JP2663343B2 - スクータ型自動二輪車 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 【０００１】 【発明の属する技術分野】本発明は、いわゆるユニット
スイング式動力ユニットにＶベルト式自動変速機を収容
したスクータ型自動二輪車に関するものである。 【０００２】 【発明の背景】スクータ型の自動二輪車においては、エ
ンジンの一側から後方へのびる伝動ケース内にＶベルト
式自動変速機を収容し、この伝動ケースの後部内側に１
個の後車輪を保持し、これらを一体化して動力ユニット
を形成し、この動力ユニットをその前部で上下に揺動自
在となるように運転シート下方に配設してユニットスイ
ング式としたものが公知である。 【０００３】この場合、Ｖベルト式自動変速機は伝動ケ
ース内に収容されている。またこの変速機は、走行中の
ベルトとプーリとの摩擦によって常に発熱している。こ
のためケース内の温度が上昇し、変速機のベルトが劣化
してその耐久性が低下するなどの問題が生じる。 【０００４】そこでこの伝動ケース内に外気を導いてＶ
ベルト等を冷却することが考えられる。この場合後輪が
巻き上げる埃や泥水が伝動ケース内に入ると、Ｖベルト
の耐久性が低下する。そこでＶベルト冷却用エアクリー
ナ装置を設けることが考えられるが、埃や泥水を吸入し
にくくし、他の機器類の配置を考慮して合理的な配置を
可能にすることが必要となる。 【０００５】 【発明の目的】この発明はこのような事情に鑑みなされ
たものであり、Ｖベルト式自動変速機を収容する伝動ケ
ースを有する動力ユニットを上下揺動自在に懸架してユ
ニットスイング式とした場合に、この伝動ケース内に冷
却空気を導いて変速機を冷却すると共に、この冷却空気
とともに埃や泥水が入るのを防止して変速機の耐久性を
向上させることができ、しかも伝動ケース内に冷却空気
を導くＶベルト冷却用エアクリーナ装置を合理的に配置
できるようにしたスクータ型自動二輪車を提供すること
を目的とするものである。 【０００６】 【発明の構成】本発明によればこの目的は、エンジンの
一側から後方へのびる伝動ケースの後部内側に１個の後
車輪を保持すると共にこの伝動ケース内にＶベルト式自
動変速機を収容した動力ユニットを、その前部で上下揺
動自在となるように運転シート下方に配設し、前記運転
シート下方から前記動力ユニットの上方周囲にかけて車
体カバーで覆ったスクータ型自動二輪車において、前記
伝動ケースの上方かつ前記後車輪の側方に配設されその
外側面を前記伝動ケースの後部外側に形成した突出部の
外側面と略同位置としたエンジン用エアクリーナと、前
記伝動ケース内の前部に位置する前記Ｖベルト自動変速
機の駆動プーリの外側面に設けられた送風翼と、前記送
風翼の中央付近に対向して前記伝動ケースの前部外側面
に開口する送風口に外気を導くＶベルト冷却用エアクリ
ーナ装置とを備え、前記Ｖベルト冷却用エアクリーナ装
置を前記エンジン用エアクリーナの外側前方から前記伝
動ケース後部外側に形成した突出部の前方にかけて配設
し、前記エンジン用エアクリーナおよびＶベルト冷却用
エアクリーナ装置の外気吸入口を共に前記車体カバー内
に位置させたことを特徴とするスクータ型自動二輪車に
より達成される。 【０００７】エンジン用エアクリーナには、エンジンに
吸気を導く吸気管をその前部の車体幅方向内側から前方
に延びるように接続するのが望ましい。またエンジン用
エアクリーナおよびＶベルト冷却用エアクリーナ装置
は、共に左右分割式とし、これらのケースの分割面間に
垂直かつ前後方向に延在する板状フィルタを挟持するの
がよい。 【０００８】 【実施態様】図１はこの発明を適用したスクータ型自動
二輪車の要部を示す側面図、図２はその動力ユニットの
