JP2555871C - - Google Patents
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Description
【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】
本発明は砒化ガリウム半導体装置に関する。
【従来の技術】
低雑音・高い遮断周波数・高出力等の特徴を有するマイクロ波トランジスタと
して、GaAs(砒化ガリウム)ショットキ障壁ゲート電界効果トランジスタ(
GaAs−SBGFET)が一般に知られている。 GaAs−SBGFETにはn導電形の能動領域表面にソース、ドレインとな
るオーミック接触電極を設けるとともに、その中間にゲートとなるショットキ接
合電極を1つあるいは2つ設けて、それぞれシングルゲート構造あるいはデュア
ルゲート構造を構成した構造となっている。後者のデュアルゲート構造は第2ゲ
ートバイアスによる利得制御が可能となる特長が新たに付加される。 図1は従来のシングルゲート構造のSBGFET素子の要部を示す断面図であ
る。すなわち、Crを拡散させて絶縁体となったGaAs基板1の主面にはGa
As層からなるバッファ層2が形成され、かつ このバッファ層2上にはn形エピタキシャル層3が形成されている。このn形エ
ピタキシャル層3は周辺をエッチングして除去され、メサ構造となっている。前
記n形エピタキシャル層3上には幅広のソース電極4およびドレイン電極5が平
行に形成されるとともに、両電極間には1本のゲート電極6が配設されている。
ゲート電極6はTi,W,Pt,Al等からなりショットキ障壁接合となるとと
もに、長さ(l)は1um(ミクロン)程度となっている。また、ソース電極4
およびドレイン電極5は最下層にAuGe、中間層(バリア層)にNi、Mo、
Pt等、最上層にAu層を順次蒸着し、積層形成後350℃〜400℃でアロイ
処理(合金化熱処理)を行ないオーミック性接触を得ることにより形成される。
しかし、このアロイ処理時には、電極の積層方向に沿ってGa,As、Ge、A
u等が相互拡散しやすく、電極と基板間の合金化反応は不均一になりやすいとい
う欠点があることはよく知られている。 【発明が解決しようとする課題】 これらの欠点に対する改善策としては、前記ソースおよびドレイン電極の中間
層(バリア層)の電極材料を工夫したり電極積層構造を変えることが考えられる
。一方、最近、SBGFETの量産化に向けて、アロイ処理後に素子の所望表面
部分をパッシペーション膜で被い、素子特性の安定化、素子寿命の長期化を図る
ことが試みられている。 しかし、本願発明者等の研究によれば、このようなパッシベーションを行なう
と、FETの耐圧劣化が生じ易くなることが判明した。この点について、検討し
た結果、パッシベーション時の熱処理によりオーミック接触電極とGaAs基板
間の合金反応がさらに促進され電極成分の一部が基板中へアロイ(合金)進行し
、アロイ進行成分で動作時に電界集中を起こし、耐圧劣化することがわかった。 オーミック電極形成のためのアロイ処理時に電極の積層方向(縦方向)に沿っ
てAu,Ge,Ga,等が相互拡散して不均一反応しやすいことは前述したが、
電極形成後に、パッシベーションに伴い高温熱 処理が行なわれるとこのアロイ化は再び促進され基板に沿って横方向にも進行す
るものと考えられる。この横方向アロイ化は、実験の結果、440℃前後になる
と顕微鏡でもアロイピットとして目視可能となることがわかった。なお、この横
方向アロイ進行成分は、主としてオーミック電極中のAuであると推定される。
すなわち、熱処理によりAuとGeが反応するとき、GaAs基板中にもGeが
反応するとき、GaAs基板中にもGeがドナーとして拡散されるが、このとき
、Au原子の一部も基板中に拡散し、アロイ進行するものと思われる。さらに、
この横方向アロイ化は結晶方向によってその成長速さが異なることも発見した。
図3は、横方向アロイ化の様子が結晶方向によって異なることを説明するための
摸式図である。各電極を形成する能動層(n形エピタキシャル層3)の表面が(
100)である場合、図3中、オーミック電極7の周縁にはハッチングを施して
示されるアロイ成長部8が部分的に形成される。このアロイ成長部8が部分的に
形成される。このアロイ成長は〔010〕,〔01−0〕の方向、〔001〕,
