JP2643002B2 - 粉末成形体の脱脂方法 - Google Patents

粉末成形体の脱脂方法

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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は、金属またはセラミック等の粉末の焼結材料
の製造方法に関するものであり、詳しくは、粉末成形体
の脱脂方法に関するものである。
<従来の技術> 小型で複雑な形状をした金属、セラミックスあるいは
サーメット等の部品の製造方法のなかで、粉末と成形助
剤との混合物を射出成形あるいは押し出し成形し、成形
体から成形助剤を除去する脱脂工程後、成形体の焼結を
行う方法が製品特性および経済性の観点から有望視さ
れ、工業化されている。
これらの製造方法において、品質および製造コストを
大きく左右する工程は脱脂工程である。そのため、品質
向上、製造コスト削減を目差して、種々の技術改善が行
われてきた。例えば、特公昭61−48563号公報において
は、成形体を多孔質の吸収材上に静置し、ガスを勢いよ
く送風することで、脱脂時間を短縮している。しかし、
この方法では、最終製品の表面性状や形状に問題が残
る。
一方、本発明者らは、真空あるいは減圧を利用して成
形助剤の一部を低温で除去することで、高寸法精度を確
保することに成功した。また、こうしてある一定量の成
形助剤を除去した後は、急速に成形助剤を除去しても欠
陥を生じないため、脱脂処理時間の短縮、すなわち、製
造コスト削減にも有効な手段であることを知り、特許出
願した(特願平1−12724)。
しかし、従来の脱脂方法においては、いずれも、特に
厚物を脱脂する際には、脱脂後に残留するC量が0.5wt
%以上と高く十分に低減することができないため焼結に
時間がかかるという問題があった。すなわち、焼結に当
ってはCを除去する必要があるので、C量が高いとそれ
だけ余分に時間がかかるのである。また、場合によって
は焼結時にC量が低減できないと材料特性例えば耐食
性、磁気特性等が劣化するおそれもある。
<発明が解決しようとする課題> 本発明は、上述した従来技術の問題点を解消し、脱脂
時に成形体からC量を十分に例えば、0.3wt%程度以下
に低減可能な粉末成形体の脱脂方法を提供することを目
的とする。
<課題を解決するための手段> 脱脂後のC量を十分に低減するために、本発明は、原
料粉末に対する成形助剤の体積比率が0.5〜1.5の範囲に
ある粉末成形体から成形助剤を除去する粉末成形体の脱
脂方法であって、予備処理として該粉末成形体を0.1Tor
r以下の減圧下で80℃以上250℃未満の温度領域にて保持
して成形助剤の一部を除去し、その後、予備処理した粉
末成形体を水素ガス雰囲気中にて250〜800℃の温度領域
で残部の成形助剤の除去を行うことを特徴とする粉末成
形体の脱脂方法を提供する。予備処理の方法としては、
減圧下で80℃以上250℃未満に加熱する。
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は、原料粉末に対する成形助剤の体積比率が、
0.5〜1.5の範囲にある粉末成形体から成形助剤を除去す
る場合に適用される。この体積比率が0.5未満の場合
は、他の脱脂方法によっても十分に低いC量となる。ま
た、体積比率が1.5を超えると成形体の形状を崩すこと
なく脱脂することは不可能となる。したがって、脱脂の
対象となる成形体の原料粉末に対する成形助剤の体積比
率は、0.5〜1.5の範囲である。
本発明の脱脂においては、本脱脂として、粉末成形体
が250〜800℃の温度域を通過する過程において、その雰
囲気の一部または全部を水素含有ガス雰囲気とすること
が必要である。
成形助剤を加熱すると、その一部は、溶解後の流出、
蒸発または分解後の蒸発によって除去される。ところ
が、成形助剤の一部は、除去される前に、分子構造が環
化、芳香族化、重縮合し、その結果、もはや除去しがた
い分子構造となる。脱脂後の残留C量を低減する一つの
方法は、環化、芳香族化、重縮合反応を抑制することで
ある。
これらの反応は、水素、メタンおよび低分子有機物の
いずれかを生成させる反応である。したがって、水素、
メタンおよび低分子有機物のいずれかを加熱時に供給す
ることで、環化、芳香族化、重縮合反応を抑制できる。
