JP2521807B2 - アイオノマ―の組成物 - Google Patents

アイオノマ―の組成物

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、耐スクラッチ性、耐衝撃性、耐熱性、柔軟
性が優れたエチレン共重合体アイオノマー(以下単にア
イオノマーということがある。)組成物に関する。
更に詳しくは、アイオノマーと、α−オレフィン・グ
リシジル化合物共重合体との反応物と、オレフィン系熱
可塑性エラストマーからなるアイオノマー組成物に関す
る。
[従来の技術] アイオノマー樹脂は、軽量かつ剛直であり、又耐摩耗
性、耐寒衝撃性が優れている為、例えば、自動車外装品
の如き用途に供される樹脂として注目されている。とこ
ろが、ある使用分野、例えば自動車の内装材としてのド
アの内張りの表皮材用途等に於いては、耐スクラッチ
性、耐寒衝撃性等の優れた特長を生かしつつ、柔軟性、
耐熱性を更に改良する事が求められている。
このような用途において求められている耐熱性として
は、通常の耐熱変形などの他に、熱による表面の“艶も
どり”現象が起こらないことも重要な要素として評価さ
れている。すなわち一般に表皮材の表面は、エンボス加
工される事による、艶消し処理が行なわれているが、自
動車車内温度の上限を想定した120℃という高温時にお
いては、エンボス加工の凹凸面が熱により溶融して平滑
になり、元の樹脂本来の艶に戻ってしまう、いわゆる
“艶もどり”と呼ばれる現象が起こることがしばしば観
察されるので、自動車ドアの表皮材用としてはこの現象
の発生しないことが必要な物性とされている。
また、耐スクラッチ性が特に要求される用途では、ア
イオノマーとして、金属イオンを多量に含むものを用い
る必要があるが、金属イオン量が増加するにしたがい、
剛性が高く、しかも高光沢になるので、エンボン加工し
ても艶消しになりにくいという問題があり、耐スクラッ
チ性に優れ、しかも柔軟性をもつ樹脂が要求されてい
る。
一方、本発明者らの出願に係る特開昭61−36347号公
報によれば、アイオノマーとオレフィン系熱可塑性エラ
ストマーからなる耐スクラッチ性、耐熱変形性に優れた
重合体組成物が開示されているが、この提案において
は、耐熱変形性については優れているものの、前述した
“艶もどり”性については不充分であった。
[発明が解決しようとする課題] 従って本発明の目的は、このような現状に鑑み、耐ス
クラッチ性、柔軟性、に優れ、“艶もどり”の少ないア
イオノマー組成物を提供することにある。
[課題を解決するための手段] 本発明者らは上記の点につき検討した結果、エチレン
共重合体アイオノマーを、α−オレフィン・グリシジル
化合物共重合体と反応させ、更にその反応物に対して、
オレフィン系熱可塑性エラストマーを配合することによ
り、これらの特性をバランスよく有する組成物を見出す
に至った。
すなわち本発明はエチレンと不飽和カルボン酸塩を必
須の重合体構成成分として含有するエチレン共重合体ア
イオノマー(A)90〜99.5重量%と、α−オレフィンと
グリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジルエーテ
ルとの共重合体(B)0.5〜10重量%とを溶融混練する
ことによって得られ、(A)のカルボキシル基と(B)
のエポキシ基の少なくとも一部が反応してなる反応物10
0重量部に対して、オレフィン系熱可塑性エラストマー
(C)を5〜200重量部の割合で配合してなるアイオノ
マー組成物である。
以下本発明のアイオノマー組成物について具体的に説
明する。
本発明で用いられるエチレン共重合体アイオノマー
(A)は、エチレンと不飽和カルボン酸塩を必須の重合
体構成成分として含有するものであって、他に任意成分
として不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸エステル、
その他不飽和化合物を重合成分として含有するものであ
ってもよい。このようなアイオノマーは一般には、エチ
レンと不飽和カルボン酸、任意成分として他の不飽和化
合物からなる共重合体の不飽和カルボン酸成分の少なと
も一部を金属イオンおよび/または有機アミンで中和す
るか、あるいはエチレンと不飽和カルボン酸エステルお
よび、任意成分として他の不飽和化合物からなる共重合
体の不飽和カルボン酸エステル成分の少なくとも一部を
鹸化することによって得られる。
アイオノマー原料となるエチレンと不飽和カルボン
酸、任意成分としてその他不飽和化合物を含む共重合体
において、不飽和カルボン酸としては、炭素数3〜8程
度のものが好ましく、具体的には、アクリル酸、メタク
リル酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、マレ
