JP2573445B2 - 非直線抵抗体 - Google Patents

非直線抵抗体

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JP2573445B2
JP2573445B2 JP3260644A JP26064491A JP2573445B2 JP 2573445 B2 JP2573445 B2 JP 2573445B2 JP 3260644 A JP3260644 A JP 3260644A JP 26064491 A JP26064491 A JP 26064491A JP 2573445 B2 JP2573445 B2 JP 2573445B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、避雷器等に用いられる
非直線抵抗体に係り、特に酸化亜鉛を主成分とする素子
の表面に形成される高抵抗層を改良した非直線抵抗体に
関する。
【0002】
【従来の技術】従来よく知られているように、避雷器は
電力系統において発生する異常電圧を抑制し電力系統を
保護するために用いられる。この避雷器には非直線抵抗
体、すなわち正常な電圧では絶縁特性を示し、異常電圧
が印加された時には低い抵抗値を呈するものである。非
直線抵抗体は通常、バリスタと呼ばれ、その代表的なも
のに酸化亜鉛を主成分としたものがある。
【0003】一般に避雷器等に用いられる金属酸化物か
らなる非直線抵抗体は、酸化亜鉛(ZnO)を主成分と
し、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、コバルト
(Co)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、クロ
ム(Cr)、けい素(Si)の酸化物等からなる副成分
を含んだ構成とされている。
【0004】そして非直線抵抗体の製造は、上記各原料
を水および有機バインダとともに十分混合した後、スプ
レードライヤ等で造粒し、成形を行い、仮焼結した後、
この仮焼結体の表面に、沿面閃絡を防止する目的で、焼
成後高抵抗になる物質を塗布し、焼成し高抵抗層を形成
し、さらに両端面を研磨し、電極を取付けることにより
行われている。
【0005】なお、製法としては、(1)二酸化けい素
(SiO)、酸化ビスマス(Bi)、酸化アン
チモン(Sb)を水および有機バインダとともに
混合し、仮焼体表面に塗布した後、1000〜1200
℃で焼結し、高抵抗層を形成する方法と、(2)例えば
特開平2−7401号に示されているように、無機高分
子もしくは有機金属化合物を主成分とした物質を塗布
し、350℃で脱水縮合、加水分解、重縮合あるいは熱
分解させて表面高抵抗層を形成する等の方法とが知られ
ている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】近年の電力系統は送電
コスト低減のために大容量化、高電圧化が進み、それに
伴って避雷器についても500kV程度のものが実用化
されている。さらに近い将来には1000kV(UH
V)用避雷器も計画されている。
【0007】これらの避雷器に使用される非直線抵抗体
は、極めて大きなサージエネルギを処理する必要があ
り、非直線抵抗体の大容量化、並列接続枚数の増加等の
手段が用いられる。
【0008】しかし、並列接続枚数の増加は、電流分担
のアンバランスを招き易い等の特性上の問題から、並列
接続枚数は制限され、必然的に非直線抵抗体の大容量化
が図られなければならない。しかし、厚みは避雷器の制
限電圧等によって制限されるので、素子径を大きくしな
ければならない。このようにして、500kV用等の非
直線抵抗体の形状は、直径が100〜120mm、肉厚が
焼結時の変形および経済性から20〜45mmにもなる。
【0009】このような非直線抵抗体は焼結が難しく、
しばしば電気特性のばらつきとなって現れる。例えば前
記の(1)の方法で製造される非直線抵抗体では、工業
的に量産製造する場合に、非直線抵抗特性の低下やその
特性上のばらつきだけでなく、放電耐量特性等のばらつ
