JP2578040B2 - 超高珪素電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
超高珪素電磁鋼板の製造方法Info
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Description
機器の鉄芯に用いられる、磁気特性に優れた超高珪素電
磁鋼板を効率的に製造する方法に関する。本発明によっ
て、特に高周波数の電気機器の鉄芯に最適な板厚の薄い
超高珪素電磁鋼板を、作業性に優れた冷間圧延プロセス
によって製造し得るとともに、極めて脆い超高珪素電磁
鋼板に折れ或は割れを生ぜしめることなく各種処理ライ
ンに通板することが可能となり、工業的量産が可能とな
る。
を有するため、電力用変圧器或は回転機の鉄芯として用
いられている。この種軟磁性材料においては、Si含有
量が増加すると鉄損特性が向上する(鉄損値が低くな
る)。特に、Si含有量6.5%近傍では鉄損特性が良
好である上に磁歪が零に近づくところから、透磁率も一
段と向上し、従来にない新しい機能をもつ磁性材料とな
り得る。最近、省エネルギーを目的として、鉄損値が低
く、かつ電気機器の多様な磁気特性上の要求を満足せし
め得る新しい磁性材料として、Siを6.5%或はその
近傍含有する超高珪素電磁鋼板が見直され始めた。
いため、工業的に量産する上で多くの問題があり、未だ
実用化されるに至っていない。超高珪素電磁鋼をストリ
ップの状態で処理し、工業的量産を行う上での問題点
は、第1に超高珪素電磁鋼板を冷間圧延するときに発生
する材料(ストリップ)破断或は耳荒れと呼ばれるスト
リップエッジクラックである。この問題を解決すべく、
たとえば中岡らは特開昭61−166923号公報に、
冷間圧延の素材である熱間圧延板について、連続仕上熱
間圧延条件を規定することによって金属組織が圧延方向
に繊維状に伸びた状態となるようにする方法を提案して
いる。また、中岡らは、特開昭62−103321号公
報に、連続仕上熱間圧延前の材料の結晶粒を限定するこ
とによって熱間圧延板の金属組織が圧延方向に繊維状に
伸びた状態となるようにする方法を提案している。これ
らの方法は、連続仕上熱間圧延条件を限定することによ
って熱間圧延板の組織を制御し、かくして得られた熱間
圧延板を素材とすることによって冷間圧延を可能ならし
めようとするものである。
方向全域に亙って繊維状組織を得るには、苛酷な仕上熱
間圧延条件を必要とする。即ち、熱間圧延板表面部は、
熱間圧延中の複雑な強加工と加工発熱の組合せ効果によ
って再結晶する傾向が強く、図1に示すように、等軸晶
となり易い。図1に示す結果は、本発明者等が仕上熱間
圧延開始温度を1090℃とし、仕上熱間圧延終了温度
を1000℃として高珪素鋼を熱間圧延して得た結果で
ある。図1に示すような、表面或はその近傍が等軸晶組
織で板厚方向中心部が繊維状組織である熱間圧延板を冷
間圧延すると、特開平3−207815号公報に開示さ
れているように、前記二層組織の境界部で剥離を生じ、
冷間圧延板表面に”さざ波”状欠陥を生じる。従って、
圧延材の表面部に等軸晶組織を残すような中途半端な熱
間圧延では、かえって悪影響をもたらす。
めには、仕上熱間圧延温度を大幅に低下させる必要があ
り、特開昭61−166923号公報に開示されている
発明の実施例においては、仕上熱間圧延開始温度を80
0℃まで低下させている。800℃程度の低い温度で仕
上熱間圧延を開始すると仕上熱間圧延終了温度は700
℃前後まで降下してしまい、熱間圧延というよりは冷間
圧延に近い加工形態となる。このような低温熱間圧延で
は圧延荷重は過大なものとなり、圧延ロール摩耗量の増
大を招くのみならず、熱間圧延板の形状(平坦さ)が不
良なものとなり、かかる熱間圧延板を冷間圧延すると、
材料に割れを頻発するという問題を惹起する。さらに、
熱間圧延板を薄くすることが困難であるから、後述する
ように、ストリップに折れ或は割れを生じ易く、処理ラ
インに通板することに致命的な障害となる。
ロセスである、溶鋼から1.6〜2.5mm厚さのスト
リップを鋳造によって直接的に得るというプロセスを採
る場合、冷間圧延素材に繊維状組織を得ることが全くで
きない。図8に、鋳造薄板(ストリップ)の結晶組織を
示す。図8から明らかなように、板厚方向全域に亙って
比較的大きな結晶粒からなる等軸組織である。
さ)を向上せしめる手段として、6.5%Si鉄中に第
三元素を合金化することが発表されている。たとえば、
C.A.Clarkらは、IEE.113(196
6)、p.345に、Niを第三元素として添加するこ
とを、K.Naritaらは、IEEE Trans.
