JP7454642B1 - リチウム金属複合酸化物、リチウム二次電池用正極活物質、リチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池 - Google Patents

リチウム金属複合酸化物、リチウム二次電池用正極活物質、リチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】Li二次電池の初回放電容量及びサイクル特性を向上させることができるLi金属複合酸化物、Li二次電池用正極活物質、Li二次電池用正極及びLi二次電池の提供。【解決手段】層状構造を有し、(1)、(2)及び(3)を満たすリチウム金属複合酸化物。(1)下記式(I)で表される。Li[Lim(Ni(1-x-y)CoxMy)1-m]O2・・・式(I)(式(I)中、MはMn、Fe、Cu、Ti、Mg、Ca、Al、Zn、Sn、Zr、B、Si、Nb、W、Ta、Ba、S及びPからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、式(I)は、-0.1≦m≦0.2、0≦x≦0.5、0<y≦0.7、及びx+y<1を満たす)(2)リートベルト解析法によって求められる、層状岩塩型の結晶構造のLiサイトにおけるMe席占有率が2.0%以上、7.0%以下である。(3)粉末X線回折測定における3つの特定ピークが特定の関係式を満たす。【選択図】なし

Description

本発明は、リチウム金属複合酸化物、リチウム二次電池用正極活物質、リチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池に関する。
リチウム二次電池用正極活物質として、リチウム金属複合酸化物が使用されている。リチウム二次電池の性能向上を目的として、例えばリチウム金属複合酸化物の結晶構造を制御する検討がされている。
リチウム金属複合酸化物の製造段階、又はリチウム二次電池を充放電させた段階において、カチオンミキシングという現象が生じることが知られている。
カチオンミキシングは、リチウム金属複合酸化物の結晶構造中において、リチウムイオンが存在すべきサイトに、ニッケルイオンが移行し、リチウムイオンがニッケルイオンに入れ替わる現象である。カチオンミキシングが生じると、リチウム二次電池の容量が喪失するため電池性能が劣化しやすい。
このため、リチウム金属複合酸化物のカチオンミキシングの割合を小さくする検討がされている。
例えば特許文献1は、Li主体層のLi席占有率が95%以上である、層状構造の六方晶系リチウムニッケル複合酸化物を開示している。
特開2010-64944号公報
リチウム二次電池の応用分野が広がる中、初回放電容量、及びサイクル特性のさらなる向上が求められている。リチウム二次電池に用いられるリチウム金属複合酸化物には、初回放電容量、及びサイクル特性を向上させる観点から改良の余地がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、リチウム二次電池の初回放電容量、及びサイクル特性を向上させることができるリチウム金属複合酸化物、リチウム二次電池用正極活物質、リチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池を提供することを目的とする。
本発明は以下の[1]~[9]を包含する。
[1]層状構造を有し、下記(1)、(2)及び(3)を満たすリチウム金属複合酸化物。
(1)下記組成式(I)で表される。
Li[Li(Ni(1-x-y)Co1-m]O・・・組成式(I)
(組成式(I)中、MはMn、Fe、Cu、Ti、Mg、Ca、Al、Zn、Sn、Zr、B、Si、Nb、W、Ta、Ba、S及びPからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、組成式(I)は、-0.1≦m≦0.2、0≦x≦0.5、0<y≦0.7、及びx+y<1を満たす。)
(2)リートベルト解析法によって求められる、層状岩塩型の結晶構造のLiサイトにおけるMe席占有率が2.0%以上、7.0%以下である。
(3)0.45≦(I+I)/I≦0.70
(Iは、CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、2θ=35.5±1°の範囲内の回折ピークの積分強度であり、Iは、2θ=38.0±1°の範囲内の2つの回折ピークのうち、低角度側の回折ピークの積分強度であり、Iは、高角度側の回折ピークの積分強度である。)
[2]前記組成式(I)は、0≦x≦0.1を満たす、[1]に記載のリチウム金属複合酸化物。
[3]レーザー回折散乱法により測定される体積基準の累積粒度分布曲線から得られるD50が、3μm以上20μm以下である[1]又は[2]に記載のリチウム金属複合酸化物。
[4]下記(4)を満たす、[1]~[3]のいずれか1つに記載のリチウム金属複合酸化物。
(4) 0.8≦I/I≦1.8
(Iは、CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、2θ=18.5±1°の範囲内の回折ピークの積分強度であり、Iは、2θ=44.5±1°の範囲内の回折ピークの積分強度である。)
[5]前記粉末X線回折測定で得られる2θ=10°-90°の範囲のX線回折パターンをリートベルト解析して算出される平均結晶子サイズが80nm以上200nm以下である、[1]~[4]のいずれか1つに記載のリチウム金属複合酸化物。
[6]BET比表面積が0.2m/g以上2.0m/g以下である、[1]~[5]のいずれか1つに記載のリチウム金属複合酸化物。
[7][1]~[6]のいずれか1つに記載のリチウム金属複合酸化物を含有するリチウム二次電池用正極活物質。
[8][7]に記載のリチウム二次電池用正極活物質を含むリチウム二次電池用正極。
[9][8]に記載のリチウム二次電池用正極を含むリチウム二次電池。
本発明によれば、リチウム二次電池の初回放電容量、及びサイクル特性を向上させることができるリチウム金属複合酸化物、リチウム二次電池用正極活物質、リチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池を提供することができる。
リチウム金属複合酸化物の体積変化を説明するための模式図である。 リチウム金属複合酸化物の体積変化を説明するための模式図である。 リチウム二次電池の一例を示す概略構成図である。 リチウム二次電池の一例を示す概略構成図である。
本明細書における用語の定義は以下の通りである。
金属複合化合物(Metal Composite Compound)を以下「MCC」ともいう。
リチウム金属複合酸化物(Lithium Metal Composite Oxide)を以下「LiMO」ともいう。
リチウム二次電池用正極活物質(Cathode Active Material
for lithium secondary batteries)を以下「CAM」ともいう。
「Ni」とは、ニッケル金属単体ではなく、Ni元素であることを示す。Co、Li等の他の元素の表記も同様である。
数値範囲が例えば「5~15μm」又は「5-15μm」と記載されている場合、5μmから15μmまでの範囲を意味し、下限値である5μmと上限値である15μmを含む数値範囲を意味する。
本明細書において、サイクル特性は放電容量維持率により評価する。
本明細書における初回放電容量、及び放電容量維持率の測定方法は以下の通りである。
