JP6969228B2 - 非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法 - Google Patents
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Description
このような要求を満たす非水系電解質二次電池として、リチウムイオン二次電池が知られ、そのリチウムイオン二次電池は、負極、正極、電解液などで構成され、負極および正極の活物質には、リチウムを脱離および挿入することが可能な材料が用いられている。
これまで主に提案されている材料としては、合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)や、コバルトよりも安価なニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO2)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)、マンガンを用いたリチウムマンガン複合酸化物(LiMn2O4)などを挙げることができる。
しかし、純粋にニッケルのみで合成したリチウムニッケル複合酸化物を正極材料に用いてリチウムイオン二次電池を作製した場合には、コバルト系に比ベサイクル特性が劣り、また、高温環境下で使用や保存により比較的電池性能を損ないやすいという欠点を有している。
しかし、このようにニッケルの一部を置換した材料においてもサイクル特性は十分ではなく、このサイクル特性向上のため置換量を増加させると容量などの電池特性が低下するため、さらなるサイクル特性向上方法が求められていた。
しかし、これらの方法では被覆処理時に活物質表面のリチウムが被覆後の固液分離液中に溶出、あるいは硝酸イオンと反応してリチウム欠乏層が生じ、電池特性が低下することが知られている。
本発明に係る非水系電解質二次電池用正極活物質は、一般式LiaNi1−x−yCoxMyO2(ただし、0.05≦x≦0.35、0≦y≦0.10、0.95≦a≦1.10、Mは、Mn、V、Mg、Mo、Nb、TiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表されるリチウムニッケル複合酸化物の一次粒子及び一次粒子が凝集して構成された二次粒子を含む非水系電解質二次電池用正極活物質であって、その一次粒子表面にリチウムアルミニウム化合物を有している。
このリチウムアルミニウム化合物は、リチウムイオン伝導性が高く、リチウムイオンの移動を促す効果がある。このため一次粒子の表面にその化合物を被覆させることで、電解液との界面でリチウムの伝導パスを形成することができ、充放電容量の低下が抑制される。また、リチウムアルミニウム化合物は完全に一次粒子の全表面を覆っている必要はなく、一部はリチウムニッケル複合酸化物が露出した島状に被覆されていたとしても、この充放電容量の低下を抑制する効果は得られる。
この測定に用いる水は、測定精度を高めるうえで、導電率が1μS/cm以下の純水を用いるのが好ましく、超純水を用いるのがさらに好ましい。またアルカリ成分の中和滴定に用いる酸は、特に限定されることはなく塩酸、硫酸、硝酸及び有機酸からなる群から選ばれる少なくとも1種であればよいが、特に塩酸を用いるのが好ましい。
平均粒径が8μm未満になると、電池の正極活物質として用いた際の正極における充填性が低下して、体積当たりの電池容量が低下することがある。一方、平均粒径が20μmを超えると、正極活物質と電池の電解液との接触面積が減少して、電池容量や出力特性の低下が生じることがある。したがって、本発明の正極活物質は、電池容量や出力特性を維持しつつ正極における充填性を高くするため、平均粒径を8〜20μmとすることが好ましく、8〜17μmとすることがより好ましい。
なお、平均粒径の測定は、レーザー回折散乱法により測定した体積基準の粒径から求めたものである。
本発明に係る非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法は、一般式LiaNi1―x−yCoxMyO2(ただし、0.05≦x≦0.35、0≦y≦0.10、0.95≦a≦1.10、Mは、Mn、V、Mg、Mo、Nb、TiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表されるリチウムニッケル複合酸化物粉末を製造する工程と、このリチウムニッケル複合酸化物粉末に、水溶性アルミニウム塩水溶液に水酸化リチウムを中和当量の1.2〜3.0倍添加して得られるアルミン酸リチウム(LiAlO2)水溶液を添加して粉末を湿らせ、その後乾燥して、一次粒子表面にリチウムアルミニウム化合物を被覆したリチウムニッケル複合酸化物粉末を得るアルミン酸リチウム被覆工程を備えている。以下、各工程の特徴を詳細に説明する。