Mag.14(1978)、p.258にMnを第三元
素として添加することを提案している。
公報に材料温度を350〜450℃として圧延すること
を開示している。この圧延温度域は、従来の冷間圧延技
術では対処できない圧延温度である。超高珪素鋼を冷間
圧延するときの、材料の伸びが本質的に小さいことに起
因する材料側縁端部に割れを生じる、エッジクラック発
生の問題は、超高珪素鋼を冷間圧延するときの、板(ス
トリップ)破断を生じるという問題を解決するための手
段によって併せて解決することができる。
6.5%Si鋼においては硬度(Hv)が390にも達
し、冷間圧延における圧延荷重が過大なものとなるとい
う問題がある。冷間圧延材のゲージが薄くなると、一層
圧延荷重が大きくなる。一般に、圧延ロール直径を小さ
くするとロールと圧延材の接触弧長が小さくなるから、
低い圧延荷重で圧延を遂行することができる。このよう
な理由から、従来、Siを約3%含有する一方向性電磁
鋼板或は無方向性電磁鋼板は、100mm以下の直径を
有するワークロールをもつセンジマーミルによって冷間
圧延されている。
冷間圧延するには、小さな直径を有するワークロールを
もつ圧延機によって圧延することが必須となる。ところ
が、6.5%Si鋼といった超高珪素鋼を小さな直径を
有するワークロールをもつ圧延機によって圧延すると、
高田らが特開昭63−145716号公報に記載してい
るように、材料(ストリップ)破断の問題を惹起する。
このような状況に鑑み、超高珪素鋼を冷間圧延するとき
に、板(ストリップ)破断を生じるという問題を解決す
るための手段を確立することが極めて重要となる。
改善するための手段が種々開示されているけれども、超
高珪素鋼板を工業的に量産するためには、解決すべき第
2の問題がある。即ち、超高珪素鋼板(ストリップ)を
処理ラインにおいて走行(通板)させるときに、ストリ
ップに曲げが加えられる場合、たとえばロールにストリ
ップが巻き掛けられる場合に、ストリップに折損、割れ
を発生するという問題である。
熱間圧延板或は鋳造薄板(薄帯)を製造プロセスにおけ
る各工程、たとえば酸洗ライン、冷間圧延機、脱脂ライ
ン、焼鈍ライン、絶縁被膜コーティングラインといった
一連の処理ラインに材料(ストリップ)を走行(通板)
させる必要がある。通常、ストリップ処理ラインは、処
理能力、構成が極限まで生産効率を高くするように設計
されている。従って、超高珪素鋼板(ストリップ)もこ
のような処理ラインに走行(通板)せしめることができ
てはじめて工業的な量産が可能となる。ところで、これ
ら処理ラインには、ストリップに曲げが加えられる箇所
が多数存在し、これら曲げ部において超高珪素鋼板(ス
トリップ)に折損、割れが生じ易い。超高珪素鋼は、室
温での伸びが0.5%程度しかなく、これが曲げ部にお
いて超高珪素鋼板(ストリップ)に折損、割れを生じ易
くしている。
超高珪素鋼板(ストリップ)を、材料破断、エッジクラ
ックを発生させることなく冷間圧延できるようにすると
ともに、各種処理ラインに通板可能にし、工業的量産を
可能ならしめる製造方法を提供することを目的とする。
ろは下記のとおりである。 (1) 重量で、C≦0.006%、Si:4.5〜
7.1%、Mn:0.07〜0.30%、S≦0.00
7%、酸可溶性Al:0.006〜0.038%、to
tal N:8〜30ppm、残部Feおよび不可避的
不純物からなる熱間圧延板或は鋳造薄板を、表面酸化物
(スケール)が付着したままの状態で板温度:150〜
470℃の温度域で冷間圧延し、しかる後再結晶および
粒成長を目的とする焼鈍を施すようにしたことを特徴と
する超高珪素電磁鋼板の製造方法。
i:4.5〜7.1%、Mn:0.07〜0.30%、
S≦0.007%、酸可溶性Al:0.006〜0.0
38%、total N:8〜30ppm、残部Feお
よび不可避的不純物からなる熱間圧延板或は鋳造薄板
を、表面酸化物(スケール)が付着したままの状態で板
温度:150〜470℃の温度域で1.2mm以下の厚
さまで冷間圧延し、次いで鋼板(ストリップ)の曲げ部
(ロール等)の直径が200mm以上に構成された処理
ラインに通板して表面酸化物(スケール)を除去し、し
かる後再結晶および粒成長を目的とする焼鈍を施すよう
