JP2024001397A - リチウム二次電池用正極活物質、リチウム二次電池用正極、リチウム二次電池、およびリチウム二次電池用正極活物質の製造方法 - Google Patents

リチウム二次電池用正極活物質、リチウム二次電池用正極、リチウム二次電池、およびリチウム二次電池用正極活物質の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】リチウム二次電池においてガスが発生することを抑制すると共に、レート特性に優れたリチウム二次電池を容易に実現可能なリチウム二次電池用正極活物質等を提供する。【解決手段】本発明のリチウム二次電池用正極活物質は、水蒸気吸着法の吸着等温線において相対圧力p/p0が0.5であるときの水蒸気吸着量Va0.5、水蒸気吸着法の吸着等温線において相対圧力p/p0が0.9であるときの水蒸気吸着量Va0.9、および、水蒸気吸着法の脱着等温線において相対圧力p/p0が0.5であるときの水蒸気吸着量Vd0.5が「(Vd0.5-Va0.5)/Va0.9≦0.90」の関係を満たし、窒素吸着法により計測されるBET比表面積Smが「Sm≦0.8m2/g」の関係を満たし、かつ、水酸化リチウムの質量割合W1と炭酸リチウムの質量割合W2とが「W2/W1≦1.4」の関係を満たす。【選択図】なし

Description

本発明は、リチウム二次電池用正極活物質、リチウム二次電池用正極、リチウム二次電池、およびリチウム二次電池用正極活物質の製造方法に関する。
リチウム二次電池は、正極と負極との間に電解質(非水電解質や固体電解質など)が配置されている。リチウム二次電池では、電解質を介して、リチウムイオンが正極と負極との間を移動することで、充電および放電が行われる。
リチウム二次電池において、正極は、例えば、リチウム金属複合酸化物を正極活物質として用いて作製される。リチウム二次電池用正極活物質は、例えば、リチウム金属複合酸化物の前駆体である金属複合化合物とリチウム化合物とを混合した混合物を焼成することで作製される。
上記の焼成では、リチウム化合物がリチウム金属複合酸化物に残留物として残留する。リチウム化合物の残留物は、例えば、原料である水酸化リチウムの未反応物、原料である水酸化リチウムに不純物として含まれる炭酸リチウム、焼成の際に副生成物として生成された炭酸リチウムである。残留物であるリチウム化合物は、リチウム二次電池においてガスが発生する要因になる。
このため、リチウム化合物がリチウム金属複合酸化物に残留物として残留する正極活物質について、水洗処理(例えば、特許文献1参照)を施すことが提案されている。
特開2007-273108号公報 特開2021-39933号公報 特開2018-14322号公報 特開2009-99462号公報 特開2002-348121号公報
図1Aから図1Cは、関連技術に係る正極活物質を模式的に示す図である。図1Aでは、水洗処理や加湿処理を施す前の正極活物質を示している。図1Bでは、水洗処理を施した後の正極活物質を示している。図1Cでは、加湿処理を施した後の正極活物質を示している。
図1Aに示すように、水洗処理や加湿処理を施す前の正極活物質は、リチウム金属複合酸化物51にリチウム化合物61が残留物として残留している。また、水洗処理や加湿処理を施す前の正極活物質のうち、リチウム金属複合酸化物51には、保水性が高く副反応が発生し得る活性点71(図では、実線の楕円で囲った領域)が存在している。
この正極活物質について水洗処理を施した場合には、図1Bに示すように、リチウム金属複合酸化物51から残留物のリチウム化合物61が除かれ、リチウム化合物61の残留量が低減する。その結果、リチウム二次電池においてガスが発生すること等を抑制することができる。この他に、水洗処理を実施した場合には、リチウム金属複合酸化物51において保水性が高く副反応が発生し得る活性点71を、水の接触によって不活性化させることができる(図では、破線の楕円で囲った領域で図示)。しかし、水洗処理の実施では、リチウム金属複合酸化物51の表面からリチウム化合物61の残留量の減少に伴って、BET比表面積が増大する。その結果、リチウム二次電池の充放電サイクルにおいて、リチウム金属複合酸化物51の表面で副反応が多く生じやすくなり、副反応生成物からなる抵抗層の形成や表面劣化が生じやすくなるため、レート特性が不十分になる場合がある。
これに対して、公知の加湿処理を実施した場合には、図1Cに示すように、水洗処理の場合と同様に、水の接触によって活性点71を不活性化することができる(図では、破線の楕円で囲った領域で図示)。また、公知の加湿処理を実施した場合には、水洗処理の場合と異なり、リチウム金属複合酸化物51の表面に残留するリチウム化合物61の残留量が減少しないので、BET比表面積の過剰な増加を抑制することができる。その結果、レート特性が優れるリチウム二次電池を得ることができる。しかしながら、公知の加湿処理の実施では、リチウム化合物61の残留物の量は、加湿処理の実施前後で同等であるために、リチウム二次電池においてガスが発生することを十分に抑制できない場合がある。
上記のような事情により、従来においては、リチウム二次電池においてガスが発生することを抑制すると共に、レート特性に優れたリチウム二次電池を実現することが容易でない。
したがって、本発明は、リチウム二次電池においてガスが発生することを抑制すると共に、レート特性に優れたリチウム二次電池を容易に実現可能な、リチウム二次電池用正極活物質、リチウム二次電池用正極、リチウム二次電池、およびリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を有する。
[1]
Li元素、Ni元素、および元素Mを含む、層状構造のリチウム金属複合酸化物と、
水酸化リチウムおよび炭酸リチウムを含むリチウム化合物と
を有するリチウム二次電池用正極活物質であって、
前記元素Mが、Co、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Ca、Ba、Al、Zn、Sn、Zr、Nb、B、Si、S、およびPからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
水蒸気吸着法の吸着等温線において水蒸気圧pと飽和蒸気圧pとの相対圧力p/pが0.5であるときの水蒸気吸着量Va0.5、前記水蒸気吸着法の吸着等温線において前記相対圧力p/pが0.9であるときの水蒸気吸着量Va0.9、および、前記水蒸気吸着法の脱着等温線において前記相対圧力p/pが0.5であるときの水蒸気吸着量Vd0.5が、下記の(式A)に示す関係を満たし、
窒素吸着法により計測されるBET比表面積Smが下記の(式B)に示す関係を満たし、かつ、
前記水酸化リチウムの質量割合W1と前記炭酸リチウムの質量割合W2とが下記の(式C)に示す関係を満たす、
リチウム二次電池用正極活物質。
(Vd0.5-Va0.5)/Va0.9≦0.90 ・・・(式A)
Sm≦0.8m/g ・・・(式B)
W2/W1≦1.40 ・・・(式C)
[2]
前記リチウム金属複合酸化物は、
下記組成式(I)で表される、
[1]に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
Li[Li(Ni(1-x-y)CoM11-m]O ・・・(組成式I)
((組成式I)において、M1は、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Ca、Ba、Al、Zn、Sn、Zr、B、Si、SおよびPからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、m,x,yは、-0.1≦m≦0.2、0≦x≦0.5、0<y≦0.7、x+y<1に示す関係を満足する。)
[3]
前記BET比表面積Smが下記の式(B1)に示す関係を満たす、
[1]または[2]に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
0.2m/g≦Sm≦0.7m/g ・・・(式B1)
[4]
前記炭酸リチウムの質量割合W2は、下記の式(D)に示す関係を満たす、
[1]から[3]のいずれかに記載のリチウム二次電池用正極活物質。
W2≦0.70質量% ・・・(式D)
[5]
滴定法で測定される、前記リチウム二次電池用正極活物質の溶出リチウム量W3は、下記の式(E)に示す関係を満たす、
[1]から[4]のいずれかに記載のリチウム二次電池用正極活物質。
W3≦0.50質量% ・・・(式E)
[6]
CuKα線で測定した粉末X線回折の回折パターンにおいて、回折角2θが10°以上90°以下の範囲内に含まれる回折パターンから算出される結晶歪が、0.10°以下である、
[1]から[5]のいずれかに記載のリチウム二次電池用正極活物質。
[7]
窒素吸着法により計測される平均細孔径が、150nm以下である、
[1]から[6]のいずれかに記載のリチウム二次電池用正極活物質。
[8]
窒素吸着法により計測される細孔容積が、0.0005cm/g以上0.0150cm/g以下である、
[1]から[7]のいずれかに記載のリチウム二次電池用正極活物質。
[9]
50%累積体積粒度D50が3μm以上30μm以下である、
[1]から[8]のいずれかに記載のリチウム二次電池用正極活物質。
[10]
[1]から[9]のいずれかに記載のリチウム二次電池用正極活物質を有する、
リチウム二次電池用正極。
[11]
[10]に記載のリチウム二次電池用正極を有する、
リチウム二次電池。
[12]
リチウム二次電池用正極活物質の製造方法であって、
リチウム金属複合酸化物の前駆体である金属複合化合物と、リチウム化合物との焼成粉を準備する準備工程と、
前記準備工程で準備された前記焼成粉について加湿処理を施す加湿工程と、
前記加湿工程において前記加湿処理が施された前記焼成粉について乾燥処理を施すことによって、前記リチウム二次電池用正極活物質を作製する乾燥工程と
を有し、
前記加湿工程では、露点が50℃以上90℃以下であってCO濃度が200ppm以下である雰囲気において、前記加湿処理を実行する、
リチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
[13]
前記加湿工程では、温度が80℃以上400℃以下である雰囲気において、前記加湿処理を実行する、
[12]に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
[14]
前記乾燥工程では、温度が100℃以上400℃以下である雰囲気において、前記乾燥処理を実行する、
[12]または[13]に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