[初回放電容量、及び放電容量維持率の測定方法]
以下に記載の方法によりリチウム二次電池用正極とリチウム二次電池を製造し、初回放電容量、及び放電容量維持率を測定する。
<リチウム二次電池用正極の作製>
LiMOをCAMとして用い、CAMと導電材(アセチレンブラック)とバインダー(PVdF)とを、CAM:導電材:バインダー=92:5:3(質量比)の組成となる割合で加えて混練することにより、ペースト状の正極合剤を調製する。正極合剤の調製時には、N-メチル-2-ピロリドンを有機溶媒として用いる。
得られた正極合剤を、集電体となる厚さ40μmのAl箔に塗布して150℃で8時間真空乾燥を行い、リチウム二次電池用正極を得る。このリチウム二次電池用正極の電極面積は1.65cmとする。
<リチウム二次電池(コイン型ハーフセル)の作製>
以下の操作を、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で行う。
上述のリチウム二次電池用正極を、コイン型電池R2032用のパーツ(宝泉株式会社製)の下蓋にアルミ箔面を下に向けて置き、その上にポリエチレン製多孔質フィルムの上に耐熱多孔層を積層した積層フィルムセパレータ(厚み16μm)を置く。ここに電解液を300μl注入する。電解液は、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを30:35:35(体積比)で混合した混合液にLiPFを1mol/lとなる割合で溶解した液体を用いる。
次に、負極として金属リチウムを用いて、セパレータの上側に置き、ガスケットを介して上蓋をし、かしめ機でかしめて、コイン型のリチウム二次電池(コイン型ハーフセルR2032)を作製する。
組み立てたコイン型のリチウム二次電池を室温で12時間静置することでセパレータ及び正極合剤層に充分電解液を含浸させる。
試験温度25℃において、充電及び放電ともに電流設定値0.2CAとし、それぞれ定電流定電圧充電と定電流放電を行う。充電最大電圧は、4.3V、放電最小電圧は2.5Vとする。充電容量を測定し、得られた値を「初回充電容量」(mAh/g)とする。さらに放電容量を測定し、得られた値を「初回放電容量」(mAh/g)とする。
本明細書において、「初回放電容量が高い」とは、上記の方法により測定する初回放電容量が180mAh/g以上であることを意味する。
次いで、試験温度は25℃にて、以下の条件で定電流定電圧充電と定電流放電を繰り返す。充放電サイクルの繰り返し回数は50回である。
充電:電流設定値0.5CA、最大電圧4.3V、定電圧定電流充電
放電:電池設定値1CA、最小電圧2.5V、定電流放電
1サイクル目の放電容量と50サイクル目の放電容量から、下記の式で放電容量維持率を算出する。放電容量維持率が高いほど、充電と放電を繰り返した後の電池の容量が低下しにくいため、電池性能として望ましいことを意味する。
放電容量維持率(%)=50サイクル目の放電容量(mAh/g)/1サイクル目の放電容量(mAh/g)×100
本明細書において、「サイクル特性が良好である」とは、上記の方法により測定する放電容量維持率が80%以上であることを意味する。
<LiMO>
≪結晶構造≫
LiMOは、層状構造を備える。
層状構造とは、リチウム層とリチウム以外の遷移金属層とが酸素の層を挟んで交互に積層された結晶構造である。遷移金属層は遷移金属イオンから構成され、酸素の層は酸素イオンから構成される。層状岩塩型の結晶構造は、典型的には、α-NaFeO型の結晶構造である。
[結晶構造の確認方法]
LiMOの結晶構造は、粉末X線回折測定装置を用いて観察することにより確認できる。
粉末X線回折測定は、X線回折装置、例えば、株式会社リガク製UltimaIVが使用できる。
LiMOの結晶構造は、六方晶型の結晶構造又は単斜晶型の結晶構造であることがより好ましい。
六方晶型の結晶構造は、P3、P31、P32、R3、P-3、R-3、P312、P321、P3112、P3121、P3212、P3221、R32、P3m1、P31m、P3c1、P31c、R3m、R3c、P-31m、P-31c、P-3m1、P-3c1、R-3m、R-3c、P6、P61、P65、P62、P64、P63、P-6、P6/m、P63/m、P622、P6122、P6522、P6222、P6422、P6322、P6mm、P6cc、P63cm、P63mc、P-6m2、P-6c2、P-62m、P-62c、P6/mmm、P6/mcc、P63/mcm及びP63/mmcからなる群から選ばれるいずれか一つの空間群に帰属される。
また、単斜晶型の結晶構造は、P2、P21、C2、Pm、Pc、Cm、Cc、P2/m、P21/m、C2/m、P2/c、P21/c及びC2/cからなる群から選ばれるいずれか一つの空間群に帰属される。
これらのうち、初回放電容量が高いリチウム二次電池を得るため、結晶構造は、空間群R-3mに帰属される六方晶型の結晶構造、又はC2/mに帰属される単斜晶型の結晶構造であることが特に好ましい。
LiMOは、下記(1)、(2)、及び(3)を満たす。
(1)下記組成式(I)で表される。
Li[Li(Ni(1-x-y)Co1-m]O・・・組成式(I)
(組成式(I)中、MはMn、Fe、Cu、Ti、Mg、Ca、Al、Zn、Sn、Zr、B、Si、Nb、W、Ta、Ba、S及びPからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、組成式(I)は、-0.1≦m≦0.2、0≦x≦0.5、0<y≦0.7、及びx+y<1を満たす。)
(2)リートベルト解析法によって求められる、層状岩塩型の結晶構造のLiサイトにおけるMe席占有率が2.0%以上、7.0%以下である。
(3)0.45≦(I+I)/I≦0.70
(Iは、CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、2θ=35.5±1°の範囲内の回折ピークの積分強度であり、Iは、2θ=38.0±1°の範囲内の2つの回折ピークのうち、低角度側の回折ピークの積分強度であり、Iは、高角度側の回折ピークの積分強度である。)
≪組成≫
LiMOは、上記組成式(I)で表される。
(m)
mはサイクル特性を向上させる観点から、-0.08以上が好ましく、-0.06以上であることがより好ましく、-0.04以上が特に好ましい。また、初回放電容量が高いリチウム二次電池を得る観点から、mは0.1以下が好ましく、0.08以下がより好ましく、0.05以下が特に好ましい。
mの上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
組成式(I)は、-0.08≦m≦0.1を満たすことが好ましく、-0.06≦m≦0.08を満たすことがより好ましく、-0.04≦m≦0.05を満たすことが特に好ましい。
(x)
カチオンミキシングは、Coの含有割合が低いLiMOにおいて特に生じやすい。このため、上記(2)を満たすLiMOを得る観点から、xは0.5以下が好ましく、0.2以下がより好ましく、0.1以下がさらに好ましく、0.05以下が特に好ましい。xの下限値は、例えば0である。
xの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。組み合わせの例としては、0≦x≦0.2、0≦x≦0.1、0≦x≦0.05が挙げられる。組成式(I)は、0≦x≦0.1を満たすことが好ましい。
(y)