一部を破断した平面図、図３はその一部を破断した側面
図、図４は駆動プーリ付近をクランク軸中心を含む面で
断面した断面図、図５はエアクリーナを水平面で断面し
た断面図である。 【０００９】これらの図で、符号１はスクータの車体枠
を示し、この車体枠１は、操向管１ａから下方へ延びた
後水平に後方へ屈曲する鋼管製の前方部材１ｂと、この
前方部材１ｂの後部から上方斜め後方へ延びる後方部材
１ｃと、それらの連結部を強化するための鋼板製のブラ
ケット１ｄとをそれぞれ溶接組立てしてなるものであ
る。２は車体枠１の後方部材１ｃに取付けた燃料タン
ク、３は蓄電池であり、それらは車体カバー４によって
覆われている。５は乗員の運転シートである。 【００１０】車体枠１の後部下方すなわち運転シート５
の下方には、動力ユニット６が搭載されている。この動
力ユニット６は後端に後車輪７を有し、前部のピボット
軸６ａで車体枠１に回動自在に支持された、いわゆるユ
ニットスイング式のものである。この動力ユニット６
は、エンジン８と、このエンジン８のクランクケースの
左側から後方へのびる伝動ケース９と、この伝動ケース
９の後部内側に保持された後車輪７とを有す。 【００１１】伝動ケース９内にはＶベルト自動変速機６
ｂが収容されている。このケース９内の前方には、駆動
プーリ１１が、伝動ケース９内の後方には被動プーリ１
２がそれぞれ収容され、これらの間にはＶベルト１３が
巻き掛けられている。すなわち、クランク軸８ａの伝動
ケース９内にのびた軸端には固定皿１１ａがナットによ
り固定され、また可動皿１１ｂがスプラインにより軸方
向に移動可能に取付けられ、遠心重錘１４の作用により
互いに近接および離隔するように形成され、その構成は
公知のものと同様である。 【００１２】なお伝動ケース９の後部外即には、被動プ
ーリ１２に対応する突出部９ａが形成され、この突出部
９ａの前方には平面視車体幅方向内側へ陥没する凹部９
ｂが形成されている（図２参照）。 【００１３】１５は伝動ケース９の前部外側面に前記固
定皿１１ａの中心部に対向して開口された送風口であ
る。また１６は固定皿１１ａの側面に設けた送風翼であ
る。 【００１４】１７は伝動ケース９の上面に固定されその
長手方向すなわち前後方向に沿って配置されたエンジン
用エアクリーナである。このエンジン用エアクリーナ１
７は伝動ケース９の上方かつ後車輪７の側方に位置し、
その車体幅方向外側の面（外側面）は、伝動ケース９の
突出部９ａの外側面と略同位置にある（図２参照）。 【００１５】このエンジン用エアクリーナ１７の外側前
方にはＶベルト冷却用エアクリーナ１７Ａが隔壁１７
ａ、１７ａによって画成されている。すなわちエンジン
用エアクリーナ１７とＶベルト冷却用エアクリーナ１７
Ａとは一体化されている。これらエアクリーナ１７、１
７Ａを形成するケースは左右割りであり、このケースの
割面間に連続気泡からなる通気性の１板の板状フィルタ
１７Ｂが挟持されている。 【００１６】エンジン用エアクリーナ１７は、隔壁１７
ａで画成された大室１７ｂを持ち、フィルタ１７Ｂより
外側の下面に開口する外気吸入口１７ｃと、ケースの前
部の車体幅方向内側から前方に開口する吸気出口１７ｄ
を持つ。外気吸気口１７ｃは前記伝動ケース９の凹部９
ｂの上方に臨み、この外気吸入口１７ｃには前記伝動ケ
ース９の突出部９ａの前方から下方を指向して凹部９ｂ
に開口する吸気ダクト１７Ｃが取付けられている。 【００１７】また吸気出口１７ｄにはエンジン８の気化
器２５に吸気を導く吸気管１７Ｄが接続されている。従
って外気は伝動ケース９の外側であって突出部９ａの前
方から吸気ダクト１７Ｃ、外気入口１７ｃを通って吸入
され、フィルタ１７Ｂを通り大室１７ｄに入り、吸気出
口１７ｄから吸気管１７Ｄに導かれる。 【００１８】Ｖベルト冷却用エアクリーナ１７Ａは、フ
