JP2547549Y2 - 脱穀機における選別装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、特にコンバイン用脱穀
機の選別装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】コンバイン用脱穀機の選別装置におい
て、揺動選別体終端部の上方又は下方に単一の排塵用吸
引ファンが設けられている。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来のものは特に高能率刈り取り作業で被選別物の量が増
大すると藁屑と穀粒を充分に分離選別できず、選別性能
に問題がある。即ち、例えば吸引ファンを揺動選別体終
端部の上方に設けると、揺動選別体上の藁屑全てを浮上
吸引させることが困難で、多くの藁屑が揺動選別体上に
残りこれが１番や２番に多く混入し、選別精度が悪化し
たり詰まったりするものである。また、吸引ファンを揺
動選別体終端部の下方に設けると、吸引し易くはなる
が、藁屑に混入している穀粒を藁屑と共に総て吸引排出
してしまい機外飛散となる欠点がある。本考案が解決し
ようとする課題は、被選別物の量が増大しても、藁屑と
穀粒を確実に分離選別し、藁屑のみを吸引ファンで吸引
排出させる点にある。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本考案は、上記課題を解
決することを目的としたものであって、扱室の横一側か
ら後方に向けて処理室を延設し、該処理室の前側部を扱
室に連設し、処理室の後部に送塵口を開口する一方、前
記扱室の下方から後方にわたり揺動選別体を架設し、該
揺動選別体の始端側下方に圧風ファンを終端側に吸引フ
ァンを設けた選別装置において、前記吸引ファンを、揺
動選別体の終端に対して上方と下方とに振り分けて複数
個配設すると共に、上方の吸引ファンの吸気口を、下方
の吸引ファンの吸気口より揺動選別体始端側で、しかも
前記処理室の送塵口よりも前方寄りに位置させ、前記上
方の吸引ファンの吸気口と前記処理室の送塵口との間に
仕切板を設けたことを特徴とするものである。

【０００５】

【作用】扱室２の受網４から漏下した被選別物は揺動選
別体１１で藁屑と穀粒とに分離されながら後方に移送さ
れ、穀粒は１番漏下選別体１５から漏下して１番物とし
て回収され、後方の２番漏下選別体１６から漏下したも
のは２番物として再選別される。このような選別過程に
おいて、揺動選別体１１上の被選別物は、先ず、圧風フ
ァン２０から上方の吸引ファン２１に亘る選別風Ａによ
り第１次風選別作用を受け、被選別物の上層の藁屑及び
軽い藁屑が予め吸引ファン２１により吸引排出される。
次に、残った被選別物が圧風ファン２０から下方の吸引
ファン２２に亘る選別風Ｂにより第２次風選別作用を受
け１番物、２番物は確実に回収され、藁屑のみが吸引フ
ァン２２により吸引排出される。また、上記選別風Ａ，
Ｂは揺動選別体１１を下方から上方に貫くが、上方の吸
引ファン２１が選別風Ｂの方向に影響を及ぼし、選別風
Ｂをより上向きに指向させる。従って、選別風Ｂは揺動
選別体１１をより急角度で貫き、更に、その後も上向き
に流れるから、第２次風選別作用が助長される。更に、
上方の吸引ファンは処理室の送塵口よりも前方寄りに位
置し、上方の吸引ファンの吸気口と処理室の送塵口との
間に仕切板を設けているため、上方の吸引ファンの吸引
風は送塵口から送出落下される送塵物に対しては余り作
用せず、その吸引風は圧風ファン２０から上方の吸引フ
ァン２１に亘る選別風Ａによる第１次風選別作用に専用
的に用いられる。また、処理室の送塵口から送出落下さ
れる藁屑等の送塵物は下方の吸引ファンにより吸引排出
される。