サイクル特性を向上させる観点から、yは、0.0002以上が好ましく、0.0005以上がより好ましい。また、yは、0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.10以下が特に好ましい。
yの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。組み合わせの例としては、0.0002≦y≦0.5、0.0005≦y≦0.3、0.0002≦y≦0.10が挙げられる。
組成式(I)は、0.0002≦y≦0.10を満たすことが好ましい。
初回放電容量が高いリチウム二次電池を得る観点から、0<x+y≦0.5を満たすことが好ましく、0<x+y≦0.25を満たすことがより好ましく、0<x+y≦0.2を満たすことがさらに好ましく、0<x+y≦0.1を満たすことが特に好ましい。
サイクル特性及び初回放電容量を高くする観点から、Mは、Mn、Ti、Mg、Ca、Al、Zr、B、Si、Nb、及びWからなる群より選ばれる1種以上の元素が好ましい。
LiMOは、Liと、Niと、Mn及びAlからなる群より選ばれる1種以上の元素M1とを含むことが好ましく、下記組成式(I’)で表されることがより好ましい。
Li[Li(Ni(1-x-y)CoM1M21-m]O・・・組成式(I’)
(組成式(I’)中、M1はMn及びAlからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、M2は、Fe、Cu、Ti、Mg、Ca、Zn、Sn、Zr、B、Si、Nb、W、Ta、Ba、S及びPからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、m及びxの範囲は、上記組成式(I)のm及びxと同様であり、z+wの範囲は、上記組成式(I)のyと同様である。)
[組成分析]
LiMOの組成分析は、得られたLiMOの粉末を塩酸に溶解させた後、ICP発光分光分析装置を用いて測定できる。
ICP発光分光分析装置としては、例えばエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、SPS3000が使用できる。
≪Me席占有率≫
LiMOは、上記(2)を満たす。上記Me席占有率は2.1%以上が好ましく、2.2%以上がより好ましい。Me席占有率とは、層状構造のリチウム層(Li席)中に占める、Li以外の金属元素(例えば、Ni、Co、組成式(I)のMで挙げられている元素)の存在割合を示す。
Me席占有率が上記下限値以上であると、充電と放電を繰り返した際の体積変化量を小さくすることができる。その結果、サイクル特性を良好にすることができる。
また、Me席占有率は6.8%以下が好ましく、6.5%以下がより好ましい。
Me席占有率が上記上限値以下であると、抵抗の上昇を抑えられ、初回放電容量の低下を抑制することができる。また、抵抗の過剰な上昇による充放電反応時の構造の劣化を抑制し、サイクル特性を良好にすることができる。
Me席占有率の上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。組み合わせの例としては、Me席占有率が、2.1-6.8%、2.2-6.5%が挙げられる。
[Me席占有率の測定方法]
Me席占有率は、粉末X線測定により得られる粉末X線回折パターンについてリートベルト解析を行うことにより算出する。リートベルト解析法とは、実測の粉末X線回折パターンと結晶構造モデルからのシミュレーションパターンを比較し、両者の差が最小となるよう結晶構造モデルにおける結晶構造パラメータを最適化する手法である。
粉末X線回折測定は、X線回折装置を用いて行う。X線回折装置としては、例えば、Bruker社製D8 Advanceを用いることができる。具体的には、LiMOの粉末を専用の基板に充填し、CuKα線源を用いて、回折角2θ=10°-90°、サンプリング幅0.02°の条件にて測定を行い、粉末X線回折パターンを得る。得られた粉末X線回折パターンをリートベルト解析する。リートベルト解析ソフトは、Bruker社製TOPAS ver.4.2を用いる。このとき、初期結晶構造モデルとして層状岩塩型結晶構造(Li1-nMe)(Me1-nLi)Oを用い、Liサイト中のMe席占有率nの最適化を行う。
≪I、I及びI
LiMOは上記(3)を満たす。
[I、I及びIの取得方法]
CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、LiMOは、2θ=35.5±1°の範囲内に回折ピークAを有し、2θ=38.0±1°の範囲内に2つの回折ピークを有する。2つのピークとは、強度が最も高いピークと、その次に強度が高いピークである。2つのピークのうち、低角度側のピークをピークBとし、高角度側のピークをピークCとする。
回折ピークAの左右両側の最下点を結ぶ線とピークAの曲線との間、回折ピークBの左右両側の最下点を結ぶ線とピークBの曲線との間、回折ピークCの左右両側の最下点を結ぶ線とピークCの曲線との間、に形成される山状部分の面積、すなわち積分強度をそれぞれI、I、Iとする。
上記[Me席占有率の測定方法]で得られた粉末X線回折パターンより、統合粉末X線解析ソフトウェアを用い、I、I、及びIを算出する。粉末X線回折解析ソフトウェアは、Bruker社製DIFFRAC.EVAを用いる。
LiMOは、下記(3)-1~(3)-3のいずれかであることが好ましい。
(3)-1 0.46≦(I+I)/I≦0.69
(3)-2 0.48≦(I+I)/I≦0.67
(3)-3 0.50≦(I+I)/I≦0.65
ピークAは(101)面に相当するピークであり、ピークBは(006)面に相当するピークであり、ピークCは(012)面に相当するピークである。
上記(1)、(2)及び(3)を満たすと、リチウム二次電池の初回放電容量が高く、且つサイクル特性が向上する。その理由は、以下のように推察される。
充電と放電を繰り返した際に生じるLiMOの体積変化は、リチウム二次電池のサイクル特性を低下させる一因であることが知られている。体積変化量が大きいLiMOをCAMに用いると、サイクル中にCAMにクラックが生じ、クラックにより生じた新生面で副反応が生じ、ガス発生や抵抗層が生成する。また、導電助剤との接触が低い箇所が生じる。上記要因により、電子伝導性、およびリチウムイオンの導電性が低下し抵抗が大きくなる。このためサイクル特性が劣化する。
この体積変化について、図1に示すLiMOの模式図を用いて説明する。図1中、LiMO41はリチウムイオン挿入時(電池の充電前又は放電時に相当)の状態であり、LiMO42はリチウムイオン脱離後(電池の充電後に相当)の状態である。
図1は、LiMO41が、充電によりリチウムイオンが脱離し、LiMO42に変化する様子を示す。リチウムイオンが脱離すると、負に帯電する酸素イオン同士が反発する。その結果、遷移金属の層同士の層間が広がり、体積が増加する。つまり層間はL1からL2に広がり、体積が増加する。
LiMO41はカチオンミキシングが生じない、又はカチオンミキシングの割合が低い。そのため、充電によりリチウムサイトが空席になった際に、酸素イオン同士の反発がキャンセルされず、遷移金属の層同士の層間が広がりやすい。
放電時にはリチウムイオンが挿入されて、LiMO42からLiMO41へ変化する。この場合には、層間はL2からL1に縮み、体積が減少する。L1とL2の差が大きいほど、充電と放電を繰り返した際の体積変化量が大きく、サイクル特性を劣化させる一因となる。