本発明によれば、リチウム二次電池においてガスが発生することを抑制すると共に、レート特性に優れたリチウム二次電池を容易に実現可能な、リチウム二次電池用正極活物質、リチウム二次電池用正極、リチウム二次電池、およびリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供することができる。
図1Aは、関連技術において作製される正極活物質を模式的に示す図である(水洗処理や加湿処理を施す前の状態)。 図1Bは、関連技術において作製される正極活物質を模式的に示す図である(水洗処理を施した後の状態)。 図1Cは、関連技術において作製される正極活物質を模式的に示す図である(公知の加湿処理を施した後の状態)。 図2は、吸着等温線および脱着等温線の一例を示す図である。 図3は、実施形態のリチウム二次電池用正極活物質を作製する製造方法の概要を示すフロー図である。 図4は、リチウム二次電池の一例を示す模式図である。 図5は、全固体リチウム二次電池の一例を示す模式図である。 図6は、(例1)と(例C1)に関して、保水性パラメータを求める際に用いた吸着等温線および脱着等温線を示す図である。
以下より、本発明の実施形態の一例について説明する。
本明細書では、用語について、適宜、略語を用いている。具体的には、金属複合化合物は、略語「MCC」(Metal Composite Compound)を用いて示している。リチウム金属複合酸化物は、略語「LiMO」(Lithium Metal composite Oxide)を用いて示している。リチウム二次電池用正極活物質については、略語「CAM」(Cathode Active Material for lithium secondary batteries)を用いて示している。
[A]CAM
本実施形態において、CAMは、LiMOとリチウム化合物とを有する。つまり、CAMは、LiMOにリチウム化合物が残留物として残留している。本実施形態のCAMを構成する各部について順次説明する。
[A-1]LiMO
本実施形態のCAMにおいて、LiMOは、少なくとも、Li元素、Ni元素、および元素Mを含む。元素Mは、Co、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Ca、Ba、Al、Zn、Sn、Zr、Nb、B、Si、S、およびPからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。元素Mは、Co、Mn、Al、Zr、NbおよびBからなる群から選択される少なくとも1種の元素が好ましい。
具体的には、LiMOは、下記組成式(I)で表される物質であることが好ましい。
Li[Li(Ni(1-x-y)CoM11-m]O ・・・(組成式I)
(組成式I)において、元素M1は、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Ca、Ba、Al、Zn、Sn、Zr、Nb、B、Si、S、およびPからなる群から選択される少なくとも1種の元素である(元素M1は、上述の元素MのうちCo元素以外の元素である)。元素M1は、Co、Mn、Al、Zr、NbおよびBからなる群から選択される少なくとも1種の元素が好ましい。
また、(組成式I)において、m,x,yのそれぞれは、下記(式Ia)から(式Id)に示す関係を満足することが好ましい。
-0.1≦m≦0.2 ・・・(式Ia)
0≦x≦0.5 ・・・(式Ib)
0<y≦0.7 ・・・(式Ic)
x+y<1 ・・・(式Id)
(組成式I)において、mの値が(式Ia)に示す範囲の下限値以上であることによって、リチウム二次電池においてレート特性を向上させることができる。また、(組成式I)において、mの値が(式Ia)に示す範囲の上限値以下であることによって、リチウム二次電池において初回クーロン効率を向上させることができる。また、(組成式I)において、mは-0.03以上であることがより好ましく、0以上であることが特に好ましい。さらに、mは0.1以下がより好ましく、0.07以下が特に好ましい。mの範囲としては、例えば、-0.03≦m≦0.1、0≦m≦0.07等が挙げられる。
(組成式I)において、xの値が(式Ib)に示す関係を満たすことによって、リチウム二次電池における内部抵抗を低減し、レート特性を向上させることができる。また、(組成式I)において、xは0.01以上であることがより好ましく、0.02以上であることが特に好ましい。さらに、xは0.4以下がより好ましく、0.3以下が特に好ましい。xの範囲としては、例えば、0.01≦x≦0.4、0.02≦x≦0.3等が挙げられる。
(組成式I)において、yの値が(式Ic)に示す関係を満足することによって、リチウム二次電池においてサイクル維持率を向上させることができる。また、(組成式I)において、yは0.0002以上であることがより好ましく、0.0005以上であることが特に好ましい。さらに、yは0.6以下がより好ましく、0.5以下が特に好ましい。yの範囲としては、例えば、0.0002≦y≦0.6、0.0005≦y≦0.5等が挙げられる。
(組成式I)において、xの値とyの値との加算値(x+y)が(式Id)に示す関係を満足することによって、リチウム二次電池において初期容量を向上させることができる。なお、リチウム二次電池において内部抵抗が増加しレート特性が低下することを抑制するために、xの値とyの値との加算値(x+y)は、0.01以上であることが好ましい。また、(組成式I)において、(x+y)は0.6未満がより好ましく、0.5以下がさらに好ましく、0.25以下が特に好ましい。(x+y)の範囲としては、例えば、0<x+y<1、0.01≦x+y<0.6、0.01≦x+y≦0.5、0.01≦x+y≦0.25等が挙げられる。
物質の組成は、例えば、ICP発光分光分析装置(Optima7300(株式会社パーキンエルマー製)等)を用いて測定される。組成の測定は、測定元素に応じて試料を酸又はアルカリに溶解させる処理を行って実行される。
本実施形態のCAMにおいて、LiMOは、結晶構造が層状構造である。
ここでは、LiMOの結晶構造は、層状岩塩型構造であり、六方晶型又は単斜晶型であることが好ましい。具体的には、六方晶型の結晶構造は、P3、P3、P3、R3、P-3、R-3、P312、P321、P312、P321、P312、P321、R32、P3m1、P31m、P3c1、P31c、R3m、R3c、P-31m、P-31c、P-3m1、P-3c1、R-3m、R-3c、P6、P6、P6、P6、P6、P6、P-6、P6/m、P6/m、P622、P622、P622、P622、P622、P622、P6mm、P6cc、P6cm、P6mc、P-6m2、P-6c2、P-62m、P-62c、P6/mmm、P6/mcc、P6/mcm、およびP6/mmcからなる群から選ばれる一つの空間群に帰属される。また、単斜晶型の結晶構造は、P2、P2、C2、Pm、Pc、Cm、Cc、P2/m、P2/m、C2/m、P2/c、P2/c、およびC2/cからなる群から選ばれる一つの空間群に帰属される。上記のうち、LiMOの結晶構造は、放電容量が高いリチウム二次電池を得るために、空間群R-3mに帰属される六方晶型、又は、C2/mに帰属される単斜晶型であることが特に好ましい。
LiMOの結晶構造は、CuKαを線源とし、かつ回折角2θの測定範囲を10°以上90°以下とするCAMの粉末X線回折測定を行うことで算出できる。具体的には、粉末X線回折測定装置(例えば、株式会社リガク製UltimaIV)を用いて観察することにより確認できる。
[A-2]リチウム化合物
本実施形態のCAMにおいて、リチウム化合物は、CAMの作製の際にLiMOに残留した残留物であって、水酸化リチウムおよび炭酸リチウムを含む。
具体的には、残留物であるリチウム化合物は、原料である水酸化リチウムの未反応物、原料である水酸化リチウムに不純物として含まれる炭酸リチウム、焼成の際に副生成物として生成された炭酸リチウム等である。
[A-3]CAMの特性
本実施形態において、CAMは、複数の粒子が集合した粉体である。詳細については後述するが、CAMの粉体は、焼成物を解砕することによって作製された焼成粉である。
CAMの粉体は、一次粒子が凝集した二次粒子のみで構成されていてもよく、一次粒子と二次粒子との両者が混合していてもよい。例えば、CAMの粉体は、LiMOの一次粒子と、リチウム化合物の一次粒子とが凝集した二次粒子を含んでいてもよい。
なお、上記の「一次粒子」は、顕微鏡(走査型電子顕微鏡など)を用いて1000倍以上30000倍以下の視野でCAMを観察した際に、外観上、粒界が存在しない粒子である。そして、上記の「二次粒子」は、一次粒子の凝集体である。
本実施形態のCAMは、下記に示す(要件1)と(要件2)と(要件3)とを満足する。詳細については後述するが、本実施形態のCAMは、(要件1)と(要件2)と(要件3)とを満足することで、リチウム二次電池においてガスが発生することを抑制すると共に、レート特性に優れたリチウム二次電池を容易に実現可能である。
[A-3-1](要件1)保水パラメータ
本実施形態のCAMは、水蒸気吸着法の吸着等温線において水蒸気圧pと飽和蒸気圧pとの相対圧力p/pが0.5であるときの水蒸気吸着量Va0.5、水蒸気吸着法の吸着等温線において相対圧力p/pが0.9であるときの水蒸気吸着量Va0.9、および水蒸気吸着法の脱着等温線において相対圧力p/pが0.5であるときの水蒸気吸着量Vd0.5が、下記の(式A)に示す(要件1)の関係を満たす。
(Vd0.5-Va0.5)/Va0.9≦0.90 ・・・(式A)
(要件1)において、(式A)は、保水性を示す保水パラメータを規定しており、値が小さくなるに伴って水を保持しにくくなることを意味する。(式A)に示す関係を満たす場合には、CAMにおいて副反応が発生しやすい活性点が水との接触によって効果的に不活性化した状態になる。CAM表面で活性的なNiが水との接触により、NiO-OHの構造で不活性化するためであると考えられる。このため、(式A)に示す関係を満たすCAMを用いて作製されたリチウム二次電池は、後段の実施例で示すように、ガスが発生することを十分に抑制することができる。
上記のように示した観点から、保水パラメータは、式(A1)を満たすことが更に好ましい。
(Vd0.5-Va0.5)/Va0.9≦0.85 ・・・(式A1)
なお、上記(式A)等において、測定時の水蒸気圧pおよび飽和蒸気圧pは、温度が25℃である場合の値である。各水蒸気吸着量Va0.5,Va0.9,Vd0.5は、単位質量(例えば、1g)当たりのCAMの試料が水蒸気を吸着する量(単位:cm(STP)/g)である。
吸着等温線および脱着等温線は、相対圧力p/pの条件を変えて試料が水蒸気を吸着する水蒸気吸着量を測定することで得られる。水蒸気吸着量は、蒸気吸着測定装置を用いて水蒸気吸着法を実行することで測定される。蒸気吸着測定装置は、例えば、マイクロトラック・ベル社製の「BELSORP(登録商標)-18」であって、下記の測定条件で水蒸気吸着量の測定が実行される。
