JP2023162663A - 研削装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ツルーイング直後の砥石でもワークを精度良く加工できる技術を提供する。【解決手段】研削装置は、ワークを軸線回りに回転可能に支持するワーク支持部と、ワークの軸線に交差する交差方向に移動可能に設けられ、ワークを研削する砥石を回転可能に設けられた、砥石台と、砥石がワークを研削するときの研削抵抗を測定する研削抵抗測定装置と、砥石台を交差方向に沿ってワークに向かって移動させる速度である切込速度の設定値である速度設定値と、研削抵抗の下限閾値と、を記憶する記憶部と、切込速度を変更する切込速度変更部と、を備え、切込速度変更部は、砥石のツルーイング後の各ワークの加工において、研削抵抗が下限閾値を下回るまでは、砥石台の切込速度を、速度設定値を超えない範囲で研削抵抗が低下するほど増加させ、研削抵抗が下限閾値を下回った後の各ワークの加工において、砥石台の切込速度を速度設定値とする。【選択図】図3
Description
本開示は、研削装置に関する。
特許文献1には、砥石の接線研削抵抗測定方法および砥石寿命判定方法が開示されている。特許文献1では、レーザー顕微鏡で砥石の3次元形状を測定することにより、砥石の接線研削抵抗を計算し、計算された砥石の接線研削抵抗を用いて、砥石のツルーイングの必要性を判定している。
ツルーイング直後の砥石は目が立っていないため、研削抵抗が大きい。そのため、ツルーイング直後の砥石でワークを研削した場合、目が立っている砥石でワークを研削した場合と同等の精度でワークを加工することが難しいという問題があった。したがって、ツルーイング直後の砥石でもワークを精度良く加工できる技術が望まれていた。
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本開示の第1の形態によれば、研削装置が提供される。この研削装置は、ワークを軸線回りに回転可能に支持するワーク支持部と、前記ワークの軸線に交差する交差方向に移動可能に設けられ、前記ワークを研削する砥石を回転可能に設けられた、砥石台と、前記砥石が前記ワークを研削するときの研削抵抗を測定する研削抵抗測定装置と、前記砥石台を前記交差方向に沿って前記ワークに向かって移動させる速度である切込速度の設定値である速度設定値と、前記研削抵抗の下限閾値と、を記憶する記憶部と、前記切込速度を変更する切込速度変更部と、を備え、前記切込速度変更部は、前記砥石のツルーイング後の各ワークの加工において、前記研削抵抗が前記下限閾値を下回るまでは、前記砥石台の前記切込速度を、前記速度設定値を超えない範囲で前記研削抵抗が低下するほど増加させ、前記研削抵抗が前記下限閾値を下回った後の各ワークの加工において、前記砥石台の前記切込速度を前記速度設定値とする。
この形態の研削装置によれば、砥石のツルーイング後のワークの加工において研削抵抗が下限閾値を下回るまでは、砥石台の切込速度を速度設定値よりも遅くするため、ワークを精度良く加工することができる。
(2)上記形態の研削装置において、前記切込速度変更部は、粗研削工程における前記切込速度を変更してもよい。この形態の研削装置によれば、ツルーイング直後の砥石でワークを研削加工する場合の、粗研削工程におけるワークの加工精度を改善できる。