〔001−〕の方向に成長しやすく (成長部、)また、一点鎖線で示す〔
011−〕,〔01−1〕ではわずかに成長がみられる(成長部)。また、2
点鎖線で示す〔011〕,〔01−1−〕方向には、ほとんどアロイ成長は見ら
れない。なお、ここで、結晶方位「1−」は「1」の反対方向を示す。 このように基板の結晶方向によってアロイ進行の様子に差がみられる理由は、
明らかでないが、基板の結晶構造に起因する異方性が関係しているものと思われ
る。例えばある特定の結晶において、エッチング異方性が存在し、エッチピット
(ウェットエッチングしたとき結晶面に形成される特定形状の凹)が形成される
ことは知られているが、アロイ進行の場合もこの場合と同じような異方性により
アロイピットが存在し、アロイ成長部、が特に大きく成長するものと考えら
れる。なお、アロイ成長部との形状に差がみられるが(成長部は先端部が
半円形状を有し、成長部は小さな成長層がいくつか集まっ た形状となっている)、成長部がみられる電極の辺の長さは成長部のみられ
る電極の辺の長さよりも長くなっており、このような場合は、成長部にみられ
る小さな成長層がくっついて、成長部のように一つの半円形状の成長形状にな
るものと考えられる。 また、〔011〕および〔01−1−〕に直交する電極辺に沿う結晶面はエッ
チングすると庇状のいわゆる逆メサ形状となる面であり、〔01−1〕および〔
011−〕に直交する電極辺に沿う結晶面は、エッチングによって緩やかな傾斜
面を形作るいわゆる順メサ形状となる面であり、このような特異なエッチングの
異方性と同様にアロイ進行異方性が存在して〔01−1〕方向にはアロイ成長部
が生じるが〔011〕,〔01−1−〕方向にはアロイ成長が生じないものと推
定される。ところで、GaAs電界効果トランジスタでは、高周波特性向上のた
めに各電極間の距離は、狭くなっている。 例えば、図1においてゲート電極6とソース電極4,あるいはドレイン電極5
間は、1.5〜2μm程度である。このように近接配置されたソースドレイン電
極間の一部に前述した如き、アロイ進行部が生ずると、その部分でショート不良
,耐圧不良をひきおこすこととなる。 そこで、本発明者は電流の流れる方向、すなわちチャネル方向(ソースドレイ
ン電極の隣接する方向)を横方向アロイの成長が遅い方向と一致させることによ
って、隣接するソースドレイン電極間のショート不良を防止し、耐圧劣化も最小
限に抑えることができることに気がつき、本発明を成した。 したがって、本発明の目的は、ソースドレイン電極間のショートが発生しない
ような電極配置パターンを有するGaAs半導体装置を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 このような目的を達成するために本発明は、GaAs基板の一主面能動層上に
相互に近接するアロイ処理によって設けられたソース電極 およびドレイン 電極を有する半導体装置において、前記両電極の近接方向は電極
と前記能動層とのアロイ成長が遅い結晶方向あるいはアロイ成長が遅い結晶方向
に近似した方向となっているものであって、具体的には、GaAs−SBGFE
Tにおいては、前記能動層の主面は(100)となり、ソース電極、ゲート電極
、ドレイン電極の隣接方向は〔011〕,〔011−〕,〔01−1−〕,〔0
1−1〕のうちのいずれかあるいはいずれかに近似した結晶方向となっているも
のである。 【作用】 隣接する電極方向は、アロイ成長がわずかしか生じない結晶方向、あるいは第
8図(b)で示すように、アロイ成長がほとんど生じない結晶方向とすることに
よって、ソース電極およびドレイン電極形成後にAuとGeの共晶温度356℃
よりも高い温度でパッシベーションを行なっても隣接するソース電極とドレイン
電極のショートあるいは耐圧劣化が生じない。 【実施例】 以下、実施例により本発明を説明する。 第4図は本発明の一実施例によるGaAs−SBGFET素子の要部を示す平
面図、第5図は第4図のV−V線に沿う断面図、第6図は第4図のVI−VI線
に沿う断面図である。第7図(a),(b)は本発明には適用しない好ましくな
い電極パターンを示す説明図、第8図(a),(b)は本発明に適用する好まし
い電極パターンを示す説明図である。また、第9図(a)〜(c)は、素子の製
造方法を示す各工程での断面図である。 この実施例のGaAs−SBGFET素子は、第4図および第5図で示すよう
