JP2024060705A - タイヤ試験方法 - Google Patents

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Yu Sakamoto
雄介 木本
Yusuke Kimoto
寛之 辰巳
Hiroyuki Tatsumi
恵二 樋口
Keiji Higuchi
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Abstract

【課題】サイド部で発生する、傷やひび割れを起点とするクラックを再現できる、タイヤ試験方法の提供。【解決手段】タイヤ試験方法は、タイヤに対して劣化処理を行う工程S1と、タイヤに対して加工処理を行う工程S2と、走行試験装置の走行面上でタイヤを走行させる工程S3とを含む。加工処理として、タイヤのサイド部に切り込みが入れられる。切り込みを入れる位置は、タイヤに荷重をかけた時にタイヤのサイド部に生じる表面歪みが最大になる、最大表面歪みの位置である。走行試験装置の走行面に、タイヤの軸方向にのびる突起が設けられる。【選択図】図2

Description

本発明は、タイヤ試験方法に関する。詳細には、本発明は、耐サイドウォールクラック性能の評価に用いることができる、タイヤ試験方法に関する。
走行時の歪みや、経時的な劣化等が原因となって、欠けやクラック等の損傷がタイヤに発生することがある。こういった損傷の発生を防止し、耐久性の向上を図るために、実際に生じた損傷を再現することが試みられる。例えば、下記の特許文献1では、トレッドゴムの欠けを再現し、評価することが試みられている。
特開2013-104809号公報
タイヤのサイド部の表面には、縁石等との接触により傷がついたり、機械的疲労によってひび割れが生じたりする。タイヤの使用を継続すると、傷やひび割れを起点として、クラックが発生することがある。このクラックは、サイド部に生じる歪みが関与するクラックであり、サイドウォールクラックとも呼ばれる。歪みが関与することから、高偏平タイヤに比べてサイド部が短い低偏平タイヤでは、サイドウォールクラックが生じやすい傾向にある。
サイド部に生じするクラックとして、オブリーククラックが知られている。オブリーククラックは、高荷重条件下で路面との摩擦力が高まり、ビード部の回転周期に対してトレッド部の回転周期が遅れることで生じるクラックである。これに対して、前述のサイドウォールクラックは、サイド部に生じる歪みが関与するクラックであり、オブリーククラックとは相違する。
オブリーククラックは、加熱する等してサイド部を硬化させたタイヤに対して走行試験を行うことで再現できる。しかしこのオブリーククラックを再現できる試験方法では、サイドウォールクラックを再現することはできない。
カーカスプライまでクラックが達すると、エアリークの発生リスクが高まる。そのため、サイド部で発生する、傷やひび割れを起点とするクラックを再現できる、試験方法の確立が求められている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、サイド部で発生する、傷やひび割れを起点とするクラックを再現できる、タイヤ試験方法の提供にある。
本発明に係るタイヤ試験方法は、路面と接地するトレッド部と、リムに嵌め合わされる一対のビード部と、前記トレッド部と前記ビード部との間を架け渡す一対のサイド部とを備え、前記リムに組み内圧を調整して使用される、タイヤの試験方法である。このタイヤ試験方法は、前記タイヤに対して劣化処理を行う工程と、前記タイヤに対して加工処理を行う工程と、走行試験装置の走行面上で前記タイヤを走行させる工程とを含む。前記加工処理として、前記タイヤのサイド部に切り込みが入れられる。前記切り込みを入れる位置は、前記タイヤに荷重をかけた時に前記タイヤのサイド部に生じる表面歪みが最大になる、最大表面歪みの位置である。前記走行試験装置の走行面に、前記タイヤの軸方向にのびる突起が設けられる。