にしたことを特徴とする超高珪素電磁鋼板の製造方法。
i:4.5〜7.1%、Mn:0.07〜0.30%、
S≦0.007%、酸可溶性Al:0.006〜0.0
38%、total N:8〜30ppm、残部Feお
よび不可避的不純物からなる熱間圧延板或は鋳造薄板
を、表面酸化物(スケール)が付着したままの状態で板
温度:150〜470℃の温度域で1.2mm以下の厚
さまで冷間圧延し、次いで鋼板(ストリップ)の曲げ部
(ロール等)の直径が200mm以上に構成された処理
ラインに通板して表面酸化物(スケール)を除去した
後、冷間圧延を施して最終板厚とし、しかる後再結晶お
よび粒成長を目的とする焼鈍を施すようにしたことを特
徴とする超高珪素電磁鋼板の製造方法。
い超高珪素鋼板を、工業的に量産するために解決されね
ばならない第1の技術的課題は、冷間圧延において材料
(ストリップ)に破断を生ぜしめないことである。第2
の技術的課題は、ストリップに折れ、割れを生起せしめ
ることなく、各種処理ラインに通板できるようにするこ
とである。
げて圧延する、所謂温間圧延は公知である。超高珪素
鋼、たとえば6.5%Si鋼についても、常温で圧延す
るよりも温間圧延による方が材料における割れ発生が少
ない。しかしながら、温間圧延を実施するときの問題と
して、圧延潤滑剤の耐熱性、材料を温間に維持するため
の装置、材料(ストリップ)の幅方向、長さ方向におけ
る温度のバラツキに起因する板厚制御の困難さ、といっ
た問題があり、温間圧延をそのまま採用することはでき
ない。
には、350〜400℃の温度域で材料を圧延する方法
および装置が開示されている。この先行技術では、材料
を0.2〜0.4mmまで圧延している。特開昭63−
36906号公報には、350℃で0.35mmまで圧
延することが開示されている。一方、3%前後のSiを
含有する一方向性電磁鋼板は、たとえば特公昭54−1
3846号公報に記載されているように、圧延のパス間
で50〜350℃の温度域に1分間以上保持することに
よって、製品の磁性が向上する。
おいては、材料(ストリップ)温度を高くしてリバース
圧延するようにしている。一般に、材料温度を約250
℃としてストリップを圧延することが、潤滑剤の問題、
板厚制御の困難さの問題を回避しつつ行われている。そ
こで本発明者等は、超高珪素鋼板(ストリップ)を一方
向性電磁鋼板におけると同じ程度の材料温度で冷間圧延
することによって、これまでにない薄いゲージにまで冷
間圧延可能にする鋼成分系を検討した。鋼中の一成分、
一成分の単独添加効果を検討することは勿論、全成分の
最適組合せを解明すべく、数多くの試験圧延を行った結
果、重量で、C≦0.006%、Si:4.5〜7.1
%、Mn:0.07〜0.30%、S≦0.007%、
酸可溶性Al:0.006〜0.038%、total
N:8〜30ppm、残部Feおよび不可避的不純物
からなる成分系が、発明における課題解決のための基本
的条件であることを明らかにした。
が向上することは知られている。しかしながら、現在の
工業的精錬技術で鋼中Nを少なくするには8ppm程度
が限界である。木村 宏が「日本金属学会会報」Vo
l.21、No.10、p.757で解説しているNの
影響は、特殊な処理によって鋼中のNを数ppm以下に
低下せしめた領域での技術である。本発明は、工業的量
産技術という観点から、量産型の精錬技術で到達可能
な、Nが8ppm以上存在する素材を用いて、極めて薄
いゲージにまで冷間圧延できるとともに、各種処理ライ
ンにおける通板を可能ならしめんとするものである。
いった超高珪素鋼の圧延割れに対する鋼中Nの影響に注
目して研究を進めた結果、圧延割れを生じないか或は大
きく減少させるAl含有量が存在することを見出した。
さらに、冷間圧延前の鋼中Nの形態が圧延割れに大きく
関係しているという知見を得た。本発明者等は、C:
0.005%、Si:6.50%、Mn:0.17%、
P:0.007%、S:0.002%を含有し、酸可溶
性AlおよびNが図2に示す関係にある50kgのイン
ゴットを作成し、これを1200℃に加熱し、仕上温度
を約980℃とする8パスの熱間圧延によって1.7m
m厚さの鋼板とした。この熱間圧延板から各成分の試料
