JP2023181253A - 包装用紙の製造方法 - Google Patents

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Misaki Yoshizawa
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Abstract

【課題】プラスチックの使用量を低減し、かつ良好なヒートシール性と耐水性を有する包装用紙を提供すること。【解決手段】本発明は、紙基材の少なくとも一方の面にアイオノマー、エチレン系コポリマー又は熱可塑性ウレタンのいずれか1種以上を含むヒートシール層を有する包装用紙の製造方法であって、前記紙基材の抄紙工程から連続して、前記紙基材にヒートシール層をオンマシンで塗工する工程を含むことを特徴とする製造方法に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、プラスチックの使用量を低減し、かつ良好なヒートシール性と耐水性を有する包装用紙の製造方法に関する。
近年、プラスチックゴミ問題が深刻化している。世界のプラスチックの生産量は4億トン/年を超えると言われ、その中でも包装容器セクターでのプラスチック生産量が多く、プラスチックゴミの原因になっている。プラスチックは半永久的に分解せず、そのゴミは自然環境下でマイクロプラスチック化し、生態系に深刻な悪影響を与えている。包装容器に使用されるプラスチックとしては、飲料のボトル等に使用されるポリエチレンテレフタレート(PET)、レジ袋、容器のラミネートに使用されるポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)が最も多く使用されている。特に海洋の汚染は著しく、そのプラスチックゴミは回収不可能と言われている。今後、プラスチックの使用を低減することが地球環境にとって必要である。
対策手段として、プラスチックを紙に代替することが提案されている。しかしながら、プラスチックを紙に代替する場合においても、紙を袋や容器に加工する際には、ヒートシール剤として、ポリエチレンやポリプロピレンが多量にラミネートされて使用される。これらプラスチックのラミネート量は、商品コンセプトによって様々だが、概ね20~50g/mであり、300g/mと多量になる場合もある。従って、プラスチックを紙に代替した包装容器においても、依然としてプラスチックの使用量は十分に低減されないという問題があり、早急に、直接的にプラスチックの使用を低減する手段が必要である。またこれらのラミネート紙は、ヒートシール性のみならず、防湿性、耐水性、耐油性といったバリア性を有しており、プラスチックの使用量を低減した包装用紙にも、用途によって求められる品質レベルは異なるが、従来のラミネート紙と同等程度のバリア性が求められる。
このように、ラミネート紙と比べて、プラスチックの使用量を低減し、かつヒートシール性とバリア性を兼ね備えた包装用紙の開発が課題としてある。
このような包装用紙として、紙基材の少なくとも一方の面に少なくとも1層のヒートシール層を有する包装用紙であって、前記ヒートシール層がアイオノマーを含み、前記ヒートシール層の乾燥塗工量が全層で2~10g/mであることでプラスチックの使用量を低減し、ヒートシール性を付与する提案がある(特許文献1を参照)。38℃及び90%相対湿度の所謂熱帯性条件下においてASTMF1249基準に従って測定される、最大で150g/m/24時の水蒸気透過率を有する、熱封止性の水蒸気バリア紙を製造する方法であって、少なくとも1種の熱可塑性フィルム形成性ポリマーを含む少なくとも一つの被覆層を製紙装置上でプレコート層にインラインで適用し、前記プレコート層を繊維基材にインラインで適用した後、前記プレコート層に前記被覆層を適用することで防湿性とヒートシール性を付与する提案がある(特許文献2を参照)。
しかし、特許文献1に記載の包装用紙では、プラスチック低減効果、ヒートシール性はあるものの、バリア性が不十分であり、従来のラミネート紙と同等程度のバリア性を満たさないおそれがある。特許文献2に記載の熱封止性バリア紙の製造方法では、防湿性を付与させる効果はあるものの、熱可塑性樹脂としてポリ塩化ビニリデンやスチレン・アクリル共重合物を使用しているため、ヒートシール性が不十分であり、袋やカップへの成型時にヒートシール部が接着しない、または容器の使用前や使用中にシール部が剥離するおそれがある。
特許第6580291号公報 特許第6681891号公報
本発明の目的は、プラスチックの使用量を低減し、かつ良好なヒートシール性と耐水性、材破性といったバリア性を有する包装用紙の製造方法を提供することにある。
本発明においては、従来のプラスチックラミネート紙(以降、「ポリラミ紙」と略称する場合がある)に含まれるプラスチックの使用量を低減するために、アイオノマー、エチレン系コポリマー又は熱可塑性ウレタンの少なくとも1種以上を使用する。すなわち、本発明による包装用紙の製造方法は、紙基材の少なくとも一方の面にアイオノマー、エチレン系コポリマー又は熱可塑性ウレタンの少なくとも1種以上を含むヒートシール層を有する包装用紙の製造方法であって、前記紙基材の抄紙工程から連続して、前記紙基材にヒートシール層をオンマシンで塗工する工程を含むことを特徴とする。ヒートシール層に含まれるプラスチックの使用量を低減し、かつ良好なヒートシール性と耐水性を有する包装用紙を得ることができる。