・充填試料量:0.5g
・試料の前処理条件:真空下、200℃で5時間処理
・恒温槽温度:50℃
・吸着温度:25℃
・飽和蒸気圧:3.169kPa
・吸着平衡時間:500秒
図2は、吸着等温線および脱着等温線の一例を示す図である。図2において、横軸は、相対圧力p/pであり、縦軸は、水蒸気吸着量V(cm(STP)/g)である。図2では、吸着等温線について実線で示し、脱着等温線について破線で示している。
図2に示すように、吸着等温線(実線)は、本実施形態では、相対圧力p/pを0.9まで上昇させたときに測定される水蒸気吸着量Vの軌跡である。吸着等温線(実線)では、相対圧力p/pが上昇するに伴って水蒸気吸着量Vが増加している。これに対して、脱着等温線(破線)は、本実施形態では、吸着等温線(実線)を得るために0.9を超える点まで相対圧力p/pを上昇させた後に、該点から下降させたときに測定される水蒸気吸着量Vの軌跡である。脱着等温線(破線)では、相対圧力p/pが下降するに伴って水蒸気吸着量Vが減少している。
図2から判るように、吸着等温線(実線)と脱着等温線(破線)は、一致していない。例えば、吸着等温線(実線)において相対圧力p/pが0.5であるときの水蒸気吸着量Va0.5は、脱着等温線(破線)において相対圧力p/pが0.5であるときの水蒸気吸着量Vd0.5よりも小さい(Va0.5<Vd0.5)。つまり、Vd0.5からVa0.5を差分した値は、ゼロよりも大きい(Vd0.5-Va0.5>0)。このように、水蒸気の吸着と脱着との間には、ヒステリシスが存在する。
上記した(式A)等は、Vd0.5からVa0.5を差分した値(Vd0.5-Va0.5)を、水蒸気吸着量が最大になる水蒸気吸着量Va0.9で割った値であって、ヒステリシスの程度を示す指標として用いることができる。つまり、(式A)等で算出される値は、上述したように、保水パラメータ(保水指数)を示しており、値が小さくなるに伴って水を保持しにくくなることを意味する。
上記(Vd0.5-Va0.5)/Va0.9の下限値は特に限定されないが、(Vd0.5-Va0.5)/Va0.9>0であってもよく、(Vd0.5-Va0.5)/Va0.9>0.1であってもよい。上記(Vd0.5-Va0.5)/Va0.9の範囲は、例えば、0<(Vd0.5-Va0.5)/Va0.9≦0.90、0<(Vd0.5-Va0.5)/Va0.9≦0.85、0.1<(Vd0.5-Va0.5)/Va0.9≦0.85等が挙げられる。
[A-3-2](要件2)BET比表面積Sm
本実施形態のCAMは、窒素吸着法により計測されるBET比表面積Smが下記の(式B)に示す(要件2)の関係を満たす。
Sm≦0.8m/g ・・・(式B)
(式B)に示す関係を満たす場合には、LiMO表面での副反応による抵抗層や表面劣化が生じにくくなるため、リチウム二次電池の充放電サイクルにおいて、LiMOの表面で副反応が発生することを十分に抑制することができる。その結果、後段の実施例で示すように、リチウム二次電池のレート特性を向上することができる。上記のように示した観点から、BET比表面積Smは、0.2m/g≦Sm≦0.8m/gであることが好ましい。
上記のように示した観点から、BET比表面積Smは、下記の式(B1)に示す関係を満たすことが更に好ましい。
0.2≦Sm≦0.7m/g ・・・(式B1)
(式B1)の下限値以上を満たす場合には、CAMの表面反応場が十分存在し、リチウム二次電池のレート特性を高めることができる。
BET比表面積Smは、BET(Brunauer,Emmett,Teller)法によって測定される値である。BET比表面積の測定では、吸着ガスとして窒素ガスを用いる。BET比表面積(単位:m/g)は、例えば、窒素雰囲気において、1gの測定対象物質を105℃の温度条件で30分間乾燥させた後に、BET比表面積計(例えば、マウンテック社製、Macsorb(登録商標))を用いて測定される。
[A-3-3](要件3)W2/W1
本実施形態のCAMは、水酸化リチウムの質量割合W1と炭酸リチウムの質量割合W2とが下記の(式C)に示す(要件3)の関係を満たす。
W2/W1≦1.40 ・・・(式C)
(式C)に示す関係を満たす場合には、CAMのリチウム化合物の残留物のうち炭酸リチウムの量が水酸化リチウムの量と比較して過剰に増加していない。種々の検討の結果、リチウム二次電池において水酸化リチウムと比較して炭酸リチウムのほうが副反応に由来するガス発生量(cc/g)に寄与するという知見が得られている。上記(式C)を満たすCAMは、リチウム化合物の残留物に含まれる炭酸リチウムの質量割合が低いことを示している。よって、リチウム二次電池においてガスが発生することを十分に抑制することができる。
上記の観点から、水酸化リチウムの質量割合W1および炭酸リチウムの質量割合W2は、下記の式(C1)に示す関係を満たすことが更に好ましい。
W2/W1≦1.00 ・・・(式C1)
上記W2/W1の下限値は特に限定されないが、W2/W1≧0であってもよく、W2/W1>0であってもよい。上記W2/W1の範囲は、例えば、0≦W2/W1≦1.40、0≦W2/W1≦1.00、0<W2/W1≦1.40、0<W2/W1≦1.00が挙げられる。
本実施形態のCAMは、炭酸リチウムの質量割合W2が下記の式(D)に示す関係を満たすことが好ましい。
W2≦0.70質量% ・・・(式D)
(式D)を満たすことにより、炭酸リチウムの副反応によるガス発生の抑制の効果を奏することができる。
上記の観点から、下記の式(D1)に示す関係を満たすことが更に好ましい。
W2≦0.60質量% ・・・(式D1)
上記W2の下限値は特に限定されないが、W2≧0質量%であってもよく、W2>0質量%であってもよい。上記W2の範囲は、例えば、0質量%≦W2≦0.70質量%、0質量%≦W2≦0.60質量%、0質量%<W2≦0.70質量%、0質量%<W2≦0.60質量%が挙げられる。
また、本実施形態のCAMは、滴定法で測定される溶出リチウム量W3が下記の式(E)に示す関係を満たすことが好ましい。
ことが好ましい。
W3≦0.50質量% ・・・(式E)
(式E)を満たすことにより、リチウム化合物の残留物の副反応によるガス発生の抑制の効果を奏することができる。
上記の観点から、下記の式(E1)に示す関係を満たすことが更に好ましい。
W3≦0.40質量% ・・・(式E1)
上記W3の下限値は特に限定されないが、W3>0質量%であってもよい。上記W3の範囲は、例えば、0質量%<W3≦0.50質量%、0質量%≦W3≦0.40質量%が挙げられる。
上記した水酸化リチウムの質量割合W1および炭酸リチウムの質量割合W2は、滴定法によって測定される。
具体的には、水酸化リチウムの質量割合W1および炭酸リチウムの質量割合W2の測定を行う際には、まず、5gのCAMと100gの純水とを100mLのポリプロピレン製容器に入れることで、スラリーを作製する。そして、スラリーを収容する容器の内部に撹拌子を入れた後に、その容器を密閉した状態で、5分間、スラリーを撹拌する。撹拌完了後、スラリーを濾過する。
そして、スラリーの濾過により得られた60gの濾液に、濃度が0.1mol/Lである塩酸を連続的に滴下する。塩酸の滴下は、自動滴定装置(京都電子工業社製、AT-610)を用いて、pHが4.0となるまで実施する。このとき、塩酸が滴下された濾液において、pHが8.3±0.1になる時の塩酸の滴定量A[mL]と、pHが4.5±0.1になる時の塩酸の滴定量B[mL]を求める。
その後、下記の(式b)および(式c)を用いて、水酸化リチウムの質量割合W1および炭酸リチウムの質量割合W2を算出する。なお、(式b)と(式c)とにおいて、水酸化リチウムの分子量および炭酸リチウムの分子量は、原子量を、H:1.000、Li:6.941、C:12、O:16として算出している(つまり、水酸化リチウムの分子量:23.941、炭酸リチウムの分子量:73.882)。
W1[質量%]={0.1×(2A-B)/1000}×{23.941/(20×60/100)}×100 ・・・(式b)
W2[質量%]={0.1×(B-A)/1000}×{73.882/(20×60/100)}×100 ・・・(式c)
そして、上記によって算出した水酸化リチウムの質量割合W1および炭酸リチウムの質量割合W2の結果から、(式d)を用いて、CAMの溶出リチウム量W3を求めることができる。
W3[質量%]=W2×(2×6.941/73.882)+W1×(6.941/23.941) ・・・(式d)
[A-3-4]その他の特性
[A-3-4-1]結晶歪
本実施形態のCAMは、CuKα線で測定した粉末X線回折の回折パターンにおいて、回折角2θが10°以上90°以下の範囲内に含まれる回折パターンから算出される結晶歪が、0.10°以下であることが好ましい。これにより、LiMOの層状岩塩構造の平面方向へのリチウムイオンの拡散が容易となり、リチウムイオンの拡散抵抗の低減の効果を奏することができる。
上記のように示した観点から、上記の結晶歪は、0.08°以下であることがさらに好ましい。
結晶歪は、粉末X線回折によって測定される。粉末X線回折は、X線回折装置(例えば、Bruker社製D8 Advance)を用いて、下記の測定条件で実行される。
(測定条件)
・サンプリング幅:0.02
・スキャンスピード:4°/min
ここでは、粉末X線回折は、CuKα線を用いて、回折角2θの測定範囲が10°以上90°以下である条件で実行される。そして、粉末X線回折の実行で得た回折パターンについて、リートベルト解析法による解析を行うことで、結晶歪を求めることができる。リートベルト解析とは、実測の粉末X線回折パターンと結晶構造モデルからのシミュレーションパターンを比較し、両者の差が最小となるよう結晶構造モデルにおける結晶構造パラメータを最適化する手法である。初期結晶構造モデルとして層状岩塩型結晶構造(Li1-nMe)(Me1-nLi)Oを用い、結晶歪の最適化を行う。
[A-3-4-2]平均細孔径・細孔容積
本実施形態のCAMは、窒素吸着法により計測される平均細孔径が150nm以下であることが好ましい。これにより、電極密度の低下を防ぎ、エネルギー密度の高い電池を得る効果を奏することができる。
上記のように示した観点から、上記の平均細孔径は、100nm以下であることが好ましく、60nm以下であることがさらに好ましい。また、上記の平均細孔径は10nm以上であることが好ましい。これにより、十分な電解液の浸透性と保持性を有し、レート特性が向上する。上記の平均細孔径の範囲は、10nm以上150nm以下、10nm以上100nm以下、10nm以上60nm以下が挙げられる。