に、ソース電極(S)4とドレイン電極(D)5との間に、第1ゲート電極9お
よび第2ゲート電極10からなる2本のゲート電極(G)を設けた、いわゆるデ
ュアルゲート構造となっている。なお、第4図ではパッシベーション膜は省略し
てある。したがって、各 電極のボンディングパッド領域11は二点鎖線で示してある。 素子12は第5図で示すように、Crをドープして半絶縁体となった厚さ35
0〜400μmのバッファ層2を介して形成したn形エピタキシャル層3は能動
層となるとともに、アイソレーションのために周囲は必要なパターンにエッチン
グ除去されてメサ構造となっている。また、このn形エピタキシャル層3の主面
、すなわちGaAs基板1の主面はあらかじめ(100)なる結晶面となるよう
にしておく。 一方、n形エピタキシャル層3の主面中央には1μm〜1.5μmの長さの2
本のゲート電極が平行(間隔1μm)に配設されている。2本のゲート電極はそ
れぞれ第1ゲート電極9および第2ゲート電極10を形作っている。また、2本
のゲート電極を挟んで別々にソース電極4およびドレイン電極5が配設されてい
る。ソース電極4と第1ゲート電極9との間隔は1.5μm、第2ゲート電極1
0とドレイン電極5との間隔は2μmとなっている。 ゲート電極は厚さ6000オングストローム程度のアルミニウムによって形成
され、ショットキ障壁接合となっている。また、ソース・ドレイン電極4,5は
最下層の1300オングストロームの厚さのAuGe層、中層の厚さ300オン
グストロームのNi層、上層の厚さ4500オングストロームのAu層からなる
三層構造となるとともに、電極形成後の400℃前後、5分のアロイ処理によっ
てオーミック接合化が図られている。 一方、第1ゲート電極9および第2ゲート電極10の一端はn形エピタキシャ
ル層3から外れて、バッファ層2上に延在している。この際、メサ部の段差部分
上を延在するため、アルミニウムの配線層の幅は徐々に広くなってゲート長さよ
りも広い幅となった状態で交差し、かつ第6図で示すように、徐々に低くなる順
メサ部分を通るようになっている。なお、各電極を設けたn形エピタキシャル層
3以外の表面およびバッファ層2上には絶縁膜13が設けられるとともに、各電
極のボンディングパッド領域以外の素子表面はパッシベーション膜14 で被われている。 ここで、各電極隣接方向、すなわちチャネル方向でありかつ各手電極の近接方
向である方向は、第8図(b)で示すように、〔011〕方向となっている。し
たがって、第1ゲート電極9および第2ゲート電極10の延在する方向は、前記
パッシベーション膜14(410℃,40分処理によるCVD−PSG膜)の形
成の際、電極成分の横方向のアロイの進行がほとんどない〔011〕,〔01−
1−〕方向となっている。すなわち、本発明者の発見によって、第3図に示すよ
うに、(100)における電極材料とGaAs母材間のアロイ成長は〔010〕
およびこれに等価な〔01−0〕方向、ならびに〔001〕およびこれに等価な
〔001−〕で大きく、〔011〕およびこれに等価な〔01−1−〕方向では
成長はほとんど起こらず〔01−1〕およびこれに等価な〔011−〕方向では
わずかにアロイ進行部が現れることが確認されている。そこで、この実施例では
、第8図(a)で示すように、隣接する電極方向はアロイ成長がわずかしか常時
ない結晶方向、あるいは第8図(b)で示すように、アロイ成長がほとんど生じ
ない結晶方向とすることによって、電極形成後にAuとGeの共晶温度356℃
よりも高い温度でパッシベーションを行なっても隣接する電極のショートあるい
は耐圧劣化が生じないようにしている。なお、第7図(a)、(b)および第8
図(a)、(b)はシングルゲート構造を例にして説明しているが、ゲート電極
が2本となるデュアルゲート構造でも同様である。 また、ここで第9図(a)〜(c)を参照しながら前記素子12の製造方法に
ついて簡単に説明する。まず、GaAs基板1を用意して順次GaAsからなる
バッファ層およびn形エピタキシャル層3を形成する。GaAs基板1はCrが
ドープされて絶縁体となっていて、たとえば350〜400μmの厚さとなって
いる。バッファ層2は2.3μmとなり、Crのn形エピタキシャル層3への侵
入を防止する役割を果たす。n形エピタキシャル層3はイオウ(S)あるいはセ
レン (Se)を約1017cm2の濃度にドープしてn形のGaAs層とし、厚さは0.
