JP2546643B2 - 電車線支持装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は剛体トロリ線等の給電用電車線を、軌道に沿
って架設するための電車線支持装置に関する。上記のよ
うな剛体トロリ線はタイヤ式電車のような新都市交通機
関等に用いられる。

［従来技術］ この種の支持装置は、軌道側方のパラペットの垂直取
付け面あるいは取付け用支柱の垂直取付け面に植え込ま
れた複数本のアンカーボルトにより、上記取付け面に固
定されている。そして支持装置を取付ける場合には、ア
ンカーボルトの取付け誤差等もありトロリ線の上下方向
の位置及び電車側への突出量を現場において精度良く調
整する必要がある。

本願出願人は電車線支持装置の取付位置及び取付け面
に対する傾斜角度（垂直性）を現場で容易に調節できる
ようにした電車線支持装置の取付構造を特願昭58−2223
17号（特開昭60−113741号公報）において提案した。

然し、この取付構造はパラペットに取付けられるベー
ス部とこれに垂直な垂直板部とからなる支持台と、碍子
支持部を有するブラケットとを備え、部品数が多く、調
節もベース部のアンカーボルト貫通部において行う取付
位置及び姿勢の調節と、ブラケットを垂直板部に結合す
るボルトの長孔内位置調節によるトロリ線の突出量の調
節並びに該ボルトのブラケット貫通部において行うブラ
ケットの傾斜角の調節等、多くの個所での調節を必要と
する。しかもトロリ線の上下の位置調節には、ブラケッ
トに支持されている碍子について碍子ごとに個別に調節
する必要がある。

［発明の目的］ 本発明は上記の点に鑑み、部品数を削減してコンパク
トで簡単な構造とするとともに、アンカーボルトのブラ
ケット貫通部において行う調節だけでトロリ線の突出量
及び上下位置の調節を行うことができるようにし、各ト
ロリ線の上下位置調節を各トロリ線ごとに個別ではなく
一挙に行い得るようにすることを目的とするものであ
る。

［目的を達成するための手段］ 上記目的を達成するために本発明は、電車線線長さ方
向に間隔を隔てた２本の主アンカーボルトと、該主アン
カーボルトに対して下側あるいは上側に間隔を隔てて配
置される少なくとも１本の副アンカーボルトとを、電車
線長さ方向と略垂直で電車側に略水平に突出する姿勢で
取付け面に固着し、碍子を介して電車線を支持するブラ
ケットには、主アンカーボルトに対応する部分にカラー
嵌合孔を形成し、副アンカーボルトに対応する部分に上
下方向に長い長孔を形成し、各カラー嵌合孔には、それ
ぞれ、工具係合用頭部を備えた一対の偏心孔付カラーを
嵌合孔の両端側から回動可能に嵌合するとともに、上記
偏心孔付カラーの偏心孔に主アンカーボルトを挿通し、
上記長孔に副アンカーボルトを挿通し、ブラケットを、
主副アンカーボルトの軸方向に調節移動可能に、かつ上
記の偏心孔付カラーの回動により主副アンカーボルト軸
に対して垂直に上下に調節移動可能に、アンカーボルト
に装着し、各アンカーボルトにおいてブラケットの両側
に螺着したナットによりアンカーボルトの軸方向最適位
置にブラケットを固定している。

［実施例］ まず第４図により、タイヤ式電車１及びその軌道装置
の代表的例を説明すると、軌道部３は脚台４を介して支
持されており、軌道部３の左右両側には上方に延びる一
対のパラペット５が形成されている。パラペット５は電
車側に面する垂直な取付け面5aを有している。

電車１は下側にゴム車輪６を備え、左右両側に横向き
のガイド輪７を備えており、ゴム車輪６は軌道部３の走
行路面3aの上面を転動し、ガイド輪７はパラペット５に
固着されたガイドレール８に沿って転動する。

給電用トロリ線10は例えば３相交流用であって、上下
方向に間隔を隔てて３本配置され、両パラペットのうち
いずれか一方（例えば左方）のパラペット５の取付け面
5aに電車線支持装置11を介して架設されており、トロリ
線10には電車１の集電器９が当接する。

電車線支持装置11の拡大正面図を示す第１図におい
て、各トロリ線10は同一の垂直面Ｖ上に揃えられ、それ
ぞれ一対の固定イヤー12により架台13に固定されてお
り、各架台13はそれぞれフランジ部13aを有し、フラン
ジ部13aは上下の取付け金具15,16により碍子17にトロリ
線長さ方向に移動可能に支持されている。また取付け金
具15,16のうちトロリ線10の下側に配置される取付け金
具16には、架台13の撓みを防止するために架台13の下面
に当接するステー部16aが形成されている。

各碍子17はそれぞれ取付けボルト18を一体的に備え、
取付けボルト18はブラケット20のボルト孔21（第３図参
照）に挿通され、２個ずつのナット（即ち第１図のダブ
ルナット）22によりブラケット20に固着されている。