しかし、メタンおよび低分子有機物の添加は、分解反応
をも抑制する場合があるため好ましくない。一方、水素
は、分解反応を阻害せず、むしろ、メタン生成反応によ
り分解を促進する。
したがって、脱脂時の雰囲気は、水素含有ガスである
ことが必要である。また、この水素含有ガスの使用によ
る効果は、250℃未満では殆ど期待できない。また、水
素含有ガスを使用することなく、800℃を超えて昇温し
た場合、もはや成形助剤の環化、芳香族化、重縮合反応
は完了しているため、この後に250〜800℃の温度範囲で
水素含有ガスで成形体を処理したとしても炭素を低減す
ることはできない。したがって、脱脂時に粉末成形体が
250〜800℃の温度域を通過する過程で水素含有ガスを使
用することが必要である。特に、水素含有ガスを使用し
なかった場合に成形助剤の環化、芳香族化、重縮合反応
が最も活発に進行する温度域である250℃〜700℃で水素
含有ガスを使用する。250〜550℃の全域で水素含有ガス
を使用するのがさらに好ましい。
また、形状保持および脱脂時間短縮の観点より、あら
かじめ、予備処理、すなわち予備脱脂により成形助剤の
一部を除去する。脱脂時において、形状欠陥のおそれが
あるのは、成形助剤の一部を除去するまでの過程のみで
ある。この過程においては、おおよそ、250℃未満の低
温度に長時間保持する必要があり、この温度域では、水
素含有ガスは炭素低域に寄与しないため、別の方法によ
る方が経済上の観点等から好ましい。
特に、予備処理の方法としては、0.1Torr以下の減圧
下の加熱が粉末成形体の形状上の観点から最も好まし
い。この0.1Torr以下の減圧下の加熱による方法は、本
発明者等が既に開示したものであり(特願平1−1272
4)、本発明と組み合せることで脱脂方法の最良の姿と
することができる。また、予備処理の温度は、形状保持
および脱脂時間短縮の観点より、80℃以上250℃未満と
する。
まず、本発明に使用する粉末は、金属、セラミックお
よびサーメット類の粉末のいずれでもよく、例えば、ア
トマイズ法、還元法、カルボニル法、粉砕法によって得
られる合金あるいは単体金属粉末、およびセラミック粉
末、サーメット類の粉末であり、必要に応じて、これら
の粉末を分級、混合することによって用意できる。ただ
し、還元法、カルボニル法、粉砕法によって製造しうる
粉末組成はかなり限定されるため、アトマイズ法が応用
範囲が広い。また、金属粉末が好ましい。
また、これら粉末の平均粒径は20μm以下のものが使
用でき、7〜14μm程度のものが、密度が高いこと等、
優れた焼結体特性が得られる利点があるため好ましい。
適用できる組成系は、ステンレス、純鉄、Fe−Ni、Fe
−Si、Fe−Co等の金属系、および、Si−C、Si−N、Si
−O、Ti−Cなどのセラミック系の構造材料あるいは磁
性材料用などの広範囲にわたって適用できる。
粉末成形体を例えば射出成形にて作製するには、好ま
しくは平均粒径が20μm以下の、射出成形用粉末を、ま
ず、形成助剤としてのバインダと混合・混練し、射出成
形用コンパウンドを調整する。
適用可能なバインダは、熱可塑性樹脂類、ワックス
類、可塑剤あるいはその混合物を主体とする公知のバイ
ンダはいずれも適用可能であり、また必要に応じて潤滑
剤、脱脂促進剤等を添加しても良い。
熱可塑性樹脂としては、アクリル系、ポリエチレン
系、ポリプロピレン系およびポリスチレン系等の一種、
あるいは二種以上を混合および/または共重合して用い
ることができる。
ワックス類としては密ろう、木ろう、モンタンワック
ス等の天然ろう、低分子ポリエチレン、ミクロクリスタ
リンワックス、パラフィンワックス等の合成ろう等の一
種あるいは二種以上を混合して用いることができる。
可塑剤は、バインダの主成分により適宜選択すればよ
く、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)、フタル
酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジ−n−ブチル(DBP)等
が例示できる。また、ワックス類を可塑剤として兼用で
きる。
潤滑剤としては、高級脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸
エステル等が適用可能であり、場合によってはワックス
類を潤滑剤として兼用してもよい。
