JP2023098440A - 集電体用表面処理金属箔 - Google Patents

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Abstract

【課題】電池集電体用に特に良好な水素バリア性、活物質との密着性、及び、金属基材と粗化層との密着性を兼ね備えた集電体用表面処理金属箔を提供する。【解決手段】第1の面及び、前記第1の面と反対側に位置する第2の面を有した集電体用表面処理金属箔であって、前記集電体用表面処理金属箔の基材が金属基材からなり、前記金属基材が鋼箔であり、前記金属基材の少なくともいずれか一方の面側に粗化層を有し、前記粗化層がニッケル-リン合金層と、粗化ニッケル層を含み、前記ニッケル-リン合金層の厚さが0.08μm~0.6μm及びリン含有率が10.0wt%以上であり、前記粗化ニッケル層が前記金属基材と前記ニッケル-リン合金層との間に形成されており、前記粗化層の表面の算術平均高さSaが0.4μm~2.5μm、及び、最大高さSzが5.0μm~20.0μmであることを特徴とする、集電体用表面処理金属箔。【選択図】 図1

Description

本発明は、二次電池などの集電体に特に好適に使用される集電体用表面処理金属箔及びその製造方法に関する。
従来、車載用等に採用される二次電池としてニッケル水素電池やリチウムイオン電池が知られている。そしてこれらの二次電池の電極構造の種類としては、集電体の両面に共に正極層又は負極層を形成したモノポーラ電極と、集電体の両面に正極層(正極活物質層)と負極層(負極活物質層)とを形成したバイポーラ電極とが知られている。
バイポーラ電池は、上記したバイポーラ電極を電解質、セパレータなどを挟んで積層し、単一の電槽内に収容することにより構成される。この構成により、各電極を直列回路で積層配置することが可能となるため、電池の内部抵抗を小さくすることができ、作動電圧、出力を大きくし易いことが知られている。また、電池性能と併せて、モノポーラ電極を用いた従来の電池と比較して、電流を取り出すためのリードなどの部材点数を電池設計によって省略、削減することで、電池体積あるいは重量を低減できることから、電池の体積及び重量エネルギー密度の向上を図ることができると考えられている。
例えば下記の特許文献1には、ニッケル箔等の金属箔をバイポーラ電池の集電体として用いることが開示されている。
特開2020-053401号公報
本発明者らは二次電池用途に好適な金属箔としてニッケルめっきを施した表面処理金属箔の開発を進める中で、表面処理金属箔における水素透過を抑制することにより電池性能の劣化を低減できることを見出した。
例えばニッケル水素電池では、負極の活物質として水素を、一般的には水素吸蔵合金を使用する。従来のモノポーラ電極であれば集電体などの電池部材は電池種に応じた耐電解液性を表面に有すればよかったところ、上記のようなバイポーラ電極の場合は、負極側に存在する水素が金属材料中を移動し正極側に透過する現象が生じやすく、このような透過現象が発現した場合、電池性能が低下しやすくなることに想到した。
また、集電体用表面処理金属箔の特性として活物質との密着性が要求されるところ、WO2020/017655公報に記載されるように、最表層として粗化層を有する構成とすることにより、粗化層の突起によるアンカー効果で活物質との密着性が得られる一方で、粗化層の突起の層構成及び状態によっては、金属基材から粗化層が離脱する(すなわち粉落ちが発生する)可能性があることを見いだした。
本発明は、かような課題を解決することを鑑みてなされたものであり、集電体用に特に良好な水素バリア性、活物質との密着性、及び、金属基材と粗化層との密着性を備えた表面処理金属箔を提供することを目的とする。
上記に例示した課題を解決するために、本発明の一実施形態における集電体用表面処理金属箔は、(1)第1の面及び、前記第1の面と反対側に位置する第2の面を有した集電体用表面処理金属箔であって、前記集電体用表面処理金属箔の基材が金属基材からなり、前記金属基材が鋼箔であり、前記金属基材の少なくともいずれか一方の面側に粗化層を有し、前記粗化層がニッケル-リン合金層と、粗化ニッケル層を含み、前記ニッケル-リン合金層の厚さが0.08μm~0.6μm及びリン含有率が10.0wt%以上であり、前記粗化ニッケル層が前記金属基材と前記ニッケル-リン合金層との間に形成されており、前記粗化層の表面の算術平均高さSaが0.4μm~2.5μm、及び、最大高さSzが5.0μm~20.0μmであることを特徴とする。
上記(1)において、(2)前記粗化層のニッケル付着量が5.0g/m~65.0g/mであることが好ましい。
また上記(1)又は(2)において、(3)前記粗化層のリン付着量が0.2g/m~5.0g/mであることが好ましい。
上記(1)~(3)のいずれかにおいて、(4)前記金属基材が、低炭素鋼又は極低炭素鋼であることが好ましい。
上記(1)~(4)のいずれかにおいて、(5)前記金属基材と前記粗化層との間にニッケルを含有する金属層が形成されていることが好ましい。
上記(5)において、(6)前記金属層の厚みが0.10μm~2.00μmであることが好ましい。
上記(5)又は(6)において、(7)前記粗化層及び前記金属層のニッケル総付着量が5.5g/m~90.0g/mであることが好ましい。
上記(5)~(7)のいずれかにおいて、(8)前記粗化層及び前記金属層のリン総付着量が0.2g/m~11.0g/mであることが好ましい。
本発明によれば、電池、特にバイポーラ電池に好適な水素バリア性、活物質との密着性、及び金属基材と粗化層との密着性を備えた集電体用表面処理金属箔を提供することができる。
本実施形態の集電体用表面処理金属箔を模式的に示した図である。 本実施形態の集電体用表面処理金属箔の水素バリア性を測定する装置の模式図である。 本実施形態の集電体用表面処理金属箔の水素バリア性を測定する装置の模式図である。 本実施形態の集電体用表面処理金属箔の水素バリア性を測定した際に得られたプロット図である。 他の実施形態の集電体用表面処理金属箔を模式的に示した図である。 実施例における活物質密着試験の方法を示す図である。
≪第1実施形態≫
以下、本発明の集電体用表面処理金属箔100の第1実施形態について、図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態の集電体用表面処理金属箔100を模式的に示した図である。なお、本実施形態の集電体用表面処理金属箔100は、バイポーラ電池の集電体に適用されるほか、モノポーラ電池の正極又は負極の集電体にも適用され得る。電池の種類としては二次電池であっても一次電池であってもよい。
本実施形態の集電体用表面処理金属箔100は、金属基材20と、前記金属基材の少なくともいずれか一方の面側に備えられた粗化層60と、を有する。そして、前記粗化層60は、最表面に設けられるニッケル-リン合金層30、及び、金属基材20とニッケル-リン合金層30との間に形成される粗化ニッケル層50を含む。集電体用表面処理金属箔100は、第1の面10a、及び前記第1の面側とは反対側の第2の面10bを有する。なお、前記集電体用表面処理金属箔100において、水素吸蔵合金を含む電池の集電体として用いる場合、前記第1の面10aの側には、電池として組み立てる際に負極材料として水素吸蔵合金が配置される。一方で第2の面10bの側には、例えばバイポーラ電極構造のニッケル水素電池に適用する場合、正極材料が配置される。