(3)本開示の第2の形態によれば、研削装置が提供される。この研削装置は、ワークを軸線回りに回転可能に支持するワーク支持部と、前記ワークの軸線に交差する交差方向に移動可能に設けられ、前記ワークを研削する砥石を回転可能に設けられた、砥石台と、前記砥石が前記ワークを研削するときの研削抵抗を測定する研削抵抗測定装置と、前記砥石台を前記交差方向に沿って前記ワークに向かって移動させる速度である切込速度の設定値である速度設定値と、前記切込速度のオーバーライド値の設定値であるオーバーライド設定値と、前記研削抵抗の下限閾値と、を記憶する記憶部と、前記切込速度の前記オーバーライド値を変更するオーバーライド変更部と、前記切込速度を変更する切込速度変更部と、を備え、前記オーバーライド変更部は、前記砥石のツルーイング後の各ワークの加工において、前記研削抵抗が前記下限閾値を下回るまでは、前記オーバーライド値を、前記オーバーライド設定値を超えない範囲で前記研削抵抗が低下するほど増加させ、前記研削抵抗が前記下限閾値を下回った後の各ワークの加工において、前記オーバーライド値を前記オーバーライド設定値とし、前記切込速度変更部は、前記砥石台の前記切込速度を、前記速度設定値と前記オーバーライド値を乗じた速度とする。
この形態の研削装置によれば、砥石台の切込速度を、速度設定値とオーバーライド値を乗じた速度とし、砥石のツルーイング後のワークの加工において研削抵抗が下限閾値を下回るまでは、切込速度のオーバーライド値を速度設定値よりも遅くするため、ワークを精度良く加工することができる。
(4)上記形態の研削装置において、前記オーバーライド変更部は、粗研削工程における前記オーバーライド値を変更してもよい。この形態の研削装置によれば、ツルーイング直後の砥石でワークを研削加工する場合の、粗研削工程におけるワークの加工精度を改善できる。
(5)上記形態の研削装置において、前記研削抵抗測定装置は、前記研削抵抗を表す値として前記砥石を回転させるモータの電流値を測定する電流計であってもよい。この形態の研削装置によれば、砥石を回転させるモータの電流値に基づいて砥石台の切込速度を調整できる。
この形態の研削装置によれば、砥石のツルーイング後のワークの加工において研削抵抗が下限閾値を下回るまでは、砥石台の切込速度を速度設定値よりも遅くするため、ワークを精度良く加工することができる。
(2)上記形態の研削装置において、前記切込速度変更部は、粗研削工程における前記切込速度を変更してもよい。この形態の研削装置によれば、ツルーイング直後の砥石でワークを研削加工する場合の、粗研削工程におけるワークの加工精度を改善できる。
(3)本開示の第2の形態によれば、研削装置が提供される。この研削装置は、ワークを軸線回りに回転可能に支持するワーク支持部と、前記ワークの軸線に交差する交差方向に移動可能に設けられ、前記ワークを研削する砥石を回転可能に設けられた、砥石台と、前記砥石が前記ワークを研削するときの研削抵抗を測定する研削抵抗測定装置と、前記砥石台を前記交差方向に沿って前記ワークに向かって移動させる速度である切込速度の設定値である速度設定値と、前記切込速度のオーバーライド値の設定値であるオーバーライド設定値と、前記研削抵抗の下限閾値と、を記憶する記憶部と、前記切込速度の前記オーバーライド値を変更するオーバーライド変更部と、前記切込速度を変更する切込速度変更部と、を備え、前記オーバーライド変更部は、前記砥石のツルーイング後の各ワークの加工において、前記研削抵抗が前記下限閾値を下回るまでは、前記オーバーライド値を、前記オーバーライド設定値を超えない範囲で前記研削抵抗が低下するほど増加させ、前記研削抵抗が前記下限閾値を下回った後の各ワークの加工において、前記オーバーライド値を前記オーバーライド設定値とし、前記切込速度変更部は、前記砥石台の前記切込速度を、前記速度設定値と前記オーバーライド値を乗じた速度とする。
この形態の研削装置によれば、砥石台の切込速度を、速度設定値とオーバーライド値を乗じた速度とし、砥石のツルーイング後のワークの加工において研削抵抗が下限閾値を下回るまでは、切込速度のオーバーライド値を速度設定値よりも遅くするため、ワークを精度良く加工することができる。
(4)上記形態の研削装置において、前記オーバーライド変更部は、粗研削工程における前記オーバーライド値を変更してもよい。この形態の研削装置によれば、ツルーイング直後の砥石でワークを研削加工する場合の、粗研削工程におけるワークの加工精度を改善できる。