ィルタ１７Ｂより車体幅方向内側の小室に前方から外気
を導く外気吸入口１７ｆと、車体幅方向外側の小室から
下方へ開口する吐出口１７ｇを持つ。この吐出口１７ｇ
には伝動ケース９の前記凹部９ｂを通って下方へのびる
ゴム管１８が接続され、このゴム管１８は前記送風口１
５すなわち送風翼１６に対向する送風口１５に連通して
いる。 【００１９】これらＶベルト冷却用エアクリーナ１７Ａ
とゴム管１８とで、送風口１５に外気を導くＶベルト冷
却用エアクリーナ装置が形成されている。１９は伝動ケ
ース９の後部に開口する排風口である。 【００２０】ここに伝動ケース９の上部は図１に明かな
ように、車体後部を覆う車体カバー４の内側に位置し、
この伝動ケース９の上面に位置するエアクリーナ１７、
１７Ａもこの車体カバー４の内部に位置する。そしてこ
れら両エアクリーナ１７、１７Ａは、共にこの車体カバ
ー４の内側から外気を吸入する。このため、エアクリー
ナ１７、１７Ａには埃や泥水が入りにくくなる。またエ
ンジン用エアクリーナ（１７）は、外側方に位置する外
気吸入口１７ｃを持つので、このエアクリーナ（１７）
が後輪（７）に近くても埃や泥水が十分に入りにくくな
る。 【００２１】なお、大室１７ｂは、図５に仮想線で示す
ように、第２の隔壁Ｓを設け、これをエンジンの気化器
２５の始動用吸気通路に、主吸気通路から独立して接続
し、フィルタを共用することもできる。Ｓ₁ はその吸気
入口、Ｓ₂ は出口である。 【００２２】２１はカバー４に設けた換気孔であり、背
面の電動ファン２２によって外気を吸入し車体カバー４
内、すなわちエンジン室の温度上昇を抑制しようとする
ものである。もちろん、これとは逆にエンジン室の熱気
を外部へ排出するようにファンを作動させてもよい。 【００２３】次にこの実施例の作動を説明する。クラン
ク軸８ａが回転すると、固定皿１１ａの送風翼１６によ
り、その中心部の空気が放射方向へ送られ、この空気は
伝動ケース９内を駆動プーリ１１側から被動プーリ１２
側へ向って後方へ流動し、後部の排風口１９へ至る間に
伝動ケース９内を冷却し、その過熱を防ぐ。送風口１５
から導入される空気は前記Ｖベルト冷却用エアクリーナ
１７，１７Ａで塵埃を除去されているので、Ｖベルト１
３や各プーリ１１、１２を傷めることがない。 【００２４】また、このＶベルト冷却用エアクリーナ１
７Ａはエンジン８の吸気が通るエンジン用エアクリーナ
１７と一体的に設けられ、フィルタ１７Ｂも共用されて
いるので、構造が簡単であり、伝動ケース９と略一体的
にコンパクトに構成される。 【００２５】 【発明の効果】請求項１の発明は以上のように、Ｖベル
ト式自動変速機を収容する動力ユニットと一体の伝動ケ
ース内に、この変速機の駆動プーリと一体に回転する送
風翼によって冷却空気を導き、ケース内を冷却するもの
であるから、変速機のベルトなどを効率よく冷却するこ
とができる。またこの伝動ケース内に導かれる冷却空気
は、Ｖベルト冷却用エアクリーナでこれに含まれた埃や
泥水を除去できるので、埃や泥水などがベルトなどに付
着するのを防止でき、変速機の耐久性を向上させること
ができる。 【００２６】またエンジン用エアクリーナ（１７）およ
びＶベルト冷却用エアクリーナ装置の外気吸入口（１７
ｃ、１７ｆ）は、共に車体カバー（４）の内側に開口す
るから、後車輪（７）が巻き上げる埃や泥水が吸入され
にくくなる。このためフィルタ（１７Ｂ）の汚れが少な
くなり、メンテナンス頻度を減らすことができる。 【００２７】さらにエンジン用エアクリーナ（１７）は
伝動ケース（９）の上方に配設し、その外側面を伝動ケ
ース（９）の突出部（９ａ）の外側面と略一致させたの
で、動力ユニット（６）の横幅は増大することがない。 【００２８】またＶベルト冷却用エアクリーナ装置を、
