JP2023182507A - ヒートシール紙および包装袋 - Google Patents

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美咲 若林
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萌夏 浪岡
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Abstract

【課題】自動包装成形性に優れ、かつ、得られる包装袋が破袋しにくいヒートシール紙、および該ヒートシール紙を用いた包装袋を提供すること。【解決手段】紙基材の少なくとも一方の面に1層以上のヒートシール層を有するヒートシール紙であって、前記ヒートシール層は、水分散性樹脂バインダーおよび滑剤を含有し、前記ヒートシール紙のクラークこわさの縦横相乗平均を坪量(g/m2)で除した値(クラークこわさの縦横相乗平均/坪量)(単位:m2/g)が0.20m2/g以上1.00m2/g以下であり、前記ヒートシール紙の突き刺し強度が10.0N以上である、ヒートシール紙。【選択図】なし

Description

本発明は、ヒートシール紙およびこれを用いた包装袋に関する。
ヒートシール方式を利用した包装体は、一般の工業製品の包装の他、食品、医薬、医療器具の包装などに広く利用されている。
近年、プラスチックゴミ問題が深刻化している。世界のプラスチックの生産量のうち、包装容器セクターでのプラスチック生産量が多く、プラスチックごみの原因となっている。プラスチックは半永久的に分解されず、そのゴミは自然環境下でマイクロプラスチック化し、生態系に深刻な悪影響を与えている。その対策として、プラスチックを紙に代替することが提案されている。
例えば、特許文献1には、耐水性、耐油性、ヒートシール適性を有すると共に長期保管が可能な耐水耐油ヒートシール紙を提供することを目的として、紙基材の少なくとも一方の面上に、熱可塑性樹脂とワックスと顔料とを含む塗工層を有することを特徴とする耐水耐油ヒートシール紙が開示されている。
特開2022-024664号公報
特許文献1に記載のヒートシール紙は、ブロッキング耐性に優れるものであるが、自動包装成形性や、得られた包装袋の破袋しにくさについては検討されていない。
本発明の目的は、自動包装成形性に優れ、かつ、得られる包装袋が破袋しにくいヒートシール紙、および該ヒートシール紙を用いた包装袋を提供することにある。
本発明の課題は、以下の<1>~<10>の構成によって解決することができる。
<1> 紙基材の少なくとも一方の面に1層以上のヒートシール層を有するヒートシール紙であって、前記ヒートシール層は、水分散性樹脂バインダーおよび滑剤を含有し、前記ヒートシール紙のクラークこわさの縦横相乗平均を坪量(g/m)で除した値(クラークこわさの縦横相乗平均/坪量)(単位:m/g)が0.20m/g以上1.00m/g以下であり、前記ヒートシール紙の突き刺し強度が10.0N以上である、ヒートシール紙。
<2> 前記滑剤が、パラフィンワックス、カルナバワックス、およびポリオレフィンワックスよりなる群から選択される少なくとも1種を含む、<1>に記載のヒートシール紙。
<3> 前記ヒートシール層中の滑剤の含有量が1質量%以上5質量%以下である、<1>または<2>に記載のヒートシール紙。
<4> 前記水分散性樹脂バインダーのガラス転移温度が0℃以上100℃以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載のヒートシール紙。
<5> 前記水分散性樹脂バインダーが、スチレン-ブタジエン共重合体およびオレフィン-不飽和カルボン酸系共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載のヒートシール紙。
<6> 前記紙基材を構成するパルプのカナダ標準ろ水度が、500mL以上750mL以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載のヒートシール紙。
<7> 前記紙基材を構成するパルプの主成分が、針葉樹未晒クラフトパルプである、<1>~<6>のいずれか1つに記載のヒートシール紙。
<8> 前記紙基材が伸張紙である、<1>~<7>のいずれか1つに記載のヒートシール紙。
<9> ヒートシール層同士を150℃、0.2MPa、1秒の条件でヒートシールした際のヒートシール剥離強度が2.0N/15mm以上10.0N/15mm以下である、<1>~<8>のいずれか1つに記載のヒートシール紙。
<10> <1>~<9>のいずれか1つに記載のヒートシール紙を用いてなる、包装袋。
本発明によれば、自動包装成形性に優れ、かつ、得られる包装袋が破袋しにくいヒートシール紙、および該ヒートシール紙を用いた包装袋を提供することができる。
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限および下限は任意に組み合わせることができる。また、本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は、室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で行う。また、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの両方を含む総称である。
<ヒートシール紙>
本実施形態のヒートシール紙(以下、単に「ヒートシール紙」ともいう)は、紙基材の少なくとも一方の面に1層以上のヒートシール層を有するヒートシール紙であって、前記ヒートシール層は、水分散性樹脂バインダーおよび滑剤を含有し、前記ヒートシール紙のクラークこわさの縦横相乗平均を坪量(g/m)で除した値(クラークこわさの縦横相乗平均/坪量)(単位:m/g)が0.20m/g以上1.00m/g以下であり、前記ヒートシール紙の突き刺し強度が10.0N以上である。本実施形態のヒートシール紙は、自動包装成形性に優れ、かつ、得られる包装袋が破袋しにくい。なお、自動包装成形性に優れるとは、自動包装機で連続して製袋が可能であり、かつ得られる袋の外観が良好であることを意味する。より具体的には、例えば、包装袋を自動で成形する際に、しわや外観不良の発生が抑制されると共に、成形機等への貼り付き(ブロッキング)が抑制され、成形性に優れること、さらに、製袋後の袋の変形が抑制されるなど、得られる包装袋の品質に優れると共に、生産性に優れることを意味する。
水分散性樹脂バインダーを用いてヒートシール層を形成することで、ヒートシール性を発現させることができる。また、ヒートシール層が滑剤を含有することで、耐ブロッキング性が向上し、自動包装成形性が向上すると考えられる。
また、ヒートシール紙のクラークこわさの縦横相乗平均を坪量(g/m)で除した値(クラークこわさの縦横相乗平均/坪量)(単位:m/g)が1.00m/g以下であることにより、ヒートシール紙が適度な柔らかさを有し、製袋機において成形する際、ヒートシール紙が変形に追随することができるため、しわや外観不良が抑制され、自動包装成形性に優れると考えられる。また、ヒートシール紙のクラークこわさの縦横相乗平均を坪量(g/m)で除した値(クラークこわさの縦横相乗平均/坪量)(単位:m/g)が0.20m/g以上であると、包装袋の保形性や堅牢性が向上し、包装袋の破袋が抑制されると考えられる。
さらに、ヒートシール紙の突き刺し強度が10.0N以上であることにより、包装袋の破袋(例えば、輸送中の衝撃による穿孔)を抑制することができる。
なお、本発明の効果は、上記メカニズムによって制限されるものではない。本明細書中、ヒートシール紙の縦方向は、紙基材の抄紙方向(MD方向)に対応する方向を意味し、ヒートシール紙の横方向は、紙基材の幅方向(CD方向)に対応する方向を意味する。
