JP2024057495A - 電池用表面処理金属板 - Google Patents

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Abstract

【課題】ガス発生の抑制効果に優れた電池用表面処理金属板を提供すること。【解決手段】電池用表面処理金属板であって、金属基材と、前記金属基材の少なくとも片面に設けられたニッケル層と、前記ニッケル層の上層に設けられた錫層と、を備え、前記錫層について、下記(1)式または下記(2)式の少なくともいずれか一方が1を超えることを満たす電池用表面処理金属板を提供する。N(220)/N(200)> (1)N(220)/N(400)> (2)上記(1)式および(2)式中、N(220)は前記錫層の(220)面の結晶配向指数を表し、上記(1)式中、N(200)は前記錫層の(200)面の結晶配向指数を表し、上記(2)式中、N(400)は前記錫層の(400)面の結晶配向指数を表す。【選択図】図1

Description

本発明は、ガス発生の抑制効果に優れた電池用表面処理金属板に関する。
電解液がアルカリ水溶液からなる、いわゆるアルカリ電池の二次電池の種類としては、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池などが実用化され、広く知られている。また、アルカリ二次電池においては、空気電池や、正極に水酸化ニッケル等、負極活物質に亜鉛等を用い、電解液にアルカリ水溶液を用いるニッケル亜鉛電池が知られている。
二次電池としての空気亜鉛電池やニッケル亜鉛電池の実用化への課題の一つとして、充放電時(自然放電含む)における水素ガス発生の問題があった。水素ガス発生が生じ、その発生量が多くなりすぎると、電池性能の低下や、内圧上昇を引き起こし、電池の漏液につながるおそれがある。これらの問題は、特に電池反応に亜鉛が関与する電池において、顕著に生じうる。
上述のような水素ガス発生の問題は、負極集電体に水素過電圧の高い材料を適用することにより解決可能であることは、従来知られている。たとえば、特許文献1では、負極の集電体の材料として銅と錫の合金を用いることにより水素過電圧を高くして、上記のような水素ガス発生の問題を解決しようとしている。
特開平2-75160号公報
しかしながら、上記した特許文献1に記載の技術で、実用的なアルカリ二次電池に用いる場合、ガス発生の抑制効果としては不十分であった。すなわち、アルカリ二次電池として十分な電池性能を発揮するためには、電解液中の水酸化カリウムの濃度が、20重量%以上であることが好ましく、より高性能とするためには25~40重量%とすることが望まれる。そのため、上記したような高濃度の電解液環境下において、ガス発生の抑制効果がより優れた材料が望まれる。
上記課題に鑑み、本発明者らは、アルカリ二次電池の充放電時におけるガス発生の抑制効果がより優れた、負極の集電体材料、電池タブ・リード材料や電池容器(電池外装材料)となる電池用表面処理金属板を開発すべく、鋭意検討した。その結果、電池用表面処理金属板を、特定の構成とすることにより、上記した課題を解決させることが可能であることを見出し、本発明に想到したものである。
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、金属基材と、金属基材の少なくとも片面に設けられたニッケル層と、ニッケル層の上層に設けられた錫層と、を備える電池用表面処理金属板によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
[1]本発明の態様1は、電池用表面処理金属板であって、金属基材と、前記金属基材の少なくとも片面に設けられたニッケル層と、前記ニッケル層の上層に設けられた錫層と、を備え、前記錫層について、下記(1)式または下記(2)式の少なくともいずれか一方が1を超えることを満たす電池用表面処理金属板である。
N(220)/N(200) (1)
N(220)/N(400) (2)
上記(1)式および(2)式中、N(220)は前記錫層の(220)面の結晶配向指数を表し、上記(1)式中、N(200)は前記錫層の(200)面の結晶配向指数を表し、上記(2)式中、N(400)は前記錫層の(400)面の結晶配向指数を表す。
[2]本発明の態様2は、態様1の電池用表面処理金属板において、前記ニッケル層と前記錫層との間に形成されたニッケル-錫合金層をさらに備える電池用表面処理金属板である。
[3]本発明の態様3は、態様1または2の電池用表面処理金属板において、前記金属基材が、鉄を基とする金属基材である電池用表面処理金属板である。
[4]本発明の態様4は、態様1~3のいずれかの電池用表面処理金属板において、前記ニッケル層中のニッケル付着量が1.0g/m超、20.0g/m以下である電池用表面処理金属板である。
[5]本発明の態様5は、態様1~4のいずれかの電池用表面処理金属板において、前記錫層中の錫付着量が1.0g/m以上、15.0g/m以下である電池用表面処理金属板である。
[6]本発明の態様6は、態様1~5のいずれかの電池用表面処理金属板において、前記(1)式または前記(2)式の少なくともいずれか一方が2以上を満たす電池用表面処理金属板である。
[7]本発明の態様7は、態様2の電池用表面処理金属板において、前記ニッケル-錫合金層において、合金相として、CuKαを線源とするX線回折測定による回折角2θ=42~43°の範囲に回折ピークが得られる電池用表面処理金属板である。
本発明によれば、ガス発生の抑制効果に優れた電池用表面処理金属板を提供することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る電池用表面処理金属板の断面図である。 図2は、本発明の別の実施形態に係る電池用表面処理金属板の断面図である。 図3Aは、錫層の(200)面の回折ピークを示すX線回折(XRD)チャートである。 図3Bは、錫層の(220)面の回折ピークを示すX線回折(XRD)チャートである。 図3Cは、錫層の(400)面の回折ピークを示すX線回折(XRD)チャートである。 図4は、ニッケル-錫合金層を構成する合金相のX線回折チャートである。