[ニッケル化合物]
リチウムニッケル複合酸化物粉末の製造工程では、ニッケル化合物とリチウム化合物とを混合したリチウム混合物を、酸素雰囲気下などの酸化性雰囲気中において、720〜770℃の温度範囲で焼成して、少なくとも一般式LiaNi1―x−yCoxMyO2(ただし、0.05≦x≦0.35、0≦y≦0.10、0.95≦a≦1.10、Mは、Mn、V、Mg、Mo、Nb、TiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表され、一次粒子及び前記一次粒子が凝集して構成された二次粒子を含むリチウムニッケル複合酸化物の焼成粉末を製造する。
晶析法では、種々の条件でニッケル複合水酸化物が得られ、その晶析条件はとくに限定されないが、以下の条件で得られたものが好ましい。
なお、上記Mで表される元素は、ニッケル及びコバルトとともに共沈殿させてもよいが、晶析によって水酸化物を得た後、上記Mで表される元素を含む金属化合物で被覆するか、あるいは、その金属化合物を含む水溶液を含浸することによってニッケル複合水酸化物を得ることもできる。
したがって、焼成工程においてニッケル化合物として用いられるニッケル複合水酸化物を晶析法によって得る場合には、反応溶液が40〜60℃に維持され、かつ、反応溶液を液温25℃基準のpH値で10〜14に維持された状態で晶析することが好ましい。
このような高嵩密度のニッケルオキシ複合水酸化物は、焼成後の水洗処理後において、比表面積が小さいリチウムニッケル複合酸化物粒子を得やすくなるため、非水系電解質二次電池用正極活物質として用いられるリチウムニッケル複合酸化物の原料として好適なニッケルオキシ複合水酸化物となる。
また、酸化焙焼後のニッケル複合酸化物中にニッケル複合水酸化物等が残留していると、焼成時に水蒸気が発生して、リチウム化合物とニッケル複合酸化物の反応が阻害され、結晶性が低下するという問題が生じることがある。
また、酸化焙焼温度での保持時間は、1〜10時間とすることが好ましく、2〜6時間とすることがより好ましい。1時間未満では酸化物への転換が不完全となることがあり、10時間を越えるとニッケル複合酸化物の結晶性が高くなり過ぎることがある。
酸化焙焼の雰囲気は、酸化性雰囲気であればよいが、取扱い性やコストを考慮すると、大気雰囲気とすることが好ましい。
すなわち、硫酸根の含有量を0.1〜0.4質量%とすることで、焼成時における一次粒子の成長による二次粒子の収縮を適度なものとすることができるので、空隙率も容易に制御できる。
しかしながら、硫酸根の含有量が0.1質量%未満になると、結晶化の進行が速くなり過ぎ、一次粒子が成長して二次粒子の収縮が大きくなり、比表面積や空隙率が小さくなり過ぎる。一方、硫酸根の含有量が0.4質量%を超えると、一次粒子の成長が抑制されるため、比表面積や空隙率が大きくなり過ぎる。
したがって、ニッケル複合水酸化物の硫酸根(SO4 −2)の含有量を0.1〜0.4質量%とすることで、ニッケル複合水酸化物から得られるニッケルオキシ複合水酸化物、あるいはニッケル複合酸化物を原料として活物質を得た場合も同様の効果が得られる。
さらに、洗浄は、液温25℃基準でpHを11〜13に調整したアルカリ水溶液を用いて行うことが好ましい。アルカリ水溶液のpHが11未満になると、硫酸根の含有量を0.1〜0.4質量%まで低減できないことがある。アルカリ水溶液のpHが13を超えても硫酸根を低減する効果が向上しないばかりか、アルカリ水溶液中の陽イオンが不純物として残留する虞がある。
アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩の水溶液が好ましく用いられる。アルカリ水溶液での洗浄後は、水洗することが好ましい。
ニッケル化合物と混合されるリチウム化合物は、とくに限定されないが、リチウムの水酸化物、オキシ水酸化物、酸化物、炭酸塩、硝酸塩及びハロゲン化物からなる群から選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましい。このようなリチウム化合物を使用した場合には、焼成後に不純物が残留しないという利点が得られる。ニッケル化合物との反応性が良好なリチウムの水酸化物を用いることが、より好ましい。