[紙基材]
(原料パルプ)
紙基材を構成するパルプとしては、特に制限されず、公知のパルプを使用できる。具体的には、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)等の未晒パルプ;広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等の化学パルプ;砕木パルプ(GP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミメカニカルパルプ(CMP)、ケミグランドパルプ(CGP)等の機械パルプ;古紙パルプ;ケナフ、バガス、竹、コットン等の非木材繊維パルプ;合成パルプ等が挙げられる。これらのパルプは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、所望のクラークこわさおよび突き刺し強度のヒートシール紙を得る観点から、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)および針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)よりなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)がさらに好ましい。
本実施形態のヒートシール紙に用いられる紙基材を構成するパルプの主成分は、針葉樹パルプであることが好ましく、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)であることがより好ましい。「紙基材を構成するパルプの主成分が針葉樹パルプ(または針葉樹未晒クラフトパルプ)である」とは、紙基材を構成するパルプ中、針葉樹パルプ(または針葉樹未晒パルプ)の含有量が50質量%超のものをいい、針葉樹パルプ(または針葉樹未晒パルプ)の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。針葉樹パルプは、平均繊維長が長く、針葉樹パルプを原料パルプとして用いた紙基材を使用することによって、所望のクラークこわさおよび突き刺し強度のヒートシール紙が得られるので好ましい。さらに、紙基材を構成するパルプとして針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)を用いると、パルプ繊維自身の強度が針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)や広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)などと比べて高いため、得られる紙基材の強度や伸びが高くなるという利点がある。
針葉樹パルプとしては、所望のクラークこわさおよび突き刺し強度のヒートシール紙を得る観点から、好ましくはダグラスファーおよびマツよりなる群から選ばれる1種以上から得られたパルプであり、より好ましくはダグラスファーから得られたパルプである。
紙基材を構成する原料パルプは、晒クラフトパルプおよび未晒クラフトパルプよりなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、未晒クラフトパルプであることがより好ましい。
(カナダ標準ろ水度)
紙基材を構成する原料パルプの叩解度は、特に限定するものではないが、所望のクラークこわさおよび突き刺し強度のヒートシール紙を得る観点から、カナダ標準ろ水度(CSF)として、好ましくは500mL以上、より好ましくは550mL以上であり、そして、好ましくは750mL以下、より好ましくは700mL以下である。また、紙表面の平滑性が良好となり、印刷適性を維持することができる。
CSFは、JIS P 8121-2:2012「パルプ-ろ水度試験方法-第2部:カナダ標準ろ水度法」に従って測定される。
(カッパー価)
JIS P 8211:2011に準拠して測定される、紙基材を構成するパルプのカッパー価は、所望のクラークこわさおよび突き刺し強度のヒートシール紙を得る観点から、好ましくは30以上であり、そして、好ましくは60以下、より好ましくは55以下、さらに好ましくは50以下、さらに好ましくは46以下である。紙基材を構成するパルプのカッパー価は、JIS P 8220-1:2012に準拠して離解した紙基材パルプを試料として、JIS P 8211:2011に準拠して測定される。
(坪量)
紙基材の坪量は、特に限定されないが、所望のクラークこわさおよび突き刺し強度のヒートシール紙を得る観点から、好ましくは50g/m以上、より好ましくは60g/m以上、さらに好ましくは70g/m以上であり、そして、好ましくは150g/m以下、より好ましくは120g/m以下、さらに好ましくは100g/m以下である。紙基材の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。
(厚さ)
紙基材の厚さは、所望のクラークこわさおよび突き刺し強度のヒートシール紙を得る観点から、好ましくは60μm以上、より好ましくは80μm以上、さらに好ましくは100μm以上であり、そして、好ましくは200μm以下、より好ましくは180μm以下、さらに好ましくは160μm以下である。紙基材の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。
(密度)
紙基材の密度は、所望のクラークこわさおよび突き刺し強度のヒートシール紙を得る観点から、並びに成形加工性の観点から、好ましくは0.3g/cm以上、より好ましくは0.5g/cm以上であり、そして、好ましくは1.0g/cm以下、より好ましくは0.9g/cm以下、さらに好ましくは0.75g/cm以下である。紙基材の密度は、上述した測定方法により得られた、紙基材の坪量および厚さから算出される。
(任意成分)
紙基材には、必要に応じて、例えば、アニオン性、カチオン性もしくは両性の歩留剤、濾水性向上剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、サイズ剤、定着剤、填料等の内添助剤、耐水化剤、染料、蛍光増白剤等の任意成分を含んでいてもよい。
乾燥紙力増強剤としては、カチオン化澱粉、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。乾燥紙力増強剤の含有量は、特に限定されないが、原料パルプ(絶乾質量)あたり、好ましくは3.0質量%以下である。
湿潤紙力増強剤としては、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
サイズ剤としては、ロジンサイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤等の内添サイズ剤、スチレン/アクリル酸共重合体、スチレン/メタクリル酸共重合体等の表面サイズ剤が挙げられる。サイズ剤の含有量は、特に限定されないが、原料パルプ(絶乾質量)あたり、好ましくは3.0質量%以下である。
定着剤としては、硫酸バンド、ポリエチレンイミン等が挙げられる。定着剤の含有量は、特に限定されないが、原料パルプ(絶乾質量)あたり、好ましくは3.0質量%以下である。
填料としては、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の無機填料、アクリル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等の有機填料が挙げられる。