図2は、カチオンミキシングが生じている本実施形態のLiMOの体積変化を説明する模式図である。図2中、LiMO51はリチウムイオン挿入時(電池の充電前又は放電時に相当)の状態であり、LiMO52はリチウムイオン脱離後(電池の充電後に相当)の状態である。LiMO51は、充電によりリチウムイオンが脱離し、LiMO52に変化する。放電によりリチウムイオンが挿入すると、LiMO52はLiMO51に変化する。
LiMO51は、リチウムサイトの一部がニッケルイオンに入れ替わっているため、充電によりリチウムイオンが抜けても、ニッケルイオンがリチウムサイトに残る。残ったニッケルイオンは酸素イオン同士の反発を中和するため、遷移金属の層同士の層間が広がりにくい。つまり層間はL3からL4に広がるものの、その差が小さいため体積は増加しにくい。その結果、サイクル特性は劣化しにくい。
通常、カチオンミキシングが大きいと岩塩型構造が生成しやすい。岩塩型構造は電気化学的に不活性であるため、リチウムイオンの脱離と挿入の際に抵抗となる。抵抗が高いと、初回放電容量が低下しやすく、加えて、充放電反応中の構造劣化によってサイクル特性が劣化しやすい。一方で、岩塩型構造が少なすぎると、充放電反応中に急激な構造劣化や体積変化が起こりやすく、サイクル特性が劣化しやすい。本実施形態のLiMOは、岩塩型構造が適切な量で存在しているため、初回放電容量が高く、サイクル特性を向上させることができる。
本実施形態のLiMOは、上記(2)を満たすために充電と放電を繰り返した際の体積変化量が小さく、上記(3)を満たすために岩塩型構造が適切な量で存在しているため、初回放電容量が高く、サイクル特性が劣化しにくいと推察される。
LiMOのD50は、3-20μmが好ましく、8-18μmがより好ましく、10-17μmがさらに好ましい。
50は、レーザー回折散乱法により測定される体積基準の累積粒度分布曲線から得られる、50%累積体積粒度(μm)である。
50が上記の範囲を満たすLiMOは、正極を製造する際に充填しやすくなり、導電助剤との接触が良好となって、初回放電容量が高い正極を製造できる。
[D50の測定方法]
LiMOのD50は、以下のレーザー回折散乱法により測定できる。
具体的には、まず、2gの粉末状のLiMOを、0.2質量%ヘキサメタりん酸ナトリウム水溶液50mlに投入し、LiMOを分散させた分散液を得る。
次に、得られた分散液について、レーザー回折粒度分布計により粒度分布を測定し、体積基準の累積粒度分布曲線を得る。得られた累積粒度分布曲線において、微小粒子側から50%累積時の粒子径の値がD50(μm)である。
レーザー回折粒度分布計としては、例えばマルバーン製、MS2000が使用できる。
LiMOは、さらに下記(4)を満たすことが好ましい。
(4) 0.8≦I/I≦1.8
(Iは、CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、2θ=18.5±1°の範囲内の回折ピークの積分強度であり、Iは、2θ=44.5±1°の範囲内の回折ピークの積分強度である。)
[I及びIの取得方法]
CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、LiMOは2θ=18.5±1°の範囲内に回折ピークDを有し、2θ=44.5±1°の範囲内に回折ピークEを有する。回折ピークDの左右両側の最下点を結ぶ線とピークDの曲線との間、回折ピークEの左右両側の最下点を結ぶ線とピークEの曲線との間に形成される山状部分の面積、すなわち積分強度を、それぞれI、Iとする。
ピークDは(003)面に相当するピークであり、ピークEは(104)面に相当するピークである。
上記[Me席占有率の測定方法]で得られた粉末X線回折パターンより、統合粉末X線解析ソフトウェアを用い、I及びIを算出する。粉末X線回折解析ソフトウェアは、Bruker社製DIFFRAC.EVAを用いる。
/Iは0.9以上が好ましく、1.0以上がより好ましい。I/Iが下限値以上であるLiMOは層状構造における面方向に対して層方向の結晶構造が発達していると考えられ、初回放電容量が向上しやすい。
/Iは1.7以下が好ましく、1.5以下がより好ましい。I/Iが上限値以下であるLiMOは層状構造における層方向の結晶構造が過剰に発達しておらず、充放電サイクル時の層方向の体積変化が抑制され、サイクル特性が向上しやすい。
/Iの上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。組み合わせの例としては、下記(4)-1、(4)-2が挙げられる。
(4)-1 0.9≦I/I≦1.7
(4)-2 1.0≦I/I≦1.5
LiMOの平均結晶子サイズは80-200nmであることが好ましい。
[平均結晶子サイズの測定方法]
平均結晶子サイズは、上記[Me席占有率の測定方法]と同様の方法で、粉末X線回折パターンについてリートベルト解析を行うことにより算出する。
平均結晶子サイズは85nm以上が好ましく、90nm以上がより好ましい。平均結晶子サイズが上記下限値以上であるLiMOは、高い結晶性を示す。そのようなLiMOは格子欠陥が少なく、粒界の抵抗が小さいため、リチウムイオンの脱離と挿入がスムーズに進行し、初回放電容量が向上しやすい。
平均結晶子サイズは170nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましい。平均結晶子サイズが上記上限値以下であるLiMOは、結晶子が過剰に成長しておらず、結晶構造内のリチウムイオンの拡散抵抗が小さくなりやすく、初回放電容量が向上しやすい。
平均結晶子サイズの上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。組み合わせの例としては、85-170nm、90-150nmが挙げられる。
LiMOのBET比表面積は、0.2-2.0m/gであることが好ましく、0.3-1.9m/gであることがより好ましい。
BET比表面積が上記の下限値以上であるLiMOを用いると、LiMOと電解液の接触面積が増大し、初回放電容量が高くなりやすい。
BET比表面積が上記の上限値以下であるLiMOを用いると、LiMOと電解液との接触面積が増大し、電解液の分解に起因するガスの発生を抑制しやすく、サイクル特性を向上させやすい。
[BET比表面積の測定方法]
LiMO又は後述の金属複合水酸化物のBET比表面積は、BET比表面積測定装置により測定できる。BET比表面積測定装置としては、例えば、マウンテック社製Macsorb(登録商標)を用いることができる。測定前の処理として、LiMO又は金属複合水酸化物を窒素雰囲気中、105℃で30分間乾燥させることが好ましい。
<LiMOの製造方法>
LiMOの製造方法は、MCCを得る工程、LiMOを得る工程を備えることが好ましい。以下、MCCを得る工程、LiMOを得る工程の順に説明する。
[MCCを得る工程]
まず、NiとCo及び元素Mからなる群より選ばれる一種以上の元素とを含むMCCを調製する。元素Mは、Mn、Fe、Cu、Ti、Mg、Ca、Al、Zn、Sn、Zr、B、Si、Nb、W、Ta、Ba、S及びPからなる群より選ばれる1種以上の元素である。
MCCは、バッチ共沈殿法又は連続共沈殿法により製造することが可能である。以下、Ni及び元素Mを含む金属複合酸化物を例に、その製造方法を詳述する。
まず共沈殿法、特にJP-A-2002-201028に記載された連続式共沈殿法により、ニッケル塩溶液、元素Mを含む金属塩溶液、及び錯化剤を反応させ、Ni(1-y)(OH)(式中、yは、上記組成式(I)のyと同様)で表される金属複合水酸化物を製造する。