(5)上記形態の研削装置において、前記研削抵抗測定装置は、前記研削抵抗を表す値として前記砥石を回転させるモータの電流値を測定する電流計であってもよい。この形態の研削装置によれば、砥石を回転させるモータの電流値に基づいて砥石台の切込速度を調整できる。
A.第1実施形態:
図1は、研削装置100の概略構成を示す説明図である。図1には、互いに直交するZ軸およびX軸が表されている。Z軸およびX軸は、水平面に沿った軸である。
図1は、研削装置100の概略構成を示す説明図である。図1には、互いに直交するZ軸およびX軸が表されている。Z軸およびX軸は、水平面に沿った軸である。
研削装置100は、研削対象物としてのワークWに対して砥石31を接触させると共に、ワークWと砥石31とを相対的に移動させることでワークWの表面を研削加工する、工作機械である。本実施形態では、研削装置100は円筒研削盤である。ワークWは、円筒形状であり、例えば、金属やセラミックから形成される。なお、ワークWの形状および材料は、これに限られるものではない。
研削装置100は、ベッド10と、ワーク支持部20と、砥石台30と、Z軸送り装置40と、X軸送り装置50と、制御装置60と、を備える。
ベッド10は、ワーク支持部20と、砥石台30と、Z軸送り装置40と、X軸送り装置50と、を支持する。ベッド10は、例えば、鋳鉄により形成される。ベッド10の上面には、ワーク支持部20がZ軸方向に沿って移動するための摺動面と、砥石台30がX軸方向に沿って移動するための摺動面が形成されている。
ワーク支持部20は、ワークWがワーク回転軸AX回りに回転可能となるように、ワークWのZ軸方向の両端を支持する。ワーク回転軸AXは、ワークWの軸線であり、その方向はZ軸と平行な方向である。ワーク支持部20は、テーブル21と、主軸台22と、心押台23と、を備える。
テーブル21は、ベッド10の上面に配置されている。テーブル21の上面には、主軸台22と心押台23が取り付けられている。
主軸台22は、主軸24と、チャック25と、主軸回転駆動装置26と、ツルーイング装置27と、を備える。ワークWは、そのZ軸方向の一端をチャック25に把持されることによって、主軸24に装着されている。主軸回転駆動装置26は、主軸24を回転駆動させる。主軸24の軸線は、ワーク回転軸AXと等しい。そのため、主軸24が回転することにより、チャック25を介してワークWがワーク回転軸AX回りに回転する。ワークWの回転速度は、主軸回転駆動装置26のモータの回転数により制御される。ツルーイング装置27は、砥石31のツルーイングを行い、砥石31の表面形状を成形する。なお、ツルーイング装置27は、主軸台22ではなく、心押台23に設けられていてもよい。
心押台23は、Z軸方向において、ワークWを挟んで主軸台22と対向するように設けられている。心押台23は、センタ28を備える。センタ28は、ワークWがワーク回転軸AX回りに回転可能なように、ワークWのZ軸方向の他端を支持する。すなわち、ワークWは、チャック25とセンタ28によって、ワーク回転軸AX回りに回転可能に支持されている。
砥石台30は、ベッド10の上面に配置されている。砥石台30は、砥石31と、砥石軸32と、砥石回転駆動装置33と、研削抵抗測定装置34と、を備える。なお、砥石台30は、砥石31の回転速度を測定する速度計を備えていてもよい。
砥石31は、ワークWの表面を研削加工する。砥石31は、コア311と、砥石層312と、から構成される。コア311は、円盤状であり、鉄等の金属によって形成されている。コア311は、図示しないボルト等により砥石軸32に対して着脱可能に連結される。砥石層312は、コア311の外周に円盤状に設けられている。砥石層312は、砥粒と結合材を混合して焼き固めることによって形成される。砥粒としては、例えば、CBN(Cubic Boron Nitride:立方晶窒化ホウ素)や、ダイヤモンドが使用される。砥石層312がワークWと接触することにより、ワークWの外周が研削される。