また、本実施形態のCAMは、窒素吸着法により計測される細孔容積が0.0005cm/g以上0.015cm/g以下であることが好ましい。細孔容積が上記範囲の下限値以上であることで、十分な電解液の浸透性と保持性を有し、レート特性が向上する。また、細孔容積が上記範囲の上限値以下であることで、CAMの密度が向上しエネルギー密度が向上する。
上記のように示した観点から、上記の細孔容積は、下限値が0.001cm/gであることが更に好ましく、上限値が0.010cm/gであることが更に好ましい。上記の細孔容積の範囲は、0.001cm/g以上0.015cm/g以下、0.0005cm/g以上0.010cm/g以下、0.001cm/g以上0.010cm/g以下等が挙げられる。
平均細孔径および細孔容積は、窒素吸着法の実施によって得た吸着等温線および脱離等温線について、BJH(Barrett-Joyner-Halenda)法で解析して取得した細孔径分布に基づいて算出される。BJH法は、細孔形状を円柱状と仮定し、毛管凝縮を生じる細孔径と窒素の相対圧の関係式(ケルビン式)に基づいて解析を行う手法である。脱離等温線から求められる細孔径分布は、ボトルネック型の細孔に由来する。
上記の吸着等温線および脱離等温線の測定を行う際には、まず、真空加熱処理装置(例えば、マイクロトラック・ベル株式会社製のBELSORP-vacII)を用いて、150℃8時間の条件で10gの試料について真空脱気処理を実行する。真空脱気処理の実行後、測定装置(例えばマイクロトラック・ベル株式会社製BELSORP-mini)を用いて、液体窒素の温度(77K)において、窒素の吸着等温線と窒素の脱離等温線を得る。吸着等温線および脱離等温線において単位質量あたりの試料が窒素を吸着する窒素吸着量は、標準状態(STP;Standard Temperature and Pressure)における窒素ガスの体積で表されるように算出される。
[A-3-4-3]50%累積体積粒度D50
CAMは、50%累積体積粒度D50(以下D50と記載することがある)が、例えば、3μm以上30μm以下の範囲であることが好ましい。D50が本範囲であることによって、かさ密度を大きくすることができるので、充填密度を高くすることができる。その結果、リチウム二次電池用正極において、CAMの粒子と導電材の粒子とが接触する接触面積が増大し、導電性が向上するので、リチウム二次電池のレート特性を向上させることができる。特に、CAMのD50は、5μm以上25μm以下の範囲であることが好ましく、7μm以上23μm以下の範囲がより好ましく、8μm以上20μm以下の範囲がさらに好ましい。
上記のD50は、レーザー回折散乱法によって測定される。具体的には、D50の測定を行う際には、まず、測定対象であるCAMの粉末を分散させた分散液を得る。分散液は、0.1gのCAMの粉末を、50mlのヘキサメタりん酸ナトリウム水溶液(濃度0.2質量%)に投入することで調製される。次に、レーザー回折散乱粒度分布測定装置(例えば、マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクロトラックMT3300EXII)を用いて、分散液中の粉末について粒度分布を測定することで、体積基準の累積粒度分布曲線を得る。D50(μm)は、累積粒度分布曲線において、微小粒子側から50%累積時の粒子径の値に相当する。
[B]CAMの製造方法
本実施形態のCAMを作製する製造方法について説明する。
図3は、実施形態に係るCAMを作製する製造方法の概要を示すフロー図である。
実施形態のCAMを作製する際には、図3に示すように、準備工程(ST10)と加湿工程(ST20)と乾燥工程(ST30)とを順次実行する。
[B-1]準備工程(ST10)
準備工程(ST10)では、LiMOの前駆体であるMCCとリチウム化合物との焼成粉を準備する。
具体的には、MCCの組成は、Ni元素、Co元素、およびM1元素を、下記(式II)で表されるモル比率で含む。
[Ni]:[Co]:[M1]=(1-x-y):x:y (式II)
(式II)において、M1元素は、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Ca、Ba、Al、Zn、Sn、Zr、B、Si、S、およびPからなる群から選択される1種以上の元素である。また、(式II)において、x,yのそれぞれは、下記(式IIb)から(式IId)に示す関係を満足することが好ましい(上述の(組成式I)に関する(式Ib)から(式Id)と同様)。
0≦x≦0.5 ・・・(式IIb)
0<y≦0.7 ・・・(式IIc)
x+y<1 ・・・(式IId)
[B-1-1]MCC
MCCは、例えば、金属複合水酸化物、金属複合酸化物、または、これらの混合物である。
金属複合水酸化物は、例えば、公知のバッチ式共沈殿法又は連続式共沈殿法により製造される。以下、金属元素として、Ni、Co及びAlを含む金属複合水酸化物を例に、その製造方法を詳述する。
具体的には、JP-A-2002-201028に記載された連続式共沈殿法によって、ニッケル塩溶液とコバルト塩溶液とアルミニウム塩溶液と錯化剤とを反応させる。これにより、Ni元素、Co元素、およびM1元素を上記の(式II)で表されるモル比率で含む金属複合水酸化物(Ni(1-x-y)CoAl(OH))が製造される。
ニッケル塩溶液の溶質であるニッケル塩は、例えば、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケルおよび酢酸ニッケルのうちの少なくとも1種である。
コバルト塩溶液の溶質であるコバルト塩は、例えば、硫酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルトおよび酢酸コバルトのうちの少なくとも1種である。
アルミニウム塩溶液の溶質であるアルミニウム塩は、例えば、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウムおよび酢酸アルミニウムのうちの少なくとも1種である。
上記の金属塩は、LiMOの(組成式I)の組成比に対応する割合で混合される。すなわち、上記金属塩を含む混合溶液において、各元素のモル比は、LiMOの(組成式I)と対応している。ここでは、溶媒として、水が使用される。
金属複合水酸化物の製造工程では、錯化剤を使用してもよい。この場合、錯化剤の量は、例えば、金属塩(ニッケル塩、コバルト塩およびアルミニウム塩)のモル数の合計に対するモル比が、0より大きく2.0以下である。
錯化剤は、水溶液中で、ニッケルイオン、コバルトイオンおよびアルミニウムイオンと錯体を形成可能な材料である。錯化剤は、例えば、アンモニウムイオン供給体(水酸化アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、又は弗化アンモニウム等)、ヒドラジン、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ウラシル二酢酸、およびグリシンのうちの少なくとも1種である。
共沈殿法では、ニッケル塩溶液、コバルト塩溶液、アルミニウム塩溶液、および錯化剤を含む混合液について、pH値を調整する。このため、混合液のpHがアルカリ性から中性になる前に、混合液にアルカリ金属水酸化物を添加する。アルカリ金属水酸化物は、例えば、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである。
なお、ここでは、pHの値は、混合液の温度が40℃である時に測定される。混合液のpHは、反応槽からサンプリングした混合液の温度が、40℃になったときに測定する。サンプリングした混合液が40℃未満である場合には、混合液を40℃になるまで加温した後に、pHを測定する。サンプリングした混合液の温度が40℃を超える場合には、混合液が40℃になるまで冷却した後に、pHを測定する。
上記ニッケル塩溶液、コバルト塩溶液およびアルミニウム塩溶液の他に、錯化剤を反応槽に連続して供給することによって、反応が生じ、Ni(1-x-y)CoAl(OH)が生成される。
ここでは、反応槽の温度は、例えば、20℃以上80℃以下の範囲内、好ましくは、30℃以上70℃以下の範囲内で制御される。
また、反応に際しては、反応槽内のpH値は、例えば、pH9以上13以下の範囲内で制御される。
そして、反応槽内で形成された反応沈殿物を撹拌した状態で中和させる。反応沈殿物を中和させる時間は、例えば、1時間以上20時間以下の範囲である。
連続式共沈殿法で用いる反応槽としては、形成された反応沈殿物を分離するために、オーバーフローが生ずるタイプの反応槽を使用することができる。
バッチ式共沈殿法により金属複合水酸化物を製造する場合、オーバーフローパイプを備えない反応槽と、オーバーフローパイプに連結された濃縮槽とを備え、オーバーフローした反応沈殿物を濃縮槽で濃縮し、再び反応槽へ循環させる機構を有する装置等が使用される。
ここでは、各種気体(例えば、窒素、アルゴン又は二酸化炭素等の不活性ガス、空気又は酸素等の酸化性ガス、又はそれらの混合ガス)を反応槽内に供給してもよい。
上記の反応が完了後、中和された反応沈殿物を単離する。単離は、例えば、反応沈殿物を含むスラリー(つまり、共沈物スラリー)を遠心分離や吸引ろ過などで脱水する方法で行われる。
そして、単離された反応沈殿物について、洗浄、脱水、乾燥および篩別を、順次、実行することで、金属複合水酸化物が得られる。
反応沈殿物の洗浄は、水又はアルカリ性洗浄液を用いて行うことが好ましい。反応沈殿物の洗浄では、アルカリ性洗浄液を用いることが好ましく、特に、水酸化ナトリウム水溶液をアルカリ性洗浄液として用いることが好ましい。また、硫黄元素を含有する洗浄液を用いて、洗浄を行ってもよい。硫黄元素を含有する洗浄液は、カリウムやナトリウムの硫酸塩水溶液等である。
なお、上記の例では、MCCとして、ニッケルコバルトアルミニウム金属複合水酸化物を製造しているが、金属複合酸化物であるニッケルコバルトアルミニウム金属複合酸化物、ニッケルマンガンアルミニウム金属複合酸化物を調製してもよい。
金属複合酸化物は、例えば、金属複合水酸化物について加熱処理を施すことによって製造される。加熱工程は、必要に応じて、複数回、実施してもよい。加熱工程では、加熱温度は、加熱装置の設定温度を意味し、複数の加熱工程を行う場合には、加熱温度は、複数の加熱工程のうち、最高保持温度で加熱した際の温度を意味する。
加熱温度は、400℃以上700℃以下の範囲であることが好ましく、450℃以上680℃以下の範囲であることがより好ましい。これにより、金属複合水酸化物が十分に酸化され、かつ、適切な範囲のBET比表面積を有する金属複合酸化物が得られる。加熱温度が400℃未満であると、金属複合水酸化物が十分に酸化されないおそれがある。加熱温度が700℃を超えると、金属複合水酸化物が過剰に酸化され、金属複合酸化物のBET比表面積が小さくなり過ぎるおそれがある。