上記ニッケル塩溶液の溶質であるニッケル塩としては、特に限定されないが、例えば硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル及び酢酸ニッケルのうちの何れか1種以上を使用することができる。
元素Mを含む金属塩溶液の溶質である金属塩としては、元素Mの硫酸塩、塩化物、酢酸塩、水酸化物塩等が挙げられる。
例えば、マンガン塩溶液の溶質であるマンガン塩としては、例えば硫酸マンガン、硝酸マンガン及び塩化マンガンのうちの何れか1種又は2種以上を使用することができる。
アルミニウム塩溶液の溶質であるアルミニウム塩としては、例えば硫酸アルミニウムやアルミン酸ソーダ等が使用できる。
以上の金属塩は、上記Ni(1-y)(OH)の組成比に対応する割合で用いられる。また、溶媒として水が使用される。
錯化剤は、水溶液中で、Ni、及び元素Mのイオンと錯体を形成可能な化合物である。例えば、アンモニウムイオン供給体、ヒドラジン、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ウラシル二酢酸、及びグリシンが挙げられる。
アンモニウムイオン供給体としては、水酸化アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、弗化アンモニウム等のアンモニウム塩が挙げられる。
錯化剤は含まれていなくてもよく、錯化剤が含まれる場合、ニッケル塩溶液、元素Mを含む金属塩溶液及び錯化剤を含む混合液に含まれる錯化剤の量は、例えば金属塩のモル数の合計に対するモル比が0より大きく2.0以下である。
共沈殿法に際しては、ニッケル塩溶液、元素Mを含む金属塩溶液及び錯化剤を含む混合液のpH値を調整するため、混合液のpHがアルカリ性から中性になる前に、混合液にアルカリ性水溶液を添加する。アルカリ性水溶液は、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液が使用できる。
なお、本明細書におけるpHの値は、混合液の温度が40℃の時に測定された値であると定義する。反応槽からサンプリングした混合液の温度が40℃でない場合には、混合液を加熱又は冷却して40℃になったときにpHを測定する。
反応に際しては、反応槽の温度を、例えば20-80℃、好ましくは30-70℃の範囲内で制御する。
また、反応に際しては、反応槽内のpH値を、例えばpH9以上pH12未満、好ましくはpH10以上pH12未満の範囲内で制御する。
反応槽内の物質は、適宜撹拌して混合する。
連続式共沈殿法で用いる反応槽は、形成された反応沈殿物を分離のためオーバーフローさせるタイプの反応槽を用いることができる。
反応槽内は、目的とする雰囲気に制御するため、所定のガスを反応槽内に通気するか、反応液を直接バブリングすればよい。
以上の反応後、得られた反応沈殿物を水で洗浄した後、乾燥することで、金属複合水酸化物が得られる。また、反応沈殿物に水で洗浄するだけでは混合液に由来する夾雑物が残存してしまう場合には、必要に応じて、反応沈殿物を、弱酸水や水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを含むアルカリ溶液で洗浄してもよい。
反応沈殿物の乾燥後に、適宜分級を行ってもよい。
金属複合水酸化物のBET比表面積は、10-40m/gが好ましく、14-30m/gがより好ましい。
金属複合水酸化物のBET比表面積は、反応槽内のpH値により調製することができる。
得られた金属複合水酸化物を酸化し(酸化工程)、金属複合酸化物であるMCCが得られる。
酸化温度は、最高保持温度を500-800℃とすることが好ましく、550-750℃とすることがより好ましい。
酸化時間は、1-10時間が好ましく、2-6時間がより好ましい。なお、酸化時間とは、昇温を開始してから最高保持温度に達し、降温を開始するまでの合計時間である。
酸化工程における単位時間あたりのガス流量は適切な範囲で調整されることが好ましい。酸化工程におけるガス流量は0.5-10.0L/分が好ましく、1.0-5.0L/分がさらに好ましい。
金属複合水酸化物のBET比表面積に対して、酸化工程で供給するガスの総流量(単位:m)は、下記の(A)を満たすことが好ましい。
(A) 0.08≦酸化工程で供給するガスの総流量(単位:m)/金属複合水酸化物のBET比表面積(単位:m/g)/≦0.12
本明細書における酸化工程で供給するガスの総流量とは、酸化工程において、昇温を開始してから最高保持温度に達し、降温を開始するまでに流れるガス流量の総量を意味する。上記ガスの総流量は、単位時間あたりのガス流量と酸化時間から算出することができる。
酸化温度、酸化時間、及びガス流量を上記の範囲に制御し、且つ上記の(A)を満たすような条件で、金属複合水酸化物を酸化することで、MCC中の炭酸イオン等を除去し、岩塩型構造が過剰に形成されない範囲で、金属複合酸化物を形成させることができる。そして、後の工程でリチウム化合物と混合し焼成した際に、カチオンミキシングが適切な範囲で制御されながら、層状構造が十分に発達するため、上記(2)及び(3)を満たすLiMOが製造できる。
最高保持温度に達する酸化工程の昇温速度は80℃/時間以上が好ましく、100℃/時間以上がより好ましく、120℃/時間以上が特に好ましい。
本明細書における最高保持温度とは、酸化工程又は後述の焼成工程(以下、総称して「加熱工程」ともいう。)における酸化装置又は焼成炉(以下、総称して「加熱装置」ともいう。)内雰囲気の保持温度の最高温度である。酸化又は焼成を複数段階行う場合、最高保持温度とは、加熱工程において、最も高い保持温度で酸化又は焼成を行った段階の最高温度を意味する。
本明細書における昇温速度は、酸化時に用いる装置において、昇温を開始した時間から最高保持温度に到達するまでの時間と、加熱装置内における昇温開始時の温度から最高保持温度までの温度差とから算出される。
酸化時のガスとしては、酸素又は空気(大気)を使用することができる。
上記の条件の制御に加えて、各種気体、例えば、窒素、アルゴン、二酸化炭素等の不活性ガス、空気、酸素等の酸化性ガス、またはそれらの混合ガスを反応槽内に供給し、得られる反応生成物の酸化状態を制御してもよい。
また、過酸化水素などの過酸化物、過マンガン酸塩などの過酸化物塩、過塩素酸塩、次亜塩素酸塩、硝酸、ハロゲン、オゾンなどの酸化剤を使用してもよい。
MCCの酸化後に、適宜分級を行ってもよい。
[LiMOを得る工程]
LiMOを得る工程は、MCCと、リチウム化合物と、を混合する混合工程と、得られた混合物を焼成する焼成工程と、を含む。
・混合工程
MCCと、リチウム化合物と、を混合する。
リチウム化合物は、炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、水酸化リチウム、水酸化リチウム水和物、酸化リチウム、塩化リチウム及びフッ化リチウムの少なくとも何れか一つを使用することができる。これらの中では、水酸化リチウム、水酸化リチウム水和物、及び炭酸リチウムの少なくとも一つが好ましい。
リチウム化合物とMCCとを、最終目的物の組成比を勘案して混合し、リチウム化合物とMCCとの混合物を得る。MCCに含まれる金属元素の合計量1に対するLiの量(モル比)は、0.90~1.10が好ましく、0.91~1.10がより好ましく、0.92~1.10がさらに好ましい。
