JP2514949B2 - メタクリル酸エステル系樹脂組成物を押出成形したフィルム - Google Patents

メタクリル酸エステル系樹脂組成物を押出成形したフィルム

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JP2514949B2 JP4969587A JP4969587A JP2514949B2 JP 2514949 B2 JP2514949 B2 JP 2514949B2 JP 4969587 A JP4969587 A JP 4969587A JP 4969587 A JP4969587 A JP 4969587A JP 2514949 B2 JP2514949 B2 JP 2514949B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は透明性と耐候性とに優れた架橋アクリル酸エ
ステル系弾性体を含有するメタクリル酸エステル系樹脂
組成物を押出成形したフィルムに関する。さらに詳しく
は、アクリル酸エステルを主成分とする架橋アクリル酸
エステル系弾性体に、グラフト層とマトリックス層(以
下、グラフト層とマトリックス層とからなる層を形成す
る成分を樹脂成分という)とを構成する単量体としてメ
タクリル酸エステルを主成分とする単量体をグラフト重
合せしめた樹脂組成物であって、グラフト部分とマトリ
ックス部分の組成が均一なメタクリル酸エステル系樹脂
組成物を押出成形したフィルムに関する。
[従来の技術・発明が解決しようとする問題点] メタクリル酸エステル系樹脂は、透明性、耐候性がき
わめて優れているため、種々の工業分野で広く使用され
ている。該樹脂には硬くて脆いという性質があるが、そ
の性質は多くのばあい欠点となるので、改良検討がなさ
れている。
前記性質を改良する方法として、ゴムを混合、分散さ
せる方法が主として採用されている。この際、ゴムと樹
脂との相溶性をよくするため、ゴム存在下で樹脂となる
単量体をグラフト重合させるばあいが最も多い。
用いるゴムは耐衝撃性をよくするという点からはブタ
ジエン系などの不飽和ゴムが好ましいが、メタクリル酸
エステル系樹脂の特徴とである耐候性を維持するという
点から、アクリル系などの飽和ゴムが一般に用いられて
いる。ゴムの粒は小さいほど透明性はよくなるが、耐衝
撃性は逆に低下するので、使用目的に応じて適宜選択し
て使用されている。
ゴム存在下で樹脂となる単量体をグラフト重合させる
ばあい、ゴム層と樹脂層との界面の密着性をよくし、屈
折率などの物理的性質をより連続的に変化させるため、
4段重合法(特公昭47-13371号公報)や3段重合法(特
公昭50-9022号公報)などの多段重合法が提案されてき
ているが、多段重合法になるにしたがって生産工程が煩
雑になるという欠点がある。また、ゴム層と樹脂層との
間に柔軟な中間層を導入すると、耐温水白化性の良好な
樹脂がえられにくくなるという欠点もある。
一方、ゴム存在下に連鎖移動剤を用いずに1段でグラ
フト重合させる例もあるが(特公昭52-14267号公報、特
公昭54-33277号公報)、高延伸をかけてフィルムを押出
成形する加工法には適さず、加工法が限定されている。
[問題点を解決するための手段] 本発明者らは上記のごとき実状に鑑み、効率的な重合
法で耐候性や透明性などの諸物性に優れ、加工性の良好
な樹脂組成物をえ、押出成形法によりフィルムを製造す
べく鋭意研究を重ねた結果、グラフト重合時に少量の連
鎖移動剤を併用することにより、ゴム存在下で1段でグ
ラフト重合させるという効率的な重合方法によっても耐
候性や透明性などの諸物性に優れ、加工性の良好な樹脂
組成物を製造することができ、押出成形法によって良好
な特性を有するフィルムを製造しうることを見出し、本
発明に到達した。
本発明は、アクリル酸アルキルエステル(アルキル基
の炭素数が1〜8)60〜100%(重量%、以下同様)と
メタクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数が
1〜4)0〜40%とからなる単量体混合物に、これらと
共重合しうる1分子当り2個以上の非共役2重結合を有
する多官能性単量体を前記単量体混合物に対して0.1〜2
0%加えた混合物を乳化重合させて架橋アクリル酸エス