本発明によれば、サイド部で発生する、傷やひび割れを起点とするクラックの発生を再現できる、タイヤ試験方法が得られる。
本発明の一実施形態に係るタイヤ試験方法で使用するタイヤの一例を示す断面図である。 本発明の一実施形態に係るタイヤ試験方法のフローを示す図である。 劣化工程を説明する図である。 加工工程でサイド部に入れる切り込みを説明する図である。 走行工程で用いる走行試験装置の概要を示す斜視図である。 切り込みを起点とするクラックを説明する図である。 走行面に設ける突起を説明する図である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
本発明においては、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけていない状態は、正規状態と称される。
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
本発明においてタイヤ各部の硬さは、JIS K6253の規定に準じて、23℃の温度条件下でタイプAデュロメータをタイヤのサイド部に押し当てて測定される。
[本発明の実施形態の概要]
[構成1]
本発明の一態様に係るタイヤ試験方法は、路面と接地するトレッド部と、リムに嵌め合わされる一対のビード部と、前記トレッド部と前記ビード部との間を架け渡す一対のサイド部とを備え、前記リムに組み内圧を調整して使用される、タイヤの試験方法であって、前記タイヤに対して劣化処理を行う工程と、前記タイヤに対して加工処理を行う工程と、走行試験装置の走行面上で前記タイヤを走行させる工程とを含み、前記加工処理として、前記タイヤのサイド部に切り込みが入れられ、前記切り込みを入れる位置が、前記タイヤに荷重をかけた時に前記タイヤのサイド部に生じる表面歪みが最大になる、最大表面歪みの位置であり、前記走行試験装置の走行面に、前記タイヤの軸方向にのびる突起が設けられる。
タイヤ試験方法をこのように整えることにより、走行時にタイヤのサイド部に生じる歪みは切り込みに集中する。切り込みを入れる位置が最大表面歪みの位置であるので、切り込みへの歪みの集中が促される。劣化処理が施されたタイヤに切り込みが入れられるので、切り込みを起点とするクラックの発生が促される。走行面に突起を設けることで、タイヤに生じる歪みが、突起を乗り越える際に瞬間的に増大する。瞬間的な歪みの増加を伴う変則的な歪みは、クラックの成長をさらに促す。
このタイヤ試験方法は、タイヤが、サイドウォールクラックの発生しやすいタイヤであれば、切り込みを起点とするクラックを発生させ、このクラックの成長を促すことができる。このタイヤ試験方法は、サイド部で発生する、傷やひび割れを起点とするクラックの発生を再現できる。
[構成2]
好ましくは、前述の[構成1]に記載のタイヤ試験方法は、前記劣化処理によって前記タイヤのサイド部の硬さを上昇させ、劣化処理後の前記サイド部の硬さが予め設定された範囲にある。
タイヤ試験方法をこのように整えることにより、実際に発生したクラックに近いクラックを再現できる見込みが高められる。
[構成3]
好ましくは、前述の[構成1]又は[構成2]に記載のタイヤ試験方法において、前記タイヤの最大表面歪みの位置が、前記タイヤの仕様と同じ仕様を有する別のタイヤで確認される、最大表面歪みの位置を参照して、設定される。
タイヤ試験方法をこのように整えることにより、最大表面歪みの位置特定のためにタイヤに荷重をかけることによる、クラックの再現性への影響が抑制される。このタイヤ試験方法は、クラックを正確に再現できる。
[構成4]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成3]のいずれかに記載のタイヤ試験方法において、前記タイヤの最大表面歪みの位置が、前記リムに組む前のタイヤを基準として得られる表面歪みに基づいて設定される。
タイヤ試験方法をこのように整えることにより、切り込みに効果的に歪みが集中する。切り込みを起点とするクラックの成長が促される。