リチウム化合物とMCCとを上記の割合で混合すると、MCCに対して十分量のリチウムイオンが存在し、得られるLiMOの層状構造内でリチウムイオンが不足する箇所が少なくなるため、上記(1)及び(3)を満たすLiMOが得られやすくなる。また、リチウム化合物とMCCとの混合割合を上記の範囲で調製することで、LiMOのD50、I/I、及び平均結晶子サイズの値を上述の範囲に調製することができる。
・焼成工程
得られた混合物を焼成する。混合物を焼成することにより、LiMOの結晶が成長する。焼成には、所望の組成に応じて乾燥空気、酸素雰囲気、不活性雰囲気等が用いられる。本実施形態においては酸素雰囲気で焼成することが好ましい。
焼成工程は、1回のみの焼成であってもよく、複数回の焼成段階を有していてもよい。
複数回の焼成段階を有する場合、最も高い温度で焼成する工程を本焼成と記載する。本焼成の前には、本焼成よりも低い温度で焼成する仮焼成を行ってもよい。また、本焼成の後には本焼成よりも低い温度で焼成する後焼成を行ってもよい。
本実施形態においてはまず仮焼成し、次に本焼成することが好ましい。また、仮焼成と本焼成は、ともに酸素雰囲気で焼成することが好ましい。
仮焼成の焼成温度は、例えば600~900℃であることが好ましく、610~850℃であることがより好ましく、620℃以上700℃未満であることがさらに好ましい。焼成温度が前記範囲の下限値以上であると、強固な結晶構造を有するLiMOを得ることができる。また、焼成温度が前記範囲の上限値以下であると、LiMOの粒子表面のリチウムイオンの揮発を低減できる。
本焼成の焼成温度は、例えば600~900℃であることが好ましく、650~850℃であることがより好ましく、700℃~820℃であることがさらに好ましい。焼成温度が前記範囲の下限値以上であると、強固な結晶構造を有するLiMOを得ることができる。また、焼成温度が前記範囲の上限値以下であると、カチオンミキシングが過剰に生じず、上記(1)及び(3)を満たすLiMOが得られやすくなる。
仮焼成と本焼成のそれぞれの保持時間は、1~50時間が好ましく、2~20時間がより好ましい。焼成における保持時間が前記範囲の上限値以下であると、リチウムイオンの揮発が抑制され、電池性能の低下が抑制される。焼成における保持時間が前記範囲の下限値以上であると、結晶の発達が促進され、電池性能の低下が抑制される。
本明細書における焼成温度とは、焼成炉内の雰囲気の温度であって、最高保持温度を意味する。
最高保持温度に達する焼成工程の昇温速度は80℃/時間以上が好ましく、100℃/時間以上がより好ましく、150℃/時間以上が特に好ましい。
上記焼成条件を調製することによって、LiMOのBET比表面積、D50、I/I、及び平均結晶子サイズの値を調製することができる。
・洗浄工程
本実施形態においては、焼成後の焼成物を純水やアルカリ性洗浄液などの洗浄液で洗浄することが好ましい。
アルカリ性洗浄液としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよび炭酸アンモニウムからなる群より選ばれる1種以上の無水物の水溶液並びに前記無水物の水和物の水溶液を挙げることができる。また、アルカリ性洗浄液として、アンモニアを使用することもできる。
洗浄工程において、洗浄液と焼成物とを接触させる方法としては、各洗浄液中に、焼成物を投入して撹拌する方法や、各洗浄液をシャワー水として、焼成物にかける方法、洗浄液中に、焼成物を投入して撹拌した後、各洗浄液から焼成物を分離し、次いで、各洗浄液をシャワー水として、分離後の焼成物にかける方法が挙げられる。
洗浄に用いる洗浄液の温度は、15℃以下が好ましく、10℃以下がより好ましく、8℃以下がさらに好ましい。洗浄液の温度を上記範囲に制御することで、洗浄時に焼成物の結晶構造中から洗浄液中へのリチウムイオンの過度な溶出が抑制できる。
洗浄後の焼成物は、適宜乾燥させてもよい。乾燥温度は、例えば、150-300℃が挙げられる。
以上の工程により、LiMOが得られる。
<リチウム二次電池用正極活物質>
本実施形態のCAMは、上述の方法で製造されたLiMOを含有する。本実施形態のCAMにおいて、CAMの総質量(100質量%)に対するLiMOの含有割合は、70-99質量%が好ましく、80-98質量%がより好ましい。
本実施形態において、CAMの総質量に対するLiMOの含有割合は、CAMを、SEM(例えば日本電子株式会社製JSM-5510)を用いて、加速電圧が20kVの電子線を照射してSEM観察を行うことにより求める。SEM写真の倍率は、SEM写真に対象となるCAMの粒子が200-400個存在するよう拡大倍率を調整する。一例として、拡大倍率は、1000-30000倍でもよい。
<リチウム二次電池>
本実施形態のLiMO含むCAMを用いる場合に好適なリチウム二次電池用正極について説明する。以下、リチウム二次電池用正極を正極と称することがある。
さらに、正極の用途として好適なリチウム二次電池について説明する。
本実施形態のCAMを用いる場合の好適なリチウム二次電池の一例は、正極及び負極、正極と負極との間に挟持されるセパレータ、正極と負極との間に配置される電解液を有する。
図3は、リチウム二次電池の一例を示す模式図である。例えば円筒型のリチウム二次電池10は、次のようにして製造する。
まず、図3の部分拡大図に示すように、帯状を呈する一対のセパレータ1、一端に正極リード21を有する帯状の正極2、及び一端に負極リード31を有する帯状の負極3を、セパレータ1、正極2、セパレータ1、負極3の順に積層し、巻回することにより電極群4とする。
正極2は、一例として、CAMを含む正極活物質層2aと、正極活物質層2aが一面に形成された正極集電体2bとを有する。このような正極2は、まずCAM、導電材及びバインダーを含む正極合剤を調製し、正極合剤を正極集電体2bの一面に担持させて正極活物質層2aを形成することで製造できる。
負極3は、一例として、不図示の負極活物質を含む負極合剤が負極集電体に担持されてなる電極、及び負極活物質単独からなる電極を挙げることができ、正極2と同様の方法で製造できる。
次いで、電池缶5に電極群4及び不図示のインシュレーターを収容した後、缶底を封止し、電極群4に電解液6を含浸させ、正極2と負極3との間に電解質を配置する。さらに、電池缶5の上部をトップインシュレーター7及び封口体8で封止することで、リチウム二次電池10を製造することができる。
電極群4の形状としては、例えば、電極群4を巻回の軸に対して垂直方向に切断したときの断面形状が、円、楕円、長方形又は角を丸めた長方形となるような柱状の形状を挙げることができる。
また、このような電極群4を有するリチウム二次電池の形状としては、国際電気標準会議(IEC)が定めた電池に対する規格であるIEC60086、又はJIS C 8500で定められる形状を採用することができる。例えば、円筒型又は角型などの形状を挙げることができる。
さらに、リチウム二次電池は、上記巻回型の構成に限らず、正極、セパレータ、負極、セパレータの積層構造を繰り返し重ねた積層型の構成であってもよい。積層型のリチウム二次電池としては、いわゆるコイン型電池、ボタン型電池、又はペーパー型(又はシート型)電池を例示することができる。
リチウム二次電池を構成する正極、セパレータ、負極及び電解液については、例えば、WO2022/113904A1の[0113]~[0140]に記載の構成、材料及び製造方法を用いることが出来る。
<全固体リチウム二次電池>
本実施形態のCAMは、全固体リチウム二次電池のCAMとして用いることができる。