なお本実施形態において粗化層60は、図1に示されるように、上記した第2の面10bの側に形成されていてもよいし、図示はしないが上記した第1の面10aの側に形成されていてもよい。また粗化層60は、第1の面10a及び第2の面10bの両方に形成されていてもよい。また、第2の面10b側に粗化層60が形成される一方で、第1の面10a側にはニッケル層又はニッケルを含む合金層が設けられていることが好ましい。ニッケルを含む合金層としてはニッケル-リン合金層であってもよく、ニッケル層及びニッケル-リン合金層が積層していてもよい。ニッケル-リン合金層である場合、後述するニッケル-リン合金層30と同じリン含有率を有していてもよい。
なお粗化層60に含まれるニッケル-リン合金層30は、前記集電体用表面処理金属箔内の水素の透過又は拡散を抑制する機能を有する。
<金属基材20について>
本実施形態の集電体用表面処理金属箔100に使用される金属基材20としては、鋼箔が用いられ、鋼箔としては、クロム(Cr)及び他の添加金属元素が1.0重量%未満である鉄を基とする金属基材が好ましい。鋼箔の種類として具体的には、低炭素アルミキルド鋼(炭素量0.01~0.15重量%)、炭素量が0.01重量%未満の極低炭素鋼、又は極低炭素鋼にチタン(Ti)やニオブ(Nb)などを添加してなる非時効性極低炭素鋼が好適に用いられる。また、電解めっきで製造される電解鉄箔であってもよい。つまり、本実施形態における鋼箔は、圧延鋼箔、電解鉄箔を含むものとする。
本実施形態の集電体用表面処理金属箔100に使用される金属基材20の厚さとしては、0.01~0.30mmの範囲が好適である。体積及び重量エネルギー密度の観点を重視した電池の集電体として用いる場合は、強度の観点、及び、望まれる電池容量の観点、等より、より好ましくは0.01~0.20mm、さらに好ましくは0.025~0.10mmである。金属基材20の厚さは、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)の断面観察による厚み測定が好適に用いられる。また、表面処理前、つまりニッケル-リン合金めっき前の厚み測定としては、マイクロメーターでの厚み測定等が適用可能である。
<ニッケル-リン合金層30について>
本実施形態において、ニッケル-リン合金層30は、粗化層60のうち粗化ニッケル層50の上に形成される。以下、ニッケル-リン合金層30のことを被覆ニッケル-リン合金層とも表現する。本実施形態の集電体用表面処理金属箔100に含まれるニッケル-リン合金層30はニッケル(Ni)とリン(P)が含まれる合金層、又はニッケルとリンからなる合金(「Ni-P合金」とも称する)が含まれる金属層である。なお、このニッケルとリンからなる合金状態としては、固溶体、共析・共晶、化合物(金属間化合物)、又は非晶質内にニッケルとリンが含まれる状態のいずれであってもよいし、それらが共存していてもよい。ニッケル-リン合金層30は実質的にニッケルとリンのみから構成されていてもよいし、本発明の課題を解決し得る限りにおいてニッケル及びリン以外の金属元素や不可避の不純物を含んでいてもよい。なお、ニッケル及びリン以外にニッケル-リン合金層30に含まれ得る金属元素については後述する。
本実施形態においてニッケル-リン合金層30は、リン(P)含有率(%)が10.0wt%以上であることを特徴とする。この場合特に、集電体用表面処理金属箔100の水素バリア性をより向上させるためには、リン含有率(%)が10.5wt%以上であることが好ましく、より好ましくは11.0wt%以上、さらに好ましくは12.2wt%以上、特に好ましくは13.0wt%以上である。なおリン含有率(%)の上限としては、特に上限はないものの、製造上の観点から、20.0wt%以下が好ましく、より好ましくは18.0wt%以下、さらに好ましくは16.0wt%以下である。
なお、リン含有率は、以下のとおり算出可能である。リン含有率(wt%)=リン付着量(g/m)/(ニッケル付着量(g/m)+リン付着量(g/m))×100
なお、本実施形態におけるニッケル-リン合金層30中の好ましいリン含有率(%)の範囲は、後述する第2実施形態においても同様である。
なお、本実施形態におけるリン含有率の算出方法としては、例えば、ニッケル-リン合金層を形成した後にICP発光分光分析装置等を用いて求める方法や、金属基材上にニッケル-リン合金層を形成した時点において蛍光X線装置を用いて測定する方法、SEM(走査電子顕微鏡)やTEM(透過電子顕微鏡)備え付けのEDX(エネルギー分散型X線分析法)等を用いて、ニッケル-リン合金層の表面もしくは断面から測定する方法などが挙げられる。
具体的には、上述のTEMによる断面観察及びEDXを用いてリン含有率を測定する方法としては、例えばニッケル-リン合金層30の断面に対して厚み30~150nmの薄片試料を作製する。次に、前記ニッケル-リン合金層30の厚み方向3点を測定箇所としてリン含有率を測定し、そのうちの最大値をニッケル-リン合金層中のリン含有率とすることができる。なお、上述した測定箇所においては、厚み方向3点に限られるものではなく、3点以上を測定箇所としてリン含有率を測定し、そのうちの最大値をニッケル-リン合金層中のリン含有率としてもよい。
本実施形態の集電体用表面処理金属箔100に含まれるニッケル-リン合金層30は、本発明の課題を解決し得る限り、他の金属元素や不可避の不純物を含んでいてもよい。例えば、ニッケル-リン合金層30中には、コバルト(Co)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、ボロン(B)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、亜鉛(Zn)、硫黄(S)等の金属元素が含まれていてもよい。なお、ニッケル-リン合金層30中のニッケル(Ni)とリン(P)以外の金属元素の割合は20wt%以下が好ましく、より好ましくは10wt%以下が好ましく、さらに好ましくは5wt%以下、特に好ましくは1wt%以下が好ましい。ニッケル-リン合金層30は実質的にニッケルとリンのみから構成されていてもよいため、他の金属元素の含有割合の下限は0%である。含有される他の金属元素の種類及び量は、上記SEMやTEMでのEDXによる測定方法の他、蛍光X線(XRF)測定装置やGDS(グロー放電発光表面分析法)等の公知の手段により測定することが可能である。
本実施形態の集電体用表面処理金属箔100に含まれるニッケル-リン合金層30の形成方法としては、合金めっきによる方法が好ましく、合金めっきとしては、例えば電解めっき、無電解めっき、溶融めっき、乾式めっき等の方法が挙げられる。このうち、製造時の効率化やコスト、膜厚制御等の観点より特に電解めっきによる方法が好ましい。
例えば、金属基材20の少なくとも片面に、電解めっき等の方法により、ニッケルイオンと亜リン酸イオンを含有するめっき液を用いて合金層を形成する方法等が挙げられる。なお、これらの方法について詳細は後述する。
次に、ニッケル-リン合金層30の水素バリア性について説明する。
従来技術に対し、本発明者らは電池性能を向上するために実験を繰り返す過程において、原因不明の電圧低下(自己放電)現象の発生、及びその現象を解消するために集電体用表面処理金属箔100中における水素透過を抑制することが有効であることを見出した。
水素透過が発生している原因と、集電体用表面処理金属箔100中における水素透過の抑制により上記した電圧低下(自己放電)現象の発生を抑制できる理由はいまだ明らかではないが、本発明者らは以下のように予測した。
すなわち本実施形態において、集電体用表面処理金属箔100がバイポーラ電池の電極に使用された場合には、負極材料として用いられる水素吸蔵合金が集電体用表面処理金属箔100の一方の面側に配置されると共に、その反対側には正極材料が配置されることとなる。この場合、集電体用表面処理金属箔100を隔てて、水素が豊富な環境(負極)と水素が少ない環境(正極)とが存在し、水素濃度勾配が発生することとなる。そして何らかの契機により集電体用表面処理金属箔100中を水素が透過・移動することにより、透過した水素が正極で反応し、上述のような電圧低下(自己放電)が発生するものと予想した。
