JP2023098438A - 集電体用表面処理金属箔及びその製造方法 - Google Patents

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貴弘 渡邉
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沙恵子 溝口
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Abstract

【課題】バイポーラ電池に好適な水素バリア性、及び、二次電池に求められる耐電解液性等を兼ね備えた集電体用表面処理金属箔を提供する。【解決手段】第1の面及び、前記第1の面と反対側に位置する第2の面を有した集電体用表面処理金属箔であって、前記集電体用表面処理金属箔の基材が金属基材からなり、前記金属基材の少なくともいずれか一方の面側にニッケル-リン合金層が形成されており、前記ニッケル-リン合金層はX線回折の2θ/θ測定において回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲の少なくともいずれか一方において、回折ピークが観察されることを特徴とする、集電体用表面処理金属箔。【選択図】 図1(a)

Description

本発明は、二次電池などの集電体に特に好適に使用される集電体用表面処理金属箔及びその製造方法に関する。
従来、車載用等に採用される二次電池としてニッケル水素電池やリチウムイオン電池が知られている。そしてこれらの二次電池の電極構造の種類としては、集電体の両面に共に正極層又は負極層を形成したモノポーラ電極と、集電体の両面に正極層(正極活物質層)と負極層(負極活物質層)とを形成したバイポーラ電極とが知られている。
バイポーラ電池は、上記したバイポーラ電極を電解質、セパレータなどを挟んで積層し、単一の電槽内に収容することにより構成される。この構成により、各電極を直列回路で積層配置することが可能となるため、電池の内部抵抗を小さくすることができ、作動電圧、出力を大きくし易いことが知られている。また、電池性能と併せて、モノポーラ電極を用いた従来の電池と比較して、電流を取り出すためのリードなどの部材点数を電池設計によって省略、削減することで、電池体積あるいは重量を低減できることから、電池の体積及び重量エネルギー密度の向上を図ることができると考えられている。
例えば下記の特許文献1には、ニッケル箔等の金属箔をバイポーラ電池の集電体として用いることが開示されている。
特開2020-053401号公報
本発明者らは二次電池用途に好適な金属箔としてニッケルめっきを施した表面処理金属箔の開発を進める中で、表面処理金属箔における水素透過を抑制することにより電池性能の劣化を低減できることを見出した。
例えばニッケル水素電池では、負極の活物質として水素を、一般的には水素吸蔵合金を使用する。従来のモノポーラ電極であれば集電体などの電池部材は電池種に応じた耐電解液性を表面に有すればよかったところ、上記のようなバイポーラ電極の場合は、負極側に存在する水素が金属材料中を移動し正極側に透過する現象が生じやすく、このような透過現象が発現した場合、電池性能が低下しやすくなることに想到した。
本発明は、かような課題を解決することを鑑みてなされたものであり、集電体用に特に良好な水素バリア性を備えた表面処理金属箔を提供することを目的とする。
上記に例示した課題を解決するために、本発明の一実施形態における集電体用表面処理金属箔は、(1)第1の面及び、前記第1の面と反対側に位置する第2の面を有した集電体用表面処理金属箔であって、前記集電体用表面処理金属箔の基材が金属基材からなり、前記金属基材の少なくともいずれか一方の面側にニッケル-リン合金層が形成されており、前記ニッケル-リン合金層はX線回折の2θ/θ測定において回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲の少なくともいずれか一方において、回折ピークが観察されることを特徴とする。
上記(1)において、(2)前記ニッケル-リン合金層が、前記金属基材の両面に形成されていることが好ましい。
上記(1)又は(2)において、(3)前記ニッケル-リン合金層におけるリン含有率が5.0wt%~18.0wt%であることが好ましい。
上記(1)~(3)のいずれかにおいて、(4)前記ニッケル-リン合金層の厚みが0.05μm以上3.00μm未満であることが好ましい。
上記(1)~(4)のいずれかにおいて、(5)前記ニッケル-リン合金層の前記リン含有率が下記式[1]を満たすことが好ましい。
Figure 2023098438000002
ただしX及びYは以下のように定義される。
X:回折角2θ=41.0°~42.5°範囲における回折強度の最大値
Y:回折角2θ=47.5°~49.0°範囲における回折強度の最大値
上記(1)~(5)のいずれかにおいて、(6)前記ニッケル-リン合金層におけるリン含有率が8.0wt%~18.0wt%であり、前記ニッケル-リン合金層の合計厚みが0.10μm以上6.00μm未満であることが好ましい。
上記(1)~(6)のいずれかにおいて、(7)前記集電体用表面処理金属箔の基材が、低炭素鋼又は極低炭素鋼であることが好ましい。
上記(1)~(7)のいずれかにおいて、(8)前記ニッケル-リン合金層におけるニッケル付着量が0.3g/m~20.0g/mであることが好ましい。
上記(1)~(8)のいずれかにおいて、(9)前記集電体用表面処理金属箔において、前記第1の面、及び前記第2の面の少なくともいずれか一方の面側に、ニッケル・コバルトのうち少なくとも1種類を含有する金属層を有することが好ましい。
上記(9)において、(10)前記金属層がニッケル層であり、前記ニッケル-リン合金層の上層に形成されていることが好ましい。
上記(10)において、(11)前記ニッケル層が前記ニッケル-リン合金層の下層にも形成されていることが好ましい。
上記(10)又は(11)において、(12)前記ニッケル-リン合金層及び前記ニッケル層におけるニッケル総付着量が2.0g/m~60.0g/mであることが好ましい。
上記(1)~(12)のいずれかにおいて、(13)前記第1の面側、及び前記第2の面側の少なくともいずれか一方の最表面に粗化層が形成され、前記粗化層の算術平均高さSaが0.2~1.30μmであることが好ましい。
上記(13)において、(14)前記粗化層が粗化ニッケル層であり、少なくとも前記ニッケル-リン合金層又は前記金属層の上層に形成されていることが好ましい。
上記(13)又は(14)において、(15)前記ニッケル-リン合金層及び前記金属層、前記粗化層におけるニッケルの総付着量が5.0g/m~90.0g/mであることが好ましい。
本発明によれば、電池、特にバイポーラ電池に好適な水素バリア性を備えた集電体用表面処理金属箔を提供することができる。
第1実施形態の集電体用表面処理金属箔の一例を模式的に示した図である。 第1実施形態の集電体用表面処理金属箔の一例を模式的に示した図である。 第1実施形態の集電体用表面処理金属箔の一例を模式的に示した図である。 実施形態の集電体用表面処理金属箔の水素バリア性を測定する装置の模式図である。 実施形態の集電体用表面処理金属箔の水素バリア性を測定する装置の模式図である。 実施形態の集電体用表面処理金属箔の水素バリア性を測定した際に得られたプロット図である。 第2実施形態の集電体用表面処理金属箔の一例を模式的に示した図である。 第2実施形態の集電体用表面処理金属箔の一例を模式的に示した図である。 第2実施形態の集電体用表面処理金属箔の一例を模式的に示した図である。 第2実施形態の集電体用表面処理金属箔の一例を模式的に示した図である。 第3実施形態の実施形態の集電体用表面処理金属箔の一例を模式的に示した図である。 第3実施形態の実施形態の集電体用表面処理金属箔の一例を模式的に示した図である。 第3実施形態の集電体用表面処理金属箔の一例を模式的に示した図である。 第3実施形態の集電体用表面処理金属箔の一例を模式的に示した図である。 第3実施形態の集電体用表面処理金属箔の一例を模式的に示した図である。 第3実施形態の集電体用表面処理金属箔の一例を模式的に示した図である。 第3実施形態の集電体用表面処理金属箔の一例を模式的に示した図である。 本実施形態の実施例24において、X線回折の2θ/θ測定における回折角2θ=41.0°~42.5°の範囲に回折ピークを示す図である。 本実施形態の実施例24において、X線回折の2θ/θ測定における回折角2θ=47.5°~49.0°の範囲に回折ピークを示す図である。
≪第1実施形態≫
以下、本発明の集電体用表面処理金属箔100の第1実施形態について、図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態の集電体用表面処理金属箔100を模式的に示した図である。なお本実施形態の集電体用表面処理金属箔100は、バイポーラ電池の集電体に適用されるほか、モノポーラ電池の正極又は負極の集電体にも適用され得る。電池の種類としては二次電池であっても一次電池であってもよい。
本実施形態の集電体用表面処理金属箔100は、金属基材20、及びニッケル-リン合金層30を有する。集電体用表面処理金属箔100は、第1の面10a、及び前記第1の面側とは反対側の第2の面10bを有する。なお前記集電体用表面処理金属箔100において、水素吸蔵合金を含む電池の集電体として用いる場合、前記第1の面10aの側には、電池として組み立てる際に負極材料として水素吸蔵合金が配置される。一方で第2の面10bの側には、例えばバイポーラ電極構造のニッケル水素電池に適用する場合、正極材料が配置される。
本実施形態の集電体用表面処理金属箔100は、上述のようにニッケル-リン合金層30を有することを特徴とする。
ニッケル-リン合金層30は、図1(a)、(b)に示されるように、上記した第2の面10bの側に形成されていてもよいし、図1(c)に示されるように、上記した第1の面10aの側に形成されていてもよい。
またニッケル-リン合金層30は、図1(b)に示されるように第1の面10a及び第2の面10bの両方に形成されていてもよい。また、図1(c)に示されるように第1の面10aの側にニッケル-リン合金層30、第2の面10bの側に後述する金属層40が形成されていてもよいし、逆に第1の面10aの側に金属層40、第2の面10bの側にニッケル-リン合金層30が形成されていてもよい。
ニッケル-リン合金層30は、前記集電体用表面処理金属箔内の水素の透過又は拡散を抑制する機能を有する。
<金属基材20について>
本実施形態の集電体用表面処理金属箔100に使用される金属基材20としては、鋼箔、銅箔等の金属箔が好ましく用いられる。このうち特に鋼箔が好ましく用いられ、鋼箔としては、クロム(Cr)及び他の添加金属元素が1.0重量%未満である鉄を基とする金属基材が好ましい。鋼箔の種類として具体的には、低炭素アルミキルド鋼(炭素量0.01~0.15重量%)、炭素量が0.01重量%未満の極低炭素鋼、又は極低炭素鋼にチタン(Ti)やニオブ(Nb)などを添加してなる非時効性極低炭素鋼が好適に用いられる。また、電解めっきで製造される電解鉄箔であってもよい。つまり、本実施形態における鋼箔は、圧延鋼箔、電解鉄箔を含むものとする。
本実施形態の集電体用表面処理金属箔100に使用される金属基材20の厚さとしては、0.01~0.30mmの範囲が好適である。体積及び重量エネルギー密度の観点を重視した電池の集電体として用いる場合は、強度の観点、及び、望まれる電池容量の観点、等より、より好ましくは0.01~0.20mm、さらに好ましくは0.025~0.10mmである。金属基材20の厚さは、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)の断面観察による厚み測定が好適に用いられる。また、表面処理前、つまりニッケルーリン合金めっき前の厚み測定としては、マイクロメーターでの厚み測定等が適用可能である。
<ニッケル-リン合金層30について>
本実施形態の集電体用表面処理金属箔100に含まれるニッケル-リン合金層30はニッケル(Ni)とリン(P)が含まれる合金層、又はニッケルとリンからなる合金(「Ni-P合金」とも称する)が含まれる金属層である。なおこのニッケルとリンからなる合金状態としては、固溶体、共析・共晶、化合物(金属間化合物)、または非晶質内にニッケルとリンが含まれる状態のいずれであってもよいし、それらが共存していてもよい。ニッケル-リン合金層30は実質的にニッケルとリンのみから構成されていてもよいし、本発明の課題を解決し得る限りにおいてニッケル及びリン以外の金属元素や不可避の不純物を含んでいてもよい。なお、ニッケル及びリン以外にニッケル-リン合金層30に含まれ得る金属元素については後述する。
本実施形態においてニッケル-リン合金層30は、X線回折の2θ/θ測定において回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲の少なくともいずれか一方において、回折ピークが観察されることを特徴とする。なお、ここでいう回折ピークとは、ニッケルとリンからなる合金に由来するものである。
すなわち本発明者らが、水素バリア性を有する集電体用表面処理金属箔を得るために実験を繰り返す中で、ニッケル-リン合金層30中における特定の結晶相の存在が水素バリア性に影響することを見出した。そして、ニッケル-リン合金層30は、X線回折の2θ/θ測定において、上記範囲のいずれかに回折ピークが観察される場合に、上述した水素バリア性の課題を解決可能であること、さらに、バイポーラ電池用の集電体として好適であることを見出した。
なお回折角2θ=41.0°~42.5°の範囲において回折ピークが得られた場合、ニッケルーリン合金層30中にNiPの結晶構造における結晶面(321)の存在を確認することができ、NiPの結晶構造の合金相を含むものといえるものである(ICDD PDF-2 2014のデータベースの01-074-3245に基づく)。また、2θ=47.5°~49.0°の範囲に観察される回折ピークの由来となる結晶相については、たとえば公知となる論文等からNi-P準安定結晶相に由来するものと判断できる(日本金属学会誌(1977),第41巻,1130-1136,電析Ni-P合金の加熱にともなう構造変化)。
換言すれば、本実施形態においてニッケル-リン合金層30はNiP及びNi-P準安定結晶相の少なくとも一方を含んでいることが好ましい。
上述したNi3PやNi-P準安定結晶相は、結晶粒界付近で生成される傾向にある。結晶粒界は水素の透過経路となり易く、そこに水素のトラップ効果が高いNi3P及び/又はNi-P準安定結晶相が存在することにより、良好な水素バリア性が得られたと推測される。
なお本実施形態におけるニッケル-リン合金層30は、NiP及びNi-P準安定結晶相以外の、ニッケルとリンからなる合金相が含まれていてもよい。