テル系弾性体を製造し、この架橋アクリル酸エステル系
弾性体10〜50部(重量部、以下同様)を含む乳濁液の存
在下に、メタクリル酸アルキルエステル(アルキル基の
炭素数が1〜4)60〜100%とアクリル酸アルキルエス
テル(アルキル基の炭素数が1〜8)0〜40%からなる
単量体混合物に、さらに該混合物に対して0.01〜10%の
連鎖移動剤を加えた混合物50〜90部を添加してグラフト
部分とマトリックス部分の組成が均一になるように乳化
重合せしめてなるメタクリル酸エステル系樹脂組成物を
押出成形したフィルムに関する。
[実施例] 本発明における組成物は、架橋アクリル酸エステル系
弾性体(以下、架橋弾性体(A)という)乳濁液をうる
第1段階と、さらにこの第1段階でえられた架橋弾性体
(A)乳濁液の存在下に樹脂成分単量体を共重合させる
第2段階とから製造される。
本発明に用いる架橋弾性体(A)は、アルキル基の炭
素数が1〜8のアクリル酸アルキルエステルとアルキル
基の炭素数が1〜4のメタクリル酸アルキルエステルと
からなる単量体混合物に、これらと共重合可能な1分子
当り2個以上の非共役2重結合を有する多官能性単量体
を加えた混合物を乳化重合して製造される。
アルキル基の炭素数が1〜8のアクリル酸アルキルエ
ステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル
酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、ア
クリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−n−オク
チルなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく、
2種以上併用してもよい。
前記アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は直鎖
状でも分枝鎖状でもよいが、炭素数が8をこえるばあい
には反応速度が遅くなり、好ましくない。
アルキル基の炭素数が1〜4のメタクリル酸アルキル
エステルの代表例としてメタクリル酸メチルがあげられ
るが、その他にメタクリル酸エチル、メタクリル酸プロ
ピル、メタクリル酸ブチルなどが具体例としてあげられ
る。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用しても
よい。
前記メタクリル酸アルキルエステルのアルキル基は直
鎖状でも分枝鎖状でもよいが、炭素数が4をこえるばあ
いには反応速度が遅くなり、好ましくない。
アルキル基の炭素数が1〜8のアクリル酸アルキルエ
ステルとアルキル基の炭素数が1〜4のメタクリル酸ア
ルキルエステルとの使用割合は、前者60〜100%、好ま
しくは75〜95%に対して後者0〜40%、好ましくは5〜
25%である。この割合は架橋弾性体(A)のガラス転移
温度がおよそ0℃以下となり、かつ柔軟なフィルムがえ
られることから決定されたものである。
前記単量体と共重合しうる1分子当り2個以上の非共
役2重結合を有する多官能性単量体は、主として弾性体
成分を架橋させ、架橋弾性体にするために用いられるも
のであり、たとえばエチレングリコールジメタクリレー
ト、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチ
レングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロ
パントリメタクリレート、ジプロピレングリコールジメ
タクリレートまたはこれらのメタクリレートをアクリレ
ートにしたもの、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレー
ト、ジアリルマレエート、ジビニルアジペェート、アリ
ルアクリレート、アリルメタクリレート、トリアリルシ
アヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどがあげら
れる。これらのうち、アリル基を有するものは反応速度
が遅く、重合が終了したのちもある程度架橋弾性体中に
2重結合が残存し、樹脂成分単量体の架橋弾性体(A)
へのグラフト重合に充分寄与すると考えられる。最適な