(幅:5cm×長さ:12cm)を10枚採取し、板温
度:180℃で0.23mm厚さまで冷間圧延した。冷
間圧延における板破断の状況を、図2に示す。
る板破断の発生割合は、totalNが少ないほど減少
する傾向にあり、酸可溶性Alについては、少な過ぎて
も多過ぎても板破断の発生割合が増加している。tot
al Nが8ppm(N含有量がこの値よりも低い材料
は、一般的な溶解条件では得られなかった)〜30pp
mであって、酸可溶性Alが0.006〜0.038%
の範囲内において良好な冷間圧延が遂行できた。このよ
うな結果が得られる理由について、本発明者等は鋼中N
の存在形態が影響すると考え、図2における(A)〜
(F)材について、冷間圧延素材である熱間圧延板の抽
出レプリカを作成し、電子顕微鏡観察を行った。その結
果を図3に示す。
ない(B)材の析出物は比較的大きくかつ、均一に分布
しているのに対し、total Nが多い(D)、
(E)、(F)材および酸可溶性Alが多い(C)材の
析出物は極めて大きく、かつ粒界に存在している。ま
た、total Nも酸酸可溶性Alも少ない(A)材
の析出物は小さく、集団的に固まって分散している。
(D)、(E)、(F)材におけるような巨大析出物、
特に粒界に存在する場合は切り欠き効果を与え、材料を
脆くする原因となる。また、(A)材のように、析出物
が微細なものになると、材料の強度が上昇し伸びが減少
する。
および酸可溶性Alを適切な組合せ範囲とすると、析出
物が冷間圧延割れを助長しない分散状態となることも知
見した。次に、本発明における第2の課題である、スト
リップに折れ、割れを生起せしめることなく各種処理ラ
インに通板できるようにする技術的手段について説明す
る。
−166923号公報に開示されている技術における問
題点、即ち熱間圧延を極めて低い温度で圧延しなければ
ならないことに起因して熱間圧延板の厚さを大きくせざ
るを得ないところから、各種処理ラインに通板できない
といった問題を解決すべく、本発明者等は図1に示す金
属組織をもつ超高珪素鋼熱間圧延板について、室温(≒
25℃)で割れが発生するまでの曲げ回数に及ぼす熱間
圧延板の厚さと曲げ直径の影響を調べた。図4に、その
結果を示す。
部の直径が大きくなるほど、また熱間圧延板の板厚が薄
くなるほど、割れが発生するまでの曲げ回数が増加す
る。曲げ直径を大きくすることは、曲げ部を多数有する
長大な処理ラインのスペース(空間)を極めて大きなも
のとし、工場建屋も必然的に大きなものを必要とし、設
備コストの面で問題となる。従来の一般的なストリップ
処理設備においては、ストリップの曲げ部の直径は、多
くの場合、200mm程度である。
間圧延板の形状(平坦さ)が悪くなるので走行中にスト
リップが上下にばたつき、安定した通板が困難となるこ
と等から、熱間圧延板の厚さの下限は実質的に1.4m
m程度となる。かかる状況に鑑み、本発明者等は、超高
珪素鋼ストリップの曲げ回数≧30回が確保され、設備
的効率をも考慮して曲げ部の直径:200mm、板厚:
1.2mmの諸元でストリップを通板できるようにする
ことを目標にした。
熱間圧延板は酸洗によって表面のスケールが除去された
後、冷間圧延される。本発明者等は、たとえば酸洗ライ
ンに安定してストリップを通板できるようにすべく、熱
間圧延板を直接的に冷間圧延することを考えた。そこ
で、本発明者等は、表面にスケールが付着したままの熱
間圧延板を直接的に冷間圧延してみたところ、驚くべき
ことに、材料(ストリップ)温度を僅か150℃程度ま
で高めることによって、Siを6.5%前後含有する超
高珪素鋼ストリップの場合、スケールの破砕、剥離を全
く生じることなく冷間圧延することができた。
−289号公報、特公昭60−40921号公報に開示
されているように、表面にスケールが付着したままの熱
間圧延板を直接的に冷間圧延すると、スケールが破砕、
剥離して問題となり、これまで工業的量産規模でかかる
冷間圧延は行われていない。本発明者等は、超高珪素鋼
ストリップを150〜470℃の温度域で圧延すると、
熱間圧延板表面のスケールが全く剥離することなく圧延
できるという画期的な現象を発見した。以下、この知見
について、詳細に説明する。
3%、Mn:0.16%、P:0.005%、S:0.