砥石軸32は、砥石31をその軸線回りに回転可能に支持する。砥石軸32は、図示しない軸受を介して砥石台30に回転可能に支持されている。砥石軸32の軸線は、砥石31の軸線である砥石回転軸BXと一致する。本実施形態において、砥石回転軸BXの方向は、Z軸と平行な方向である。
砥石回転駆動装置33は、砥石軸32を砥石回転軸BX回りに回転駆動させる。砥石軸32が回転駆動することにより、砥石31は砥石回転軸BX回りに回転される。砥石31の回転速度は、砥石回転駆動装置33のモータの回転数により制御される。
研削抵抗測定装置34は、砥石31がワークWを研削するときの研削抵抗を測定する。本実施形態では、研削抵抗測定装置34は、砥石31を回転させるモータの電流値を測定する電流計であり、砥石31を回転させるモータの電流値を、砥石31がワークWを研削するときの研削抵抗を表す値として測定する。研削抵抗が大きくなるほど、砥石31を回転させるモータの電流値は大きくなる。なぜなら、研削抵抗が大きくなると砥石31の回転数が減少し、砥石31を回転させるモータが、砥石31の回転数を維持しようとすることにより、砥石31を回転させるモータの電流値が大きくなるためである。
Z軸送り装置40は、Z軸モータ41を有する。Z軸モータ41は、Z軸送り装置40に駆動力を与える。Z軸送り装置40は、テーブル21に接続されており、テーブル21をZ軸方向に沿って移動させる。Z軸方向を、送り方向とも呼ぶ。
X軸送り装置50は、X軸モータ51を有する。X軸モータ51は、X軸送り装置50に駆動力を与える。X軸送り装置50は、砥石台30に接続されており、砥石台30をX軸方向に沿って移動させる。X軸方向を、砥石31の切込方向とも呼ぶ。
制御装置60は、主軸回転駆動装置26と、砥石回転駆動装置33と、Z軸送り装置40と、X軸送り装置50と、研削抵抗測定装置34にそれぞれ電気的に接続されている。制御装置60は、主軸回転駆動装置26と、砥石回転駆動装置33と、Z軸送り装置40と、X軸送り装置50に対して制御指令を送信することで、研削装置100の動作を制御する。
図2は、制御装置60の構成を説明する図である。制御装置60は、CPU61と、記憶部62を備える。
記憶部62は、研削装置100を動作させるためのプログラムを記憶する。記憶部62に記憶されるプログラムは、加工プログラム621と、ツルーイングプログラム622と、暫定加工プログラム623と、全体プログラム624を含む。
加工プログラム621には、ワークWの研削加工を実行するためのプログラムが記載されている。加工プログラム621には、砥石台30の切込速度の設定値である速度設定値と、研削抵抗の上限閾値R2が記載されている。ここで、砥石台30の切込速度とは、砥石台30を、ワーク回転軸AXに交差する交差方向に沿ってワークWに向かって移動させる速度である。本実施形態では、砥石台30の切込速度は、砥石台30をX軸方向に沿ってワークWに向かって移動させる速度である。以下では、速度設定値を速度V2とも呼ぶ。速度V2は、例えば、ワークWの加工における砥石台30の切込速度の最大値である。
ツルーイングプログラム622には、砥石31のツル-イングを実行するためのプログラムが記載されている。
暫定加工プログラム623には、砥石31のツル-イングが行われた後のワークWの研削加工において、砥石台30の切込速度を変更するプログラムが記載されている。暫定加工プログラム623には、速度V2とは異なる砥石台30の切込速度の設定値である速度V1と、研削抵抗の下限閾値R1が記載されている。速度V1は、速度V2よりも遅い速度である。速度V1は、例えば、速度V2の0.5倍程度の速度である。また、暫定加工プログラム623には、研削抵抗に応じて砥石台30の切込速度を増加させるプログラムが記載されている。砥石台30の切込速度は、下記式(1)に従って、研削抵抗が低下するほど増加される。下記式(1)において、Rnは、砥石31が現在研削しているワークWの直前に研削したワークWの研削抵抗であり、Rtは、ツル-イングが行われた直後に砥石31が研削したワークWの研削抵抗である。
