JP2621580B2

JP2621580B2 - 抗菌防臭性着色ポリエステル系繊維構造物およびその製造方法

Info

Publication number: JP2621580B2
Application number: JP2132125A
Authority: JP
Inventors: 悦暉長谷川; 和也林
Original assignee: Toray Industries Inc
Current assignee: Toray Industries Inc
Priority date: 1990-05-22
Filing date: 1990-05-22
Publication date: 1997-06-18
Anticipated expiration: 2012-06-18
Also published as: JPH0434075A

Description

【発明の詳細な説明】［産業上の利用分野］本発明は、摩擦堅牢度に優れた抗菌防臭性着色ポリエ
ステル系繊維構造物およびその製造方法に関するもので
ある。

［従来の技術］ポリエステル系繊維構造物としては婦人ブラウス、和
装品、ユニフォーム、スポーツ衣料など織編物の各種衣
料あるいは芯地、裏地、カーテン、寝装製品、インテリ
ア製品など、不織布、糸、綿、織編物を含め産業資材、
建装資材など広く利用されている。

これらポリエステル系繊維構造物に対し、微生物の付
着を防止し、あるいは付着繁殖を抑制し、洗濯耐久性お
よびドライクリーニング耐久性があり、風合がソフトで
安全性の高いポリエステル繊維製品の開発が望まれてい
る。

しかしながら、ポリエステル系繊維は結晶性が高く、
かつ、反応性基が少ないことから、金属ゼオライトを繊
維内部に練り込む方法等が、例えば特公昭63-54013号公
報に開示されているが、繊維自体が着色する等の問題点
がある。

一方、後加工方法として、例えば、特開昭61-245378
号公報には、酸性基含有ポリエステル共重合体と抗菌成
分との反応生成物をポリエステル繊維に対し付与した
後、加熱処理することにより接着性を向上させ、耐久性
を付与する方法が開示されている。

しかしながら、この方法では、付与したポリエステル
共重合体のために、得られた繊維製品の風合が硬くなる
という欠点を有している。

また、抗菌防臭剤として、2,4,4′−トリクロロ−
２′−ヒドロキシジフェニルエーテルを用いて処理され
た繊維製品は、紫外線や、次亜塩素酸ソーダによる漂白
によって抗菌効果が消失する欠点を有する。

さらに、特公平1-33589号公報には、アルキルリン酸
エステル第４アンモニウム塩を含有する両性化合物で処
理された抗菌防臭機能を有するポリエステル系繊維構造
物が提案されているが、マサツ堅牢度の低下等の欠点を
有するものであった。

［発明が解決しようとする課題］本発明の目的は、着色された繊維構造物に対し、風合
変化ならびにマサツ堅牢度の低下を伴なうことなく、安
全性の高い抗菌防臭加工剤を付与し、洗濯耐久性および
ドライクリーニング耐久性を有する着色ポリエステル系
繊維構造物を提供することにある。

［課題を解決するための手段］前記目的を達成するために本発明の抗菌防臭性着色ポ
リエステル系繊維構造物は、次の構成を有する。すなわ
ち、下記式［１］で表わされる第４アンモニウム塩を0.02
％owf以上0.1％owf未満を含有する抗菌防臭性着色ポリ
エステル系繊維構造物である。

（Ｒ₁は炭素数12〜16のアルキル基、Ｒ₂,R₃,R₄は炭素
数１〜２のアルキル基、Buはブチル基を示す。）また、本発明の抗菌防臭性着色ポリエステル系繊維構
造物の製造方法は、次の構成を有する。すなわち、ポリエステル系繊維構造物を染色し、さらに該着色繊
維構造物に式［１］で表わされる第４アンモニウム塩の
水溶液を付与した後、150℃〜210℃で乾熱処理すること
により、抗菌防臭性着色ポリエステル系繊維構造物の製
造方法である。

以下、本発明を詳細に説明する。

まず、本発明に用いる抗菌防臭剤について述べる。

本発明に用いる抗菌防臭剤は上記［１］式に示すとお
りの化学構造を有する第４アンモニウム塩であり、式
［１］において、Ｒ₁を炭素数が12〜16のアルキル基と
するものであって、炭素数が11以下または17以上では抗
菌力が不充分となる。

また、式［１］において、Ｒ₂,R₃,R₄を炭素数１また
は２のアルキル基とするものであって、炭素数を３以上
とすると粘度が上がり製造上好ましくなく、また、水に
対する溶解性が低くなる。

第４アンモニウム塩基の中和に用いられる陰イオンと
しては、他の薬品との相溶性を向上させる観点からアル
キルリン酸イオンが選択される。さらに、アルキル基と
しては炭素数が４、すなわち、ブチル基が選択されるも
のである。ブチル基としては、ｎ−ブチル基、iso−ブ
チル基、tert−ブチル基のいずれも好ましく用いられ
る。