また、必要に応じ、脱脂促進剤として樟脳等の昇華性
物質を添加してもよい。
なお、このようなバインダと原料粉末との混合比は、
通常50:50〜40:60vol%程度である。
原料粉末とバインダとの混練方法は特に制限はなく、
加圧ニーダ、バンバリーミキサー、2軸押出し機等の各
種のニーダ等によればよい。
このようにして調製した射出成形用コンパウンドは、
必要に応じペレダイザー、粉砕器等を用いて造粒を行な
い、ぺレットとしてもよい。
次いで、得られた射出成形用コンパウンドを射出成形
して成形体を作製する。
射出成形は、通常のプラスチック用射出成形機、ある
いは最近市販されるようになったセラミック用、金属粉
末用射出成形機等、通常の射出成形に用いられる射出成
形機を用いて行えばよい。
この際において、射出圧力は通常500〜2500kgf/cm2
度、温度は100〜180℃程度である。
最後に、得られた成形体の脱脂処理を本発明の脱脂工
程により行う。
本発明の脱脂工程を構成する脱脂予備処理、および、
それに引き続く加熱脱脂処理の方法は、前述の通りであ
る。
本発明においては、このように射出成形にて得られた
脱脂済みの成形体を焼結して金属あるいはセラミックな
どの結晶体を製造する。
前記脱脂後、前記原料粉末がステンレスの場合には、
10-2〜10-4Torr中、1050〜1300℃、0.5〜4時間保持し
た後、アルゴン、窒素等の不活性ガスを導入し、1200〜
1370℃、0.5〜2時間保持して焼結するとよい。また他
のFe、Fe−Ni系、Fe−Co系などの酸化性の低い金属のみ
を用いた場合には、水素ガス等の還元性ガス中800〜130
0℃、0.5〜4時間保持して焼結するのがよい。
Fe−Si等の酸化性の高い金属を焼結する場合は、ステ
ンレスと同様の方法で焼結する。
これらの工程を経ることによって本発明では優れた金
属焼結体およびセラミック焼結体などを得ることができ
る。
また、粉末成形体は上記射出成形に限らず、押出し成
形など他の方法によって成形してもよい。
<実施例> 以下、本発明を実施例にしたがい具体的に説明する。
(実施例1) 平均粒径8.5μmのSUS316組成の原料粉末と10.5wt%
の成形助剤より成る粉末射出成形体を用意した。このと
きの原料粉末に対する成形助剤の体積比率は0.8であっ
た。また、この原料粉末のCの分析値は、0.04wt%であ
った。ここで使用した成形助剤は、アクリル樹脂10wt
%、エチレン酢酸ビニル共重合体15wt%、ポリエチレン
25wt%、パラフィンワックス25wt%、フタル酸エステル
15wt%、ステアリン酸亜鉛10wt%により構成されるもの
である。射出成形機を用いて粉末成形体を、幅13×長さ
65×厚さ5.5mmの直方体形状に成形した。真空乾燥機中
に粉末射出成形体を置き、0.1Torrの減圧下、80℃で4
時間保持、130℃で3時間保持、さらに180℃で2時間保
持することで、成形体より成形助剤を24%除去し、脱脂
予備処理体を作製した。脱脂予備処理体を、種々の雰囲
気中、第1表に示した条件で昇温、保持、冷却して本脱
脂を行った。
第1表より、明らかなように、水素中、比較的低い温
度域で処理することによって、脱脂体C量を低減できる
(本発明1〜5)。
一方、窒素のような不活性ガス雰囲気中(従来法1〜
3、比較例1〜2)では、高い残留Cが避けられず、た
とえ、長時間を費やそうとも(従来法2)、高温度とし
ようとも(従来法3)、C量を低減することはできな
い。
水素含有ガスは、広い範囲のものが使用でき、高露点
のガス(本発明6)および水素の含有率の低いガス(本
発明7、8)も使用できる。
水素含有ガスを使用する温度域については、200℃以
下では十分にC量を低減できず(比較例2)、300℃で
は、C量を低減できる(本発明1)。また、250〜800℃
の温度範囲のいずれにおいても水素含有ガスを使用せ
ず、850℃まで昇温した場合(従来法3)、その後、水
素含有ガス中で加熱しても、C量を低減することはでき
ない(比較例1)。
ところが、水素含有ガス以外の雰囲気を使用する温度
が常温から600℃である場合(従来法1)、その後、水
素含有ガス中で加熱すればC量を低減することができる
(本発明9)。したがって、250〜800℃の温度領域を通
過する過程において、水素含有ガスを使用する必要性が
明確になった。
なお、第1表に示した脱脂後の粉末成形体を焼結した
とき、焼結に用した時間について比較すると、本発明に