001%、total N:0.0013%、残部実質
的にFeからなる50kg鋼塊を、1200℃に加熱し
た後、35mm厚に熱間圧延し、得られた熱間圧延板を
再度加熱し、1100℃で仕上熱間圧延を開始し6パス
で2.3mm厚さとした。圧延仕上温度は、980℃で
あった(Aコイル)。
た材料を、1200℃に加熱した後、800℃で仕上熱
間圧延を開始し、6パスで2.3mm厚さに仕上げた。
圧延仕上温度は、690℃であった(Bコイル)。この
A、B2コイルについて、表面酸化物(スケール)が付
着したままのものについて、材料温度:1)室温(≒2
3℃)、2)150℃、3)270℃、4)440℃で
圧延した。このときの材料(ストリップ)の割れ状況と
表面酸化物(スケール)の剥離程度を表1に示す。図5
(a)に、Aコイルを室温で圧延したストリップ表面
を、図5(b)に、Aコイルを270℃で圧延したスト
リップ表面を示す。なお、Bコイルについては、熱間圧
延板の形状(平坦さ)が悪く、冷間圧延可能なものは僅
かであった。
は表面酸化物(スケール)の破砕、剥離が甚だしく、剥
落したスケールが圧延油に混入したり、圧延ロールに付
着したりして圧延材表面に疵を発生する等の問題を生じ
た。圧延温度を150℃、270℃、440℃と高めて
いくと、表面酸化物(スケール)の破砕、剥離は全くな
く、圧延は順調に行われた。冷間圧延における材料の割
れの発生に関して説明すると、Bコイルは室温での圧延
でも比較的良好な圧延が遂行できた。材料温度を高くす
るに従ってさらに安定した圧延が遂行できた。Aコイル
を室温で圧延すると材料割れが甚だしく、最終板厚に至
る以前の途中板厚の段階から圧延の遂行が不可能となっ
た。しかし、圧延温度を高くすると材料割れの発生もな
く良好な圧延が可能となった。
て冷間圧延すると、熱間圧延工程において歩留り低下を
余儀なくされる苛酷な低温圧延を行わなくとも、通常の
量産普通鋼熱間圧延条件で圧延した超高珪素鋼板でも割
れを発生することなく、安定した圧延の遂行が可能とな
る。しかも、本発明の冷間圧延条件による圧延によれ
ば、材料に表面酸化物(スケール)が付着したままで冷
間圧延が可能であることを、本発明者等は見出した。従
来、超高珪素鋼板を300℃前後の温度域で圧延する
と、材料表面酸化物(スケール)が付着したままで、ス
ケールを破砕、剥離せしめることなく圧延することがで
きるという知見は全く知られておらず、新規な知見であ
る。この温度域で圧延すると、スケールを破砕、剥離せ
しめることなく圧延することができる詳細なメカニズム
は不明であるが、図6(a)に示す熱間圧延板の表面酸
化物(スケール)の断面組織、図6(b)に示す冷間圧
延板の表面酸化物(スケール)の断面組織、図7(a)
に示す熱間圧延板の表面酸化物(スケール)の断面SE
M像、図7(b)に示す冷間圧延板の表面酸化物(スケ
ール)の断面SEM像から明らかなように、冷間圧延板
の表面酸化物(スケール)は、均一に薄く延伸せしめら
れ、割れもなく鋼板に密着している。
定条件について説明する。Cは不純物として最終製品に
残存すると、磁気特性を劣化させるから可及的にその含
有量が少ない方がよい。特に、C含有量が0.006%
を超えると、製品の磁気特性を大きく劣化させる。ま
た、冷間圧延性(冷間圧延し易さ)の観点からも、C含
有量は少ない方がよい。
略6.5%Si鉄の薄板製品を工業的に量産し得るプロ
セスにあることから、6.5%を中心に若干の上下幅を
もつ範囲内であればよい。Si含有量の下限は、従来市
販されていない珪素鋼板のSi含有量範囲で4.5%と
し、可及的に6.5%に近い量であることが本発明の目
的に合う。Si含有量の上限は、7.1%である。Si
含有量が7.1%を超えると、冷間加工性の劣化が顕著
となるのみならず、製品の磁気特性はよくならない。
冷間圧延における材料破断率を低下せしめ、特に板厚が
0.20mm以下の薄い範囲で添加効果を発揮する。S
は、その含有量が少ないほど材料の冷間加工性を良好な
らしめる。また、Sが不純物として最終製品に残存する
と磁性を劣化させるから、この観点からもS含有量は可
及的に少ない方がよい。かかる理由からS含有量を0.