したがって、ニッケル化合物中のニッケルとその他の金属元素の合計量に対して、リチウム化合物中のリチウム量がモル比で0.95〜1.10になるように調整することが好ましい。
ニッケル化合物とリチウム化合物を混合する装置や方法は、両者を均一に混合することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、Vブレンダー等の乾式混合機又は混合造粒装置等を使用することができる。
ニッケル化合物とリチウム化合物を混合したリチウム混合物は、酸化性雰囲気中において720〜770℃の温度範囲、好ましくは730〜760℃の温度範囲で焼成される。
500℃を超えるような温度で焼成すれば、リチウムニッケル複合酸化物が生成されるものの、700℃未満ではその結晶が未発達で構造的に不安定となる。
このようなリチウムニッケル複合酸化物を正極活物質として使用すると、充放電による相転移などにより容易に正極活物質の結晶構造が破壊されてしまう。また、一次粒子の成長も不十分となり、比表面積や空隙率が大きくなり過ぎることがある。
さらに、複合酸化物粒子が焼結を起こし、粗大な複合酸化物粒子が形成されてしまい、リチウムニッケル複合酸化物の平均粒径が大きくなり過ぎることがある。さらに、一次粒子が成長して、比表面積や空隙率が小さくなり過ぎることがある。
したがって、リチウム混合物は、焼成温度が720〜770℃の温度範囲、好ましくは730〜760℃の温度範囲で焼成する。
さらに、リチウム化合物中の結晶水などを取り除くことができ、さらに、リチウムニッケル複合酸化物の結晶成長が進む温度領域で均一に反応させるため、400〜600℃の温度で1〜5時間、続いて720〜770℃の温度で3時間以上の2段階で焼成することが特に好ましい。
酸素濃度18容量%以上、すなわち、大気雰囲気より酸素含有量が多い雰囲気で焼成すれば、リチウム化合物とニッケル化合物との反応性を上げることができる。反応性をさらに上げて、結晶性に優れたリチウムニッケル複合酸化物を得るために、酸素濃度90容量%以上の混合ガス雰囲気とすることがより好ましく、酸素雰囲気とすることがさらに好ましい。
しかし、前記焼成粉末を得る方法は、特に限定されない。例えば、所望の金属元素を含有する水溶液を全て混合した液を噴霧熱分解処理する方法、及びボールミルなど機械粉砕により所望の金属元素の化合物を全て粉砕混合した後焼成する方法が挙げられる。しかし、比表面積が小さく熱安定性が良好な正極活物質を得るためには、上述した方法でリチウムニッケル複合酸化物の焼成粉末を得ることが好ましい。
本発明に係る非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法では、上記方法により得られたリチウムニッケル複合酸化物の焼成粉末に、アルミン酸リチウム水溶液を添加して粉末を湿らせた後、乾燥させることで、リチウムニッケル複合酸化物の焼成粉末の一次粒子表面にリチウムアルミニウム化合物を被覆させる。
アルミン酸リチウム水溶液は、水溶性アルミニウム塩を水に溶解させて水酸化アルミニウムを析出させた後、水酸化リチウムを添加して水酸化アルミニウムを溶解させて作製する。
上記水溶性アルミニウム塩としては、特に限定はされないが、残留するアニオンによる悪影響が少ない硫酸アルミニウムが好ましい。なお、アルミニウム原料として水酸化アルミニウムを用い、水酸化アルミニウムスラリーに水酸化リチウムを添加する方法も可能だが、結晶化した水酸化アルミニウムは、一般的に結晶性が高く水に溶解しにくい。よって、水溶性アルミニウム塩水溶液を出発原料とし、結晶性の低い水酸化アルミニウムを析出させた後、そのまま水酸化リチウムを添加して溶解させる方法が好ましい。
なお、水酸化リチウムの添加はその水溶液を添加するのが好ましく、析出した水酸化アルミニウムを溶解させるために、徐々に添加するのがより好ましい。
作製したアルミン酸リチウム水溶液は、リチウムニッケル複合酸化物の焼成粉末に添加して焼成粉末を湿らせる。その方法は特に限定されないが、リチウムニッケル複合酸化物の焼成粉末に均一に水酸化リチウム水溶液を湿らせるために、リチウムニッケル複合酸化物の焼成粉末を流動させながら、アルミン酸リチウム水溶液を噴霧する方法が好ましい。
