JP2815990B2 - 非直線抵抗体の製造方法 - Google Patents

非直線抵抗体の製造方法

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【発明の詳細な説明】 [発明の目的] (産業上の利用分野) 本発明は、避雷器等に用いられる酸化亜鉛を主成分と
した非直線抵抗体の製造方法に係り、特に、酸化亜鉛素
子側面の高抵抗層の形成手段に改良を施した非直線抵抗
体の製造方法に関するものである。
(従来の技術) 従来から、電力系統において発生する異常電圧を抑制
し、電力系統を保護するために、避雷器が用いられてい
る。また、この避雷器には、正常な電圧では絶縁特性を
示し、異常電圧が印加された時には低抵抗特性を示し
て、系統を保護する非直線抵抗体が用いられている。こ
の非直線抵抗体は、一般にはバリスタと呼ばれ、その代
表的なものとして酸化亜鉛を主成分としたものがある。
一般に、避雷器等に用いられる金属酸化物からなる非
直線抵抗体は、以下に述べるようにして形成される。即
ち、酸化亜鉛(ZnO)を主成分とし、ビスマス(Bi)、
アンチモン(Sb)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、
ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、ケイ素(Si)などの酸
化物を副成分とする原料を、水及び有機バインダーと共
に十分混合した後、スプレードライヤーなどで造粒し、
成形及び焼結する。その後、この焼結体の側面に、沿面
閃絡を防止するための高抵抗物質を塗布し、再焼成して
高抵抗層を形成する。さらに、この焼結体の上下両端面
を研磨し、電極を取付けることにより、非直線抵抗体が
形成される。従来の非直線抵抗体の高抵抗層について、
さらに詳しく説明すると、例えば、二酸化ケイ素(Si
O2),酸化ビスマス(Bi2O3),酸化アンチモン(Sb
2O3)等を、水及び有機バインダーと共に混合し、焼結
体側面に塗布した後、1000〜1200℃で焼成して、高抵抗
層が形成されている。
(発明が解決しようとする課題) ところで、近年、電力系統は大容量化、高電圧化が進
み、これに伴って、避雷器を構成する非直線抵抗体の大
容量化が図られ、非直線抵抗体の厚さ及び面積の増量が
成されている。
しかしながら、この様な大形の非直線抵抗体は、焼結
時の変形が大きく、所定の形状が得られないといった欠
点があった。また、非直線抵抗特性の低下やバラツキ、
放電耐量特性のバラツキ等の電気的特性の低下が併せて
発生するといった欠点があった。
そこで、非直線抵抗体の側面に、ケイ素樹脂やエポキ
シ樹脂等を塗布する方法が考えられているが、この様な
有機材料の塗布では、連続通電に対し、非直線抵抗体を
十分に安定化することはできなかった。また、特公昭54
−26710号公報には、焼結体の側面に、熱膨脹係数が3.5
×10-6〜8.0×10-6/℃のガラスを塗布し、通電に対して
安定で、しかも沿面閃絡のない非直線抵抗体の製造方法
が示されている。しかし、この方法では、焼結体の側面
に塗布されるものがガラスであるため、割れやすく、ま
た、接着性がないため、焼結体側面の曲げ強度は小さ
く、さらに、放電耐量特性のバラツキが大きくなってい
た。また、リン酸マグネシウムの様な無機リン酸塩を主
成分とする高抵抗層が用いられているが、この場合も、
その厚さによって放電耐量特性のバラツキが大きくなっ
ていた。
本発明は、上記の欠点を解消するために提案されたも
ので、その目的は、高抵抗層の形成時においても、電気
的特性を低下させることのない、信頼性の高い非直線抵
抗体の製造方法を提供することにある。
[発明の構成] (課題を解決するための手段) 請求項1記載の発明は、酸化亜鉛を主成分とする成形
体を焼成して焼結体とし、この焼結体の側面に、マグネ
シウムとリン、あるいはアルミニウムとリン、あるいは