3μmと極めて薄い。 つぎに、同図(b)に示すように、能動層となるn形エピタキシャル層3のア
イソレーションのために、n形エピタキシャル層3の周囲を所望のパターンにエ
ッチング除去してメサ構造とする。その後、常用の蒸着技術によってAuGe/
Ni/Auからなるソース電極4およびドレイン電極5を前述のパターンとうり
に形成し、オーミックを得るためにアロイ処理(400℃,5分処理)を行なう
。つぎに、常用の部分蒸着技術によって前述のパターンとおりにアルミニウムを
取り付けてショットキ障壁接合ゲート電極6を形成する。さらに、素子の表面を
CVD−PSG膜(気相化学成長によるリンシリケートガラス膜)を所望厚さに
形成する。この際、所望部分はCVCD−PSG膜(パッシベーション膜)で被
われないことによってワイヤ接続用のボンディングパッド領域11を形成して、
素子12を得る。 このような実施例によれば、GaAs−SBGFETのパッシベーション時の
熱による特性劣化は大幅に緩和することができる。また、量産化に伴いペレット
付け、モールド、その他の工程に伴う熱処理温度および回数が増加するが、これ
らの熱による特性劣化も同様に緩和することができる。したがって、信頼性の向
上および歩留の向上の図ることができることから量産化も可能となる。 なお、本発明は前記実施例に限定されない。すなわち、電極を形成する結晶面
は実施例では(100)について説明したが、(010),(001)なる結晶
面も等価であることから同様に本発明は適用することができる。但し、(010
),(001)の場合におけるアロイ成長の大小の方向性は前記実施例とは異な
るので、適当な電極パターンを選択する必要がある。 また、パッシベーション膜CVD−PSG膜以外の膜、たとえばAl2O3膜(
処理温度600℃)ポリイミド樹脂膜(キュア温度350℃前後)等でも、処理
温度がAuGeの共晶温度付近あるいはそれ 以上となることからアロイ化による特性劣化のために本発明を適用することが望
ましい。 また、本発明は第10図に示すように、アイソプレーナ構造のICにも適用で
きる。すなわち、n形エピタキシャル層3を絶縁膜15で区割して独立した能動
領域16を形成し、それぞれの能動領域16に所望の素子を形成し、かつ平坦な
上面上を利用して各素子を配線層17で結線して所望のICを形成する。この実
施例ではGaAs−SBGFET18とショットキ障壁ダイオード19を結線し
た例を示す。 このような実施例では、ゲートの引出部分をメサ構造のように段差による断線
を防止する目的で太くする必要もなく、ゲート電極と同一の長さで引き出すこと
ができるため、寄生容量の軽減化が図れる利点がある。 前記絶縁膜15はAl2O3,SiO2,Si3N4等の選択酸化による方法で形
成してもよい。 また、第11図に示すように、H+,Na等をイオンインプランテーション法
で打ち込んで高抵抗層、絶縁物層等のアイソレーション領域20を形成してもよ
い。また、このアイソレーション領域20は、107Ωcmと高抵抗のGaAs
部分的に成長(たとえば部分エピタキシャル法)させるようにして形成してもよ
い。 また、第12図で示すように、Crをドープした半絶縁性GaAs基板1に部
分的に不純物をドープして独立した能動領域21を形成してもよい。この場合、
イオウ(S)、セレン(Se)をドープすればn形となり、亜鉛(Zu)をドー
プすればp形となる。上述した如きメサエッチングによるアイソレーションを用
いない、アイソプレーナー構造GaAsICにおいては、エッチ段差部における
電極の段切れ等の心配がなくなり、電極レイアウトはまったく自由に行なうこと
ができるが、これらに本発明を適用することにより耐圧不良等を防止しえるレイ
アウトパターンを有したすぐれたICを提供することが可能となる。 さらに、本発明はFETの電極構造に限定されない。すなわち、微細配線をオ
ーミック電極の近傍に設けるような場合にも適用できる。 【発明の効果】 以上のように、本発明によれば、熱処理によるアロイ進行に起因する特性劣化
を防止することができるので、高信頼度、高歩留のGaAs半導体装置を製造す
ることができるため、コストの低減が図れ、量産化が可能となる。
して、GaAs(砒化ガリウム)ショットキ障壁ゲート電界効果トランジスタ(
GaAs−SBGFET)が一般に知られている。 GaAs−SBGFETにはn導電形の能動領域表面にソース、ドレインとな
るオーミック接触電極を設けるとともに、その中間にゲートとなるショットキ接
合電極を1つあるいは2つ設けて、それぞれシングルゲート構造あるいはデュア
ルゲート構造を構成した構造となっている。後者のデュアルゲート構造は第2ゲ
ートバイアスによる利得制御が可能となる特長が新たに付加される。 図1は従来のシングルゲート構造のSBGFET素子の要部を示す断面図であ