本発明の電池用表面処理金属板は、電池用途に用いられる表面処理金属板であり、たとえば、正極用または負極用の集電体用途や、電池の発電要素を収容するための電池容器用途などに用いられる。電池としては、特に限定されないが、アルカリ電解液を用いた、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、空気亜鉛電池、ニッケル亜鉛電池などの水系電池や、リチウムイオン電池などの非水系電池などが挙げられるが、本発明の電池用表面処理金属板は、水系電池に好適に用いられ、水系電池の中でも特に、電池反応に亜鉛が関与する水系電池(例えばニッケル亜鉛電池など)を構成するための集電体用途や、電池容器用途として好適に用いられる。なお、本発明は水系電池であれば一次電池または二次電池のどちらでも適用することが可能である。
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電池用表面処理金属板10の断面図である。本実施形態に係る電池用表面処理金属板10は、図1に示すように、金属基材20の両面に設けられたニッケル層30と、ニッケル層30の上層に設けられた錫層40と、を備えている。
また、図1には、金属基材20の両面に、ニッケル層30および錫層40が形成された態様を例示したが、本実施形態においては、金属基材20の少なくとも一方の面に、ニッケル層30および錫層40が形成されたものであればよく、金属基材20の両面にニッケル層30および錫層40が形成されたものに特に限定されるものではない。また、本実施形態において、ニッケル層30および錫層40は、ガス発生抑制が要求される面に形成すればよい。たとえば、本実施形態に係る電池用表面処理金属板10を、正極または負極の集電体用途(たとえば、ニッケル亜鉛電池の負極の集電体用途として用いる場合)やリード材、タブ材として用いる場合には、金属基材20の両面に、ニッケル層30および錫層40が形成された態様とすることができる。また、本実施形態に係る電池用表面処理金属板10を、容器または電極缶といった電池容器用途として用いる場合には、金属基材20のうち、電池内面側となる面に、ニッケル層30および錫層40が形成された態様とすることができ、特に電池内面側が負極電位にさらされるような構造の場合には、ニッケル層30および錫層40が形成された態様とすることが望ましい。また、電池外面側となる面については、特に限定されないが、表面処理を行っていないものとすることもできる。
<金属基材20>
金属基材20としては、鉄を基とする金属板が好適に用いられる。特に限定されないが、具体的には、たとえば、低炭素鋼(炭素量0.01~0.15重量%)や、炭素量が0.003重量%以下の極低炭素鋼、極低炭素鋼にTiやNbなどを添加してなる非時効性極低炭素鋼などの鋼板などを用いることができ、これらのなかでも、低炭素鋼、極低炭素鋼を好適に用いることができる。また、金属基材20としては、純鉄からなる電解箔(鉄の含有率が、99.9重量%以上である電解箔)などが挙げられる。また、本実施形態に係る電池用表面処理金属板10を、正極または負極の集電体用途として用いる場合には、金属基材20は、貫通孔を有する有孔板あるいは有孔箔であってもよい。
金属基材20の厚みは、特に限定されないが、たとえば、集電体用途として用いる場合には、好ましくは0.005~2.0mmであり、より好ましくは0.01~0.8mm、さらに好ましくは0.025~0.8mm、特に好ましくは0.025~0.3mmである。また、電池容器用途として用いる場合には、好ましくは0.1~2.0mmであり、より好ましくは0.15~0.8mm、さらに好ましくは0.15~0.5mmである。なお、金属基材20の厚みの測定方法は、マイクロメーターでの厚み測定等が挙げられるが、これに限られるものではない。
<ニッケル層30>
本実施形態に係る電池用表面処理金属板10は、図1に示すように、金属基材20の両面に形成されたニッケル層30を備えている。本実施形態では、金属基材20の両面にニッケル層30が形成されているが、特にこのような態様に限定されず、金属基材20の少なくとも片面にニッケル層30が形成されていればよい。なお、ニッケル層30の有無については、CuKαを線源とするX線回折(XRD)測定により確認することができる。
ニッケル層30中のニッケル付着量は、好ましくは0.5g/m超、20.0g/m以下であり、より好ましくは1.0g/m超、15.0g/m以下であり、さらに好ましくは2.0g/m超、10.0g/m以下であり、特に好ましくは3.0g/m超、10.0g/m以下である。ニッケル付着量は、電池用表面処理金属板10について蛍光X線測定やICP発光分光分析を行うことで求めることができる。なお、上記のニッケル付着量は、金属基材20の片面における付着量を表す。
また、ニッケル層30の厚みは、好ましくは0.05~2.00μm、より好ましくは0.10~1.50μm、さらに好ましくは0.20~1.20μm、特に好ましくは0.30~1.00μmである。なおニッケル層30の厚みは、上記の方法で求めたニッケル付着量をニッケルの密度(g/m)に基づいて厚みに換算する(ニッケル付着量を密度で除する)ことにより求めることができるが、これに限られるものではなく、走査型電子顕微鏡(SEM)の断面観察による厚み測定、透過型電子顕微鏡(TEM)による厚み測定、高周波グロー放電発光分光分析装置による測定等が適用可能である。
ニッケル層30の形成方法としては、特に限定されないが、ニッケルめっき浴を用いて、金属基材20に対して、ニッケルめっきを行う方法が好適である。ニッケルめっき浴としては、ニッケルめっきで通常用いられているめっき浴、すなわち、ワット浴や、スルファミン酸浴、ほうフッ化物浴、塩化物浴などを用いることができる。たとえば、ニッケル層は、ワット浴として、硫酸ニッケル200~350g/L、塩化ニッケル20~60g/L、ほう酸10~50g/Lの浴組成のものを用い、pH3.0~4.8(好ましくはpH3.6~4.6)、浴温50~70℃にて、電流密度10~40A/dm(好ましくは20~30A/dm)の条件で形成することができる。また、公知の光沢剤などの添加物をめっき浴に添加して、光沢ニッケルめっき又は半光沢ニッケルめっきとしてもよい。