[構成5]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成4]のいずれかに記載のタイヤ試験方法において、前記切り込みの長さが5mm以上20mm以下であり、前記切り込みの深さが0.1mm以上2.5mm以下である。
タイヤ試験方法をこのように整えることにより、突起がクラックの発生に効果的に貢献できる。
[構成6]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成5]のいずれかに記載のタイヤ試験方法において、前記突起の幅方向断面において、前記タイヤとの接触面が外向きに湾曲した形状を有する。
タイヤ試験方法をこのように整えることにより、トレッドの損傷の発生が抑制されるとともに、突起によって生じる瞬間的な歪みの増加が、切り込みを起点とするクラックの発生に効果的に貢献できる。
[本発明の実施形態の詳細]
[供試タイヤ]
図1は、本発明のタイヤ試験方法で使用する供試タイヤ2(以下、タイヤ2)の一例を示す。図1に示されたタイヤ2は、乗用車用空気入りタイヤである。
図1は、タイヤ2の回転軸(軸芯とも呼ばれる。)を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面(以下、子午線断面)を示す。図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
図1においてタイヤ2はリムRに組まれている。リムRは正規リムである。このタイヤ2は、リムRに組み、内圧を調整して使用される。
タイヤ2は、部位として、トレッド部T、一対のビード部B及び一対のサイド部Sを備える。トレッド部Tは路面と接地する。ビード部BはリムRに嵌め合わされる。サイド部Sはトレッド部Tとビード部Bとの間を架け渡す。
タイヤ2は、要素として、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のビード8、カーカス10、ベルト12及びインナーライナー14を備える。これら要素のうち、トレッド4及びサイドウォール6はタイヤ2の外面を構成し、インナーライナー14はタイヤ2の内面を構成する。
トレッド4はカーカス10の径方向外側に位置する。トレッド4の外周面が路面と接地する。トレッド4において路面と接地する部分はトレッド面4aとも呼ばれる。トレッド4は、架橋したゴム組成物(以下、ゴムとも呼ばれる。)からなる。トレッド4はトレッド部Tに含まれる。
それぞれのサイドウォール6はトレッド4の径方向内側に位置する。サイドウォール6はカーカス10の軸方向外側に位置する。サイドウォール6はゴムからなる。サイドウォール6はサイド部Sに含まれる。サイド部Sの外面はサイドウォール6の外面を含む。
それぞれのビード8はサイドウォール6の径方向内側に位置する。ビード8はコア16とエイペックス18とを備える。図示されないが、コア16はスチール製のワイヤを含む。エイペックス18はコア16の径方向外側に位置する。エイペックス18は径方向外向きに先細りである。エイペックス18は硬質なゴムからなる。ビード8はビード部Bに含まれる。
カーカス10は一対のビード8の間を架け渡す。カーカス10はトレッド4及びサイドウォール6の内側に位置する。カーカス10はカーカスプライ20を備える。カーカスプライ20はビード8で折り返される。図示されないが、カーカスプライ20は並列した多数のカーカスコードを含む。カーカス10は、トレッド部T、サイド部S及びビード部Bに含まれる。
ベルト12は径方向においてトレッド4とカーカス10との間に位置する。ベルト12はベルトプライ22を備える。図示されないが、ベルトプライ22は並列した多数のベルトコードを含む。ベルト12はトレッド部Tに含まれる。
インナーライナー14はカーカス10の内側に位置する。インナーライナー14は空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー14はタイヤ2の内圧を保持する。インナーライナー14は、トレッド部T、サイド部S及びビード部Bに含まれる。