紙基材は、所望のクラークこわさおよび突き刺し強度のヒートシール紙を得る観点から、紙匹を収縮させるクルパック処理を施したクルパック紙(伸張紙)を用いることが好ましい。なお、伸張紙は、JIS P 8113:2006に準拠して測定される縦方向または横方向の伸びが5%以上である紙をいい、JIS P 3401:2000に記載のクラフト紙5種 1号、2号が例示される。
[ヒートシール層]
本実施形態のヒートシール紙は、紙基材の少なくとも一方の面に、少なくとも1層のヒートシール層を有する。ヒートシール層は、加熱、超音波等で溶融し、接着する層である。
(水分散性樹脂バインダー)
ヒートシール層は、水分散性樹脂バインダーを含有する。水分散性樹脂バインダーとは、水溶性ではない(具体的には、25℃の水に対する溶解度が10g/L以下である)が、エマルションやサスペンションのように水中で微分散された状態となる樹脂バインダーをいう。水分散性樹脂バインダーを用いてヒートシール層を水系塗工することで、再離解性に優れ、紙として再生利用可能なヒートシール紙を得ることができる。なお、水分散性樹脂バインダーが下記の滑剤にも該当する場合は、滑剤に分類するものとする。
水分散性樹脂バインダーとしては、本発明の効果を奏するものである限り、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体(例えば、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体)、アクリル系樹脂、アクリロニトリル-スチレン系共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン系共重合体、ABS系樹脂、AAS系樹脂、AES系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ-4-メチルペンテン-1樹脂、ポリブテン-1樹脂、フッ化ビニリデン系樹脂、フッ化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、アセタール系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、オレフィン-不飽和カルボン酸系共重合体、およびこれらの変性物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、スチレン-ブタジエン共重合体およびオレフィン-不飽和カルボン酸系共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
さらに、ヒートシール剥離強度を高くする観点からは、オレフィン-不飽和カルボン酸系共重合体がより好ましく、入手容易性、コスト面およびリサイクル性の観点からは、スチレン-ブタジエン共重合体がより好ましい。
オレフィン-不飽和カルボン酸系共重合体としては、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体等が挙げられる。中でも、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体が好ましく、エチレン-アクリル酸共重合体がより好ましい。
よって、ヒートシール層に含まれる水分散性樹脂バインダーは、スチレン-ブタジエン共重合体およびエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、オレフィン-不飽和カルボン酸系共重合体は、アイオノマーであってもよい。
スチレン-ブタジエン共重合体としては合成品、市販品のいずれを使用してもよく、市販品としては、日本ゼオン株式会社製NipolラテックスLX407G51、LX407S10、LX407S12、LX410、LX415M、LX416、LX430、LX433C、2507Hや、日本エイアンドエル株式会社製ナルスターSR-101、SR-102、SR-103、SR-115、SR-153や、JSR株式会社製スチレンブタジエンラテックス0602、0597C等が挙げられる。
エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体としては、合成品、市販品のいずれを使用してもよく、市販品としては、マイケルマンジャパン合同会社製のMP498345N、MP4983R、MP4990R、MFHS1279、住友精化株式会社製のザイクセン(登録商標)A、ザイクセン(登録商標)AC、三井化学株式会社製のケミパールSシリーズ等が挙げられる。
水分散性樹脂バインダーのガラス転移温度は、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは15℃以上である。ガラス転移温度が上記下限値以上の水分散性樹脂バインダーを使用することで、ブロッキングの発生も抑制されうる。そして、ヒートシール性の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは60℃以下、よりさらに好ましくは50℃以下である。
水分散性樹脂バインダーのガラス転移温度は、示差走査熱量計により測定される値を採用するものとする。
ヒートシール層中の水分散性樹脂バインダーの含有量は、好ましくは30質量%以上、よりに好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上であり、そして、100質量%以下、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。上記範囲内であれば、高いヒートシール剥離強度を有するヒートシール紙を得ることができる。
すなわち、本発明の一実施形態によれば、ヒートシール層中のスチレン-ブタジエン共重合体およびオレフィン-不飽和カルボン酸系共重合体(好ましくはエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体)の含有量が、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上であり、そして、100質量%以下、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。
(滑剤)
ヒートシール層は、上記の水分散性樹脂バインダーに加えて、滑剤を含有する。滑剤を含有することで、ヒートシール紙製造時のブロッキングやヒートシール紙の成形機への貼り付きが抑制され、自動包装成形性が向上する。また、滑剤を含有することで、ヒートシール紙の滑り性も良好となる。滑剤とは、ヒートシール層に配合することにより、ヒートシール層表面の摩擦係数を低減させることができる物質である。
滑剤としては、特に限定されず、例えばワックス、金属石鹸、脂肪酸エステル等を使用することができる。滑剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。ワックスとしては、例えば、動物または植物由来のワックス(例えば、ミツロウ、カルナバワックスなど)、鉱物ワックス(例えば、マイクロクリスタリンワックスなど)、石油ワックス等の天然ワックス;ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、ポリエステルワックス等の合成ワックス等が挙げられる。金属石鹸としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、脂肪酸ナトリウム石鹸、オレイン酸カリ石鹸、ヒマシ油カリ石鹸、およびそれらの複合体等が挙げられる。上記の滑剤の中でも、融点が比較的低くワックス成分が塗工層表面に形成されやすく、ブロッキング抑制効果に優れることから、パラフィンワックス、カルナバワックスおよびポリオレフィンワックスが好ましい。すなわち、滑剤は、パラフィンワックス、カルナバワックスおよびポリオレフィンワックスよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。滑り性付与および防湿性向上の観点からは、パラフィンワックスが好ましい。