アルミニウムとケイ素とリンを含むリン酸含有液を塗
布、焼成して、焼結体側面に厚さ10〜200μmの高抵抗
層を形成することを特徴とするものである。
(作用) 本発明の非直線抵抗体の製造方法によれば、酸化亜鉛
を主体とする薬結体の側面に、安定性の高い高抵抗層を
形成することができるので、焼結体の側面強度の低下を
防止することができ、放電耐量特性の向上が可能とな
る。
(実施例) 以下、本発明の実施例を第1図乃至第7図に基づいて
具体的に説明する。
第1実施例 本実施例においては、酸化亜鉛(ZnO)に、酸化ビス
マス(Bi2O3)、二酸化マンガン(MnO2)、二酸化ケイ
素(SiO2)、酸化クロム(Cr2O3)をそれぞれ0.5mol
%、酸化コバルト(Co2O3)、酸化アンチモン(Sb
2O3)、酸化ニッケル(NiO)をそれぞれ1mol%添加す
る。これらの原料を、水や分散剤等の有機バインダー類
と共に混合装置に入れて混合する。次に、この混合物を
スプレードライヤーで所定の粒径、例えば100μmに噴
霧造粒する。そして、この造粒粉を金型に入れて加圧
し、円板等所定の形状に成形することで成形体が作られ
る。この様にして得られた成形体は、添加した有機バイ
ンダー類を除くため、空気中で焼成することによって、
第1図に示した様な焼結体1となる。
そして、焼結体1の側面に、Mg、PをそれぞれMgO、P
2O5に換算して40mol%、30mol%、及び残部水からなる
リン酸含有液を、スプレーガンを使用して所定量塗布す
る。次に、焼結体1を400℃で2時間焼成することで、
焼結体1の側面に高抵抗層2を形成する。さらに、この
焼結体の上下両端面を研磨し、アルミニウムを溶射して
電極3を形成することによって、非直線抵抗体を得るこ
とができる。なお、前記高抵抗層2の厚みは、リン酸含
有液の塗布量を適宜変えることによって、所定の厚みを
得ることができる。
この様にして得られた非直線抵抗体の放電耐量特性を
第2図に示した。なお、第2図においては、横軸に高抵
抗層の厚さ(対数目盛)をとり縦軸に、2.5msの矩形波
電流を用いた場合に20個の試料についてそれらが耐え得
る放電耐量特性をとっている。第2図に示した結果か
ら、高抵抗層の厚さが10〜200μmの時、放電耐量特性
が良好であることがわかる。
このことから、優れた放電耐量特性を有する非直線抵
抗体が得られる理由は、Mg、Pを含むリン酸含有液を所
定量塗布し、焼成することにより形成された高抵抗層が
10μmに満たない場合には、高抵抗層としての効果がな
く、200μmを越えた場合には、放電電流が印加された
時に、高抵抗層の表面に発生する熱応力と、焼結体と高
抵抗層との界面付近に発生する熱応力との差が大きくな
り、焼結体が破損しやすくなるためと考えられる。
なお、Mg、Pを、それぞれMgO、P2O5に換算して30〜7
0mol%、10〜60mol%とした場合も、第2図に示した結
果と同様に放電耐量が向上されることが確認された。ま
た、上記の実施例においては、焼結体のスラリー原料と
して酸化物原料を使用したが、焼結して酸化物になるも
のであれば良く、例えば水酸化物、炭酸化物、シュウ酸
化物であっても同様の効果が得られる。さらに、上記の
実施例で示した以外の添加物を添加しても良い。
第2実施例 本実施例は、第1実施例のマグネシウムの代わりにア
ルミニウムを用いたものである。即ち、焼結体1の側面
に、Al、PをそれぞれAl2O3、P2O5に換算して40mol%、
30mol%、及び残部水からなるリン酸含有液を、スプレ
ーガンを使用して所定量塗布する。以下の工程は第1実
施例と同様である。
この様にして得られた非直線抵抗体の放電耐量特性を
第3図に示した。第3図から、高抵抗層の厚さが10〜20
0μmの時、放電耐量特性が良好であることがわかる。
なお、Al、Pをそれぞれ、Al2O3、P2O5に換算して30
〜70mol%、10〜60mol%とした場合も、第3図に示した
結果と同様に放電耐量が向上されることが確認された。