<錫層40>
本実施形態に係る電池用表面処理金属板10は、図1に示すように、ニッケル層30の上層に形成された錫層40を備えている。錫層40は、ニッケル層30の上に錫めっきを施すことにより形成することができる。なお、錫層40の有無については、上述したニッケル層30と同様に、CuKαを線源とするX線回折(XRD)測定により確認することができる。
錫層40は、(220)面、(200)面、および(400)面の結晶配向指数に関する下記(1)式または下記(2)式の少なくともいずれか一方が1を超えることを満たすものである。なお、下記(1)式および下記(2)式の両方が1を超えることを満たしていることがより好ましい。
N(220)/N(200) (1)
N(220)/N(400) (2)
上記(1)式および(2)式中、N(220)は錫層40の(220)面の結晶配向指数を表し、上記(1)式中、N(200)は錫層40の(200)面の結晶配向指数を表し、上記(2)式中、N(400)は錫層40の(400)面の結晶配向指数を表す。
錫層40の(220)面、(200)面、および(400)面の結晶配向指数は、上記(1)式または上記(2)式の少なくともいずれか一方が1を超えることを満たしていれば特に限定されないが、ガス発生の抑制効果をより高めるためには、上記(1)式または上記(2)式の少なくともいずれか一方が、好ましくは2以上であり、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは10以上である。また、ガス発生の抑制効果をより顕著に高めるためには、上記(1)式および上記(2)式の両方が、好ましくは2以上であり、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは10以上である。なお上記(1)式または上記(2)式の上限は、特に限定されないが、通常300以下であり、好ましくは200以下である。
なお、上述した(1)式(N(220)/N(200))は、錫層40の(220)面と錫層40の(200)面の結晶配向指数の比を意味しており、また(2)式(N(220)/N(400))は、錫層40の(220)面と錫層40の(400)面の結晶配向指数の比を意味する。
錫層40の(220)面の結晶配向指数(N(220))は、次のような方法により求めることができる。すなわち、X線回折装置により錫層40の表面における各結晶面の回折強度を測定した後、得られた錫の回折ピークと標準錫粉末の回折ピークを利用して、WillsonとRogersの方法(「K.S.Willson and J.A.Rogers;Tech. Proceeding Amer. Electroplaters Soc., 51,92(1964)」に記載された方法)にて、以下のようにして算出することができる。
N(220)=IF(220)/IFR(220)
上記式中、IF(220)は、(220)面からのX線回折強度比であり、IFR(220)は、標準錫粉末の理論X線回折強度比である。IF(220)及びIFR(220)はそれぞれ以下のようにして求めることができる。
IF(220)=I(220)/[I(200)+I(101)+I(220)+I(301)+I(112)+I(400)+I(321)+I(420)+I(411)+I(312)+I(501)]
IFR(220)=IR(220)/[IR(200)+IR(101)+IR(220)+IR(301)+IR(112)+IR(400)+IR(321)+IR(420)+IR(411)+IR(312)+IR(501)]
上記式中、I(hkl)は、(hkl)面からのX線回折強度であり、IR(hkl)は、標準錫粉末のICDD PDF-2 2014のデータベースの00-004-0673に記載されている(hkl)面からのX線回折強度である(h,k,lはそれぞれ0~5の整数である)。なお、錫の各結晶面の回折角については、上述のデータベースに記載されているものを用いる。
錫層40の(200)面の結晶配向指数(N(200))および(400)面の結晶配向指数(N(400))は、(220)面の結晶配向指数と同様の算出方法で求めることができる。すなわち、(200)面の結晶配向指数、および(400)面の結晶配向指数は、下記式に基づいて算出することができる。
N(200)=IF(200)/IFR(200)
N(400)=IF(400)/IFR(400)
本実施形態において、上記構成を有することが望ましい理由は以下の通りである。
すなわち上述したように、アルカリ二次電池の実用化への課題として、水素ガス発生の問題がある。水素ガスは例えば、電池の内部において異種金属間で局部電池が形成されることに起因して、電池反応以外の化学反応(自己放電)が起こる条件において、水素ガス発生の反応条件が満たされた場合に生じる。例えばニッケル亜鉛電池においては、充電時には亜鉛または酸化亜鉛などが存在し、放電時には当該亜鉛が溶解するが、亜鉛は水系電池に使用される金属の中でも電位が低い金属の一つであるため、電池に使用される他の金属との間で局部電池状態となったときの放電量が多く、水素ガス発生条件を満たしやすい。
水素ガス発生が多く生じた場合、電池性能の低下や、漏液の問題に繋がる。具体的には、自己放電により水素ガス発生が起こった場合には、電池反応に寄与すべき電子が水素ガス発生により消費されてしまうため電池性能の低下につながる。そして、水素ガスの生成量が多くなるほど、電池性能としてはより低下してしまう。また、漏液は内圧上昇に起因して生じるおそれがあり、安全性の低下につながる。なお、ここでいう自己放電とは、充電・放電時の副反応(水素ガス発生プロセスを含む化学反応)および、充放電時以外、つまり自然放置状態で起こる化学反応の両方を含む。
このような電池性能の低下や漏液の問題を回避するため、水素ガス発生量は極力抑制する必要がある。特に集電体材料は、その表面に、電解液中の亜鉛等が析出し直接接触することとなるため水素ガスがより発生しやすい部材であり、また自己放電が起こりやすい部材である。この水素ガス発生を低減するための方法の一つとして、水素過電圧の高い材料を適用することが知られており、本実施形態において、錫層40中の錫(Sn)は水素過電圧の高い材料といえる。しかしながら、水素過電圧の高い錫(Sn)を用いた場合でも、錫層の結晶配向状態によって、水素ガス発生の抑制効果に優劣があることを確認した。