前記紙基材とヒートシール層の間にアンダー層を有することが好ましい。このような構成とすることで、アンダー層の目止め効果によってヒートシール層用塗工液が紙基材に浸透することを防ぐことができるので、より良好な耐水性を有する包装用紙を得ることができる。
本発明においては、前記アンダー層として、少なくとも顔料とバインダーを含むことが好ましい。このような構成とすることで、アンダー層の目止め効果によって、より良好な耐水性を有する包装用紙を得ることができる。
本発明においては、前記アンダー層が、顔料100質量部に対してバインダーを5~200質量部配合することが好ましい。このような構成とすることで、アンダー層がより高い目止め効果を得られ、より良好な耐水性を有する包装用紙を得ることができる。さらに、アンダー層の強度が上がり、ヒートシール強度に優れた包装用紙を得ることができる。本発明においては、前記アンダー層に含まれるバインダーにスチレンブタジエン共重合ラテックスを含み、前記スチレンブタジエン共重合ラテックスの粒子径が70nm以上であることが好ましい。このような構成とすることで、ヒートシール層との密着性に優れた包装用紙を得ることができる。
本発明は、紙基材の少なくとも一方の面にアイオノマー、エチレン系コポリマー又は熱可塑性ウレタンのいずれか1種以上を含むヒートシール層、および
前記紙基材とヒートシール層の間にアンダー層を有する包装用紙であって、
前記アンダー層が、少なくとも顔料とバインダーを含み、
前記アンダー層に含まれるバインダーとして、粒子径が70nm以上であるスチレンブタジエン共重合ラテックスを含み、コッブ吸水度が3.0g/m以下である前記包装用紙に関する。本発明の包装用紙は、ヒートシール層に含まれるプラスチックの使用量を低減し、かつ良好なヒートシール性と耐水性を有する。当該包装用紙は、上記のように前記紙基材にヒートシール層をオンマシンで塗工する工程を含むことで得ることができる。
本発明により、プラスチックの使用量を低減し、かつ良好なヒートシール性と耐水性を有する包装用紙を製造することが可能である。本発明の包装用紙を用いた容器製品であれば、仮に自然界にゴミとして不適切に放出された場合であっても、自然環境に与えるプラスチックゴミとしての悪影響を小さくすることが可能であり、プラスチックゴミ問題の解決の一助となる。なお、本発明における包装用紙は、例えば、食品包装における一次袋や二次袋、アイスクリーム等の食糧カップ、カップ容器のフタ材、コーヒー等の飲料用コップ、ホットスナック等の食糧容器及びトレイ、箱、ケース、器、封筒等の包装容器全般に加工可能である。
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
本実施形態において、ヒートシール層は、アイオノマーとエチレン系コポリマーと熱可塑性ウレタンのいずれか1種以上を含むことを特徴とする。ここでアイオノマーとは、金属イオンによる凝集力を利用し高分子を凝集体とした合成樹脂のことを指し、樹脂と金属カチオンが分子間結合して凝集体となるものすべてを含む。例えば、エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩、エチレン・アクリル酸共重合物の金属塩、エチレン・ウレタン系共重合物の金属塩、エチレン・フッ素系高分子共重合物の金属塩等である。本発明においては、アイオノマーの中でもエチレン・アクリル酸またはエチレン・メタクリル酸の共重合物の金属塩が好ましい。乾燥塗工量が比較的少なくとも十分なヒートシール強度を付与できる。また、エチレン系コポリマーは、エチレン・アクリル酸共重合物、エチレン・メタクリル酸共重合物、エチレン・アクリル酸エステル共重合物、エチレン・メタクリル酸エステル共重合物、エチレン酢酸ビニル共重合物のいずれかであることが好ましい。アンダー層との密着性が特に優れる。熱可塑性ウレタンとしては、特に制限はないが、エステル系、エステル・エーテル系、カーボネート系、芳香族イソシアネート系のいずれかの熱可塑性ウレタンであることが好ましい。アンダー層との密着性が特に優れる。本発明の包装用紙においては、ヒートシール性能に影響を及ぼさない限り、これら以外の樹脂を含んでも良く、さらに複数の樹脂を混合しても良い。
本発明の本実施形態においては、紙基材の少なくとも一方の面に、アイオノマーとエチレン系コポリマーと熱可塑性ウレタンのいずれか1種以上を含む水系エマルジョンを含有するヒートシール層用塗工液を塗工し、乾燥することでヒートシール層を設けることができる。ヒートシール層に用いるアイオノマーとエチレン系コポリマーと熱可塑性ウレタンのいずれか1種以上を含む樹脂が水系エマルジョンであることが好ましい。水系エマルジョンを用いることにより、塗工量を比較的低くコントロールすることが可能であり、更にVOC排出が無くなり自然環境に対する負荷を小さくすることができる。ヒートシール層の塗工量は、紙基材の片面あたり、固形分換算で1~10g/mであり、好ましくは2~6g/mである。1g/m未満の場合は、ヒートシール強度において十分な品質を得られない。逆に10g/mを超える場合は、十分なヒートシール強度は得られるが、プラスチックの使用量も増えるためプラスチック削減効果に乏しくなる。なお、本発明の包装用紙において、ヒートシール層は、紙基材の表面の一部分のみに設けられているのではなく、全面に設けられていることが通常である。すなわち、ヒートシール層は、例えば網状、島状、線状など、ヒートシールによる接着に必要な部分にのみ設けられているのではなく、紙基材の表面の全面を覆うように設けられていると良い。