イン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエス
テル等が用いられる。これらの中では、アクリル酸、メ
タクリル酸、無水マレイン酸等が好ましく用いられる。
このような不飽和カルボン酸は、ランダム共重合されて
いてもよく、あるいはグラフト共重合されたものでもよ
いが、透明性の点からは、ランダム共重合されたものが
よい。また共重合体の任意成分として、第3成分である
その他不飽和化合物としては、不飽和カルボン酸のエス
テル、飽和カルボン酸のアルケニルエステル等が挙げら
れ、より具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エ
チル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、
アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、
酢酸ビニル等を例示することができる。
これらエトレン−不飽和カルボン酸共重合体として
は、エチレン含有量が40〜99重量%、好ましくは50〜98
重量%、また不飽和カルボン酸は1〜50重量%、好まし
くは2〜40重量%の量で存在していることが望ましい。
エチレン−不飽和カルボン酸共重合体が、第3成分を含
む場合には、第3成分は50重量%まで、好ましくは40重
量%までの量で存在していることが望ましい。
前記エチレン−不飽和カルボン酸共重合体中の中和成
分として、Na+、K+、Li+、Ca++、Mg++、Zn++、Cu++、Co
++、Ni++、Mn++、A1+++等の1価から3価の金属の陽イ
オン及び/又は、n−ヘキシルアミン、ヘキサメチレン
ジアミン、1.3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、メ
タキシレンジアミン等の有機アミンを例示することがで
きる。中和により生じたカルボキシル塩はアイオノマー
のカルボキシル基とオレフィン系共重合体のエポキシ基
との結合反応の触媒として作用する。中和成分が存在し
なくても反応は生じるが、架橋が不均一に起こり易く、
高温での機械的強度の改良度合が少ない。中和成分は単
独でもあるいは2種以上の成分を組み合わせて使用する
ことも可能である。
好適なアイオノマーは、高圧ラジカル重合法で合成さ
れたエチレンと不飽和カルボン酸、あるいは更に必要に
応じて使用される第3成分との共重合体をベースとし、
この酸性基の一部又は全部を陽イオンで中和したアイオ
ノマーである。中和度は通常5〜100%、好ましくは10
〜90%のものが用いられる。このようなアイオノマーの
触点は一般には70〜105℃程度である。又その流れ特性
は、190℃、2160g荷重で測定したメルトフローレート
(MFR)が0.01〜1000g/10分、特に0.1〜200g/10分のも
のを使用するのが好ましい。
本発明で上記アイオノマー(A)に配合されるオレフ
ィン系共重合体(B)はα−オレフィンと、グリシジル
アクリレート又はグリシジルメタクリレート(以下グリ
シジル(メタ)アクリレートという)又はグリシジルエ
ーテルとの共重合体である。(以下、上記α−オレフィ
ンとグリシジル(メタ)アクリレート又はグリシジルエ
ーテルとの共重合体を[α−オレフィン・グリシジル化
合物共重合体]と呼ぶことがある。)α−オレフィンと
しては炭素数が2〜8個のα−オレフィンが好ましい。
その例としてエチレン、プロピレン、ブテン−1等があ
げられる。
グリシジル(メタ)アクリレート及びグリシジルエー
テルとしては、グリシジルメタクリレート、グリシジル
アクリレート、ビニルグリシジルエーテル、アクリルグ
リシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテ
ル等があげられる。
α−オレフィン・グリシジル化合物共重合体を構成す
る単量体は2成分である必要はない。オレフィン、エポ
キシ基含有単量体の他に、単量体成分として不飽和カル
ボン酸エステル、ビニルエステル等の第3成分を含むこ
とができる。これらは例えば先にアイオノマーの原料と
なる共重合体の第3成分として例示したようなものを挙
げることができる。第3成分を含む場合、架橋されたア
イオノマーの透明性が優れるという効果がある。
これらの共重合体としては、例えばオレフィン含有量
が40〜99重量%、好ましくは50〜98重量%、グリシジル
(メタ)アクリレート又はグリシジルエーテルが0.5〜2
0重量%、好ましくは1〜15重量%、又、不飽和カルボ
ン酸エステルやビニルエステルのごとき第3成分が0〜
49.5重量%、好ましくは0〜40重量%のものが好適に用
いられる。前記グリシジル化合物の含有量が少なすぎる
と、架橋によるアイオノマーの高温における“艶もど