カルナバワックスとしては、合成品、市販品のいずれを使用してもよく、市販品としては中京油脂株式会社製セロゾール524、マイケルマン社製ML160RPH等が挙げられる。パラフィンワックスとしても、合成品、市販品のいずれを使用してもよく、市販品としては中京油脂株式会社製ハイドリンL-700等が挙げられる。ポリエチレンワックスとしても、合成品、市販品のいずれを使用してもよく、市販品としてはBYK社製Aquacer 531等が挙げられる。
ヒートシール層において、滑剤の含有量は、水分散性樹脂バインダー100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、そして、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
ヒートシール層中の滑剤の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
(顔料)
本実施形態において、ヒートシール層は、上記水分散性樹脂バインダーおよび滑剤に加えて、顔料を含有してもよい。顔料を含有することにより、ヒートシール紙を製造する際に、ヒートシール層塗工面が、ヒートシール紙の裏面に貼り付き、剥がれが生じる(ブロッキングする)という問題が抑制され、耐ブロッキング性に優れたヒートシール紙が得られる。
顔料としては、特に限定されるものではなく、従来の顔料塗工層に使用されている各種顔料が例示される。顔料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。顔料としては、ヒートシール剥離強度の観点、および耐ブロッキング性の観点から、アスペクト比が20以上の顔料が好ましい。顔料のアスペクト比は、より好ましくは25以上、さらに好ましくは30以上、特に好ましくは60以上であり、そして、入手容易性およびヒートシール層表面の平滑性の観点から、好ましくは10,000以下、より好ましくは1,000以下、さらに好ましくは300以下である。顔料のアスペクト比は、長径/短径を意味し、下記の方法により測定してもよい。
顔料は、アスペクト比20以上の層状無機化合物であることが好ましい。層状無機化合物の形態は、平板状である。顔料が平板状であると、顔料のヒートシール層表面からの突出が抑制され、ヒートシール性を維持しつつ、耐ブロッキング性に優れたヒートシール層が得られる。
顔料は、長さ(平均粒子径)が0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。長さが0.1μm以上であると、顔料が紙基材に対して平行に配列し易い。また、長さが100μm以下であると顔料の一部がヒートシール層から突出する懸念が少ない。顔料の長さは、より好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上、特に好ましくは1.0μm以上であり、そして、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下、特に好ましくは15μm以下である。
ここで、ヒートシール層中に含まれている状態での顔料の長さは、以下のようにして求められる。ヒートシール層の断面について、電子顕微鏡を用いて拡大写真を撮影する。このとき、画面内に顔料が20~30個程度含まれる倍率とする。画面内の顔料の個々の長さを測定する。そして、得られた長さの平均値を算出して、顔料の長さとする。なお、顔料の長さは、粒子径という表現で記載されることもある。
顔料は、厚さが200nm以下であることが好ましい。顔料の厚さは、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは80nm以下、よりさらに好ましくは50nm以下、特に好ましくは30nm以下である。また、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。顔料の平均厚さが小さい方が、高いヒートシール剥離強度が得られる。ここで、ヒートシール層中に含まれている状態での顔料の厚さは、以下のようにして求められる。ヒートシール層の断面について、電子顕微鏡を用いて拡大写真を撮影する。このとき、画面内に顔料が20~30個程度含まれる倍率とする。画面内の顔料の個々の厚さを測定する。そして、得られた厚さの平均値を算出して、顔料の厚さとする。
顔料の具体例としては、マイカ、ベントナイト、カオリン、パイロフィライト、タルク、スメクタイト、バーミキュライト、緑泥石、セプテ緑泥石、蛇紋石、スチルプノメレーン、モンモリロナイト、重質炭酸カルシウム(粉砕炭酸カルシウム)、軽質炭酸カルシウム(合成炭酸カルシウム)、炭酸カルシウムと他の親水性有機化合物との複合合成顔料、サチンホワイト、リトポン、二酸化チタン、シリカ、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、ケイ酸塩、コロイダルシリカ、中空もしくは密実である有機顔料のプラスチックピグメント、バインダーピグメント、プラスチックビーズ、マイクロカプセルなどが挙げられる。
マイカの具体例としては、合成マイカ(例えば、膨潤性合成マイカ)、白雲母(マスコバイト)、絹雲母(セリサイト)、金雲母(フロコパイト)、黒雲母(バイオタイト)、フッ素金雲母(人造雲母)、紅マイカ、ソーダマイカ、バナジンマイカ、イライト、チンマイカ、パラゴナイト、ブリトル雲母などが挙げられる。また、ベントナイトの具体例としては、モンモリロナイトが挙げられる。
カオリンの具体例としては、カオリン、焼成カオリン、構造化カオリン、デラミネーテッドカオリン等の各種カオリンが例示される。
これらの中でも特に、ヒートシール剥離強度の観点、耐ブロッキング性の観点および経済性の観点から、アスペクト比が20以上の顔料が好ましく、マイカ、ベントナイト、カオリンおよびタルクのうちいずれか1種以上を含有することがより好ましく、カオリンがさらに好ましい。
ヒートシール層が顔料を含有する場合、顔料の含有量は、水分散性樹脂バインダー100質量部に対して、耐ブロッキング性およびリサイクル性の観点からは、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上、よりさらに好ましくは40質量部以上であり、一方、ヒートシール性およびホットタック剥離距離の観点からは、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、さらに好ましくは120質量部以下である。
ヒートシール層が顔料を含有する場合、ヒートシール層中の顔料の含有量は、耐ブロッキング性およびリサイクル性の観点からは、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、よりさらに好ましくは25質量%以上であり、そして、ヒートシール性およびホットタック剥離距離の観点からは、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
(他の成分)
ヒートシール層は、上記水分散性樹脂バインダー、滑剤、および必要に応じて顔料に加えて、他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、シランカップリング剤;消泡剤;粘度調整剤;界面活性剤、アルコール等のレベリング剤;着色染料等の着色剤などが例示される。
ヒートシール層の塗工量(坪量)は、特に限定されないが、ヒートシール性の観点、および破袋しにくい包装袋を得る観点から、好ましくは3g/m以上、より好ましくは5g/m以上、さらに好ましくは8g/m以上であり、そして、好ましくは30g/m以下、より好ましくは20g/m以下、さらに好ましくは15g/m以下である。