きが発生するという問題があり、素子特性の安定化に種
々苦慮している。
【0010】また、(2)の方法で製造される非直線抵
抗体は優れた特性となる場合が多く、放電耐量特性は大
幅に向上するが、これらの高抵抗層は単層であるため、
希に部分的な構造の欠陥、例えばポア、ピンホール等の
存在により特性が悪化する場合がある。
【0011】このように従来では、仮焼した素体に焼成
後高抵抗になる物質を塗布した後、焼成して高抵抗層を
形成して構成されることから、素体の適性な焼成温度と
高抵抗層形成のための適性な温度が合致しない場合が多
く現れ、安定した電気特性を有する素子が望まれてい
た。
【0012】本発明はこのような事情に基づいてなされ
たもので、焼結時の影響が少なく、放電耐量特性を大幅
に向上することができる非直線抵抗体を提供することを
目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段および作用】発明者におい
ては、優れた放電耐量特性をもつ非直線抵抗体を得るた
め種々の研究を行ってきた。その結果、次のことが明ら
かとなった。
【0014】すなわち従来の非直線抵抗体では、高抵抗
層が、仮焼した素体への焼成後高抵抗となる物質の塗
布、およびその後の焼成によって得られているが、素体
の適正焼成温度と高抵抗層形成の適性温度とは合致しな
いものである。したがって、従来では素体に適する焼成
温度に合わせることになり、その結果良好な高抵抗層が
形成されず、放電耐量特性が低下していることが分かっ
た。
【0015】ところで、オルトリン酸アルミニウム等の
ように、アルミニウムを主成分とする無機高分子構造を
有するセラミックは、一般のAlの焼成温度に比
べて極めて低い温度で脱水結合反応させた場合、−P−
O−P−構造や、金属イオンの周囲にリン酸塩分子がO
をもって配位する−P−O−M−O−P−のような分
子構造、例えばAlH10・nHOで表され
る耐熱性、耐水性に優れた高抵抗物質となる。オルトリ
ン酸シリコンの場合も略同様である。
【0016】したがって、このようにアルミニウムを主
成分とする無機高分子構造を有するセラミック、または
アルミニウムおよびシリコンを主成分とする無機高分子
構造を有するセラミックを、焼結素体の表面に塗布して
脱水結合反応させれば、優れた高抵抗層が形成できるも
のと考えられる。
【0017】一方、金属アルコシキド等のように、シリ
カを主成分とする非晶質のセラミックは、200℃以下
の低温で加水分解、重縮合反応を起こし、非晶質の耐熱
性、対水性に優れた物質となる。
【0018】したがって、金属アルコシキド等を、アル
ミニウムを主成分とする無機高分子構造を有するセラミ
ック、またはアルミニウムおよびシリコンを主成分とす
る無機高分子構造を有するセラミックからなる高抵抗層
のさらに上層として塗布して加水分解、重縮合反応させ
れば、非晶質の耐熱性、対水性に優れたセラミックコー
ティング膜を形成するものと考えられる。
【0019】さらに、金属アルコキシドはアルコール溶
液のため浸透性が良く、アルミニウムを主成分とする無
機高分子構造を有するセラミック、またはアルミニウム
およびシリコンを主成分とする無機高分子構造を有する
セラミックからなる高抵抗層のポア、ピンホール等の欠
陥部分に入り、硬化強化する働きをすることも考えられ
る。
【0020】したがって、以上の2種類の層を用いれ
ば、欠陥部分の極めて少ない良好な2層のセラミックコ
ーティング膜が形成され、かつ適正な膜厚に制御すれ
ば、放電耐量特性が良好で、かつ耐量特性のばらつきが
小さくなると考えられる。
【0021】以上の知見に基づき、請求項1の発明は、
酸化亜鉛を主成分とする焼結体の表面に高抵抗層を設け
た非直線抵抗体において、前記高抵抗層はアルミニウム
を主成分とする無機高分子構造を有するセラミックコー
ティング膜である第1の層と、この第1の層上に設けら
れたシリカを主成分とする非晶質のセラミックコーティ
ング膜である第2の層とからなり、第1の層と第2の層
とを加算した膜厚が20〜200μmであることを特徴
とする。