図4は、全固体リチウム二次電池の一例を示す模式図である。図4に示す全固体リチウム二次電池1000は、正極110と、負極120と、固体電解質層130とを有する積層体100と、積層体100を収容する外装体200と、を有する。また、全固体リチウム二次電池1000は、集電体の両側にCAMと負極活物質とを配置したバイポーラ構造であってもよい。バイポーラ構造の具体例として、例えば、JP-A-2004-95400に記載される構造が挙げられる。
正極110は、正極活物質層111と正極集電体112とを有している。正極活物質層111は、上述したCAM及び固体電解質を含む。また、正極活物質層111は、導電材及びバインダーを含んでいてもよい。
負極120は、負極活物質層121と負極集電体122とを有している。負極活物質層121は、負極活物質を含む。また、負極活物質層121は、固体電解質及び導電材を含んでいてもよい。
積層体100は、正極集電体112に接続される外部端子113と、負極集電体122に接続される外部端子123と、を有していてもよい。その他、全固体リチウム二次電池1000は、正極110と負極120との間にセパレータを有していてもよい。
全固体リチウム二次電池1000は、さらに積層体100と外装体200とを絶縁する不図示のインシュレーター及び外装体200の開口部200aを封止する不図示の封止体を有する。
外装体200は、アルミニウム、ステンレス鋼又はニッケルメッキ鋼などの耐食性の高い金属材料を成形した容器を用いることができる。また、外装体200として、少なくとも一方の面に耐食加工を施したラミネートフィルムを袋状に加工した容器を用いることもできる。
全固体リチウム二次電池1000の形状としては、例えば、コイン型、ボタン型、ペーパー型(またはシート型)、円筒型、角型、又はラミネート型(パウチ型)などの形状を挙げることができる。
全固体リチウム二次電池1000は、一例として積層体100を1つ有する形態が図示されているが、本実施形態はこれに限らない。全固体リチウム二次電池1000は、積層体100を単位セルとし、外装体200の内部に複数の単位セル(積層体100)を封じた構成であってもよい。
全固体リチウム二次電池については、例えば、WO2022/113904A1の[0151]~[0181]に記載の構成、材料及び製造方法を用いることができる。
以上のような構成のリチウム二次電池において、上述のLiMOを用いているため、初回放電容量及びサイクル特性を向上させることができるCAMを提供することができる。
また、上述のLiMOをCAMとして用いているため、初回放電容量及びサイクル特性を向上させることができる正極を提供することができる。
また、上述のLiMOをCAMとして用いているため、初回放電容量及びサイクル特性が向上するリチウム二次電池を提供することができる。
本発明は、以下の[11]~[20]を包含する。
[11]層状構造を有し、前記(1)、及び(3)-1を満たし、前記Me席占有率が2.2-6.5%である、LiMO。
[12]前記組成式(I)は、0≦x≦0.1を満たす、[11]に記載のLiMO。
[13]前記D50が10-17μmである、[11]又は[12]に記載のLiMO。
[14]前記(4)-1を満たす、[11]~[13]のいずれか1つに記載のLiMO。
[15]前記平均結晶子サイズが90-150nmである、[11]~[14]のいずれか1つに記載のLiMO。
[16]BET比表面積が0.3-1.9m/gである、[11]~[15]のいずれか1つに記載のLiMO。
[17]前記(3)-3を満たす、[11]~[16]のいずれか1つに記載のLiMO。
[18][11]~[17]のいずれか1つに記載のLiMOを含有するCAM。
[19][18]に記載のCAMを含むリチウム二次電池用正極。
[20][19]に記載のリチウム二次電池用正極を含むリチウム二次電池。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
<各種パラメータの測定>
後述の方法で製造されるLiMOの結晶構造及び各種パラメータの測定は、上述の[結晶構造の確認方法]、[Me席占有率の測定方法]、[組成分析]、[D50の測定方法]、[I、I及びIの取得方法]、[I及びIの取得方法]及び[平均結晶子サイズの測定方法]で説明した方法等により測定した。
<初回放電容量、及び放電容量維持率の測定方法>
リチウム二次電池の初回放電容量、及び放電容量維持率は、上述の[初回放電容量、及び放電容量維持率の測定方法]で説明した方法により測定した。
<実施例1>
撹拌器及びオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を70℃(反応温度)に保持した。
硫酸ニッケル水溶液、硫酸マンガン水溶液、及び硫酸アルミニウム水溶液をNi:Mn:Alのモル比が93:3.5:3.5となる割合で混合して、混合原料液1を調製した。
窒素流通下、反応槽内に、撹拌下、混合原料液1及び錯化剤として硫酸アンモニウム水溶液を連続的に添加した。反応槽内の混合液のpHが10.7(測定温度:40℃)となるよう水酸化ナトリウム水溶液を適時滴下し、反応沈殿物1を得た。
反応沈殿物1の質量に対して、20倍の質量の5質量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いて、反応沈殿物1の洗浄を行った。洗浄後、遠心分離機で脱水し、水で洗浄、脱水、単離して、105℃で20時間乾燥することにより、Ni、Mn、及びAlを含む金属複合水酸化物1を得た。金属複合水酸化物1のBET比表面積は19.1m/gであった。
金属複合水酸化物1を表1に示す条件で酸化させ、金属複合酸化物であるMCC1を得た。なお、表1の「ガスの総流量/BET比表面積」は、金属複合水酸化物のBET比表面積に対する、酸化工程で供給するガスの総流量である。酸化時のガスは大気を用いた。
MCC1に含まれるNi、Mn及びAlの合計量1に対するLiの量(モル比)が1.05となる割合で水酸化リチウム一水和物を秤量した。MCC1と水酸化リチウム一水和物を混合して混合物1を得た。
次いで、得られた混合物1を、酸素雰囲気下、650℃で5時間仮焼成した。その後、酸素雰囲気下、750℃、5時間で本焼成し、粉末状の焼成物1を得た。
焼成物1と液温を5℃に調整した純水とを、全体量に対して焼成物1が0.5質量%となる割合で混合して作製したスラリーを20分間撹拌させた。その後、窒素雰囲気下、210℃で10時間乾燥することで、層状構造を有するLiMO1を得た。
<実施例2>
硫酸ニッケル水溶液、硫酸マンガン水溶液、及び硫酸アルミニウム水溶液をNi:Mn:Alのモル比が93.0:1.0:6.0となる割合で混合して、混合原料液2を調製した。
混合液2を用いた以外は実施例1と同様の方法により、Ni、Mn、及びAlを含む金属複合水酸化物2を得た。金属複合水酸化物2のBET比表面積は19.4m/gであった。
金属複合水酸化物2を表1に示す条件で酸化させ、金属複合酸化物2を得た。酸化時のガスは大気を用いた。
MCC2を用いた以外は実施例1と同様にして、層状構造を有するLiMO2を得た。
<実施例3>
硫酸ニッケル水溶液、硫酸マンガン水溶液、硫酸アルミニウム水溶液、及び硫酸コバルト水溶液をNi:Mn:Al:Coのモル比が91.2:3.4:3.4:2.0となる割合で混合し、混合原料液3を調製した。
混合原料液3を用いた以外は実施例1と同様の方法により、Ni、Mn、Al、及びCoを含む金属複合水酸化物3を得た。金属複合水酸化物3のBET比表面積は16.7m/gであった。