加熱工程において加熱温度を保持する時間は、0.1時間以上20時間以下の範囲であって、0.5時間以上10時間以下の範囲であることが好ましい。上記した加熱温度まで温度が上昇する昇温速度は、例えば、50℃/時間以上400℃/時間以下の範囲である。また、加熱処理は、大気、酸素、窒素、アルゴン又はこれらの混合ガスを含む加熱雰囲気で実施される。
加熱装置の内部は、適度に酸素を含有する酸素含有雰囲気でもよい。酸素含有雰囲気は、不活性ガスと酸化性ガスとの混合ガス雰囲気でもよく、不活性ガス雰囲気下で酸化剤を存在させた状態でもよい。これにより、金属複合水酸化物に含まれる遷移金属が適度に酸化されるため、金属複合酸化物の形態を制御しやすくなる。
酸素含有雰囲気は、遷移金属を酸化させるために十分な量の酸素原子が存在すればよい。
酸素含有雰囲気が不活性ガスと酸化性ガスとを含む混合ガス雰囲気である場合、加熱装置内の雰囲気の制御は、加熱装置内に酸化性ガスを通気させる方法、又は、混合液に酸化性ガスをバブリングする方法などによって、実行される。
酸素含有雰囲気に存在させる酸化剤は、過酸化水素などの過酸化物、過マンガン酸塩などの過酸化物塩、過塩素酸塩、次亜塩素酸塩、硝酸、ハロゲン又はオゾンなどである。
[B-1-2]リチウム化合物
LiMOの製造で使用するリチウム化合物は、例えば、炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、水酸化リチウム、水酸化リチウム水和物、酸化リチウム、塩化リチウム、およびフッ化リチウムの少なくとも一つである。これらのうち、水酸化リチウム、水酸化リチウム水和物、水酸化リチウムと炭酸リチウムの混合物、又は、水酸化リチウム水和物と炭酸リチウムの混合物をリチウム化合物として用いることが好ましい。また、水酸化リチウムが炭酸リチウムを含有する場合には、水酸化リチウム中の炭酸リチウムの含有量は、5質量%以下であることが好ましい。
[B-1-3]混合
上記のMCCおよびリチウム化合物は、最終目的物の組成比を勘案した割合で混合される。
[B-1-4]焼成
そして、MCCとリチウム化合物との混合物について焼成処理を実行することによって、焼成体を作製する。
焼成処理の温度条件は、特に制限されないが、例えば、650℃以上1000℃以下の範囲であることが好ましく、680℃以上900℃以下の範囲であることがより好ましく、700℃以上850℃以下の範囲であることが特に好ましい。焼成温度が650℃以上であると、強固な結晶構造を有するCAMを得ることができる。また、焼成温度が1000℃以下であると、CAMの粒子表面のリチウムイオンの揮発を低減できる。
また、焼成処理の保持時間を調整することによって、得られるCAMの一次粒子径を制御することができる。保持時間が長くなるに伴って、一次粒子径が大きくなり、BET比表面積が小さくなる傾向にある。焼成における保持時間は、用いる遷移金属元素の種類や、沈殿剤の種類および量に応じて、適宜、調整される。
具体的には、焼成処理の保持時間は、0.5時間以上50時間以下が好ましく、1時間以上20時間以下がより好ましい。焼成処理の保持時間が50時間を超える場合には、リチウムイオンの揮発によって実質的に電池性能が低下する場合がある。焼成処理の保持時間が0.5時間より少ない場合には、結晶の発達が十分でなく、電池性能が低下する場合がある。
本実施形態において、最高保持温度に達する昇温速度は、80℃/時間以上が好ましく、100℃/時間以上がより好ましく、150℃/時間以上が特に好ましい。最高保持温度に達する昇温速度は、焼成装置において、昇温を開始した時間から保持温度に到達するまでの時間から算出される。
焼成処理は、焼成温度が異なる複数の焼成段階を有することが好ましい。例えば、焼成処理は、第1の焼成段階と、第1の焼成段階よりも高温で焼成する第2の焼成段階を有することが好ましい。さらに、焼成処理は、焼成温度および焼成時間が異なる焼成段階を有していてもよい。
焼成処理は、所望の組成に応じて、大気、酸素、窒素、アルゴン又はこれらの混合ガス等を含む焼成雰囲気で実行される。
MCCとリチウム化合物との混合物は、不活性溶融剤の存在下で焼成されてもよい。不活性溶融剤は、CAMを使用した電池の初期容量が損なわれない程度に添加され、焼成物に残留してもよい。不活性溶融剤としては、例えばWO2019/177032A1に記載のものを使用することができる。
なお、混合物について、上記の焼成工程を行う前に、仮焼成工程を実施してもよい。仮焼成工程では、焼成工程での焼成処理における焼成温度よりも低い温度で仮焼成処理を行う。仮焼成処理の焼成温度は、例えば、400℃以上700℃未満の範囲である。仮焼成処理は、複数回、行ってもよい。
仮焼成時に用いる焼成装置は、特に限定されず、例えば、連続焼成炉、又は、流動式焼成炉である。連続焼成炉は、例えば、トンネル炉、又は、ローラーハースキルンである。流動式焼成炉は、例えば、ロータリーキルンである。
[B-1-5]解砕
上記の焼成によって得られた焼成体は、解砕処理の実行によって解砕される。これにより、焼成体から焼成粉が作製される。
解砕処理は、複数回、実行してよい。例えば、焼成処理について、第1の焼成段階と第2の焼成段階とを順次行う場合には、第1の焼成段階の実施後に第1の解砕処理を実行し、更に、第2の焼成段階の実施後に第2の解砕処理を実行してもよい。
[B-2]加湿工程(ST20)
次に、加湿工程(ST20)においては、準備工程(ST10)で準備された焼成粉について加湿処理を施す。
加湿工程(ST20)では、露点が50℃以上90℃以下である雰囲気において、加湿処理を実行することが好ましい。加湿処理の実施において、露点が上記範囲の下限値未満である場合には、十分な加湿処理を実施できないおそれがあり、露点が上記範囲の上限値を超える場合には、CAMと接触する水分量が多く、CAM内部よりLiが引き抜かれ水酸化リチウムまたは炭酸リチウムが残留物として多量に生成し、リチウム二次電池においてガスが発生することを十分に抑制できない場合がある。
このような観点から、加湿処理の露点は、60℃以上であることが更に好ましく、80℃以下であることが更に好ましい。加湿処理の露点の範囲は、60℃以上90℃以下、50℃以上80℃以下、60℃以上90℃以下、60℃以上80℃以下が挙げられる。
また、加湿工程(ST20)では、CO濃度が200ppm以下である雰囲気において、加湿処理を実行することが好ましい。また、加湿処理において、CO濃度が上記の上限値を超える場合には、CAM中の炭酸リチウムが増加してしまうおそれがある。
このような観点から、加湿処理におけるCO濃度は、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることが更に好ましい。
加湿工程(ST20)では、温度が80℃以上400℃以下である雰囲気において、加湿処理を実行することが好ましい。
加湿処理において、温度が上記範囲の下限値未満である場合には、CAMと接触した水分が適度に揮発せず、加湿工程の中でダマとなってしまう不具合が生じやすくなり、温度が上記範囲の上限値を超える場合には、CAMが再焼結してしまい結晶子径が過剰に増加してしまう場合がある。結晶子径が過剰に大きいと、結晶構造内のリチウムイオンの拡散抵抗が大きくなり、レート特性が低下する恐れがある。
このような観点から、加湿処理の温度は、100℃以上であることが更に好ましく、300℃以下であることが更に好ましい。加湿処理の温度の範囲は、80℃以上300℃以下、100℃以上400℃以下、100℃以上300℃以下が挙げられる。
加湿工程(ST20)では、処理時間が0.1時間以上5時間以下であることが好ましい。加湿処理において、処理時間が上記範囲の下限値未満である場合には、十分な加湿処理を実施できないおそれがあり、処理時間が上記範囲の上限値を超える場合には、長時間CAMが水分と接触することで、CAM内部よりLiが引き抜かれ水酸化リチウムまたは炭酸リチウムが残留物として多量に生成し、リチウム二次電池においてガスが発生することを十分に抑制できない場合がある。
このような観点から、加湿処理の処理時間は、0.2時間以上2.5時間以下であることが更に好ましく、0.3時間以上2時間以下であることが更に好ましい。
[B-3]乾燥工程(ST30)
乾燥工程(ST30)では、加湿工程(ST20)において加湿処理が施された焼成粉について乾燥処理を施すことによって、CAMを作製する。
乾燥工程(ST30)では、温度が100℃以上400℃以下である雰囲気において、乾燥処理を実行することが好ましい。乾燥処理の温度は、乾燥処理前のCAMに残存する水分に起因してリチウム二次電池の充電容量が低下することを防止するために、上記範囲の下限値以上であることが好ましい。このため、乾燥処理の温度の下限値は、110℃であることがより好ましく、120℃であることがさらに好ましい。また、乾燥処理の温度は、CAMが再焼結することによってレート特性が劣化することを防止するために、上記範囲の上限値以下であることが好ましい。このため、乾燥処理の温度の上限値は、350℃であることがより好ましく、300℃であることが特に好ましい。乾燥処理の温度範囲は、110℃以上350℃以下、120℃以上300℃以下が挙げられる。
なお、乾燥は、例えば、減圧乾燥、真空乾燥、送風、加熱、および、これらの組み合わせによって実行される。減圧乾燥および真空乾燥は、例えば、0.3気圧以下の圧力の下、100℃以上200℃以下の範囲の条件で実行される。送風による乾燥は、例えば、熱風式乾燥機を用いて実行される。
乾燥工程(ST30)では、処理時間が0.1時間以上であることが好ましい。乾燥処理において、処理時間が上記範囲の下限値未満である場合には、十分な乾燥処理を実施できないおそれがある。
このような観点から、乾燥処理の処理時間は、0.5時間以上であることが更に好ましく、1.0時間以上であることが更に好ましい。
また、乾燥工程(ST30)では、CO濃度が200ppm以下である雰囲気において、乾燥処理を実行することが好ましい。また、乾燥処理において、CO濃度が上記の上限値を超える場合には、CAM中の炭酸リチウムが増加し、リチウム二次電池においてガスが発生することを十分に抑制できないおそれがある。
このような観点から、乾燥処理におけるCO濃度は、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることが更に好ましい。
上記加湿工程(ST20)及び上記乾燥工程(ST30)における処理条件を調整することによって、本実施形態のCAMを製造することができる。
[C]リチウム二次電池
本実施形態のCAMを有するリチウム二次電池用正極、および、そのリチウム二次電池用正極を備えるリチウム二次電池の一例について説明する。以下、リチウム二次電池用正極を正極と称することがある。