このような水素の透過が原因による電圧低下は、電池使用環境下に置いて水素が透過しやすい状態が多いほど反応が加速し、電圧低下が発生するまでの時間が早くなる。つまり、電池性能の劣化が早くなると考えられる。水素が透過しやすくなる条件としては、上記水素濃度勾配が高くなるほど透過しやすくなると考えられる。また、水素濃度勾配に加え、集電体用表面処理金属箔の両面に電圧がかかった状態はさらに水素透過が促進されやすいと考えられる。つまり、水素吸蔵合金を用いる電池やニッケル水素電池などの濃度勾配の高い電池、充放電の多い二次電池において、水素透過が、時間経過とともに電池性能が漸減する一因となっている可能性がある。一方で、電池性能の漸減はその他の要因も大きく、水素透過の現象は捉えにくいため、従来のモノポーラ電池の使用・開発の中で明らかになっていなかったところ、本発明者らがバイポーラ電池の集電体用表面処理金属箔の開発・実験を繰り返す中で、電池性能の劣化の抑制にニッケル-リン合金層の水素バリア性向上が寄与することに想到したものである。よって、本実施形態の集電体用表面処理金属箔は、バイポーラ電池、特に水素吸蔵合金を用いた電池の集電体に特に好適に用いられるが、その他の水素吸蔵合金が用いられない電池であっても、水素を含む、あるいは水素が発生する電池であれば、これまでは捉えられていなかった水素透過による緩やかな電池性能の劣化がある可能性が考えられ、本実施形態の集電体用表面処理金属箔を好適に用いることができる。例えば、アルカリ二次電池においては、ニッケル亜鉛電池では負極に亜鉛、ニッケルカドミウム電池では負極にカドミウムを使用する以外は、ニッケル水素電池と同様に水酸化カリウムを主成分とするアルカリ電解液を使用するなど、電池構成部材はほとんど同じであり、負極側に水素が発生し易い特徴を持っている。
よって、水素吸蔵合金内に大量の水素が蓄えられるニッケル水素電池ほどではないものの、これらの電池をバイポーラ型構造のバイポーラ電池としたとき、集電体表裏間での水素の移動現象は起こりうる可能性があり、同様に水素透過によって電池性能が低下し易くなると考えられる。したがって、バイポーラ型のアルカリ二次電池においても本実施形態の集電体用表面処理金属箔を好適に用いることができる。
次に、水素バリア性の評価方法について説明する。上述のように集電体用表面処理金属箔100中を水素が透過・移動する場合、水素侵入側から水素検出側に到達した水素原子は酸化されて水素イオンとなる。このときの酸化電流の値は、水素検出面に到達した水素量に応じて増減するため、検出された電流値により集電体用表面処理金属箔100の水素バリア性を数値化・評価することが可能となる。(水流 徹,東京工業大学,材料と環境,63,3-9(2014),電気化学法による鉄鋼への水素侵入・透過の計測)
上記予想の結果、発明者らが測定・評価を行い、本実施形態において、上述したような電圧低下(自己放電)の発生を抑制するためには、本実施形態の集電体用表面処理金属箔100は、電気化学的に測定される酸化電流値から得られる水素透過電流密度が60μA/cm以下であることが好ましいという結論に帰結した。なお、本実施形態における水素透過電流密度の測定条件は、電解液の液温:65℃とし、水素発生側(カソード側もしくは水素侵入側とも称す)は参照電極をAg/AgCl(銀塩化銀)として電流を-100mA、水素検出側(アノード側とも称す)は参照電極を用いずに電流印加なし(自然電位)とする。ここで水素発生側の電流値を-100mAとした理由は、集電体用表面処理金属箔100中を透過・移動するために必要な水素量を十分に発生させるためである。
本実施形態における水素透過電流密度の測定方法の具体例として、図2(a)に示すような構成の測定装置を用いて電流値(電流密度)を検出することにより、集電体用表面処理金属箔100の水素バリア性を数値化及び評価することが可能である。図2(a)に示す測定装置について以下に説明する。以下の説明において、水素侵入側は水素発生側とも記し、バイポーラ電極構造の水素吸蔵合金を配置する側、すなわち集電体用表面処理金属箔100の第1の面10aの側である。また、水素検出側は水素侵入側の反対面であり、バイポーラ電極構造の正極側、すなわち集電体用表面処理金属箔100の第2の面10bの側である。
水素発生用のセルX及び透過水素の検出用セルYの2つのセルを準備し、この2つの測定セルの間に集電体用表面処理金属箔100の試験片(サンプル)を設置する。各測定セルには電解液(KOHを主成分として6mol/L含み、KOH、NaOH、LiOHの合計濃度が濃度:7mol/Lであるアルカリ水溶液)を充填し、参照電極(RE1)及び対極(CE1及びCE2)を浸漬している。参照電極には飽和KCl溶液のAg/AgCl電極、対極には白金(Pt)を使用する。また、電解液の温度は65℃とする。また、図2(b)に示すように集電体用表面処理金属箔100における測定径はφ20mm(測定面積3.14cm)とする。
水素侵入側の電流制御は、図2(a)に示すようにポテンショスタット又は整流器等を用いる。ポテンショスタットとしては例えば、北斗電工株式会社製の「マルチ電気化学計測システムHZ-Pro」 を用いることができる。また、水素検出側の電流測定は図2(a)に示すように電流計を用いる。電流計としては例えば、株式会社カスタム製の「デジタルマルチメータCDM-7000」を用いることができる。なお、評価する集電体用表面処理金属箔100のサンプル及び各電極の接続は、図2(a)に示すように行うことができる。
水素発生側Xではサンプルへカソード電流(-100mA)を5分間印加し、サンプル表面に水素を発生させ、水素を侵入させる。なお、水素検出側Yでは電位は印加せず、電流計の接続のみとする。水素発生側から水素原子が透過してきた場合、透過してきた水素原子が水素検出側にて酸化されると、水素検出側の電流計にて測定される酸化電流が変化(増大)する。したがって、この酸化電流変化により、集電体用表面処理金属箔100の水素透過性の数値化・評価が可能となる。
なお、水素発生側のカソード電流印加前に、集電体用表面処理金属箔の表面電位を安定化させるために10分間以上電解液中に浸漬保持し、水素検出側の電流計の電流値が一定になること、つまり、1分間に5μA以上の変動がないことを確認する。上記工程により、後述する酸化電流の最小値を得ることが可能となる。なお、酸化電流値の測定プロットは30秒毎とする。
上記手法にて得られた水素検出側の酸化電流変化より、水素透過電流密度I(μA/cm)を算出することが可能となる。具体的には、電流印加後の5分間における前記酸化電流の最大値と、電流印加直前の最小値の差を測定面積3.14cmで除した値が水素透過電流密度となる。プロット及び水素透過電流密度I(μA/cm)の数値化イメージを図2(c)に示す。
本実施形態においては、図2に記載の装置を用いて、65℃の前記電解液において、カソード側の電流値が-100mA、の条件下で測定した場合における水素検出側の水素透過電流密度が60μA/cm以下である場合に、集電体用表面処理金属箔100中の水素バリア性の観点からバイポーラ電極に好適であるとの結論に至った。電圧低下をより抑制するという観点から40μA/cm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは25μA/cm以下であることが好ましい。
なお、一般的に、金属材料はそれぞれの種類に応じて異なる水素の拡散係数を有していることが知られており、金属材料の用途に応じて、金属中の水素による欠陥や水素脆化現象を抑制するため、水素の侵入を抑制する金属材料が求められることがある。例えば高力ボルトの遅れ破壊の抑制のために高合金鋼を用いたり、圧力反応容器の割れ抑制のためにチタン溶接部材を用いたりする例などが挙げられる。