ヒートシール層用塗工液には、アイオノマーとエチレン系コポリマーと熱可塑性ウレタンのいずれか1種以上を含む水系エマルジョンの他に、各種助剤を添加してもよい。例えば、粘度調整剤、消泡剤、界面活性剤やアルコールなどのレベリング剤、着色顔料、着色染料などである。しかしながら、これらの助剤の添加は、ヒートシール強度の低下を招きやすいことから、添加する場合には少量であることが好ましい。本実施形態においては、ヒートシール層用塗工液がアイオノマーとエチレン系コポリマーと熱可塑性ウレタンのいずれか1種以上を含む水系エマルジョンのみからなることが好ましい。
ヒートシール層用塗工液を塗工する工程としては、紙基材の抄紙工程から連続して、紙基材にヒートシール層をオンマシンで塗工する工程を含むことを特徴とする。オンマシンで塗工する工程とは、抄紙機で抄造、乾燥された紙基材に、抄紙機上で連続して塗工する工程のことを指す。紙基材にヒートシール層をオンマシンで塗工することにより、抄紙工程後の熱が残った紙基材にヒートシール層用塗工液を塗工し乾燥させることになるので、ヒートシール層用塗工液に対して乾燥負荷がかかりやすくなる。乾燥負荷がかかることで、ヒートシール層用塗工液が充分に乾燥され、アイオノマーとエチレン系コポリマーと熱可塑性ウレタンのいずれか1種以上を含む水系エマルジョンが充分に溶解、造膜し欠点の少ない優れた樹脂膜を形成する。このような樹脂膜は、透気度が向上し包装用紙の紙面から侵入する空気を遮断しやすくなる。加えて水や油を通しにくくなるので、良好な耐水性を有する包装用紙を得ることができる。また、抄造し乾燥直後の紙基材は、紙料スラリーに含まれる撥水性の物質が紙基材表面にブリードしていない。この状態のまま紙基材にヒートシール層をオンマシンで塗工することで、ヒートシール層用塗工液が紙基材表面に均一に塗工されやすく、ハジキ状ピンホールの少ない樹脂膜を形成することができる。紙基材にヒートシール層をオフマシンで塗工した場合、紙料スラリーに含まれる撥水性の物質が、時間とともに紙基材表面にブリードしてしまい、ヒートシール層用塗工液が紙基材表面の撥水性の物質上ではじかれ、ハジキ状ピンホールが発生し、耐水性に劣る包装用紙となる。
さらに、前記紙基材とヒートシール層の間にアンダー層を設けても良い。この場合、紙基材とヒートシール層の間にアンダー層を有する包装用紙を製造する場合、紙基材の抄紙工程から連続して、紙基材にアンダー層をオンマシンで塗工し、その後に連続して、アンダー層を設けた紙基材にヒートシール層をオンマシンで塗工することが好ましい。アンダー層用塗工液を塗工し乾燥させた直後のアンダー層は、アンダー層用塗工液に含まれる撥水性の物質、例えば顔料を分散させる分散剤や、バインダーに含まれる乳化剤などがアンダー層表面にブリードしていない。この状態のままアンダー層を有する紙基材にヒートシール層をオンマシンで塗工することで、ヒートシール層用塗工液がアンダー層表面に均一に塗工されやすく、ハジキ状ピンホールの少ない樹脂膜を形成することができる。一方、アンダー層を設けた紙基材にヒートシール層をオフマシンで塗工した場合、アンダー層用塗工液に含まれる撥水性の物質が、時間とともにアンダー層表面にブリードしてしまい、ヒートシール層用塗工液がアンダー層表面の撥水性の物質上ではじかれ、ハジキ状ピンホールが発生し、耐水性に劣る包装用紙となる。ヒートシール層用塗工液を塗工する方式としては、特に限定するものではなく、一般に使用されている塗工装置が使用できる。例えばエアーナイフコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、チャンプレックスコーター、メータリングブレード式のサイズプレスコーター、ショートドウェルコーター、スプレーコーター、ゲートロールコーター、リップコーター等の公知の各種塗工装置を用いることができる。
本発明は、また、ヒートシール性と耐水性に優れた包装用紙に関する。一実施形態においては、紙基材の少なくとも一方の面にアイオノマー、エチレン系コポリマー又は熱可塑性ウレタンのいずれか1種以上を含むヒートシール層、および前記紙基材とヒートシール層の間にアンダー層を有する包装用紙であって、前記アンダー層が、少なくとも顔料とバインダーを含み、前記アンダー層に含まれるバインダーとして、粒子径が70nm以上であるスチレンブタジエン共重合ラテックスを含み、コッブ吸水度が3.0g/m以下である前記包装用紙に関する。当該包装用紙であれば、ヒートシール層に含まれるプラスチックの使用量を低減し、かつ良好なヒートシール性と耐水性を有する。当該包装用紙は、例えば、上記のように前記紙基材にヒートシール層をオンマシンで塗工する工程を含む製造方法により得ることができる。
本実施形態においては、前記ヒートシール層が2層以上で形成されていても良い。2層以上とすることにより、包装用紙の透気度を高くすることができ、さらに耐水性、耐油性、防湿性を付与することができ、ポリラミ紙と同様レベルのバリア性を得ることができるからである。ヒートシール層が2層以上の場合、紙基材に最も近い最下層のヒートシール層の塗工量が、他のヒートシール層の合計塗工量よりも多い方が好ましい。包装用紙の透気度をさらに改善することができ、耐水性、耐油性、防湿性が更に向上するからである。ヒートシール層が2層以上である場合、ヒートシール層の全塗工量は、紙基材の片面あたり、固形分換算で1~15g/mであり、好ましくは2~10g/mであってよい。