架橋度を与える多官能性単量体の量は、アクリル酸アル
キルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルから
なる単量体混合物に対して0.1〜20%であり、好ましく
は0.5〜5%である。
架橋度は架橋弾性体としての性質表現とグラフトポリ
マーの架橋弾性体(A)との絡み合いの程度を示すゲル
分量の決定に影響する因子である。架橋度が低い程絡み
合いの程度が低下し、架橋弾性体(A)と樹脂成分との
相溶性が低下し、透明性、応力白化性、流動加工安定性
に好ましくない影響を及ぼす。架橋度が高い程透明性、
成形体の表面光沢性は向上するが、耐衝撃性と加工温度
付近での延伸性に関する加工性が低下する。
前記アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アル
キルエステル、これらと共重合しうる1分子当り2個以
上の非共役2重結合を有する多官能性単量耐体の乳化重
合に使用される界面活性剤にはとくに限定はなく、通常
の乳化重合用の界面活性剤であれば使用することがで
き、たとえばアルキル硫酸ソーダ、アルキルベンゼンス
ルフォン酸ソーダ、ラウリン酸ソーダなどの陰イオン性
界面活性剤や、アルキルフェノール類とエチレンオキサ
イドとの反応生成物などの非イオン性界面活性剤があげ
られる。これらの界面活性剤は単独で用いてもよく、2
種以上併用してもよく、さらに要すればアルキルアミン
塩酸塩などの陽イオン性界面活性剤を使用してもよい。
用いる水性分散媒の量にはとくに限定はないが、単量
体または単量体と重合体との合計100部に対して60〜400
部程度使用されるのが一般的であるが、80〜250部用い
るのが経済的であるなどの点から好ましい。
前記乳化重合においては、通常、重合開始剤とくに遊
離基を発生する重合開始剤が使用される。このような重
合開始剤の具体例としては、たとえば過硫酸カリウム、
過硫酸ナトリウムなどの無機過酸化物や、キュメンハイ
ドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどの
有機過酸化物などがあげられる。さらにアゾビスイソブ
チロニトリルなどの油溶性開始剤も使用しうる。
これら重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナ
トリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルフォキシレ
ート、アスコルビン酸、硫酸第1鉄などの還元剤と組合
わせて、通常のレドックス型重合開始剤として使用して
もよい。
このようにして製造される架橋弾性体(A)の平均粒
子径は、前記の界面活性剤の使用量や使用する水性分散
媒量を調整することにより、 400〜2000Åの範囲にするのが好ましい。平均粒子径
が400Å未満では成形体にしたときの耐衝撃性が低下
し、2000Åをこえると透明性が低下する傾向にある。
第2段階では第1段階でえられた架橋弾性体(A)を
固形分として10〜50部、好ましくは20〜40部の存在下
に、前記メタクリル酸アルキルエステル60〜100%、好
ましくは80〜100%、さらに好ましくは90〜100%と前記
アクリル酸アルキルエステル0〜40%、好ましくは0〜
20%、さらに好ましくは0〜10%との混合物と、さらに
該混合物に対して0.01〜10%の連鎖移動剤を加えた混合
物50〜90部、好ましくは60〜80部を添加してグラフト部
分とマトリックス部分の組成が均一になるように共重合
せしめられる。
樹脂成分中のメタクリル酸アルキルエステルとアクリ
ル酸アルキルエステルとの割合は、架橋弾性体(A)と
の相溶性とえられる樹脂組成物の物性の点から決定され
るものであり、メタクリル酸アルキルエステルの割合が
60%未満になると硬度や軟化温度が低下し、ブロッキン
グをおこすなどの問題が生じる。
要すればこれら単量体と共重合しうる前述と同様のエ
チレン系単量体で、前記単量体を10%までの範囲でおき
かえてもよい。
また架橋弾性体(A)の量が10部未満になるとえられ
る樹脂の強靱性や柔軟性が充分でなくなり、50部をこえ
ると硬度や軟化温度が低下し、加工性がわるくなり、実
用に適さなくなる。