そのため本発明者らは、上述した水素ガス発生の抑制効果をより高めた材料を鋭意検討し、実験を繰り返す中で、錫層40の(220)面、(200)面、および(400)面の結晶配向指数を、上述した(1)式または(2)式の少なくともいずれか一方が1を超えることを満たすよう制御することにより、水素ガス発生の抑制効果が優れることを見出したものである。なお、ニッケル層30の上層に錫層40を形成することにより、錫層40の結晶配向指数を制御しやすく、またアルカリ二次電池に適用される電解液の種類によって、錫層40の一部に溶解が生じた場合、ニッケル層30が形成されているため、金属基材20の電解液中への溶出を抑制することが可能である。
錫層40の(200)面、(220)面、および(400)面の結晶配向指数において、上述した(1)式または(2)式の少なくともいずれか一方が1を超えることを満たすよう制御することにより、錫層40を構成する錫めっきの均一性を向上することができ、これにより、充放電時におけるガス発生の抑制を図ることができる。一方、(200)面または(400)面の結晶配向指数が大きく、上記(1)式および上記(2)式のいずれも満たさない場合には、錫めっきが不均一なものとなり、ニッケル層30の一部が錫層40から露出し、充放電時にガスが発生しやすくなる傾向にある。
錫層40中の錫付着量は、好ましくは1.0~15.0g/mであり、より好ましくは2.0~15.0g/mであり、さらに好ましくは2.0~13.0g/mであり、特に好ましくは3.0~13.0g/mである。錫層40中の錫付着量を上記範囲内とすることにより、充放電時のガス発生を有効に抑制にすることができる。錫付着量は、電池用表面処理金属板10について蛍光X線測定やICP発光分光分析を行うことで求めることができる。なお、上記の錫付着量は、金属基材20の片面における付着量を表す。
錫層40の厚みの下限は、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.10μm以上、さらに好ましくは0.20μm以上、特に好ましくは0.50μm以上である。錫層40の厚みが小さすぎると、錫層40の結晶配向指数を適切に制御することができず、ガス発生が顕著となる傾向にある。また錫層40の厚みの上限は、特に限定されないが、好ましくは2.0μm以下、より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下である。なお、錫層40の厚みは、上記の方法で求めた錫付着量を錫の密度(g/m)に基づいて厚みに換算する(錫付着量を密度で除する)ことにより求めることができるが、これに限られるものではなく、走査型電子顕微鏡(SEM)の断面観察による厚み測定、透過型電子顕微鏡(TEM)による厚み測定、高周波グロー放電発光分光分析装置による測定等が適用可能である。
錫層40の(220)面、(200)面、および(400)面の結晶配向指数において、上述した(1)式または(2)式の少なくともいずれか一方が1を超えることを満たすように制御する方法としては、特に限定されないが、たとえば、錫層40の形成に用いる錫めっき浴に微量のニッケルを添加する方法、錫めっき浴に添加剤を加える方法、およびこれらを組み合わせる方法などが挙げられる。
錫層40の形成に用いる錫めっき浴としては、フェロスタン浴、MSA浴、ハロゲン浴、硫酸浴などに、上述した微量のニッケルおよび/または添加剤をさらに含有したものを用いることができる。このうち、硫酸浴を用いることが好ましく、錫イオン10~60g/L、硫酸25~110mL/Lの浴組成のものに、上述した微量のニッケルおよび/または添加剤をさらに含有したものが好ましい。また、錫イオン10~60g/L、硫酸25~60mL/Lの浴組成のものに、上述した微量のニッケルおよび/または添加剤をさらに含有したものが特に好ましい。
錫めっき浴に微量のニッケルを添加する方法におけるニッケルの添加量は、好ましくは10~200重量ppmであり、より好ましくは10~100重量ppmであり、特に好ましくは20~100重量ppmである。
錫めっき浴に添加する添加剤としては、エトキシ化ナフトール、エトキシ化ナフトールスルホン酸、などが挙げられる。市販品としては、テクニックジャパン社製テクニスタンTPアディティブ、石原ケミカル社製UTB 230Rなどが挙げられる。このうち、テクニックジャパン社製テクニスタンTPアディティブを用いることが好ましく、錫めっき浴への添加量としては、好ましくは10~100mL/Lであり、より好ましくは40~100mL/Lである。
錫層40を形成する際のめっき条件のうち、電流密度は、好ましくは1.0~30.0A/dmであり、より好ましくは2.0~15.0A/dmであり、特に好ましくは4.0~15.0A/dmである。また、めっき浴の温度は、好ましくは25~60℃であり、より好ましくは35~55℃である。
<ニッケル-錫合金層50>
図2は、本発明の別の実施形態に係る電池用表面処理金属板の断面図である。
本実施形態に係る電池用表面処理金属板10aは、図2に示すように、上述したニッケル層30と錫層40の間に、ニッケル-錫合金層50をさらに備えるものであってもよい。ニッケル-錫合金層50を備えたものとすることにより、電解液への浸漬による錫層40の溶解が生じた場合であっても、ニッケル-錫合金層50が形成されているため、ガス発生の抑制と耐電解液性の両方に優れたものとすることができる。
ニッケル-錫合金層50は、特に限定されないが、合金相として、CuKαを線源とするX線回折測定による、回折角2θ=42~43°の範囲に回折ピークが得られるニッケル-錫合金(以下、このニッケル-錫合金を「Ni-Sn42-43」とする)を含有することが好ましい。ニッケル-錫合金層50中に、Ni-Sn42-43を含有するよう制御することにより、ニッケル-錫合金層50の上層に形成されている錫層40における錫の結晶配向状態を維持し易い。また、ニッケル-錫合金層50の表面における錫(Sn)の含有率を高めることを可能とし、ガス発生の抑制効果と耐電解液性の両方に優れた電池用表面処理金属板10aとすることができる。なお、回折角2θ=42~43°の範囲における回折ピークは、純ニッケル、純錫、純鉄の回折ピークとは異なることを確認した。