本実施形態の製造方法により製造されるLiMOをCAMとして用いる場合の好適なリチウム二次電池の一例は、正極及び負極、正極と負極との間に挟持されるセパレータ、正極と負極との間に配置される電解液を有する。
図4は、リチウム二次電池の一例を示す模式図である。例えば円筒型のリチウム二次電池10は、次のようにして製造する。
まず、図4の部分拡大図に示すように、帯状を呈する一対のセパレータ1と、一端に正極リード21が設置された帯状の正極2と、一端に負極リード31が設置された帯状の負極3とを準備する。そして、セパレータ1、正極2、セパレータ1、および負極3の順に積層した積層体を巻回することによって、電極群4を作製する。
正極2は、一例として、CAMを含む正極活物質層2aと、正極活物質層2aが一面に形成された正極集電体2bとを有する。このような正極2は、まずCAM、導電材及びバインダーを含む正極合剤を調製し、正極合剤を正極集電体2bの一面に担持させて正極活物質層2aを形成することで製造できる。
負極3は、一例として、不図示の負極活物質を含む負極合剤が負極集電体に担持されてなる電極、及び負極活物質単独からなる電極を挙げることができ、正極2と同様の方法で製造できる。
次いで、電極群4およびインシュレーター(図示省略)を電池缶5に収容した後に電池缶5の缶底を封止する。そして、電池缶5において電極群4に電解液6を含浸させることで、正極2と負極3との間に電解質(図示省略)を介在させる。その後、トップインシュレーター7および封口体8で電池缶5の上部を封止する。これにより、リチウム二次電池10を完成させる。
電極群4の形状としては、電極群4を巻回の軸に対して垂直方向に切断したときの断面形状が、例えば、円、楕円、長方形、又は、角を丸めた長方形となるような柱状の形状を挙げることができる。
また、このような電極群4を有するリチウム二次電池の形状としては、国際電気標準会議(IEC)が定めた規格であるIEC60086、又は、JIS C 8500で定められる形状を採用することができる。例えば、円筒型又は角型等の形状を挙げることができる。
さらに、リチウム二次電池は、上記巻回型の構成に限らず、正極、セパレータ、負極、およびセパレータの積層構造を繰り返し重ねた積層型の構成であってもよい。積層型のリチウム二次電池としては、いわゆるコイン型電池、ボタン型電池、又はペーパー型(又はシート型)電池を例示することができる。
リチウム二次電池を構成する正極、セパレータ、負極及び電解液については、例えば、WO2022/113904A1の[0113]~[0140]に記載の構成、材料及び製造方法を用いることが出来る。
[D]全固体リチウム二次電池
本実施形態のCAMを用いて形成されるリチウム二次電池用正極を備えるリチウム二次電池の一例として、全固体リチウム二次電池について説明する。
図5は、全固体リチウム二次電池の一例を示す模式図である。図5に示すように、全固体リチウム二次電池1000は、正極110と負極120と固体電解質層130とを有する積層体100と、積層体100を収容する外装体200とを備える。全固体リチウム二次電池1000は、集電体の両側にCAMと負極活物質とを配置したバイポーラ構造であってもよい。バイポーラ構造の具体例は、例えば、JP-A-2004-95400に記載されている構造が挙げられる。
正極110は、正極活物質層111と正極集電体112とを有している。正極活物質層111は、上述したCAM及び固体電解質を含む。また、正極活物質層111は、導電材及びバインダーを含んでいてもよい。
負極120は、負極活物質層121と負極集電体122とを有している。負極活物質層121は、負極活物質を含む。また、負極活物質層121は、固体電解質及び導電材を含んでいてもよい。
積層体100は、正極集電体112に接続される外部端子113と、負極集電体122に接続される外部端子123とを有していてもよい。その他、全固体リチウム二次電池1000は、正極110と負極120との間にセパレータを有していてもよい。
全固体リチウム二次電池1000は、さらに、積層体100と外装体200とを絶縁するインシュレーター(図示無し)、および外装体200の開口部200aを封止する不図示の封止体を有する。
外装体200は、アルミニウム、ステンレス鋼又はニッケルメッキ鋼などの耐食性の高い金属材料を成形した容器である。また、外装体200は、少なくとも一方の面に耐食加工を施したラミネートフィルムを袋状に加工した容器でもよい。
全固体リチウム二次電池1000の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、ペーパー型(またはシート型)、円筒型、角型、又はラミネート型(パウチ型)等が挙げられる。
全固体リチウム二次電池1000は、一例として、積層体100を1つ有する形態であるが、これに限らない。全固体リチウム二次電池1000は、積層体100を単位セルとし、外装体200の内部に複数の単位セル(積層体100)を封じた構成でもよい。
全固体リチウム二次電池については、例えば、WO2022/113904A1の[0151]~[0181]に記載の構成、材料及び製造方法を用いることができる。
本発明は、以下の態様を有する。
[21]
Li元素、Ni元素、および前記元素Mを含む、層状構造のLiMOと、
水酸化リチウムおよび炭酸リチウムを含むリチウム化合物と
を有するCAMであって、
前記水蒸気吸着量Va0.5、前記水蒸気吸着量Va0.9、および、前記水蒸気吸着量Vd0.5が、下記の(式A‘)に示す関係を満たし、
前記BET比表面積Smが下記の(式B‘)に示す関係を満たし、かつ、
前記水酸化リチウムの質量割合W1と前記炭酸リチウムの質量割合W2とが下記の(式C1‘)に示す関係を満たす、CAM。
0<(Vd0.5-Va0.5)/Va0.9≦0.85 ・・・(式A‘)
0.2m/g≦Sm≦0.8m/g ・・・(式B‘)
0≦W2/W1≦1.00 ・・・(式C1‘)
[22]
前記LiMOは、前記(組成式I)で表される、[21]に記載のCAM。
[23]
前記BET比表面積Smが下記の式(B1)に示す関係を満たす、[21]または[22]に記載のCAM。
0.2m/g≦Sm≦0.7m/g ・・・(式B1)
[24]
前記炭酸リチウムの質量割合W2は、下記の式(D1‘)に示す関係を満たす、[21]から[23]のいずれかに記載のCAM。
0質量%≦W2≦0.60質量% ・・・(式D1‘)
[25]
滴定法で測定される、前記CAMの溶出リチウム量W3は、下記の式(E1‘)に示す関係を満たす、[21]から[24]のいずれかに記載のCAM。
0質量%以上≦W3≦0.40質量% ・・・(式E1‘)
[26]
前記結晶歪が、0.08°以下である、[21]から[25]のいずれかに記載のCAM。
[27]
前記平均細孔径が、10nm以上100nm以下である、[21]から[26]のいずれかに記載のCAM。
[28]
前記細孔容積が、0.001cm/g以上0.010cm/g以下である、[21]から[27]のいずれかに記載のCAM。
[29]
前記D50が8μm以上20μm以下である、[21]から[28]のいずれかに記載のCAM。
[30]
[21]から[29]のいずれかに記載のCAMを有する、リチウム二次電池用正極。
[31]
[30]に記載のリチウム二次電池用正極を有する、リチウム二次電池。
[32]
CAMの製造方法であって、
LiMOの前駆体である、MCCと、リチウム化合物との焼成粉を準備する準備工程と、
前記準備工程で準備された前記焼成粉について加湿処理を施す加湿工程と、
前記加湿工程において前記加湿処理が施された前記焼成粉について乾燥処理を施すことによって、前記CAMを作製する乾燥工程と
を有し、
前記加湿工程では、露点が50℃以上90℃以下であってCO濃度が50ppm以下である雰囲気において、前記加湿処理を実行する、CAMの製造方法。
[33]
前記加湿工程では、温度が90℃以上400℃以下である雰囲気において、前記加湿処理を実行する、[32]に記載のCAMの製造方法。
[34]
前記乾燥工程では、温度が100℃以上350℃以下である雰囲気において、前記乾燥処理を実行する、[32]または[33]に記載のCAMの製造方法。
以下より、実施例および比較例について表4を用いて説明する。表4において、(例1)から(例3)は、実施例に相当し、(例C1)から(例C3)は、比較例に相当する。
表4において、「加湿処理条件」は、加湿工程(ST20)で加湿処理を実施したときの条件であり、「乾燥処理条件」は、乾燥工程(ST30)で乾燥処理を実施したときの条件である。
Figure 2024001397000001
[1]CAMの試料作製
各例に係るCAMの試料を作製した手順について、順次、説明する。
(例1)
(例1)では、まず、LiMOの前駆体であるMCCとして、ニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の粉末を作製した。
ニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の作製では、最初に、撹拌器およびオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後に、水酸化ナトリウム水溶液を反応槽内に添加した。このとき、反応槽内において溶液の液温を50℃に保持した。そして、硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液と硫酸アルミニウム水溶液とを、NiとCoとAlとのモル比が88:9:3となる割合で混合することで、混合液を調製した。また、硫酸アンモニウム水溶液を錯化剤として準備した。
そして、上記の混合液と硫酸アンモニウム水溶液とを反応槽内の溶液に撹拌しながら連続的に添加した。このとき、反応槽内において溶液のpHが11.6(測定時の液温40℃)になるように、水酸化ナトリウム水溶液を滴下した。これにより、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の粒子を得た。
その後、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の粒子を、水で洗浄した後に、遠心分離機を用いて脱水処理を行うことで単離した。そして、その単離した粒子について、温度が105℃である条件で乾燥を行った。
そして、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物の粒子を大気雰囲気中において650℃の温度で5時間加熱した後に、室温に戻るまで冷却した。これにより、MCCとしてニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物を得た。