砥石台30の切込速度=V2-(Rn-R1)/(Rt-R1)×(V2-V1)・・・(1)
全体プログラム624には、加工プログラム621と、ツルーイングプログラム622と、暫定加工プログラム623を実行する順番および条件が記載されている。
CPU61は、記憶部62に記憶されたプログラムを実行することにより、研削加工実行部610と、情報取得部611と、下限比較部612と、上限比較部613と、切込速度変更部614と、動作制御部615と、として機能する。これらの機能部の一部または全部は、回路によって実現されてもよい。
研削加工実行部610は、全体プログラム624を実行することによって、ワークWの研削加工を行う。研削加工実行部610が全体プログラム624を実行することにより、加工プログラム621と、ツルーイングプログラム622と、暫定加工プログラム623が実行される。研削加工実行部610が全体プログラム624を実行することにより、CPU61は、情報取得部611と、下限比較部612と、上限比較部613と、切込速度変更部614と、動作制御部615として機能する。
情報取得部611は、研削抵抗測定装置34から砥石31がワークWを研削するときの研削抵抗を取得する。情報取得部611は、砥石31が各ワークWを研削するときの研削抵抗を記憶部62に記録する。そのため、記憶部62には、各ワークWの研削抵抗が記憶される。
下限比較部612は、各ワークWの粗研削加工において、研削抵抗測定装置34によって測定された研削抵抗を情報取得部611から取得して下限閾値R1と比較し、研削抵抗が下限閾値R1を下回っているかどうかを判定する。
上限比較部613は、各ワークWの粗研削加工において、研削抵抗測定装置34によって測定された研削抵抗を情報取得部611から取得して上限閾値R2と比較し、研削抵抗が上限閾値R2を上回っているかどうかを判定する。
切込速度変更部614は、加工プログラム621および暫定加工プログラム623を実行することによって、砥石台30の切込速度を変更する。切込速度変更部614が行う砥石台30の切込速度の変更については後述する。
動作制御部615は、ワークWの回転数と、砥石31の回転数と、ワーク支持部20の送り方向の速度と、砥石台30の切込速度を制御する。具体的には、動作制御部615は、主軸回転駆動装置26のモータの回転数を制御することにより、主軸24の回転数を制御し、主軸24に装着されたワークWの回転数を制御する。また、動作制御部615は、砥石回転駆動装置33の回転数を制御することにより、砥石31の回転数を制御する。また、動作制御部615は、Z軸モータ41の回転数を制御することにより、ワーク支持部20が送り方向に移動する速度を制御する。また、動作制御部615は、X軸モータ51の回転数を制御することにより、砥石台30の切込速度を制御する。また、動作制御部615は、ツルーイングプログラム622を実行することにより、砥石31のツル-イングを行う。砥石31のツルーイング時には、動作制御部615がワーク支持部20の送り方向に移動する速度と砥石台30の切込速度を制御することにより、ツルーイング装置27が、砥石31とX軸方向に対向する位置に移動される。
以下では、図3を用いて、第1実施形態において、切込速度変更部614が行う粗研削工程での砥石台30の切込速度の変更について説明する。図3は、ワークWの加工数と、粗研削工程での研削抵抗の変化および砥石台30の切込速度の関係を説明する図である。図3に示すグラフは、横軸がワークWの加工数を示している。図3の上部のグラフの縦軸は砥石台30の切込速度を、図3の下部のグラフの縦軸は研削抵抗測定装置34によって測定された研削抵抗の値を示している。