る。すなわち、Crを拡散させて絶縁体となったGaAs基板1の主面にはGa
As層からなるバッファ層2が形成され、かつ このバッファ層2上にはn形エピタキシャル層3が形成されている。このn形エ
ピタキシャル層3は周辺をエッチングして除去され、メサ構造となっている。前
記n形エピタキシャル層3上には幅広のソース電極4およびドレイン電極5が平
行に形成されるとともに、両電極間には1本のゲート電極6が配設されている。
ゲート電極6はTi,W,Pt,Al等からなりショットキ障壁接合となるとと
もに、長さ(l)は1um(ミクロン)程度となっている。また、ソース電極4
およびドレイン電極5は最下層にAuGe、中間層(バリア層)にNi、Mo、
Pt等、最上層にAu層を順次蒸着し、積層形成後350℃〜400℃でアロイ
処理(合金化熱処理)を行ないオーミック性接触を得ることにより形成される。
しかし、このアロイ処理時には、電極の積層方向に沿ってGa,As、Ge、A
u等が相互拡散しやすく、電極と基板間の合金化反応は不均一になりやすいとい
う欠点があることはよく知られている。 【発明が解決しようとする課題】 これらの欠点に対する改善策としては、前記ソースおよびドレイン電極の中間
層(バリア層)の電極材料を工夫したり電極積層構造を変えることが考えられる
。一方、最近、SBGFETの量産化に向けて、アロイ処理後に素子の所望表面
部分をパッシペーション膜で被い、素子特性の安定化、素子寿命の長期化を図る
ことが試みられている。 しかし、本願発明者等の研究によれば、このようなパッシベーションを行なう
と、FETの耐圧劣化が生じ易くなることが判明した。この点について、検討し
た結果、パッシベーション時の熱処理によりオーミック接触電極とGaAs基板
間の合金反応がさらに促進され電極成分の一部が基板中へアロイ(合金)進行し
、アロイ進行成分で動作時に電界集中を起こし、耐圧劣化することがわかった。 オーミック電極形成のためのアロイ処理時に電極の積層方向(縦方向)に沿っ
てAu,Ge,Ga,等が相互拡散して不均一反応しやすいことは前述したが、
電極形成後に、パッシベーションに伴い高温熱 処理が行なわれるとこのアロイ化は再び促進され基板に沿って横方向にも進行す
るものと考えられる。この横方向アロイ化は、実験の結果、440℃前後になる
と顕微鏡でもアロイピットとして目視可能となることがわかった。なお、この横
方向アロイ進行成分は、主としてオーミック電極中のAuであると推定される。
すなわち、熱処理によりAuとGeが反応するとき、GaAs基板中にもGeが
反応するとき、GaAs基板中にもGeがドナーとして拡散されるが、このとき
、Au原子の一部も基板中に拡散し、アロイ進行するものと思われる。さらに、
この横方向アロイ化は結晶方向によってその成長速さが異なることも発見した。
図3は、横方向アロイ化の様子が結晶方向によって異なることを説明するための
摸式図である。各電極を形成する能動層(n形エピタキシャル層3)の表面が(
100)である場合、図3中、オーミック電極7の周縁にはハッチングを施して
示されるアロイ成長部8が部分的に形成される。このアロイ成長部8が部分的に
形成される。このアロイ成長は〔010〕,〔01−0〕の方向、〔001〕,
〔001−〕の方向に成長しやすく (成長部、)また、一点鎖線で示す〔
011−〕,〔01−1〕ではわずかに成長がみられる(成長部)。また、2
点鎖線で示す〔011〕,〔01−1−〕方向には、ほとんどアロイ成長は見ら
れない。なお、ここで、結晶方位「1−」は「1」の反対方向を示す。 このように基板の結晶方向によってアロイ進行の様子に差がみられる理由は、
明らかでないが、基板の結晶構造に起因する異方性が関係しているものと思われ
る。例えばある特定の結晶において、エッチング異方性が存在し、エッチピット
(ウェットエッチングしたとき結晶面に形成される特定形状の凹)が形成される
ことは知られているが、アロイ進行の場合もこの場合と同じような異方性により
アロイピットが存在し、アロイ成長部、が特に大きく成長するものと考えら
れる。なお、アロイ成長部との形状に差がみられるが(成長部は先端部が
半円形状を有し、成長部は小さな成長層がいくつか集まっ た形状となっている)、成長部がみられる電極の辺の長さは成長部のみられ
る電極の辺の長さよりも長くなっており、このような場合は、成長部にみられ
る小さな成長層がくっついて、成長部のように一つの半円形状の成長形状にな
るものと考えられる。 また、〔011〕および〔01−1−〕に直交する電極辺に沿う結晶面はエッ
チングすると庇状のいわゆる逆メサ形状となる面であり、〔01−1〕および〔