[タイヤ試験方法]
図2は、本発明の一実施形態にかかるタイヤ試験方法のフローを示す。このタイヤ試験方法(以下、単に、試験方法とも呼ばれる。)は、リムRに組み、内圧を調整して使用される、タイヤ2の試験方法である。この試験方法は、劣化工程S1、加工工程S2、走行工程S3及び評価工程S4を含む。
この試験方法は、耐サイドウォールクラック性能の評価に用いられる。
サイドウォールクラックは、サイド部Sで発生するクラックである。このクラックは傷やひび割れを起点とする。傷は、縁石等との接触によりサイド部Sの表面につく傷を意味する。ひび割れは、サイド部Sの機械的疲労によって生じるひび割れを意味する。
劣化工程S1は、タイヤ2に対して劣化処理を行う工程である。
サイドウォールクラック(以下、単にクラックとも呼ばれる。)が発生したタイヤのサイド部は硬い傾向にある。劣化工程S1では、タイヤ2に劣化処理を施すことで、タイヤ2のサイド部Sの硬さが上昇させられる。
図3は、劣化処理の一例を示す。この劣化処理では、熱劣化を伴う処理が行われる。所定の温度に調整された、オーブン24の内部に設けられたテーブル26に所定時間、タイヤ2を載置することで、劣化処理が行われる。このオーブン24としては、例えば、空気循環式のオーブンが好適に用いられる。この劣化処理のための温度や時間は、再現対象であるクラックが実際に発生したタイヤの状態を考慮して適宜決められる。
劣化工程S1で行われる劣化処理は、熱劣化を伴う処理に限られない。例えば熱劣化とオゾン劣化(又は紫外線劣化)とを組み合わせた複合的な劣化を伴う処理が劣化処理として採用されてもよい。採用する劣化処理は、再現対象であるクラックが発生したタイヤの状態を考慮して適宜決められる。
加工工程S2は、劣化工程S1後のタイヤ2に対して加工処理を行う工程である。
図4(a)は加工処理後のタイヤ2の側面からサイド部Sを見た様子を示す。図4(b)は、図4(a)の4b-4b線に沿ったサイド部Sの断面である。
図4に示されるように、この試験方法では、加工処理として、タイヤ2のサイド部Sに切り込み28が入れられる。切り込み28は、その長さ方向が周方向にのびるように、カッターのような刃物(図示されず)を用いてサイド部Sに入れられる。
図示されないが、サイド部Sには複数の切り込み28が入れられる。複数の切り込み28は、周方向に間隔をあけてサイド部Sに刻まれる。サイド部Sに刻まれる切り込み28の数に特に制限はない。切り込み28の数は、切り込み28同士が干渉しない範囲で、適宜設定される。
図4において符号Lbで示される長さは切り込み28の長さである。符号Dbで示される長さは切り込み28の深さである。
この試験方法では、切り込み28の長さLbは好ましくは5mm以上20mm以下である。切り込み28の深さDbは好ましくは0.1mm以上2.5mm以下である。
走行工程S3は、加工工程S2後のタイヤ2を走行させる工程である。
走行工程S3では、走行試験装置が用いられる。図5は、走行工程S3で用いられる走行試験装置30の一例を示す。
走行試験装置30(以下、試験装置30)は、ドラム32、駆動ユニット34及び接地ユニット36を備える。
ドラム32は、タイヤ2が走行する走行面38と、中心軸40とを有する。中心軸40が回転することでドラム32は回転する。この試験装置30では、ドラム32の外周面が走行面38である。
駆動ユニット34は、ドラム32を回転駆動する。駆動ユニット34は、ドラム32の中心軸40を回転自在に支持するドラムホルダ42を備える。図示されないが、駆動ユニット34はモーターを備える。モーターがドラム32の中心軸40を回転駆動する。モーターの回転速度を制御することにより、ドラム32の回転速度、すなわち、走行面38を走行するタイヤ2の速度が調整される。