アルキル基の炭素数が３以下では、安全性の面で好ま
しくなく、アルキル基の炭素数が５以上では粘度が高く
なり合成が難しくなるとともに、アルキル基の数が１と
２であるアルキルリン酸イオンの混合物となり、安全性
の面で好ましくない。

本発明において、上記［１］式の第４アンモニウム塩
をポリエステル系繊維構造物に対し0.02％owf以上0.1％
owf未満、さらに好ましくは0.03〜0.09％owf含有させる
ことにより、安全でかつ洗濯耐久性のある抗菌防臭性能
を得ることが出来る。

上記第４アンモニウム塩の含有量が0.02％owf未満で
は原布の抗菌性能は得られるが、洗濯耐久性の面から不
充分である。一方、0.1％owf以上であれば抗菌性能に問
題はないが、コスト面での実用性および被染物の染色堅
牢度を低下させ、実用上好ましくない。

かかる抗菌処理剤は両性反応物であり、相溶性が高
く、他の薬剤との併用が可能で、必要に応じて処理浴中
に、柔軟剤、硬仕上剤、制電防止剤、撥水剤、吸水剤な
どを併用することも出来る。

本発明において、上記第４アンモニウム塩を付与する
方法としては、浸漬処理、スプレー処理、泡処理、グラ
ビア処理などの任意の方法を選択出来る。いずれかの方
法によりポリエステル系繊維構造物に抗菌成分を含有さ
せた後、通常の乾燥工程を経て、150℃〜210℃の乾熱処
理を行なうものである。

乾熱処理としては、乾燥とセットを同時に行なうテン
ター１段仕上を採用することも可能である。

150℃未満の熱処理では、処理上りにおいて十分な抗
菌性能を得ることができるが、洗濯耐久性の面で充分で
はなく、一方、210℃を越えると繊維の黄化、脆化の危
険があり実用的に好ましくない。

本発明の製造方法において、該第４アンモニウム塩を
付与した後、乾熱処理を実施するまでに、50℃以上150
℃以下の乾燥工程を組み入れたり、あるいは、スチーミ
ング処理を実施することは、本発明の効果を奏する上で
何ら支障とはならない。

本発明で言うポリエステル系繊維構造物としては、ポ
リエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレー
トのようなポリアルキレンテレフタレートから成る繊維
あるいは該ポリアルキレンテレフタレートと第３成分と
の共重合体からなる繊維ならびに該繊維を基材とした不
織布、織物、編物、縫製品あるいはフィルムのスリット
ヤーンなどを例示することが出来る。

また、繊維断面形態としては丸形、異形を問わない。
さらに、芯鞘状、バイメタル状の複合繊維を含有してい
ても良い。

［実施例］以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明す
る。なお、実施例中の性能評価は次の方法によった。

A.洗濯方法家庭用洗濯機VH-3410（東芝（株）製）を用い、中性
洗剤“ザブ”（花王（株）製）0.2％、温度40℃±２
℃、浴比1:50で５分間強反転で洗濯し、その後、排液、
脱水後、オーバーフローさせながらすすぎを２分間行な
う操作を、２回繰り返し、これを洗濯回数１回とする。

B.抗菌性評価試験方法は、菌数測定法を採用した。試験菌体は黄色
葡萄状球菌（stapylococcus aureus ATTC6538p）を用い
た。試験方法は滅菌試料布に上記試験菌のブイヨン懸濁
液を注加し、密閉容器中で37℃,18時間培養後の生菌数
を計測し、殖菌数に対する菌数を測定し、次の基準に従
った。

log（B/A）＞２の条件下、log（B/C）を菌数増減値差
とし、1.6以上を合格レベルとした。

ただし、Ａは無加工品の接種直後分散回収した菌数、
Ｂは無加工品の18時間培養後分散回収した菌数、Ｃは加
工品の18時間培養後分散回収した菌数を表わす。

C.洗濯堅牢度 JIS L0844 A−II法に準じた。

D.摩擦堅牢度 JIS L0849:学振型（200g）に準じた。

（実施例１、比較例１）経糸、緯糸とも75d-36fil生糸のポリエステル繊維100
％使いの平織物（経糸密度118本/inch、緯糸密度90本/i
nch）を、“サンデットＧ−29"（三洋化成（株）製）2g
/l、ソーダ灰5g/l、“デトロールWR-14"（明成化学工業
（株）製）2g/lを含む処理浴中で98℃,20分間の条件で
糊抜き精練を行なった後、乾燥し、180℃で中間セット
を行ない、分散染料Dianix Black BG-FS 200％（三菱化
成工業（株）製）8.0％owf、助剤として80％酢酸0.5cc/
l、分散剤としてRAP-50（（三洋化成（株）製）0.5g/l
からなる浴で130℃で60分間染色した。