007%以下とする。S含有量の下限は、可及的に低い
ほどよいけれども、一般的な工業的精錬技術では0.0
008%程度が限界である。
ては、その組合せ範囲として、酸可溶性Al:0.00
6〜0.038%およびtotal N:8〜30pp
mの領域とすると、冷間加工性を良好ならしめることが
できる。この組合せ範囲にある場合に、鋼中のtota
l Nの存在状態が鋼の靱性を劣化させない析出物の形
態を採ると考えられる。
料温度を150℃以上とすれば圧延割れを生ぜしめるこ
となく冷間圧延を遂行できるようになる。上記以外の成
分については、特に限定しない。次に、本発明における
プロセスについて説明する。上記限定範囲内に調整され
た成分系を有する溶鋼は鋳造され、得られたスラブは熱
間圧延される。熱間圧延条件については特に限定されな
い。一般的に量産普通鋼における熱間圧延条件、たとえ
ば仕上熱間圧延開始温度:1070℃、仕上熱間圧延終
了温度;980というように比較的高温での熱間圧延で
よい。このように、本発明においては、高温域の材料が
軟らかい状態で圧延して差し支えないから、形状(平坦
さ)の良好な薄い熱間圧延板を製造することができる。
は特に制限されない。一般的な連続鋳造プロセスを採用
することができる。一方、最近、その実用化技術が開発
されつつある薄板鋳造法、即ち溶鋼を直接的に2.0m
m前後の薄帯に連続鋳造し、熱間圧延を省略するか或は
鋳造薄帯に形状矯正程度の軽圧下を適用する圧延を施し
て、冷間圧延素材とする鋳造プロセスによって得られた
ストリップも、本発明における冷間圧延素材とすること
ができる。しかし、薄板鋳造プロセスによって得られた
ストリップは、図8に示すように等軸粒からなってお
り、熱間圧延によって得られたストリップに比し結晶粒
が大きく、冷間圧延性が若干劣る。
(スケール)が付着したままの状態で材料温度:150
〜470℃の温度域で冷間圧延される。材料(板或はス
トリップ)温度が470℃を超えると、圧延潤滑剤の劣
化が甚だしく、圧延の遂行が極めて困難となる。また、
材料温度が470℃を超えると、板厚制御も困難とな
る。材料温度が150〜470℃の範囲内にあれば、表
面酸化物(スケール)の破砕、剥離もなく、また材料に
割れを惹起することもなく冷間圧延が可能であり、保定
時間を採ることは基本的に必要ではない。
延され、次いで機械的手段、たとえばショット・ブラス
ト、熱的手段、たとえばレーザ・ビーム照射、化学的手
段、たとえば酸洗等のスケール除去手段によって表面の
酸化物(スケール)が除去される。しかし、本発明の方
法によって得られた冷間圧延板における表面のスケール
は均一で薄く密着性も良好であるから、そのまま絶縁被
膜として機能させることができる。
被膜として機能させるときは、スケール除去は行わな
い。材料を最終板厚まで冷間圧延したものをスケール除
去する場合、スケール除去ラインの生産性が低下するか
ら、冷間圧延工程の途中段階で材料表面のスケールを除
去し、しかる後最終板厚まで冷間圧延するプロセスを採
ることもできる。
スケールを除去するプロセスを採る場合、スケール除去
ラインにおいて材料に割れの発生がなく安定した操業が
できるようにするために、ストリップ曲げ部の直径:2
00mmで30回以上の繰り返し曲げに耐える板厚であ
る1.2mm以下の厚さまで冷間圧延した後、スケール
を除去するようにすることが望ましい。
ールが有る場合、無い場合の何れにしても、800〜1
020℃の温度域で焼鈍し、再結晶と粒成長を行わしめ
て製品とする。焼鈍時間は、温度が低いときは長く、温
度が高いときは短くなり、30秒間〜3時間程度が採用
される。
脆いために繰り返し曲げに耐えられない厚い熱間圧延板
の段階で表面にスケールが付着した状態のまま材料に割
れを発生させることなく冷間圧延して薄くすることに成
功したから、以降の工程で多数回の繰り返し曲げに耐え
られ、各種処理ラインに通板することが可能となる。し
かして、再結晶および粒成長を目的とする焼鈍を施す段
階では最終板厚となっており、焼鈍後は曲げを伴うマテ
リアル・ハンドリングに十分耐えられる。
表2に示すもので、残部がFeおよび不可避的不純物で
ある50kgインゴットを作成し、1200℃で加熱
し、8パスの熱間加工により仕上完了温度990℃で
1.8mm厚の鋼板とした。この鋼板から各成分につい
て、幅5cm×長12cm×10枚を準備し、表面酸化
物スケールを付けたまま180℃の板温度で0.23m
m厚まで冷間圧延した。このときの冷間圧延破断割合
と、スケール剥離状況を表2に示した。本発明で限定し
た成分条件を満たす鋼板については、冷間圧延破断を生
じることなく、しかもスケール剥離を生じることもなく
圧延できた。
Si、0.13%Mn、0.001%S、0.0017
%N、残部がFeおよび不可避的不純物である50kg
インゴットを作成し、1200℃で加熱し、8パスの熱
間加工により仕上温度約1000℃で1.8mm厚の鋼