金属複合水酸化物3を表1で示す条件で酸化させ、金属複合酸化物であるMCC3を得た。酸化時のガスは大気を用いた。
MCC3を用いた以外は実施例1と同様にして、層状構造を有するLiMO3を得た。
<比較例1>
実施例1で得た金属複合水酸化物1を表1に示す条件で酸化させ、金属複合酸化物であるMCC4を得た。酸化時のガスは大気を用いた。
MCC4を用いて実施例1と同様の操作を行い、粉末状のLiMO4を得た。LiMO4は層状構造を有していた。
<比較例2>
反応槽内の混合液のpHが12.2(測定温度:40℃)となる条件で水酸化ナトリウム水溶液を適時滴下した以外は、実施例1と同様の方法で金属複合水酸化物5を得た。金属複合水酸化物5のBET比表面積は47.3m/gであった。
金属複合水酸化物5を表1に示す条件で酸化させ、金属複合酸化物であるMCC5を得た。酸化時のガスは大気を用いた。
MCC5を用いて実施例1と同様の操作を行い、粉末状のLiMO5を得た。LiMO5は層状構造を有していた。
<比較例3>
金属複合水酸化物2を酸化しなかった以外は実施例2と同様の操作を行い、粉末状のLiMO6を得た。LiMO6は層状構造を有していた。
<比較例4>
実施例1で得た金属複合水酸化物1を表1に示す条件で酸化させ、金属複合酸化物であるMCC7を得た。酸化時のガスは大気を用いた。
MCC7を用いて実施例1と同様の操作を行い、粉末状のLiMO7を得た。LiMO7は層状構造を有していた。
<比較例5>
硫酸ニッケル水溶液、硫酸マンガン水溶液、及び硫酸アルミニウム水溶液をNi:Mn:Alのモル比が93.0:6.0:1.0となる割合で混合し、混合原料液8を調製した。
窒素流通下、反応槽内に、撹拌下、混合原料液8及び錯化剤として硫酸アンモニウム水溶液を連続的に添加した。反応槽内の混合液のpHが10.9(測定温度:40℃)となるよう水酸化ナトリウム水溶液を適時滴下し、反応沈殿物8を得た。反応沈殿物8を用いた以外は実施例1と同様の方法により、金属複合水酸化物8を得た。金属複合水酸化物8のBET比表面積は13.1m/gであった。
金属複合水酸化物を表1に示す条件で酸化させ、金属複合酸化物であるMCC8を得た。酸化時のガスは大気を用いた。
MCC8を用いて実施例1と同様の操作を行い、粉末状のLiMO8を得た。LiMO8は層状構造を有していた。
実施例1~3、及び比較例1~5で得られたLiMO1~8の各種パラメータを表2に示す。得られたLiMO1~8をCAMとして用いて、リチウム二次電池を作製し、初回放電容量および放電容量維持率の測定を行った。結果を表2に示す。
Figure 0007454642000001
Figure 0007454642000002
実施例1~3は、上記(1)~(3)を満たし、初回放電容量が180mAh/g以上、及び放電容量維持率が80%以上であり、初回放電容量が高く、サイクル特性が良好であった。これは、特定の割合でカチオンミキシングを生じさせたことで、充電と放電を繰り返した際の体積変化が抑制されたことに加え、岩塩型構造に起因する抵抗の上昇が抑制されたためと考えられる。
比較例1は、Me席占有率が7.0%を超えており、初回放電容量が低く、サイクル特性も劣っていた。これはカチオンミキシングが過剰に進行し、抵抗が高くなったためと考えられる。
比較例2は、(I+I)/Iが0.70を超えており、サイクル特性が劣っていた。これは岩塩型構造の割合が多く、抵抗が高くなったためと考えられる。
比較例3は、Me席占有率が2.0%未満であり、サイクル特性が劣っていた。これはカチオンミキシングによる体積変化の抑制効果が小さかったためと考えられる。
比較例4は、上記(1)及び(2)を満たしていたが、(I+I)/Iが0.70を超えており、初回放電容量が低かった。これは岩塩型構造の割合が多く、抵抗が高くなったためと考えられる。
比較例5は、上記(1)及び(2)を満たしていたが、(I+I)/Iが0.45未満であり、初回放電容量が低く、サイクル特性が劣っていた。これは岩塩型構造の割合が低く、構造劣化が進行しやすくなったためと考えられる。
1…セパレータ、2…正極、2a:正極活物質層、2b:正極集電体、3…負極、4…電極群、5…電池缶、6…電解液、7…トップインシュレーター、8…封口体、10…リチウム二次電池、21…正極リード、31…負極リード、41,42,51,52…LiMO、100…積層体、110…正極、111…正極活物質層、112…正極集電体、113…外部端子、120…負極、121…負極活物質層、122…負極集電体、123…外部端子、130…固体電解質層、200…外装体、200a…開口部、1000…全固体リチウム二次電池

Claims (9)

  1. 層状構造を有し、下記(1)、(2)、及び(3)を満たすリチウム金属複合酸化物。
    (1)Liと、Niと、Mn及びAlからなる群より選ばれる1種以上の元素と、を含み、下記組成式(I)で表される。
    Li[Li(Ni(1-x-y)Co1-m]O・・・組成式(I)
    (組成式(I)中、MはMn、Fe、Cu、Ti、Mg、Ca、Al、Zn、Sn、Zr、B、Si、Nb、W、Ta、Ba、S及びPからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、組成式(I)は、-0.1≦m≦0.2、0≦x≦0.5、0<y≦0.7、及びx+y<1を満たす。)
    (2)リートベルト解析法によって求められる、層状岩塩型の結晶構造のLiサイトにおけるMe席占有率が2.0%以上、7.0%以下である。
    (3)0.45≦(I+I)/I≦0.70
    (Iは、CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、2θ=35.5±1°の範囲内の回折ピークの積分強度であり、Iは、2θ=38.0±1°の範囲内の2つの回折ピークのうち、低角度側の回折ピークの積分強度であり、Iは、高角度側の回折ピークの積分強度である。)
  2. 前記組成式(I)は、0≦x≦0.1を満たす、請求項1に記載のリチウム金属複合酸化物。
  3. レーザー回折散乱法により測定される体積基準の累積粒度分布曲線から得られるD50が、3μm以上20μm以下である、請求項1又は2に記載のリチウム金属複合酸化物。
  4. 下記(4)を満たす、請求項1又は2に記載のリチウム金属複合酸化物。
    (4) 0.8≦I/I≦1.8
    (Iは、CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、2θ=18.5±1°の範囲内の回折ピークの積分強度であり、Iは、2θ=44.5±1°の範囲内の回折ピークの積分強度である。)
  5. 前記粉末X線回折測定で得られる2θ=10°-90°の範囲のX線回折パターンをリートベルト解析して算出される平均結晶子サイズが80nm以上200nm以下である、請求項1又は2に記載のリチウム金属複合酸化物。
  6. BET比表面積が0.2m/g以上2.0m/g以下である、請求項1又は2に記載のリチウム金属複合酸化物。
  7. 請求項1又は2に記載のリチウム金属複合酸化物を含有するリチウム二次電池用正極活物質。
  8. 請求項7に記載のリチウム二次電池用正極活物質を含むリチウム二次電池用正極。
  9. 請求項8に記載のリチウム二次電池用正極を含むリチウム二次電池。
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