<ヒートシール紙の物性>
(クラークこわさ)
ヒートシール紙のクラークこわさの縦横相乗平均は、自動包装成形性に優れるヒートシール紙を得る観点から、好ましくは30以上であり、より好ましくは35以上、さらに好ましくは40以上であり、そして、好ましくは85以下であり、より好ましくは70以下、さらに好ましくは60以下、よりさらに好ましくは50以下である。
ヒートシール紙のクラークこわさは、JIS P 8143:2009に準じて測定され、縦方向および横方向のそれぞれについて測定したクラークこわさの相乗平均を求めることで得られる。
ヒートシール紙のクラークこわさの縦横相乗平均を上記の範囲に調整する方法は特に限定されないが、紙基材を構成するパルプの種類や叩解度、坪量、カレンダー処理、クルパック処理等の諸条件を選択することで調整することができる。例えば、紙基材を構成するパルプとして、針葉樹パルプおよび広葉樹パルプを使用する場合、広葉樹パルプの配合量を増加させると、クラークこわさは低減する傾向にある。また、紙基材を構成するパルプの叩解度を上げ、CSFが低値であるパルプを使用すると、クラークこわさは低減する傾向にある。さらに、坪量を低減させると、クラークこわさは低減する傾向にあり、紙基材にクルパック処理や、カレンダー処理を行うと、クラークこわさは低減する傾向にある。
ヒートシール紙の縦方向のクラークこわさは、自動包装成形性に優れるヒートシール紙を得る観点から、好ましくは20以上、より好ましくは30以上、さらに好ましくは40以上であり、そして、好ましくは85以下、より好ましくは80以下、さらに好ましくは70以下である。
ヒートシール紙の横方向のクラークこわさは、自動包装成形性に優れるヒートシール紙を得る観点から、好ましくは20以上、より好ましくは30以上、さらに好ましくは35以上であり、そして、好ましくは85以下、より好ましくは80以下、さらに好ましくは70以下である。
(クラークこわさ/坪量)
ヒートシール紙のクラークこわさの縦横相乗平均を坪量(g/m)で除した値(クラークこわさ/坪量)(単位:m/g)は、破袋しにくい包装袋を得る観点、および自動包装成形性の観点から、0.20m/g以上、好ましくは0.30m/g以上、より好ましくは0.40m/g以上であり、そして、1.00m/g以下、好ましくは0.90m/g以下、より好ましくは0.80m/g以下、さらに好ましくは0.60m/g以下、よりさらに好ましくは0.55m/g以下である。
ヒートシール紙の縦方向のクラークこわさを坪量(g/m)で除した値(クラークこわさ/坪量)(単位:m/g)は、破袋しにくい包装袋を得る観点、および自動包装成形性の観点から、好ましくは0.20m/g以上、より好ましくは0.30m/g以上、さらに好ましくは0.40m/g以上であり、そして、好ましくは1.00m/g以下、より好ましくは0.90m/g以下、さらに好ましくは0.80m/g以下、よりさらに好ましくは0.60m/g以下、特に好ましくは0.55m/g以下である。
ヒートシール紙の横方向のクラークこわさを坪量(g/m)で除した値(クラークこわさ/坪量)(単位:m/g)は、破袋しにくい包装袋を得る観点、および自動包装成形性の観点から、好ましくは0.20m/g以上、より好ましくは0.30m/g以上、さらに好ましくは0.40m/g以上であり、そして、好ましくは1.00m/g以下、より好ましくは0.90m/g以下、さらに好ましくは0.80m/g以下、よりさらに好ましくは0.60m/g以下である。
(突き刺し強度)
ヒートシール紙の突き刺し強度は、破袋しにくい包装袋を得る観点から、10.0N以上であり、好ましくは11.0N以上、さらに好ましくは12.0N以上、よりさらに好ましくは12.5N以上であり、そして、上限は特に限定されないが、所望のクラークこわさを有するヒートシール紙を得る観点、および製造容易性の観点から、好ましくは30.0N以下、より好ましくは25.0N以下、さらに好ましくは20.0N以下、よりさらに好ましくは17.0N以下である。
ヒートシール紙の突き刺し強度は、JIS Z 1717:2019に準じて測定される。
ヒートシール紙の突き刺し強度を上記の範囲に調整する方法は特に限定されないが、紙基材を構成するパルプの種類や叩解度、坪量、クルパック処理などの諸条件を選択することで調整することができる。例えば、紙基材を構成するパルプとして、針葉樹パルプおよび広葉樹パルプから選択された少なくとも1つを使用する場合、針葉樹パルプの配合量を増加させると、突き刺し強度が高くなる傾向にある。また、紙基材を構成するパルプの叩解度を上げ、CSFが低値であるパルプを使用すると、突き刺し強度は低下する傾向にある。さらに、坪量を増加させると、突き刺し強度が高くなる傾向にある。また、紙基材にクルパック処理を行うと、紙の伸びが向上し、突き刺しによる衝撃を吸収することが可能となるため、突き刺し強度が高くなる傾向にある。
(ヒートシール剥離強度)
本実施形態のヒートシール紙は、破袋しにくい包装袋を得る観点から、ヒートシール剥離強度が、好ましくは2.0N/15mm以上、より好ましくは3.0N/15mm以上、さらに好ましくは4.0N/15mm以上、よりさらに好ましくは4.5N/15mm以上であり、そして、好ましくは10.0N/15mm以下、より好ましくは9.0N/15mm以下、さらに好ましくは8.0N/15mm以下である。さらに、自動包装成形性の観点からは、4.8N/15mm以上であることが好ましい。ヒートシール層の剥離強度は、ヒートシール層同士を150℃、0.2MPa、1秒の条件でヒートシールした際の剥離強度であり、具体的には後述の実施例に記載の方法によって測定される値である。
水分散性樹脂バインダーのガラス転移温度および種類、並びに塗工量を選択することによって、剥離強度を調整することができる。例えば、水分散性樹脂バインダーのガラス転移温度を100℃以下とすることで、所定のヒートシール条件で樹脂が溶融してヒートシール層同士が良好に接着するため、所望の剥離強度を確保することができる。
(表面平滑度)
本実施形態のヒートシール紙のヒートシール層表面の王研式平滑度は、ヒートシール剥離強度を向上させる観点から、好ましくは30秒以上、より好ましくは40秒以上、さらに好ましくは50秒以上であり、上限は特に限定されないが、好ましくは500秒以下、より好ましくは300秒以下、さらに好ましくは100秒以下である。
なお、ヒートシール層は、紙基材のW面(ワイヤー面)に設けてもよく、F面(フェルト面)に設けてもよく、特に限定されない。ここで、W面(ワイヤー面)とは、紙匹が形成されるときのワイヤーに接した面であり、その反対面はF面(フェルト面)である。
また、ヒートシール層と反対面(例えば、紙基材の一方の面のみにヒートシール層が設けられ、他方の面は紙基材が露出している場合は、紙基材表面)の王研式平滑度は、印刷適性を向上させる観点から、好ましくは3秒以上、より好ましくは5秒以上であり、上限は特に限定されないが、好ましくは1000秒以下、より好ましくは300秒以下、さらに好ましくは100秒以下である。
王研式平滑度は、JIS P8155:2010に準拠して測定される。
ヒートシール紙のヒートシール層表面および反対面の王研式平滑度は、後述するスーパーカレンダー処理等により、上記範囲内に調整することができる。
(坪量)
本実施形態のヒートシール紙の坪量は、自動包装成形性に優れ、かつ、得られる包装袋が破袋しにくいヒートシール紙を得る観点から、好ましくは50g/m以上、より好ましくは70g/m以上、さらに好ましくは80g/m以上、よりさらに好ましくは85g/m以上であり、そして、好ましくは200g/m以下、より好ましくは150g/m以下、さらに好ましくは120g/m以下、よりさらに好ましくは100g/m以下である。