本実施形態においてニッケル-リン合金層30は、リン含有率(wt%)が5.0wt%以上であることが好ましく、より好ましくは7.0wt%以上、さらに好ましくは8.0wt%以上、さらにより好ましくは9.0wt%以上、特に好ましくは10.0wt%以上である。なお、リン含有率の上限としては、特に上限はないものの、製造上の観点から18.0wt%以下が好ましく、より好ましくは17.0wt%以下、さらに好ましくは16.0wt%以下である。ニッケルーリン合金層30のリン含有率を5.0wt%以上とすることで、上述したNiP及び/又はNi-P準安定結晶相を形成した際の水素バリア性が良好となるため好ましい。
なお、リン含有率は、以下のとおり算出可能である。
リン含有率(wt%)=リン付着量(g/m)/(ニッケル付着量(g/m)+リン付着量(g/m))×100
なお、本実施形態におけるニッケル-リン合金層30中の好ましいリン含有率の範囲は、後述する第2実施形態及び第3実施形態においても同様である。
なお本実施形態におけるリン含有率の算出方法としては、例えば、ニッケル-リン合金層を形成した後にICP発光分光分析装置等を用いて求めることができる。また、その他の方法として、金属基材上にニッケル-リン合金層を形成した時点において蛍光X線装置を用いて測定する方法、SEM(走査電子顕微鏡)やTEM(透過電子顕微鏡)備え付けのEDX(エネルギー分散型X線分析法)等を用いて、ニッケル-リン合金層の表面もしくは断面から測定する方法などが挙げられる。
なお、本実施形態において、金属基材20上にニッケル-リン合金層30以外の、金属元素としてニッケルが含まれる金属層40が形成された構成においては、ICP発光分光分析を用いてニッケル-リン合金層30のみのリン含有率を求めることは困難となるが、例えば次のような測定方法でリン含有率を求めることができる。具体的には、金属層40がニッケル層の場合、まず断面写真から金属層40の厚みを測定し、前記厚みから金属層40のニッケル付着量を換算する。その後、ICP発光分光分析を用いて、ニッケル-リン合金層30と金属層40含む全ての層の総ニッケル付着量を測定する。この総ニッケル付着量から前記金属層40のニッケル付着量を差し引くことで、ニッケル-リン合金層30だけのリン含有率を間接的に算出することは可能である。また、さらにSEMやTEMでの断面観察から特定のニッケル-リン合金層30に対してEDXを用いてリン含有率を測定することも可能である。
上述のTEMによる断面観察及びEDXを用いてリン含有率を測定する方法としては、例えばニッケル-リン合金層30の断面に対して厚み30~150nmの薄片試料を作製する。次に、前記ニッケル-リン合金層30の厚み方向3点を測定箇所としてリン含有率を測定し、そのうちの最大値をニッケルーリン合金層中のリン含有率とすることができる。なお上述した測定箇所においては、厚み方向3点に限られるものではなく、3点以上を測定箇所としてリン含有率を測定し、そのうちの最大値をニッケルーリン合金層中のリン含有率としてもよい。
本実施形態においてニッケル-リン合金層30は、リン含有率(wt%)が下記式[1]を満たすことが好ましい。
Figure 2023098438000003
X:回折角2θ=41.0°~42.5°範囲における回折強度の最大値
Y:回折角2θ=47.5°~49.0°範囲における回折強度の最大値
なお、本実施形態において、式[1]を満たすニッケル-リン合金層30は、第1の面10a及び第2の面10bの少なくともいずれか一方に形成されていればよい。
本実施形態の集電体用表面処理金属箔100に含まれるニッケル-リン合金層30は、本発明の課題を解決し得る限り、他の金属元素や不可避の不純物を含んでいてもよい。例えば、ニッケル-リン合金層30中には、コバルト(Co)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、ボロン(B)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、亜鉛(Zn)、硫黄(S)等の金属元素が含まれていてもよい。なお、ニッケル-リン合金層30中のニッケル(Ni)とリン(P)以外の金属元素の割合は20wt%以下が好ましく、より好ましくは10wt%以下が好ましく、さらに好ましくは5wt%以下、さらにより好ましくは1wt%以下、特に好ましくは0.3wt%以下が好ましい。ニッケル-リン合金層30は実質的にニッケルとリンのみから構成されていてもよいため、不可避の不純物を除く他の金属元素の含有割合の下限は0%である。含有される他の金属元素の種類及び量は、蛍光X線(XRF)測定装置やGDS(グロー放電発光表面分析法)等の公知の手段により測定することが可能である。
本実施形態の集電体用表面処理金属箔100に含まれるニッケル-リン合金層30の形成方法としては、合金めっき後に熱処理を施すことにより、NiP及びNi-P準安定結晶相の少なくとも一方を形成することが可能である。なお合金めっきとしては、例えば電解めっき、無電解めっき、溶融めっき、乾式めっき等の方法が挙げられる。このうち、コストや膜厚制御等の観点より特に電解めっきによる方法が好ましい。
例えば、金属基材20の少なくとも片面に、電解めっき等の方法により、ニッケルイオンと亜リン酸イオンを含有するめっき液を用いて合金層を形成する方法等が挙げられる。なお、これらの方法について詳細は後述する。また、合金めっき後の熱処理についても詳細は後述する。
次に、ニッケル-リン合金層30の水素バリア性について説明する。
従来技術に対し、本発明者らは電池性能を向上するために実験を繰り返す過程において、原因不明の電圧低下(自己放電)現象の発生、及びその現象を解消するために集電体用表面処理金属箔100中における水素透過を抑制することが有効であることを見出した。
水素透過が発生している原因と、集電体用表面処理金属箔100中における水素透過の抑制により上記した電圧低下(自己放電)現象の発生を抑制できる理由はいまだ明らかではないが、本発明者らは以下のように予測した。
すなわち本実施形態において、集電体用表面処理金属箔100がバイポーラ電池の電極に使用された場合には、負極材料として用いられる水素吸蔵合金が集電体用表面処理金属箔100の一方の面側に配置されると共に、その反対側には正極材料が配置されることとなる。この場合、集電体用表面処理金属箔100を隔てて、水素が豊富な環境(負極)と水素が少ない環境(正極)とが存在し、水素濃度勾配が発生することとなる。そして何らかの契機により集電体用表面処理金属箔100中を水素が透過・移動することにより、透過した水素が正極で反応し、上述のような電圧低下(自己放電)が発生するものと予想した。
このような水素の透過が原因による電圧低下は、電池使用環境下に置いて水素が透過しやすい状態が多いほど反応が加速し、電圧低下が発生するまでの時間が早くなる。つまり、電池性能の劣化が早くなると考えられる。水素が透過しやすくなる条件としては、上記水素濃度勾配が高くなるほど透過しやすくなると考えられる。また、水素濃度勾配に加え、表面処理金属箔の両面に電圧がかかった状態はさらに水素透過が促進されやすいと考えられる。つまり、水素吸蔵合金を用いる電池やニッケル水素電池などの濃度勾配の高い電池、充放電の多い二次電池において、水素透過が、時間経過とともに電池性能が漸減する一因となっている可能性がある。一方で、電池性能の漸減はその他の要因も大きく、水素透過の現象は捉えにくいため、従来のモノポーラ電池の使用・開発の中で明らかになっていなかったところ、本発明者らがバイポーラ電池の集電体用表面処理金属箔の開発・実験を繰り返す中で、電池性能の劣化の抑制にニッケルーリン合金層30の水素バリア性向上が寄与することに想到したものである。よって、本実施形態の表面処理金属箔は、バイポーラ電池、特に水素吸蔵合金を用いた電池の集電体に特に好適に用いられるが、その他の水素吸蔵合金が用いられない電池であっても、水素を含む、あるいは水素が発生する電池であれば、これまでは捉えられていなかった水素透過による緩やかな電池性能の劣化がある可能性が考えられ、本実施形態の表面処理金属箔を好適に用いることができる。例えば、アルカリ二次電池においては、ニッケル亜鉛電池では負極に亜鉛、ニッケルカドミウム電池では負極にカドミウムを使用する以外は、ニッケル水素電池と同様に水酸化カリウムを主成分とするアルカリ電解液を使用するなど、電池構成部材はほとんど同じであり、負極側に水素が発生し易い特徴を持っている。
よって、水素吸蔵合金内に大量の水素が蓄えられるニッケル水素電池ほどではないものの、これらの電池をバイポーラ型構造のバイポーラ電池としたとき、集電体表裏間での水素の移動現象は起こりうる可能性があり、同様に水素透過によって電池性能が低下し易くなると考えられる。したがって、バイポーラ型のアルカリ二次電池においても本実施形態の表面処理金属箔を好適に用いることができる。
次に、水素バリア性の評価方法について説明する。上述のように集電体用表面処理金属箔100中を水素が透過・移動する場合、水素侵入側から水素検出側に到達した水素原子は酸化されて水素イオンとなる。このときの酸化電流の値は、水素検出面に到達した水素量に応じて増減するため、検出された電流値により集電体用表面処理金属箔の水素バリア性を数値化・評価することが可能となる。(水流 徹,東京工業大学,材料と環境,63,3-9(2014),電気化学法による鉄鋼への水素侵入・透過の計測)
上記予想の結果、発明者らが測定・評価を行い、本実施形態において、上述したような電圧低下(自己放電)の発生を抑制するためには、本実施形態の集電体用表面処理金属箔100は、電気化学的に測定される酸化電流値から得られる水素透過電流密度が40μA/cm以下であることが好ましいという結論に帰結した。なお、本実施形態における水素透過電流密度の測定条件は、電解液の液温:65℃とし、水素発生側(カソード側もしくは水素侵入側とも称す)は参照電極をAg/AgCl(銀塩化銀)とし、測定径φ20mmの測定面積(3.14cm)に対して電流を-100mA、水素検出側(アノード側とも称す)は参照電極を用いずに電流印加なし(自然電位)とする。ここで水素発生側の電流値を-100mAとした理由は、集電体用表面処理金属箔100中を透過・移動するために必要な水素量を十分に発生させるためである。
本実施形態における水素透過電流密度の測定方法の具体例として、図2に示すような構成の測定装置を用いて電流値(電流密度)を検出することにより、集電体用表面処理金属箔100の水素バリア性を数値化及び評価することが可能である。図2に示す測定装置について以下に説明する。以下の説明において、水素侵入側は水素発生側とも記し、バイポーラ電極構造の水素吸蔵合金を配置する側、すなわち集電体用表面処理金属箔100の第1の面10aの側である。また、水素検出側は水素侵入側の反対面であり、バイポーラ電極構造の正極側、すなわち集電体用表面処理金属箔100の第2の面10bの側である。
水素発生用のセルX及び透過水素の検出用セルYの2つのセルを準備し、この2つの測定セルの間に集電体用表面処理金属箔100の試験片(サンプル)を設置する。各測定セルには電解液(KOHを主成分として6mol/L含み、KOH、NaOH、LiOHの合計濃度が濃度:7Mol/Lであるアルカリ水溶液)を充填し、参照電極(RE1)及び対極(CE1及びCE2)を浸漬している。参照電極には飽和KCl溶液のAg/AgCl電極、対極には白金(Pt)を使用する。また、電解液の液温は65℃とする。また、図2(b)に示すように集電体用表面処理金属箔100における測定径はφ20mm(測定面積3.14cm)とする。
水素侵入側の電流制御は、図2(a)に示すようにポテンショスタット又は整流器等を用いる。ポテンショスタットとしては例えば、北斗電工株式会社製の「マルチ電気化学計測システムHZ-Pro」 を用いることができる。また、水素検出側の電流測定は図2(a)に示すように電流計を用いる。電流計としては例えば、株式会社カスタム製の「デジタルマルチメータCDM-7000」を用いることができる。なお、評価する集電体用表面処理金属箔100のサンプル及び各電極の接続は、図2(a)に示すように行うことができる。
水素発生側Xではサンプルへカソード電流(-100mA)を5分間印加し、サンプル表面に水素を発生させ、水素を侵入させる。なお、水素検出側Yでは電位は印加せず、電流計の接続のみとする。水素発生側から水素原子が透過してきた場合、透過してきた水素原子が水素検出側にて酸化されると、水素検出側の電流計にて測定される酸化電流が変化(増大)する。したがって、この酸化電流変化により、集電体用表面処理金属箔100の水素透過性の数値化・評価が可能となる。
なお、水素発生側のカソード電流印加前に、集電体用表面処理金属箔の表面電位を安定化させるために10分間以上電解液中に浸漬保持し、水素検出側の電流計の電流値が一定になること、つまり、1分間に5μA以上の変動がないことを確認する。上記工程により、後述する酸化電流の最小値を得ることが可能となる。なお、酸化電流値の測定プロットは30秒毎とする。
上記手法にて得られた水素検出側の酸化電流変化より、水素透過電流密度I(μA/cm)を算出することが可能となる。具体的には、電流印加後の5分間における前記酸化電流の最大値と、電流印加直前の最小値の差を測定面積3.14cmで除した値が水素透過電流密度となる。プロット及び水素透過電流密度I(μA/cm)の数値化イメージを図2(c)に示す。
本実施形態においては、図2に記載の装置を用いて、65℃の前記電解液において、カソード側の電流値が-100mA、の条件下で測定した場合における水素検出側の水素透過電流密度が40μA/cm以下である場合に、集電体用表面処理金属箔100中の水素バリア性の観点からバイポーラ電極に好適であるとの結論に至った。電圧低下をより抑制するという観点から、25μA/cm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは15μA/cm以下、特に好ましくは10μA/cm以下であることが好ましい。
なお、一般的に、金属材料はそれぞれの種類に応じて異なる水素の拡散係数を有していることが知られており、金属材料の用途に応じて、金属中の水素による欠陥や水素脆化現象を抑制するため、水素の侵入を抑制する金属材料が求められることがある。例えば高力ボルトの遅れ破壊の抑制のために高合金鋼を用いたり、圧力反応容器の割れ抑制のためにチタン溶接部材を用いたりする例などが挙げられる。
しかしながらこのような材料・用途は、水素吸蔵合金を表面に載せるような積極的に水素量が増えるような環境下での水素侵入は想定されていない。そして、これらの技術の課題は金属中に水素が留まることによる金属そのものの機械特性へ影響を及ぼすことであり、水素が金属材料を透過し反対面側へ影響する問題は生じていない。