次に、NaOH（30％）2g/l、サンデットＧ−29（三洋化
成（株）製）、0.5g/l、ハイドロサルファイト1.0g/lの
浴で80℃で20分間還元洗浄し、60℃で10分湯洗い後、さ
らに水洗いを実施し、風乾後黒色の染色布帛を得た。

該染色布帛を後述の製法により得られた新規抗菌剤Ｆ
（純分８％）を秤量し、0.18％ows、0.25％ows、0.4％o
ws、1.0％ows、1.2％ows、1.5％ows、2.5％owsの７とお
りの処理浴をそれぞれ調整し、ピックアップ率100％で
絞り、120℃で２分間乾燥した後、ピンテンターで170℃
で30秒の乾熱処理を施して得られた布帛の抗菌性（菌数
増減値差）および摩擦堅牢度を評価した。抗菌性は10回
洗濯後の菌数増減値差で表わした。

その結果を表１に示す。

なお、上記抗菌剤Ｆは次のようにして調整したもので
ある。

ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド100gをイ
ソプロパノール100gに溶解し、40％苛性ソーダ水溶液40
gを加え30分撹拌したのち、瀘過により食塩を除き、こ
の溶液に水を200g加えたのち、リン酸ジｎ−ブチルを中
性になるまで加え、式［１］において、Ｒ₁をC
₁₂H₂₅、、Ｒ₂〜Ｒ₄をCH₃とした第４アンモニウム塩型の
抗菌剤F107gを含む水溶液412gを得た。さらに、イオン
交換水で希釈した抗菌剤Ｆの純分を８％に調整した。

表１から明らかなように、新規抗菌剤含有量が0.02％
owf以上0.1％owf未満（実施例１）においては抗菌性能
および摩擦堅牢度とともに良好である。

一方、0.02％owf未満においては摩擦堅牢度は良好で
あるが、抗菌性の洗濯耐久性が不十分であり、0.1％owf
以上（比較例１）では抗菌性能は十分であるものの、摩
擦堅牢度が不十分である。

（比較例２）ｎ−ブタノール３モルと無水リン酸１モルとから調整
した、モノアルキル置換体／ジアルキル置換体の混合比
が約1/1のアルキル燐酸エステル143部と水500部を反応
釜に仕込み、ラウリルジメチルアミン260部を加えて中
和した。この中和物の中にエチレンオキシド100部を仕
込み、100℃で３時間反応させ得られた抗菌剤にイオン
交換水を加え抗菌剤純分を6.5％に調整した。

該抗菌剤を秤量し、0.4％ows、0.8％ows、1.2％ows、
1.6％ows、3.0％owsの５とおりの処理浴をそれぞれ調整
し、実施例１で得た染色布帛を実施例１と同様、ピック
アップ率100％で絞り後、乾燥、熱処理して得られた布
帛の抗菌性および摩擦堅牢度を測定した結果を表２に示
す。抗菌性または摩擦堅牢度のいずれか一方が不十分で
あった。

（実施例2,実施例3,比較例３）乾燥熱処理温度を140℃（比較例２）,150℃（実施例
２）,160℃（実施例３）に変更した他は実施例１とまっ
たく同様にして得られた布帛について10回洗濯後の抗菌
性を評価した。結果は表３に示すように、本発明の方法
の範囲内である乾燥熱処理温度が150℃以上であれば10
回洗濯後においても十分な抗菌性能を示す。一方、150
℃未満では抗菌性能の洗濯耐久性の面で不十分であっ
た。

［発明の効果］本発明により、洗濯耐久性が良く、染色堅牢度を低下
させることなく摩擦堅牢度に優れた抗菌防臭性着色ポリ
エステル系繊維構造物を提供することが出来る。

Claims

(57)【特許請求の範囲】

【請求項１】式［１］で表わされる第４アンモニウム塩
を0.02％owf以上0.1％owf未満含有する抗菌防臭性着色
ポリエステル系繊維構造物。（Ｒ₁は炭素数12〜16のアルキル基、Ｒ₂,R₃,R₄は炭素数
１〜２のアルキル基、Buはブチル基を示す。）
【請求項２】ポリエステル系繊維構造物を染色し、さら
に式［１］で表わされる第４アンモニウム塩の水溶液を
付与した後、150℃〜210℃で乾熱処理することを特徴と
する抗菌防臭性着色ポリエステル系繊維構造物の製造方
法。