つぎに、リチウム化合物として準備した水酸化リチウム一水和物の粉末と、MCCであるニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物の粉末とを混合した。ここでは、Li元素のモル量[Li]を、Ni元素のモル量[Ni]とCo元素のモル量[Co]とAl元素のモル量[Al]とを加算した値で割った値が1.06になる割合(つまり、[Li]/([Ni]+[Co]+[Al])=1.06)になるように、混合を行った。
つぎに、ニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物と水酸化リチウム一水和物との混合物について焼成を行った。焼成は、酸素雰囲気下において、温度が740℃である条件で、5時間、実施した。
つぎに、上記の焼成によって得られた焼成体について石臼式解砕機により解砕する解砕処理を実行することで、焼成粉を得た(図3の準備工程(ST10))。
つぎに、上記の焼成粉について加湿処理を施した(図3の加湿工程(ST20))。
加湿処理は、表4に示す加湿処理条件で実行した。具体的には、150gの焼成粉について、処理温度が300℃であって処理時間が1時間である条件で、加湿処理を施した。このとき、露点が60℃、COの含有割合が1ppm未満となるように調整したエアーを流通させた。
つぎに、加湿処理を施した焼成粉について、乾燥処理を施した(図3の乾燥工程(ST30))。
乾燥処理は、表4に示す乾燥処理条件で実行した。具体的には、処理温度が300℃であって、処理時間が1時間である条件で、乾燥処理を実行した。このとき、露点が-30℃以下、COの含有割合が1ppm未満となるように調整したエアーを流通させた。これにより、(例1)におけるCAMの試料を完成させた。
(例2),(例3)
(例2)および(例3)では、表4に示すように、加湿処理条件の保持時間が(例1)の場合と異なる条件で、加湿処理を実施した。具体的には、(例2)の処理時間は、0.3時間であり、(例3)の処理時間は、2時間である。この点を除き、(例2)および(例3)では、(例1)の場合と同様に、CAMの試料を完成させた。
(例C1)
(例C1)では、表4に示すように、(例1)等と異なり、加湿処理及び乾燥処理を実施しなかった。つまり、(例C1)では、(例1)において加湿処理を実行する前に得た焼成粉を、CAMの試料とした。
(例C2)
(例C2)では、表4に示すように、(例C1)と同様に、加湿処理を実施しなかった。(例C2)では、(例1)において加湿処理を実行する前に得た焼成粉について、水洗処理を実施し、その水洗処理の実施後に乾燥処理を実施した。
(例C2)において、水洗処理および乾燥処理は、下記の条件で実施した。
[水洗処理条件]
・水洗処理は50gの焼成粉を50gの純水に分散させ、20分間攪拌することで実施した。水洗後の焼成粉は減圧濾過により回収した。
[乾燥処理条件]
・乾燥処理は水洗後の焼成粉を120℃で10時間の条件で減圧乾燥することで実施した。
上記したように、(例C2)では、水洗処理と乾燥処理とを順次実施した点を除き、(例1)の場合と同様に、CAMの試料を完成させた。
(例C3)
(例C3)では、表4に示すように、(例1)とは異なる条件で、加湿処理および乾燥処理を実施した。
具体的には、(例C3)では、表4の加湿処理条件に示すように、雰囲気ガスをCOの含有割合が400ppmであるエアーとした以外は、(例1)の場合と同様に加湿処理を実施した。
そして、(例C3)では、表4の乾燥処理条件に示すように、雰囲気ガスをCOの含有割合が400ppmであるエアーとした以外は、(例1)の場合と同様に乾燥処理を実施した。
このように、(例C3)では、加湿処理条件が(例1)の場合と異なる点を除き、(例1)の場合と同様に、CAMの試料を完成させた。
[2]物性評価
上記のように各例について作製したCAMの試料に関して、表4に示すように、上述した(要件1)から(要件3)に対応する物性評価を実施した。
[2-1]保水性パラメータ[=(Vd0.5-Va0.5)/Va0.9
具体的には、表4に示すように、(要件1)に対応する物性評価として、保水性パラメータ[=(Vd0.5-Va0.5)/Va0.9]を各例について求めた。
既に説明したように、保水性パラメータ[=(Vd0.5-Va0.5)/Va0.9]は、各例の試料について水蒸気吸着法で水蒸気吸着量を測定し、その結果から吸着等温線および脱着等温線を得ることで求めた。
図6は、(例1)と(例C1)に関して、保水性パラメータを求める際に用いた吸着等温線および脱着等温線を示す図である。図6において、横軸は、相対圧力p/pであり、縦軸は、水蒸気吸着量V(cm(STP)/g)である。図6では、図2と同様に、吸着等温線について実線で示し、脱着等温線について破線で示している。
(例1)と(例C1)とにおいては、図6に示す吸着等温線および脱着等温線を用いて、保水性パラメータを求めた。他の例については図示を省略しているが、同様に、吸着等温線および脱着等温線を用いて、保水性パラメータを求めた。
[2-2]BET比表面積Sm
表4に示すように、上述した(要件2)に対応する物性評価として、BET比表面積Smを各例について求めた。
既に説明したように、BET比表面積Smの測定は、吸着ガスとして窒素ガスを用いた窒素吸着法によって実施した。
[2-3]W2/W1
その他、表4に示すように、上述した(要件3)に対応する物性評価として、水酸化リチウムの質量割合W1で炭酸リチウムの質量割合W2を割った値(W2/W1)を、各例について求めた。
既に説明したように、水酸化リチウムの質量割合W1および炭酸リチウムの質量割合W2の測定は、既に説明した滴定法によって行った。
なお、表4では、水酸化リチウムの質量割合W1と炭酸リチウムの質量割合W2とのそれぞれの結果について併記している。また、表4では、CAMの溶出リチウム量W3の結果についても併記している。また、表4では、LiMOの組成式(I)(=Li[Li(Ni(1-x-y)CoM11-m]O)における、x,y,mの値を示している。その他、CAMについて、結晶歪、平均細孔径、細孔容積、50%累積体積粒度D50を求めた結果を示している。これらの組成および物性は、前記[A-1]および[A-3-4]で説明した方法で測定した。また、(例1)から(例3)、及び(例C1)~(例C3)で得られたLiMOは、粉末X線回折測定の結果、層状構造を有していた。
[3]電池評価
上記のように、各例において作製したCAMの試料に関しては、表4に示すように、物性評価の他に、電池評価を実施した。
電池評価を実施する際には、各例のCAMの試料からリチウム二次電池用正極を作製した後に、その作製したリチウム二次電池用正極を用いてリチウム二次電池を作製した。その後、その作製したリチウム二次電池に関して、表4に示すように、電池評価として、フロート電気量とレート特性とを測定した。
[3-1]リチウム二次電池用正極の作製
リチウム二次電池用正極を作製する際には、まず、ペースト状の正極合剤を調製した。正極合剤は、各例において作製したCAMと導電材及とバインダーとの混合物を混練することで調製した。ここでは、導電材として、アセチレンブラックを用い、バインダーとして、PVdFを用いた。そして、各材料を下記の割合で混合した。正極合剤の調製の際には、有機溶媒として、N-メチル-2-ピロリドンを用いた。
・CAM:92質量部
・導電材:5質量部
・バインダー:3質量部
そして、上記のように調製したペースト状の正極合剤を、集電体(厚さが40μmであるアルミニウム箔)に塗布した。その後、正極合剤が塗布された集電体について、温度が150℃である雰囲気において、8時間、真空乾燥を行うことで、リチウム二次電池用正極を完成させた。ここでは、リチウム二次電池用正極の電極面積を1.65cmとした。
[3-2]リチウム二次電池の作製
リチウム二次電池を作製する際には、まず、上記のように作製したリチウム二次電池用正極を、コイン型電池R2032用パーツ(宝泉株式会社製)の下蓋の上面に置いた。下蓋への設置では、リチウム二次電池用正極のアルミニウム箔面を下方に向けた。そして、リチウム二次電池用正極が設置された下蓋の上面に、積層フィルムセパレータを設置した。ここでは、積層フィルムセパレータとして、厚みが16μmであって、ポリエチレン製多孔質フィルムの上に耐熱多孔層が積層されたものを用いた。
つぎに、上記パーツの内部に300μlの電解液を注入した。ここでは、電解液として、下記の割合で各物質が混合した混合液に、LiPFが溶解した溶液を用いた。電解液は、LiPFの濃度が1mol/lになるように調製した。
・エチレンカーボネート:30体積部
・ジメチルカーボネート:35体積部
・エチルメチルカーボネート:35体積部
つぎに、負極をセパレータの上側に設置した。ここでは、負極として金属リチウムを用いた。そして、ガスケットを介して、上蓋の設置を行い、かしめ機を用いて上蓋をかしめた。これにより、リチウム二次電池として、コイン型ハーフセルR2032を作製した。
[3-3]フロート試験
電池内のガス発生量を評価する指標として、フロート電気量を測定した。フロート電気量とは、粒子界面で電解液と不可逆反応を起こした際に観測される電気量である。観測されるフロート電気量の値が大きいほど、ガス発生量が多いことを意味する。
具体的には、下記条件でフロート電気量を測定した。
・試験温度:60℃
・充電最大電圧:4.3V、充電電流:0.2CA
・定電圧保持時間60時間
フロート試験における、4.3Vの定電圧モードに移行してからの定電圧保持時間の間の積算電気量をフロート電気量(mAh/g)として算出した。フロート試験の評価は、フロート電気量が6.0mAh/g以下である場合をフロート電気量が小さいと判断した。
[3-4]レート特性[(1C/0.2C)放電容量]
レート特性は、充放電レートが0.2Cであるときの放電容量に対する、充放電レートが1Cであるときの放電容量の割合(%)である。レート特性の評価は、レート特性が95%以上である場合をレート特性が高いと判断した。
具体的には、下記条件でレート特性について測定を実施した。
(レート特性測定条件)
(0.2C放電容量)
・試験温度:25℃
・充電最大電圧:4.3V、充電電流:0.2CA、定電流定電圧充電、0.05CA電流値にて終了
・放電最小電圧:2.5V、放電電流:0.2CA、定電流放電
(1C放電容量)
・処理温度:25℃
・充電最大電圧:4.3V、充電電流:1CA、定電流定電圧充電、0.05CA電流値にて終了
・放電最小電圧:2.5V、放電電流:1CA、定電流放電
[4]まとめ
各例の「物性評価」および「電池評価」に関して説明する。
[4-1](例1)から(例3)の結果について
(例1)から(例3)は、表4の「物性評価」欄に示すように、(要件1)として規定する(式A)、(要件2)として規定する(式B)、(要件3)として規定する(式C)の関係を全て満たす(下記参照)。