【0022】また、請求項2の発明は、酸化亜鉛を主成
分とする焼結体の表面に高抵抗層を設けた非直線抵抗体
において、前記高抵抗層はアルミニウムおよびシリコン
を主成分とする無機高分子構造を有するセラミックコー
ティング膜である第1の層と、この第1の層上に設けら
れたシリカを主成分とする非晶質のセラミックコーティ
ング膜である第2の層とからなり、第1の層と第2の層
とを加算した膜厚が20〜200μmであることを特徴
とする。
【0023】上記の各発明において、第1の層と第2の
層とを加算した膜厚を20〜200μmの範囲としたの
は、以下の理由である。
【0024】すなわち、素子表面の凹凸等から、膜厚が
20μm以下では放電耐量特性が不十分となり、また、
200μmを越えると、放電電流が印加されたときに高
抵抗層の表面に発生する熱応力と、素体と高抵抗層との
界面に発生する熱応力との差が大きく、素体が破損した
り、高抵抗層が剥離し易くなるためである。
【0025】なお、本発明において、第1の層となる無
機高分子構造を有するセラミックコーティング膜の材料
としては、オルトリン酸塩が好適であり、他にリン酸塩
基を変えたピロリン酸塩、トリポリン酸塩、テトラポリ
ン酸塩等が適用できる。
【0026】また、第2の層となる非晶質構造を有する
セラミックコーティング膜の材料としては、金属アルコ
キシドの一種であるイソプロパキシシリカが好適であ
り、他にイソプロパキシシリカのアルキル基を変えて、
メチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル
基を採用することも可能である。
【0027】なお、非直線抵抗体の添加物としては酸化
物原料が好適であるが、焼成して酸化物になり非直線特
性を向上させるものであれば、他の成分を加えてもよ
い。
【0028】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明
する。
【0029】実施例1 本実施例は避雷器として適用される非直線抵抗体につい
てのもので、図1に本実施例による非直線抵抗体の断面
構成を示している。
【0030】本実施例の非直線抵抗体は、焼結体である
円盤状の素体1と、この素体1の軸方向各端面に設けら
れた電極2と、素体1の外周面に形成された高抵抗層で
ある第1の層3およびこの第1の層上に設けられた第2
の層4とを有する構成とされている。なお、この非直線
抵抗体の直径は100mm肉厚は22mmである。
【0031】素体1は、酸化亜鉛を主成分とする焼結体
によって構成され、電圧非直線性を有している。
【0032】また、第1の層3は、アルミニウムを主成
分とする無機高分子構造を有するセラミックコーティン
グ膜によって構成されている。
【0033】さらに、第2の高抵抗層4はシリカを主成
分とする非晶質のセラミックコーティング膜によって構
成されている。
【0034】そして、第1の層3と第2の層4とを加算
した膜厚は、20〜200μmの範囲、例えば120μ
mに設定されている。
【0035】このような構成の非直線抵抗体は以下の方
法で製造されたものである。
【0036】まず、素体1の製造方法を説明する。
【0037】酸化亜鉛(ZnO)に、酸化ビスマス(B
)、酸化マンガン(MnO)、二酸化けい素
(SiO)、酸化クロム(Cr)を、それぞれ
0.5モル%、酸化コバルト(Co)、酸化アン
チモン(Sb)、酸化ニッケル(NiO)をそれ
ぞれ1モル%添加する。これらの原料を水や分散材等の
有機バインダ類とともに混合装置に入れ、混合する。
【0038】次に、上記の混合物をスプレードライヤで
例えば粒径が100μmになるように噴霧造粒する。そ
して、これらの造粒粉を金型に入れて加圧し、直径12
5mm、厚さ30mmの円盤に成形した後、添加した有機バ
インダ類を除くため空気中で500℃で焼成し、さらに
空気中で1200℃で焼成する。これにより素体1を得
る。
【0039】次に、高抵抗層である第1,第2の層3,
4の製造方法を説明する。
【0040】まず、無機高分子構造を形成するセラミッ