しかしながらこのような材料・用途は、水素吸蔵合金を表面に載せるような積極的に水素量が増えるような環境下での水素侵入は想定されていない。そして、これらの技術の課題は金属中に水素が留まることによる金属そのものの機械特性へ影響を及ぼすことであり、水素が金属材料を透過し反対面側へ影響する問題は生じていない。
また、電池部材における水素透過としては、たとえば燃料電池のセパレータにおいてガス不透過性として水素の不透過性が求められることが知られている。ただし、燃料電池においては、水素透過が問題になるのはカーボンセパレータの場合が主で、ステンレスやアルミのセパレータを用いた場合には水素透過はなく問題とはならないとされていた。また、燃料電池のセパレータは硫酸雰囲気化での耐食性が必須であり鋼板は適用が困難なため、鋼板を適用することを想定した課題は見出されていなかった。一方で、集電体の片面を負極活物質層、他方の面を正極活物質層とするバイポーラ電極構造における集電体では、燃料電池と比較して水素の透過現象が生じやすく、電池性能に影響を及ぼす場合があることが問題と判明した。これは、燃料電池とは、電池構造や対象部位、内部環境等が異なるからこそ判明した課題であると考えられる。
上述したような水素バリア性の観点からは、本実施形態の集電体用表面処理金属箔100に含まれるニッケル-リン合金層30の厚さは、0.08μm~0.6μmであることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.12μm、さらにより好ましくは0.13μm以上となる。またニッケル-リン合金層30の厚みの上限値としては、特に縛られるものではないが、クラック抑制やコストの観点からは、好ましくは0.5μm未満、より好ましくは0.4μm未満、さらに好ましくは0.35μm未満となる。
なお、本実施形態におけるニッケル-リン合金層30の好ましい厚みの範囲は、後述する第2実施形態においても同様である。
なお、本実施形態においてニッケル-リン合金層30の厚みの算出方法について説明する。本実施形態のニッケル-リン合金層30の厚み算出方法としては、例えば、ニッケル-リン合金層30の断面のSEM(走査電子顕微鏡)像や光学顕微鏡像、集束イオンビーム走査電子顕微鏡(FIB-SEM)像等を取得し、本顕微鏡像から当該層の厚みを測長することで可能となる。なお、厚み測定の際には、測定対象とする範囲からランダムに選択した10点において測定した厚みの平均値を得ることが好ましい。
なお、本実施形態の集電体用表面処理金属箔100において、少なくとも一方の面側におけるニッケル-リン合金層30におけるニッケルの付着量は1.1g/m~25.0g/mであることが、バイポーラ電極に適した水素バリア性及び耐電解液性等の観点から好ましい。上述のニッケル付着量は、ニッケル-リン合金層30についてICP発光分光分析を用いてニッケル量を測定することができるが、この方法に限られず、その他公知の測定方法を用いることも可能である。なお、本実施形態におけるニッケル-リン合金層30のニッケル付着量の好ましい範囲は、後述する第2実施形態においても同様である。
<粗化ニッケル層50について>
本実施形態において、ニッケル-リン合金層30は、粗化層60のうち金属基材20とは反対側に形成される。本実施形態の集電体用表面処理金属箔100において、粗化ニッケル層50としては例えば、本出願人らの出願であるWO2021/020338号国際公開公報等に記載されている粗化ニッケル層を適用可能である。
なお、WO2020/017655号国際公開公報に開示されるように、粗化ニッケル層50とその下層又は金属基材20との密着性の観点から、下地めっき処理を施し下地金属めっき層を形成してもよい。下地金属めっき層として、後述する第2実施形態における金属層40又は/及びニッケル-リン合金層30を用いることができる。下地金属めっき層がニッケルからなる場合の下地ニッケルめっき条件についてはWO2020/017655号国際公開公報に開示の内容を適用できるため、ここでは詳細な説明を省略する。
<粗化層60について>
本実施形態にかかる集電体用表面処理金属箔100は、粗化層60を備えることにより活物質との密着性を向上させることが可能となる。
本実施形態の集電体用表面処理金属箔100において、粗化層60の最表面の算術平均高さSaは0.4μm~2.5μmであり、且つ、最大高さSzが5.0μm~20.0μmであることを特徴とする。上記範囲内とすることで、粗化層60と活物質との密着性を向上させつつ、金属基材20から粗化層60の脱落を抑制することが可能となる。
上述の算術平均高さSa及び最大高さSzの下限としては、Saが0.6μm以上、Szが7.0μm以上、であることが、粗化層60と活物質との密着性の観点からより好ましい。また、算術平均高さSa及び最大高さSzの上限としては、Saが2.0μm以下、Szが18.0μm以下、であることが、金属基材20と粗化層60との密着性の観点からはより好ましい。
上述した算術平均高さSa及び最大高さSzの数値をこの範囲内とするためには、例えば、金属基材20の表面粗度の制御、粗化ニッケルめっきやニッケル-リン合金めっき条件や厚みの調整、等によって行うことができる。なお、本実施形態における粗化層60の表面における算術平均高さSa及び最大高さSzの好ましい範囲は、後述する第2実施形態においても同様である。
本実施形態の集電体用表面処理金属箔100において、粗化層60のニッケル付着量、つまり、粗化ニッケル層50に含まれるニッケル付着量とニッケル-リン合金層30に含まれるニッケル付着量との合計ニッケル付着量は5.0g/m~65.0g/mであることが好ましく、より好ましくは5.0g/m~60.0g/m、さらに好ましくは10.0g/m~55.0g/m、特に好ましくは10.0g/m~50.0g/mである。ニッケル総付着量を上記範囲とすることで、バイポーラ電極に適した水素バリア性や耐電解液性、活物質との密着性向上といった観点から好ましい。
本実施形態の集電体用表面処理金属箔100において、粗化層60のリン付着量、つまりニッケル-リン合金層30に含まれるリン付着量は好ましくは0.2g/m~5.0g/m、より好ましくは0.2g/m~4.0g/m、さらに好ましくは0.3g/m~3.5g/mであることが、バイポーラ電極に適した水素バリア性の観点から好ましい。
上記リン付着量の範囲とすることで高い水素バリア性を備えつつ、ニッケル-リン合金層30の厚みや硬度を好適に制御することが可能である。そのため、集電体用表面処理金属箔のクラック発生のリスクを低減でき、コストの観点からも好ましい。
粗化層60のニッケル付着量及びリン付着量は、ICP発光分光分析を用いて総ニッケル量を測定することで求めることができるが、この方法に限られず、その他公知の測定方法を用いることも可能である。
粗化層60に含まれるニッケルの付着量は、ICP発光分光分析を用いて求める場合、金属基材20上の粗化ニッケル層50とニッケル-リン合金層30とを含む全ての層のニッケル付着量を測定することで求めることが可能である。
なお、ICP発行分光分析を用いて、ニッケル-リン合金層30のニッケル付着量及びリン含有率を求める場合は、まず、ニッケル-リン合金層30を形成する前に粗化ニッケル層50のニッケル付着量を測定する。次いで、粗化ニッケル層50上にニッケル-リン合金層30を形成した後にICP発光分光分析を用いて、粗化ニッケル層50とニッケル-リン合金層30とを含む全ての層のニッケル付着量及びリン付着量を測定する。この粗化層60のニッケル付着量から前記粗化ニッケル層50のニッケル付着量を差し引くことで、ニッケル-リン合金層30のニッケル付着量を求め、ニッケル-リン合金層のニッケル付着量及びリン付着量からリン含有率を間接的に算出することが可能である。
