JP3813284B2 - スクータ型自動二輪車 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、伝動ケース内に冷却ファンを設け、該冷却ファンによって伝動ケース内に新気を導入するようにしたユニットスイング式エンジンを備えるスクータ型自動二輪車に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にスクータ型自動二輪車にはユニットスイング式エンジンが搭載されるが、このユニットスイング式エンジンは駆動源としてのエンジンと自動変速機及び動力伝達機構を内蔵した伝動ケースとを一体化してユニットとして構成されるものである。
【0003】
ところで、ユニットスイング式エンジンにおいては、自動変速機のプーリに冷却ファンを形成し、該冷却ファンによって伝動ケース内に新気を導入して各部の冷却に供することが行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来のユニットスイング式エンジンにおいては、伝動ケースの側壁は略全面に亘って平坦な形状に形成されていたために該側壁と冷却ファンとの間に大きな隙間が形成され、冷却ファンの効率が低下して伝動ケース内の冷却効率も下がるという問題があった。
【0005】
又、伝動ケースの側壁に外側方へ膨らむように新気導入通路を形成していたため、伝動ケースが大型化するという問題もあった。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、冷却ファンの効率を高めて伝動ケース内の冷却効率を高めることができるとともに、新気導入ダクトをコンパクトに配置して伝動ケースのスペース効率も高めることができるスクータ型自動二輪車を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、エンジンと、自動変速機及び動力伝達機構を内蔵して成る伝動ケースとを一体化して構成されるユニットスイング式エンジンを備え、前記自動変速機のプーリに設けられた遠心式冷却ファンによって新気を導入口から伝動ケース内に導入するようにしたスクータ型自動二輪車において、前記伝動ケースの側壁の前端部に、前記遠心式冷却ファンに近接する凹部を形成するとともに、該凹部に前記導入口を開口せしめ、前記凹部は、前記伝動ケースの側面視において上下方向の中央部に比べ上下端部のそれぞれが車体後方に向けて延びる三日月状であり、前記伝動ケースの前方には、前記導入口と連通するエアクリーナが配設されたことを特徴とする。
【0008】
従って、本発明によれば、伝動ケースの側壁の一部に冷却ファンに近接する凹部を形成したため、冷却ファンの効率が高められて冷却風量が増え、これによって伝動ケース内の自動変速機や動力伝達機構の冷却効率が高められる。
【0009】
又、伝動ケース側壁の凹部に導入口を開口せしめたため、導入口に連なる新気導入ダクトをコンパクトに配置することができ、伝動ケースのスペース効率も高められる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
先ず、本発明に係るスクータ型自動二輪車の全体構成を図1に基づいて説明する。尚、図1は本発明に係るスクータ型自動二輪車の全体側面図である。
【0012】
本実施の形態に係るスクータ型自動二輪車1はオフロード用であって、その車体前方上部にはヘッドパイプ2が位置しており、該ヘッドパイプ2内にはステアリング軸3が回動自在に挿通している。そして、このステアリング軸3の上端にはハンドル4が結着され、同ステアリング軸3の下端にはフロントフォーク5が結着されており、該フロントフォーク5の下端部には前輪6が回転自在に軸支されている。
【0013】
又、前記ヘッドパイプ2からはダウンチューブ7が車体後方に向かって斜め下方に延出した後、折り曲げられて車体後方に向かって略水平に延出しており、該ダウンチューブ7の途中からは左右一対のシートレールフレーム8が分岐して車体後方に向かって斜め上方に延設されている。
【0014】
ところで、車体前部の前記ヘッドパイプ2、ダウンチューブ7等は樹脂製のフロントカバー9によって覆われており、ハンドル4とシート10との間には低床式の足載台11が設けられている。
