種以上の元素を示す。
作用 本発明者らによる第1の本発明においては、Tl2O2
化膜層またはこれを主体とした層によりともに覆われた
結晶構造となっているところのTl系超電導薄膜と、Tl系
超電導体とその結晶における格子定数(a軸)がほぼ等
しく、また安定なBi2O2酸化膜層またはこれを主体とし
た層によりともに覆われた結晶構造となっているところ
のBiとTiとを含む酸化物層状構造の絶縁体薄膜とが、交
互に積層された構造をとることによって、超電導膜と絶
縁膜との間での相互拡散の少ない積層が可能となり、そ
の結果Tl系超電導薄膜における超電導転移温度の上昇が
実現されたものである。
さらに第2の本発明においては上記構造を達成するた
め、少なくともTlを含む酸化物、少なくともBiを含む酸
化物と、少なくとも銅およびアルカリ土類(II a族)を
含む酸化物あるいは少なくともTiを含む酸化物とを、周
期的に積層させて分子レベルの制御による薄膜の作製を
行うことによって、再現性良くTl系超電導薄膜と絶縁膜
との積層を得ることに成功したものである。
実施例 以下に、本発明の実施例について図面を参照しながら
説明する。
まず、本発明者らはTl系超電導薄膜と絶縁膜との周期
的な積層構造を実現するため、Tl系超電導薄膜と種々の
絶縁膜との相互作用について検討した。
通常、Tl系超電導薄膜は400〜600℃に加熱した基体上
に蒸着して得る。蒸着後、そのままでも薄膜は超電導特
性を示すが、その後850〜950℃の熱処理をを施し、超電
導特性を向上させる。
しかしながら、基体温度が高い時に絶縁膜をTl系超電
導薄膜に続いて積層したり、絶縁膜を形成後熱処理を行
った場合、超電導膜と絶縁膜との間で、元素の相互拡散
が起こり超電導特性が大きく劣化することが判明した。
相互拡散を起こさないためには、超電導膜、絶縁膜の結
晶性が優れていること、超電導膜・絶縁膜間での格子の
整合性が優れていること、絶縁膜が850〜950℃の熱処理
に対して安定であることが不可欠と考えられる。
種々の検討を行った結果、本発明者らは、少なくとも
Tiを含むBi酸化物層状構造の薄膜が絶縁膜として適して
いることを見いだした。この理由として、Tiを含むBi層
状酸化物は、Bi2O2酸化物層がTiおよび酸素等の元素か
らなる構造体を挟み込んだ層状ペロブスカイトを示すこ
とが知られており、このBi2O2層は同種の結晶構造の物
質の界面に対して高温の熱処理においても非常に安定で
あり、またTl系超電導体とBi−Ti系酸化物との格子の整
合性がきわめて優れていることが考えられる。
さらに本発明者らは、Tl系超電導薄膜とBi−Ti系酸化
物薄膜を周期的に積層した時、Tl系超電導薄膜本体の超
電導転移温度が上昇することを見いだした。
第1の本発明の内容を更に深く理解されるために、第
1図を用い具体的な実施例を示す。
(実施例1) 第1図は、本実施例で用いた二元マグネトロンスパッ
タ装置内部の概略図であり、11はTl−Ba−Ca−Cu−Oタ
ーゲット、12はBi−Ti−Oターゲット、13はシャッタ
ー、14はアパーチャー、15は基体、16は基体加熱用ヒー
ターを示す。焼結体をプレス成形加工して作製した2個
のターゲット11、12を用い、第1図に示すように配置さ
せた。すなわち、MgO(100)基体15に焦点を結ぶように
各ターゲットが約30゜傾いて設置されている。ターゲッ
トの前方には回転するシャッター13があり、その中に設
けられたアパーチャー14の回転をパルスモーターで制御
することにより、Tl−Ba−Ca−Cu−O→Bi−Ti−O→Tl
−Ba−Ca−Cu−O→Bi−Ti−O→Tl−Ba−Ca−Cu−Oの
サイクルでスパッタ蒸着が行なうことができる。Tl−Ba
−Ca−Cu−O膜、Bi−Ti−O膜の積層の様子を概念的に
第2図に示す。第2図おいて、21はTl−Ba−Ca−Cu−O
膜、22はBi−Ti−O膜を示す。ターゲット11、12への入
力電力、Ti−Ba−Ca−Cu−OおよびBi−Ti−Oのスパッ
タ時間を制御することにより、基体15上に蒸着するTl−
Ba−Ca−Cu−O膜21、Tl−Ba−Ca−Cu−O膜22の膜圧を
変えることができる。基体15をヒーター16で約600℃に