なお上述のリン付着量は、上述した方法と同様にICP発光分光分析を用いてリン量を測定することで求めることができるが、この方法に限られず、その他公知の測定方法を用いることも可能である。また、本実施形態におけるニッケル-リン合金層30のリン付着量の範囲は、後述する第2実施形態においても同様である。
<集電体用表面処理金属箔100全体について>
次に、本実施形態における集電体用表面処理金属箔100全体の厚みについて説明する。
なお、本実施形態における「集電体用表面処理金属箔100の厚み」とは、走査電子顕微鏡(SEM)の断面観察による厚み測定、又はマイクロメーターでの厚み測定も適用可能である。
本実施形態における集電体用表面処理金属箔100の全体の厚みは、0.01mm~0.30mmの範囲が好適である。また、強度の観点、及び、望まれる電池容量の観点、等より、より好ましくは0.01mm~0.20mm、さらに好ましくは0.025mm~0.10mmである。
上記厚み範囲は、製造する電池の体積及び重量エネルギー密度の観点から好ましい。特に電池の薄型化を狙う場合には好ましい。さらに上記厚み範囲の下限については、電池の充放電に伴う影響に対して充分な強度を有する観点ばかりでなく、電池の製造時や取扱い時等に破れや千切れ・シワ等が発生する可能性を回避する観点から好ましい。なお、本実施形態における集電体用表面処理金属箔全体の好ましい厚みの範囲は、後述する第2実施形態においても同様である。
<集電体用表面処理金属箔100の製造方法>
以下、上述した第1実施形態にかかる集電体用表面処理金属箔100の製造方法について説明する。本実施形態の集電体用表面処理金属箔100の製造方法は、第1の面10a側、及び、前記第1の面10aとは反対側に位置する第2の面10bの側、の少なくともいずれか一方の面側に、粗化層60を形成する工程を有する。粗化層60を形成する工程は、金属基材20上に粗化ニッケル層50を形成する工程と、粗化ニッケル層50上に前記集電体用表面処理金属箔内の水素の透過又は拡散を抑制するニッケル-リン合金層30を形成する工程と、を共に有していてもよい。
粗化ニッケル層50を形成する工程としては、めっき等の工程が挙げられる。粗化ニッケル層50を形成するためのめっき条件の一例として、以下に粗化ニッケルめっき条件を示す。
[粗化ニッケルめっき浴及び粗化ニッケルめっき条件の一例]
・浴組成:
硫酸ニッケル六水和物:10~100g/L
塩化ニッケル六水和物:1~90g/L
硫酸アンモニウム:10~130g/L
・pH:4.0~8.0
・浴温:25~80℃
・電流密度:4~40A/dm
・めっき時間:10~150秒間
・撹拌:空気撹拌又は噴流撹拌
次に、本実施形態のニッケル-リン合金層30を形成する工程としては、合金めっきによる方法が好ましく、金属基材20としての金属箔の少なくとも片面に、ニッケルイオン及び亜リン酸イオンを含む合金めっき浴を用いてニッケル-リン合金層30を形成する工程が挙げられる。なお、この工程は電解めっきであってもよいし、無電解めっき、溶融めっき、乾式めっき等の公知のめっき方法であってもよい。このうち、コストや膜厚制御等の観点より特に電解めっきによる方法が好ましい。
本実施形態の製造方法において、電解めっきによるニッケル-リン合金めっき層形成の際のめっき条件等は、公知の条件を適用することができる。以下に、めっき条件の例を示す。
[ニッケル-リン合金めっき浴及び電解めっき条件の一例]
・浴組成
硫酸ニッケル六水和物:150~250g/L
塩化ニッケル六水和物:5~50g/L
ホウ酸:20~50g/L
クエン酸三ナトリウム(無水):1~100g/L
亜リン酸:5~100g/L
亜リン酸水素二ナトリウム:5~200g/L
・浴温:25~80℃
・pH:1.0~6.0
・撹拌:空気撹拌又は噴流撹拌
・電流密度:1~40A/dm
なお、上記の浴の温度範囲に関して、目的のリン含有率や層の厚みを得られる点、層の析出が可能である観点から、より好ましい温度範囲である。
pHに関して、めっきの析出効率の観点や、めっきやけの発生を回避する観点からより好ましいpH範囲である。
電流密度に関しては、生産効率の観点やめっきやけの発生を回避する観点から、より好ましい電流密度範囲である。
また、ピット防止剤を適量添加してもよい。
無電解ニッケル-リンめっき浴の組成としては、一般的な無電解ニッケル-リンめっき浴、例えばカニゼンめっき浴を用いることができる。また、ニッケルから成る金属塩やリンを含んだ還元剤、錯化剤、pH調整剤、添加剤などの補助成分を有するものを含有し、めっき後のニッケル-リン被膜のリン含有率が10.0wt%以上となれば、浴組成は限定されず使用することもできる。
集電体用表面処理金属箔100の第1の面側と第2の面側の両面に粗化ニッケル層50を形成する場合、両面の粗化ニッケル層50を同時に形成してもよいし、片面ずつ形成しても差し支えない。同様に、集電体用表面処理金属箔100の第1の面側と第2の面側の両面にニッケル-リン合金層30を形成する場合、両面のニッケル-リン合金層30を同時に形成してもよいし、片面ずつ形成しても差し支えない。
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態における集電体用表面処理金属箔200について説明する。なお、第2実施形態において第1実施形態との相違点は、粗化ニッケル層50と金属基材20との間に形成された金属層40が存在する点である。そのため該相違点について主に説明し、共通する構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
<金属層40>
本実施形態の集電体用表面処理金属箔200において、前記金属層40は、ニッケル又はニッケルを基とする合金であることが、耐電解液性を有する観点からは特に好ましい。
なお金属層40の厚みについて、0.10μm~2.00μmであることが好ましく、より好ましくは0.10μm~1.50μmであることが好ましい。なお、ここでいう金属層40の厚みとは、表面処理金属箔に形成されている金属層40の単層の厚みである。
なお、金属層40の厚みの測定方法についても、上述したニッケル-リン合金層30の厚みの測定方法と同じく、断面観察を用いた厚み測定が適用可能である。
第2実施形態における集電体用表面処理金属箔200は、図3に示されるように第2の面10b側にのみ金属層40及び粗化層60が形成されていてもよいし、図示はしないが第1の面10a及び第2の面10bの両側に金属層40及び粗化層60が形成されていてもよい。また、第2の面10b側に金属層40及び粗化層60が形成される一方で、第1の面10a側にはニッケル層又はニッケルを含む合金層が設けられていることが好ましい。ニッケルを含む合金層としてはニッケル-リン合金層であってもよく、ニッケル層及びニッケル-リン合金層が積層していてもよい。ニッケル-リン合金層である場合、上述するニッケル-リン合金層30と同じリン含有率を有していてもよい。
本実施形態の集電体用表面処理金属箔200において、前記粗化層60と金属基材20との間に金属層40を形成する効果としては以下の点が挙げられる。すなわち、ニッケル-リン合金層30に加えてさらに金属層40を形成することにより、集電体用表面処理金属箔200全体としての耐電解液性の向上や硬度等を調整することができ、所望の性質を有する集電体材としての集電体用表面処理金属箔を製造することが可能となる。
なお本実施形態における金属層40のニッケル付着量の測定方法としては、上述の第1実施形態と同様の方法を適用可能である。例えば断面写真から金属層40の厚みを測定し、前記厚みからニッケル付着量を換算することができる。
<集電体用表面処理金属箔200全体について>