【0015】
一方、シート10の下方には動力ユニットとしてのユニットスイング式エンジン12が設けられている。このユニットスイング式エンジン12は、駆動源としての2サイクルエンジン13と伝動ケース14とを一体化して構成され、伝動ケース14はエンジン13の一側(車体左側)から車体後方に延び、その後端には後輪15が回転自在に支持されている。尚、エンジン13の排気系から導出する排気管16は車体右側(図1の裏面側)を車体後方に向かって延び、その後端には後輪15の右側に配されたマフラー17が接続されている。
【0016】
而して、ユニットスイング式エンジン12は、シートレールフレーム8の中間部に固着されたエンジン懸架ブラケット18に揺動自在に支持されており、その後端上部はリヤクッション19を介してシートレールフレーム8に支持されている。
【0017】
他方、車体のシート10よりも下方の部位は樹脂製の車体カバー20によって覆われており、該車体カバー20内には、上面が開口する収納ボックス21と燃料タンク22が前後に収納されており、これらの側方にはオイルタンク23が配されている。
【0018】
ところで、前記ハンドル4は樹脂製のハンドルカバー24によって覆われており、該ハンドル4の左右両端に設けられたグリップ25はその前方が樹脂製のグリップガード26によって覆われている。
【0019】
ここで、前記ユニットスイング式エンジン12の伝動ケース14とその内部構成を図2乃至図5に基づいて説明する。尚、図2は伝動ケース内の構成を示すユニットスイング式エンジンの部分平断面図、図3は伝動ケースの側面図、図4は図3のA−A線拡大断面図、図5は図3のB−B線拡大断面図である。
【0020】
図2に示すように、伝動ケース14内には前方(図2の左方)からエンジン13のクランク軸47、従動軸48、不図示の中間軸及び出力軸(後車軸)49が互いに平行に配されている。
【0021】
而して、上記クランク軸47の回転はVベルト式自動変速機50によって自動変速されて従動軸48に伝達され、この従動軸48の回転は該従動軸48に形成されたギヤ48a、前記中間軸に支持された不図示のギヤ及び前記出力軸49に結着されたギヤ51で構成される動力伝達機構を経て出力軸49に伝達され、該出力軸49に支持された前記後輪15が回転駆動される。
【0022】
前記Vベルト式自動変速機50は、クランク軸47の一端部に設けられた駆動プーリ52と従動軸48の一端部(オーバーハング部)に設けられた従動プーリ53との間に無端状のVベルト54を巻装して構成されている。
【0023】
ところで、クランク軸47の端部には固定シーブ52aとカムプレート55とが所定距離隔てて固定されており、両者間のクランク軸47上には可動シーブ52bが摺動自在に嵌装されており、前記駆動プーリ52は固定シーブ52aと可動シーブ52bによって構成されている。そして、可動シーブ52bと前記カムプレート55の背面側との間に形成される空間には複数の遠心ウェイト56が径方向に移動自在に収容されている。
【0024】
而して、上記固定シーブ52aの背面外周部には複数枚のフィン57が一体に形成されており、該固定シーブ52aは遠心式の冷却ファンを構成している。
【0025】
一方、前記従動軸48のオーバーハング部外周には中空軸58が回転自在に支承されており、該中空軸58の内端部には固定シーブ53aが結着されている。そして、中空軸58の外周には可動スリーブ59が軸方向に摺動自在に嵌装されており、該可動スリーブ59の内端部に結着された可動シーブ53bと前記固定シーブ53aによって前記従動プーリ53が構成されている。
【0026】
又、従動軸48の端部には遠心クラッチ60が設けられており、該遠心クラッチ60のクラッチインナー61と前記従動プーリ53の可動シーブ53bとの間にはスプリング62が縮装されており、可動シーブ53bと可動スリーブ59とはスプリング62によって固定シーブ53a側に常時付勢されている。
【0027】