このエンジン用エアクリーナ（１７）の側部前方で伝動
ケース（９）の突出部（９ａ）の前方にかけて配設した
から、エンジン用エアクリーナ（１７）の前方と、この
突出部（９ａ）の前方の凹部（９ｂ）を有効に利用し
て、両エアクリーナ（１７、１７Ａ）を互いに干渉させ
ることなく、無理なく配置できる。このため大容量化に
も適する合理的な配置が可能になる。 【００２９】請求項２の発明は、エンジン用エアクリー
ナ（１７）の前部の車体幅方向内側から前方へ延びてエ
ンジンに吸気を導く吸気管を接続したものであるから、
Ｖベルト冷却用エアクリーナ（１７Ａ）の車体幅方向内
側を通してこの吸気管を無理なく配設することができ
る。 【００３０】請求項３の発明はエンジン用エアクリーナ
（１７）とＶベルト冷却用エアクリーナ（１７Ａ）のケ
ースを共に左右割りとし、この割り面間に垂直かつ前後
方向に延在する板状のフィルタ（１７Ｂ）を挟持したも
のであるから、前後に長い伝動ケース（９）の上方の空
間を利用してフィルタ（１７Ｂ）の濾過面積を十分に広
くすることができ、またメンテナンスは共に車体外側方
から行うことができるから作業性が良い。

【図面の簡単な説明】 【図１】この発明を適用したスクータ型自動二輪車の要
部を示す側面図 【図２】その動力ユニットの一部を破断した平面図 【図３】その一部を破断した側面図 【図４】駆動プーリ付近をクランク軸中心を含む面で断
面した断面図 【図５】エアクリーナを水平面で断面した断面図 【符号の説明】 １ 車体枠 ４ 車体カバー ６ 動力ユニット ６ｂ Ｖベルト式自動変速機 ７ 後車輪 ８ エンジン ９ 伝動ケース ９ａ 突出部 ９ｂ 凹部 １１ 駆動プーリ １２ 被動プーリ １６ 送風翼 １７ エンジン用エアクリーナ １７Ａ Ｖベルト冷却用エアクリーナ １７Ｂ フィルタ １７Ｄ 吸気管 １７ｃ、１７ｆ 外気吸入口 １８ Ｖベルト冷却用エアクリーナ装置の一部であるゴ
ム管

Claims (1)

1. (57)【特許請求の範囲】 １．エンジンの一側から後方へのびる伝動ケースの後部
   の内側に１個の後車輪を保持すると共にこの伝動ケース
   内にＶベルト式自動変速機を収容した動力ユニットを、
   その前部で上下揺動自在となるように運転シート下方に
   配設し、前記運転シート下方から前記動力ユニットの上
   方周囲にかけて車体カバーで覆ったスクータ型自動二輪
   車において、 前記伝動ケースの上方かつ前記後車輪の側方に配設され
   その外側面を前記伝動ケースの後部外側に形成した突出
   部の外側面と略同位置としたエンジン用エアクリーナ
   と、 前記伝動ケース内の前部に位置する前記Ｖベルト自動変
   速機の駆動プーリの外側面に設けられた送風翼と、 前記送風翼の中央付近に対向して前記伝動ケースの前部
   外側面に開口する送風口に外気を導くＶベルト冷却用エ
   アクリーナ装置とを備え、 前記Ｖベルト冷却用エアクリーナ装置を前記エンジン用
   エアクリーナの外側前方から前記伝動ケース後部外側に
   形成した突出部の前方にかけて配設し、 前記エンジン用エアクリーナおよびＶベルト冷却用エア
   クリーナ装置の外気吸入口を共に前記車体カバー内に位
   置させたことを特徴とするスクータ型自動二輪車。 ２．エンジン用エアクリーナには、その前部の車体幅方
   向内側から前方に延びてエンジンに吸気を導く吸気管が
   接続されている請求項１のスクータ型自動二輪車。 ３．エンジン用エアクリーナおよびＶベルト冷却用エア
   クリーナ装置は共に左右分割型のケースを持ち、これら
   のケースの分割面間に垂直かつ前後方向に延在する板状
   フィルタが挟持されている請求項１または２のスクータ
   型自動二輪車。