切込速度変更部614は、ツルーイング装置27によって砥石31のツルーイングが行われた後に、暫定加工プログラム623を実行する。切込速度変更部614は、ツルーイング直後のワークWの加工において、砥石台30の切込速度を速度V1とする。切込速度変更部614は、ツルーイング後の各ワークWの加工において、研削抵抗が下限閾値R1を下回ったと下限比較部612で判定されるまでは、粗研削工程における砥石台30の切込速度を式(1)に従って増加させる。具体的には、切込速度変更部614は、砥石31が現在研削しているワークWの直前に研削したワークWの研削抵抗Rnに応じて、粗研削工程における砥石台30の切込速度を増加させる。切込速度変更部614は、研削抵抗が下限閾値R1を下回ったと下限比較部612で判断されるまでは、粗研削工程における砥石台30の切込速度を、速度V2を超えない範囲で、研削抵抗が低下するほど速度V1から増加させる。すなわち、切込速度変更部614は、研削抵抗が下限閾値R1を下回ったと下限比較部612で判断されるまでは、ワークWの加工数に応じて、粗研削工程における砥石台30の切込速度を、速度V1から増加させる。図3に示すように、砥石31のツルーイングが行われた後、研削抵抗は、ワークWの加工数が増加するにつれて減少する。砥石31のツルーイング後にワークWの加工数が増加するにつれて研削抵抗が減少するのは、砥石31がワークWを研削加工することにより砥石31の目が立ってくるためである。ツルーイング後から研削抵抗が下限閾値R1を下回るまでのワークWの加工期間を、砥石の目立て期間とも呼ぶ。
下限比較部612において研削抵抗が下限閾値R1を下回ったと判定された場合、切込速度変更部614は、加工プログラム621を実行する。切込速度変更部614は、研削抵抗が下限閾値R1を下回ることになったワークWの加工よりも後の各ワークWの粗研削加工において、砥石台30の切込速度を速度V2とする。
研削抵抗が下限閾値R1を下回った後は、ワークWの加工数が増加するにつれて、研削抵抗が増加する。ワークWの加工数が増加するにつれて研削抵抗が増加するのは、砥石31の切れ味が落ちていくためである。研削抵抗が増加し、上限閾値R2を超えた場合、その時点でのワークWの加工が完了した後に、動作制御部615がツルーイングプログラム622を実行する。切込速度変更部614は、研削抵抗が下限閾値R1を下回ることになったワークWよりも後に加工されるワークWから、研削抵抗が上限閾値R2を超えるワークWまでのワークWの加工において、粗研削工程での砥石台30の切込速度を速度V2で一定とする。
上述した下限閾値R1および上限閾値R2は、例えば、同じ材料から形成された砥石31を用いて同じ材料から形成されたワークWを研削加工した際の、ワークWの加工精度の実績から決定される。
以上で説明した研削装置100によれば、切込速度変更部614は、研削抵抗測定装置34によって測定された、砥石31がワークWを研削するときの研削抵抗に基づいて、粗研削工程での砥石台30の切込速度を変更する。切込速度変更部614は、砥石31のツルーイングが行われてから研削抵抗が下限閾値R1を下回るまでの各ワークWの加工では、速度V2を超えない範囲で砥石台30の切込速度を研削抵抗が低下するほど増加させ、研削抵抗が下限閾値R1を下回った後に加工されるワークWから研削抵抗が上限閾値R2を超えるワークWまでの各ワークWの加工では、砥石台30の切込速度を速度V2で一定とする。すなわち、砥石31の目が十分に立っていない状態では、砥石31の目が立っている状態での砥石台30の切込速度である速度V2よりも遅い切込速度で砥石台30をワークWに向かって移動させる。そのため、十分に目が立っていない砥石31を有する砥石台30を速度V2でワークWに向かって移動させる場合と比べて、研削抵抗が小さくなる。したがって、十分に目が立っていない砥石31でワークWを研削することによる、粗研削工程でのワークWの加工精度の悪化を抑制することができる。また、粗研削工程では、粗研削工程以外の工程と比べて砥石台30の切込速度が速く、研削抵抗が大きいため、十分に目が立っていない砥石31でワークWを研削する場合に研削抵抗が大きくなることを効果的に抑制できる。したがって、ツルーイング直後の砥石31でも、粗研削工程においてワークWを精度良く加工することができる。