加熱し、アルゴン・酸素(1:1)混合雰囲気0.5Paのガス
中で各ターゲットのスパッタリングを行なった。薄膜作
製後は酸素雰囲気中において、850℃の熱処理を10分間
施した。本実施例では、各ターゲットのスパッタ電力
を、Tl−Ba−Ca−Cu−O:100W,Bi−Ti−O:100Wとし、タ
ーゲット11、12のスパッタ時間を制御した。Bi−Ba−Ca
−Cu−O膜21の元素の組成比率がTl:Ba:Ca:Cu=2:2:2:
3、Bi−Ti−O膜22の元素の組成比率がBi:Ti=4:3にな
るよう、ターゲット11、12の元素の組成比率を調製し
た。Tl−Ba−Ca−Cu−O膜21をBi−Ti−O膜22と積層せ
ずに基体15上に形成した場合、すなわちTl−Ba−Ca−Cu
−O膜21そのものの特性は、125Kで超電導転移を起こ
し、100Kで抵抗がゼロになるものであった。さらに本発
明者らによると、結晶性を維持したまま、薄くできる薄
膜の限界はBi−Ti−O膜22については約200Aであった。
絶縁膜はできるだけ薄い方が好ましいので、膜厚200Aの
Bi−Ti−O膜22に対して、Tl−Ba−Ca−Cu−O膜21の膜
厚を変え第2図に示すような(Tl−Ba−Ca−Cu−O膜→
Bi−Ti−O膜)の積層構造を20周期作製した。そのとき
の超電導薄膜の抵抗の温度特性を第3図に示す。第3図
において、Tl−Ba−Ca−Cu−O膜21の膜厚が100A、300
A、500Aのときの特性をそれぞれ、特性31、32、33に示
す。特性31においてはゼロ抵抗温度が約30KとTl−Ba−C
a−Cu−O膜21の特性が劣化することがわかった。この
理由として、Tl−Ba−Ca−Cu−O膜21とBi−Ti−O膜22
との間で元素の相互拡散による膜21、22の結晶性の破壊
が考えられる。特性33においては、Bi−Ti−O膜22との
周期的な積層なしに基体15上につけたときのTl−Ba−Ca
−Cu−O膜21本来の超電導特性とほとんど同じであり、
絶縁膜Bi−Ti−O膜22との積層効果は確認されなかっ
た。しかしながら、本発明者らは特性32において、超電
導転移温度、ゼロ抵抗温度がともに約5K上昇することを
見いだした。この効果の詳細な理由については未だ不明
であるが、Tl−Ba−Ca−Cu−O膜21とBi−Ti−O膜22と
の積層界面での元素の相互拡散の影響が少なく、かつ薄
いBi−Ti−O膜22を介して複数のTl−Ba−Ca−Cu−O膜
21を積層することによりTl−Ba−Ca−Cu−O膜21におい
て超電導機構になんらかの変化が引き起こされたことが
考えられる。
なお、超電導転移温度が上昇する効果は、Tl−Ba−Ca
−Cu−O膜21の膜厚が200〜400Aの範囲で有効であるこ
とを、本発明者らは確認した。
なお、本発明者らは薄膜形成後の熱処理において、Tl
ガスを供給しながら行うと、より再現性よく超電導特性
が得られることを見いだした。このことはTlの蒸気圧が
異常に高く、蒸発しゃすいのでこれを供給することによ
って、結晶性の劣化を防ぐことができたためと考えられ
る。
なお、本発明者らはターゲット11、もしくは12に鉛
(Pb)を添加してスパッタしたとき、基体15の温度が上
記実施例よりも約100℃低くても、上記実施例と同等な
結果が得られることを見いだした。
なお、本発明者らはBi−Ti−O膜22の代わりに、Bi−
Ti−Nb−O,Bi−Ti−Ta−O,Bi−Ti−Ca−O,Bi−Ti−Ba−
O,Bi−Ti−Ba−O,Bi−Ti−Na−O,Bi−Ti−K−O膜を用
いたときも第1の本発明が有効であることを確認した。
さらに本発明者らは、Tlの酸化物と、Ba、Ca、Cuの酸
化物を異なる蒸発源から真空中で別々に蒸発させ、基体
上にTl−O→Ba−Cu−O→Ca−Cu−O→Ba−Cu−O→Tl
−Oの順で周期的に積層させた場合、さらにBiの酸化物
と、Tiの酸化物を異なる蒸発源から真空中で別々に蒸発
させ、Bi−O→Ti−O→Bi−Oの順で周期的に積層させ
た場合、(実施例1)に示した積層構造作製方法より極
めて制御性良く、安定した膜質の、しかも膜表面が極め
て平坦なTl−Ba−Ca−Cu−O超電導薄膜およびBi−Ti−