接地ユニット36は、タイヤ2を支持する。接地ユニット36は、ドラム32の走行面38に向けてタイヤ2を動かし、このタイヤ2を走行面38に接触させる。これにより、タイヤ2に荷重がかけられる。
接地ユニット36は、タイヤ軸44と、支持部46とを備える。
タイヤ軸44は、その一方の端が支持部46に支持される。タイヤ軸44は、ドラム32の中心軸40と平行に支持される。タイヤ軸44の他方の端には、リムRに組まれたタイヤ2が回転自在に取り付けられる。ドラム32の軸芯を含む仮想平面内にタイヤ2の軸芯が位置するように、タイヤ2は試験装置30にセットされる。
支持部46は、タイヤ軸44を支持する。支持部46は、タイヤ軸44をドラム32の径方向に移動させることができる移動機構(図示されず)を有する。支持部46は、タイヤ軸44をドラム32に向けて移動させることで、タイヤ2をドラム32の走行面38に押し当てることができる。タイヤ軸44の移動量を制御することにより、タイヤ2にかかる荷重が調整される。
支持部46は、ドラム32の中心軸40に対してタイヤ軸44がなす角度を調整できる角度調整機構(図示されず)を有する。詳述しないが、試験装置30は、ドラム32の中心軸40に対してタイヤ軸44を傾けることで、タイヤ2のスリップ角及びキャンバー角を調整できる。
前述したように、走行工程S3は、加工工程S2後のタイヤ2を走行させる工程である。走行工程S3では、前述の試験装置30が用いられる。試験装置30においてタイヤ2は、ドラム32の走行面38を走行する。この走行工程S3は、試験装置30の走行面38上でタイヤ2を走行させる工程である。
試験装置30が置かれる環境、言い換えれば、走行工程S3が行われる環境の雰囲気温度は、-35℃以上40℃以下の範囲の中から適宜設定される。雰囲気温度は、クラックが発生したタイヤの使用環境を考慮して設定されるのが好ましい。
走行工程S3では、加工工程S2を行ったタイヤ2がリムRに組まれる。前述したようにリムRは正規リムである。リムRが正規リムに対応する試験用リムであってもよい。
クラックの再現性の観点から、クラックの発生が確認されたタイヤが組まれたリムと同サイズのリム、又は、タイヤが依拠する規格において定められる適用リムのうち、最も狭いリム幅を有する適用リムが、リムRとして用いられるのが好ましい。
タイヤ2をリムRに組むと、タイヤ2の内部に空気が充填される。これによりタイヤ2の内圧が調整される。タイヤ2の内圧は、正規内圧の60%以上100%以下の範囲の中から適宜設定される。クラックの再現性の観点から、タイヤ2の内圧は、クラックの発生が確認されたタイヤの使用時の内圧と同じであるのが好ましい。
タイヤ2の内圧を調整後、タイヤ2を装着したリムRが試験装置30のタイヤ軸44に取り付けられる。タイヤ2を走行面38に押し当て、タイヤ2に荷重がかけられる。
タイヤ2にかける荷重は、正規荷重の60%以上100%以下の範囲の中から適宜設定される。クラックの再現性の観点から、タイヤ2にかける荷重は、クラックの発生が確認されたタイヤにかけられていた荷重と同じであるのが好ましい。
タイヤ2にかける荷重を調整した後、ドラム32を回転させてタイヤ2の走行が開始される。予め設定された速度で、タイヤ2は走行させられる。
この試験方法では、走行工程S3でのタイヤ2の速度は20km/h以上120km/h以下の範囲の中から適宜設定される。クラックが発生したタイヤと同じ仕様のタイヤにおいてクラックの発生を確認できた速度が、走行工程S3でのタイヤ2の速度として設定されるのが好ましい。
走行工程S3では、走行時間が予め設定された時間に達すると、タイヤ2の走行が停止される。走行距離が予め設定された距離に達した時点で、タイヤ2の走行が停止されてもよい。
この試験方法では、クラックが発生したタイヤと同じ仕様のタイヤにおいてクラックの発生を確認できる時間又は距離が、走行工程S3における走行時間又は走行距離として予め設定されるのが好ましい。
評価工程S4は、走行工程S3後のタイヤ2を評価する工程である。