011−〕に直交する電極辺に沿う結晶面は、エッチングによって緩やかな傾斜
面を形作るいわゆる順メサ形状となる面であり、このような特異なエッチングの
異方性と同様にアロイ進行異方性が存在して〔01−1〕方向にはアロイ成長部
が生じるが〔011〕,〔01−1−〕方向にはアロイ成長が生じないものと推
定される。ところで、GaAs電界効果トランジスタでは、高周波特性向上のた
めに各電極間の距離は、狭くなっている。 例えば、図1においてゲート電極6とソース電極4,あるいはドレイン電極5
間は、1.5〜2μm程度である。このように近接配置されたソースドレイン電
極間の一部に前述した如き、アロイ進行部が生ずると、その部分でショート不良
,耐圧不良をひきおこすこととなる。 そこで、本発明者は電流の流れる方向、すなわちチャネル方向(ソースドレイ
ン電極の隣接する方向)を横方向アロイの成長が遅い方向と一致させることによ
って、隣接するソースドレイン電極間のショート不良を防止し、耐圧劣化も最小
限に抑えることができることに気がつき、本発明を成した。 したがって、本発明の目的は、ソースドレイン電極間のショートが発生しない
ような電極配置パターンを有するGaAs半導体装置を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 このような目的を達成するために本発明は、GaAs基板の一主面能動層上に
相互に近接するアロイ処理によって設けられたソース電極 およびドレイン 電極を有する半導体装置において、前記両電極の近接方向は電極
と前記能動層とのアロイ成長が遅い結晶方向あるいはアロイ成長が遅い結晶方向
に近似した方向となっているものであって、具体的には、GaAs−SBGFE
Tにおいては、前記能動層の主面は(100)となり、ソース電極、ゲート電極
、ドレイン電極の隣接方向は〔011〕,〔011−〕,〔01−1−〕,〔0
1−1〕のうちのいずれかあるいはいずれかに近似した結晶方向となっているも
のである。 【作用】 隣接する電極方向は、アロイ成長がわずかしか生じない結晶方向、あるいは第
8図(b)で示すように、アロイ成長がほとんど生じない結晶方向とすることに
よって、ソース電極およびドレイン電極形成後にAuとGeの共晶温度356℃
よりも高い温度でパッシベーションを行なっても隣接するソース電極とドレイン
電極のショートあるいは耐圧劣化が生じない。 【実施例】 以下、実施例により本発明を説明する。 第4図は本発明の一実施例によるGaAs−SBGFET素子の要部を示す平
面図、第5図は第4図のV−V線に沿う断面図、第6図は第4図のVI−VI線
に沿う断面図である。第7図(a),(b)は本発明には適用しない好ましくな
い電極パターンを示す説明図、第8図(a),(b)は本発明に適用する好まし
い電極パターンを示す説明図である。また、第9図(a)〜(c)は、素子の製
造方法を示す各工程での断面図である。 この実施例のGaAs−SBGFET素子は、第4図および第5図で示すよう
に、ソース電極(S)4とドレイン電極(D)5との間に、第1ゲート電極9お
よび第2ゲート電極10からなる2本のゲート電極(G)を設けた、いわゆるデ
ュアルゲート構造となっている。なお、第4図ではパッシベーション膜は省略し
てある。したがって、各 電極のボンディングパッド領域11は二点鎖線で示してある。 素子12は第5図で示すように、Crをドープして半絶縁体となった厚さ35
0〜400μmのバッファ層2を介して形成したn形エピタキシャル層3は能動
層となるとともに、アイソレーションのために周囲は必要なパターンにエッチン
グ除去されてメサ構造となっている。また、このn形エピタキシャル層3の主面
、すなわちGaAs基板1の主面はあらかじめ(100)なる結晶面となるよう
にしておく。 一方、n形エピタキシャル層3の主面中央には1μm〜1.5μmの長さの2
本のゲート電極が平行(間隔1μm)に配設されている。2本のゲート電極はそ
れぞれ第1ゲート電極9および第2ゲート電極10を形作っている。また、2本
のゲート電極を挟んで別々にソース電極4およびドレイン電極5が配設されてい
る。ソース電極4と第1ゲート電極9との間隔は1.5μm、第2ゲート電極1
0とドレイン電極5との間隔は2μmとなっている。 ゲート電極は厚さ6000オングストローム程度のアルミニウムによって形成
され、ショットキ障壁接合となっている。また、ソース・ドレイン電極4,5は
最下層の1300オングストロームの厚さのAuGe層、中層の厚さ300オン
グストロームのNi層、上層の厚さ4500オングストロームのAu層からなる
三層構造となるとともに、電極形成後の400℃前後、5分のアロイ処理によっ
てオーミック接合化が図られている。 一方、第1ゲート電極9および第2ゲート電極10の一端はn形エピタキシャ