さらに、切込速度変更部614は、研削抵抗が下限閾値R1を下回った後の各ワークWの加工において、砥石台30の切込速度を速度V2とするため、砥石31の目が立っているにもかかわらず砥石台30の切込速度を速度V2よりも遅く設定することによってワークWの研削加工のサイクルタイムが長くなることを抑制できる。また、切込速度変更部614が、砥石の目立て期間において、研削抵抗が低下するほど砥石台30の切込速度を増加させることにより、ワークWの加工数が増加するにつれて砥石台30の切込速度が増加することになるため、砥石31の目が立ってくるにつれて砥石台30の切込速度を増加させることができる。したがって、砥石の目立て期間におけるワークWの研削加工のサイクルタイムを短縮できる。
B.第2実施形態:
図4は、第2実施形態における制御装置60の構成を説明する図である。
図4は、第2実施形態における制御装置60の構成を説明する図である。
第2実施形態では、記憶部62に記憶されている加工プログラム621には、切込速度のオーバーライド値の設定値であるオーバーライド設定値と、研削抵抗の上限閾値R2が記載されている。以下では、オーバーライド設定値をオーバーライド値O2とも呼ぶ。オーバーライド値O2は、例えば、100%である。
第2実施形態では、暫定加工プログラム623には、オーバーライド値O2とは異なる切込速度のオーバーライド値の設定値であるオーバーライド値O1と、研削抵抗の下限閾値R1が記載されている。オーバーライド値O1は、オーバーライド値O2よりも小さい値である。オーバーライド値O1は、例えば、50%である。また、暫定加工プログラム623には、砥石31のツル-イングが行われた後のワークWの研削加工において、研削抵抗に応じて切込速度のオーバーライド値を増加させるプログラムが記載されている。切込速度のオーバーライド値は、下記式(2)に従って、研削抵抗が低下するほど増加される。
切込速度のオーバーライド値=O2-(Rn-R1)/(Rt-R1)×(O2-O1)・・・(2)
第2実施形態では、CPU61は、記憶部62に記憶されたプログラムを実行することにより、オーバーライド変更部616としても動作する。
図5は、ワークWの加工数と、粗研削工程での研削抵抗の変化および切込速度のオーバーライド値の関係を説明する図である。図5に示すグラフは、横軸がワークWの加工数を示している。図5の上部のグラフの縦軸は切込速度のオーバーライド値を、図3の下部のグラフの縦軸は研削抵抗測定装置34によって測定された研削抵抗の値を示している。
オーバーライド変更部616は、ツルーイング装置27によって砥石31のツルーイングが行われた後に、暫定加工プログラム623を実行する。オーバーライド変更部616は、ツルーイング直後のワークWの加工において、切込速度のオーバーライド値をオーバーライド値O1とする。オーバーライド変更部616は、ツルーイング後の各ワークWの加工において、研削抵抗が下限閾値R1を下回ったと下限比較部612で判定されるまでは、粗研削工程における切込速度のオーバーライド値を式(2)に従って増加させる。具体的には、オーバーライド変更部616は、砥石31が現在研削しているワークWの直前に研削したワークWの研削抵抗Rnに応じて、粗研削工程における切込速度のオーバーライド値を増加させる。オーバーライド変更部616は、研削抵抗が下限閾値R1を下回ったと下限比較部612で判断されるまでは、粗研削工程における切込速度のオーバーライド値を、オーバーライド値O2を超えない範囲で、研削抵抗が低下するほどオーバーライド値O1から増加させる。すなわち、オーバーライド変更部616は、研削抵抗が下限閾値R1を下回ったと下限比較部612で判断されるまでは、ワークWの加工数に応じて、粗研削工程における切込速度のオーバーライド値を、オーバーライド値O1から増加させる。