また、電池部材における水素透過としては、たとえば燃料電池のセパレータにおいてガス不透過性として水素の不透過性が求められることが知られている。ただし、燃料電池においては、水素透過が問題になるのはカーボンセパレータの場合が主で、ステンレスやアルミのセパレータを用いた場合には水素透過はなく問題とはならないとされていた。また、燃料電池のセパレータは硫酸雰囲気化での耐食性が必須であり鋼板は適用が困難なため、鋼板を適用することを想定した課題は見出されていなかった。一方で、集電体の片面を負極活物質層、他方の面を正極活物質層とするバイポーラ電極構造における集電体では、燃料電池と比較して水素の透過現象が生じやすく、電池性能に影響を及ぼす場合があることが問題と判明した。これは、燃料電池とは、電池構造や対象部位、内部環境等が異なるからこそ判明した課題であると考えられる。
本実施形態において、例えば、集電体用表面処理金属箔100は下記のような構成をとってもよい。以下に金属基材20を「金属基材」、ニッケル-リン合金層30を「Ni―P合金層」、金属層40を「金属層」とし、第1の面10a、金属基材20、第2の面10bの順で示す。
Ni-P合金層/金属基材/(なし) (構成1-1)
(なし)/金属基材/Ni-P合金層 (構成1-2:図1(a))
Ni-P合金層/金属基材/金属層 (構成1-3:図1(c))
金属層/金属基材/Ni-P合金層 (構成1-4)
Ni-P合金層/金属基材/Ni-P合金層 (構成1-5:図1(b))
本実施形態の集電体用表面処理金属箔100のニッケル-リン合金層30において、上述したような水素バリア性の観点から、ニッケル-リン合金層30が第1の面10a及び第2の面10bの少なくともいずれか一方に形成されていればよい。なお、集電体用表面処理金属箔100全体としての耐電解液性を向上させるという観点から、前記ニッケルーリン合金層30が形成された面と反対となる面側にニッケルーリン合金層30又は金属層40が形成されていることが好ましい。また水素バリア性をより向上させるという観点においては、ニッケルーリン合金層30が両面に形成されていることがより好ましい。
なお、金属層40は複数の金属層を含んでなるものであってもよい。また後述するように、金属層40を下地金属めっき層とし、その上に後述する粗化層50を形成してもよい。
さらに上述したような水素バリア性の観点からは、本実施形態の集電体用表面処理金属箔100に含まれるニッケル-リン合金層30の厚みとしては、第1の面10a及び第2の面10bの少なくともいずれか一方の面側に0.05μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.10μm以上、さらに好ましくは0.20μm、さらにより好ましくは0.30μm以上となる。またニッケル-リン合金層30の上限厚みとしては、特に縛られるものではないが、クラック抑制や製造コスト等の観点から好ましくは3.00μm未満、より好ましくは2.50μm未満、さらに好ましくは2.00μm未満となる。
なお、本実施形態におけるニッケル-リン合金層30の好ましい厚みの範囲は、後述する第2実施形態及び第3実施形態においても同様である。
また、本実施形態において、第1の面10a及び第2の面10bの両面にニッケル-リン合金層30が形成されている場合、水素バリア性をより高めるという観点から、ニッケル-リン合金層30の合計厚みが0.10μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.20μm以上、さらに好ましくは0.30μm以上、さらにより好ましくは0.50μm以上である。またニッケル-リン合金層30の合計厚みの上限値としては、特に縛られるものではないが、クラック抑制や製造コスト等の観点から、6.00μm未満が好ましく、より好ましくは5.00μm未満、さらに好ましくは4.00μm未満であり、特に好ましくは3.00μm未満である。なお、ここでいう合計厚みとは、表面処理金属箔に形成されている全てのニッケル-リン合金層30の厚みの合計値である。第1実施形態においては、第1の面10a及び第2の面10bのそれぞれに形成されているニッケルーリン合金層30の厚みの合計値となる。また、後述する第2実施形態及び第3実施形態において、ニッケルーリン合金層30が片面側に複数形成されている場合にも、全てのニッケルーリン合金層30の厚みの合計値が合計厚みとなる。
なお、本実施形態におけるニッケル-リン合金層30の好ましい合計厚みの範囲は、後述する第2実施形態及び第3実施形態においても同様である。
なお本実施形態においてニッケル-リン合金層30の厚みの算出方法について説明する。本実施形態のニッケル-リン合金層30の厚み算出方法としては、例えば、ニッケル-リン合金層30の断面のSEM(走査電子顕微鏡)像や光学顕微鏡像、集束イオンビーム走査電子顕微鏡(FIB-SEM)像等を取得し、本顕微鏡像から当該層の厚みを測長することで可能となる。なお、厚み測定の際には、測定対象とする範囲からランダムに選択した10点において測定した厚みの平均値を得ることが好ましい。
なお、本実施形態において、ニッケル-リン合金層30の表面における十点平均粗さRzjisが0.30μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.40μm以上、さらに好ましくは0.50μm以上である。十点平均粗さRzjisを0.30μm以上とすることで、活物質やその他の金属層等を積層した際の密着性が向上するため好ましい。またニッケル-リン合金層30の表面における十点平均粗さRzjisの上限としては、特に上限はないものの、8.00μm未満が好ましく、より好ましくは6.00μm未満である。上述した十点平均粗さRzjisの数値をこの範囲内とするためには、例えば、金属基材20の表面粗度の制御、ニッケル-リン合金めっき条件や厚みの調整、等によって行うことができる。
なお、本実施形態におけるニッケル-リン合金層30の表面における十点平均粗さRzjisの好ましい範囲は、後述する第2実施形態及び第3実施形態においても同様である。
なお本実施形態の集電体用表面処理金属箔100において、少なくとも一方の面側に形成されたニッケル-リン合金層30におけるニッケルの付着量は0.3g/m~20.0g/mであることが、バイポーラ電極に適した水素バリア性及び耐電解液性等の観点から好ましい。
なお、本実施形態におけるニッケル-リン合金層30のニッケル付着量の好ましい範囲は、後述する第2実施形態及び第3実施形態においても同様である。
また、本実施形態の集電体用表面処理金属箔100において、ニッケル-リン合金層30は図1(b)に示されるように金属基材20の両面に形成されていてもよく、図1(c)に示されるように金属基材20の第1の面10a及び第2の面10bの少なくともいずれか一方の面にニッケル-リン合金層30が形成され、前記ニッケル-リン合金層30が形成された面側と反対となる面側に金属層40が形成されていてもよい。その場合、金属基材20の両面に形成されたニッケル-リン合金層30や、金属基材20の片面にそれぞれ形成されたニッケル-リン合金層30及び金属層40に含まれるニッケルの総付着量が、合計で0.6g/m~30.0g/mであることが好ましい。
上述のニッケル総付着量は、ICP発光分光分析を用いて求めることができるが、この方法に限られず、その他公知の測定方法を用いることも可能である。
また、本実施形態の集電体用表面処理金属箔100において、金属基材20の第1の面10a及び第2の面10bの少なくともいずれか一方の面に形成されたニッケルーリン合金層30や、金属基材20の両面に形成されたニッケルーリン合金層30に含まれるリン総付着量は、好ましくは0.02~5.0g/mで、より好ましくは0.03~4.5g/m、さらに好ましくは0.05~4.0g/mであることが、バイポーラ電極に適した水素バリア性の観点から好ましい。
上記リン総付着量の範囲とすることで高い水素バリア性を備えつつ、ニッケル-リン合金層30の厚みや硬度を好適に制御することが可能である。そのため、集電体用表面処理金属箔のクラック発生のリスクを低減でき、コストの観点からも好ましい。
なお上述のリン総付着量は、上述した方法と同様にICP発光分光分析を用いて総リン量を測定することで求めることができるが、この方法に限られず、その他公知の測定方法を用いることも可能である。また、本実施形態におけるリン総付着量の範囲は、後述する第2実施形態及び第3実施形態においても同様である。
なお、本実施形態の集電体用表面処理金属箔100において、金属基材20上にニッケル-リン合金層30以外の、例えば金属元素としてニッケルが含まれる金属層40が形成された構成において、ICP発光分光分析を用いてニッケル-リン合金層のみのニッケル付着量を求めることは困難となるが、例えば次のような測定方法を用いることでニッケル付着量を求めることができる。具体的には、金属層40がニッケル層の場合、まず断面写真から金属層40の厚みを測定し、前記厚みからニッケル付着量を換算する。その後、ICP発光分光分析を用いて、ニッケル-リン合金層30と金属層40含む全ての層のニッケル総付着量を測定する。このニッケル総付着量から前記金属層40のニッケル付着量を差し引くことで、ニッケル-リン合金層30だけのニッケル付着量を間接的に算出することは可能である。
<金属層40>
本実施形態の集電体用表面処理金属箔100において、前記金属層40を構成する金属材料としては、例えば、ニッケル、銅、コバルト、鉄、錫、亜鉛、又はこれらのいずれかを基とする合金からなる群より選択される金属等が挙げられる。このうち、硬度や耐疵付き性に優れているという理由により特にニッケル、コバルト又はこれらのいずれかを基とする合金からなる群より選択される金属であることが好ましい。さらには、ニッケル又はニッケルを基とする合金であることが、硬度や耐疵付き性に加えて耐電解液性を有する観点からは特に好ましい。
なお金属層40の厚みについて、0.10μm~3.00μmであることが好ましく、より好ましくは0.10μm~2.00μmであることが好ましい。なお、ここでいう金属層40の厚みとは、表面処理金属箔に形成されている金属層40の単層の厚みである。また、本実施形態における金属層40の厚みの好ましい範囲は、後述する第2実施形態及び第3実施形態においても同様である。
なお、金属層40の厚みの測定方法についても、上述したニッケル-リン合金層30の厚みの測定方法と同じく、断面観察を用いた厚み測定が適用可能である。
次に、本実施形態における集電体用表面処理金属箔100全体の厚みについて説明する。
なお、本実施形態における「集電体用表面処理金属箔100の厚み」とは、走査電子顕微鏡(SEM)の断面観察による厚み測定、又はマイクロメーターでの厚み測定も適用可能である。
本実施形態における集電体用表面処理金属箔100の全体の厚みは、0.01~0.30mmの範囲が好適である。また、強度の観点、及び、望まれる電池容量の観点等より、より好ましくは0.01~0.200mm、さらに好ましくは0.025~0.100mmである。なお、本実施形態における集電体用表面処理金属箔全体の好ましい厚みの範囲は、後述する第2実施形態においても同様である。
上記厚み範囲は、製造する電池の体積及び重量エネルギー密度の観点から好ましい。特に電池の薄型化を狙う場合には好ましい。さらに上記厚み範囲の下限については、電池の充放電に伴う影響に対して充分な強度を有する観点ばかりでなく、電池の製造時や取扱い時等に破れや千切れ・シワ等が発生する可能性を回避する観点から好ましい。
<集電体用表面処理金属箔100の製造方法>
以下、上述した第1実施形態にかかる集電体用表面処理金属箔100の製造方法について説明する。
本実施形態の集電体用表面処理金属箔200の製造方法は、第1の面10aの側、及び、前記第1の面10aとは反対側に位置する第2の面10bの側、の少なくともいずれか一方の面側に、前記集電体用表面処理金属箔内の水素の透過又は拡散を抑制するニッケル-リン合金層30を形成する工程を有する。
本実施形態のニッケル-リン合金層30を形成する工程としては合金めっきによる方法が好ましく、金属基材20としての金属箔の少なくとも片面に、ニッケルイオン及び亜リン酸イオンを含む合金めっき浴を用いてニッケル-リン合金層30を形成する工程が挙げられる。なお、この工程は電解めっきであってもよいし、無電解めっき、溶融めっき、乾式めっき等の公知のめっき方法であってもよい。このうち、コストや膜厚制御等の観点より特に電解めっきによる方法が好ましい。
本実施形態の製造方法において、電解めっきによるニッケル-リン合金めっき層形成の際のめっき条件等は、公知の条件を適用することができる。以下に、めっき条件の例を示す。
[ニッケル-リン合金めっき浴及び電解めっき条件の一例]
・浴組成
硫酸ニッケル六水和物:150~250g/L
塩化ニッケル六水和物:5~50g/L
ホウ酸:20~50g/L
クエン酸三ナトリウム(無水):1~100g/L
亜リン酸:5~100g/L
亜リン酸水素二ナトリウム:5~200g/L
・浴温:25~80℃
・pH:1.0~6.0
・撹拌:空気撹拌又は噴流撹拌
・電流密度:1~40A/dm
なお、上記の浴の温度範囲に関して、目的のリン含有率や層の厚みを得られる点、層の析出が可能である観点から、より好ましい温度範囲である。
pHに関して、めっきの析出効率の観点や、めっきやけの発生を回避する観点からより好ましいpH範囲である。
電流密度に関しては、生産効率の観点やめっきやけの発生を回避する観点から、より好ましい電流密度範囲である。
また、ピット防止剤を適量添加してもよい。
無電解ニッケル-リンめっき浴の組成としては、一般的な無電解ニッケル-リンめっき浴、例えばカニゼンめっき浴を用いることができる。また、ニッケルから成る金属塩やリンを含んだ還元剤、錯化剤、pH調整剤、添加剤などの補助成分を有するものを含有し、めっき後のニッケル-リン合金層中のリン含有率が5.0wt%以上となれば、浴組成は限定されず使用することもできる。ニッケルーリン合金層中のリン含有率を5.0wt%以上とすることで、上述したNiP及び/又はNi-P準安定結晶相を形成した際の水素バリア性が良好となるため好ましい。
図1(b)に示すように集電体用表面処理金属箔100の第1の面側と第2の面側の両面にニッケル-リン合金層30を形成する場合、両面のニッケル-リン合金層30を同時に形成してもよいし、片面ずつ形成しても差し支えない。
また、本実施形態の集電体用表面処理金属箔100の製造方法において、図1(c)に示すようにニッケル-リン合金層30が形成された面側と反対となる面側に金属層40を形成する工程をしてもよい。この金属層40がニッケル層である場合には、該工程としては、ワット浴、スルファミン酸ニッケル浴、クエン酸浴等の公知のニッケル浴を用いた公知のめっき工程により形成することが可能である。
上記のように形成したニッケル-リン合金めっき層には、熱処理を施すことが、NiP及び/又はNi-P準安定結晶相を形成し、水素バリア性を向上させる観点からは好ましい。熱処理条件の一例を以下に示すが、これに限られるものではなく、つまり熱処理によってNiP及び/又はNi-P準安定結晶相などを形成することが目的であり、そのために熱処理温度や時間は適宜変更することが可能である。また、本実施形態の熱処理は連続焼鈍でもよいし、バッチ焼鈍(箱型焼鈍)であってもよい。