第3実施例 本実施例は、第1実施例のマグネシウムと代わりにア
ルミニウム及びケイ素を用いたものである。即ち、焼結
体1の側面に、Al、Si、PをそれぞれAl2O3、SiO2、P2O
5に換算して20mol%、20mol%、30mol%からなるリン酸
含有液を、スプレーガンを使用して所定量塗布する。以
下の工程は第1実施例と同様である。
この様にして得られた非直線抵抗体の放電耐量特性を
第4図に示した。第4図から、高抵抗層の厚さが10〜20
0μmの時、放電耐量特性が良好であることがわかる。
なお、Al、Si、Pを、それぞれ、Al2O3、SiO2、P2O5
に換算して10〜50mol%、10〜60mol%、10〜60mol%と
した場合も、第4図に示した結果と同様に放電耐量が向
上されることが確認された。
第4実施例 第1実施例に示した方法によって形成された焼結体の
側面に、ZrO2、SiO2を主成分とする無機系接着剤(Zr
O2、40〜60wt%、SiO2:30〜50wt%,Al2O3:2〜4wt%、Na
2O:1.5〜3.5wt%、その他Ca,Fe,Cu,Ni等)をスプレーガ
ンを使用して所定量塗布し、焼成後の膜厚が30μmにな
るようにする。そして、無機系接着剤を塗布した後、焼
結体1を徐々に加熱していき、150℃で2時間、350℃1
時間焼成することで、焼結体1の側面に高抵抗層2を形
成する。さらに、この焼結体の上下両端面を研磨し、ア
ルミニウムを溶射して電極3を形成することによって、
非直線抵抗体を得ることができる。
なお、無機系接着剤としては、その接着強度が50kg/c
m2〜300kg/cm2のものを用いることが望ましい。また、
無機系接着剤は、加熱硬化時に凹凸部を残すことがある
ため、膜厚を10μm以上とすることが望ましく、一方、
膜厚が厚すぎると、焼結体の冷熱サイクル時に亀裂が入
ったり剥離する危険性が高いため、150μm以下とする
ことが望ましい。さらに、無機系接着剤の塗布作業は、
電極3を形成する前でも、後でも良い。
また、本発明に使用することのできる無機系接着剤と
しては、種々のものが考えられるが、以下に述べる条件
を満たすものであることが必要である。即ち、焼結体と
無機系接着剤の密着性を良くし、また、無機接着剤の厚
みを10μm以上とするため、焼結体と無機系接着剤の熱
膨張係数が近いものであることが望ましい。具体的に
は、酸化亜鉛焼結体の熱膨張係数が5.7×10-6〜7.0×10
-6/℃であるため、無機系接着剤の熱膨張係数は3.0×10
-6〜9.0×10-6/℃が良い。これは、両者の熱膨張係数の
差が大きいと、熱処理して冷却する間に、焼結体または
無機系接着剤に応力が働き、無機系接着剤の亀裂、焼結
体と破壊あるいは無機系接着剤の剥離が生じ、連続通電
に対する安定化や沿面閃絡の防止に十分な効果が得られ
ないためである。また、無機系接着剤は保護被膜として
使用するため、それ自体が不安定で、吸湿性が高く、経
時変化するものであってはならない。さらに、無機系接
着剤塗布後の加熱硬化温度は、無機系接着剤の種類によ
って異なるが、約150℃以上の温度が要求される。ま
た、加熱硬化後の冷却は自然放冷が良い。
この様にして得られた非直線抵抗体の側面強度を、従
来例と比較して種々検討した結果を以下に示す。まず、
第5図は、無機系接着剤の熱膨張係数と焼結体の側面強
度との関係を示したものである。ここで、図中の本発明
品は熱膨張係数が3.0×10-6/℃の無機系接着剤を塗布
したもの、本発明品は熱膨張係数が9.0×10-6/℃の無
機系接着剤を塗布したもの、比較例は熱膨張係数が13.0
×10-6/℃の無機系接着剤を塗布したものである。ま
た、塗布の厚さは約100μmである。さらに、横軸の側
面強度は、塗布後及び塗布前の焼結体の側面からそれぞ
れ試験片を作製して、三点曲げにより強度を求め、塗布
後の側面強度を塗布前の側面強度で割った値で表してい
る。第5図から明らかな様に、従来例や比較例では、側
面強度は塗布前より低下したが本発明品,において