本実施形態においては、ヒートシール層を2層以上塗工する工程としては、紙基材の抄紙工程から連続して、紙基材に1層目のヒートシール層をオンマシンで塗工する工程を含み、さらに連続して2層目以降のヒートシール層をオンマシンで塗工しても良い。1層目のヒートシール層の乾燥後の熱が残った紙基材にさらに2層目以降のヒートシール層用塗工液を塗工し乾燥させることになるので、ヒートシール層用塗工液に対して乾燥負荷がかかりやすく、欠点の少ない樹脂膜を形成することができる。または、紙基材の抄紙工程から連続して、紙基材に1層目のヒートシール層をオンマシンで塗工する工程を含み、さらに2層目以降のヒートシール層をオフマシンで塗工しても良い。従来の抄紙装置を改造することなく、任意の塗工装置を選択できる。
本実施形態においては、前記紙基材とヒートシール層の間にアンダー層を設けても良いが、例えば、顔料とバインダーのいずれかもしくは両方を少なくとも1種以上含むアンダー層が設けられたものであってもよい。さらに、アンダー層中には、顔料とバインダーを含むことが好ましい。紙基材とヒートシール層のみを有する紙基材の場合、紙基材がヒートシール層用塗工液を吸液してしまうので、耐水性を付与するためは、ヒートシール層の塗工量を多くする必要がある。ヒートシール層の塗工量の多い包装用紙は、プラスチックの使用量が増えるためプラスチック削減効果に乏しくなる。しかし、紙基材とヒートシール層の間にアンダー層を有する包装用紙の場合、アンダー層によってヒートシール層用塗工液が紙基材に浸透することを防ぐ目止め効果が生じるので、少ない塗工量のヒートシール層でも欠点の少ない樹脂膜が形成しやすくなり、より良好な耐水性を有する包装用紙を得ることができる。また、アンダー層自体にも水や油の浸透を防ぐ効果があるため、ヒートシール層との相乗効果により、優れた耐水性を得ることができる。
アンダー層中の顔料としては、一般の印刷用塗工紙の塗工層に使用される公知の顔料を用いることができ、例えば、カオリンクレー、炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウム等)、焼成クレー、タルク、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪藻土、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機顔料、又はアクリル、スチレン、塩化ビニル、ナイロンそのものや、これらを共重合して得られる有機顔料(いわゆるプラスチックピグメント(以降、「PP粒子」と略称する場合がある))が挙げられる。本実施形態においては、カオリンクレー、炭酸カルシウム、二酸化チタン、PP粒子のいずれかもしくは複数を少なくとも1種以上含むことが好ましい。ヒートシール層との密着性に優れた包装用紙を得ることができる。
本実施形態においては、アンダー層に含まれる顔料のカオリンクレー比率が、顔料100質量部に対して80質量部以下であることが好ましい。アンダー層に含まれる顔料のカオリンクレー比率は、好ましくは顔料100質量部に対して80~20質量部である。80質量部を超える場合は、十分な目止め効果は得られるが、ヒートシール層との密着性が劣ることがある。20質量部未満の場合は、十分な目止め効果を得ることができない。例えば、アンダー層に含まれる顔料としては、10~90質量部のカオリンクレー及び90~10質量部の重質炭酸カルシウムまたは軽質炭酸カルシウム、さらには、10~70質量部のカオリンクレー及び90~30質量部の重質炭酸カルシウムまたは軽質炭酸カルシウムなどがあげられる。
また、バインダーも一般の印刷用塗工紙の塗工層に使用される公知のバインダーを用いることができ、例えば、ブタジエン系共重合ラテックス、架橋剤変性澱粉、酸化澱粉、酵素変性澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、カチオン性澱粉、両性澱粉などの澱粉類、ゼラチン、カゼイン、大豆タンパク、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子、酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アイオノマー、その他のエチレン系コポリマー、等の合成樹脂類等を例示できる。本実施形態においては、バインダーとして、スチレンブタジエン共重合ラテックス(以降、「SBR」と略称する場合がある)を含むことが好ましい。より好ましくは粒子径が70nm以上であるスチレンブタジエン共重合ラテックスを含むことである。さらに好ましくは、粒子径が100nm以上であるスチレンブタジエン共重合ラテックスを含むことである。スチレンブタジエン共重合ラテックスを含むことで、アンダー層に柔軟性、水や油の浸透を防ぐ効果を与えることができる。また、スチレンブタジエン共重合ラテックスの粒子径が70nm以上であることで、アンダー層のヒートシール層との密着性に優れた包装用紙が得られる。本実施形態においては、スチレンブタジエン共重合ラテックス以外に複数のバインダーを組み合わせて使用することもできる。本実施形態において、粒子径は、JIS Z 8828:2013に準拠して、動的光散乱法(解析方法はキュムラント法)で散乱強度分布における平均粒子径を測定した。さらに、バインダー成分中50質量部以上、好ましくは80質量部以上、粒子径が70nm以上であるスチレンブタジエン共重合ラテックスを含むことが好ましい。実際には、例えば、アンダー層中において、顔料100質量部に対して、バインダーとして粒子径が70nm以上であるスチレンブタジエン共重合ラテックスを3~40質量部およびリン酸エステル化澱粉を1~5質量部使用することが好ましい。