本実施形態の熱処理条件としては、変色防止の観点から、不活性ガス雰囲気や還元ガス雰囲気、真空中などで熱処理を行うことが好ましいが、これに限られるものではない。
なお、本実施形態において連続焼鈍で熱処理をする場合には、温度が250℃以上870℃未満で熱処理を行うことが好ましい。なお、より安定的にNiP及び/又はNi-P準安定結晶相を形成するという観点から、温度が250℃以上350℃未満の場合には、均熱時間(温度が目標値に到達した後の時間)は300秒以上が好ましく、より好ましくは420秒以上、さらに好ましくは500秒以上が好ましい。温度が350℃以上450℃未満の場合には、均熱時間は10秒以上が好ましく、より好ましくは15秒以上、さらに好ましくは20秒以上が好ましい。450℃以上600℃未満の場合には、均熱時間は5秒以上が好ましく、より好ましくは8秒以上、さらに好ましくは10秒以上、特に好ましくは15秒以上が好ましい。温度が600℃以上870℃未満の場合には、均熱時間は3秒以上が好ましく、より好ましくは5秒以上、さらに好ましくは8秒以上、特に好ましくは10秒以上が好ましい。なお、均熱時間の上限値としては、特に縛られるものではないが、製造上の観点から900秒以下で行うことが好ましい。これより低温又は短時間の場合、NiP及び/又はNi-P準安定結晶相を得られない可能性があり好ましくない。一方で、上記熱処理範囲より高温又は長時間の場合、基材となる金属箔などの機械的性質が大きく変化する可能性があること、あるいはコスト的な観点から好ましくない。また、連続焼鈍において、昇温時間としては特に縛られるものではないが、好ましくは15秒以上が好ましい。
バッチ焼鈍(箱型焼鈍)で熱処理をする場合には、温度が200℃以上600℃未満で熱処理を行うことが好ましい。なお、より安定的にNiP及び/又はNi-P準安定結晶相を形成するという観点から、温度が250℃以上600℃未満であることが好ましく、より好ましくは300℃以上600℃未満、さらに好ましくは350℃以上600℃未満であることが好ましい。また、均熱時間としては、好ましくは0.5時間~20時間、加熱、均熱及び冷却時間を合わせた合計時間が4時間~80時間の範囲内で行うことが好ましい。より好ましくは、均熱時間が1時間~20時間、合計時間が6時間~80時間である。これより低温又は短時間の場合、NiP及び/又はNi-P準安定結晶相を得られない可能性があり好ましくない。一方で、上記熱処理範囲より高温又は長時間の場合、基材となる金属箔などの機械的性質が大きく変化する可能性があること、あるいはコスト的な観点から好ましくない。
本実施形態の集電体用表面処理金属箔100は、水素吸蔵合金が配置される第1の面、及び、前記第1の面と反対側に位置する第2の面、の少なくともいずれか一方の面側にニッケル-リン合金層30を有する。また、前記ニッケル-リン合金層30は、X線回折の2θ/θ測定において回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲の少なくともいずれか一方において、回折ピークが観察されることを特徴とする。そのため、バイポーラ電池に好適な水素バリア性、及び、二次電池に求められる耐電解液性等を兼ね備えた集電体用表面処理金属箔を提供することができる。
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態における集電体用表面処理金属箔200について説明する。なお、第2実施形態において第1実施形態との相違点は、ニッケル-リン合金層30の下層及び/又は上層に形成された金属層40が存在する点である。そのため該相違点について主に説明し、共通する構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
第2実施形態における集電体用表面処理金属箔200は、図3(a)に示されるように、金属層40の下層にニッケル-リン合金層30が形成されていてもよいし、図3(b)に示されるように、金属層40の上層にニッケル-リン合金層30が形成されていてもよい。また、図3(c)に示されるように集電体用表面処理金属箔200の第1の面10a及び第2の面10bの両面にニッケル-リン合金層30が形成され、前記ニッケル-リン合金層30の上層に金属層40が形成されていてもよいし、図3(d)に示されるように前記ニッケル-リン合金層30の下層及び上層の両方に金属層40が形成されていてもよい。なお、ここでいう上層とは相対的に金属基材20に遠い層を意味し、下層とは相対的に金属基材20に近い層を意味するものとする。
本実施形態の集電体用表面処理金属箔200において、前記ニッケル-リン合金層30の下層及び/又は下層に形成される金属層40を形成する効果としては以下の点が挙げられる。すなわち、ニッケル-リン合金層30に加えてさらに金属層40を形成することにより、集電体用表面処理金属箔200全体としての耐電解液性の向上や硬度等を調整することができ、所望の性質を有する集電体材としての集電体用表面処理金属箔を製造することが可能となる。
前記金属層40を構成する金属材料としては、上述した第1実施形態と同様に、例えば、ニッケル、銅、コバルト、鉄、錫、亜鉛又はこれらのいずれかを基とする合金からなる群より選択される金属等が挙げられる。このうち、硬度や耐疵付き性に優れているという理由により特にニッケル、コバルト又はこれらのいずれかを基とする合金からなる群より選択される金属であることが好ましい。さらには、ニッケル又はニッケルを基とする合金であることが、硬度や耐疵付き性に加えて耐電解液性を有する観点からは特に好ましい。なお、金属層40の上層にニッケル-リン合金層30が形成される場合において、前記金属層40は、上層に形成されたニッケルーリン合金層30とのめっき密着性を十分に有する金属からなることが好ましい。
本実施形態において、例えば、集電体用表面処理金属箔200は下記のような構成をとってもよい。以下に金属基材20を金属基材、ニッケル-リン合金層30をNi-P合金層、金属層40を金属層とし、第1の面10a、金属基材20、第2の面10bの順で示す。
(なし)/金属基材/金属層/Ni-P合金層(構成2-1:図3(b))
Ni-P合金層/金属層/金属基材/(なし)(構成2-2)
金属層/金属基材/金属層/Ni-P合金層(構成2-3)
Ni-P合金層/金属層/金属基材/金属層(構成2-4)
金属層/金属基材/Ni-P合金層/金属層(構成2-5)
金属層/Ni-P合金層/金属基材/金属層(構成2-6)
Ni-P合金層/金属基材/Ni-P合金層/金属層(構成2-7)
Ni-P合金層/金属基材/金属層/Ni-P合金層(構成2-8)
金属層/金属基材/Ni-P合金層/金属層/Ni-P合金層(構成2-9)
Ni-P合金層/金属層/金属基材/金属層/Ni-P合金層(構成2-10)
金属層/Ni-P合金層/金属基材/Ni-P合金層/金属層(構成2-11:図3(c))
Ni-P合金層/金属層/金属基材/金属層/Ni-P合金層/金属層(構成2-12)
Ni-P合金層/金属基材/Ni-P合金層/金属層/Ni-P合金層(構成2-13)
Ni-P合金層/金属層/Ni-P合金層/金属基材/Ni-P合金層/金属層/Ni-P合金層(構成2-14)
金属層/Ni-P合金層/金属層/金属基材/金属層/Ni-P合金層/金属層 (構成2-15:図3(d))
本実施形態において、水素バリア性の観点から、第1の面10a及び第2の面10bの少なくともいずれか一方の面側にニッケルーリン合金層30が形成されていればよい。また、金属層40は前記ニッケル-リン合金層30の上層又は下層のどちらに形成されていてもよく、耐電解液性をより向上させるという観点から、前記ニッケル-リン合金層30が金属層40の下層に形成されていることが好ましい。
なお本実施形態において、アルカリ電解液を用いた電池などに適用される場合、金属層40の上層にニッケル-リン合金層30を形成した構成でも優れた耐電解液性を有する。一方、上記に示した電池において、通常使用よりもさらに過酷な環境下に晒される場合には、金属層40の下層にニッケル-リン合金層30を形成することにより、水素バリア性を備えつつ、且つより優れた耐電解液性を得ることが可能となる。
なお、集電体用表面処理金属箔200全体の耐電解液性を向上させるという観点から、前記ニッケル-リン合金層30が形成された面と反対となる面側にニッケル-リン合金層30又は金属層40のいずれか一層が形成されていてもよいし(構成2-3~2-15)、ニッケル-リン合金層30及び金属層40の両方が積層されていてもよい(構成2-10~2-12、2-14、2-15)。
なお、金属層40は前述した第1実施形態と同様に、複数の金属層を含んでなるものであってもよい。また、金属層40を下地金属めっき層とし、その上に後述する粗化層50を形成してもよい。
本実施形態において、水素バリア性をより高めるという観点から、第1の面10a及び第2の面10bの両面にニッケル-リン合金層30が形成されていることが好ましい(構成2-7、2-8、2-10~2-15)。
なお耐電解液性をより向上させるという観点から、第1の面10a及び第2の面10bの両面に形成されたニッケルーリン合金層30のそれぞれの上層に金属層40が形成されていることがより好ましい(構成2-11、2-15)。また、第1の面10a及び第2の面10bの両面に形成されたニッケルーリン合金層30の下層及び上層に金属層40が形成されていることが特に好ましい(構成2-15)。前記ニッケルーリン合金層30の下層にも金属層40を形成することにより、クラック抑制やめっき応力を緩和することができるため好ましい。
また、本実施形態において水素バリア性をより高めるという観点から、ニッケル-リン合金層30が第1の面10a及び第2の面10bの少なくともいずれか一方の面側に複数層形成されていることが好ましい(構成2-9、2-13、2-14)。なお、上述のように複数のニッケル-リン合金層30が形成される場合、複数のニッケル-リン合金層30中におけるリン含有率は各々異なっていてもよい。
本実施形態においても、第1実施形態と同様、ニッケル-リン合金層30は、X線回折の2θ/θ測定において回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲の少なくともいずれか一方において、回折ピークが観察されることを特徴とする。この特徴により、水素バリア性の課題を解決可能であり、バイポーラ電池用の集電体として好適に使用できる。
なお、本実施形態において、ニッケル-リン合金層30の上層に金属層40が形成されている場合には、前記ニッケル-リン合金層の回折角2θ=41.0°~42.5°の範囲、もしくは、2θ=47.5°~49.0°の範囲における回折ピークと、前記金属層40の回折ピークが重ならないこと、且つ金属層40の厚みが薄膜であることを条件に、回折ピークを分離することが可能である。つまり、金属層40を通してニッケル-リン合金層30のX線回折の2θ/θ測定を行うことが可能である。しかしながら、金属層40の種類や厚みによってはニッケル-リン合金層30の当該回折ピークとの分離が困難となる恐れがある。その場合には、ニッケル-リン合金層30の上層に形成された金属層40を機械的研磨やエッチング(ウェットやドライ)によって除去した後にX線回折の2θ/θ測定を行うことで、目的とするニッケル-リン合金層30のみの回折ピークを確認することも可能である。
また、ニッケル-リン合金層30の下層に金属層40が形成されている場合には、上記と同様にニッケル-リン合金層30の回折角2θ=41.0°~42.5°の範囲、もしくは、2θ=47.5°~49.0°の範囲の回折ピークと、金属層40の回折ピークが重ならないことを条件に、回折ピークを分離することが可能である。しかしながら、金属層40の種類によっては、ニッケル-リン合金層30の当該回折ピークとの分離が困難となる恐れがある。その場合には、薄膜モードでのX線回折の2θ/θ測定を行うことで、下層に形成されている金属層40の回折ピークを極力反映させずに、目的とするニッケル-リン合金層30のみの回折ピークを観察することも可能である。
なお、これらの方法は組み合わせても良い。
なお本実施形態において、金属基材20に複数のニッケル-リン合金層30が存在する場合には、少なくとも1つの層におけるニッケル-リン合金層30において「回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲の少なくともいずれか一方において、回折ピークが観察される」ことを満たせばよい。
なお本実施形態においても第1実施形態と同様、ニッケル-リン合金層30はNiP及びNi-P準安定結晶相の少なくとも一方を含んでいることが好ましい。
なお本実施形態におけるリン含有率の算出方法としては、上述の第1実施形態と同様の方法を適用可能である。
本実施形態において第1の面10a及び第2の面10bの両面に金属層40が形成されている場合、金属層40の合計厚みは0.20μm~8.00μmであることが好ましい。なお、ここでいう金属層40の合計厚みとは、金属基材20上に形成されている全ての金属層40の厚みの合計値である。また、本実施形態における金属層40の合計厚みの好ましい範囲は、後述する第3実施形態においても同様である。
金属層40の厚みの測定方法にとしては、上述の第1実施形態と同様の方法を適用可能である。
本実施形態の集電体用表面処理金属箔200において、ニッケル-リン合金層30と上記金属層40のニッケル総付着量は2.0~60.0g/mであることが、バイポーラ電極に適した水素バリア性及び耐電解液性等の観点から好ましい。なお、ここでいうニッケル総付着量とは、金属基材20上に形成されている、全てのニッケル-リン合金層30及び金属層40のニッケル付着量の合計値となる。
上述のニッケル総付着量は、ニッケル-リン合金層30と同様にICP発光分光分析を用いて総ニッケル量を測定することで求めることができるが、この方法に限られず、その他公知の測定方法を用いることも可能である。
以下、上述した第2実施形態にかかる集電体用表面処理金属箔200の製造方法について説明する。
本実施形態の集電体用表面処理金属箔200の製造方法は、ニッケル-リン合金層30の上層又は下層に金属層40を形成する工程をさらに有する。この金属層40がニッケル層である場合には、該工程としては、ワット浴、スルファミン酸ニッケル浴、クエン酸浴等の公知のニッケル浴を用いた公知のめっき工程により形成することが可能である。
なお本実施形態においては、ニッケル-リン合金層30に対する熱処理の工程は、金属層40を形成する前であってもよいし、金属層40を形成した後であってもよい。
また本実施形態における熱処理条件としては、上述した第1実施形態と同様の範囲で行うことが好ましい。