は低下しなかった。
また、表−1は、無機系接着剤の熱膨張係数と耐量値
の関係を示したものである。
ここで、耐量値は、電流値65KA、波形4×10μsの衝
撃電流を5分間隔で印加した場合に、試験片の50%が破
壊する印加回数(以下、50%破壊回数と称す)で示し
た。即ち、耐量値が大きい程、安定性が高いことにな
る。表から明らかな様に、従来例では約3であったが、
本発明品では約11と大幅に向上している。
次に、熱膨張係数が3.0×10-6/℃の無機系接着剤の厚
さを変えて(5〜200μm)、側面強度と耐量値を調
べ、その結果を第6図及び表−2に示した。
即ち、第6図及び表−2に示した様に、無機系接着剤の
厚さが5μmと薄い場合や、200μmと厚い場合には、
側面強度が低下し、耐量値も低いが、厚さが10〜150μ
mの本発明品においては、側面強度の低下は認められ
ず、また、高い耐量値が得られた。
なお、第6図に示した結果は、無機系接着剤の成分
を、ZrO2:50wt%、SiO2:40wt%,Al2O3:3wt%、Na2O:3wt
%とした場合のものであるが、ZrO2:40〜60wt%、SiO2:
30〜50wt%,Al2O3:2〜4wt%、Na2O:1.5〜3.5wt%の場合
も、同様の効果が得られることが確認された。
さらに、無機系接着剤の接着強度と、側面強度及び耐
量値の関係を調べ、その結果を第7図及び表−3に示し
た。
即ち、第7図及び表−3に示した様に、無機系接着剤
の接着強度が50〜300kg/cm2のものは、側面強度の低下
は認められず、また、高い耐量値が得られた。
なお、第7図に示した結果は、無機系接着剤の成分
を、Al2O3:60wt%、SiO2:20wt%、Na2O:5wt%とした場
合のものであるが、Al2O3:50〜70wt%、SiO2:10〜30wt
%、Na2O:3〜6wt%の場合も、同様の効果が得られるこ
とが確認された。
[発明の効果] 以上述べた様に、本発明によれば、焼結体の側面に、
マグネシウムとリン、あるいはアルミニウムとリン、あ
るいはアルミニウムとケイ素とリンを含むリン酸含有液
を塗布、焼成して、焼結体側面に厚さ10〜200μmの高
抵抗層を形成することによって、高抵抗層の形成時にお
いても、電気的特性を低下させることのない、信頼性の
高い非直線抵抗体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明により得られた非直線抵抗体の側面図、
第2図乃至第4図は第1実施例乃至第3実施例における
放電耐量特性を示す図、第5図は無機系接着剤の熱膨張
係数と焼結体の側面強度との関係を示す図、第6図は無
機系接着剤の厚さと側面強度との関係を示す図、第7図
は無機系接着剤の接着強度と側面強度との関係を示す図
である。 1……焼結体、2……高抵抗層、3……電極。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01C 7/02 - 7/22

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】酸化亜鉛を主成分とする成形体を焼成して
    焼結体とし、この焼結体の側面にマグネシウム、リン
    を、それぞれMgO、P2O5に換算して30〜70mol%、10〜60
    mol%、あるいは、アルミニウム、リンを、それぞれAl2
    O3、P2O5に換算して30〜70mol%、10〜60mol%、あるい
    は、アルミニウム、ケイ素、リンをそれぞれAl2O3、SiO
    2、P2O5に換算して10〜50mol%、10〜60mol%、10〜60m
    ol%含むリン酸含有液を塗布、焼成して、焼結体側面に
    厚さ10〜200μmの高抵抗層を形成することを特徴とす
    る非直線抵抗体の製造方法。
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