また各金具15,16には回り止め突起部51が形成されて
おり、各突起部51は各碍子17の係合凹部52に凹凸係合し
ている。

第１図のII矢視図を示す第２図において、下側取付け
金具16のステー部16aの上端縁は、緩やかな円弧状に形
成されており、それにより架台13に対して例えば下端に
碍子17回りにブラケット20が多少傾斜しても、確実にス
テー部16aが架台13の下面に当接するようになってい
る。

さて、本発明による電車線支持装置においてはブラケ
ット20の上端部には前後方向（トロリ線長さ方向）に間
隔を隔てて２個のカラー嵌合孔23が形成されており、カ
ラー嵌合孔23から下方に間隔を隔てた下端部には、上下
方向に長い長孔25が形成されている。長孔25の前後方向
の位置は、ブラケット20の前後幅の中央部であり、長孔
25から各カラー嵌合孔23の中心線までの前後方向の距離
L1,L2は等しく（例えば100mmに）設定されている。各碍
子17の中心線はそれぞれカラー嵌合孔23,23及び長孔25
の中心線と同一垂直面H1,H2,H3に揃えられており、碍子
に転倒モーメントが働かないので各碍子17の支持剛性が
向上する。カラー30の中心に対するアンカーボルト26の
偏心量（即ち第３図の偏心孔32の偏心量）Ｔは例えば10
mmであり、またアンカーボルト26,27のボルト径が16mm
に対して長孔25の上下方向の長さは36mmである。即ちブ
ラケット20を上下方向に最大それぞれ10mmずつ移動調節
できるように構成されている。さらに第２図に長孔25の
前後方向幅は例えば20mmに設定されており、ボルト径16
mmの副アンカーボルト27に対して前後にそれぞれ2mmず
つの遊び（がた）を有している。即ちカラー30を回動す
る時にそれに伴ってブラケット20が上下方向に移動でき
る程度の前後方向の遊びを有している。28は接地線であ
る。

ブラケット20の分解斜視図を示す第３図において、パ
ラペット５の取付け面5aには、前後方向（トロリ線長さ
方向）に間隔を隔てた２本の主アンカーボルト26と、該
主アンカーボルト26から下方に間隔を隔てて配置された
１本の副アンカーボルト27が植え込まれている。２本の
主アンカーボルト26は同一高さに揃えられ、ブラケット
20のカラー嵌合孔23,23と対応しており、副アンカーボ
ルト27はブラケット20の長孔25と対応している。各アン
カーボルト26,27は概ね水平姿勢でパラペット５に固着
されると共に、前後方向に対して直角に右側（電車側）
に突出している。

ブラケット20のカラー嵌合孔23には、１個の嵌合孔23
に対して左右両端側から一対の偏心孔付カラー30がそれ
ぞれ回動自在に嵌合し、カラー30には六角頭部30aが形
成されると共に、ボルト挿通用の偏心孔32が形成されて
いる。

各カラー嵌合孔23に嵌合する各カラー30の偏心孔32に
は主アンカーボルト26が挿通され、長孔25には副アンカ
ーボルト27が挿通され、さらに各アンカーボルト26,27
にはブラケット20を挟むようにそれぞれ左右一対のロン
グナット35,36が螺挿されている。左右のロングナット3
5,36でカラー30及びブラケット20を挟むことにより、ブ
ラケット20を左右方向調節自在にアンカーボルト26,27
に固定している。39は各アンカーボルト26,27が挿通す
るワッシャである。

次に調整作業について説明すると、第１図において左
右のロングナット35,36を回動調整することにより、ブ
ラケット20を左右方向に移動し、ガイドレール８のガイ
ド面8aに対するトロリ10の右方突出量Ｗを設定する。

そしてロングナット35,36を仮締め状態にしておい
て、例えば第５図に示すような二重スパナＳを２つ使用
し、第２図の前後のそれぞれ一対のカラー30（合計４個
のカラー）を同時に回動調節し、トロリ線10の上下方向
の位置を設定する。例えばカラー30を時計回りＲに回動
するブラケット20は上方に移動し、反時計回りに回動す
るとブラケット20は下がる。またその時下端の長孔25部
分は副アンカーボルト27に対して上下方向に移動する。
なおトロリ線10の上下方向の位置は、第４図の走行路面
3aの上端面を基準面として調節される。

上記のようにトロリ線10の第１図の右方向の突出量Ｗ
及び上下方向の位置を調整した後、前後のロングナット
35,36を締めることにより部20を固定する。

なお、ブラケット20の調節作業はトロリ線10及び架台
13を碍子18に取付けた状態でも、あるいは取付けていな
い状態でも行うことが出来る。

また、第５図のような二重スパナＳを利用することに
より、１個のカラー嵌合孔23に対する左右一対のカラー
30を同時に同じ回動方向へ容易に回動でき、それにより
ブラケット20（トロリ線）の上下方向の位置を簡単かつ
確実に設定できる。