本実施形態の集電体用表面処理金属箔200は、第1の面10aの側、及び、前記第1の面10aと反対側に位置する第2の面10bの側、の少なくともいずれか一方の面側にニッケル-リン合金層30を有する。また、前記ニッケル-リン合金層30は、X線回折の2θ/θ測定において回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲の少なくともいずれか一方において、回折ピークが観察されることを特徴とする。さらに、前記ニッケル-リン合金層30の上層及び/又は下層に金属層40が形成される。そのため、バイポーラ電池に好適な水素バリア性、及び、二次電池に求められる耐電解液性等を兼ね備えた集電体用表面処理金属箔を提供することができる。さらには、集電体用表面処理金属箔全体としての耐電解液性の向上や強度等を調整することが可能となる。
≪第3実施形態≫
次に、第3実施形態を用いて本発明にかかる集電体用表面処理金属箔をさらに説明する。なお、第3実施形態において第1実施形態及び第2実施形態との相違点は、集電体用表面処理金属箔のいずれかの表面に粗化層50が存在するという点である。そのため該相違点について主に説明し、共通する構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
第3実施形態にかかる集電体用表面処理金属箔300において、粗化層50は図4(a)に示すように集電体用表面処理金属箔300の第2の面10bの側に形成されていてもよいし、図4(b)に示すように第1の面10aの側に形成されていてもよいし、その両方に形成されていてもよい。
集電体用表面処理金属箔300は、粗化層50と金属層40の両方を有することが好ましく、図5に示されるように、第3実施形態にかかる集電体用表面処理金属箔300は、金属基材20上に順に、ニッケル-リン合金層30、粗化層50、金属層40、を有していてもよい。また、本実施形態において、ニッケル-リン合金層30、金属層40、粗化層50の積層順は問わず、例えば下記のような構成をとってもよい。以下に金属基材20を「金属基材」、ニッケル-リン合金層30を「Ni-P合金層」、金属層40を「金属層」、粗化層50を「粗化層」とし、第1の面10a、金属基材20、第2の面10bの順で示す。
なお、以下に示す「粗化層」の上層として記載している「Ni-P合金層」は、後述する被覆めっき層に該当する。
金属層/金属基材/Ni-P合金層/粗化層(構成3-1)
金属層/金属基材/金属層/粗化層/Ni-P合金層(構成3-2)
Ni-P合金層/金属基材/金属層/粗化層(構成3-3)
Ni-P合金層/金属基材/金属層/粗化層/Ni-P合金層(構成3-4)
Ni-P合金層/金属基材/Ni-P合金層/粗化層(構成3-5)
金属層/金属基材/Ni-P合金層/粗化層/Ni-P合金層(構成3-6)
Ni-P合金層/金属基材/Ni-P合金層/粗化層/Ni-P合金層(構成3-7)
金属層/Ni-P合金層/金属基材/Ni-P合金層/粗化層/Ni-P合金
(構成3-8)
金属層/Ni-P合金層/金属基材/Ni-P合金層/粗化層(構成3-9)
Ni-P合金層/金属層/金属基材/金属層/粗化層/Ni-P合金層(構成3-10)
金属層/Ni-P合金層/金属基材/Ni-P合金層/金属層/粗化層(構成3-11)
Ni-P合金層/金属層/金属基材/金属層/Ni-P合金層/粗化層(構成3-12)
金属層/Ni-P合金層/金属層/金属基材/金属層/Ni-P合金層/粗化層
(構成3-13)
金属層/Ni-P合金層/金属層/金属基材/金属層/Ni-P合金層/金属層/粗化層(構成3-14)
本実施形態において、ニッケル-リン合金層30は第1の面10a及び第2の面10bのいずれか一方の面のみに形成されていてもよいし、両面にニッケル-リン合金層30が形成されていてもよい。
本実施形態において、ニッケル-リン合金層30が一方の面のみに形成され、且つ前記ニッケル-リン合金層30と粗化層50が同じ面側に形成されている場合、前記ニッケル-リン合金層30は前記粗化層50の下層又は上層のどちらに形成されていても良く、好ましくは粗化層50の下層にニッケル-リン合金層30が形成されていることが好ましい。粗化層50の下層にニッケル-リン合金層30を形成することにより、水素バリア性を備えつつ、且つ耐電解液性や他の部材(活物質層など)との密着性に優れるため好ましい。
また、粗化層50が形成された面と反対となる面側にニッケル-リン合金層30が形成されていてもよい。なお、水素バリア性を備えつつ、且つ耐電解液性をより向上させるという観点から、前記ニッケル-リン合金層30の上層に金属層40が形成されていることが好ましい。
なお、前記粗化層50においては、後述するように粗化ニッケル層であっても良いし、複合粗化層であってもよい。
本実施形態において、水素バリア性をより高めるという観点から、ニッケル-リン合金層30が第1の面10a及び第2の面10bの両面に形成されていることが好ましい(構成3-4、3-5、3-7~3-14)。なお、耐電解液性をより向上させるという観点から、前記ニッケル-リン合金層30の上層に金属層40及び/又は粗化層50が形成されていることが好ましい(構成3-9、3-11、3-13、3-14)。また、クラック抑制やめっき応力の緩和の観点から、前記ニッケルーリン合金層30の下層に金属層40が形成されていることが好ましい(構成3-10、3-12~3-14)。なお、前記ニッケル-リン合金層30の下層に金属層40を形成し、さらに上層に金属層40及び/又は粗化層50が形成されている場合には、水素バリア性を備えつつ、且つクラック抑制やめっき応力の緩和、耐電解液性がより向上するため特に好ましい(構成3-13、3-14)。
なお、前記ニッケル-リン合金層30の上層に形成される金属層40や粗化層50においては、金属層40と粗化層50がそれぞれ形成されていればよく、例えば、第1の面10a側に形成されているニッケル-リン合金層30の上層に金属層40が形成され、第2の面10b側に形成されているニッケル-リン合金層30の上層に粗化層50がそれぞれ形成されていても良い(構成3-9、3-13)。また、第1の面10a及び第2の面10bの両面に形成されている前記ニッケル-リン合金層30の両方の上層に金属層40が形成され、さらに前記金属層40の上層に、粗化層50が少なくともどちらか一方の面側に形成されていても良い(構成3-11、3-14)。
本実施形態においても、上述した第1実施形態又は第2実施形態と同様に、ニッケル-リン合金層30は、X線回折の2θ/θ測定において回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲の少なくともいずれか一方において、回折ピークが観察されることを特徴とする。この特徴により、水素バリア性の課題を解決可能であり、バイポーラ電池用の集電体として好適に使用できる。
なお本実施形態において、金属基材20に複数のニッケル-リン合金層30が存在する場合には、少なくとも1つの層におけるニッケル-リン合金層30において「回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲の少なくともいずれか一方において、回折ピークが観察される」ことを満たせばよい。
なお本実施形態においても、上述した第1実施形態又は第2実施形態と同様に、ニッケル-リン合金層30はNiP及びNi-P準安定結晶相の少なくとも一方を含んでいることが好ましい。
なお、粗化層50としては、ニッケルのみで形成される粗化ニッケル層又は、粗化ニッケルめっきを行った後に他の金属を被覆層として形成した複合粗化層であることが好ましい。粗化ニッケル層については、例えば本出願人らの出願であるWO2021/020338号国際公開公報等に記載されているため詳細は省略するが、前記粗化ニッケル層が形成されている場合、最表面の算術平均高さSaが0.20~1.30μmであることが、活物質との密着性を向上させる観点からは好ましい。
また、複合粗化層とする場合は、粗化ニッケルめっき後に、被覆めっき層としてニッケル-リン合金層30や金属層40を形成する被覆めっきを施すことで複合粗化層が得られる。複合粗化層が形成されている場合においても、最表面の算術平均高さSaが0.20~1.30μmとすることが好ましい。なお、粗化ニッケルめっき後の被覆めっきとしてニッケルめっきを施した場合、つまりWO2020/017655号国際公開公報に開示されるような被覆ニッケルめっきを施した場合には、粗化ニッケルめっきがそのまま成長するため、両工程を経て得られる粗化形状を成している層全体を粗化ニッケル層とする。
なお、WO2020/017655号国際公開公報に開示されるように、粗化層50とその下層又は基材との密着性の観点から、下地めっき処理を施し下地めっき層を形成してもよい。下地めっき層として、金属層40又は/及びニッケル-リン合金層30を用いるのが好ましい。下地めっき層がニッケルからなる場合の下地ニッケルめっき条件についてはWO2020/017655号国際公開公報に開示の下地金属めっき層の内容を適用できるため、ここでは詳細な説明を省略する。
本実施形態の集電体用表面処理金属箔300において、ニッケル-リン合金層30と金属層40、粗化層50のニッケル総付着量は5.0~90.0g/mであることが好ましく、より好ましくは5.0~80.0g/m、さらに好ましくは10.0~80.0g/m、特に好ましくは10.0~70.0g/mである。ニッケル総付着量を上記範囲とすることで、バイポーラ電極に適した水素バリア性や耐電解液性、活物質との密着性向上といった観点から好ましい。なお、ここでいうニッケル総付着量とは、金属基材20上に形成されている、全てのニッケル-リン合金層30及び金属層40、粗化層50のニッケル付着量の合計値となる。
また、ニッケル総付着量は、上述した第2実施形態と同様にICP発光分光分析を用いて総ニッケル量を測定することで求めることができるが、この方法に限られず、その他公知の測定方法を用いることも可能である。
次に、本実施形態における集電体用表面処理金属箔300全体の厚みについて説明する。本実施形態における集電体用表面処理金属箔300全体の厚みは、最表面における粗化層50を含めて0.02~0.31mmの範囲が好適である。また、強度の観点、及び望まれる電池容量の観点等から、より好ましくは0.02~0.21mm、さらに好ましくは0.03~0.11mmである。
上記厚み範囲は、製造する電池の体積及び重量エネルギー密度の観点から好ましい。特に電池の薄型化を狙う場合には好ましい。さらに上記厚み範囲の下限については、電池の充放電に伴う影響に対して充分な強度を有する観点ばかりでなく、電池の製造時や取扱い時等に破れや千切れ・シワ等が発生する可能性を回避する観点から好ましい。
本実施形態における集電体用表面処理金属箔300全体の厚み測定方法については、他の実施形態と同様、断面観察による厚み測定又は、マイクロメーターでの厚み測定が適用可能である。
第3実施形態の集電体用表面処理金属箔300の製造方法は、表面に粗化層50を形成する工程を有する。なお、粗化層50を形成するためのめっき条件の一例として、以下に粗化ニッケルめっき条件を示す。
≪粗化ニッケルめっき条件≫
・浴組成:
硫酸ニッケル六水和物:10~100g/L
塩化ニッケル六水和物:1~90g/L
硫酸アンモニウム:10~130g/L
・浴温:25~80℃
・pH:4.0~8.0
・撹拌:空気撹拌又は噴流撹拌
・電流密度:4~40A/dm
・めっき時間:10~150秒間
次いで、上記粗化ニッケルめっきにより得られた粗化層上に、下記条件にて被覆ニッケルめっきを行うことで、ニッケルのみで形成された粗化層50を得ることができる。
<被覆ニッケルめっき条件>
・浴組成:
硫酸ニッケル六水和物:250g/L
塩化ニッケル六水和物:45g/L
ホウ酸:30g/L
・浴温:60℃
・pH:4.0~5.0
・撹拌:空気撹拌又は噴流撹拌
・電流密度:5~20A/dm
・めっき時間:3~50秒間
なお、上述した粗化層50を形成するためのめっき条件としては、これに限られるものではなく、上記粗化ニッケルめっきを行った後、被覆めっきとしてニッケル-リン合金めっきを施した複合粗化層であってもよい。
上記粗化層50の算術平均高さSaは、上述のように0.20μm~1.30μmであることが好ましい。
算術平均高さSaをこの範囲内とするためには、例えば、金属基材20の表面粗度の制御、粗化めっき条件や厚みの調整のほか、下地めっき条件や厚みの調整、被覆めっき条件や厚みの調整、等によっても行うことができる。
なお本実施形態においては、ニッケル-リン合金層30に対する熱処理の工程は、金属層40及び/又は粗化層50を形成する前であってもよいし、金属層40及び/又は粗化層50を形成した後であってもよい。
本実施形態の集電体用表面処理金属箔300は、第1の面10a側、及び、前記第1の面10aとは反対側に位置する第2の面10bの側、の少なくともいずれか一方の面側に、前記集電体用表面処理金属箔内の水素の透過又は拡散を抑制するニッケルーリン合金層30を形成する工程を有する。また、前記ニッケル-リン合金層30は、X線回折の2θ/θ測定において回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲の少なくともいずれか一方において、回折ピークが観察されることを特徴とする。さらに、前記第1の面10a側と、前記第2の面10b側、の少なくともいずれか一方の面に、粗化層50が存在する。
そのため、バイポーラ電池に好適な水素バリア性、及び、二次電池に求められる耐電解液性等を兼ね備えた集電体用表面処理金属箔を提供することができる。さらには、他の部材(活物質層やシール材等)との密着性を向上させることが可能となる。
≪実施例≫
以下に、実施例を挙げて本発明について、より具体的に説明する。まず、実施例における測定方法について記載する。
[X線回折装置を用いた測定方法]
得られた表面処理金属箔においてニッケル-リン合金層を、X線回折装置(Rigaku社製SmartLab)を用いて測定し、回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲における回折ピークの有無を観察した。
なお、具体的な測定条件を以下に示すが、これに限定されるものではない。
<装置構成>
・X線源:CuKα
・ゴニオメータ半径:300nm
・光学系:集中法
(入射側スリット系)
・ソーラースリット:5°
・長手制限スリット:10mm
・発散スリット:2/3°
(受光側スリット系)
・散乱スリット:2/3°
・ソーラースリット:5°
・受光スリット:0.3mm
・単色化法:カウンターモノクロメーター法
・検出器:シンチレーションカウンタ
<測定パラメータ>
・管電圧-管電流:45kV 200mA
・走査軸:2θ/θ
・走査モード:連続
・測定範囲:2θ 20~100°
・走査速度:10°/min.