次に、本実施形態における集電体用表面処理金属箔200全体の厚みについて説明する。本実施形態における集電体用表面処理金属箔200全体の厚みは、0.02mm~0.31mmの範囲が好適である。また、強度の観点、及び望まれる電池容量の観点等から、より好ましくは0.02mm~0.21mm、さらに好ましくは0.03mm~0.11mmである。
上記厚み範囲は、製造する電池の体積及び重量エネルギー密度の観点から好ましい。特に電池の薄型化を狙う場合には好ましい。さらに上記厚み範囲の下限については、電池の充放電に伴う影響に対して充分な強度を有する観点ばかりでなく、電池の製造時や取扱い時等に破れや千切れ・シワ等が発生する可能性を回避する観点から好ましい。
本実施形態における集電体用表面処理金属箔200全体の厚み測定方法については、他の実施形態と同様、断面観察による厚み測定、又は、マイクロメーターでの厚み測定が適用可能である。
本実施形態の集電体用表面処理金属箔200において、金属層40と粗化層60のニッケル総付着量は5.5g/m~90.0g/mであることが、バイポーラ電極に適した水素バリア性及び耐電解液性等の観点から好ましい。耐電解液性、水素バリア性、金属基材への密着性をより適切な範囲とするという観点からは、より好ましくは6.0g/m~70.0g/mである。なお、ここでいうニッケル総付着量とは、金属基材20上に形成されている、両面の、全ての金属層40と粗化層60のニッケル付着量の合計値となる。
上述のニッケル総付着量は、上記と同様にICP発光分光分析を用いてニッケル量を測定することで求めることができるが、この方法に限られず、その他公知の測定方法を用いることも可能である。
なお、本実施形態の集電体用表面処理金属箔200におけるニッケル-リン合金層30のリン含有率の算出方法としては、上述の第1実施形態と同様の方法を適用可能である。すなわち具体的には、上述のTEMによる断面観察及びEDXを用いてリン含有率を測定する方法としては、例えばニッケル-リン合金層30の断面に対して厚み30~150nmの薄片試料を作製する。次に、前記ニッケル-リン合金層30の厚み方向3点を測定箇所としてリン含有率を測定し、そのうちの最大値をニッケル-リン合金層中のリン含有率とすることができる。なお、上述した測定箇所においては、厚み方向3点に限られるものではなく、3点以上を測定箇所としてリン含有率を測定し、そのうちの最大値をニッケル-リン合金層中のリン含有率としてもよい。
本実施形態の集電体用表面処理金属箔200において、金属層40と粗化層60のリン総付着量は好ましくは0.2g/m~11.0g/m、より好ましくは0.2g/m~8.0g/m、さらに好ましくは0.3g/m~5.0g/mである。なお本実施形態における集電体用表面処理金属箔200のリン総付着量は、金属基材20上に形成されている、全ての金属層40と粗化層60のリン付着量の合計値となり、両面にニッケル-リン合金層が形成されている場合は両面の合計値となる。集電体用表面処理金属箔200のリン総付着量は上述の第1実施形態と同様にICP発光分光分析を用いて求めることができる。
<集電体用表面処理金属箔200の製造方法>
以下、上述した第2実施形態にかかる集電体用表面処理金属箔200の製造方法について説明する。本実施形態の集電体用表面処理金属箔200の製造方法は、金属基材20上に金属層40を形成する工程をさらに有する。この金属層40がニッケル層である場合には、該工程としては、ワット浴、スルファミン酸ニッケル浴、クエン酸浴等の公知のニッケル浴を用いた公知のめっき工程により形成することが可能である。
≪実施例≫
以下に、実施例を挙げて本発明について、より具体的に説明する。まず、実施例における測定方法について記載する。
[めっき層の厚み測定方法(断面観察)]
得られた集電体用表面処理金属箔を切断し、断面研磨した後、集束イオンビーム走査電子顕微鏡(SMI3200F、エスアイアイ・ナノテクノロジー)を用いて得られたSIM画像から厚み(単位:μm)を求めた。なお、一部の実施例においては、透過型電子顕微鏡(測定装置:日立ハイテクノロジーズ製、H-9500)を用いて厚みを求めた。
[水素透過電流密度測定方法]
図2に記載の装置を用いて、水素透過電流密度の測定を行った。具体的なサンプルのセッティング方法としては、図2(a)に示すように水素発生用のセルX及び透過水素の検出用セルYの2つのセルを準備し、この2つの測定セルの間に集電体用表面処理金属箔100の試験片(サンプル)を設置した。なお、バイポーラ電極構造の負極側を模擬した水素侵入側には集電体用表面処理金属箔100の第1の面10aを、正極側を模擬した水素検出側には集電体用表面処理金属箔100の第2の面10bの側を配置した。そして、各測定セルに65℃の電解液(KOHを主成分として6mol/L含み、KOH、NaOH、LiOHの合計濃度が濃度:7mol/Lであるアルカリ水溶液)を充填し、参照電極(RE1)及び対極(CE1及びCE2)を浸漬した。また、参照電極には飽和KCl溶液のAg/AgCl電極、対極には白金(Pt)を使用した。なお、図2(b)に示すように集電体用表面処理金属箔100における測定径はφ20mm(測定面積3.14cm)とした。水素侵入側の電流制御には、ポテンショスタット(北斗電工株式会社製、マルチ電気化学計測システムHZ-Pro)を用いて、水素検出側の電流測定には電流計(株式会社カスタム製、デジタルマルチメータCDM-7000)を使用した。
具体的な測定条件は、水素発生側でサンプルへカソード電流(-100mA)を5分間印加し、サンプル表面に水素を発生させ、水素検出側で水素原子が透過してきた際に発生する酸化電流の変化を30秒毎に測定した。なお、水素検出側は参照電極を用いずに電流印加なし(自然電位)とした。また、水素発生側のカソード電流印加前に、集電体用表面処理金属箔の表面電位を安定化させるために10分間以上電解液中に浸漬保持し、水素検出側の電流計の電流値が一定になること、つまり、1分間に5μA以上の変動がないことを確認した。
上記手法にて得られた水素検出側の酸化電流の変化より、水素透過電流密度I(μA/cm)を算出した。具体的には、電流印加後の5分間における酸化電流の最大値と、電流印加直前の最小値の差を測定面積3.14cmで除した値を水素透過電流密度とした。以下のようにランク付けし、A~Cを合格、Dを不合格と評価した。結果を表に示す。
A:水素透過電流密度25μA/cm未満
B:水素透過電流密度25μA/cm以上40μA/cm未満
C:水素透過電流密度40μA/cm以上60μA/cm未満
D:水素透過電流密度60μA/cm以上
なお、試験片に粗化層が形成されている場合には、粗化の隙間からの電解液浸出により、
水素透過電流密度の測定が正常に出来ない場合がある。粗化の隙間からの電解液浸出の影響を抑制するために、測定セルの間の設置に先立って、粗化層が形成されている面に、測定径Φ20mmを切りぬいたポリプロピレン樹脂を測定位置に合わせて接着した後、測定セルの間に試験片を配置した。ポリプロピレン樹脂は厚み70μmの厚さのフィルムを用い、170℃、0.1~0.4MPaの条件で3秒加圧する熱圧着の方法で接着した。
[ニッケル及び/又はリンの付着量(総付着量)、リン含有率の測定方法]
得られた集電体用表面処理金属箔において、ICP発光分光分析にてニッケル総付着量及びリン総付着量を測定した。なお、ニッケル-リン合金層30の他に、金属層40や粗化ニッケル層50が形成された構成において、ニッケル-リン合金層30のみのニッケル付着量及びリン付着量を測定する場合には、同一のニッケル-リン合金めっき条件にて、ニッケル-リン合金層30のみを形成したサンプルを1つ用意し、そのサンプルを用いて、ICP発光分光分析によりニッケル付着量及びリン付着量を測定した。また、得られたニッケル付着量及びリン付着量からリン含有率を算出した。結果を表に示す。