第2段階の重合で重要な点は架橋弾性体(A)と樹脂
成分との化学的あるいは物理的結合の程度である。この
結合量は架橋剤の種類と量、連鎖移動剤の量および重合
条件などによりコントロールしうる。この結合量が少な
いばあいには、架橋弾性体(A)と樹脂成分との相溶性
が低下し、透明性、流動加工安定性が低下する。またこ
の結合量が多いばあいには、透明性、応力白化性は向上
するが、高温延伸性が低下する。
前記連鎖移動剤は樹脂成分単量体100部に対し、0.01
〜10部用いることが必要であるが、0.05〜1部用いるの
が好ましい。連鎖移動剤の量が0.01部未満になるとグラ
フト率が上がり過ぎ、高温延伸性が低下する。また10部
より多く用いるとグラフト率が低下し過ぎ、架橋弾性体
(A)と樹脂成分との相溶性が低下し、透明性が低下す
る。また連鎖移動剤の残存量が多くなるに従い、特有の
悪臭が強くなる。
前記連鎖移動剤は、通常ラジカル重合に用いられるも
のの中から選択して用いればよいが、たとえば炭素数2
〜20のアルキルメルカプタン、メルカプト酸類、チオフ
ェノール、四塩化炭素あるいはそれらの混合物などがあ
げられる。
樹脂成分単量体をグラフト重合させる第2段階の重合
法にはとくに限定はなく、グラフト部分とマトリックス
部分の組成が均一になるかぎり任意であるが、本発明の
効果をより発揮させるには、樹脂成分単量体を添加しつ
つ重合するのが好ましい。
樹脂成分単量体の重合において、グラフト部分とマト
リックス部分の組成が均一にならないばいには、熱水浸
漬時に熱変形しやすく、吸水量が多くなり、耐温水白化
性が低下し、好ましくない。
なお、上記均一とは樹脂成分単量体の組成比を実質的
に変えることなく連続的に重合させ、グラフト部分とマ
トリックス部分との組成を実質的に同一にすることであ
る。
第2段階の重合によりえられる重合体ラテックスは通
常の凝固(たとえば塩を用いた凝固)と洗浄により、ま
たは噴霧、凍結乾燥などによる処理により重合物が分離
回収される。
本発明における組成物を通常の溶融押出法であるイン
フレーション法やT型ダイス法あるいはカレンダー法な
どにより加工すると、耐候性、透明性、表面光沢性およ
び耐衝撃性に優れたフィルムあるいはシートがえられ
る。
本発明における組成物には着色のための有機系または
無機系の顔料や、熱や光に対する安定性を増すための抗
酸化剤や紫外線吸収剤などを添加してもよい。
以下、実施例に基づき本発明の樹脂組成物を押出成形
したフィルムを具体的に説明する。
実施例1 撹拌機、温度計、チッ素ガス導入管、モノマー供給
管、還流冷却器をそなえた8lの重合器に、脱イオン水20
0部、ジオクチルスルホコハク酸ソーダ1.0部およびナト
リウムホルムアルデヒドスルフォキシレート0.5部を仕
込み、器内を充分にチッ素ガスで置換し、内温を60℃に
設定した。そののち、内温を60℃に保ちながら、ブチル
アクリレート24部、メチルアメタクリレート6部、トリ
アリルイソシアヌレート0.2部およびキュメンハイドロ
パーオキサイド0.6部からなる混合物を約2時間かけて
連続添加し、添加終了後約30分間反応を続け、転化率を
98%以上にして、架橋弾性体(A)の重合を完了した。
えられた架橋弾性体(A)の平均粒径は500Åであっ
た。
つぎに内温を60℃に保ちながら、メチルメタクリレー
ト65部、ブチルアクリレート5部、キュメンハイドロパ
ーオキサイド0.5部およびt−ドデシルメルカプタン0.1
5部からなる混合物を約4時間かけて連続添加し、添加
終了後約1時間反応を続け、転化率を98%以上にして重
合を完了した。
このようにしてえられたラテックスを常法にしたがい
塩析、凝固させたのち熱処理し、冷却後脱水、洗浄、乾
燥を行ない、樹脂組成物をえた。
えられた樹脂組成物のグラフト率は96%であった。
なお、グラフト率は下記の式から求め、式中のゴム・
グラフト分の重量は以下の手順で測定した。
樹脂組成物1gをメチルエチルケトン50mlに分散溶解さ
せ、遠心分離機(30,000rpm×2hrs)で不溶分と可溶分
とを分離し、不溶分を真空乾燥により充分に乾燥させた
ものをゴム・グラフト分として重量を測定した。
えられた樹脂組成物100部に紫外線吸収剤(チバガイ
ギー社製のチヌビンP)2部を添加し、ペレット化し
た。
えられたペレットからダイス温度240℃に設定したT