ル層3から外れて、バッファ層2上に延在している。この際、メサ部の段差部分
上を延在するため、アルミニウムの配線層の幅は徐々に広くなってゲート長さよ
りも広い幅となった状態で交差し、かつ第6図で示すように、徐々に低くなる順
メサ部分を通るようになっている。なお、各電極を設けたn形エピタキシャル層
3以外の表面およびバッファ層2上には絶縁膜13が設けられるとともに、各電
極のボンディングパッド領域以外の素子表面はパッシベーション膜14 で被われている。 ここで、各電極隣接方向、すなわちチャネル方向でありかつ各手電極の近接方
向である方向は、第8図(b)で示すように、〔011〕方向となっている。し
たがって、第1ゲート電極9および第2ゲート電極10の延在する方向は、前記
パッシベーション膜14(410℃,40分処理によるCVD−PSG膜)の形
成の際、電極成分の横方向のアロイの進行がほとんどない〔011〕,〔01−
1−〕方向となっている。すなわち、本発明者の発見によって、第3図に示すよ
うに、(100)における電極材料とGaAs母材間のアロイ成長は〔010〕
およびこれに等価な〔01−0〕方向、ならびに〔001〕およびこれに等価な
〔001−〕で大きく、〔011〕およびこれに等価な〔01−1−〕方向では
成長はほとんど起こらず〔01−1〕およびこれに等価な〔011−〕方向では
わずかにアロイ進行部が現れることが確認されている。そこで、この実施例では
、第8図(a)で示すように、隣接する電極方向はアロイ成長がわずかしか常時
ない結晶方向、あるいは第8図(b)で示すように、アロイ成長がほとんど生じ
ない結晶方向とすることによって、電極形成後にAuとGeの共晶温度356℃
よりも高い温度でパッシベーションを行なっても隣接する電極のショートあるい
は耐圧劣化が生じないようにしている。なお、第7図(a)、(b)および第8
図(a)、(b)はシングルゲート構造を例にして説明しているが、ゲート電極
が2本となるデュアルゲート構造でも同様である。 また、ここで第9図(a)〜(c)を参照しながら前記素子12の製造方法に
ついて簡単に説明する。まず、GaAs基板1を用意して順次GaAsからなる
バッファ層およびn形エピタキシャル層3を形成する。GaAs基板1はCrが
ドープされて絶縁体となっていて、たとえば350〜400μmの厚さとなって
いる。バッファ層2は2.3μmとなり、Crのn形エピタキシャル層3への侵
入を防止する役割を果たす。n形エピタキシャル層3はイオウ(S)あるいはセ
レン (Se)を約1017cm2の濃度にドープしてn形のGaAs層とし、厚さは0.
3μmと極めて薄い。 つぎに、同図(b)に示すように、能動層となるn形エピタキシャル層3のア
イソレーションのために、n形エピタキシャル層3の周囲を所望のパターンにエ
ッチング除去してメサ構造とする。その後、常用の蒸着技術によってAuGe/
Ni/Auからなるソース電極4およびドレイン電極5を前述のパターンとうり
に形成し、オーミックを得るためにアロイ処理(400℃,5分処理)を行なう
。つぎに、常用の部分蒸着技術によって前述のパターンとおりにアルミニウムを
取り付けてショットキ障壁接合ゲート電極6を形成する。さらに、素子の表面を
CVD−PSG膜(気相化学成長によるリンシリケートガラス膜)を所望厚さに
形成する。この際、所望部分はCVCD−PSG膜(パッシベーション膜)で被
われないことによってワイヤ接続用のボンディングパッド領域11を形成して、
素子12を得る。 このような実施例によれば、GaAs−SBGFETのパッシベーション時の
熱による特性劣化は大幅に緩和することができる。また、量産化に伴いペレット
付け、モールド、その他の工程に伴う熱処理温度および回数が増加するが、これ
らの熱による特性劣化も同様に緩和することができる。したがって、信頼性の向
上および歩留の向上の図ることができることから量産化も可能となる。 なお、本発明は前記実施例に限定されない。すなわち、電極を形成する結晶面
は実施例では(100)について説明したが、(010),(001)なる結晶
面も等価であることから同様に本発明は適用することができる。但し、(010
),(001)の場合におけるアロイ成長の大小の方向性は前記実施例とは異な
るので、適当な電極パターンを選択する必要がある。 また、パッシベーション膜CVD−PSG膜以外の膜、たとえばAl2O3膜(
処理温度600℃)ポリイミド樹脂膜(キュア温度350℃前後)等でも、処理
温度がAuGeの共晶温度付近あるいはそれ 以上となることからアロイ化による特性劣化のために本発明を適用することが望
ましい。 また、本発明は第10図に示すように、アイソプレーナ構造のICにも適用で