板とした。この鋼板から幅8cm×長12cm×40枚
を準備し、各10枚ずつについて表面酸化物スケールを
付けたまま、板温を室温(≒23℃)、180℃、
300℃、450℃で冷間圧延した。このときのス
ケール剥離程度と、冷間圧延割れの結果を表3に示し
た。
のものは冷間圧延割れもなく、かつスケール剥離もな
く、安定した冷間圧延が可能であった。これに対し圧延
温度が室温のものは、冷間圧延割れが激しく、1.5m
m厚以下は圧延不可能であった。しかも、圧延の最初か
らスケールの破砕・剥離が多く、1.5mm厚時点で、
表面からみて50%以上のスケールが剥離した。
幅8cm×長15cm×40枚を準備し、表面酸化物ス
ケールを付けたまま、板温を280℃で、板厚1.5
mm、1.2mm、0.5mm、0.35mmま
で冷間圧延した。この材料について直径200mmの円
筒に沿わせて曲げたときの破断に至るまでの曲げの回数
の平均を表4に示した。なお、比較のため熱延板につい
ても示した。
mのものは破断に至るまでの曲げ回数が25回以上あ
り、曲げ加工に極めて安定していることが分る。 (実施例4)0.003%C、6.5%Si、0.14
%Mn、0.001%S、0.0018%N、残部がF
eおよび不可避的不純物からなる溶鋼を、双ロール間で
鋳造し、熱延なしで直接に1.8mm厚の薄鋳造板とし
た。この鋼板から幅8cm×長12cm×40枚を準備
し、各10枚ずつについて表面酸化物スケールを付けた
まま、板温を室温(≒23℃)、200℃、30
0℃、450℃で圧延した。この時のスケール剥離程
度と、冷間圧延割れの結果を表5に示した。
のものは冷間圧延割れもなく、かつスケール剥離もな
く、安定した冷間圧延が可能であった。これに対し圧延
温度が室温のものは、冷間圧延割れが激しく、1.7m
m厚以下は圧延不可能であった。しかも、圧延の最初か
らスケールの破砕・剥離が多く、1.7mm厚時点で、
表面からみて40%以上のスケールが剥離した。
8cm×長15cm×30枚を準備した。そのうちの1
0枚については表面酸化物スケールを酸洗除去し、板温
280℃で0.35mm厚に冷間圧延し、900℃で6
0秒の焼鈍を行い、約1.5μm厚のクロム酸系の絶縁
被膜をコーティングした(A)。別の10枚については
表面酸化物スケールを付けたまま、280℃で0.8m
mまで冷間圧延後、表面酸化物スケールを酸洗で除去
し、さらに板温280℃で0.35mm厚まで冷間圧延
し、その後(A)と同じ条件で焼鈍し、コーティングを
行った(B)。残りの10枚については表面酸化物スケ
ールを付けたまま、板温280℃で0.35mm厚まで
冷間圧延し、その後900℃で60秒の焼鈍を行った
(C)。前記(A)、(B)、(C)の成品の磁気特性
を表6に示した。
得られた。但し(C)については焼鈍時に強い還元性雰
囲気で行うと、表面酸化物スケールが変質するので注意
する必要がある。 (実施例6)0.004%C、6.45%Si、0.1
4%Mn、0.0017%N、残部がFeおよび不可避
的不純物である溶鋼を250mm厚の連続鋳造鋳片と
し、1200℃で加熱後、粗圧延で35mm厚にし、仕
上熱延を開始1120℃、終了1020℃で行い2.0
mm厚熱延板とした。表面酸化物スケールを付けたまま
板温300℃で0.8mm厚まで冷間圧延した。その
後、全長約70mの長大酸洗ラインを通板した。
で冷間圧延した。さらに脱脂ラインを通板し、全長約1
00mを超える長大焼鈍ラインを通板し、870℃×3
0secの焼鈍を行い、クロム酸系の絶縁被膜コーティ
ングを行った。冷間圧延、酸洗、焼鈍、コーティングに
ついて、いずれのライン通板においても割れがなく、成
品が得られた。この時の磁気特性もB8 =1.32T、
W10/50 =0.73W/kg、W10/400=10.9W/
kgであり、良好であった。
おける材料割れ、処理ラインに通板するときの曲げ部に
おける材料折損、割れを惹起するために工業的量産が困
難であった略6.5%Si含有鋼を、熱間圧延条件に厳
しい条件を設けることなく、材料の破断、割れを生ぜし
めることなく冷間圧延することを可能にするとともに、
従来、電磁鋼板製造のために一般的に用いられている処
理ラインで、曲げ部での材料折損、割れを惹起すること
なく取扱い得るから、磁気特性に優れた超高珪素鋼板を
低コストで工業的に量産でき、産業上大きな効果を奏す
る。
仕上熱間圧延開始温度:1090℃、仕上熱間圧延終了
温度:1000℃として熱間圧延した熱間圧延板の厚さ
方向における金属結晶組織を示す顕微鏡写真図である。
間圧延破断率を示す図である。
板の析出物状態を示す金属組織電子顕微鏡写真である。
おける曲げ部で材料に折損或は割れが発生するまでの曲
げ回数の関係を、曲げ部直径水準別に示す図である。
条件で圧延した超高珪素鋼板ストリップを表面酸化物
(スケール)が付着したままでの状態で、室温で圧延し