(Vd0.5-Va0.5)/Va0.9≦0.90 ・・・(式A)
Sm≦0.8m/g ・・・(式B)
W2/W1≦1.4 ・・・(式C)
このため、(例1)から(例3)は、表4の「電池評価」欄に示すように、(要件1)として規定する(式A)と(式C)の関係を満たすのでフロート電気量の値が小さく、かつ、(要件2)として規定する(式B)の関係を満たすのでレート特性の値が高い。
[4-2](例C1)の結果について
これに対して、(例C1)は、表4の「物性評価」欄に示すように、(要件1)として規定する(式A)の関係を満たさない。(式A)で算出される値は、保水パラメータであって、(例C1)の保水パラメータは、(例1)から(例3)の保水パラメータよりも高い。このため、(例C1)は、(例1)から(例3)よりも水を保持しやすいので、リチウム二次電池において副反応が発生しやすい活性点が(例1)から(例3)よりも多い。その結果、(例C1)は、表4の「電池評価」欄に示すように、フロート電気量が大きくなっている。
(例C1)では、(例1)から(例3)と異なり、加湿処理及び乾燥処理を実行していない。加湿処理の実施は、リチウム二次電池において副反応が発生しやすい活性点を、水との接触で不活性化させる。このことから、(例C1)のように加湿処理を実行しない場合には、リチウム二次電池において副反応が発生しやすい活性点を不活性化することができず、(式A)の関係を満足しなくなると考えられる。
[4-3](例C2)の結果について
(例C2)は、表4の「物性評価」欄に示す結果から判るように、(要件2)として規定する(式B)の関係を満たしていない。(式B)では、BET比表面積Smについて規定しており、(例C2)のBET比表面積Smは、(例1)から(例3)のBET比表面積Smよりも高い。このため、(例C2)は、リチウム二次電池の充放電において、LiMOの表面で生じる副反応を、(例1)から(例3)よりも抑制することができない。その結果、(例C2)は、表4の「電池評価」欄に示すように、レート特性の値が低くなっている。
(例C2)では、(例1)から(例3)と異なり、加湿処理に代えて、水洗処理を実行している。水洗処理は、加湿処理と同様に、リチウム二次電池において副反応が発生しやすい活性点を、水の接触で不活性化させる。しかし、水洗処理の実施では、LiMOの粒界に残留し細孔を埋めているリチウム化合物を過剰に除去してしまう。このことから、(例C2)のように水洗処理を実行した場合には、(式B)の関係を満足することが困難になるため、リチウム二次電池の充放電サイクルにおいて、LiMO表面で副反応が多く生じ、レート特性の値が低くなると考えられる。
[4-4](例C3)の結果について
(例C3)は、表4の「物性評価」欄に示す結果から判るように、(要件3)として規定する(式C)の関係を満たさない。(式C)は、炭酸リチウムの質量割合W2を水酸化リチウムの質量割合W1で割った値(W2/W1)について規定しており、この値(W2/W1)は、(例C3)の方が(例1)から(例3)よりも大きい。このため、(例C3)は、リチウム二次電池においてガスが発生することを、(例1)から(例3)よりも抑制することができない。その結果、(例C3)は、表4の「電池評価」欄に示すように、フロート電気量が大きくなっている。
(例C3)では、(例1)から(例3)と同様に、加湿処理を行っている。しかし、(例1)から(例3)では、CO濃度が200ppm以下である雰囲気(1ppm未満)において、加湿処理を実行しているのに対して、(例C3)では、CO濃度が200ppmを超える雰囲気(400ppm)において加湿処理を実行している。その結果、(例C3)では、CAMにおいてLiMOの表面に残留するリチウム化合物のうち、特に、炭酸リチウムの質量割合W2が大きくなり、(式C)の関係を満足していないと考えられる。
本発明によれば、リチウム二次電池においてガスが発生することを抑制すると共に、レート特性に優れたリチウム二次電池を容易に実現可能な、リチウム二次電池用正極活物質、リチウム二次電池用正極、リチウム二次電池、およびリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供することができる。
1…セパレータ、2…正極、3…負極、4…電極群、5…電池缶、6…電解液、7…トップインシュレーター、8…封口体、10…リチウム二次電池、21…正極リード、31…負極リード、51…リチウム金属複合酸化物、61…リチウム化合物、71…活性点、100…積層体、110…正極、111…リチウム二次電池用正極活物質層、112…正極集電体、113…外部端子、120…負極、121…負極活物質層、122…負極集電体、123…外部端子、130…固体電解質層、200…外装体、200a…開口部、1000…全固体リチウム二次電池

Claims (14)

  1. Li元素、Ni元素、および元素Mを含む、層状構造のリチウム金属複合酸化物と、
    水酸化リチウムおよび炭酸リチウムを含むリチウム化合物と
    を有するリチウム二次電池用正極活物質であって、
    前記元素Mが、Co、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Ca、Ba、Al、Zn、Sn、Zr、Nb、B、Si、S、およびPからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、
    水蒸気吸着法の吸着等温線において水蒸気圧pと飽和蒸気圧pとの相対圧力p/pが0.5であるときの水蒸気吸着量Va0.5、前記水蒸気吸着法の吸着等温線において前記相対圧力p/pが0.9であるときの水蒸気吸着量Va0.9、および、前記水蒸気吸着法の脱着等温線において前記相対圧力p/pが0.5であるときの水蒸気吸着量Vd0.5が、下記の(式A)に示す関係を満たし、
    窒素吸着法により計測されるBET比表面積Smが下記の(式B)に示す関係を満たし、かつ、
    前記水酸化リチウムの質量割合W1と前記炭酸リチウムの質量割合W2とが下記の(式C)に示す関係を満たす、
    リチウム二次電池用正極活物質。
    (Vd0.5-Va0.5)/Va0.9≦0.90 ・・・(式A)
    Sm≦0.8m/g ・・・(式B)
    W2/W1≦1.40 ・・・(式C)
  2. 前記リチウム金属複合酸化物は、
    下記組成式(I)で表される、
    請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
    Li[Li(Ni(1-x-y)CoM11-m]O ・・・(組成式I)
    ((組成式I)において、M1は、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Ca、Ba,Al、Zn、Nb、Sn、Zr、B、Si、SおよびPからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、m,x,yは、-0.1≦m≦0.2、0≦x≦0.5、0<y≦0.7、x+y<1に示す関係を満足する。)
  3. 前記BET比表面積Smが下記の式(B1)に示す関係を満たす、
    請求項1または2に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
    0.2m/g≦Sm≦0.7m/g ・・・(式B1)
  4. 前記炭酸リチウムの質量割合W2は、下記の式(D)に示す関係を満たす、
    請求項1または2に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
    W2≦0.70質量% ・・・(式D)
  5. 滴定法で測定される、前記リチウム二次電池用正極活物質の溶出リチウム量W3は、下記の式(E)に示す関係を満たす、
    請求項1または2に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
    W3≦0.50質量% ・・・(式E)
  6. CuKα線で測定した粉末X線回折の回折パターンにおいて、回折角2θが10°以上90°以下の範囲内に含まれる回折パターンから算出される結晶歪が、0.10°以下である、
    請求項1または2に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
  7. 窒素吸着法により計測される平均細孔径が、150nm以下である
    請求項1または2に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
  8. 窒素吸着法により計測される細孔容積が、0.0005cm/g以上0.0150cm/g以下である、
    請求項1または2に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
  9. 50%累積体積粒度D50が3μm以上30μm以下である、
    請求項1または2に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
  10. 請求項1または2に記載のリチウム二次電池用正極活物質を有する、
    リチウム二次電池用正極。
  11. 請求項10に記載のリチウム二次電池用正極を有する、
    リチウム二次電池。
  12. リチウム二次電池用正極活物質の製造方法であって、
    リチウム金属複合酸化物の前駆体である金属複合化合物と、リチウム化合物との焼成粉を準備する準備工程と、
    前記準備工程で準備された前記焼成粉について加湿処理を施す加湿工程と、
    前記加湿工程において前記加湿処理が施された前記焼成粉について乾燥処理を施すことによって、前記リチウム二次電池用正極活物質を作製する乾燥工程と
    を有し、
    前記加湿工程では、露点が50℃以上90℃以下であってCO濃度が200ppm以下である雰囲気において、前記加湿処理を実行する、
    リチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
  13. 前記加湿工程では、温度が80℃以上400℃以下である雰囲気において、前記加湿処理を実行する、
    請求項12に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
  14. 前記乾燥工程では、温度が100℃以上400℃以下である雰囲気において、前記乾燥処理を実行する、
    請求項12または13に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
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