ニッケル-錫合金層50の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.05~2.00μm、より好ましくは0.05~1.50μm、さらに好ましくは0.10~1.00μmである。ニッケル-錫合金層50の厚みを上記範囲とすることにより、ガス発生の抑制効果および耐電解液性をより高めることができる。ニッケル-錫合金層50の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)の断面観察による厚み測定、高周波グロー放電発光分光分析装置による測定等により求めることができる。
電池用表面処理金属板10aにおいて、ニッケル-錫合金層50に含まれるニッケルと、ニッケル層30に含まれるニッケルの合計付着量が、好ましくは1.0g/m超、20.0g/m以下であり、より好ましくは1.5g/m超、15.0g/m以下であり、さらに好ましくは2.0g/m超、10.0g/m以下であり、特に好ましくは3.0g/m超、10.0g/m以下である。また、ニッケル-錫合金層50に含まれる錫と、錫層40に含まれる錫の合計付着量においては、好ましくは1.0~15.0g/mであり、より好ましくは2.0~15.0g/mであり、さらに好ましくは2.0~13.0g/mであり、特に好ましくは3.0~13.0g/mである。
なお、電池用表面処理金属板10aにおける、ニッケル層30の厚みや錫層40の厚みについては、上述した電池用表面処理金属板10と同様の範囲である。
ニッケル-錫合金層50の形成方法は、特に限定されないが、金属基材20上に、上述した方法でニッケル層30を形成し、次いで、(220)面、(200)面、および(400)面の結晶配向指数を制御した錫層40をこの順に形成することにより、ニッケル層30と、錫層40との界面において拡散を起こさせ、ニッケル-錫合金層50を形成することができる。特に、上述した(1)式または(2)式の少なくともいずれか一方が1を超えることを満たすよう制御することで、ニッケル-錫合金層50を形成することが可能である。
なお、ニッケル-錫合金層50の形成をより促進させるためには、常温拡散処理を用いることが好ましい。常温拡散処理を行う際における処理温度は、特に限定されないが、好ましくは0℃以上~50℃未満であり、処理時間(経時期間)は、特に限定されないが、好ましくは5日以上、より好ましくは7日以上、さらに好ましくは10日以上、特に好ましくは30日以上であればよい。常温拡散処理を行うことにより、ニッケル-錫合金層50を、合金相として、Ni-Sn42-43を主として含有するものとするものとすることができる。
また、本発明の実施形態に係る電池用表面処理金属板10,10aは、ニッケル層30の下層として、鉄-ニッケル拡散層をさらに備えていてもよい。図1に示す電池用表面処理金属板10の態様においては、金属基材20上にニッケル層30を形成し、熱処理を行うことで鉄-ニッケル拡散層を形成した後、ニッケル層30の上層に錫層40を形成することで、ニッケル層30および錫層40に加え鉄-ニッケル拡散層を備える構造を得ることができる。また、図2に示す電池用表面処理金属板10aの態様では、金属基材20上にニッケル層30を形成し、熱処理を行うことで鉄-ニッケル拡散層を形成した後、ニッケル層30の上層に錫層40を形成し、さらに常温拡散処理を行うことで、ニッケル層30、ニッケル-錫合金層50、および錫層40に加え、鉄-ニッケル拡散層を備える構造を得ることができる。なお、鉄-ニッケル拡散層を形成する方法として、ニッケル層30の上層に錫層40を形成した後、熱処理を行うことで鉄-ニッケル拡散層を形成する方法も考えられるが、この方法は、錫層40の結晶配向状態の制御が困難であり、且つNi-Sn42-43を含有するニッケル-錫合金層50が得られないため好ましくない。そのため、上述のようにニッケル層30を形成し、熱処理を行うことで鉄-ニッケル拡散層を形成した後、ニッケル層30の上層に錫層40を形成した構成や、鉄-ニッケル拡散層を形成した後、ニッケル層30の上層に錫層40を形成し、次いでニッケル層30と錫層40の間にニッケル-錫合金層50を形成した構成とすることが好ましい。
鉄-ニッケル拡散層を形成するための熱処理条件としては、特に限定されないが、箱型焼鈍により熱処理を行う場合には、熱処理温度を、好ましくは400℃越え~600℃以下、より好ましくは450℃以上~600℃以下とし、均熱時間を、好ましくは0.5~8時間とすればよい。また、連続焼鈍により熱処理を行う場合には、熱処理温度を、好ましくは600℃以上~900℃以下、より好ましくは600℃以上~800℃以下とし、熱処理時間を、好ましくは3~120秒とすればよい。
本実施形態に係る電池用表面処理金属板10は、金属基材20と、金属基材20の少なくとも片面に形成されたニッケル層30と、ニッケル層30の上層として形成された錫層40と、を備えてなるものであり、錫層40の結晶配向指数において、上記(1)式または上記(2)式の少なくともいずれか一方が1を超えることを満たすものであり、優れたガス発生の抑制効果を発揮することが可能である。また、ニッケル層30と錫層40の間に、ニッケル-錫合金層50をさらに備えている電池用表面処理金属板10aの場合、ガス発生の抑制効果および耐電解液性を発揮するものである。そのため、本発明の実施形態に係る電池用表面処理金属板10、10aは、このような特性を活かし、正極または負極の集電体や電池容器として、好ましく用いることができ、特に、アルカリ電解液を使用したアルカリ二次電池における、集電体や電池容器として、より好ましく用いることができ、とりわけ、ニッケル亜鉛電池における、集電体や電池容器として、特に好ましく用いることができる。
以下に、実施例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
なお、各特性の評価方法は、以下のとおりである。