きる。すなわち、n形エピタキシャル層3を絶縁膜15で区割して独立した能動
領域16を形成し、それぞれの能動領域16に所望の素子を形成し、かつ平坦な
上面上を利用して各素子を配線層17で結線して所望のICを形成する。この実
施例ではGaAs−SBGFET18とショットキ障壁ダイオード19を結線し
た例を示す。 このような実施例では、ゲートの引出部分をメサ構造のように段差による断線
を防止する目的で太くする必要もなく、ゲート電極と同一の長さで引き出すこと
ができるため、寄生容量の軽減化が図れる利点がある。 前記絶縁膜15はAl2O3,SiO2,Si3N4等の選択酸化による方法で形
成してもよい。 また、第11図に示すように、H+,Na等をイオンインプランテーション法
で打ち込んで高抵抗層、絶縁物層等のアイソレーション領域20を形成してもよ
い。また、このアイソレーション領域20は、107Ωcmと高抵抗のGaAs
部分的に成長(たとえば部分エピタキシャル法)させるようにして形成してもよ
い。 また、第12図で示すように、Crをドープした半絶縁性GaAs基板1に部
分的に不純物をドープして独立した能動領域21を形成してもよい。この場合、
イオウ(S)、セレン(Se)をドープすればn形となり、亜鉛(Zu)をドー
プすればp形となる。上述した如きメサエッチングによるアイソレーションを用
いない、アイソプレーナー構造GaAsICにおいては、エッチ段差部における
電極の段切れ等の心配がなくなり、電極レイアウトはまったく自由に行なうこと
ができるが、これらに本発明を適用することにより耐圧不良等を防止しえるレイ
アウトパターンを有したすぐれたICを提供することが可能となる。 さらに、本発明はFETの電極構造に限定されない。すなわち、微細配線をオ
ーミック電極の近傍に設けるような場合にも適用できる。 【発明の効果】 以上のように、本発明によれば、熱処理によるアロイ進行に起因する特性劣化
を防止することができるので、高信頼度、高歩留のGaAs半導体装置を製造す
ることができるため、コストの低減が図れ、量産化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
従来のGaAs−SBGFET素子を示す断面図。
【図2】
従来のGaAs−SBGFET素子の表面の結晶方向を示す説明図。
【図3】
従来のGaAs−SBGFET素子の表面のアロイ成長状態を示す説明図。
【図4】
本発明の一実施例によるGaAs−SBGFET素子を示す平面図。
【図5】
図4のV−V線に沿う一部の拡大断面図。
【図6】
図4のVI−VI線に沿う一部拡大断面図。
【図7】
(a)(b)それぞれ好ましくない電極パターンを示す説明図。
【図8】
(a)(b)それぞれ好ましい電極パターンを示す説明図。
【図9】
(a)〜(c)は本発明によるGaAs−SBGFET素子の製造方
法を示す各工程における断面図。
【図10】
他の実施例によるGaAs−SBGFETを組み込んだ素子の断面図。
【図11】
本発明の実施例に適用されるアイソレーション方法を示す断面図。
【図12】
本発明の実施例に適用される他のアイソレーション方法を示す断面図。
【符号の説明】
1…GaAs基板、2…バッファ層、3…n形エピタキシャル層、4…ソース領
域、5…ドレイン領域、6…ゲート電極、7…電極、8…アロイ成長部、9…第
1ゲート電極、10…第2ゲート電極、12…素子、14…パッシベーション膜
、15…絶縁膜、16,21…能動領域、17…配線層、18…GaAs−SB
GFET、19…ダイオード、20…アイソレーション領域、、、…アロ
イ成長部。
域、5…ドレイン領域、6…ゲート電極、7…電極、8…アロイ成長部、9…第
1ゲート電極、10…第2ゲート電極、12…素子、14…パッシベーション膜
、15…絶縁膜、16,21…能動領域、17…配線層、18…GaAs−SB
GFET、19…ダイオード、20…アイソレーション領域、、、…アロ
イ成長部。
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 【請求項1】 ( 100)結晶面またはそれに等価な結晶面をもつGaAs半導体基体のその主
面に、所定の長さ方向に沿って設けられたゲート電極、そのゲート電極を挟むよ
うに近接してアロイ処理によって設けられたソース電極およびドレイン電極を有
し、前記ゲート電極は前記主面に対してショットキ障壁接合を成し、そのゲート
電極下に位置する半導体基体主面におけるチャネル方向を横方向アロイの成長が
遅い方向と一致させたことを特徴とする砒化ガリウム半導体装置。
Family
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