O絶縁膜が得られることを見いだした。
さらに本発明者らは、Tl−O、Ba−Cu−O、Ca−Cu−
O,Bi−O,Ti−Oを別々の蒸発源から蒸発させ、Tl−Ba−
Ca−Cu−O超電導薄膜とBi−Ti−O絶縁膜を周期的に積
層した時、極めて制御性良くm(Tl−Ba−Ca−Cu−O)
・n(Bi−Ti−O)の周期構造を持つ薄膜を形成できる
ことを見いだした。ここでm,nは正の整数を示す。さら
に、このm(Tl−Ba−Ca−Cu−O)・n(Bi−Ti−O)
薄膜は、(実施例1)に示したTl−Ba−Ca−Cu−Oを同
時に蒸着して得る超電導薄膜と、Bi−Ti−Oを同時に蒸
着して得る酸化物絶縁膜とを周期的に積層して得た薄膜
に比べて、はるかに結晶性が優れ、超電導転移温度、臨
界電流密度等の特性に勝っていることも併せて見いだし
た。さらに本発明者らは、上記の方法で作製したTl−Ba
−Ca−Cu−O超電導薄膜とBi−Ti−O絶縁膜はともに薄
膜表面が極めて平坦であることを見いだした。
これらのことは第4図に示す積層の概念図を用いて説
明することができる。すなわち、それぞれ層状構造を構
成する異なる元素を別々に順次積層していくことによ
り、基体表面に対し平行な面内だけで積層された蒸着元
素が動くだけで、基体表面に対し垂直方向への元素の移
動がないことによるものと考えられる。さらに、BiとTi
を含む酸化物層状ペロブスカイト構造の結晶のa軸の長
さは、Tl−Ba−Ca−Cu−Oのそれとほぼ等しく、連続的
にエピタキシャル成長が可能であることによるものと考
えられる。
さらに意外にも、良好な超電導特性を得るに必要な基
体の温度、熱処理温度も、従来より低いことを見いだし
た。
Tl−O,Ba−Cu−O,Ca−Cu−O,,Bi−O,Ti−Oを周期的
に積層させる方法としては、いくつか考えられる。一般
に、MBE装置あるいは多元のEB蒸着装置で蒸発源の前を
開閉シャッターで制御したり、気相成長法で作製する際
にガスの種類を切り替えたりすることにより、周期的積
層を達成することができる。しかしこの種の非常に薄い
層の積層には従来スパッタリング蒸着は不向きとされて
いた。この理由は、成膜中のガス圧の高さに起因する不
純物の混入およびエネルギーの高い粒子によるダメージ
と考えられている。しかしながら、本発明者らは、この
Tl系酸化物超電導体に対してスパッタリングにより異な
る薄い層の積層を行なったところ、意外にも良好な積層
膜作製が可能なことを発見した。スパッタ中の高い酸素
ガス圧およびスパッタ放電が、Tl系の100K以上の臨界温
度を持つ相の形成、およびBi−Ti−O絶縁膜の形成に都
合がよいためではなかろうかと考えられる。
スパッタ蒸着で異なる物質を積層させる方法として
は、組成分布を設けた1ケのスパッタリングターゲット
の放電位置を周期的に制御するという方法があるが、組
成の異なる複数個のターゲットのスパッタリングという
方法を用いると比較的簡単に達成することができる。こ
の場合、複数個のターゲットの各々のスパッタ量を周期
的に制御したり、あるいはターゲットの前にシャッター
を設けて周期的に開閉したりして、周期的積層膜を作製
することができる。また基板を周期的運動させて各々タ
ーゲットの上を移動させる方法でも作製が可能である。
レーザースパッタあるいはイオンビームスパッタを用い
た場合には、複数個のターゲットを周期運動させてビー
ムの照射するターゲットを周期的に変えれば、周期的積
層膜が実現される。このように複数個のターゲットを用
いたスパッタリングにより比較的簡単にTl系酸化物の周
期的積層が作製可能となる。
以下本発明者らによる第2の本発明の内容をさらに深
く理解されるために、具体的な実施例を示す。
(実施例2) 第5図に本実施例で用いた5元マグネトロンスパッタ
装置の概略図を示す。第5図において、50はBiターゲッ
ト、51はTlターゲット、52はBaCu合金ターゲット、53は
CaCu合金ターゲット、54はTiターゲット、55はシャッタ
ー、56はスリット、57は基体、58は基体加熱用ヒーター
を示す。計5個のターゲット50、51、52、53、54を第2
図に示すように配置させた。即ち、MgO(100)基体57に