より得た粉末成形体の焼結時間は従来法の3〜4割減で
あった。
さらに、本発明により得られた脱脂体の焼結後の形状
精度は従来法により得た脱脂体の焼結後の形状精度に比
し高精度であるというメリットもあった。
(実施例2) カルボニル鉄粉、還元Co粉およびFe−50%V粉の混合
によるFe−49%Co−2%V組成の平均径6.5μmの原料
粉末を用意した。原料粉末のC量は0.43%であった。実
施例1と同一の成形助剤を原料粉末に対して、12.5wt%
添加した。このとき原料粉末に対する成形助剤の体積比
率は1.0であった。また、この成形原料によりなる、実
施例1と同一形状の粉末射出成形を用意した。実施例1
と同一の方法により、脱脂予備処理体を作製した。これ
を、100%水素(DP:−30℃)中、常温より525℃まで120
℃/minの速度で昇温の後、1時間保持して本脱脂を行っ
た。そのC量は0.05%と原料粉末よりも低い値となっ
た。
比較のため、予備脱脂体を、100%窒素中、常温より5
25℃まで120℃/minの速度で昇温の後、1時間保持して
本脱脂を行った。そのC量は0.9%と著しく高いもので
あった。さらに、比較のため、粉末射出成形体を、予備
処理を行うことなく、100%水素中および100%窒素中で
各々、常温から150℃までを7℃/h、150℃から250℃ま
でを10℃/h、250℃から450℃までを30℃/h、さらに450
℃から600℃までを100℃/minで昇温した後、2時間保持
して脱脂した。この予備処理を行わない場合、窒素中で
脱脂したものは1.15%のCが残留していたのに対して、
水素中で脱脂したものには0.05%のCしか残留していな
かった。
このように、Fe−49%Co−2%Vのように、窒素中で
の脱脂では異常に高いCを残留させる組成に対しても、
本発明の脱脂方法は非常に効果的であることが判った。
また、脱脂予備処理をしない場合にも、本発明は低Cと
する方法として適用できる。
以上、本発明の好ましい例のみを示したが、これは本
発明の範囲を制約するものではなく、特に、あらゆる組
成の原料粉末と成形助剤の組合せに対して適用できる。
また、本実施例では粉末射出成形体の脱脂について例示
したがこれに限定されるものではなく、押し出し粉末成
形体等にも適用できるものである。
<発明の効果> 本発明では、原料粉末に対する成形助剤の体積比率が
0.5〜1.5の範囲にある粉末成形体から成形助剤を除去す
る(脱脂)にあたり、予備処理として該粉末成形体を0.
1Torr以下の減圧下で80℃以上250℃未満の温度領域にて
保持して成形助剤の一部を除去し、その後、予備処理し
た粉末成形体を水素ガス雰囲気中にて250〜800℃の温度
領域で脱脂を行うことにより脱脂体のC量を0.3wt%程
度以下まで低減でき焼結時間を短くすることができた。
特に、粉末成形体をあらかじめ減圧下で加熱し予備処理
することにより成形助剤の一部を除去して、脱脂後のC
量を更に低減できるために脱脂後の焼結時間を短くする
ことができ、経済性に優れる優秀な脱脂体を得ることが
できるというメリットの他に形状精度にも優れる脱脂体
を得られるメリットがある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭49−61009(JP,A) 特開 昭64−28303(JP,A) 特開 昭63−259002(JP,A) 特開 平1−306504(JP,A) 特開 平1−208404(JP,A) 特開 昭63−259001(JP,A) 特開 昭61−201673(JP,A) 特開 平2−164008(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】原料粉末に対する成形助剤の体積比率が0.
    5〜1.5の範囲にある粉末成形体から成形助剤を除去する
    粉末成形体の脱脂方法であって、予備処理として該粉末
    成形体を0.1Torr以下の減圧下で80℃以上250℃未満の温
    度領域にて保持して成形助剤の一部を除去し、その後、
    予備処理した粉末成形体を水素ガス雰囲気中にて250〜8
    00℃の温度領域で残部の成形助剤の除去を行うことを特
    徴とする粉末成形体の脱脂方法。
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