本実施形態においては、アンダー層が、顔料100質量部に対してバインダーを5~200質量部配合することが好ましい。より好ましくは、20~100質量部である。200質量部を超える場合は、十分な目止め効果は得られるが、耐水性や、ヒートシール強度がこれ以上向上しない。また、バインダーに含まれる乳化剤などの撥水性の物質がアンダー層表面に残ることで、ヒートシール層用塗工液がアンダー層表面の撥水性の物質上ではじかれ、ハジキ状ピンホールが発生し、ヒートシール層表面の均一性が劣ることで得られる包装用紙のバリア性が低下する場合がある。さらにバインダーはコストが高いため経済的に不利である。5質量部未満の場合は、十分な目止め効果が得られなく、さらにアンダー層の強度も低下するので、ヒートシール強度に劣る場合がある。
本実施形態においては、アンダー層の塗工量としては、例えば、紙基材の片面あたり、固形分換算で、1~40g/mの範囲であることが好ましい。1g/m未満の場合は、十分な目止め効果を得ることができない。逆に40g/mを超える場合は、十分な目止め効果は得られるが、耐水性や、ヒートシール強度がこれ以上向上しない。またコストが高くなるので経済的に不利である。
アンダー層には、本発明の目的とする効果を損ねない範囲で各種助剤を含んでもよく、例えば、粘度調節剤、柔軟剤、光沢付与剤、耐水化剤、分散剤、流動変性剤、紫外線吸収剤、安定化剤、帯電防止剤、架橋剤、サイズ剤、蛍光増白剤、着色剤、pH調節剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤が含まれていてもよい。
アンダー層用塗工液を塗工する工程としては、紙基材の抄紙工程から連続して、紙基材にアンダー層をオンマシンで塗工乾燥し、平滑化処理を施した後に連続して、アンダー層を設けた紙基材にヒートシール層をオンマシンで塗工しても良い。紙基材にアンダー層をオンマシンで塗工することにより、抄紙工程後の熱が残った紙基材にアンダー層用塗工液を塗工し乾燥させることになるので、乾燥負荷がかかりやすく、アンダー層用塗工液が十分に乾燥され、アンダー層塗工液内のバインダーが十分に溶解、造膜し隙間を埋めることで、目止め効果の高いアンダー層となる。また、アンダー層用塗工液を塗工乾燥直後のアンダー層は、アンダー層用塗工液に含まれる撥水性の物質がアンダー層表面にブリードしていない。この状態のままアンダー層を有する紙基材にヒートシール層をオンマシンで塗工することで、ヒートシール層用塗工液がアンダー層表面に均一に塗工されやすく、ハジキ状ピンホールの少ない樹脂膜を形成することができる。
アンダー層用塗工液を塗工する方式としては、特に限定するものではなく、一般に使用されている塗工装置が使用できる。例えばエアーナイフコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、チャンプレックスコーター、メータリングブレード式のサイズプレスコーター、ショートドウェルコーター、スプレーコーター、ゲートロールコーター、リップコーター等の公知の各種塗工装置を用いることができる。
本実施形態においては、紙基材及びアンダー層を平滑化処理する工程を含んでも良い。紙基材及びアンダー層を平滑化処理する方式としては、特に限定するものではなく、一般に使用されているカレンダー装置が使用できる。例えば、マシンカレンダー、ソフトカレンダー、スーパーカレンダー、グロスキャレンダー、シューニップキャレンダー等の公知の各種平滑化装置を用いることができる。また、片艶クラフト紙などに用いられるような、ヤンキードライヤーの鏡面を転写し平滑化処理する工程を含んでも良い。平滑化処理を行った後にヒートシール層を塗工することで、ヒートシール層用塗工液が紙基材及びアンダー層表面に均一に塗工されやすく、さらに平滑化処理はアンダー層内に残った空隙を潰すことにもつながるのでより高い目止め効果も得られ、より良好な耐水性を有する包装用紙を得ることができる。本実施形態においては、紙基材のヒートシール塗工液を塗工する面の平滑度が10秒以上であることが好ましい。より好ましくは20秒以上である。