<ニッケル付着量、錫の付着量の測定>
各実施例、比較例において得られた表面処理金属板10、10aについて、ニッケル付着量、および錫付着量を、蛍光X線(XRF)測定を用いて検量線法により定量した。蛍光X線装置は、リガク社製、ZSX100eを用いた。蛍光X線測定においては表面処理金属板の、ニッケル層30、ニッケル-錫合金層50、錫層40の各層に含まれる金属元素の検量線法による定量が可能であることを確認した。
<X線回折(XRD)測定(ニッケル層30および錫層40の有無)>
各実施例、比較例において得られた電池用表面処理金属板10、10aについて、X線回折(XRD)測定を行うことで、ニッケル層30および錫層40の有無を確認した。X線回折測定装置としては、リガク社製 SmartLabを用い、得られた電池用表面処理金属板を30mm×30mmに切断したものを測定サンプルとした。なお、X線回折(XRD)測定の具体的な測定条件は以下の通りとした。
(装置構成)
・X線源:CuKα
・ゴニオメータ半径:300nm
・光学系:集中法
(入射側スリット系)
・ソーラースリット:5°
・長手制限スリット:5mm
・発散スリット:1/2°
(受光側スリット系)
・散乱スリット:1/2°
・ソーラースリット:5°
・受光スリット:0.3mm
・単色化法:カウンターモノクロメーター法
・検出器:シンチレーションカウンタ
(測定パラメータ)
・管電圧-管電流:45kV 200mA
・走査軸:2θ/θ
・走査モード:連続
・測定範囲:2θ 30~100°
・走査速度:10°/n
・ステップ:0.05°
なお、得られたピーク強度値に対しては、リガク社製 統合粉末X線解析ソフトウェア PDXLを用いてバックグラウンド除去を行い、データ解析を行った。ニッケル層30および錫層40の有無の確認方法については、ニッケルの回折ピークおよび錫の回折ピークの有無に基づき判断した。ニッケルの回折ピークは、回折角2θ=51~53°に現れる(200)面のピーク、回折角2θ=76~77°に現れる(220)面のピーク、および回折角2θ=92~94°に現れる(311)面のピークに基づき判断した(ICDD PDFカード03-065-2865)。また、錫の回折ピークは、回折角2θ=30~31°に現れる(200)面のピーク、回折角2θ=43.5~44.1°に現れる(220)面のピーク、および回折角2θ=63.5~64.2°に現れる(400)面のピークに基づき判断した(ICDD PDFカード00-004-0673)。
<X線回折(XRD)測定(錫層40の結晶配向指数)>
各実施例、比較例において得られた電池用表面処理金属板10、10aについて、上述したX線回折(XRD)測定方法により、錫層40の表面における錫の各結晶面の回折強度を測定した後、得られた錫の回折強度と、標準錫粉末の回折強度を用いて、錫層40の表面の(220)面、(200)面、および(400)面の結晶配向指数をそれぞれ求め、結晶性配向指数の比、N(220)/N(200)、およびN(220)/N(400)を算出した。なお、錫の各結晶面の回折角と、標準錫粉末の各結晶面の回折角は、回折ICDD PDF-2 2014のデータベースの00-004-0673に記載されているものを用いた。
<X線回折(XRD)測定(ニッケル-錫合金層50の有無)>
各実施例、比較例において得られた電池用表面処理金属板10、10aについて、上述したX線回折(XRD)測定方法により、ニッケル-錫合金層50の有無を確認した。ニッケル-錫合金層50の有無の確認方法については、ニッケル、錫、および鉄の回折ピークに該当しない、回折角2θ=42~43°に現れる回折ピークを確認することで、ニッケル-錫合金層50を有すると判断した。具体的には、回折角2θ=42~43°に現れる回折ピークは、ICDD PDFカード03-065-2865(ニッケル)、ICDD PDFカード00-004-0673(錫)、およびICDD PDFカード03-065-4899(鉄)に記載される回折角に該当せず、ニッケル-錫合金に由来する回折ピークであると判断できるため、当該角度に回折ピークを確認できた場合、ニッケル-錫合金層50を有すると判断した。
<アノード反応前の腐食電流密度測定によるガス発生抑制評価>
各実施例、比較例において得られた電池用表面処理金属板10、10aについて、アルカリ溶液に浸漬した場合の腐食電流密度を測定することにより、ガス発生抑制効果について評価した。腐食電流密度測定は、下記の条件において実施し、30重量%水酸化カリウム溶液での下記試験極と対極間で発生する腐食電流密度(単位:mA/cm)を測定した。
・測定装置:北斗電工社製 HZ7000
・試験極:Zn板(評価面積20mm×20mm、厚み0.5mm)
・対極:測定サンプル(測定径φ6mm)
・測定方法:無抵抗電流計
具体的には、析出Znとの局部電池を模す試験として、対極にZn板を用い、得られた電池用表面処理金属板10、10aを、アルカリ溶液中に浸漬させた上で電気化学測定システムを用いて腐食電流密度を測定することにより、ガス発生抑制について評価した。アルカリ溶液に浸漬して30秒経過時点での腐食電流密度が小さいほど、ガス発生抑制の効果が高いと判断できる。腐食電流密度が0.15mA/cm以下を「A+」、腐食電流密度が0.20mA/cm以下を「A」、腐食電流密度が0.25mA/cm以下を「B」、腐食電流密度が0.25mA/cmを超えるものを「C」として評価した。
<アノード反応後の腐食電流密度測定によるガス発生抑制評価>
また、得られた電池用表面処理金属板10、10aについて、亜鉛二次電池用途を想定した場合、電池設計によっては充放電を繰り返した際に負極活物質の亜鉛層が厚くなることがある。厚くなりすぎた亜鉛層を除去するためには、過放電状態に近い状態まで放電反応(アノード反応)を行うことが想定される。この様な状態を模す試験として、アルカリ溶液(30重量%水酸化カリウム溶液)を用いたアノード反応試験を行い、アノード反応試験後の電池用表面処理金属板10、10aについて、上記と同様にして腐食電流密度を測定した。腐食電流密度が20mA/cm以下を「A+」、腐食電流密度が30mA/cm以下を「A」、腐食電流密度が40mA/cm以下を「B」、腐食電流密度が40mA/cmを超えるものを「C」として評価した。