り”の低減効果が小さく、又その含有量があまり多くな
りすぎると架橋が不均一になる傾向があるので適当な含
有量に調節するのが望ましい。
なおα−オレフィン・グリシジル化合物共重合体はラ
ンダム共重合体、ブロック共重合体、及びグラフト共重
合体のいずれも使用することができるが、架橋の均一性
の点でランダム共重合体が好ましい。該オレフィン共重
合体は例えば500〜3000kg/cm2の圧力下150〜280℃の温
度条件でラジカル重合することにより得られる。
該共重合体としてエチレン系共重合体を使用する場合
には、190℃、2160g荷重下に測定したメルトフローレー
トが0.01〜1000g/10分、特に0.1〜200g/10分のものを選
択するのが好ましい。
本発明におけるアイオノマー成分とα−オレフィン・
グリシジル化合物共重合体との反応機構は、アイオノマ
ー成分のカルボキシル基と、α−オレフィン・グリシジ
ル化合物共重合体の側鎖のエポキシ基の少なくとも1部
が反応しアイオノマー分子鎖間がオレフィン系共重合体
を介して共有結合で結ばれた架橋体を形成するものと考
えられる。その際アイオノマー中のカルボン酸塩が反応
の触媒として作用しているものと思われる。反応による
水やガス等の副生成物は生成せず、そのため副生成物に
よる発泡を伴わない。
両者の反応は溶融混練法によって容易に行なうことが
できる。溶融混練法以外にも、例えば両成分を適当な溶
剤に溶かして混合することによっても反応させることが
できるが、この方法では反応速度が遅く又溶剤の分離工
程を必要とする等のため溶融混練法の方がより好まし
い。溶融混練はスクリュー押出機、ロールミキサー、バ
ンバリーミキサー、等の熱可塑性樹脂用溶融混合又は加
工装置で100〜300℃、好ましくは150〜280℃の温度条件
下で行なわれる。
前記アイオノマー架橋体に於けるアイオノマーとエポ
キシ基を側鎖に有するオレフィン系共重合体の使用比率
は、アイオノマーが90〜99.5重量%、好ましくは92〜99
重量%に対して、α−オレフィン・グリシジル化合物共
重合体0.5〜〜10重量%、好ましくは1〜8重量%であ
る。
α−オレフィン・グリシジル化合物共重合体の含有量
が0.5重量%未満では、“艶もどり”性の改良効果が実
質得られない。
又、10重量%を超えると、架橋が進行しすぎる為、流
動性が極端に低下し、成形性を著しく阻害する。
本発明に用いられるオレフィン系熱可塑性エラストマ
ーとは、エチレン−α−オレフィン系共重合体ゴム
(a)とポリオレフィン樹脂(b)を必須成分として含
有し、その少なくとも一方(通常はエチレン−α−オレ
フィン系共重合体ゴム成分)が部分的に架橋されてなる
ものである。
このようなオレフィン系熱可塑性エラストマーとして
は例えばエチレン−α−オレフィン系共重合体ゴム
(a)とポリオレフィン樹脂(b)との混合物を部分的
に架橋した部分架橋ゴム組成物(I)、または該部分架
橋ゴム組成物(I)に更にポリオレフィン樹脂(II)を
混合してなる組成物、あるいはエチレン−α−オレフィ
ン系共重合体ゴム(a)を部分的に架橋して得られた部
分架橋ゴム組成物(I)にポリオレフィン樹脂(II)を
混合してなる組成物などをあげることができる。
また部分架橋させるエチレン−α−オレフィン系共重
合体ゴムあるいはエチレン−α−オレフィン系共重合体
ゴムとポリオレフィン樹脂組成物にはペルオキシド非架
橋型炭化水素系ゴム状物質(c)および/または鉱油系
軟化剤(d)を混合することもできる。
本発明において使用されるオレフィン系熱可塑性エラ
ストマーの代表的なものとしては例えば次のような組成
物が例示できる。
(1)(a)エチレン−α−オレフィン系共重合体ゴム
95〜20重量部、好ましくは80〜30重量部と (b)ポリオレフィン樹脂5〜80重量部、好ましくは20
〜70重量部との混合物、あるいはこの混合物100重量部
に更に (c)ペルオキシド非架橋型炭化水素系ゴム状物質及び
/又は (d)鉱油系軟化剤0〜100重量部、好ましくは5〜80
重量部を配合した混合物を架橋剤の存在下で動的に熱処
理し、部分的に架橋してなる熱可塑性エラストマー組成
物(I) (2)(I)の熱可塑性エラストマー組成物30重量部に
対し、更に70重量部までの割合でポリオレフィン樹脂
(II)を混合してなる熱可塑性エラストマー組成物(な
お、このタイプの熱可塑性エラストマー組成物において
は、熱可塑性エラストマー組成物(I)として、ポリオ
レフィン樹脂(b)を含まない混合物を部分架橋したも
のでも良い)。
(3)(a)エチレン−α−オレフィン系共重合体ゴム
あるいは該ゴム(a)100重量部に対しペルオキシド非
架橋型ゴム状物質(c)及び/又は鉱油系軟化剤(d)
を100重量部までの割合で配合した混合物を架橋剤の存