［別の実施例］ （１）主アンカーボルト26を下側に２本配置し、副アン
カーボルト27を上側に１本配置する構造とすることもで
きる。

（２）副アンカーボルト27をトロリ線長さ方向に間隔を
隔てて２個配置することもできるが、その場合には長孔
25のトロリ線長さ方向の幅を広くし、副アンカーボルト
27に対してトロリ線長さ方向に大きな遊びを有するよう
に構成する。例えば第２図のような１個の長孔の場合に
は前後にそれぞれ2mmずつの遊びを設けているが、それ
よりも大きな遊びであって、カラー30を回動する時にそ
れによりブラケット20が上下方向に移動できるぐらいの
遊びである。

［発明の効果］ 以上説明したように本発明は、１個のブラケット20を
アンカーボルト26,27に対してアンカーボルト長さ方向
移動調節（即ちトロリ線の電車側への突出量調節）可能
に挿通して、左右両側のナット35,36により固定自在と
し、しかも主アンカーボルト26を回動自在な偏心孔付カ
ラー30を介してブラケット20に挿通し、副アンカーボル
ト27を上下方向に長孔25に挿通しているので、次のよう
な作用効果を奏することができる。

従来はトロリ線を支持する碍子各個ごとにそれぞ
れ、碍子ピンを固定する一対のナットを調節する等し
て、上下方向位置調節を行う必要があったが、本発明に
よれば、偏心孔付カラー30の回動によるブラケットの上
下調節移動により全トロリ線の上下位置調整を一挙に行
うことができ、現場での調節作業が著しく簡略化され
る。

本発明においてはそれぞれのカラー嵌合孔23に対し
て一対の偏心孔付カラー30,30が嵌合孔の両端側から嵌
合されているので、上記の偏心孔付カラー30の回動に
よるブラケットの上下調節移動に当たり、碍子、トロリ
線等の荷重を一対のカラー30,30に分散して受け、カラ
ー30とアンカーボルト26との間の摩擦抵抗が減少する。
従ってカラー30の回動操作に要するモーメントが軽減さ
れ、スムースかつ確実な調節作業を行い得る利点があ
る。この利点は、碍子装着後、トロリ線架設後等、偏心
孔付カラーを介してアンカーボルトに加わる荷重が大き
い状態において調整作業を行う場合に殊に顕著である。

本発明は、ブラケット20のアンカーボルト貫通ブラ
ケットにおいて集中してブラケットのアンカーボルト長
さ方向の位置調節及びアンカーボルト軸に垂直な方向の
上下位置調節を行うことにより、トロリ線の電車側への
突出量及び高さ調節を同時的に簡単に行うことができ、
現場での調節作業の能率が大幅に向上する。

部品数が削減され、しかもトロリ線の高さ調節及び
突出量の調節がブラケット20の位置調節だけで行なえる
ので、装置全体がコンパクトになり、また構造も簡単に
なり、製造コストが低減する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明による電車線支持装置の実施例を示す正
面図、第２図は第１図のII矢視図、第３図はブラケット
の分解斜視図、第４図は軌道装置の全体断面略図、第５
図は調整作業に使用する工具の斜視図である。５……パ
ラペット、5a……取付け面、10……トロリ線、20……ブ
ラケット、26……主 アンカーボルト、27……副アンカーボルト、23……カラ
ー嵌合孔、25……長孔、30……偏心孔付カラー、35,36
……ロングナット。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】電車線長さ方向に間隔を隔てた２本の主ア
   ンカーボルトと、該主アンカーボルトに対して下側ある
   いは上側に間隔を隔てて配置される少なくとも１本の副
   アンカーボルトとを、電車線長さ方向と略直角で電車側
   に略水平に突出する姿勢で取付け面に固着し、碍子を介
   して電車線を支持するブラケットには、主アンカーボル
   トに対応する部分にカラー嵌合孔を形成し、副アンカー
   ボルトに対応する部分に上下方向に長い長孔を形成し、
   各カラー嵌合孔には、それぞれ、工具係合用頭部を備え
   た一対の偏心孔付カラーを嵌合孔の両端側から回動可能
   に嵌合するとともに、上記偏心孔付カラーの偏心孔に主
   アンカーボルトを挿通し、上記長孔に副アンカーボルト
   を挿通し、ブラケットを、主副アンカーボルトの軸方向
   に調節移動可能に、かつ上記の偏心孔付カラーの回動に
   より主副アンカーボルト軸に対して垂直に上下に調節移
   動可能に、アンカーボルトに装着し、各アンカーボルト
   においてブラケットの両側に螺着したナットによりアン
   カーボルトの軸方向最適位置にブラケットを固定するこ
   とを特徴とする電車線支持装置。