型ダイスで厚さ40μmおよび50μmのフィルムを製膜し
た。えられたフィルムの厚さは均一なものであった。
えられた厚さ50μmのフィルムの透明性、耐候性およ
びフィルム伸度を下記の方法により測定した。またフィ
ルムを市販のポリカーボネート平板(以下、PC板とい
う)に180℃で熱プレスラミネーションしたものについ
て、下記方法により耐候性を測定した。
結果を第1表に示す。
(透明性) 日本電色工業(株)製のHAZE METERを用いて常法によ
り、全光線透過率を測定。
(フィルムの耐候性) スガ試験機(株)製のサンシャインウェザーメータを
用いてブラックパネル温度83℃で1000時間促進耐候試験
を行なったのち、抗張力を求め、その保持率を求める。
また呈色度合を観察する。
(フィルム伸度) JIS K 6732に準拠して測定。
(フィルムラミネートPC板の耐候性) 上記フィルムの耐候性試験と同様の試験を行ない、色
調の変化(色差(ΔE))を色差計(日本電色(株)製
のZ−Σ80型)を用いて測定。
比較例1 第2段階で使用した連鎖移動剤を全く使用しない他は
実施例1と同様にして樹脂組成物を製造し、ペレット化
し、T型ダイスで厚さ40μmおよび50μmのフィルムを
製膜したが、フィルム厚さの精度のよいものはえられな
かった。
実施例1と同様の項目について同様にして評価した結
果を第1表に示す。
フィルムをラミネートしないPC板のΔEは15であり、
フィルムをラミネートすることによる色調の変化防止効
果の大きいことがわかる。
比較例2 実施例1と同様にして架橋弾性体(A)を製造し、内
温を60℃に保ちながら、メチルメタクリレート12部、ブ
チルアクリレート8部、キュメンハイドロパーオキサイ
ド0.04部およびt−ドデシルメルカプタン0.02部からな
る単量体混合物(B)を約1時間かけて連続添加し、添
加終了後約30分間反応系の撹拌を続けた。そののち、さ
らにメチルメタクリレート46.5部、ブチルアクリレート
3.5部、キュメンハイドロパーオキサイド0.36部および
t−ドデシルメルカプタン0.11部からなる単量体混合物
(C)を約3時間で連続添加し、添加終了後約1時間反
応を続けた。転化率を98%以上にして、重合を完了させ
た。
えられたラテックスを実施例1と同様にして処理し、
樹脂組成物をえ、ペレット化し、T型ダイスで製膜し、
厚さ50μmのフィルムをえた。
えられたフィルムについて耐温水白化性を測定したと
ころ、全光線透過率が40%で、実施例1でえられたフィ
ルムの89%と比較して著しく劣っていた。
なお、耐温水白化性は90℃の温水に4時間浸漬したの
ち室温の蒸留水に浸漬し、サンプルを室温まで冷却した
のち取り出し、ガーゼで表面の水分をふきとり、全光線
透過率を測定することにより評価した。
実施例2〜3および比較例3 実施例1で調製した架橋弾性体(A)のかわりに第2
表に示す組成比率の単量体混合物を合計量が30部になる
ように用いて架橋弾性体(A)を製造して使用した他は
実施例1と同様にして、樹脂組成物を製造し、ペレット
化し、T型ダイスで厚さ50μmのフィルムを製膜してフ
ィルム伸度を測定した。また、ガラス転移温度(Tg)を
ポリマーハンドブックに記載された数値を用いてFoxの
式: (式中、a1、a2はそれぞれブチルアクリレート、メチ
ルメタクリレートの重量分率、Tg1、Tg2はそれぞれポリ
ブチルアクリレート、ポリメチルメタクリレートのTg)
より求めた。結果を実施例1の結果とともに第2表に示
す。
なお、必要なフィルム伸度は用途によって異なるが通
常10%以上、好ましくは30%以上である。
第2表の結果から架橋弾性体(A)のアクリル酸アル
キルエステル(ブチルアクリレート)の組成比率が60%
未満になるとフィルム伸度がきわめて低く、脆弱なフィ
ルムとなることがわかる。
実施例4〜5および比較例4〜5 実施例1で使用した架橋弾性体(A)の調製に際して
使用した多官能性単量体(トリアリルイソシアヌレー
ト)の量を第3表に示すように変更した他は実施例1と
同様にして樹脂組成物を製造し、ペレット化し、T型ダ
イス厚さ30μmのフィルムを製膜して、透明性およびフ
ィルム伸度を測定した。結果を実施例1の結果とともに
第3表に示す。
第3表の結果から、多官能性単量体(トリアリルイソ