評価工程S4では、切り込み28を起点とするクラックの発生の有無が確認される。クラックが発生していれば、クラックの形態が観察されるとともに、クラックの深さや長さが計測される。
図6は、切り込み28を起点とするクラックを説明する図である。図6(a)はタイヤ2の側面からサイド部Sを見た様子を示す。図6(b)は図6(a)の6b-6b線に沿ったサイド部Sの断面である。
図6において符号Laで示される長さはクラックの長さである。符号Daで示される長さはクラックの深さである。
クラックは、切り込み28を起点に、切り込み28の長さ方向そして深さ方向に拡がった隙間様の裂け目である。クラックの長さLaは切り込み28の長さLbよりも長く、深さDaは切り込み28の深さDbよりも深い。したがって、例えば、クラックの長さLaの、切り込み28の長さLbに対する比(La/Lb)及びクラックの深さDaの切り込み28の深さDbに対する比(Da/Db)から、クラックの成長率が把握できる。
評価工程S4では、このような知見に基づいて、例えば、サイドウォールクラックの発生に対する対策の有効性が評価される。
走行工程S3においてタイヤ2は走行面38を走行する。これにより、タイヤ2のサイド部Sには歪みが生じる。
前述したように、加工工程S2において、タイヤ2のサイド部Sに切り込み28が入れられる。走行時にタイヤ2のサイド部Sに生じる歪みは切り込み28に集中する。
特に、この試験方法では、サイド部Sに生じる歪みの発生状況を考慮して、切り込み28を入れる位置が決められる。具体的には、タイヤ2に荷重をかけた時にタイヤ2のサイド部Sに生じる表面歪みが最大になる、最大表面歪みの位置に、切り込み28が入れられる。切り込み28を入れる位置は最大表面歪みの位置である。そのため、切り込み28への歪みの集中が促される。
さらに劣化工程S1において劣化処理が施されたタイヤ2に、切り込み28が入れられる。切り込み28を起点とするクラックの発生が促される。
そして図5に示されるように、走行工程S3で使用する試験装置30の走行面38には、タイヤ2の軸方向にのびる突起48が設けられる。走行面38には複数の突起48が設けられてもよい。走行面38に設ける突起48の本数は適宜設定される。
図5に示された突起48は軸方向に長いが、これよりも短い突起(図示されず)が突起48として用いられてもよい。走行面38に設ける突起48の長さも適宜設定される。
走行工程S3において、走行面38を走行するタイヤ2はこの突起48を乗り越える。タイヤ2に生じる歪みが、突起48を乗り越える際に瞬間的に増大する。瞬間的な歪みの増加を伴う変則的な歪みが、クラックの成長をさらに促す。
ところで、突起48が設けられていない走行面では、切り込み28を起点とするクラックは発生しない場合がある。したがって、走行面38に設ける突起48が、クラックの成長を促すのは明らかである。
この試験方法は、タイヤ2が、サイドウォールクラックの発生しやすいタイヤであれば、切り込み28を起点とするクラックを発生させ、このクラックの成長を促すことができる。この試験方法は、サイド部Sで発生する、傷やひび割れを起点とするクラックの発生を再現できる。
タイヤ2が、サイドウォールクラックの発生しにくいタイヤであれば、切り込み28を設けてもクラックが発生しにくいので、この試験方法は、耐サイドウォールクラック性能の向上のために施した対策の有効性を把握できる。この試験方法は、評価工程S4においてクラックの深さを得ることで、エアリークの発生リスクの正確な把握も可能である。
前述したように、劣化工程S1では、劣化処理によって、タイヤ2のサイド部Sの硬さが上昇させられる。