在下、静的に例えばゴム混合物をプレスして熱処理する
ことによって、部分的に架橋して得たエチレン−α−オ
レフィン共重合体ゴムの部分架橋物80〜20重量部(I)
とポリオレフィン樹脂(II)20〜80重量部とを混合して
なる熱可塑性エラストマー組成物も使用できるが、本発
明では特に(1)と(2)の熱可塑性エラストマーが好
ましい。
本発明の熱可塑性エラストマーは部分架橋されている
ことが必要であり、未架橋のエラストマー組成物を使用
した場合は、得られる重量体組成物の耐熱変形性が損な
われる。
本発明において、熱可塑性エラストマーの原料である
エチレン−α−オレフィン系共重合ゴム(a)とは、例
えばエチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロ
ピレン−非共役ジエン三元あるいは多元重合ゴム、エチ
レン−ブタジエン共重合ゴム、エチレン−1−ブテン共
重合ゴム、エチレン−1−ブテン非共役ジエン多元重合
体ゴム等のエチレンと炭素数3ないし14のα−オレフィ
ンを主成分とする実質的に非晶質のエラストマー又はそ
れらの混合物である。中でも好ましいものはエチレン−
プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−非共
役ジエン三元共重合体ゴムである。
ここで、非共役ジエンとは、ジシクロペンタジエン、
1.4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノ
ルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−
ビニル−2−ノルボルネン等をいい、中でも、ジシクロ
ペンタジエン及び5−エチリデン−2−ノルボルネンを
第3成分とする共重合体が好ましい。
これらエラストマー中に含有される各構成単位の量
は、エチレン単位/α−オレフィン単位が50/50〜90/1
0、好ましくは70/30〜85/15(モル比)の割合であり、
1−オレフィン(エチレンと炭素数3以上のα−オレフ
ィンとの合計)単位/非共役ジエン単位(三元あるいは
多元重合体の場合)が通常99/1〜90/10、好ましくは97/
3〜94/6(モル比)の割合である。
又本発明においてエチレン−α−オレフィン系共重合
体ゴムと動的熱処理の際に混合するポリオレフィン樹脂
(b)としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、
ヘキセン−1、4−メチル−1−ペンテン等の1−オレ
フィンの単独重合体、それらの2種以上の共重合体、あ
るいは1−オレフィンと15モル%以下の他の重合性単量
体との共重合体、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合
体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリ
ル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重
合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メ
タクリル酸メチル共重合体等であって、樹脂状高分子物
質のものが挙げられる。
本発明ではこの中でメルトインデッスク(ASTM−D−
1238−65T、エチレン系重合体では190℃、プロピレン系
重合体では230℃で測定)が0.1ないし50g/10分、特に5
ないし20g/10分で、かつX線回折測定法により求められ
る結晶化度が40%以上のポリオレフィン樹脂が好ましく
用いられる。
本発明において、特に好ましいポリオレフィン樹脂
(b)としては、メルトインデックス0.1ないし50、結
晶化度が40%以上のペルオキシド分解型ポリオレフィン
樹脂(ペルオキシドと混合し、加熱下で混練することに
より熱分解して分子量を減じ、樹脂の流動性が増加する
ポリオレフィン樹脂)、具体的にはアイソタクチックポ
リプロピレン、あるいはプロピレンと15モル%以下の他
のα−オレフィンとの共重合体例えばプロピレン−エチ
レン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロ
ピレン−1−ヘキサン共重合体、プロピレン−4−メチ
ル−1−ペンテン共重合体を例示することができる。
又ポリオレフィン樹脂(b)としては上記ペルオキシ
ド分解型ポリオレフィン樹脂の他に、ペルオキシド架橋
型ポリオレフィン樹脂(ペルオキシドと混合し、加熱下
で混練することにより架橋して樹脂の流動性が低下する
ポリオレフィン樹脂)、例えば、密度0.910〜0.940g/cm
3の低、中密度ポリエチレン等を加えた混合物も好まし
く使用される。
次に熱可塑性エラストマーの調製に際し、必要に応じ