【０００６】

【実施例】本考案装置の１実施例を図１及び図２に基づ
いて説明する。図１はコンバイン搭載用の脱穀機の側面
図、図２は図１のＸ−Ｘ断面図である。１は上部の脱穀
処理部１ａと下部の選別部１ｂとで構成された脱穀機で
ある。２は前記脱穀処理部１ａに設けられた扱室、３は
扱室２内に軸架された扱胴、４は受網である。５は脱穀
処理部１ａに設けられ始端が前記扱室２に連通した処理
室、６は処理室５内に軸架された処理胴、７は処理網、
８は処理室５の終端に開口された送塵口である。また、
９はフィードチェン、１０は排藁搬送チェンである。次
に、下方の選別部１ｂについて説明する。１１は前記扱
室２の下方から後方にわたり架設された揺動選別体であ
り、該揺動選別体１１は、扱室２の下方のフィードパン
１２、該フィードパン１２に連設されたチャフシーブ１
３、その下方に配設された下段フィードパン１４、クリ
ンプ網で構成された１番漏下選別体１５、その後方に設
けられストローラックで構成された２番漏下選別体１
６、前記処理室６の下方部位にのみ設けられた移送体１
７等より構成されている。

【０００７】１８は１番螺旋、１９は２番螺旋である。
２０は前記揺動選別体１１の始端側下方に配設された圧
風ファン、２１は前記揺動選別体１１の一側で揺動選別
体１１の終端部位上方に配設された上部吸引ファン、２
２は同じく前記揺動選別体１１の一側で揺動選別体１１
の終端部位下方に配設された下部吸引ファンであり、両
吸引ファン２１、２２は揺動選別体１１の終端に対して
上下に振り分け配設されている。また、２３は前記１番
螺旋１８と２番螺旋１９との間に配設された補助圧風フ
ァンである。尚、２４は選別部１ｂの後側板、２５は選
別部１ｂの左側板、２６は選別部１ｂの右側板である。
前記上部吸引ファン２１の前面には前部仕切板２７と後
部仕切板２８が前記選別部１ｂの略全幅に設けられ、両
仕切板２７、２８の間に吸引ファン２１への吸気口２１
ａが設けられている。また、前記下部吸引ファン２２の
上部には該ファン２２への吸気口２２ａ開口されてお
り、前記上部吸引ファン２１の吸気口２１ａが下部吸引
ファン２２の吸気口２２ａより揺動選別体１１の始端側
に位置している。また、上部吸引ファン２１と下部吸引
ファン２２とは略同回転数を得るように伝動されている
が、下部吸引ファン２２が上部吸引ファン２１より大径
のファンで構成され、下部吸引ファン２２の吸引力が上
部吸引ファン２１の吸引力より大きくなるように設定さ
れている。２９は前記後部仕切板２８と後側板２４との
間に設けられた案内板、３０は藁屑を下部吸引ファン２
２に向け流下案内する流下板である。

【０００８】次に、前述の実施例に基づく脱穀選別作用
を説明する。コンバイン（図示せず）により刈り取られ
た穀稈はフィードチェン９により挟持搬送されながら扱
胴３により脱粒作用を受け、発生した被選別物は受網４
を漏下して揺動選別体１１のフィードパン１２上に落下
する。そして、被選別物はフィードパン１２の揺動運動
により、藁屑と穀粒とを分離分散され軽い藁屑が上層に
浮上されながら後方に移送され、チャフシーブ１３によ
り第１次漏下選別を受ける。そして、チャフシーブ１３
を漏下した、穀粒や一部の小さな藁屑は下方の１番漏下
選別体１５により再び漏下選別され、穀粒のみが１番漏
下選別体１５を漏下し１番螺旋１８により回収される。
前記チャフシーブ１３及び１番漏下選別体１５を漏下し
なかった被選別物はその終端から２番漏下選別体１６上
に移送され、２番漏下選別体１６から漏下したものは２
番物として２番螺旋１９で集められ、再び扱室３若しく
は揺動選別体１１上に還元され再選別をうける。２番漏
下選別体１６から漏下しなかった藁屑はその終端より下
部吸引ファン２２に向け落下し、機外に吸引排出され
る。