劣化工程S1において調整されたサイド部Sの状態が、クラックが発生したタイヤのサイド部の劣化状態に近い状態にあれば、言い換えれば、劣化工程S1において、タイヤ2のサイド部Sの状態を、クラックが発生したタイヤのサイド部の硬さと同程度の硬さを有するように調整すれば、実際に発生したクラックに近いクラックを再現できる見込みが高まる。クラックの再現性を高める観点から、劣化工程S1の劣化処理によって、タイヤ2のサイド部Sの硬さを上昇させ、劣化処理後のサイド部Sの硬さが予め設定された範囲にあるのが好ましい。この場合、例えば、再現対象であるクラックが実際に発生したタイヤのサイド部の硬さをメジアンとする硬さの範囲が、劣化処理後のサイド部Sの硬さの範囲として予め設定されてもよい。再現対象であるクラックが実際に発生したタイヤのサイド部の硬さの変化率をメジアンとする硬さの変化率の範囲が、劣化処理後のサイド部Sの硬さの範囲として予め設定されてもよい。劣化処理後のサイド部Sの硬さの範囲をどのように設定するかは、再現対象となるクラックの発生状況を考慮して適宜決められる。
前述したように、切り込み28を入れる位置は、タイヤ2に荷重をかけた時にタイヤ2のサイド部Sに生じる表面歪みが最大になる、最大表面歪みの位置である。
詳述しないが、最大表面歪みの位置は、走行工程S3でタイヤ2にかける荷重と同じ荷重を別のタイヤにかけた場合に発生する表面歪みの測定結果に基づいて特定される。これに限らず、走行させているタイヤにおける最大表面歪みの位置が特定されてもよい。
前述したように、クラックを発生させるタイヤ2には、劣化工程S1において劣化処理が施される。そのため、劣化処理を施したタイヤ2で、最大表面歪みの位置を特定すると、最大表面歪みの位置特定のためにタイヤ2に荷重をかけることが、クラックの再現に影響する恐れがある。
そこで、クラックを正確に再現するとの観点から、クラックを発生させるタイヤ2の仕様と同じ仕様を有する別のタイヤで確認される、最大表面歪みの位置を参照して、タイヤ2の最大表面歪みの位置が設定されるのが好ましい。
タイヤの最大表面歪みの位置特定方法に、特に制限はなく、公知の特定方法が用いられる。例えば、特許第5731820号に記載の特定方法によって、タイヤの最大表面歪みの位置が特定される。本発明の最大表面歪みは、特許第5731820号における最大主歪に相当する。
特許第5731820号では、タイヤのサイド部表面の複数個所に標点となる印を付し、タイヤの変形前後の印間距離を比較することで表面歪みが測定される。
この試験方法では、走行工程S3においてリムRに組んだタイヤ2に荷重がかけられるが、この荷重をかける前後の印間距離を比較することで測定される表面歪みに基づいて、最大表面歪みの位置が特定されてもよい。タイヤ2をリムRに組む前の印間距離と、リムRに組んだタイヤ2に荷重をかけてタイヤ2を変形させた後の印間距離とを比較することで測定される表面歪みに基づいて、最大表面歪みの位置が特定されてもよい。
タイヤをリムに組む時タイヤには大きな歪みが生じる。タイヤをリムに組む時に生じる歪みは、リムに組んだタイヤに荷重を付加した時に生じる歪みよりも大きい傾向にある。
そのため、タイヤ2をリムRに組む前の印間の距離と、リムRに組んだタイヤ2に荷重をかけてタイヤ2を変形させた後の印間の距離とを比較することで測定される表面歪み、すなわち、リムRに組む前のタイヤ2を基準として得られる表面歪みに基づいて特定した最大表面歪みの位置に切り込み28を入れることで、切り込み28に効果的に歪みが集中する。歪みの集中は、切り込み28を起点とするクラックの成長を促す。
偏平比の呼びが55%以下である低偏平タイヤでは、高偏平のタイヤに比べてサイド部Sが短い。そのため、タイヤをリムに組む時に生じる歪みは、リムに組んだタイヤに荷重を付加した時に生じる歪みよりもかなり大きい。低偏平タイヤでは、リムRに組む前のタイヤ2を基準として得られる表面歪みに基づいて特定した最大表面歪みに切り込み28を入れることが、切り込み28を起点とするクラックの発生に効果的に貢献できる。この観点から、タイヤ2の最大表面歪みの位置は、リムRに組む前のタイヤ2を基準として得られる表面歪みに基づいて設定されるのが好ましい。
前述したように、走行面38に設けた突起48は、瞬間的な歪みの増加を伴う変則的な歪みの発生に貢献し、この変則的な歪みがクラックの成長を促す。