て配合されるペルオキシド非架橋型炭化水素系ゴム状物
質(c)とは、例えば、ポリイソブチレン、ブチルゴ
ム、プロピレン70モル%以上のプロピレン−エチレン共
重合体ゴム、プロピレン−1−ブテン共重合体ゴム、ア
タクチックポリプロピレン等の如くペルオキシドと混合
し、加熱下に混練しても架橋せず、流動性が低下しない
炭化水素系のゴム状物質をいう。これらの中では、ポリ
イソブチレン及びプロピレン−1−ブテン共重合体ゴム
が最も好ましい。
又鉱物油系軟化剤(d)とは、通常ゴムをロール加工
する際に用いられるもので、ゴムの分子間作用力を弱
め、加工を容易にするとともに、カーボンプブラック、
ホワイトカーボン等の分散を助ける。
更に本発明において動的熱処理後に、必要に応じ混合
されるポリオレフィン樹脂(II)は、動的熱処理の際に
加えられるポリオレフィン樹脂(b)と同様の樹脂すな
わち、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−
1、4−メチル−1−ペンテン等の1−オレフィンの単
独重合体、その2種以上の共重合体、あるいはα−オレ
フィンと15モル%以下の他の重合性単量体との共重合
体、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン
−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共
重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレ
ン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メ
チル共重合体等であって、樹脂状高分子物質のものが挙
げられる。これらのポリオレフィン樹脂(II)のメルト
インデックス(ASTM−D−1238−65T、90℃、但し、プ
ロピレン系重合体は230℃)は5〜100、特に10〜50g/10
分であることが好ましい。動的熱処理時と熱処理後の両
方にポリオレフィン樹脂を加える場合は、ポリオレフィ
ン樹脂(b)とポリオレフィン樹脂(II)は同種のもの
でも、異種のものでもよい。
本発明において熱可塑性エラストマーを調製するに
は、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(a)の10
0ないし20重量部とポリオレフィン樹脂(b)0ないし8
0重量部、必要により更にペルオキシド非架橋型ゴム
(c)及び/又は鉱油系軟化剤(a)0〜100重量部を
混合してなるブレンド物(以下被処理物という)100重
量部に対し約0.05〜2重量%、好ましくは0.1ないし0.5
重量%の架橋剤を配合し動的に熱処理し、部分架橋を行
なえばよい。
混練は非開放型の装置中で行なうことが好ましく、窒
素又は炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気下で行なうことが
好ましい。その温度は通常150〜280℃、好ましくは170
〜240℃、混練時間は通常1〜20分間、好ましくは1〜1
0分間である。
本発明において部分架橋のために使用される架橋剤と
しては、有機ペルオキシド、硫黄、フェノール系加硫
剤、オキシム類、ポリアミン等が挙げられるが、これら
の中では得られる熱可塑性エラストマーの物性の面か
ら、有機ペルオキシド及びフェノール系加硫剤が好まし
い架橋剤である。
又本発明で使用される有機ペルオキシドとしては、ジ
クミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、
2.5−ジメチル−2.5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)
ヘキサン、2.5−ジメチル−2.5−ビス(tert−ブチルペ
ルオキシ)ヘキシン−3、1.3−ビス(tert−ブチルペ
ルオキシイソプロピル)ベンゼン、1.1−ビス(tert−
ブチルペルオキシ)3.3、5−トリメチルシクロヘキサ
ン、n−ブチル−4.4−ビス(tert−ブチルペルオキ
シ)パレラート、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブ
チルペルオキシベンゾアート等を挙げることができる
が、中でも、臭気の少ない点、スコーチ安定性の高い点
で、ビスペルオキシド系化合物が好まれ、1.3−ビス(t
ert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンが最適
である。
熱可塑性エラストマーとしては、ショア硬度(JISA)
が95以下、とくに50〜95のものが好ましい。
アイオノマーと、α−オレフィン・グリシジル化合物
共重合体との反応物とオレフィン系熱可塑性エラストマ