なお、リン含有率の測定方法としては、上述したICP発光分光分析の方法に限られず、TEM断面観察及びEDXを用いて金属層40の上層及び下層に形成されたニッケル-リン合金層30中のリン含有率を測定することも可能である。
また、集電体用表面処理金属箔の作製過程において、同一の条件で形成したサンプルを複数用意し、各層形成後のタイミングで、ICP発光分光分析により、各層形成後のニッケル総付着量及びリン総付着量、それぞれの差分よりリン含有率を算出することも可能である。
[算術平均高さSa、算術平均粗さRa、最大高さSzの測定]
集電体用表面処理金属箔の最表面について、ISO25178-2:2012に準拠してレーザー顕微鏡(オリンパス社製、3D測定レーザー顕微鏡 LEXT OLS5000)を使用し、三次元表面性状パラメータ(算術平均高さSa及び最大高さSz)を測定した。また、JIS B0601:2013に準拠して上記同様のレーザー顕微鏡を使用し、算術平均粗さRaを測定した。結果を表に示す。
具体的には、まず対物レンズ100倍(レンズ名称:MPLAPON100XLEXT)の条件で3視野をスキャンし、各視野について解析アプリケーションを用いて自動補正処理(ノイズ除去及び傾き補正)を行った。その後に、面粗さ計測及び線粗さ計測のアイコン(前記オリンパス社製レーザー顕微鏡付属の解析ソフト)をクリックして解析を行うことで、算術平均高さSaと算術平均粗さRa、最大高さSzを得た。なお、算術平均高さSa及び最大高さSzについては上記3視野で得られた測定値を平均して求め、算術平均粗さRaについては上記3視野内の20箇所(線)での測定値を平均することで求めた。また、解析におけるフィルター条件(F演算、Sフィルター、Lフィルター)は設定せずに、無しの条件で解析を行った。
[活物質密着試験評価]
集電体用表面処理金属箔の最表面と活物質との密着性は、以下のように作製される模擬正極材を用いて評価した。まず、正極活物質の塗布液を作製した。水酸化ニッケル、カルボキシメチルセルロース2wt%水溶液及びPTFE60wt%分散液を、重量比で、100(水酸化ニッケル):50(カルボキシメチルセルロース2wt%水溶液):1(PTFE60wt%分散液)となるように混合することでペースト状正極活物質合剤の塗布液を作製した。次に、得られた集電体用表面処理金属箔の粗化層が形成された側の最表面に、アプリケータを用いて上記塗布液を厚さ500μmとなるよう塗布した後、熱風乾燥炉内で150℃・10分間保持して塗布液を乾燥させ、正極材前駆体を得た。前記正極材前駆体を、その全体厚みに対して圧下率約30%でロール圧延し、模擬正極材を作製した。得られた模擬正極材を、150mm×100mmの大きさに切り出し、65℃のアルカリ電解液(上述の水素透過測定用電解液と同組成)に480時間浸漬した。浸漬後の模擬正極材を取り出した後、正極活物質合剤の塗布面の外観を観察し、その剥離の有無を確認した。剥離状態として、全面剥離又は一部剥離したものを下記ランクと評価し、不合格とした。
浸漬試験で全面剥離:Eランク (不合格)
浸漬試験で一部剥離:Dランク (不合格)
次いで、上記の試験で剥離が確認されなかった模擬正極材に対しては、合格とした上で、さらなる密着性優劣確認のために、上記アルカリ浸漬後の模擬正極材に対して90°曲げ試験を行った。すなわち、図4に示すように、正極活物質合剤塗布面が内側となるように90°に折り曲げ、折り曲げ部での正極活物質合剤の剥離状態を観察した。以下の剥離度に分けて評価・ランク付けを行った。なお、剥離度は、正極活物質合剤が剥離した箇所の長さ/折り曲げ全長×100(%)とした。
追加試験での剥離度70%以上:Cランク
追加試験での剥離度50%以上70%未満:Bランク
追加試験での剥離度50%未満:Aランク
[金属基材との密着性試験評価]
以下、金属基材と粗化層との密着性を評価するための試験について記載する。なお本願において、粗化層の金属基材への密着性が不足している場合には粗化層が粉状に脱落するため、この現象を「粉落ち」とも称する。
まず、基準サンプルとして、粘着テープ(ニチバン社製、商品名「セロテープ(登録商標)」)を、白色台紙(明度L:93以上)に貼り付けたものを準備し、分光測色計(製品名「CM-5」、コニカミノルタ社製)を使用して、明度L*、色度a*、b*を測定した。なお、測定に際しては、CIE1976L*a*b*色差モデルを用いた。
そして、実施例及び比較例で得られた表面処理金属箔の粗化層が形成された面に、粘着テープ(ニチバン社製、商品名「セロテープ(登録商標)」)を、幅24mm、長さ50mmの範囲となるように貼付した後、貼付した粘着テープによる剥離試験を、JIS H 8504に記載された引きはがし試験方法の要領で行った。そして、剥離試験後の粘着テープを、上記基準サンプルと同じ台紙に貼り付け、上記と同様にして、分光測色計を使用して、明度L*、色度a*、b*を測定した。そして、予め測定した、基準サンプルの明度L*、色度a*、b*の測定結果、及び剥離試験後の粘着テープの明度L*、色度a*、b*の測定結果から、これらの差ΔE*ab(ΔE*ab=〔(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2〕1/2)を算出し、以下の基準に基づいて、粗化層の密着性の評価を行った。なお、ΔE*abが小さいほど、剥離試験において剥離する量が少なく、つまり、剥離試験後の、粗化層の残存率が高く、基材に対する密着性に優れると判断することができる。
A :ΔE*ab=1未満
B :ΔE*ab=1以上、10未満
C :ΔE*ab=10以上、40未満
D :ΔE*ab=40以上
[総合評価]
上述の水素透過電流密度、活物質密着試験評価、金属基材との密着性試験評価の3種類の評価の全てがC以上の場合「○(良)」、3種類の評価の全てがB以上の場合「◎(優)」、3種類の評価のうち1つでもDがあれば、「×(不良)」、として総合的に評価した。
<実施例1>
まず金属基材20として下記に示す化学組成を有する低炭素アルミキルド鋼の冷間圧延箔(厚さ50μm)を準備した。
C:0.04重量%、Mn:0.32重量%、Si:0.01重量%、P:0.012重量%、S:0.014重量%、Al:0.1重量%以下、残部:Fe及び不可避的不純物
次に、準備した金属基材に対して前処理(電解脱脂、硫酸浸漬の酸洗)を行った後、下記条件にて両面に電解ニッケルめっきを行ってニッケル層を形成した。
<ニッケルめっき条件>
・浴組成:
硫酸ニッケル六水和物:250g/L
塩化ニッケル六水和物:45g/L
ホウ酸:30g/L
・pH:4.0~5.0
・浴温:60℃
・電流密度:10A/dm
次に、両面にニッケルめっき層を有する金属基材の第2の面10bとなる側に、下記条件にて粗化ニッケル層を形成した。なお、粗化ニッケルめっきの条件は以下の通りとした。
<粗化ニッケルめっき条件>
・浴組成:
めっき浴中の硫酸ニッケル六水和物濃度:10g/L
めっき浴中の塩化ニッケル六水和物濃度:10g/L
めっき浴の塩化物イオン濃度:3g/L
めっき浴中のニッケルイオンとアンモニウムイオンとの比:
ニッケルイオン/アンモニウムイオン(重量比)=0.17
・pH6.0
・浴温:50℃
・電流密度:18A/dm
めっき時間:43秒
上記で得られた粗化ニッケル層を有する金属基材の第2の面10bとなる側に、下記ニッケル-リン合金めっき条件により、ニッケル-リン合金層30を形成した。
<ニッケル-リン合金めっき条件>
・浴組成:
硫酸ニッケル六水和物:200g/L
塩化ニッケル六水和物:10g/L
ホウ酸:30g/L
クエン酸三ナトリウム(無水):10g/L
亜リン酸:40g/L
亜リン酸水素二ナトリウム:110g/L
・浴温:60℃
・pH:1.5~2.0
・撹拌:空気撹拌又は噴流撹拌
・電流密度:5A/dm