上記に説明したとおり、リチウムニッケル複合酸化物の焼成粉末は、一次粒子及び一次粒子が凝集して構成された二次粒子である。この二次粒子は電解液が内部に浸透可能であり、二次粒子内部の空隙に露出している一次粒子や、一次粒子同士の結合が不完全な一次粒子の粒界であっても電解液との接触が可能である。添加するアルミン酸リチウムは水溶液であるので、電解液と同じく二次粒子の内部に浸透可能であり、二次粒子内部の空隙に露出している一次粒子や、結合が不完全な一次粒子の粒界にも浸透し、乾燥の後、リチウムアルミニウム化合物を被覆することができる。
アルミン酸リチウム水溶液を添加して湿らせたリチウムニッケル複合酸化物の焼成粉末を乾燥することで、一次粒子表面にリチウムアルミニウム化合物が被覆されたリチウムニッケル複合酸化物粉末である正極活物質が得られる。
乾燥温度は80〜300℃とするのが好ましい。
乾燥時間は水分率が0.5質量%以下となれば特に制限はないが、1〜48時間とするのが好ましい。
また乾燥時には、雰囲気を少なくとも減圧雰囲気とし、より好ましくは真空で行うのが好ましい。
上記のようにして得られた、表面にアルミン酸リチウムが被覆されている一般式LiaNi1−x−yCoxMyO2(ただし、0.05≦x≦0.35、0≦y≦0.10、0.95≦a≦1.10、Mは、Mn、V、Mg、Mo、Nb、TiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表されるリチウムニッケル複合酸化物粉末は、リチウム共存下で被覆処理が行われているため表面にリチウム欠乏層が生成せず、被覆前後における放電容量変化が3%以内となり、非水系電解質二次電池用正極活物質として好ましい。
本発明に係る非水系電解質二次電池は、一般の非水系電解質二次電池と同様に、正極、負極、セパレータ、および非水電解液から構成される。以下、非水系電解質二次電池の実施形態について、各構成要素、および電池の形状と構成について詳しく説明する。
正極を形成する正極合材及びそれを構成する各材料について説明する。
本発明の粉末状の正極活物質と、導電材、結着剤とを混合し、さらに必要に応じて活性炭、粘度調整などの目的の溶剤を添加し、これを混練して正極合材ペーストを作製する。正極合材中のそれぞれの材料の混合比も、リチウム二次電池の性能を決定する重要な要素となる。
正極合材中の各材料の混合比は、特に限定されないが、一般のリチウム二次電池の正極と同様、溶剤を除いた正極合材の固形分の全質量100質量%に対して、それぞれ、正極活物質を60〜95質量%、導電材を1〜20質量%、結着剤を1〜20質量%含有することが望ましい。
また、結着剤(バインダー)は、活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンプロピレンジエンゴム、フッ素ゴムなどの含フッ素樹脂、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸、ポリプロピレン、ポリエチレンなどを用いることができる。
結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素ゴムなどの含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂などを用いることができる。必要に応じ、正極活物質、導電材、活性炭を分散させ、結着剤を溶解する溶剤を正極合材に添加する。溶剤としては、具体的にはN−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。また、正極合材には電気二重層容量を増加させるために活性炭を添加することができる。
負極には、金属リチウム、リチウム合金など、また、リチウムイオンを吸蔵・脱離できる負極活物質に結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅などの金属箔集電体の表面に塗布、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用する。
正極と負極との間にはセパレータを挟み込んで配置する。セパレータは、正極と負極とを分離し電解質を保持するものであり、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの薄い膜で、微少な穴を多数有する膜を用いることができる。
非水系電解液は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル化合物、エチルメチルスルホン、ブタンスルトンなどの硫黄化合物、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチルなどのリン化合物などから選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