本実施形態において用いる紙基材としては特に限定するものではなく、パルプを主成分とする公知の紙基材を用いることができる。紙基材の主成分となるパルプとしては、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)、NBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)などの化学パルプ、GP(砕木パルプ)、PGW(加圧式砕木パルプ)、RMP(リファイナーメカニカルパルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)、CTMP(ケミサーモメカニカルパルプ)、CMP(ケミメカニカルパルプ)、CGP(ケミグランドパルプ)などの機械パルプ、DIP(脱インキパルプ)などの木材パルプ及びケナフ、バガス、竹、コットンなどの非木材パルプを用いることができる。これらは、単独で使用するか、又は任意の割合で混合して使用することが可能である。例えば、パルプとして、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)をパルプ中90~100質量部使用することができる。また、本発明の目的とする効果を損なわない範囲において、合成繊維を更に配合することができる。環境保全の観点から、ECF(Elemental Chlorine Free)パルプ、TCF(Total Chlorine Free)パルプ、古紙パルプ、植林木から得られるパルプが好ましい。また、例えば、適切なパルプの叩解度としては、カナダ標準ろ水度(フリーネス)(JIS P 8121:1995「パルプのろ水度試験方法」)で、200~700mlCSF、例えば、450~620mlCSFである。
紙基材としては填料を含有するものも使用できる。填料としては、カオリンクレー、炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウム等)、焼成クレー、タルク、二酸化チタン、水酸化アルミニウムを例示できる。紙基材中の填料含有量は、パルプの乾燥質量100質量部に対して、例えば、1~30質量部である。例えば、パルプの乾燥質量100質量部に対して、軽質炭酸カルシウムを1~10質量部含むとよい。
また、紙基材には、パルプと填料に加えて、各種公知の製紙用添加剤が含まれていてもよい。製紙用添加剤としては、例えば、サイズ剤などの内添紙力増強剤、嵩高剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、蛍光消色剤、ピッチコントロール剤などがある。また、澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドなどの水溶性高分子が塗布されていてもよい。紙基材に湿潤紙力増強剤が含まれている場合は、包装用紙のリサイクル性が劣るので、紙基材には、湿潤紙力剤が含まれないことが好ましい。
紙基材の抄紙方法は、特に限定されるものではなく、長網抄紙機、長網多層抄紙機、円網抄紙機、円網多層抄紙機、長網円網コンビ多層抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種抄紙機で製造できる。また、本発明においては、紙基材としては単層抄きでも多層抄きであってもよい。
本実施形態において、包装用紙の坪量は特に限定するものではないが、例えば10~1000g/mである。耐水性を高度に備え、軟包装にも使用できる包装用紙の坪量としては、30~500g/mが好ましく、50~300g/mがより好ましい。
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。なお、添加部数は、固形分換算の値である。
(実施例1)
(基紙の作製)
カナディアンスタンダードフリーネス520mlcsfの広葉樹晒クラフトパルプ100部、軽質炭酸カルシウム(商品名:TP-121、奥多摩工業社製)5部、カチオン化澱粉(商品名:ネオタック30T、日本食品加工社製)0.2部、中性ロジンサイズ(商品名:CC167、星光PMC社製)0.2部に水を加えて紙料を調製し、長網多筒式抄紙機を用いて坪量248g/mの原紙を作製した。この原紙にゲートロールコーターによって、酸化澱粉(商品名:MS3800、日本食品化工社製)を両面あたりの乾燥塗布量が2g/mとなるように塗布し、乾燥、キャレンダーによる平滑化処理を行い250g/mの基紙を得た。
(アンダー層用塗工液の調製)
カオリンクレー(商品名:コンツアー1500、イメリス社製)20部及び重質炭酸カルシウム(商品名:カービラックス、イメリス社製)80部に分散剤(商品名:アロンT-50、東亜合成社製)0.2部を加え、加水してコーレス分散機を用いて水分散し、顔料スラリーを作製した。この顔料スラリーに、バインダーとしてリン酸エステル化澱粉(商品名:MS4600、日本食品加工社製)2部及びスチレンブタジエン共重合ラテックス(商品名:L-1432X、旭化成ケミカルズ社製、粒子径182nm)20部、更に水を加えて分散させ、固形分濃度50%の顔料塗工層用塗工液を調製した。
(紙基材の作製)
上記で得られた基紙の両面に、前記基紙の抄紙工程から連続してオンマシンで、アンダー層用塗工液を、片面に乾燥塗工量が20g/mになるようにブレードコーターを用いて塗工、乾燥し、坪量が290g/mの紙基材を作製した。
(包装用紙の作製)
上記で得られた紙基材のアンダー層を設けた面に、前記紙基材の抄紙工程から連続してオンマシンで、水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-300、三井化学社製)を乾燥塗工量が5.0g/mになるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥してヒートシール層を設け、包装用紙を作製した。
(実施例2)