ヒートシール紙の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。
(厚さ)
本実施形態のヒートシール紙の厚さは、自動包装成形性に優れ、かつ、得られる包装袋が破袋しにくいヒートシール紙を得る観点から、好ましくは60μm以上、より好ましくは80μm以上、さらに好ましくは90μm以上、よりさらに好ましくは100μm以上であり、そして、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。
ヒートシール紙の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。
(密度)
ヒートシール紙の密度は、自動包装成形性に優れ、かつ、得られる包装袋が破袋しにくいヒートシール紙を得る観点から、好ましくは0.50g/cm以上、より好ましくは0.60g/cm以上、さらに好ましくは0.65g/cm以上、よりさらに好ましくは0.70g/cm以上であり、そして、好ましくは1.0g/cm以下、より好ましくは0.90g/cm以下、さらに好ましくは0.80g/cm以下である。ヒートシール紙の密度は、上述した測定方法により得られた、ヒートシール紙の坪量および厚さから算出される。
[ヒートシール紙の製造方法]
本実施形態のヒートシール紙の製造方法は、特に限定されない。例えば、原料パルプの蒸解処理を行なう蒸解工程と、蒸解処理した原料パルプを20質量%以上45質量%以下含有する分散液を叩解処理する叩解工程と、叩解処理した原料パルプを抄紙する抄紙工程と、を含む方法により得られた紙基材の少なくとも一方の面上に、少なくとも1層のヒートシール層を塗工する塗工工程を含む製造方法が挙げられる。当該製造方法のそれぞれの工程について、以下に説明する。
(蒸解工程)
蒸解工程は、原料パルプの蒸解処理を行なう工程である。蒸解工程により、原料パルプのカッパー価を30以上60以下とすることが好ましい。特に限定されないが、原料パルプの材料として用いられる原料チップを、水酸化ナトリウムを含む薬液で処理することが好ましく、水酸化ナトリウムを含む薬液による処理方法としては、公知の薬液を使用する公知の処理方法を用いることができる。
原料パルプのカッパー価を30以上60以下とすることにより、自動包装成形性に優れ、かつ、得られる包装袋が破袋しにくいヒートシール紙が得られる。当該観点から、原料パルプのカッパー価は、50以下とすることが好ましく、45以下とすることがより好ましい。
原料パルプの材料として用いられる原料チップは、針葉樹パルプを主成分とすることが好ましい。「針葉樹パルプを主成分とする原料チップ」とは、原料チップ中、針葉樹の含有量が50質量%超のものをいい、針葉樹の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
原料パルプに、漂白処理を施さなくてもよいし、漂白処理を施してもよい。原料パルプは、晒クラフトパルプおよび未晒クラフトパルプよりなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、未晒クラフトパルプであることがより好ましい。
(叩解工程)
叩解工程は、蒸解処理した原料パルプを好ましくは20質量%以上45質量%以下含有する分散液を叩解処理する工程である。叩解処理の方法は特に限定されないが、蒸解処理した原料パルプを水中に分散させて、上記の原料パルプ濃度の分散液を作製し、叩解することが好ましい。叩解処理方法としては、特に限定されないが、例えば、ダブルディスクリファイナー、シングルディスクリファイナー、コニカルリファイナー等の叩解機を用いて行うことができる。
蒸解処理した原料パルプを20質量%以上45質量%以下含有する分散液を叩解処理することにより、耐衝撃性および加工性を有する紙基材および該紙基材を用いたヒートシール紙が得られると共に、生産性に優れる。
(抄紙工程)
抄紙工程は、叩解処理した原料パルプを抄紙する工程である。抄紙方法については、特に限定されず、例えばpHが4.5付近で抄紙を行う酸性抄紙法、pHが約6~約9で抄紙を行う中性抄紙法等が挙げられる。抄紙工程では、必要に応じて、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙工程用薬剤を適宜添加できる。抄紙機についても、特に限定されず、例えば長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機、またはこれらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機等が挙げられる。
本実施形態のヒートシール紙に用いられる紙基材は、上述した蒸解工程と、叩解工程と、抄紙工程と、を含む方法により得ることができる。抄紙工程の後に、必要に応じて、クルパック設備を用いて紙匹を収縮させるクルパック工程を有していてもよい。クルパック設備としては、公知のものを用いることができる。なお、実施形態のヒートシール紙に用いられる紙基材の製造方法は、上記方法に限定されない。
また、本実施形態において、ヒートシール紙の製造方法は、紙基材の表面を薬剤で処理する表面処理工程を含んでいてもよい。表面処理工程に用いられる薬剤としては、サイズ剤、耐水化剤、保水剤、増粘剤、滑剤等が挙げられる。表面処理工程に用いられる装置としては、公知の装置を用いることができる。
本実施形態のヒートシール紙の製造方法は、上記のように得られた紙基材上の少なくとも一方の面上に、ヒートシール層を塗工する塗工工程を含む。なお、ヒートシール層塗工液(ヒートシール層塗料)は、二度以上塗工してもよい。
紙基材に複数のヒートシール層を形成する場合において、逐次的にヒートシール層を形成する上記の方法が好ましいが、これに限定されるものではなく、同時多層塗工法を採用してもよい。同時多層塗工法とは、複数種の塗工液をそれぞれ別個にスリット状ノズルから吐出させて、液体状の積層体を形成し、それを紙基材上に塗工することにより、多層のヒートシール層を同時に形成する方法である。
ヒートシール層塗工液を紙基材に塗工するための塗工設備には、特に限定はなく、公知の設備を用いればよい。塗工設備としては、例えば、ブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、スリットダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロールコーター、サイズプレス、ゲートロールコーター、シムサイザー等が挙げられる。
ヒートシール層を乾燥するための乾燥設備には、特に限定されず、公知の設備を用いることができる。乾燥設備としては、例えば、熱風乾燥機、赤外線乾燥機、ガスバーナー、熱板等が挙げられる。また、乾燥温度は、乾燥時間等を考慮して、適宜設定すればよい。
ヒートシール層塗工液の溶媒としては、特に限定されず、水またはエタノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、トルエン等の有機溶媒を用いることができる。これらの中でも、揮発性有機溶媒の問題を生じない観点から、ヒートシール層塗工液の分散媒としては、水が好ましい。すなわち、ヒートシール層塗工液は、ヒートシール層用水系組成物であることが好ましい。
ヒートシール層塗工液の固形分量(固形分濃度)は、特に限定されず、塗工性および乾燥容易性の観点から適宜選択すればよいが、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、よりさらに好ましくは40質量%以下である。
ヒートシール層の塗工量(乾燥後)の好ましい範囲は、上述した通りである。ヒートシール層は、1層であってもよいし、2層以上であってもよい。ヒートシール層が2層以上である場合、上記の塗工量は合計塗工量を表す。