クコーティング材料、例えばオルトリン酸アルミニウム
(Al(HPO)の水溶液を、スプレーガン等
によって上述した素体1の外周面に塗布する。塗布の
後、素体1を例えば350℃の温度で、1〜2時間乾燥
して固化させる。これによって素体1の外周面に、高抵
抗層である第1の層3が形成される。
【0041】次に、非晶質のセラミックコーティング膜
を形成する材料、例えば金属アルコキシドの一種である
イソプロパキシシリカ(Si(OC))を前記
同様にスプレーガン等によって第1の層3の外周側に塗
布する。その後、200℃で乾燥して固化させ、これに
よって第1の層3の外周側に非晶質の膜からなる第2の
層4を形成する。
【0042】なお、各層3,4の厚みは、硬化後に合計
で例えば120μmとなるように塗布時の条件を調整す
る。
【0043】以上の方法で得られた焼結素体の軸方向両
端面を研磨し、その両端面にアルミニウムを溶射して電
極2を形成する。これにより、図1に示した非直線抵抗
体を得ることができる。
【0044】図2は、以上の方法で製造された本実施例
による非直線抵抗体の放電耐量特性の測定値を、従来の
非直線抵抗体と比較して示したものである。すなわち、
縦軸に度数を現し、横軸に素子が耐えたエネルギの値を
現し、分布図として示している。本実験では、完成した
非直線抵抗体に2.5msの矩形波電流を5回印加し
て、放電耐量の測定を行った。
【0045】図2の曲線Aは本実施例の非直線抵抗体の
放電耐量特性を示し、曲線Bは従来の製造方法による非
直線抵抗体の放電耐量特性を示す。同図から明らかなよ
うに、従来の非直線抵抗体では、放電耐量特性のばらつ
きが大きく、耐量エネルギも小さいのに対し、本実施例
による非直線抵抗体では、放電耐量特性のばらつきが小
さく、同特性が良好であることが分かる。
【0046】したがって第1の層3として、アルミニウ
ム主成分の無機高分子構造を有するセラミックコーティ
ング膜、第2の層4としてシリカ主成分の非晶質のセラ
ミックコーティング膜を有する本実施例によれば、従来
の非直線抵抗体に比べて放電耐量特性が向上できる。
【0047】図3は、高抵抗層である第1,第2の層
3,4の膜厚と、インパルス耐量(8×20μs、15
0kA印加による50%破壊回数)との関係を示したも
のである。本図により、良好なインパルス耐量を保持す
るには、膜厚を20〜200μmに調整する必要がある
ことが分かる。
【0048】本実施例により、優れた放電耐量特性をも
つ非直線抵抗体が得られる理由は、次のように考えられ
る。
【0049】すなわち、従来では、仮焼した素体に焼成
後高抵抗になる物質を塗布した後、焼成し高抵抗層を形
成しているため素体の適性な焼成温度と高抵抗層形成の
適性温度が合致せず、その結果素体に適する焼成温度に
合わせることになり良好な高抵抗層ができず、放電耐量
特性が低下している。
【0050】しかし、本実施例のように、焼結素体の表
面に塗布されたオルトリン酸アルミニウムは一般のAl
の焼成塗膜の焼成温度に比べて極めて低い温度で
脱水結合反応により−P−O−P−構造や、金属イオン
の周囲にリン酸塩分子がOをもって配位して−P−O
−M−O−P−のような分子構造、例えばAlH
10・nHOで表される耐熱性、耐水性に優れた高
抵抗の硬化被膜が形成される。さらにその上層として
の、金属アルコシキドはやはり200℃以下の低温で加
水分解、重縮合反応を起こし、非晶質の耐熱性、対水性
に優れたセラミックコーティング膜を形成する。
【0051】 Si(OC+HO→Si(OH)+4COH Si(OH)→SiO+2HO↑ これらの金属アルコキシドは非晶質の第2層を形成する
だけでなく、アルコール溶液のため浸透性が良く、第1
層のポア、ピンホール等の欠陥部分に入り、硬化強化す
る働きもすることから欠陥部分の極めて少ない良好な2
層のセラミックコーティング膜が形成され、かつ適正な
膜厚に制御することから、放電耐量特性が良好で、かつ
耐量特性のばらつきが小さくなると考えられる。
【0052】以上の実施例によれば、素体1の表面に第
1の層3としてアルミニウム主成分の無機高分子構造を