図7は突起48の幅方向断面を示す。突起48はその下面50がドラム32と対向するように、このドラム32にセットされる。この突起48の上面52がタイヤ2と接触する。この上面52は、タイヤ2との接触面である。図7に示されるように、突起48の幅方向断面において、接触面52は外向きに湾曲した形状を有する。これにより、トレッド4の損傷の発生が抑制されるとともに、突起48によって生じる瞬間的な歪みの増加が、切り込み28を起点とするクラックの発生に効果的に貢献できる。この観点から、突起48の幅方向断面において、接触面52は外向きに湾曲した形状を有するのが好ましい。
図7において符号Hで示される長さは突起48の高さである。符号Wで示される長さは、突起48の幅である。突起48がクラックの発生に効果的に貢献できる観点から、突起48の高さHは0.5cm以上10cm以下であるのが好ましい。同様の観点から、突起48の幅Wは、1cm以上20cm以下であるのが好ましい。突起48がクラックの発生により効果的に貢献できる観点から、突起48の高さHが0.5cm以上10cm以下であり、突起48の幅Wが1cm以上20cm以下であるのがより好ましい。
以上説明したように、本発明によれば、サイド部で発生する、傷やひび割れを起点とするクラックの発生を再現できる、タイヤ試験方法が得られる。
なお、上述の説明では、タイヤを正規リムに組んだ例を説明したが、タイヤを組むリムが、正規リムに限らず、適用リム(タイヤの性能を有効に発揮させるために適したリム)であっても構わない。とくに適用リムの中でも最狭幅のリムに組んで評価することが、タイヤの走行状態をより実際の走行形態に合わせることに寄与しうる。
以上説明された、傷やひび割れを起点とするクラックの発生を再現できる、タイヤ試験方法は、種々のタイヤに適用できる。
2・・・供試タイヤ(タイヤ)
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
10・・・カーカス
20・・・カーカスプライ
28・・・切り込み
30・・・走行試験装置
32・・・ドラム
38・・・走行面
48・・・突起
52・・・接触面

Claims (6)

  1. 路面と接地するトレッド部と、リムに嵌め合わされる一対のビード部と、前記トレッド部と前記ビード部との間を架け渡す一対のサイド部とを備え、前記リムに組み内圧を調整して使用される、タイヤの試験方法であって、
    前記タイヤに対して劣化処理を行う工程と、
    前記タイヤに対して加工処理を行う工程と、
    走行試験装置の走行面上で前記タイヤを走行させる工程と
    を含み、
    前記加工処理として、前記タイヤのサイド部に切り込みが入れられ、
    前記切り込みを入れる位置が、前記タイヤに荷重をかけた時に前記タイヤのサイド部に生じる表面歪みが最大になる、最大表面歪みの位置であり、
    前記走行試験装置の走行面に、前記タイヤの軸方向にのびる突起が設けられる、
    タイヤ試験方法。
  2. 前記劣化処理によって前記タイヤのサイド部の硬さを上昇させ、
    劣化処理後の前記サイド部の硬さが予め設定された範囲にある、
    請求項1に記載のタイヤ試験方法。
  3. 前記タイヤの最大表面歪みの位置が、前記タイヤの仕様と同じ仕様を有する別のタイヤで確認される、最大表面歪みの位置を参照して、設定される、
    請求項1又は2に記載のタイヤ試験方法。
  4. 前記タイヤの最大表面歪みの位置が、前記リムに組む前のタイヤを基準として得られる表面歪みに基づいて設定される、
    請求項3に記載のタイヤ試験方法。
  5. 前記切り込みの長さが5mm以上20mm以下であり、前記切り込みの深さが0.1mm以上2.5mm以下である、
    請求項1又は2に記載のタイヤ試験方法。
  6. 前記突起の幅方向断面において、前記タイヤとの接触面が外向きに湾曲した形状を有する、
    請求項1又は2に記載のタイヤ試験方法。
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