焦点を結ぶように各ターゲットが約30゜傾いて設置され
ている。ターゲットの前方には回転するシャッター55が
あり、パルスモータで駆動することによりその中に設け
られたスリット56の回転が制御され、各ターゲットのサ
イクル及びスパッタ時間を設定することができる。基体
57をヒーター58で約600℃に加熱し、アルゴン・酸素
(5:1)混合雰囲気3Paのガス中で各ターゲットのスパッ
タリングを行なった。各ターゲットのスパッタ電流を、
Bi:30 mA,Tl:30 mA,BaCu:80 mA,CaCu:300 mA,Ti:400 mA
にして実験を行った。Tl→BaCu→CaCu→Tlのサイクルで
スパッタし、Tl−Ba−Ca−Cu−O膜の元素の組成比率が
Tl:Ba:Ca:Cu=2:2:2:3となるように各ターゲットのスパ
ッタ時間を調整し、上記サイクルを20周期行った結果、
100K以上の臨界温度を持つ相を作製することができた。
このままの状態でもこのTl−Ba−Ca−Cu−O薄膜は100K
以上の超電導転移を示したが、さらに酸素中で650℃、
1時間の熱処理を行なうと非常に再現性よくなり、超電
導転移温度は125K、抵抗がゼロになる温度は105Kになっ
た。超電導転移温度が100Kを越す相は金属元素がTl−Ba
−Cu−Ca−Cu−Ca−Cu−Ba−Tlの順序で並んだ酸化物の
層から成り立っているとも言われており、本発明の製造
方法がこの構造を作るのに非常に役だっているのではな
いかと考えられる。また、同様にBi→Ti→Biのサイクル
でBi−Ti−O膜の元素の組成比がBi:Ti=4:3となるよう
に各ターゲットのスパッタ時間を調整し、上記サイクル
を4サイクルまで少なくして、Bi−Ti−O膜の膜厚を薄
くしても、極めて結晶性に優れたBi−Ti−O膜が得られ
た。
さらに本発明者らはm×(Tl→BaCu→CaCu→BaCu→T
l)→n×(Bi→Ti→Bi)のサイクルで各ターゲットを
スパッタし、m(Tl−Ba−Ca−Cu−O)・n(Bi−Ti−
O)薄膜を基体57上に作製した。ここでm,nは正の整数
を示す。本発明者らはn=4のとき、mを変化させて周
期的に積層して得た膜の超電導特性を調べた。第6図に
m=2、6、16のときに得た膜の抵抗の温度変化をそれ
ぞれ特性61、62、63に示す。第6図において、m=6の
とき、最も高い超電導転移温度およびゼロ抵抗温度、す
なわち特性62が得られた。特性62の超電導転移温度、ゼ
ロ抵抗温度はTl−Ba−Ca−Cu−O膜本来のそれらの値よ
りも約8K高いものであった。この効果の詳細な理由につ
いては未だ不明であるが、本実施例に示した方法でTl−
Ba−Ca−Cu−O膜とBi−Ti−O膜とを周期的に積層する
ことによって、Tl−Ba−Ca−Cu−O膜とBi−Ti−O膜が
互いにTl2O2層とBi2O2層を介してエピタキシャル成長し
ていることにより積層界面での元素の相互拡散の影響が
なく、かつ結晶性に優れた薄いBi−Ti−O膜を介して同
じく結晶性に優れたTl−Ba−Ca−Cu−O膜を積層するこ
とによりTl−Ba−Ca−Cu−O膜において超電導機構にな
んらかの変化が引き起こされたことが考えられる。
なお、超電導転移温度が上昇する効果は、Tl→BaCu→
CaCu→BaCu→Tlのサイクルが4〜10の範囲で有効である
ことを、本発明者らは確認した。
さらに、本発明者らは基体の温度は400〜600℃の範囲
で最もTl−Ba−Ca−Cu−O超電導薄膜の結晶性、および
超電導特性がよいことを見いだした。これは蒸気圧が異
常にに高いTlの蒸発が600℃以上で起こり、さらに400℃
以下では結晶化が得られないことが考えられる。
なお、本発明者らはターゲット51、もしくは54に鉛
(Pb)を添加してスパッタしたとき、基体57の温度が上
記実施例よりも約100℃低くても、上記実施例と同等な
結果が得られることを見いだした。
なお、本発明者らはBi−Ti−O膜の代わりに、Bi−Ti
−Nb−O,Bi−Ti−Ta−O,Bi−Ti−Ca−O,Bi−Ti−Ba−O,
Bi−Ti−Sr−O,Bi−Ti−Na−O,Bi−Ti−K−O膜を用い
たときも第2の本発明が有効であることを確認した。