ヒートシール層を塗工乾燥した後、スーパーカレンダー処理を行うことも好ましい。ここで、スーパーカレンダー処理とは、抄紙とは独立して設置され、一般には、金属ロール間、または金属ロールと弾性ロールとの間に処理対象である紙等を通し、加熱、加圧等を行うものである。スーパーカレンダー処理は、一段で行ってもよく、多段であってもよく、特に限定されない。
スーパーカレンダー処理を行うことによって、ヒートシール層表面の平滑性が向上し、その結果、ヒートシール剥離強度の向上(最低基材破壊温度の低下)につながるので好ましい。また、クラークこわさが減少し、所望のクラークこわさのヒートシール紙が得られるので好ましい。
また、ヒートシール層とは反対面(例えば、紙基材の一方の面のみにヒートシール層が設けられ、他方の面は紙基材が露出している場合は、紙基材表面)の平滑性が向上し、その結果、印刷適性が向上するので好ましい。
さらに、スーパーカレンダー処理を行うことによって、ヒートシール紙の密度が上がる傾向があり、また、上述したように表面平滑性が向上することから、製袋の際に、包装機におけるヒートシール紙の送り出しが良好となり、自動包装成形性が向上するので好ましい。
スーパーカレンダー処理における線圧は、好ましくは10kg/cm以上、より好ましくは30kg/cm以上、さらに好ましくは50kg/cm以上であり、そして、好ましくは1000kg/cm以下、より好ましくは500kg/cm以下、さらに好ましくは200kg/cm以下である。ただし、上記の線圧は、所望の平滑度や密度に応じて適宜変更すればよい。
また、スーパーカレンダー処理において加熱を行う場合、加熱温度は特に限定されないが、処理の効果を高めつつ、紙基材やヒートシール層の熱による劣化やヒートシール層の貼り付きを防ぐ観点から、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上、さらに好ましくは35℃以上であり、そして、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは60℃以下である。
<用途>
本実施形態に係るヒートシール紙は、食品、生活雑貨、書籍、日用品(石鹸、洗剤、おむつ)などの包装袋として好適に使用できる。従って、本発明は、上記ヒートシール紙を用いた包装袋についても提供する。
以下に、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、以下の操作は23℃、相対湿度50%RHの条件で行った。また、実施例および比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を示す。
[実施例1]
<ヒートシール層塗料の調製>
スチレン-ブタジエン系共重合体の水分散液(日本ゼオン株式会社製、NipolラテックスLX407S12、固形分46%、ガラス転移温度18℃(カタログ値))98部(固形分換算)、パラフィンワックスエマルション(中京油脂株式会社製、ハイドリンL-700、固形分30%)2部(固形分換算)を混合し、固形分濃度が33%になるよう水を加えて撹拌し、ヒートシール層塗料(濃度33%)を調製した。上記スチレン/ブタジエン系共重合体は、25℃の水に対する溶解度が10g/L以下であった。
<ヒートシール紙の製造>
得られたヒートシール層塗料を、坪量82.9g/m、厚さ123μm、密度0.67g/cmの伸張紙(王子マテリア株式会社製、針葉樹未晒クラフトパルプ100質量%、フリーネス677mL、クルパック処理あり、平滑度F面4秒、W面7秒)のW面にヒートシール層の乾燥後の塗工量が10g/mとなるように、エアナイフコーターでヒートシール層を形成し、130~160℃のドライヤーで乾燥し、最後に線圧90kg/cmとなるようにして、塗工面にチルドロール、非塗工面にコットンロールが接触するようにし、ロールを40℃に加温して1段のスーパーカレンダー処理を行い、ヒートシール紙(平滑度F面8秒、W面64秒)を得た。スーパーカレンダー処理により、塗工前の紙と比べて平滑度が上がり、印刷性が向上した。
[実施例2]
伸張紙を坪量78.3g/m、厚さ126μm、密度0.62g/cmの伸張紙(王子マテリア株式会社製、針葉樹未晒クラフトパルプ100質量%、フリーネス563mL、平滑度F面12秒、W面29秒)に変更し、ヒートシール層の乾燥後の塗工量が12g/mとなるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、ヒートシール層形成およびスーパーカレンダー処理を行い、ヒートシール紙(平滑度F面15秒、W面61秒)を得た。
[実施例3]
市販のエチレン-アクリル酸共重合体(ガラス転移温度45℃)の水分散液98部(固形分換算)と、市販のカルナバワックスの水分散液2部(固形分換算)を混合し、固形分濃度が35%になるよう水を加えて撹拌し、ヒートシール層塗料(濃度35%)を調製した。得られたヒートシール層塗料を使用したこと以外は実施例2と同様にして、ヒートシール層形成およびスーパーカレンダー処理を行い、ヒートシール紙(平滑度F面15秒、W面82秒)を得た。上記エチレン-アクリル酸共重合体は、25℃の水に対する溶解度が10g/L以下であった。
[実施例4]
パラフィンワックスエマルション2部(固形分換算)の代わりに、ポリエチレンワックスエマルション(Aquacer 531、BYK社製、固形分濃度45質量%)2部(固形分換算)を添加してヒートシール層塗料を調製したこと以外、実施例2と同様にして、ヒートシール層形成およびスーパーカレンダー処理を行い、ヒートシール紙(平滑度F面15秒、W面42秒)を得た。
[実施例5]
伸張紙を坪量100g/m、厚さ149μm、密度0.67g/cmの伸張紙(王子マテリア株式会社製、針葉樹未晒クラフトパルプ100質量%、フリーネス677mL、クルパック処理あり、平滑度F面7秒、W面18秒)に変更したこと以外実施例1と同様にして、ヒートシール層形成およびスーパーカレンダー処理を行い、ヒートシール紙を得た(平滑度F面8秒、W面57秒)。
[実施例6]
スーパーカレンダー処理をしなかったこと以外は、実施例2と同様にして、ヒートシール紙を得た(平滑度F面12秒、W面40秒)。
[実施例7]
ヒートシール層塗料に、カオリン(平均粒子径8μm、アスペクト比80~100)の濃度50%水分散液を10部(固形分換算)となるように混合したこと以外、実施例2と同様にして、ヒートシール紙(平滑度F面15秒、W面24秒)を得た。
[実施例8]
パラフィンワックスエマルション2部(固形分換算)の代わりに、カルナバワックスエマルション(ML160RPH、マイケルマン社製、固形分濃度25質量%)2部(固形分換算)を添加してヒートシール層塗料を調製したこと以外、実施例2と同様にして、ヒートシール層形成およびスーパーカレンダー処理を行い、ヒートシール紙(平滑度F面15秒、W面62秒)を得た。
[比較例1]
伸張紙を坪量79.2g/m、厚さ132μm、密度0.60g/cmの重包装用紙(王子マテリア株式会社製、針葉樹未晒クラフトパルプ100質量%、フリーネス578mL、平滑度F面3秒、W面2秒)に変更し、ヒートシール層の乾燥後の塗工量が10g/mとなるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、ヒートシール層形成およびスーパーカレンダー処理を行い、ヒートシール紙(平滑度F面25秒、W面65秒)を得た。
[比較例2]
伸張紙を坪量80.5g/m、厚さ114μm、密度0.71g/cmの未晒軽包装用紙(王子マテリア株式会社製、針葉樹未晒クラフトパルプ/広葉樹晒クラフトパルプ=80/20(質量比)、フリーネス478mL、平滑度F面17秒、W面16秒、クルパック処理なし)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ヒートシール層形成およびスーパーカレンダー処理を行い、ヒートシール紙(平滑度F面89秒、W面219秒)を得た。