実施例1で得られた紙基材の片面に、前記紙基材の抄紙工程から連続してオンマシンで、水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-300、三井化学社製)を乾燥塗工量が4.0g/mになるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥して1層目のヒートシール層を設けた。次いで、同水系アイオノマーエマルジョンを1層目のヒートシール層の表面に、乾燥塗工量が1.0g/mとなるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥して2層目のヒートシール層を設けた以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
(実施例3)
実施例1において、アンダー層用塗工液に含まれるスチレンブタジエン共重合ラテックスを5部に変更した以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
(実施例4)
実施例1において、アンダー層用塗工液に含まれるスチレンブタジエン共重合ラテックスを7部に変更した以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
(実施例5)
実施例1において、アンダー層用塗工液に含まれるスチレンブタジエン共重合ラテックスを30部に変更した以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
(実施例6)
実施例1において、アンダー層用塗工液に含まれるスチレンブタジエン共重合ラテックスをスチレンブタジエン共重合ラテックス(商品名:PB7648、日本エイアンドエル社製、粒子径99nm)に変更した以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
(実施例7)
実施例1において、アンダー層用塗工液に含まれるスチレンブタジエン共重合ラテックスをスチレンブタジエン共重合ラテックス(商品名:L-1535、旭化成ケミカルズ社製、粒子径113nm)に変更した以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
(実施例8)
実施例1において、アンダー層用塗工液に含まれるカオリンクレーを60部及び重質炭酸カルシウムを40部に変更した以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
(実施例9)
実施例1において、アンダー層用塗工液に含まれるカオリンクレーを80部及び重質炭酸カルシウムを20部に変更した以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
(実施例10)
実施例1において、ヒートシール層の塗工量を1.0g/mに変更した以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
(実施例11)
実施例1において、ヒートシール層の塗工量を10.0g/mに変更した以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
(実施例12)
実施例1において、ヒートシール層に使用する樹脂を水系エチレン・アクリル酸共重合物エマルジョン(商品名:MICHEM FLEX P1883、マイケルマン社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
(実施例13)
実施例1において、ヒートシール層に使用する樹脂を水系エチレン・酢酸ビニル共重合物エマルジョン(商品名:アクアテックス AC-3100、ジャパンコーティングレジン社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
(実施例14)
実施例1において、ヒートシール層に使用する樹脂を水系ポリヒドロキシウレタンエマルジョン(商品名:タケラックWPB-341、三井化学社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
(比較例1)
実施例1で得られた紙基材の片面に、オフマシン上で、水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-300、三井化学社製)を乾燥塗工量が5.0g/mになるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥してヒートシール層を設けた以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
(比較例2)
実施例1において、ヒートシール層の塗工量を0g/mに変更した以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
(比較例3)
実施例1において、ヒートシール層に使用する樹脂を水系スチレン・アクリル共重合物エマルジョン(商品名:サイビノール EK-754、サイデン化学社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
(比較例4)