【０００９】上記一連の選別過程において、被処理物は
以下の風選別作用をうける。即ち、圧風ファン２０と上
部吸引ファン２１により、圧風ファン２０から下段フィ
ードパン１４上を通りチャフシーブ１３を貫き上部吸引
ファン２１にいたる選別風と、圧風ファン２０から下段
フィードパン１４の下方を通り１番漏下選別体１５を貫
き上部吸引ファン２１にいたる選別風よりなる選別風
Ａ、圧風ファン２０から主に下段フィードパン１４の下
方を通り１番漏下選別体１５を貫き、２番漏下選別体１
６上を通り下部吸引ファン２２にいたる選別風Ｂ、及び
補助圧風ファン２３から２番漏下選別体１６を貫き下部
吸引ファン２２にいたる選別風Ｃが発生する。そして、
上部吸引ファン２１の吸気口２１ａが下部吸引ファン２
２の吸気口２２ａより揺動選別体１１の始端側に位置し
ているから、揺動選別体１１上の被選別物は前記選別風
Ａにより先ず第１次風選別作用を受け、チャフシーブ１
３上に至った被処理物中、上層の藁屑や軽い藁屑が予め
上部吸引ファン２１により吸引排出される。

【００１０】次に、上部吸引ファン２１で吸引されずに
１番漏下選別体１５上に落下した被選別物、及びチャフ
シーブ１３終端から２番漏下選別体１６に移送されよう
とする被処理物に対して選別風Ｂが作用し、被処理物は
第２次風選別作用を受ける。この時、第２次風選別作用
を受ける被処理物は、前記第１次風選別作用により予め
かなりの藁屑が取り除かれ、その絶対量が少なくなり、
また藁屑自体の量も少なくなっているから、選別風Ｂが
貫通し易く、特に１番漏下選別体１５での風選分離作用
と穀粒漏下選別作用の相乗作用で選別精度を高めること
ができる。しかも、前記上部吸引ファン２１が選別風Ｂ
の方向に影響を及ぼし、選別風Ｂは上向きに指向され
る。従って、選別風Ｂは１番漏下選別体１５をより急角
度で貫き、１番漏下選別体１５での藁屑と穀粒の風選分
離能力を一段と高めることができる。また、１番漏下選
別体１５を貫いた後も選別風Ｂは上向きに流れるから、
チャフシーブ１３終端から２番漏下選別体１６に移送さ
れようとする被処理物に対しても上向き急角度に作用
し、２番漏下選別体１６の上方の選別空間で上下高さを
有効利用した効果的な空間風選別を行うことができ、藁
屑に混入している穀粒を確実に分離落下させ、残った藁
屑のみを下部吸引ファンで吸引排出できる。尚、２番漏
下選別体１６上に移送された被選別物は２番漏下選別体
１６による漏下選別と選別風Ｃにより最終選別を受け
る。また、前記扱室３の受網４から漏下しなかった処理
物は、処理室５に移送され、処理胴６で再処理される。
そして、処理網７から漏下した穀粒等は、下方の移送体
１７を介して、または直接、２番漏下選別体１６上に向
け落下し、前記チャフシーブ１３終端から送出される被
処理物と合流して選別される。また、処理網７を漏下し
なかった藁屑は終端の送塵口８から投げ出され、前記後
部仕切板２８の裏面と案内板２９に案内され下部吸引フ
ァン２２の吸気口２２ａに向け落下し、下部吸引ファン
２２で吸引排出される。しかも、上方の吸引ファン２１
を処理室の送塵口よりも前方寄りに位置させ、そして上
方の吸引ファン２１の吸気口２１ａと処理室５の終端の
排塵口８との間を後部仕切板８により仕切り、処理室５
の排塵口から排出される送塵物に対する吸引ファン２１
の吸引風を遮ることで、処理室５からの送塵物が極力上
部吸引ファン２１で吸引されないようにし、上部吸引フ
ァン２１による選別風Ａの作用が阻害されないように構
成されている。