有するセラミックコーティング膜を形成し、さらにその
上層に第2の層4としてシリカ主成分の非晶質構造を有
するセラミックコーティング膜を形成し、かつ膜厚を2
0〜200μmに制御し、これにより放電耐量特性に優
れた信頼性の高い非直線抵抗体を提供することができ
た。
【0053】なお、本実施例においては、無機高分子構
造を有するセラミックコーティング膜の材料としてオル
トリン酸塩を使用したが、リン酸塩基を変えてピロリン
酸塩、トリポリン酸塩、テトラポリン酸塩でも良好な特
性を示すことが認められた。
【0054】また、非晶質構造を有するセラミックコー
ティング膜の材料の実施例としては、金属アルコキシド
の一種であるイソプロパキシシリカを使用したが、イソ
プロパキシシリカのアルキル基を変えて、メチル基、エ
チル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基を採用して
も同様の効果が得られた。
【0055】さらに、前記実施例では、非直線抵抗体の
添加物として酸化物原料を用いたが、これに限らず、焼
成して酸化物になるものであれば良い。例えば非直線特
性を向上させる目的で他の成分を加えてもよい。
【0056】なお、前記実施例は非直線抵抗体の直径を
100mmとし、肉厚を22mmとしたが、これよりも容量
が小さなもの、あるいは大きなものでも前記同様の効果
が奏されることが確認できた。
【0057】実施例2 本実施例も避雷器として適用される非直線抵抗体につい
てのもので、図4に本実施例による非直線抵抗体の断面
構成を示している。
【0058】本実施例の非直線抵抗体は、焼結体である
円盤状の素体11と、この素体11の軸方向各端面に設
けられた電極12と、素体11の外周面に形成された高
抵抗層である第1の層13およびこの第1の層上に設け
られた第2の層14とを有する構成とされている。な
お、この非直線抵抗体の直径は100mm肉厚は22mmで
ある。
【0059】素体11は、酸化亜鉛を主成分とする焼結
体によって構成され、電圧非直線性を有している。
【0060】また、第1の層13は、アルミニウムおよ
びシリコンを主成分とする無機高分子構造を有するセラ
ミックコーティング膜によって構成されている。
【0061】さらに、第2の高抵抗層14はシリカを主
成分とする非晶質のセラミックコーティング膜によって
構成されている。
【0062】そして、第1の層13と第2の層14とを
加算した膜厚は、20〜200μmの範囲、例えば12
0μmに設定されている。
【0063】このような構成の非直線抵抗体は以下の方
法で製造されたものである。
【0064】まず、素体11の製造方法を説明する。
【0065】酸化亜鉛(ZnO)に、酸化ビスマス(B
)、酸化マンガン(MnO)、二酸化けい素
(SiO)、酸化クロム(Cr)を、それぞれ
0.5モル%、酸化コバルト(Co)、酸化アン
チモン(Sb)、酸化ニッケル(NiO)をそれ
ぞれ1モル%添加する。これらの原料を水や分散材等の
有機バインダ類とともに混合装置に入れ、混合する。
【0066】次に、上記の混合物をスプレードライヤで
例えば粒径が100μmになるように噴霧造粒する。そ
して、これらの造粒粉を金型に入れて加圧し、直径12
5mm、厚さ30mmの円盤に成形した後、添加した有機バ
インダ類を除くため空気中で500℃で焼成し、さらに
空気中で1200℃で焼成する。これにより素体11を
得る。
【0067】次に、高抵抗層である第1,第2の層1
3,14の製造方法を説明する。
【0068】まず、無機高分子構造を形成するセラミッ
クコーティング材料、例えばオルトリン酸アルミニウム
(Al(HPO)およびオルトリン酸シリコン
(HPO)の混合水溶液を、スプレーガン等によっ
て上述した素体11の外周面に塗布する。塗布の後、素
体11を例えば350℃の温度で、1〜2時間乾燥して
固化させる。これによって素体11の外周面に、高抵抗
層である第1の層13が形成される。
【0069】次に、非晶質のセラミックコーティング膜
を形成する材料、例えば金属アルコキシドの一種である
イソプロパキシシリカ(Si(OC))を前記