実施例1で得られた紙基材の片面に、オフマシン上で、水系スチレン・アクリル共重合物エマルジョン(商品名:サイビノール EK-754、サイデン化学社製)を乾燥塗工量が5.0g/mになるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥してヒートシール層を設けた以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
(比較例5)
実施例1において、ヒートシール層に使用する樹脂を水系ポリ塩化ビニリデンエマルジョン(商品名:Dio FAN A050、ソルベイ社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
(比較例6)
実施例1で得られた紙基材の片面に、オフマシン上で、水系ポリ塩化ビニリデンエマルジョン(商品名:Dio FAN A050、ソルベイ社製)を乾燥塗工量が5.0g/mになるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥してヒートシール層を設けた以外は、実施例1と同様にして包装用紙を作製した。
各実施例及び比較例で得られた包装用紙について、以下に示す方法により評価を行った。得られた結果を表1および2に示す。
(1)ヒートシール層の均一性
本発明において製造される包装用紙は、従来のラミネート紙と同等程度のバリア性を備えていることが好ましい。ヒートシール層の欠点やピンホールによって、バリア性が悪化するおそれがあるので、ヒートシール層の面の均一性を目視によって評価した。
◎:欠点やピンホールが全く無く、実用できる。
○:欠点やピンホールがほとんど無く、実用できる。
△:欠点やピンホールがわずかにあるが目立たず、実用できる。
×:欠点やピンホールが目立ち、実用できない。
(2)ヒートシール材破性
得られた包装用紙を、幅8mm、長さ15cmのサイズに2枚カットし、包装用紙の表面と裏面とを重ね合わせ、ヒートシール装置(パルメック社製、型番:PTS-100)で、一定条件(接着幅:4mm、温度:180℃、圧力0.4MPa、押し当て時間0.5秒、ピッチ:4mm)にてヒートシールした。次いで、ヒートシールしたサンプルを、剥離強度試験機(島津製作所製、型番:オートグラフAGS-X)にて、一定条件(剥離速度:100mm/分、剥離長さ:10cm)で剥離して、剥離面を目視によって評価した。
◎:シール部の全部分が紙基材の基紙から材破しており、実用できる。
○:シール部の一部が紙基材の基紙から材破しており、実用できる。
△:シール部が紙基材のアンダー層から材破しており、実用できる。
×:シール部がヒートシール層の界面で剥離している、または接着しておらず、実用できない。
(3)コッブ吸水度
JIS P8140:1998に準拠して、ヒートシール層表面の120秒コッブ吸水度を評価した。数値が低いほど耐水性がある(水を吸液しにくい)ことを示す。本発明においては、コッブ吸水度が3.0g/m以下で耐水性があるといえる。
Figure 2023181253000001
Figure 2023181253000002
表1および2より明らかなように、実施例1~14による包装用紙は比較例1~6と比較して、明らかにヒートシール層の均一性、ヒートシール材破性、耐水性に優れていた。実験結果が示している様に、本発明であれば、従来のポリエチレンラミネート量と比較してヒートシール層のプラスチック使用量を著しく軽減し、プラスチックゴミ削減に貢献しつつ、かつ良好なヒートシール性と耐水性を有する包装用紙の製造方法を提供することができる。

Claims (6)

  1. 紙基材の少なくとも一方の面にアイオノマー、エチレン系コポリマー又は熱可塑性ウレタンのいずれか1種以上を含むヒートシール層を有する包装用紙の製造方法であって、前記紙基材の抄紙工程から連続して、前記紙基材にヒートシール層をオンマシンで塗工する工程を含むことを特徴とする製造方法。
  2. 前記紙基材とヒートシール層の間にアンダー層を有することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記アンダー層として、少なくとも顔料とバインダーを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記アンダー層が、顔料100質量部に対してバインダーを5~200質量部配合することを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の製造方法。
  5. 前記アンダー層に含まれるバインダーにスチレンブタジエン共重合ラテックスを含み、前記スチレンブタジエン共重合ラテックスの粒子径が70nm以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の製造方法。
  6. 紙基材の少なくとも一方の面にアイオノマー、エチレン系コポリマー又は熱可塑性ウレタンのいずれか1種以上を含むヒートシール層、および
    前記紙基材とヒートシール層の間にアンダー層を有する包装用紙であって、
    前記アンダー層が、少なくとも顔料とバインダーを含み、
    前記アンダー層に含まれるバインダーとして、粒子径が70nm以上であるスチレンブタジエン共重合ラテックスを含み、コッブ吸水度が3.0g/m以下である前記包装用紙。
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