JP2606854B2 - イソプリメベロースの製造方法 - Google Patents

イソプリメベロースの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明はイソプリメベロースの新規な製造法に関す
る。詳しくは、α−D−キシロシルフルオライドとD−
グルコースとを反応させるイソプリメベロースの製造方
法である。
[従来技術及び発明が解決しようとする問題点] イソプリメベロースは、下記構造式のようにD−キシ
ロースがD−グルコースにα−1,6結合で結合した構造
をもち、α−キシロシダーゼ活性測定用の基質、健康食
品用の素材等に使用される公知の物質である。
しかし、イソプリメベロースは遊離の形では自然界に
存在せず、植物細胞壁やタマリンド等の豆科植物種子中
の多糖構成成分等としてしかその存在が知られていな
い。イソプリメベロースを製造する技術は種々試みら
れ、既に提案されている。
例えば、D−グルコースとD−キシロースを出発原料
としてケーニッヒ・クノール反応(Knigs−Knorr反
応)と呼ばれる化学合成法によってイソプリメベロース
を合成する方法がある。(ペリヒテ、第72巻(1939)11
60頁)しかし、この方法は反応操作が煩雑であるうえに
反応副生成物が多く、たかだか20%という低い収率でし
かイソプリメベロースを合成することができない。
[発明の解決手段] 本発明者等は、イソプリメベロースの製造につき鋭意
研究を重ねてきた結果、反応原料としてα−D−キシロ
シルフルオライドとD−グルコースとを使用し、且つ、
これらを特定の酵素を特定量以上存在させて反応させる
と、反応特異性および収率を飛躍的に改良できる知見を
得て、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、α−D−キシロシルフルオライドと
D−グルコースとを、パラニトロフェニル−α−D−キ
シロシドを分解する能力を有する酵素(以下、単に「酵
素」ともいう。)を0.001単位以上存在させて反応させ
ることを特徴とする、イソプリメベロースの製造方法で
ある。
α−D−キシロシルフルオライドは、下記構造式に示
すように、α−D−キシロースの1位炭素原子に結合し
た水酸基を、フッ素原子で置換した公知の構造の物質で
ある。
α−D−キシロシルフルオライドは、公知の方法によ
り合成することができる。例えば、1,2,3,4−テトラ−
O−アセチル−α−D−キシロースに無水フッ化水素を
作用させて合成した2,3,4−トリ−O−アセチル−α−
D−キシロシルフルオライドを、ナトリウムメチラート
により脱アセチル化して得られる。本発明で使用するα
−D−キシロシルフルオライドは、脱アセチル化反応後
の溶液からナトリウムメチラート等を分離することな
く、そのまま使用することもできる。
また本発明の他の原料はD−グルコースである。D−
グルコースのアノマー型はαおよび/またはβ型いずれ
もを本発明の原料として使用し得る。D−グルコースの
純度は特に限定されず、高純度のものは勿論、D−グル
コースを含有する水飴や多糖加水分解物等も使用するこ
とができる。
本発明では、パラニトロフェニル−α−D−キシロシ
ドを分解する能力を有する酵素の存在下で、α−D−キ
シロシルフルオライドとD−グルコースとの反応が行わ
れる。本発明で使用する酵素は、パラニトロフェニル−
α−D−キシロシドを分解する能力を有するものであれ
ば特に限定されないが、一般にα−キシロシダーゼやα
−キシロシルトラスフェラーゼが好適に使用される。そ
の起源は特に限定されるものではなく微生物、植物、動
物などあらゆる種類のものを使用することができる。例
えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)
やコニオチリウム・ディプロディエラ(Coniothyrium d
iplodiella)等の微生物由来のα−キシロシダーゼ(ジ
ャーナル・オブ・ファーメンテイション・テクノロジ
ー、第63巻(1985)389頁)等のα−キシロシターゼが
代表的である。また、使用する酵素は純粋である必要は
なく、培養液や細胞抽出液のような粗酵素も使用するこ
とができる。上記反応で使用される酵素量は0.001単位
以上であれば任意に設定されるが、通常は反応液1ml当