ーとは、前者100重量部に対し、後者が5〜200重量部、
好ましくは、50〜150重量部の割合で用いられる。オレ
フィン系熱可塑性エラストマーの割合が、5重量部未満
だと、柔軟性に劣り、200重量部を超えると、耐スクラ
ッチ性に劣る様になる。
アイオノマーと、α−オレフィン・グリシジル化合物
共重合体との架橋反応は、オレフィン系熱可塑性エラス
トマーの存在によって妨げられることはないので、前述
した架橋アイオノマーの製造法におけるスクリュー押出
機等の溶融混練時に、原料のアイオノマー、エポキシ基
を側鎖に有するオレフィン系共重合体に、オレフィン系
熱可塑性エラストマーをブレンドさせることも可能であ
る。
[実施例] 次に実施例によって本発明を説明する。
尚、実施例においてアイオノマー組成物の成分として
用いられた重合体の組成、物性等は以下のとおりであ
る。
アイオノマー1:エチレン含量97mol%、メタクリル酸含
量1mol%、メタクリル酸亜鉛含量2mol% アイオノマー2:エチレン含量96mol%、メタクリル酸含
量1mol%、メタクリル酸亜鉛含量3mol% TPE:部分架橋オレフィン系熱可塑性エラストマー(三井
石油化学工業(株)製、ミラストマー8030B)、M.F.R.1
0g/10分、230℃、荷重10kg、ショア硬度(A)85 EVAGMA:エチレン−酢酸ビニル−グリシジルメタクリレ
ート共重合体(エポキシ基を側鎖に有するオレフィン系
共重合体)酢酸ビニル含量5重量%、グリシジルメタク
リレート含量8重量%、MFR 6g/10分 更に、本実施例に於いて用いられた、試験方法は以下
の通りである。
M.F.R(溶融流れ性)JIS−K−6710により、荷重2160
g、測定温度190℃で測定した。
曲げ剛性率 厚さ2mmの試験片についてASTM D−747に
基づいて測定した。
艶もどり性 実施例で述べる方法によって得られた、ア
イオノマー組成物と30倍発泡ポリプロピレンシート(2m
m厚)(以下PPFという)との貼り合わせシートを120℃
のオーブン中に24時間放置し、表面の外観に変化がない
ものを○、エンボス模様が熱によって消失し、光沢が現
われるものを×、その中間を△とする。
耐スクラッチ性 実施例で述べる方法によって得られた
アイオノマー組成物とPPFとの貼り合わせシートの表面
を、100円硬化のギザギサのある側面部でこすり、傷の
つきやすさを肉眼で判定した。傷のつかないものを○、
傷がつくものを×、その中間を△とする。
[実施例1〜6、比較例1〜4] アイオノマー1、TPF、EVAGMAの所定量を40mm径単軸
押出機を用いてダイ温度200℃スクリュー回転数30rpmの
条件下で、溶融混合して、ペレット化した。これらのペ
レットについて、700mm巾Tダイを装着した65mm径単軸
押出機を用いて、Tダイ温度200℃の条件下で押出成形
し、表面にエンボス模様を彫刻した金属ロール2本の間
を通過させることにより、得られたアイオノマー組成物
とPPFとの貼り合わせシートを作成した。シートの厚み
は0.2mmである。これらの貼り合わせシートについて艶
もどり性、耐スクラッチ性の評価を行なった。又、40mm
単軸押出機で作成されたペレットについて、M.F.R.の測
定を行なった。更に、このペレットを熱プレス成形法に
より、160℃の条件下で、2mmの板状にしたものについ
て、曲げ剛性率の測定を行なった。これらの結果を表−
1に示す。
[実施例7] 実施例1に於いて、アイオノマー1の代わりに、アイ
オノマー2に代えた以外は、全く実施例2と同様にして
評価を行なった。この結果を表−1に示す。
[発明の効果] 本発明によれば、アイオノマーとα−オレフィン・グ
リシジル化合物共重合体との反応物にオレフィン系熱可
塑性エラストマーを配合することにより、耐スクラッチ
性、耐衝撃性、耐熱性、柔軟性に優れたアイオノマー組
成物が得られた。この組成物は自動車内外装品等、広範
囲な用途に使用される。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】エチレンと不飽和カルボン酸塩を必須の重
    合体構成成分として含有するエチレン共重合体アイオノ
    マー(A)90〜99.5重量%と、αオレフィンとグリシジ
    ル(メタ)アクリレート又はグリシジルエーテルとの共
    重合体(B)0.5〜10重量%とを溶融混練することによ
    って得られ、(A)のカルボキシル基と(B)のエポキ
    シ基の少なくとも一部が反応してなる反応物100重量部
    に対して、オレフィン系熱可塑性エラストマー(C)を
    5〜200重量部の割合で配合してなるアイオノマー組成
    物。
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