・ステップ:0.02°
また、上記で観察された回折ピークにおいて、株式会社Rigaku社製 統合粉末X線解析ソフトウェア PDXLを用いて、回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲における回折ピークの有無を確認した結果、上記観察の結果と同一であることを確認した。次いで、回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲における回折強度の最大値(cps)を読み取った。結果を表1~2に示す。
なお、上記回折角範囲における回折ピークの有無を確認するための具体的な解析条件を以下に示すが、これに限定されるものではない。
・データ処理:マニュアル処理
・平滑化:ON
方法:B-Splineによる平滑化
χ閾値:1.50
・バックグランド除去:ON
方法:Sonneveld-Visser法
ピーク幅閾値:7.00
強度閾値:17.00
・Kα除去:ON
強度比:0.4970
・ピークサーチ:ON
方法:2次微分法
σカット値:0.5~10.0
・プロファイルフィッティング:ON
測定データに対してフィッティング:選択
ピーク形状:分割型擬Voigt関数
<ピークの定義>
・シュラー法に基づく結晶子:半値幅
・ピーク位置:ピークトップ位置
・ピーク高さ:バックグラウンドを含める
[めっき層の厚み測定方法(断面観察)]
得られた表面処理金属箔を切断し、断面研磨した後、走査電子顕微鏡(測定装置:日本電子製、電界放射走査電子顕微鏡、JSM-6330F)を用いて得られた画像において、厚み方向に沿って補助線を引いて厚み(単位:μm)を求めた。なお、一部の実施例においては、集束イオンビーム走査電子顕微鏡(測定装置:JIB-4000、日本電子株式会社)、透過型電子顕微鏡(測定装置:日立ハイテクノロジーズ製、H-9500)を用いて厚みを求めた。結果を表1に示す。
[水素透過電流測定方法]
図2に記載の装置を用いて、水素透過電流密度の測定を行った。具体的なサンプルのセッティング方法としては、図2(a)に示すように水素発生用のセルX及び透過水素の検出用セルYの2つのセルを準備し、この2つの測定セルの間に集電体用表面処理金属箔100の試験片(サンプル)を設置する。なお、バイポーラ電極構造の負極側を模擬した水素侵入側には集電体用表面処理金属箔100の第1の面10aを、正極側を模擬した水素検出側には集電体用表面処理金属箔100の第2の面10bの側を配置する。そして、各測定セルに65℃の電解液(KOHを主成分として6mol/L含み、KOH、NaOH、LiOHの合計濃度が濃度:7Mol/Lであるアルカリ水溶液)を充填し、参照電極(RE1)及び対極(CE1及びCE2)を浸漬する。また、参照電極には飽和KCl溶液のAg/AgCl電極、対極には白金(Pt)を使用する。なお、図2(b)に示すように集電体用表面処理金属箔100における測定径はφ20mm(測定面積3.14cm)とする。水素侵入側の電流制御には、ポテンショスタット(北斗電工株式会社製、マルチ電気化学計測システムHZ-Pro)を用いて、水素検出側の電流測定には電流計(株式会社カスタム製、デジタルマルチメータCDM-7000)を使用した。
具体的な測定条件は、水素発生側でサンプルへカソード電流(-100mA)を5分間印加し、サンプル表面に水素を発生させ、水素検出側で水素原子が透過してきた際に発生する酸化電流の変化を30秒毎に測定した。なお、水素検出側は参照電極を用いずに電流印加なし(自然電位)とする。また、水素発生側のカソード電流印加前に、集電体用表面処理金属箔の表面電位を安定化させるために10分間以上電解液中に浸漬保持し、水素検出側の電流計の電流値が一定になること、つまり、1分間に5μA以上の変動がないことを確認している。
上記手法にて得られた水素検出側の酸化電流の変化より、水素透過電流密度I(μA/cm)を算出した。具体的には、電流印加後の5分間における酸化電流の最大値と、電流印加直前の最小値の差を測定面積3.14cmで除した値を水素透過電流密度とした。結果を表1~2に示す。
[ニッケル及び/又はリンの付着量(総付着量)、リン含有率の測定方法]
得られた集電体用表面処理金属箔において、第1の面10a及び第2の面10bの両面に、同一のニッケル-リン合金めっき条件にてニッケル-リン合金層30のみが形成されている場合には、ICP発光分光分析にて両面に形成された前記ニッケル-リン合金層30のニッケル総付着量及びリン総付着量を測定した。次いで、得られたニッケル総付着量及びリン総付着量からリン含有率を算出した。なお、前記ニッケル-リン合金層30における片面当たりのニッケル付着量及びリン付着量は、前記ニッケル総付着量及びリン総付着量を2分の1とすることで算出した。
また、ニッケル-リン合金層30の他に金属層40や粗化層50が形成されている場合には、ICP発光分光分析にてニッケル総付着量及びリン総付着量を測定した。なお、ニッケル-リン合金層30の他に、金属層40や粗化層50が形成された構成において、ニッケル-リン合金層30のみのニッケル付着量及びリン付着量を測定する場合には、同一のニッケル-リン合金めっき条件にてニッケル-リン合金層30のみを形成したサンプルを1つ用意し、そのサンプルを用いて、ICP発光分光分析によりニッケル付着量及びリン付着量を測定した。また、得られたニッケル付着量及びリン付着量からリン含有率を算出した。結果を表1~2に示す。
なお、リン含有率の測定方法としては、上述したICP発光分光分析の方法に限られず、例えば実施例15のように、TEM断面観察及びEDXを用いて金属層40の上層及び下層に形成されたニッケル-リン合金層30中のリン含有率を測定することも可能である。
[算術平均高さSa、十点平均粗さRzjisの測定]
集電体用表面処理金属箔の最表面(ニッケル-リン合金層30、金属層40、粗化層50)について、ISO25178-2:2012に準拠してレーザー顕微鏡(オリンパス社製、3D測定レーザー顕微鏡 LEXT OLS5000)を使用し、算術平均高さSaを測定した。また、JIS B0601:2013に準拠して上記同様のレーザー顕微鏡を使用し、十点平均粗さRzjisを測定した。結果を表3~4に示す。
具体的には、まず対物レンズ100倍(レンズ名称:MPLAPON100XLEXT)の条件で3視野をスキャンし、各視野について解析アプリケーションを用いて自動補正処理(ノイズ除去及び傾き補正)を行った。その後に、面粗さ計測及び線粗さ計測のアイコンをクリックして解析を行うことで、算術平均高さSaと十点平均粗さRzjisを得た。なお、算術平均高さSaについては上記3視野で得られた測定値を平均して求め、十点平均粗さRzjisについては上記3視野内の20箇所(線)での測定値を平均することで求めた。但し、Rzjisについては、観察する表面形状によっては3視野のスキャンで20箇所(線)の測定値を得られないことがあるため、その場合は観察する視野数を増やすことで20箇所(線)以上の測定値を得ることも可能である。
また、解析におけるフィルター条件(F演算、Sフィルター、Lフィルター)は設定せずに、無しの条件で解析を行った。
[耐電解液性評価]
集電体用表面処理金属箔において、耐電解液性の評価として電解液浸漬試験を行うため、集電体用表面処理金属箔の最表面にニッケル-リン合金層30が形成された構成と、最表面に金属層40(又は粗化層50)が形成されたサンプルを作製した。各サンプルを下記2つの浸漬条件下(条件1、条件2)で電解液へ浸漬し、ICP発光分光分析を用いて浸漬試験前後でのニッケル及びリン付着量を測定した。そして、得られたニッケル及びリン付着量を基にして、浸漬試験前後でのニッケル及びリンの減少率を算出した。なお、浸漬試験前後でのニッケル及びリンの減少率は以下の計算式で求めた。
また、上記の各サンプルに対して浸漬試験前後での水素バリア性を評価するため、浸漬試験前後での水素透過電流密度の測定を行った。そして、浸漬試験前後で得られた水素透過電流密度の増加分を算出した。なお、浸漬試験前後での水素透過電流密度の増加分は以下の計算式で求めた。
ニッケルの減少率=((浸漬前のニッケル付着量-浸漬後のニッケル付着量)/浸漬前のニッケル付着量)×100(%)
リンの減少率=((浸漬前のリン付着量-浸漬後のリン付着量)/浸漬前のリン付着量)×100(%)
水素透過電流密度の増加分=浸漬後の水素透過電流密度-浸漬前の水素透過電流密度
なお、耐電解液性評価に使用した電解液は、上述した水素透過電流密度の測定方法に使用した電解液を用いており、条件1の浴条件を、浸漬温度65℃、浸漬時間60時間、条件2の浴条件を浸漬温度80℃、浸漬時間60時間として、耐電解液性を評価した。
耐電解液性の評価基準としては以下のとおりとした。結果を表3に示す。
◎:浸漬試験前後におけるニッケル又はリンの減少率が1.0%未満
○:浸漬試験前後におけるニッケル又はリンの減少率が1.0%以上6.0%未満
△:浸漬試験前後におけるニッケル又はリンの減少率が6.0%以上10.0%未満
また、上記2つの浸漬条件下(条件1、条件2)における水素透過電流密度を測定し、浸漬試験前後で得られた水素透過電流密度の増加分を算出し、水素バリア性を以下のように評価した。結果を表3に示す。
◎:浸漬試験前後における水素透過電流密度の増加分が5.0μA/m未満
○:浸漬試験前後における水素透過電流密度の増加分が5.0μA/m以上10.0μA/m未満
△:浸漬試験前後における水素透過電流密度の増加分が10.0μA/m以上15.0μA/m未満
なお、条件1とは、想定される最も過酷な電池(アルカリ電解液を用いた電池)環境下を模擬した浴条件であり、条件2とは、通常想定されない、より過酷な電池環境下を模擬した浴条件である。
<実施例1>
まず金属基材20として下記に示す化学組成を有する低炭素アルミキルド鋼の冷間圧延箔(厚さ50μm)を準備した。
C:0.04重量%、Mn:0.32重量%、Si:0.01重量%、P:0.012重量%、S:0.014重量%、Al:0.1重量%以下、残部:Feおよび不可避的不純物
次に、準備した金属基材に対して前処理(電解脱脂、硫酸浸漬の酸洗)を行った後、下記条件にて、両面に電解ニッケル-リン合金めっきを行ってニッケル-リン合金層を形成したサンプルを2つ作製した。なお、ニッケル-リン合金めっきの条件は以下の通りとした。
<ニッケル-リン合金めっき条件>
・浴組成:
硫酸ニッケル六水和物:200g/L
塩化ニッケル六水和物:10g/L
ホウ酸:30g/L
クエン酸三ナトリウム(無水):10g/L
亜リン酸:40g/L
亜リン酸水素二ナトリウム:110g/L
・浴温:60℃
・pH:2.3
・撹拌:空気撹拌又は噴流撹拌
・電流密度:20A/dm
ニッケル-リン合金めっき後に、窒素雰囲気下、400℃、均熱時間が30秒間で熱処理を行った。
第1の面10aとなる側からニッケル-リン合金層のX線回折測定を行った。得られたニッケル-リン合金層のX線回折2θ/θ測定において、回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲における回折ピークの有無を観察した。また、株式会社Rigaku社製 統合粉末X線解析ソフトウェア PDXLを用いて回折ピークを確認した結果、上記観察の結果と同一であることを確認した。次いで、上記回折角範囲における回折強度の最大値を測定した。結果を表1~2に示す。
なお、上記サンプルの1つをニッケル-リン合金めっき後に溶解させてICP発光分光分析測定(測定装置:島津製作所社製、誘導結合プラズマ発光分光分析装置 ICPE-9000)を行った結果、リン含有率は表1のとおりであった。このリン含有率(wt%)が下記式[1]を満たす場合をA、満たさない場合をBとして表2に示した。
Figure 2023098438000004

X:回折角2θ=41.0°~42.5°範囲における回折強度の最大値
Y:回折角2θ=47.5°~49.0°範囲における回折強度の最大値
得られた集電体用表面処理金属箔について、ニッケル-リン合金層の実測厚みは表1のとおりであった。
また上記のようにして得られた集電体用表面処理金属箔について、図2に記載の装置を用いて測定した水素透過電流密度の値は表1のとおりであった。さらに、ニッケル-リン合金層の表面における十点平均粗さRzjisは表3のとおりであった。
<実施例2>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、ニッケル-リン合金めっきのリン含有率と各層の実測厚みを表に記載の構成となるようにした以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1~3に示す。
<実施例3>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、ニッケル-リン合金めっきのリン含有率と各層の実測厚みを表に記載の構成とし、熱処理条件を表に記載の範囲となるようにした以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1~3に示す。
<実施例4>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、ニッケル-リン合金めっきのリン含有率と各層の実測厚みを表に記載の構成となるようにした以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1~3に示す。
<実施例5>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、ニッケル-リン合金めっきのリン含有率と各層の実測厚みを表に記載の構成とし、熱処理条件を表に記載の範囲となるようにした以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1~3に示す。
<実施例6>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、ニッケル-リン合金めっきのリン含有率と各層の実測厚みを表に記載の構成となるようにした以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1~3に示す。
<実施例7>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、ニッケル-リン合金めっきのリン含有率と各層の実測厚みを表に記載の構成となるようにした以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1~3に示す。
<実施例8>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、金属基材の第1の面10aとなる側にニッケル-リン合金層を形成した。サンプルを2枚作製した。作製した1枚に対して、さらに金属基材の第2の面10bとなる側に、以下のニッケルめっき条件によりニッケル層を形成した。
<ニッケルめっき条件>
・浴組成:
硫酸ニッケル六水和物:250g/L
塩化ニッケル六水和物:45g/L
ホウ酸:30g/L
・浴温:60℃
・pH:4.0~5.0
・電流密度 10A/dm
上記各めっき後に窒素雰囲気下、500℃、均熱時間30秒間で熱処理を行った。そして、第1の面10aとなる側からニッケル-リン合金層のX線回折測定を行った。得られたニッケル-リン合金層のX線回折2θ/θ測定において、回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲における回折ピークの有無を観察した。また、株式会社Rigaku社製 統合粉末X線解析ソフトウェア PDXLを用いて回折ピークを確認した結果、上記観察の結果と同一であることを確認した。次いで、上記回折角範囲における回折強度の最大値を測定した。結果を表1~2に示す。
また上記サンプルの1つをニッケル-リン合金めっき後に溶解させてICP発光分光分析測定(測定装置:島津製作所社製、誘導結合プラズマ発光分光分析装置 ICPE-9000)を行った結果、リン含有率は表1のとおりであった。このリン含有率が、式[1]を満たすかを評価した結果、表2のとおりであった。また得られたニッケル-リン合金層の各層の実測厚み及び水素透過電流密度の値は表1のとおりであった。さらに、ニッケル-リン合金層の表面における十点平均粗さRzjisは表3のとおりであった。
<実施例9>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、ニッケル-リン合金めっきのリン含有率と各層の実測厚みを表に記載の構成となるようにした以外は、実施例8と同様に行った。結果を表1~3に示す。