ところで、本実施の形態においては、伝動ケース14はクランクケースと一体の伝動ケース本体と、該本体の側部を覆うケースカバー14Aとで構成されており、このケースカバー14Aの前端部の一部(図3にハッチングを付した三日月状の部分)に駆動プーリ52の固定シーブ52a(より具体的には、固定シーブ52aの冷却ファンを構成するフィン57)に近接する凹部a(図2及び図4参照)が形成されている。そして、図3及び図5に示すように、ケースカバー14Aの凹部aには車体前方に向かって斜め下方に傾斜した新気導入ダクト14aが一体に形成されており、この新気導入ダクト14aはケースカバー14Aの凹部aに開口している。又、図2に示すように、ケースカバー14の後部には新気排出口14bが開口している。
【0028】
次に、前記ユニットスイング式エンジン12の新気導入系の構成を図6及び図7に基づいて説明する。尚、図6はユニットスイング式エンジンの新気導入系の構成を示す足載台下部周辺の部分側面図、図7は同足載台下部周辺の部分平面図である。
【0029】
前記足載台11は樹脂にて一体成形され、その左右両端部は下方に折り曲げられている。そして、この足載台11は、図6に示すように、前記左右一対のシートレールフレーム8間に横架された前後のクロス部材27,28に載置されて取り付けられており、その下方及び両側方は同じく樹脂にて一体成形されたアンダーカバー29によって覆われている。従って、足載台11の下方には該足載台11とアンダーカバー29によって囲まれる空間が形成されている。
【0030】
而して、足載台11の下方に形成された上記空間は、足載台11の前後に吊り下げ支持された前後のパネル30,31によって区画され、足載台11の下方には該足載台11とアンダーカバー29及び前後のパネル30,31によって区画されるクリーン室Sが形成されている。尚、パネル30,31は可撓性の軟質塩化ビニル或はゴムによって薄板状に成形されており、アンダーカバー29を取り付けると同時に足載台11の下方に該足載台11とアンダーカバー29及び前後のパネル30,31によって区画されるクリーン室Sが形成されるが、この場合、可撓性のパネル30,31の周縁がアンダーカバー29の内壁に密着して隙間を埋めるため、クリーン室Sへの泥等の侵入が確実に防がれる。
【0031】
一方、図6及び図7に示すように、足載台11の後方の車体左側に配設された前記ユニットスイング式エンジン12の前部に設けられたエアクリーナ36の吸気口36aからは吸気ダクト37が導出しており、この吸気ダクト37は車体前方へ延ばされ、その前端部は足載台11の下方に画成された前記クリーン室S内に引き込まれて該クリーン室S内に開口せしめられている。
【0032】
上記吸気ダクト37は、エアクリーナ36の吸気口36aにクランプ38によって一端が接続された蛇腹状の可撓性パイプ37aと、該可撓性パイプ37aの先部にクランプ39によって接続された吸気パイプ37bとで構成され、吸気パイプ37bはブラケット40を介して左側のシートレールフレーム8に取り付け支持されている。
【0033】
ところで、本実施の形態においては、エアクリーナ36の内部は図6に示すように2つの室S1,S2に区画されており、一方の室S1には前記吸気口36aが開口しており、該室S1はエアクリーナ36の下部に後方に向かって開口する吐出口36bに連なる伝動ケース14の前記新気導入ダクト14aを介して伝動ケース14内に連通している。又、エアクリーナ36の他方の室S2には別の吸気口36cが開口しており、該室S2はエアクリーナ36の上面に接続された吸気パイプ45を介してキャブレタ46(図7参照)に接続されている。尚、エアクリーナ36内には、吸気口36a,36cと吸気パイプ45及び吐出口36bとを区画する1枚のエレメントが設けられている。
【0034】
而して、本実施の形態によれば、新気はフロントカバー9の上面開口部等からフロントカバー9内に導入され、足載台11とアンダーカバー29によって形成される空間内を車体後方に向かって流れてクリーン室S内に流入するが、オフロード用のスクータ型自動二輪車1であっても、足載台11の下方に画成されたクリーン室Sへの泥や埃の侵入が前後のパネル30,31等によって防がれるため、このクリーン室S内の清浄な新気のみが該クリーン室Sに開口する吸気ダクト37を経てユニットスイング式エンジン12のエアクリーナ36に吸引される。そして、エアクリーナ36に吸引された新気はエアクリーナ36に内蔵された不図示のエレメントを通過して浄化された後、伝動ケース14内に設けられた冷却ファン(駆動プーリ52の固定シーブ52aによって構成される冷却ファン)によって室S1から新気導入ダクト14aを経て伝動ケース14に吸引され、冷却ファンの中心部へ導かれた後、伝動ケース14内のVベルト式自動変速機50や動力伝達機構等へ送風され、これらの冷却に供され、その後、新気排出口14bから大気中に排出される。又、吸気口36cからエアクリーナ36内に導入された新気はS2から吸気パイプ45を経てキャブレタ46に至り、キャブレタ46での混合気の形成に供される。