同様にスプレーガン等によって第1の層13の外周側に
塗布する。その後、200℃で乾燥して固化させ、これ
によって第1の層13の外周側に非晶質の膜からなる第
2の層14を形成する。
【0070】なお、各層13,4の厚みは、硬化後に合
計で例えば120μmとなるように塗布時の条件を調整
する。
【0071】以上の方法で得られた焼結素体の軸方向両
端面を研磨し、その両端面にアルミニウムを溶射して電
極12を形成する。これにより、図1に示した非直線抵
抗体を得ることができる。
【0072】図5は、以上の方法で製造された本実施例
による非直線抵抗体の放電耐量特性の測定値を、従来の
非直線抵抗体と比較して示したものである。すなわち、
縦軸に度数を現し、横軸に素子が耐えたエネルギの値を
現し、分布図として示している。本実験では、完成した
非直線抵抗体に2msの矩形波電流を5回印加して、放
電耐量の測定を行った。
【0073】図5の曲線Cは本実施例の非直線抵抗体の
放電耐量特性を示し、曲線Dは従来の製造方法による非
直線抵抗体の放電耐量特性を示す。同図から明らかなよ
うに、従来の非直線抵抗体では、放電耐量特性のばらつ
きが大きく、耐量エネルギも小さいのに対し、本実施例
による非直線抵抗体では、放電耐量特性のばらつきが小
さく、同特性が良好であることが分かる。
【0074】したがって第1の層13として、アルミニ
ウムおよびシリコン主成分の無機高分子構造を有するセ
ラミックコーティング膜、第2の層14としてシリカ主
成分の非晶質のセラミックコーティング膜を有する本実
施例によれば、従来の非直線抵抗体に比べて放電耐量特
性が向上できる。
【0075】図6は、高抵抗層である第1,第2の層1
3,14の膜厚と、インパルス耐量(8×20μs、1
50kA印加による50%破壊回数)との関係を示した
ものである。本図により、良好なインパルス耐量を保持
するには、膜厚を20〜200μmに調整する必要があ
ることが分かる。
【0076】本実施例により、優れた放電耐量特性をも
つ非直線抵抗体が得られる理由は、次のように考えられ
る。
【0077】すなわち、従来では、仮焼した素体に焼成
後高抵抗になる物質を塗布した後、焼成し高抵抗層を形
成しているため素体の適性な焼成温度と高抵抗層形成の
適性温度が合致せず、その結果素体に適する焼成温度に
合わせることになり良好な高抵抗層ができず、放電耐量
特性が低下している。
【0078】しかし、本実施例のように、焼結素体の表
面に塗布されたオルトリン酸アルミニウム、オルトリン
酸シリコンの場合、アルミニウムを例に述べると、一般
のAlの焼成塗膜の焼成温度に比べて極めて低い
温度で脱水結合反応により−P−O−P−構造や、金属
イオンの周囲にリン酸塩分子がOをもって配位して−
P−O−M−O−P−のような分子構造、例えばAlH
10・nHOで表される耐熱性、耐水性に優
れた高抵抗の硬化被膜が形成される。さらにその上層と
しての、金属アルコシキドはやはり200℃以下の低温
で加水分解、重縮合反応を起こし、非晶質の耐熱性、対
水性に優れたセラミックコーティング膜を形成する。
【0079】 Si(OC+HO→Si(OH)+4COH Si(OH)→SiO+2HO↑ これらの金属アルコキシドは非晶質の第2層を形成する
だけでなく、アルコール溶液のため浸透性が良く、第1
層のポア、ピンホール等の欠陥部分に入り、硬化強化す
る働きもすることから欠陥部分の極めて少ない良好な2
層のセラミックコーティング膜が形成され、かつ適正な
膜厚に制御することから、放電耐量特性が良好で、かつ
耐量特性のばらつきが小さくなると考えられる。
【0080】以上の実施例によれば、素体11の表面に
アルミニウムおよびシリコンを主成分とする無機高分子
構造を有する第1の層13としてセラミックコーティン
グ膜を形成し、さらにその上層に第2の層14としてシ
リカ主成分の非晶質構造を有する第2のセラミックコー
ティング膜を形成し、かつ膜厚を20〜200μmに制
御し、これにより放電耐量特性に優れた信頼性の高い非
直線抵抗体を提供することができた。
【0081】なお、本実施例においては、無機高分子構