シアヌレート)の量が架橋弾性体(A)を構成する単量
体混合物に対して0.1%未満では透明性の低下が著し
く、約90%以上という良好な透明性のものはえられず、
20%をこえるとフィルム伸度が低く、脆弱なフィルムと
なることがわかる。
実施例6〜9および比較例6 実施例1で使用した樹脂成分を構成する単量体混合物
のかわりに第4表に示す組成比率の単量体混合物を合計
量が70部になるように用いてラテックスを製造した他は
実施例1と同様にしてフィルムを製造して、ビカット軟
化温度およびフィルムのブロッキング性を評価した。結
果を第4表に示す。
なお、ビカット軟化温度はISO R−306に準拠して荷重
5kgで測定した。またブロッキング性はJIS Z 1515を参
考にして40℃で判定した。表中の○はブロッキングな
し、△はややブロッキングであり、×はブロッキングあ
りを表わす。
第4表の結果から、メタクリル酸アルキルエステル
(メチルメタクリレート)が60%未満では軟化温度が低
過ぎ、フィルムがブロッキングを起こし、好ましくない
ことがわかる。
実施例10〜13および比較例7 実施例1における架橋弾性体(A)の割合を第5表に
示す割合に変更した他は実施例1と同様にして重合させ
た。なお単量体混合物組成割合、単量体混合物に対する
開始剤および連鎖移動剤の各割合は実施例1と同じにな
るようにした。
えられたラテックスを実施例1と同様に処理してフィ
ルムを製膜し、フィルム伸度、表面硬度、Tダイ加工性
を評価した。結果を第5表に示す。
なお、表面硬度はフィルムを積層し、加圧熱プレスに
より厚さ3mmのプレス板を作製し、JIS K 7202に準拠
し、ロックウェル硬度(R)を測定した。
第5表の結果から、架橋弾性体(A)が10部未満では
フィルム伸度が低く、脆弱なフィルムとなり、50部をこ
えると表面硬度の低下が著しく、またフィルムの安定製
膜性が低下することがわかる。
実施例14〜17および比較例8 実施例1における樹脂成分を構成する単量体混合物に
第6表に示す量の連鎖移動剤(t−ドデシルメルカプタ
ン)を加えて重合させた他は実施例1と同様にしてフィ
ルムを製膜し、Tダイ加工性および透明性を評価した。
結果を第6表に示す。
第6表の結果から、連鎖移動剤の量が0.01%未満では
Tダイ加工性がわるくなり、10部より多くなると透明性
が低下することがわかる。
[発明の効果] 本発明における組成物はゴム存在下に樹脂成分単量体
を一段かつ組成を変化させることなく追加するという効
率的な重合法で、製造することができ、この方法により
製造された組成物は、耐候性、透明性、耐温水白化性お
よび加工性の優れたアクリル系架橋弾性体含有メタクリ
ル酸エステル系樹脂組成物であり、この組成物を用いる
ことにより、押出成形法によって優れた特性を有するフ
ィルムをうることができる。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アクリル酸アルキルエステル(アルキル基
    の炭素数が1〜8)60〜100重量%とメタクリル酸アル
    キルエステル(アルキル基の炭素数が1〜4)0〜40重
    量%とからなる単量体混合物に、これらと共重合しうる
    1分子当り2個以上の非共役2重結合を有する多官能性
    単量体を前記単量体混合物に対して0.1〜20重量%加え
    た混合物を乳化重合させて架橋アクリル酸エステル系弾
    性体を製造し、この架橋アクリル酸エステル系弾性体10
    〜50重量部を含む乳濁液の存在下に、メタクリル酸アル
    キルエステル(アルキル基の炭素数が1〜4)60〜100
    重量%とアクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭
    素数が1〜8)0〜40重量%とからなる単量体混合物
    に、さらに該混合物に対して0.01〜10重量%の連鎖移動
    剤を加えた混合物50〜90重量部を添加して、グラフト部
    分とマトリックス部分の組成が均一になるように乳化重
    合せしめてなるメタクリル酸エステル系樹脂組成物を押
    出成形したフィルム。
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