なお、アノード反応試験は、下記の条件において実施したものである。
・電気化学測定器:北斗電工社製 HZ7000
・試験極:測定サンプル(評価面積20mm×20mm)
・対極:Cu板
・参照極:Ag/AgCl(KCl飽和)
・電解液:30重量%水酸化カリウム溶液
・電流密度:50mA/cm
・測定方法:クロノポテンショメトリ
・電気量:21C/cm
<実施例1>
まず、金属基材20として、下記に示す化学組成を有する低炭素アルミキルド鋼の冷間圧延板(厚さ60μm)を準備した。
C:0.04重量%、Mn:0.32重量%、Si:0.01重量%、P:0.012重量%、S:0.014重量%、残部:Feおよび不可避的不純物
次いで、準備した金属基材20について、電解脱脂、硫酸浸漬の酸洗を行った後、下記条件にてニッケルめっきを行うことで、金属基材20の両面に、ニッケル層30を形成した。なお、ニッケルめっきの条件は、以下の通りとした。また、ニッケルめっきの処理時間は、ニッケル付着量が表1に示す量となるような条件とした。
(浴組成:ワット浴)
硫酸ニッケル六水和物:250g/L
塩化ニッケル六水和物:45g/L
ほう酸:30g/L
(めっき条件)
浴温:60℃
pH:4.0~5.0
撹拌:空気撹拌または噴流撹拌
電流密度:10A/dm
次いで、ニッケル層30を形成した金属基材20に対し、錫めっきを行うことで、金属基材20の両面に形成されたニッケル層30の上層に、錫層40を形成した。なお、錫めっきの条件は、以下の通りとした。また、錫めっきの処理時間は、錫付着量が表1に示す量となるような条件として、電池用表面処理金属板10を得た。そして、得られた電池用表面処理金属板10について、上記した各測定を行った。結果を表1に示す。
(浴組成)
錫イオン:20g/L
硫酸:45mL/L
添加剤(商品名「テクニスタンTPアディティブ」、テクニックジャパン社製):50mL/L
ニッケル:50重量ppm
(めっき条件)
pH:1以下
浴温:45℃
電流密度:5A/dm
<実施例2>
実施例1と同様にして、ニッケル層および錫層を有する鋼板を得て、得られたニッケル層および錫層を有する鋼板について、温度25℃、経時期間180日の条件で常温拡散処理を行うことで、ニッケル-錫合金層50を有する電池用表面処理金属板10aを得た。なお、ニッケルめっき、錫めっきの処理時間は、ニッケル付着量、錫付着量が表1に示す量となるような条件とした。そして、得られた電池用表面処理金属板10aについて、上記した各測定を行った。結果を表1に示す。
<実施例3~5>
常温拡散処理における経時期間を表1に示す条件に変更した以外は、実施例2と同様にして電池用表面処理金属板10aを得た。なお、ニッケルめっき、錫めっきの処理時間は、ニッケル付着量、錫付着量が表1に示す量となるような条件とした。そして、得られた電池用表面処理金属板10aについて、上記した各測定を行った。結果を表1に示す。
<実施例6>
金属基材20の厚みを25μmに変更、ならびに常温拡散処理における経時期間を表1に示す条件に変更した以外は、実施例2と同様にして電池用表面処理金属板10aを得た。なお、ニッケルめっき、錫めっきの処理時間は、ニッケル付着量、錫付着量が表1に示す量となるような条件とした。そして、得られた電池用表面処理金属板10aについて、上記した各測定を行った。結果を表1に示す。
<実施例7~8>
錫めっきにおける電流密度の条件、ならびに常温拡散処理における経時期間を表1に示す条件に変更した以外は、実施例2と同様にして電池用表面処理金属板10aを得た。なお、ニッケルめっき、錫めっきの処理時間は、ニッケル付着量、錫付着量が表1に示す量となるような条件とした。そして、得られた電池用表面処理金属板10aについて、上記した各測定を行った。結果を表1に示す。
<実施例9~10>
ニッケルめっきおよび錫めっきにおける電流密度の条件、ならびに常温拡散処理における経時期間を表1に示す条件に変更した以外は、実施例2と同様にして電池用表面処理金属板10aを得た。なお、ニッケルめっき、錫めっきの処理時間は、ニッケル付着量、錫付着量が表1に示す量となるような条件とした。そして、得られた電池用表面処理金属板10aについて、上記した各測定を行った。結果を表1に示す。
<実施例11~12>
ニッケルめっきおよび錫めっきにおける電流密度の条件、錫めっき浴中における添加剤の添加量、ならびに常温拡散処理における経時期間を表1に示す条件に変更した以外は、実施例2と同様にして電池用表面処理金属板10aを得た。なお、ニッケルめっき、錫めっきの処理時間は、ニッケル付着量、錫付着量が表1に示す量となるような条件とした。そして、得られた電池用表面処理金属板10aについて、上記した各測定を行った。結果を表1に示す。
<実施例13>
金属基材20の厚みを110μmに変更した以外は、実施例7と同様にして電池用表面処理金属板10aを得た。なお、ニッケルめっき、錫めっきの処理時間は、ニッケル付着量、錫付着量が表1に示す量となるような条件とした。そして、得られた電池用表面処理金属板10aについて、上記した各測定を行った。結果を表1に示す。
<比較例1~2>
錫めっき浴中に添加剤およびニッケルのいずれも添加せず、錫めっきにおける電流密度の条件、ならびに常温拡散処理における経時期間を表1に示す条件に変更した以外は、実施例2と同様にして表面処理金属板を得た。なお、ニッケルめっき、錫めっきの処理時間は、ニッケル付着量、錫付着量が表1に示す量となるような条件とした。結果を表1に示す。
<比較例3>
常温拡散処理を行わなかった以外は、比較例1と同様にして表面処理金属板を得た。なお、ニッケルめっき、錫めっきの処理時間は、ニッケル付着量、錫付着量が表1に示す量となるような条件とした。結果を表1に示す。
<比較例4>
錫めっき浴にニッケルを50m重量ppm添加した以外は、比較例3と同様にして表面処理金属板を得た。なお、ニッケルめっき、錫めっきの処理時間は、ニッケル付着量、錫付着量が表1に示す量となるような条件とした。結果を表1に示す。
<比較例5>