<実施例10>
実施例1と同様に準備した金属基材に対して両面にニッケル層を形成した。次いで金属基材の第2の面10bとなる側に、下記条件にて粗化ニッケルめっきを施し、粗化層を形成した。
<粗化ニッケルめっき条件>
・浴組成:
めっき浴中の硫酸ニッケル六水和物濃度:10g/L
めっき浴中の塩化ニッケル六水和物濃度:10g/L
めっき浴の塩化物イオン濃度:3g/L
めっき浴中のニッケルイオンとアンモニウムイオンとの比:
ニッケルイオン/アンモニウムイオン(重量比)=0.17
・浴温:50℃
・pH:6
・電流密度:12A/dm
・めっき時間:60秒間
次いで、上記で得られた粗化層を有する金属基材の第2の面10bとなる側に、実施例1と同様の条件により電解ニッケル-リン合金めっき(被覆ニッケル-リン合金めっき)を行って、複合粗化層を形成した。
上記被覆ニッケル-リン合金めっき後に、窒素雰囲気下、400℃、均熱時間30秒間で熱処理を行った。そして、第2の面10bとなる側からニッケル-リン合金層のX線回折測定を実施した。得られたニッケル-リン合金層のX線回折2θ/θ測定において、回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲における回折ピークの有無を観察した。また、株式会社Rigaku社製 統合粉末X線解析ソフトウェア PDXLを用いて回折ピークを確認した結果、上記観察の結果と同一であることを確認した。次いで、上記回折角範囲における回折強度の最大値を測定した。結果を表1~2に示す。
また得られたニッケル-リン合金層のリン含有率、各層の実測厚み及び水素透過電流密度の値は表1のとおりであった。このリン含有率が、式[1]を満たすかを評価した結果、表2のとおりであった。また、金属基材の最表面に形成された複合粗化層の算術平均高さSaは表4のとおりであった。
なお、試験片に粗化層が形成されている場合、粗化の隙間からの電解液浸出により、水素透過電流密度の測定が正常に出来ない場合がある。そのため、粗化の隙間からの電解液浸出の影響を抑制するために、測定セルの間の設置に先立って、粗化層が形成されている面に、測定径Φ20mmを切りぬいたポリプロピレン樹脂を測定位置に合わせて接着した後、測定セルの間に試験片を配置した。ポリプロピレン樹脂は厚み70μmの厚さのフィルムを用い、170℃、0.1~0.4MPaの条件で3秒加圧する熱圧着の方法で接着した。
<実施例11>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、第1の面10aとなる側に電解ニッケルめっきを行ってニッケル層を形成した。また、第2の面10bとなる側に電解ニッケル-リン合金めっきを行ってニッケル-リン合金層を形成した。
次いで、形成されたニッケル-リン合金層の上層であって第2の面10bとなる側に粗化ニッケルめっきを行った後、以下の条件にて被覆ニッケルめっきを施し、粗化ニッケル層を形成した。
<被覆ニッケルめっき条件>
・浴組成:
硫酸ニッケル六水和物:250g/L
塩化ニッケル六水和物:45g/L
ホウ酸:30g/L
・浴温:60℃
・pH:4.0~5.0
・電流密度:5A/dm
・めっき時間:10秒間
上記各めっき後に、窒素雰囲気下、400℃、均熱時間30秒間で熱処理を行った。そして、第2の面10bとなる側からニッケル-リン合金層のX線回折測定を実施した。得られたニッケル-リン合金層のX線回折2θ/θ測定において、回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲における回折ピークの有無を観察した。また、株式会社Rigaku社製 統合粉末X線解析ソフトウェア PDXLを用いて回折ピークを確認した結果、上記観察の結果と同一であることを確認した。次いで、上記回折角範囲における回折強度の最大値を測定した。結果を表1~2に示す。
また得られたニッケル-リン合金層のリン含有率、各層の実測厚み及び水素透過電流密度の値は表1のとおりであった。このリン含有率が、式[1]を満たすかを評価した結果、表2のとおりであった。また、金属基材の最表面に形成された粗化ニッケル層の算術平均高さSaは表4のとおりであった。なお、水素透過電流密度の値は、実施例10と同様の方法にて測定した。
<実施例12>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、電解ニッケル-リン合金めっきを行って両面にニッケル-リン合金層を形成した。次に、電解ニッケルめっきを行って両面にニッケル層を形成した。
上記各めっき後に、窒素雰囲気下、400℃、均熱時間30秒間で熱処理を行った。そして、第1の面10aとなる側からニッケル-リン合金層のX線回折測定を実施した。得られたニッケル-リン合金層のX線回折2θ/θ測定において、回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲における回折ピークの有無を観察した。また、株式会社Rigaku社製 統合粉末X線解析ソフトウェア PDXLを用いて回折ピークを確認した結果、上記観察の結果と同一であることを確認した。次いで、上記回折角範囲における回折強度の最大値を測定した。結果を表1~2に示す。
また得られたニッケル-リン合金層のリン含有率、各層の実測厚み及び水素透過電流密度の値は表1のとおりであった。このリン含有率が、式[1]を満たすかを評価した結果、表2のとおりであった。
<実施例13>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、ニッケル-リン合金めっきのリン含有率と実測厚みを表に記載の構成となるようにし、熱処理条件を表に記載の範囲とした以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1~3に示す。
<実施例14>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、ニッケル-リン合金めっきのリン含有率と実測厚みを表に記載の構成となるようにし、熱処理条件を表に記載の範囲とした以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1~3に示す。
<実施例15>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、ニッケル-リン合金めっきのリン含有率と実測厚みを表に記載の構成となるようにし、熱処理条件を表に記載の範囲とした以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1~3に示す。
<実施例16>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、ニッケル-リン合金めっきのリン含有率と実測厚みを表に記載の構成となるようにし、熱処理条件を表に記載の範囲とした以外は、実施例8と同様に行った。結果を表1~3に示す。
<実施例17>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、両面にニッケル-リン合金層を形成し、次に両面にニッケル層を形成した。次いで、形成されたニッケル層の上層であって第2の面10bとなる側に、粗化ニッケルめっき及び被覆ニッケルめっきを施し、粗化ニッケル層を形成した。上記各めっき後に、窒素雰囲気下、500℃、均熱時間30秒間で熱処理を行った。そして、第1の面10aとなる側からニッケル-リン合金層のX線回折測定を実施した。得られたニッケル-リン合金層のX線回折2θ/θ測定において、回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲における回折ピークの有無を観察した。また、株式会社Rigaku社製 統合粉末X線解析ソフトウェア PDXLを用いて回折ピークを確認した結果、上記観察の結果と同一であることを確認した。次いで、上記回折角範囲における回折強度の最大値を測定した。結果を表1~2に示す。
また得られたニッケル-リン合金層のリン含有率、各層の実測厚み及び水素透過電流密度の値は表1のとおりであった。このリン含有率が、式[1]を満たすかを評価した結果、表2のとおりであった。また、金属基材の最表面に形成された粗化ニッケル層の算術平均高さSaは表4のとおりであった。なお、水素透過電流密度の値は、実施例10と同様の方法にて測定した。
<実施例18>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、金属基材の第2の面10bとなる側にニッケル-リン合金層を形成し、次いで、両面にニッケル層を形成した。上記各めっき後に、窒素雰囲気下、500℃、均熱時間30秒間で熱処理を行った。そして、第2の面10bとなる側からニッケル-リン合金層のX線回折測定を実施した。得られたニッケル-リン合金層のX線回折2θ/θ測定において、回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲における回折ピークの有無を観察した。また、株式会社Rigaku社製 統合粉末X線解析ソフトウェア PDXLを用いて回折ピークを確認した結果、上記観察の結果と同一であることを確認した。次いで、上記回折角範囲における回折強度の最大値を測定した。結果を表1~2に示す。
また得られたニッケル-リン合金層のリン含有率、各層の実測厚み及び水素透過電流密度の値は表1のとおりであった。このリン含有率が、式[1]を満たすかを評価した結果、表2のとおりであった。
<実施例19>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、ニッケル-リン合金めっきのリン含有率と実測厚みを表に記載の構成となるようにし、熱処理条件を表に記載の範囲とした以外は、実施例8と同様に行った。結果を表1~3に示す。
<実施例20>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、両面にニッケル-リン合金層を形成し、次に、第1の面10aとなる側にニッケル層を形成した。次いで、形成されたニッケル-リン合金層の上層であって第2の面10bとなる側に、粗化ニッケルめっき及び被覆ニッケルめっきを施し、粗化ニッケル層を形成した。上記各めっき後に、窒素雰囲気下、400℃、均熱時間30秒間で熱処理を行った。そして、第1の面10aとなる側からニッケル-リン合金層のX線回折測定を実施した。このX線回折2θ/θ測定において、回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲における回折ピークの有無を観察した。また、株式会社Rigaku社製 統合粉末X線解析ソフトウェア PDXLを用いて回折ピークを確認した結果、上記観察の結果と同一であることを確認した。次いで、上記回折角範囲における回折強度の最大値を測定した。結果を表1~2に示す。
また得られたニッケル-リン合金層のリン含有率、各層の実測厚み及び水素透過電流密度の値は表1のとおりであった。このリン含有率が、式[1]を満たすかを評価した結果、表2のとおりであった。また、金属基材の最表面に形成された粗化ニッケル層の算術平均高さSaは表4のとおりであった。なお、水素透過電流密度の値は、実施例10と同様の方法にて測定した。
<実施例21>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、両面にニッケル層を形成した後、両面にニッケル-リン合金層を形成した。次いで、窒素雰囲気下、400℃、均熱時間30秒間で熱処理を行った。上記熱処理後、以下の条件で両面にストライクニッケルめっきを行った。
<ストライクニッケルめっき条件>
・浴組成:
硫酸ニッケル六水和物:250g/L
硫酸:50g/L
・浴温:60℃
・電流密度:30A/dm
・めっき時間:5秒間
そして、金属基材の第1の面10aとなる側にニッケル層を形成した。次いで、形成されたニッケル-リン合金層の上層であって第2の面10bとなる側に、粗化ニッケルめっき及び被覆ニッケルめっきを施し、粗化ニッケル層を形成した。そして、第1の面10aとなる側からニッケル-リン合金層のX線回折測定を実施した。このX線回折2θ/θ測定において、回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲における回折ピークの有無を観察した。また、株式会社Rigaku社製 統合粉末X線解析ソフトウェア PDXLを用いて回折ピークを確認した結果、上記観察の結果と同一であることを確認した。次いで、上記回折角範囲における回折強度の最大値を測定した。結果を表1~2に示す。
また得られたニッケル-リン合金層のリン含有率、各層の実測厚み及び水素透過電流密度の値は表1のとおりであった。このリン含有率が、式[1]を満たすかを評価した結果、表2のとおりであった。また、金属基材の最表面に形成された粗化ニッケル層の算術平均高さSaは表4のとおりであった。なお、水素透過電流密度の値は、実施例10と同様の方法にて測定した。
<実施例22>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、両面にニッケル層を形成した後、両面にニッケル-リン合金層を形成した。上記ニッケル-リン合金めっき後に、窒素雰囲気下、400℃、熱処理時間30秒間で熱処理を行った。次いで、実施例21と同様の条件でストライクニッケルめっきを両面に施した後、両面にニッケル層を形成した。次いで、形成されたニッケル層の上層であって第2の面10bとなる側に、粗化ニッケルめっき及び被覆ニッケルめっきを施し、粗化ニッケル層を形成した。そして、第1の面10aとなる側からニッケル-リン合金層のX線回折測定を実施した。このX線回折2θ/θ測定において、回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲における回折ピークの有無を観察した。また、株式会社Rigaku社製 統合粉末X線解析ソフトウェア PDXLを用いて回折ピークを確認した結果、上記観察の結果と同一であることを確認した。次いで、上記回折角範囲における回折強度の最大値を測定した。結果を表1~2に示す。
また得られたニッケル-リン合金層のリン含有率、各層の実測厚み及び水素透過電流密度の値は表1のとおりであった。このリン含有率が、式[1]を満たすかを評価した結果、表2のとおりであった。また、金属基材の最表面に形成された粗化ニッケル層の算術平均高さSaは表4のとおりであった。なお、水素透過電流密度の値は、実施例10と同様の方法にて測定した。
<実施例23>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、ニッケル-リン合金めっきのリン含有率と各層の実測厚みを表に記載の構成となるようにし、熱処理条件を表に記載の範囲とした以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1~3に示す。
<実施例24>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、熱処理条件を表に記載の範囲となるようにした以外は、実施例23と同様に行った。結果を表1~3に示す。また、得られたニッケル-リン合金層のX線回折2θ/θ測定において、回折角2θ=41.0°~42.5°の範囲と2θ=47.5°~49.0°の範囲に回折ピークを確認した結果を図7に示す。
また、得られた集電体用表面処理金属箔において電解液浸漬試験を行い、耐電解液性の評価と水素バリア性の評価を行った。結果を表5に示す。
<実施例25>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、ニッケル-リン合金めっきのリン含有率と各層の実測厚みを表に記載の構成となるようにし、熱処理条件を表に記載の範囲とした以外は、実施例20と同様に行った。結果を表1~2、4に示す。
また、得られた集電体用表面処理金属箔において電解液浸漬試験を行い、耐電解液性の評価と水素バリア性の評価を行った。結果を表5に示す。
<実施例26>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、ニッケル-リン合金めっきのリン含有率と各層の実測厚みを表に記載の構成となるようにし、熱処理条件を表に記載の範囲とした以外は、実施例17と同様に行った。結果を表1~2、4に示す。