【００１１】

【考案の効果】以上説明したように本考案は、揺動選別
体の始端側下方に圧風ファンを設け、吸引ファンを、揺
動選別体の終端に対して上方と下方とに振り分けて複数
個配設すると共に、上方の吸引ファンの吸気口を下方の
吸引ファンの吸気口より揺動選別体始端側に位置させた
ことにより、先ず、圧風ファンから上方の吸引ファンに
いたる選別風Ａにより、揺動選別体上の被選別物を第１
次風選別し、被処理物中、上層の藁屑や軽い藁屑を予め
上方の吸引ファンにより吸引排出し、次に残った被処理
物に対し、圧風ファンから下方の吸引ファンにいたる選
別風Ｂを作用させて第２次風選別を行うようにし、被選
別物中の藁屑を上方の吸引ファンと下方の吸引ファンと
により段階的に吸引排出するようにしたから、これを１
個のファンで強引に吸引する場合のように、吸引力不足
による選別不良や、穀粒を藁屑と一緒に吸引して機外に
排出してしまうようなことを極力防止して、藁屑を確実
に吸引排出できる。

【００１２】また、前記第１次風選別作用により予めか
なりの藁屑が取り除かれることにより、絶対量が少な
く、また藁屑自体の量も少なくなった揺動選別体上の被
処理物に対して選別風Ｂが作用するから、選別風Ｂは下
方から上方に貫通し易く、揺動選別体上での風選分離作
用がより向上し、穀粒漏下選別作用とも相まって、選別
精度を一層高めることができる。しかも、上方の吸引フ
ァンが選別風Ｂの方向に影響を及ぼし、選別風Ｂは上向
きに指向されるから、選別風Ｂが揺動選別体をより急角
度で貫き、揺動選別体の藁屑と穀粒の風選分離能力を一
段と高めることができる。また、揺動選別体を貫いた後
も選別風Ｂは上向きに流れるから、揺動選別体上方の選
別空間において、その上下高さを有効に利用した効果的
な空間風選別を行うことができ、藁屑に混入している穀
粒を分離回収し、藁屑を下方の吸引ファンで吸引排出で
きる。更に、上方の吸引ファンの吸気口を、処理室の後
部に開口した送塵口よりも前方寄りに位置させ、上方の
吸引ファンの吸気口と処理室の送塵口との間に仕切板を
設けたので、上記送塵口から送出落下される排塵物に対
して、上方の吸引ファンの吸引風を極力作用させないよ
うにし、かかる吸引風を、圧風ファンから上方の吸引フ
ァンにいたる選別風Ａによる上記第１次風選別に極力専
用的に用いることにより、その選別性能をより高めるこ
とができる。 しかも、処理室の送塵口から送出落下され
る藁屑等の送塵物は下方の吸引ファンにより速やかに吸
引排出することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】脱穀機の側面図である。

【図２】図１のＸ−Ｘ断面図である。

【符号の説明】

３ 扱室 １１ 揺動選別体 ２０ 圧風ファン ２１ 上部吸引ファン ２２ 下部吸引ファン ２１ａ 上部吸引ファンの吸気口 ２２ａ 下部吸引ファンの吸気口

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 扱室の横一側から後方に向けて処理室を
   延設し、該処理室の前側部を扱室に連設し、処理室の後
   部に送塵口を開口する一方、前記扱室の下方から後方に
   わたり揺動選別体を架設し、該揺動選別体の始端側下方
   に圧風ファンを終端側に吸引ファンを設けた選別装置に
   おいて、前記吸引ファンを、揺動選別体の終端に対して
   上方と下方とに振り分けて複数個配設すると共に、上方
   の吸引ファンの吸気口を、下方の吸引ファンの吸気口よ
   り揺動選別体始端側で、しかも前記処理室の送塵口より
   も前方寄りに位置させ、前記上方の吸引ファンの吸気口
   と前記処理室の送塵口との間に仕切板を設けたことを特
   徴とする脱穀機における選別装置。