錫めっき浴中にニッケルを添加せず、錫めっき浴中における添加剤の添加量、ならびに常温拡散処理における経時期間を表1に示す条件に変更した以外は、実施例2と同様にして表面処理金属板を得た。なお、ニッケルめっき、錫めっきの処理時間は、ニッケル付着量、錫付着量が表1に示す量となるような条件とした。結果を表1に示す。
<比較例6>
錫付着量を表1に示す条件に変更した以外は、実施例4と同様にして表面処理金属板を得た。なお、ニッケルめっき、錫めっきの処理時間は、ニッケル付着量、錫付着量が表1に示す量となるような条件とした。結果を表1に示す。
Figure 2024057495000002
表1に示すように、錫層40の(200)面、(220)面、および(400)面の結晶配向指数において、上述した(1)式または(2)式の少なくともいずれか一方が1を超えることを満たす表面処理金属板10、10aによれば、アノード反応前後において、腐食電流密度が低減され、ガス発生が有効に抑制することができた(実施例1~13)。
より詳細には、実施例1~13において、錫層40の結晶性配向指数に関する(1)式または(2)式の少なくともいずれか一方が1を超えることを満たす場合、アノード反応前における腐食電流密度が0.25mA/cm以下となり、ガス発生の抑制効果が優れることを確認した。また、実施例1~10においては、(1)式および(2)式の両方が2以上であり、ガス発生の抑制効果がより優れることを確認した。さらに、実施例1~6においては、(1)式および(2)式の両方が10以上であり、ガス発生の抑制効果がより顕著に優れることを確認した。
また、実施例2~13においては、ニッケル層30と錫層40の間にニッケル-錫合金層50をさらに備えており、表1に示すように、アノード反応後における腐食電流密度の結果から、アノード反応後においてもニッケル-錫合金層50を有することにより、ガス発生の抑制効果を有しつつ、且つ耐電解液性にも優れたものであることが確認された。
より詳細には、実施例2~13おいて、ニッケル-錫合金層50を構成する合金相として、Ni-Sn42-43を主として含有するものであり、これらの電池用表面処理金属板10aは、アノード反応後における腐食電流密度が40mA/cm以下となり、ガス発生の抑制効果を有しつつ、且つ耐電解液性にも優れることを確認した。
なお、ニッケル-錫合金層50を形成する際、ニッケル層30の上層に形成された錫層40の結晶配向指数において、(1)式および(2)式の両方が2以上を満たすよう制御した場合、ニッケル-錫合金層50におけるガス発生の抑制効果がより優れることを確認した。特に、錫層40の結晶配向指数において、(1)式および(2)式の両方が10以上を満たす場合には、アノード反応後における腐食電流密度が20mA/cm以下となり、ガス発生の抑制効果が顕著に優れることを確認した。
一方、比較例1~6においては、錫層40の結晶配向指数に関する(1)式または(2)式のいずれも1を超えない表面処理金属板のため、アノード反応の前後における腐食電流密度が、実施例1~13よりも大きいことを確認した。
図3A~図3Cに、実施例9の電池用表面処理金属板10aについて、X線回折(XRD)測定により得られた錫層40のX線回折(XRD)チャートを示す。なお、図3Aは錫層40の(200)面の回折ピークを示すX線回折チャートであり、図3Bは錫層40の(220)面の回折ピークを示すX線回折チャートであり、図3Cは錫層40の(400)面の回折ピークを示すX線回折チャートである。このように検出された錫層40の(200)面、(220)面、および(400)面の回折ピークを用いて、錫層40の結晶配向指数の比率を算出した。同様に、実施例1~8、10~13で得られた電池用表面処理金属板10、10aでも、錫層40の(200)面、(220)面、および(400)面の回折ピークを用いて、錫層40の結晶配向指数の比率を算出した。
また、図4は、実施例9において検出されたニッケル-錫合金層を構成する合金相のX線回折チャートを示す。図4に示すように、実施例9で得られた電池用表面処理金属板10aでは、X線回折測定により回折角2θ=42~43°の範囲に回折ピークに得られ、ニッケル-錫合金層50が形成されていることが確認された。同様に、実施例2~8、10~13で得られた電池用表面処理金属板10aでも、回折角2θ=42~43°の範囲に回折ピークに得られた。
10,10a…電池用表面処理金属板
20…金属基材
30…ニッケル層
40…錫層
50…ニッケル-錫合金層

Claims (7)

  1. 電池用表面処理金属板であって、
    金属基材と、
    前記金属基材の少なくとも片面に設けられたニッケル層と、
    前記ニッケル層の上層に設けられた錫層と、を備え、
    前記錫層について、下記(1)式または下記(2)式の少なくともいずれか一方が1を超えることを満たす電池用表面処理金属板。
    N(220)/N(200) (1)
    N(220)/N(400) (2)
    上記(1)式および(2)式中、N(220)は前記錫層の(220)面の結晶配向指数を表し、上記(1)式中、N(200)は前記錫層の(200)面の結晶配向指数を表し、上記(2)式中、N(400)は前記錫層の(400)面の結晶配向指数を表す。
  2. 前記ニッケル層と前記錫層との間に形成されたニッケル-錫合金層をさらに備える請求項1に記載の電池用表面処理金属板。
  3. 前記金属基材が、鉄を基とする金属基材である請求項1または2に記載の電池用表面処理金属板。
  4. 前記ニッケル層中のニッケル付着量が1.0g/m超であり、20.0g/m以下である請求項1または2に記載の電池用表面処理金属板。
  5. 前記錫層中の錫付着量が1.0g/m以上、15.0g/m以下である請求項1または2に記載の電池用表面処理金属板。
  6. 前記(1)式、または前記(2)式の少なくともいずれか一方が2以上を満たす請求項1または2に記載の電池用表面処理金属板。
  7. 前記ニッケル-錫合金層において、合金相として、CuKαを線源とするX線回折測定による回折角2θ=42~43°の範囲に回折ピークが得られる請求項2に記載の電池用表面処理金属板。
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