【0035】
以上において、本実施の形態では、伝動ケース14のケースカバー14Aの前端部に凹部aが形成されているため、該凹部aと冷却ファンを構成する固定シーブ52aのフィン57との間の隙間が詰められ、固定シーブ52aによって構成される冷却ファンの効率が高められて電動ケース14内での冷却風量が増え、これによって伝動ケース14内のVベルト式自動変速機50や動力伝達機構の冷却効率が高められる。
【0036】
又、伝動ケース14のケースカバー14Aに形成された凹部aに新気導入ダクト14aを形成してこの新気導入ダクト14aを凹部aに開口せしめたため、新気導入ダクト14aをケースカバー14Aの凹部aを利用してコンパクトに配置することができ、伝動ケース14のスペース効率も高められる。
【0037】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、エンジンと、自動変速機及び動力伝達機構を内蔵して成る伝動ケースとを一体化して構成されるユニットスイング式エンジンを備え、前記自動変速機のプーリに設けられた遠心式冷却ファンによって新気を導入口から伝動ケース内に導入するようにしたスクータ型自動二輪車において、前記伝動ケースの側壁の一部に前記冷却ファンに近接する凹部を形成し、該凹部に前記導入口を開口せしめたため、冷却ファンの効率を高めて伝動ケース内の冷却効率を高めることができるとともに、新気導入ダクトをコンパクトに配置して伝動ケースのスペース効率も高めることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスクータ型自動二輪車の全体側面図である。
【図2】本発明に係るスクータ型自動二輪車の電動ケース内の構成を示すユニットスイング式エンジンの部分平断面図である。
【図3】本発明に係るスクータ型自動二輪車の電動ケースの側面図である。
【図4】図3のA−A線拡大断面図である。
【図5】図3のB−B線拡大断面図である。
【図6】本発明に係るスクータ型自動二輪車のユニットスイング式エンジンの新気導入系の構成を示す足載台下部周辺の部分側面図である。
【図7】本発明に係るスクータ型自動二輪車のユニットスイング式エンジンの新気導入系の構成を示す足載台下部周辺の部分平面図である。
【符号の説明】
1 スクータ型自動二輪車
12 ユニットスイング式エンジン
13 エンジン
14 電動ケース
14A ケースカバー
14a 新気導入ダクト
a 電動ケースの凹部
50 Vベルト式自動変速機(自動変速機)
52 駆動プーリ
52a 固定シーブ(冷却ファン)
57 フィン
Claims (2)
- エンジンと、自動変速機及び動力伝達機構を内蔵して成る伝動ケースとを一体化して構成されるユニットスイング式エンジンを備え、前記自動変速機のプーリに設けられた遠心式冷却ファンによって新気を導入口から伝動ケース内に導入するようにしたスクータ型自動二輪車において、
前記伝動ケースの側壁の前端部に、前記遠心式冷却ファンに近接する凹部を形成するとともに、該凹部に前記導入口を開口せしめ、
前記凹部は、前記伝動ケースの側面視において上下方向の中央部に比べ上下端部のそれぞれが車体後方に向けて延びる三日月状であり、
前記伝動ケースの前方には、前記導入口と連通するエアクリーナが配設されたことを特徴とするスクータ型自動二輪車。 - 前記導入口は、車体前方に向かって開口し、
前記伝動ケースの後部に設けられ、前記導入口から導入された前記新気を排出する新気排出口をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のスクータ型自動二輪車。
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