なお、上記サンプルの1つをニッケル-リン合金めっき後に溶解させてICP発光分光分析測定(測定装置:島津製作所社製、誘導結合プラズマ発光分光分析装置 ICPE-9000)を行った結果、リン含有率は表のとおりであった。また得られた集電体用表面処理金属箔について、各層の実測厚み、表面粗度(算術平均高さSa、算術平均粗さRa、最大高さSz)水素透過電流密度の値、活物質密着評価、及び、金属基材との密着性評価は、表のとおりであった。
<実施例2>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、粗化ニッケルめっきのめっき時間を45秒とし、ニッケル-リン合金層の厚みを表に記載の構成となるようにした以外は、実施例1と同様に行った。
<実施例3>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、粗化ニッケルめっきのめっき時間を66秒とし、ニッケル-リン合金層の厚みを表に記載の構成となるようにした以外は、実施例1と同様に行った。
<実施例4>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、粗化ニッケルめっきのめっき時間を65秒とし、ニッケル-リン合金層の厚みを表に記載の構成となるようにした以外は、実施例1と同様に行った。
<実施例5>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、粗化ニッケルめっきのめっき時間を40秒とし、ニッケル-リン合金層の厚みを表に記載の構成となるようにし、第1の面10aのニッケル層に替えて、実施例1と同様のめっき条件によりニッケル-リン合金層を形成した。それ以外は実施例1と同様に行った。第2の面10b側のニッケル-リン合金層30の厚みと、第1の面10a側のニッケル-リン合金層の厚みとの合計厚みを、総厚みとして表1に示した。
<実施例6>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、粗化ニッケルめっきのめっき時間を35秒とし、各層の厚みを表に記載の構成となるようにし、集電体用表面処理金属箔の第1の面10aのニッケル層の上に、実施例1と同様のめっき条件によりニッケル-リン合金層を形成した。それ以外は実施例1と同様に行った。第2の面10b側のニッケル-リン合金層30の厚みと、第1の面10a側のニッケル-リン合金層の厚みとの合計厚みを、総厚みとして表1に示した。
<比較例1>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、ニッケル-リン合金層30に替えて、実施例1と同じニッケルめっき条件によりニッケル層を形成した。そして、各層の厚みを表に記載の構成となるようにした以外は、実施例1と同様に行った。
<比較例2>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、各層の厚みを表に記載の構成となるようにした以外は、実施例1と同様に行った。
<比較例3>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、各層の実測厚みを表に記載の構成となるようにした以外は、実施例1と同様に行った。
<比較例4>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、粗化ニッケルめっきのめっき時間を20秒とし、各層の厚みを表に記載の構成となるようにした以外は、実施例1と同様に行った。
<比較例5>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、粗化ニッケルめっきのめっき時間を103秒とし、各層の厚みを表に記載の構成となるようにした以外は、実施例1と同様に行った。
<比較例6>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、粗化ニッケル層を形成せずにニッケル-リン合金層を形成した。そして、ニッケル-リン合金めっきのリン含有率と各層の厚みを表に記載の構成となるようにした以外は、実施例1と同様に行った。
Figure 2023098440000002
Figure 2023098440000003
Figure 2023098440000004
各実施例は、集電体用に特に良好な水素バリア性、活物質との密着性、及び、金属基材と粗化層との密着性を兼ね備えていることが確認された。一方で比較例においては、上記いずれかの観点において目的を達成することができなかったことが確認された。
なお、上記した実施形態と各実施例は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
また、上記した実施形態と実施例における集電体用表面処理金属箔は主としてバイポーラ構造の二次電池用集電体に用いられるものとして説明したが、本発明の集電体用表面処理金属箔はバイポーラ構造の二次電池用集電体に限らず、水素を含む、あるいは水素が発生する電池(アルカリ電解液を用いた電池)の集電体に適用可能であり、車載電池などの過酷環境下においても有効な水素バリア性を有するため好適に用いることが可能である。
以上説明したように、本発明の集電体用表面処理金属箔は、水素バリア性が要求される種々の種類の電池の集電体に対して適用が可能である。また、本発明の集電体用表面処理金属箔を車載用電池等に用いた場合、特に低燃費化に貢献することができる。
100 集電体用表面処理金属箔
200 集電体用表面処理金属箔
10a 第1の面
10b 第2の面
20 金属基材
30 ニッケル-リン合金層
40 金属層
50 粗化ニッケル層
60 粗化層

Claims (8)

  1. 第1の面及び、前記第1の面と反対側に位置する第2の面を有した集電体用表面処理金属箔であって、
    前記集電体用表面処理金属箔の基材が金属基材からなり、
    前記金属基材が鋼箔であり、
    前記金属基材の少なくともいずれか一方の面側に粗化層を有し、
    前記粗化層がニッケル-リン合金層と、粗化ニッケル層を含み、
    前記ニッケル-リン合金層の厚さが0.08μm~0.6μm及びリン含有率が10.0wt%以上であり、
    前記粗化ニッケル層が前記金属基材と前記ニッケル-リン合金層との間に形成されており、
    前記粗化層の表面の算術平均高さSaが0.4μm~2.5μm、及び、最大高さSzが5.0μm~20.0μmであることを特徴とする、
    集電体用表面処理金属箔。
  2. 前記粗化層のニッケル付着量が5.0g/m~65.0g/mである、請求項1に記載の集電体用表面処理金属箔。
  3. 前記粗化層のリン付着量が0.2g/m~5.0g/mである、請求項1又は請求項2に記載の集電体用表面処理金属箔。
  4. 前記金属基材が、低炭素鋼又は極低炭素鋼である、請求項1~3のいずれか一項に記載の集電体用表面処理金属箔。
  5. 前記金属基材と前記粗化層との間にニッケルを含有する金属層が形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の集電体用表面処理金属箔。
  6. 前記金属層の厚みが0.10μm~2.00μmである、請求項5に記載の集電体用表面処理金属箔。
  7. 前記粗化層及び前記金属層のニッケル総付着量が5.5g/m~90.0g/mである、請求項5又は請求項6に記載の集電体用表面処理金属箔。
  8. 前記粗化層及び前記金属層のリン総付着量が0.2g/m~11.0g/mである、請求項5~7のいずれか一項に記載の集電体用表面処理金属箔。
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