支持塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiN(CF3SO2)2など、及びそれらの複合塩を用いることができる。
さらに、非水系電解液は、ラジカル補足剤、界面活性剤及び難燃剤などを含んでいてもよい。
以上説明してきた正極、負極、セパレータ及び非水系電解液で構成される本発明に係るリチウム二次電池の形状は、円筒型、積層型など、種々のものとすることができる。
いずれの形状を採る場合であっても、正極及び負極にセパレータを介して積層させて電極体とし、この電極体に上記非水電解液を含浸させる。正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、並びに負極集電体と外部に通ずる負極端子との間に集電用リードなどを用いて接続する。以上の構成のものを電池ケースに密閉して電池を完成させることができる。
得られた正極活物質を硝酸で溶解した後、ICP発光分光分析装置(株式会社島津製作所製、ICPS−8100)で測定した。
得られた正極活物質5.0gに超純水を50mlまで添加し攪拌した後、1mol/リットルの塩酸で滴定し第二中和点まで測定した。塩酸で中和されたアルカリ分を正極活物質の表面のリチウムとして、滴定結果から正極活物質に対するリチウムの質量比を求め、この値を表面リチウム量とした。
<評価用コイン電池の作製>
得られた正極活物質70質量%に、アセチレンブラック20質量%及びPTFE10質量%を混合し、ここから150mgを取り出してペレットを作製し、正極3とした。負極1としてリチウム金属を用い、電解液として、1MのLiClO4を支持塩とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合溶液(富山薬品工業製)を用い、ポリエチレン製のセパレータ2に含浸した。以上の各電池構成物を使用して露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス中で、図1に示すような2032型のコイン型電池10を作製した。図1において、10は2032型コイン電池、1はリチウム金属負極、2はセパレータ、3は正極、4はガスケット、5は負極缶、6は正極缶、7は集電体である。
製造したコイン型電池10の性能を、初期放電容量、サイクル容量維持率、レート特性に基づいて評価した。
初期放電容量は、コイン型電池10を製作してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cm2としてカットオフ電圧4.3Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの放電容量を測定し、初期放電容量とした。
この水溶液をアンモニア水(和光純薬工業株式会社製)および水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業株式会社製)と同時に、50℃に保温された水をはった吐出口付攪拌反応槽中に滴下した。ここで、pHを11.5に保持し、滞留時間が11時間となるよう制御した反応晶析法により、1次粒子が凝集した球状ニッケル複合水酸化物を製造した。
得られた混合物を、電気炉を用いて酸素濃度30%以上の雰囲気中で500℃で3時間仮焼した後、760℃で20時間、本焼成した。室温まで炉内で冷却した後に解砕処理を行い、一次粒子が凝集した組成式Li1.03Ni0.82Co0.15Al0.03O2で表される母材を得た。
その得られたアルミン酸リチウム水溶液を母材9.7gに噴霧して母材を湿らせた後、190℃で12h真空乾燥することで、粒子表面がアルミン酸リチウムで被覆された組成式Li1.02Ni0.81Co0.15Al0.04O2で表される正極活物質を得た。
実施例1と同様にして作製した硫酸アルミニウム水溶液中に、9.7gの母材であるLi1.03Ni0.82Co0.15Al0.03O2を分散させ、水酸化リチウムを添加することで母材表面に水酸化アルミニウムを析出させた。
得られた水酸化アルミニウム被覆母材を固液分離し、純水で洗浄した後に190℃で12h真空乾燥させた。その後、酸素雰囲気中にて500℃で2h熱処理を加えることで、粒子表面がアルミン酸リチウムで被覆された組成式Li0.99Ni0.82Co0.15Al0.03O2で表される正極活物質を得た。