り0.001〜1.0単位の範囲である。(ここでいう1単位と
は、40℃においてパラニトロフェニル−α−D−キシロ
シドを1分間に1μmole分解するのに必要な酵素量であ
る。)1.0単位を越える量の酵素を使用しても本発明の
効果は得られるが、その経済的メリットは乏しい。
また、前記反応における反応温度は、使用する酵素の
耐熱範囲内で高い方が好ましいが、通常30〜65℃が採用
される。さらに反応溶液は一般に水溶液が使用される。
該水溶液のpHは、使用する酵素の至適作用pH付近に設定
されることが好ましく、通常、pH2〜7の範囲が好適で
ある。また、前記反応の時間は特に限定されず予め他の
反応条件に応じて決定しておけばよいが、一般には30分
〜24時間、好ましくは30分〜5時間の範囲から選ばれ
る。
更にまた、反応に用いられるD−グルコースの濃度は
任意に設定されるが、生成物の収量が多いという意味で
高濃度であることが好ましく、通常は50〜500mMの濃度
で使用される。同様に、α−D−キシロシルフルオライ
ドの濃度も生成物収量が多いという意味で高濃度である
ことが好ましく、通常は10〜200mMの濃度で使用すると
好適である。
上記反応によって得られるイソプリメベロースは反応
系から分離し、必要に応じて活性炭クロマトグラフィ
ー、液体クロマトグラフィーやゲル濾過法等の公知の分
離技術を用いて精製すればよい。
[発明の作用及び効果] 本発明は前記説明したように、イソプリメベロースを
簡便な反応操作で高収率且つ特異的に合成することがで
きる。本発明の完成により工業的にイソプリメベロース
を製造できるようになり、その産業上の価値は極めて大
きい。
本発明の方法によりイソプリメベロースが高収率で得
られる機構は明らかでないが、本発明者等はα−D−キ
シロシルフルオライド分子内の炭素−フッ素間の高エネ
ルギー結合が、両原料の脱フッ化水素による結合反応に
寄与しているものと推定している。
そのために従来公知のケーニッヒ・クノール反応(K
nigs−Knorr反応)によるイソプリメベロースの製造
とは本質的に反応機構が異なり、反応速度、反応特異性
及び収率の向上に関連していると考えている。
[実施例] 以下本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて
説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるもの
ではない。
[実施例−1] α−D−キシロシルフルオライド100mM、α−D−グ
ルコース167mMを含む50mM酢酸緩衝液(pH5.5)1.8mlに
アスペルギルス・ニガー由来のα−キシロシダーゼを0.
01単位/mlとなるように加え40℃で7時間反応させた。
イソプリメベロースを含む反応液を活性炭クロマトグラ
フィー及び高速液体クロマトグラフィーにより分離し、
イソプリメベロースのみを含む画分を分取した。その画
分を、D−グルコースとD−キシロースとの等量混合物
を標準物質としてフェノール・硫酸法により全糖量を測
定することによってイソプリメベロースを定量した。
生成したイソプリメベロースは40.1mgであった。これ
はα−D−キシロシルフルオライドに対して71%の収率
である。
[実施例−2] アスペルギルス・ニガー由来のα−キシロシダーゼ0.
01単位/mlをコニオチリウム・ディプロディエラ由来の
α−キシロシダーゼ0.10単位/mlに、反応温度40℃を30
℃に、反応のpH5.5を3.7に代えた以外は実施例−1と同
様の操作で反応させたところ35.4mgのイソプリメベロー
スを生成した。
[比較例−1] α−D−キシロシルフルオライドをα−D−キシロー
スに代えた以外は実施例−1と同様の操作で反応させた
ところ0.7mgのイソプリメベロースを生成した。
収率は1.2%であり、[実施例−1]の場合の約1/60
である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】α−D−キシロシルフルオライドとD−グ
    ルコースとを、パラニトロフェニル−α−D−キシロシ
    ドを分解する能力を有する酵素を0.001単位以上存在さ
    せて反応させることを特徴とする、イソプリメベロース
    の製造方法。
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