造を有するセラミックコーティング膜の材料としてオル
トリン酸塩を使用したが、リン酸塩基を変えてピロリン
酸塩、トリポリン酸塩、テトラポリン酸塩でも良好な特
性を示すことが認められた。また、非晶質構造を有する
セラミックコーティング膜の材料の実施例としては、金
属アルコキシドの一種であるイソプロパキシシリカを使
用したが、イソプロパキシシリカのアルキル基を変え
て、メチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキ
シル基を採用しても同様の効果が得られた。
【0082】さらに、前記実施例では、非直線抵抗体の
添加物として酸化物原料を用いたが、これに限らず、焼
成して酸化物になるものであれば良い。例えば非直線特
性を向上させる目的で他の成分を加えてもよい。
【0083】なお、前記実施例は非直線抵抗体の直径を
100mmとし、肉厚を22mmとしたが、これよりも容量
が小さなもの、あるいは大きなものでも前記同様の効果
が奏されることが確認できた。
【0084】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、焼結体
自身が電圧非直線性を有するような添加物を加えた、酸
化亜鉛を主成分とする成形体を焼成し、この焼結体の表
面にアルミニウムを主成分とする無機高分子構造、また
はアルミニウムおよびシリコンを主成分とする無機高分
子構造を有する第1のセラミックコーティング膜を形成
し、さらにその上層としてシリカを主成分とする非晶質
構造を有する第2のセラミックコーティング膜を形成
し、その膜厚を20〜200μmに設定することによ
り、放電特性に優れた信頼性の高い非直線抵抗体が得ら
れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1による被直線抵抗体を示す断
面図。
【図2】同実施例による非直線抵抗体の放電耐量特性を
示すグラフ。
【図3】同実施例による非直線抵抗体の放電耐量特性を
示すグラフ。
【図4】本発明の実施例2による被直線抵抗体を示す断
面図。
【図5】同実施例による非直線抵抗体の放電耐量特性を
示すグラフ。
【図6】同実施例による非直線抵抗体の放電耐量特性を
示すグラフ。
【符号の説明】
1 素体(焼結体) 3 第1の層 4 第2の層 11 素体(焼結体) 12 第1の層 13 第2の層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−157901(JP,A) 特開 平2−7401(JP,A) 特開 昭64−80002(JP,A) 特開 平3−89501(JP,A) 特開 昭62−208601(JP,A) 特開 平5−101911(JP,A) 実開 昭62−131401(JP,U)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸化亜鉛を主成分とする焼結体の表面に
    高抵抗層を設けた非直線抵抗体において、前記高抵抗層
    はアルミニウムを主成分とする無機高分子構造を有する
    セラミックコーティング膜である第1の層と、この第1
    の層上に設けられたシリカを主成分とする非晶質のセラ
    ミックコーティング膜である第2の層とからなり、第1
    の層と第2の層とを加算した膜厚が20〜200μmで
    あることを特徴とする非直線抵抗体。
  2. 【請求項2】 酸化亜鉛を主成分とする焼結体の表面に
    高抵抗層を設けた非直線抵抗体において、前記高抵抗層
    はアルミニウムおよびシリコンを主成分とする無機高分
    子構造を有するセラミックコーティング膜である第1の
    層と、この第1の層上に設けられたシリカを主成分とす
    る非晶質のセラミックコーティング膜である第2の層と
    からなり、第1の層と第2の層とを加算した膜厚が20
    〜200μmであることを特徴とする非直線抵抗体。
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