硝酸アルミニウム九水和物0.39gを30mlの水に溶解して作製した硝酸アルミニウム水溶液を、9.7gのLi1.03Ni0.82Co0.15Al0.03O2に噴霧し、母材表面に水酸化アルミニウムを析出させた。その後、酸素雰囲気中にて500℃で2h熱処理を加えることで、粒子表面がアルミン酸リチウムで被覆された組成式Li1.02Ni0.81Co0.15Al0.04O2で表される正極活物質を得た。
アルミン酸リチウム粉末(和光純薬工業株式会社製)0.07gを、7.4gのLi1.03Ni0.82Co0.15Al0.03O2の前駆体であるNi0.82Co0.15Al0.03O1+αおよび水酸化リチウム2.5gと混合し、酸素気流中(酸素:100容量%)にて750℃で8時間焼成し、冷却した後に解砕して、組成式Li1.03Ni0.81Co0.15Al0.04O2で表される正極活物質を得た。
酸化アルミニウム(和光純薬工業株式会社製)0.10gを、9.7gのLi1.03Ni0.82Co0.15Al0.03O2と混合し、酸素気流中(酸素:100容量%)にて750℃で8時間焼成し、冷却した後に解砕して、組成式Li1.03Ni0.81Co0.15Al0.04O2で表される正極活物質を得た。
母材をそのまま正極活物質として用いた。
また、この正極活物質を用いてコイン型電池を作製し、初期放電容量とサイクル容量維持率も測定した。これらの結果を表1に示す。
比較例1、2については表面リチウム量が低く、アルミン酸リチウム被覆工程で母材表面のリチウムが溶出しリチウム欠乏層を生じたため、初期放電容量が低下したと考えられる。また、比較例3については、焼成時にアルミニウムが母材中に拡散し、表面にアルミン酸リチウム被覆層が形成されなかったため、サイクル特性向上効果が見られなかった。また、比較例4については、母材に酸化アルミニウムのみを混合したので、アルミニウムが母相中に拡散して表面リチウムを消費してしまい、初期放電容量とサイクル特性ともに低下した。
2 セパレータ(電解液含浸)
3 正極(評価用電極)
4 ガスケット
5 負極缶
6 正極缶
7 集電体
10 2032型コイン型電池
Claims (4)
- リチウムニッケル複合酸化物の焼成粉末を作製する工程と、該リチウムニッケル複合酸化物の焼成粉末にアルミン酸リチウム水溶液を添加して前記焼成粉末を湿らせた後、乾燥させる工程とを備えた正極活物質の製造方法であって、
前記リチウムニッケル複合酸化物が、一般式LiaNi1−x−yCoxMyO2(ただし、0.05≦x≦0.35、0≦y≦0.10、0.95≦a≦1.10、Mは、Mn、V、Mg、Mo、Nb、TiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表され、
前記アルミン酸リチウム水溶液が、水溶性アルミニウム塩水溶液に水酸化リチウムを中和当量の1.2〜3.0倍添加して作製されることを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。 - 前記水溶性アルミニウム塩水溶液が、硫酸アルミニウムであることを特徴とする請求項1に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 表面にリチウムアルミニウム化合物が被覆されている一般式LiaNi1−x−yCoxMyO2(ただし、0.05≦x≦0.35、0≦y≦0.10、0.95≦a≦1.10、Mは、Mn、V、Mg、Mo、Nb、TiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表されるリチウムニッケル複合酸化物粉末である正極活物質であって、
前記リチウムニッケル複合酸化物粉末の粒子が、一次粒子及び一次粒子が凝集して構成された二次粒子を含み、
前記一次粒子の表面にリチウムアルミニウム化合物が被覆され、
前記正極活物質の表面リチウム量で換算した前記リチウムアルミニウム化合物のリチウム量が、正極活物質全量に対して0.12質量%以上であることを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質。 - 前記リチウムアルミニウム化合物が、LiAlO2、LiAl2(OH)7・xH2O、LiH(AlO2)2・5H2Oから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質。
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