<実施例27>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、ニッケル-リン合金めっきのリン含有率と各層の実測厚みを表に記載の構成となるようにし、熱処理条件を表に記載の範囲とした以外は、実施例17と同様に行った。結果を表1~2、4に示す。
<実施例28>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、ニッケル-リン合金めっきのリン含有率と各層の実測厚みを表に記載の構成となるようにし、熱処理条件を表に記載の範囲とした以外は、実施例17と同様に行った。結果を表1~2、4に示す。
<実施例29>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、ニッケル-リン合金めっきのリン含有率と各層の実測厚みを表に記載の構成となるようにし、熱処理条件を表に記載の範囲とした以外は、実施例17と同様に行った。結果を表1~2、4に示す。
<実施例30>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、ニッケル-リン合金めっきのリン含有率と各層の実測厚みを表に記載の構成となるようにし、熱処理条件を表に記載の範囲とした以外は、実施例17と同様に行った。結果を表1~2、4に示す。
<実施例31>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、第1の面10aとなる側に電解ニッケル-リン合金めっき行ってニッケル-リン合金層を形成した。次に、電解ニッケルめっきを行って第2の面10bとなる側にニッケル層を形成し、上記各めっき後に窒素雰囲気下、400℃、均熱時間4時間で熱処理を行った。次いで、実施例21と同様の条件でストライクニッケルめっきを両面に施した後、第1の面10aとなる側に電解ニッケルめっきを施してニッケル層を形成し、第2の面10bとなる側に粗化ニッケルめっき及び被覆ニッケルめっきを施して粗化ニッケル層を形成した。そして、第1の面10aとなる側からニッケル-リン合金層のX線回折測定を実施した。得られたニッケル-リン合金層のX線回折2θ/θ測定において、回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲における回折ピークの有無を観察した。また、株式会社Rigaku社製 統合粉末X線解析ソフトウェア PDXLを用いて回折ピークを確認した結果、上記観察の結果と同一であることを確認した。次いで、上記回折角範囲における回折強度の最大値を測定した。結果を表1~2に示す。
また得られたニッケル-リン合金層のリン含有率、各層の実測厚み及び水素透過電流密度の値は表1のとおりであった。このリン含有率が、式[1]を満たすかを評価した結果、表2のとおりであった。また、金属基材の最表面に形成された粗化ニッケル層の算術平均高さSaは表4のとおりであった。なお、水素透過電流密度の値は、実施例10と同様の方法にて測定した。
<比較例1>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、実施例8と同様の条件にて電解ニッケルめっきを行って両面にニッケル層を形成した。ニッケルめっき後に、窒素雰囲気下、400℃、均熱時間30秒間で熱処理を行った。そして、第1の面10aとなる側からニッケル層のX線回折測定を行った。このX線回折2θ/θ測定において、回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲における回折ピークの有無を観察した。また、株式会社Rigaku社製 統合粉末X線解析ソフトウェア PDXLを用いて回折ピークを確認した結果、上記観察の結果と同一であることを確認した。結果を表1に示す。
また得られたニッケル層のリン含有率、各層の実測厚み及び水素透過電流密度の値は表1のとおりであった。
<比較例2>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、ニッケル-リン合金めっき後の熱処理を行わなかった以外は実施例1と同様に行った。そして、第1の面10aとなる側からニッケル-リン合金層のX線回折測定を行った。このX線回折2θ/θ測定において、回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲における回折ピークの有無を観察した。また、株式会社Rigaku社製 統合粉末X線解析ソフトウェア PDXLを用いて回折ピークを確認した結果、上記観察の結果と同一であることを確認した。結果を表1に示す。
また得られたニッケル-リン合金層のリン含有率、各層の実測厚み及び水素透過電流密度の値は表1のとおりであった。
<比較例3>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、ニッケル-リン合金めっき後の熱処理温度を300℃とした以外は実施例2と同様に行った。そして、第1の面10aとなる側からニッケル-リン合金層のX線回折測定を行った。このX線回折2θ/θ測定において、回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲における回折ピークの有無を観察した。また、株式会社Rigaku社製 統合粉末X線解析ソフトウェア PDXLを用いて回折ピークを確認した結果、上記観察の結果と同一であることを確認した。結果を表1に示す。
また得られたニッケル-リン合金層のリン含有率、各層の実測厚み及び水素透過電流密度の値は表1のとおりであった。
<比較例4>
実施例1と同様に前処理を施した金属基材に対して、実施例8と同様の条件にて電解ニッケルめっきを行って両面にニッケル層を形成した。ニッケルめっき後に、窒素雰囲気下、700℃、均熱時間30秒間で熱処理を行った。そして、第1の面10aとなる側からニッケル層のX線回折測定を行った。このX線回折2θ/θ測定において、回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲における回折ピークの有無を観察した。また、株式会社Rigaku社製 統合粉末X線解析ソフトウェア PDXLを用いて回折ピークを確認した結果、上記観察の結果と同一であることを確認した。結果を表1に示す。
また得られたニッケル層のリン含有率、各層の実測厚み及び水素透過電流密度の値は表1のとおりであった。
Figure 2023098438000005
Figure 2023098438000006
Figure 2023098438000007
Figure 2023098438000008
Figure 2023098438000009
Figure 2023098438000010
Figure 2023098438000011
Figure 2023098438000012
各実施例は、好ましい水素バリア性等の特性を備えていることが確認された。一方で比較例1~4においては、水素バリア性の観点において目的を達成することができなかったことが確認された。
より詳細には、実施例1~31において、ニッケル-リン合金層の回折角2θ=41.0°~42.5°の範囲、もしくは、2θ=47.5°~49.0°の範囲のいずれかに回折ピークが存在することにより、優れた水素バリア性を得られることを確認した。一方、比較例1~4においては、金属基材20上にニッケル-リン合金層が形成されていない構成や、ニッケル-リン合金層は形成されているものの、ニッケル-リン合金層の回折角2θ=41.0°~42.5°の範囲、もしくは、2θ=47.5°~49.0°の範囲に回折ピークが存在しないため、優れた水素バリア性を得られないことを確認した。
また、実施例5~7、9~15、19~31において、式[1]を満たす実施例であり、水素透過電流密度が10μA/cm以下となる、より優れた水素バリア性が得られることを確認した。
より詳細には、ニッケル-リン合金層中のリン含有率と、ニッケル-リン合金層の回折角2θ=41.0°~42.5°の範囲と、2θ=47.5°~49.0°の範囲の回折強度の最大値における強度比(「2θ=41.0°~42.5°の回折強度の最大値」/「2θ=47.5°~49.0°の回折強度の最大値」)が、水素バリア性の優劣に対する寄与率(貢献度)が高く、これらのパラメータが式[1]を満たすことで、より優れた水素バリア性を得られることを確認した。たとえば、実施例2と13を比べた場合、ニッケル-リン合金層の層構成やリン含有率、厚みが同等の範囲であるものの、実施例2は式[1]を満たさない構成であり、水素透過電流密度が34.5μA/cmであった。それに対し、実施例13は[1]を満たす構成であり、水素透過電流密度が0.9μA/cmと、より優れた水素バリア性を有することを確認した。つまり、ニッケル-リン合金層中のリン含有率が少ない構成であっても、式[1]を満たすことにより、より優れた水素バリア性を得られることを確認した。
さらに、ニッケル-リン合金層の回折角2θ=41.0°~42.5°の範囲、もしくは、2θ=47.5°~49.0°の範囲に回折ピークを有しつつ、且つニッケル-リン合金層の合計厚みが0.10μm以上、リン含有率を8.0wt%以上とした構成においては、上記回折ピークを形成する際の熱処理温度を比較的低温(300℃~500℃)となる熱処理条件の場合においても、優れた水素バリア性を有する材料を得られることを確認した。このような、比較的低温で熱処理した場合においては、集電体用表面処理金属箔の熱処理による機械特性の変化を抑制しやすい。
また、実施例24と実施25を耐電解液性の評価として電解液浸漬試験を行った。その結果、現状想定される過酷な電池(アルカリ電解液を用いた電池)環境下を模擬した条件1において、実施例24及び実施例25の浸漬試験前後におけるニッケル及びリンの減少はほぼなく、十分な耐電解液性を有していることが分かった。さらに、ニッケル-リン合金層の上層にニッケル層(又は粗化ニッケル層)が形成されている実施例25において、通常想定されない、より過酷な電池環境下を模擬した条件2においても、浸漬試験前後でニッケル及びリンの減少はほぼなく、より高い耐電解液性を有していることが分かった。
これらの実験より、本発明の集電体用表面処理金属箔は十分な水素バリア性を有しつつ、かつ耐電解液性に優れていることを確認した。
なお、実施例11、12、17、18、20~22、25~31においてはニッケル-リン合金層上の金属層を通してニッケル-リン合金層のX線回折測定を行っている。これらの実施例においてはニッケル-リン合金層の回折角2θ=41.0°~42.5°の範囲、もしくは、2θ=47.5°~49.0°の範囲における回折ピークと、金属層の回折角が完全に重ならず、さらに金属層の厚みも比較的薄いため、ピークの分離・検出が可能であった。しかし、金属層の種類や厚みによってはニッケル-リン合金層の当該回折ピークとの分離が困難となる恐れもある。その場合は、ニッケル-リン合金層上の金属層を機械的研磨やエッチング(ウェットやドライ)によって除去した後にX線回折測定を行うことで、目的とするニッケル-リン合金層だけを測定することも可能である。
さらに、実施例10においてはニッケル-リン合金層の下層に金属層が存在するため、測定したニッケル-リン合金層のX線回折の2θ/θ測定には下層の金属層の回折ピークを含んだ結果が反映されているが、上記と同様にニッケル-リン合金層の回折角2θ=41.0°~42.5°の範囲、もしくは、2θ=47.5°~49.0°の範囲の回折ピークと、金属層の回折ピークが重ならないため、ピークの分離が可能であった。しかし、金属層の種類によってはニッケル-リン合金層の当該回折ピークとの分離が困難となる恐れもある。その場合は、薄膜モードでのX線回折測定を行うことで、下層の金属層の回折ピークを極力反映させずに、目的とするニッケル-リン合金層だけの測定を行うことも可能である。これらの方法は組み合わせても良い。
なお上記した実施形態と各実施例は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
また、上記した実施形態と実施例における集電体用表面処理金属箔は主としてバイポーラ構造の二次電池用集電体に用いられるものとして説明したが、本発明の集電体用表面処理金属箔はバイポーラ構造の二次電池用集電体に限らず、水素を含む、あるいは水素が発生する電池(アルカリ電解液を用いた電池)の集電体に適用可能であり、車載電池などの苛酷環境下においても有効な水素バリア性を有するため好適に用いることが可能である。
以上説明したように、本発明の集電体用表面処理金属箔は、水素バリア性が要求される種々の種類の電池の集電体に対して適用が可能である。また、本発明の集電体用表面処理金属箔を車載用電池等に用いた場合、特に低燃費化に貢献することができる。
100 集電体用表面処理金属箔
200 集電体用表面処理金属箔
300 集電体用表面処理金属箔
10a 第1の面
10b 第2の面
20 金属基材
30 ニッケル-リン合金層
40 金属層
50 粗化ニッケル層

Claims (15)

  1. 第1の面及び、前記第1の面と反対側に位置する第2の面を有した集電体用表面処理金属箔であって、
    前記集電体用表面処理金属箔の基材が金属基材からなり、
    前記金属基材の少なくともいずれか一方の面側にニッケル-リン合金層が形成されており、
    前記ニッケル-リン合金層はX線回折の2θ/θ測定において回折角2θ=41.0°~42.5°、及び、2θ=47.5°~49.0°の範囲の少なくともいずれか一方において、回折ピークが観察されることを特徴とする、集電体用表面処理金属箔。
  2. 前記ニッケル-リン合金層が、前記金属基材の両面に形成されている、請求項1に記載の集電体用表面処理金属箔。
  3. 前記ニッケル-リン合金層におけるリン含有率が5.0wt%~18.0wt%である、請求項1又は2に記載の集電体用表面処理金属箔。
  4. 前記ニッケル-リン合金層の厚みが0.05μm以上3.00μm未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の集電体用表面処理金属箔。
  5. 前記ニッケル-リン合金層の前記リン含有率が下記式[1]を満たす、請求項1~4のいずれか一項に記載の集電体用表面処理金属箔。
    Figure 2023098438000013
    ただしX及びYは以下のように定義される。
    X:回折角2θ=41.0°~42.5°範囲における回折強度の最大値
    Y:回折角2θ=47.5°~49.0°範囲における回折強度の最大値
  6. 前記ニッケル-リン合金層におけるリン含有率が8.0wt%~18.0wt%であり、前記ニッケル-リン合金層の合計厚みが0.10μm以上6.00μm未満である、請求項1~5のいずれか一項に記載の集電体用表面処理金属箔。
  7. 前記集電体用表面処理金属箔の基材が、低炭素鋼又は極低炭素鋼である、請求項1~6のいずれか一項に記載の集電体用表面処理金属箔。
  8. 前記ニッケル-リン合金層におけるニッケル付着量が0.3g/m~20.0g/mである、請求項1~7のいずれか一項に記載の集電体用表面処理金属箔。
  9. 前記金属基材において、少なくともいずれか一方の面側に、ニッケル・コバルトのうち少なくとも1種類を含有する金属層を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の集電体用表面処理金属箔。
  10. 前記金属層がニッケル層であり、前記ニッケル-リン合金層の上層に形成されている、請求項9に記載の集電体用表面処理金属箔。
  11. 前記ニッケル層が前記ニッケル-リン合金層の下層にも形成されている、請求項10に記載の集電体用表面処理金属箔。
  12. 前記ニッケル-リン合金層及び前記ニッケル層におけるニッケル総付着量が2.0g/m~60.0g/mである、請求項10又は11に記載の集電体用表面処理金属箔。
  13. 前記第1の面側、及び前記第2の面側の少なくともいずれか一方の最表面に粗化層が形成され、前記粗化層の算術平均高さSaが0.2~1.30μmである、請求項1~12のいずれか一項に記載の集電体用表面処理金属箔。
  14. 前記粗化層が粗化ニッケル層であり、少なくとも前記ニッケル-リン合金層又は前記金属層の上層に形成されている、請求項13に記載の集電体用表面処理金属箔。
  15. 前記ニッケル-リン合金層及び前記金属層、前記粗化層におけるニッケル総付着量が5.0g/m~90.0g/mである、請求項13又は14に記載の集電体用表面処理金属箔。
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