[比較例3]
パラフィンワックスエマルションを添加しなかったこと以外、実施例2と同様にして、ヒートシール層形成およびスーパーカレンダー処理を行い、ヒートシール紙(平滑度F面15秒、W面60秒)を得た。
[比較例4]
伸張紙を坪量50.7g/m、厚さ61μm、密度0.83g/cmの片艶晒クラフト紙(王子エフテックス株式会社製、広葉樹晒クラフトパルプ100質量%、フリーネス420mL、平滑度F面430秒、W面16秒、クルパック処理なし)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ヒートシール層形成およびスーパーカレンダー処理を行い、ヒートシール紙(平滑度F面963秒、W面219秒)を得た。
[比較例5]
伸張紙を坪量30.6g/m、厚さ30μm、密度1.01g/cmの厚口グラシン紙(王子エフテックス株式会社製、針葉樹晒クラフトパルプ100質量%、平滑度F面1300秒、W面1350秒)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ヒートシール層形成およびスーパーカレンダー処理を行い、ヒートシール紙(平滑度F面1700秒、W面1500秒)を得た。
[測定方法]
紙基材および得られたヒートシール紙について、以下の測定を行った。
<ヒートシール剥離強度の測定>
2枚1組のヒートシール紙を、ヒートシール層が向き合うように重ね、ヒートシールテスター(テスター産業製、TP-701-B)を用いて、150℃、0.2MPa、1秒の条件でヒートシールした。ヒートシールされた試験片を温度23℃±1℃、湿度50%±2%の室内で4時間以上静置した。続いて、ヒートシールされた試験片を15mm幅にカットし、引張試験機を用いて、引張速度300mm/minでT字剥離し、記録された最大荷重をヒートシール剥離強度とした。
<クラークこわさ>
JIS P 8143:2009に準じて、紙の縦方向と横方向のクラークこわさをそれぞれ測定し、両者を相乗平均して、クラークこわさ相乗平均値とした。
<突き刺し強度>
JIS Z1717:2019に準じて、試験を行った。
<砂利を入れた落下試験>
400mm角のヒートシール紙2枚をヒートシール層面を向かい合わせとして、3方をヒートシールし、約2kg分の砂利(砂に比べて鋭利である)を封入してから最後の1方をヒートシールして内容物入りの包装袋を作製した。これに対して、JIS Z 0202:2017に準じて落下試験を行った。落下試験は上記の様にして5つの袋を作製し、すべての袋での破れおよび破袋、ヒートシール部開封回数を合算し、下記基準に基づいて判定した(Aのみが合格である)。
A:落下試験で紙の破れや袋の破袋が全く発生しなかった
B:落下試験で紙の破れや袋の破袋のいずれかの合計箇所が1つ以上4つ以下であった
C:落下試験で紙の破れや袋の破袋のいずれかの合計箇所が5つ以上であった
<自動包装成形性試験>
高速横型ピロー包装機(αWrapper FW3410、株式会社フジキカイ製)を用いて、ヒートシール紙を連続で製袋した。この時中身は入れず、空袋で成形をし、外観および操業性を見て以下の判断を行った。ここで、「連続して製袋が不可能」とは、シワが発生したり、蛇行して袋にならない状態になってしまったり、断紙が起きたりする状態をいう。また、「外観が不良」とは、しわの混入、シール部のずれ、または袋の変形をいう(AおよびBが合格である)。
A:連続して製袋が可能であり、かつ袋の外観が良好であった
B:連続して製袋は可能であるが、袋の外観の不良がわずかにあった
C:連続して製袋が不可能であった
<平滑度>
JIS P8155:2010に準じて王研式平滑度測定を行い、平滑度の値とした。
なお、比較例3において、自動包装成形性の評価において、巻取りがブロッキングし、評価を行うことができなかった。
表1より、実施例1~8のヒートシール紙から得られた包装袋は、耐落下性に優れ、破袋が抑制されていた。また、実施例1~8のヒートシール紙は、自動包装成形に適用可能であり、実施例1~5、7、8のヒートシール紙は、自動包装成形性に優れるものであった。
一方、突き刺し強度が10.0N以上であるものの、クラークこわさの縦横相乗平均を坪量で除した値が1.00m/gを超える比較例1のヒートシール紙は、自動包装成形性に劣るものであった。また、突き刺し強度が10.0N未満であり、かつ、クラークこわさの縦横相乗平均を坪量で除した値が1.00m/gを超える比較例2のヒートシール紙から得られた包装袋は、自動包装成形性に劣るだけでなく、耐落下性に劣り、破袋が発生した。さらに、滑剤を含有しない、比較例3のヒートシール紙では、製造時塗工後の巻取りでブロッキングが発生し、加えて、自動包装による成形において、成形機への貼り付きが発生し、自動包装成形性の評価を実施できなかった。また、突き刺し強度が10.0N未満である比較例4のヒートシール紙は、耐落下性に劣り、破袋が発生した。さらに、クラークこわさの相乗平均を坪量で除した値が0.20m/g未満であり、かつ、突き刺し強度が10.0N未満である比較例5のヒートシール紙は、耐落下性に劣り、破袋が発生した。
なお、実施例2および6の対比から、スーパーカレンダー処理を行うことにより、クラークこわさが低減され、また、自動包装成形性が向上すると共に、ヒートシール剥離強度が向上することが分かった。
上記結果から、本実施形態のヒートシール紙は、自動包装成形性に優れ、かつ、該ヒートシール紙から得られた包装袋は、破袋しにくいといえる。

Claims (10)

  1. 紙基材の少なくとも一方の面に1層以上のヒートシール層を有するヒートシール紙であって、
    前記ヒートシール層は、水分散性樹脂バインダーおよび滑剤を含有し、
    前記ヒートシール紙のクラークこわさの縦横相乗平均を坪量(g/m)で除した値(クラークこわさの縦横相乗平均/坪量)(単位:m/g)が0.20m/g以上1.00m/g以下であり、
    前記ヒートシール紙の突き刺し強度が10.0N以上である、
    ヒートシール紙。
  2. 前記滑剤が、パラフィンワックス、カルナバワックス、およびポリオレフィンワックスよりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載のヒートシール紙。
  3. 前記ヒートシール層中の滑剤の含有量が1質量%以上5質量%以下である、請求項1に記載のヒートシール紙。
  4. 前記水分散性樹脂バインダーのガラス転移温度が0℃以上100℃以下である、請求項1に記載のヒートシール紙。
  5. 前記水分散性樹脂バインダーが、スチレン-ブタジエン共重合体およびオレフィン-不飽和カルボン酸系共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載のヒートシール紙。
  6. 前記紙基材を構成するパルプのカナダ標準ろ水度が、500mL以上750mL以下である、請求項1に記載のヒートシール紙。
  7. 前記紙基材を構成するパルプの主成分が針葉樹未晒クラフトパルプである、請求項1に記載のヒートシール紙。
  8. 前記紙基材が伸張紙である、請求項1に記載のヒートシール紙。
  9. ヒートシール層同士を150℃、0.2MPa、1秒の条件でヒートシールした際のヒートシール剥離強度が2.0N/15mm以上10.0N/15mm以下である、請求項1に記載のヒートシール紙。
  10. 請求項1~9のいずれか1項に記載のヒートシール紙を用いてなる、包装袋。

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