たときのストリップ表面性状を示す金属組織写真図、
(b)は、従来の量産普通鋼における熱間圧延条件で圧
延した超高珪素鋼板ストリップを表面酸化物(スケー
ル)が付着したままでの状態で、材料温度を270℃と
して圧延して得られた冷間圧延板の表面性状を示す金属
組織写真図である。
ル)の断面組織を示す金属組織写真、(b)は、本発明
による方法によって冷間圧延された超高珪素鋼板の表面
酸化物(スケール)の断面組織を示す金属組織写真図で
ある。
ル)の断面SEM像を示す金属組織写真図、(b)は、
本発明による方法によって冷間圧延された超高珪素鋼板
の表面酸化物(スケール)の断面SEM像を示す金属組
織写真図である。
ップの断面組織を示す金属組織写真図である。
Claims (3)
- 【請求項1】 重量で、C≦0.006%、Si:4.
5〜7.1%、Mn:0.07〜0.30%、S≦0.
007%、酸可溶性Al:0.006〜0.038%、
total N:8〜30ppm、残部Feおよび不可
避的不純物からなる熱間圧延板或は鋳造薄板を、表面酸
化物(スケール)が付着したままの状態で板温度:15
0〜470℃の温度域で冷間圧延し、しかる後再結晶お
よび粒成長を目的とする焼鈍を施すようにしたことを特
徴とする超高珪素電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項2】 重量で、C≦0.006%、Si:4.
5〜7.1%、Mn:0.07〜0.30%、S≦0.
007%、酸可溶性Al:0.006〜0.038%、
total N:8〜30ppm、残部Feおよび不可
避的不純物からなる熱間圧延板或は鋳造薄板を、表面酸
化物(スケール)が付着したままの状態で板温度:15
0〜470℃の温度域で1.2mm以下の厚さまで冷間
圧延し、次いで鋼板(ストリップ)の曲げ部(ロール
等)の直径が200mm以上に構成された処理ラインに
通板して表面酸化物(スケール)を除去し、しかる後再
結晶および粒成長を目的とする焼鈍を施すようにしたこ
とを特徴とする超高珪素電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項3】 重量で、C≦0.006%、Si:4.
5〜7.1%、Mn:0.07〜0.30%、S≦0.
007%、酸可溶性Al:0.006〜0.038%、
total N:8〜30ppm、残部Feおよび不可
避的不純物からなる熱間圧延板或は鋳造薄板を、表面酸
化物(スケール)が付着したままの状態で板温度:15
0〜470℃の温度域で1.2mm以下の厚さまで冷間
圧延し、次いで鋼板(ストリップ)の曲げ部(ロール
等)の直径が200mm以上に構成された処理ラインに
通板して表面酸化物(スケール)を除去した後、冷間圧
延を施して最終板厚とし、しかる後再結晶および粒成長
を目的とする焼鈍を施すようにしたことを特徴とする超
高珪素電磁鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP4003184A JP2578040B2 (ja) | 1992-01-10 | 1992-01-10 | 超高珪素電磁鋼板の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP4003184A JP2578040B2 (ja) | 1992-01-10 | 1992-01-10 | 超高珪素電磁鋼板の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH05186826A JPH05186826A (ja) | 1993-07-27 |
JP2578040B2 true JP2578040B2 (ja) | 1997-02-05 |
Family
ID=11550311
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP4003184A Expired - Fee Related JP2578040B2 (ja) | 1992-01-10 | 1992-01-10 | 超高珪素電磁鋼板の製造方法 |
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Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2578040B2 (ja) |
-
1992
- 1992-01-10 JP JP4003184A patent/JP2578040B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Publication date |
---|---|
JPH05186826A (ja) | 1993-07-27 |
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