発明の効果 以上のように第1の本発明の酸化物超電導薄膜は、T1
系酸化物超電導薄膜の超電導転移温度を上昇させる構造
を提供するものであり、第2の本発明の酸化物超電導薄
膜の製造方法は第1の本発明をより効果的に実現し、デ
バイス等の応用には必須の低温でのプロセス確立したも
のであり、本発明の工業的価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
第1図は第1の本発明の一実施例における超電導薄膜の
製造装置の概略を示す斜視図、第2図は同実施例の薄膜
構造の概念を示す断面図、第3図は第1図の装置により
得た薄膜における抵抗の温度特性を示すグラフ、第4図
は第2の本発明の一実施例における超電導薄膜の構造を
示す概念的構成図、第5図は第2図の本発明の実施例に
おける薄膜の製造装置の概略を示す斜視図、第6図は第
5図の装置により得た薄膜における抵抗の温度特性を示
すグラフである。 11、12、50,51、52、53、54……スパッタリングターゲ
ット、13、55……シャッター、14……アパーチャー、56
……スリット、15、57……MgO基体、16、58……ヒータ
ー、21……Tl−Ba−Ca−Cu−O膜、22……Bi−Ti−O
膜、31、32、33、61、62、63……薄膜の抵抗の温度特
性。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H01L 39/24 H01L 39/24 D // C04B 41/87 C04B 41/87 F (72)発明者 和佐 清孝 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (56)参考文献 特開 平1−106481(JP,A) 特開 昭64−3917(JP,A) 特開 昭64−28844(JP,A) 特開 平1−106479(JP,A) Appl.Phys.Lett.,53 (21) (米) P.2102−2104 Appl.Phys.Lett.,53 (10) (米) P.919−921

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】主体成分が少なくともタリウム(T1)、銅
    (Cu),およびアルカリ土類(II a族)を含む層状酸化
    物超電導薄膜と、主体成分が少なくともビスマス(Bi)
    とチタン(Ti)を含む層状酸化物薄膜が交互に積層され
    た構造を持つ(ここでアルカリ土類は、II a族元素のう
    ちの少なくとも一種あるいは二種以上の元素を示す。)
    ことを特徴とする酸化物超電導薄膜。
  2. 【請求項2】基体上に、少なくともタリウム(T1)を含
    む酸化物と少なくとも銅およびアルカリ土類(II a族)
    を含む酸化物とを周期的に積層させて形成する酸化物薄
    膜と、少なくともビスマス(Bi)を含む酸化物と少なく
    ともチタン(Ti)を含む酸化物を周期的に積層させて形
    成する酸化物薄膜とを、交互に積層させて得る(ここで
    アルカリ土類は、II a族元素のうちの少なくとも一種あ
    るいは二種以上の元素を示す。)ことを特徴とする酸化
    物超電導薄膜の製造方法。
  3. 【請求項3】基体の温度が400〜600℃の範囲にあること
    を特徴とする請求項2記載の酸化物超電導薄膜の製造方
    法。
  4. 【請求項4】積層物質の蒸発を少なくとも二種以上の蒸
    発源で行うことを特徴とする請求項2記載の酸化物超電
    導薄膜の製造方法。
  5. 【請求項5】積層物質の蒸発をスパッタリングで行なう
    ことを特徴とする請求項2記載の酸化物超電導薄膜の製
    造方法。
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WO2018002764A1 (ja) * 2016-06-27 2018-01-04 株式会社半導体エネルギー研究所 スパッタリング装置を用いた金属酸化物の作製方法

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