下限比較部612において研削抵抗が下限閾値R1を下回ったと判定された場合、オーバーライド変更部616は、加工プログラム621を実行する。オーバーライド変更部616は、研削抵抗が下限閾値R1を下回ることになったワークWの加工よりも後の各ワークの粗研削加工において、切込速度のオーバーライド値をオーバーライド値O2とする。
切込速度変更部614は、砥石台30の切込速度を、砥石台30の切込速度の設定値である速度V2に、オーバーライド変更部616において変更されたオーバーライド値を乗じた値とする。本実施形態では、速度V2は記憶部62に記憶されている。
以上で説明した第2実施形態の研削装置100によれば、オーバーライド変更部616は、研削抵抗測定装置34によって測定された研削抵抗に基づいて、粗研削工程での切込速度のオーバーライド値を変更し、切込速度変更部614は、砥石台30の切込速度を、速度V2にオーバーライド値を乗じた値とする。そのため、制御装置60は、切込速度のオーバーライド値を変更することにより、ワークWの研削加工における砥石台30の切込速度を変更することができる。
オーバーライド変更部616は、砥石31のツルーイングが行われてから研削抵抗が下限閾値R1を下回るまでは、オーバーライド値O2を超えない範囲で切込速度のオーバーライド値を研削抵抗が低下するほど増加させ、研削抵抗が下限閾値R1を下回った後に加工されるワークWから研削抵抗が上限閾値R2を超えるワークWまでは、切込速度のオーバーライド値をオーバーライド値O2で一定とする。すなわち、砥石台30の切込速度は、砥石31のツルーイングが行われてから研削抵抗が下限閾値R1を下回るまでは、速度V2を超えない範囲で研削抵抗が低下するほど増加し、研削抵抗が下限閾値R1を下回った後に加工されるワークWから研削抵抗が閾値R2を超えるワークWまでは、速度V2で一定となる。そのため、十分に目が立っていない砥石31でワークWを研削することによる、粗研削工程でのワークWの加工精度の悪化を抑制することができる。したがって、ツルーイング直後の砥石31でも、粗研削工程においてワークWを精度良く加工することができる。
C.他の実施形態:
(C-1)上記実施形態では、記憶部62は、研削抵抗の上限閾値R2を予め記憶している。これに対して、記憶部62は、研削抵抗の上限閾値R2を予め記憶していなくてもよい。記憶部62が上限閾値R2を記憶していない場合、動作制御部615は、研削抵抗が下限閾値R1を下回った後に予め定められた本数のワークWの加工が行われた場合に、砥石31のツル-イングを行ってもよい。ここで、予め定められたワークWの本数は、予め記憶部62に記憶されている。
(C-1)上記実施形態では、記憶部62は、研削抵抗の上限閾値R2を予め記憶している。これに対して、記憶部62は、研削抵抗の上限閾値R2を予め記憶していなくてもよい。記憶部62が上限閾値R2を記憶していない場合、動作制御部615は、研削抵抗が下限閾値R1を下回った後に予め定められた本数のワークWの加工が行われた場合に、砥石31のツル-イングを行ってもよい。ここで、予め定められたワークWの本数は、予め記憶部62に記憶されている。
(C-2)第1実施形態では、切込速度変更部614は、ワークWの粗研削工程で、研削抵抗に基づいて砥石台30の切込速度を変更している。これに対して、切込速度変更部614は、ワークWの仕上げ工程など、ワークWの他の研削工程についても、研削抵抗に基づいて砥石台30の切込速度を変更してもよい。
(C-3)第2実施形態では、オーバーライド変更部616は、ワークWの粗研削工程で、研削抵抗に基づいて切込速度のオーバーライド値を変更している。これに対して、オーバーライド変更部616は、ワークWの仕上げ工程など、ワークWの他の研削工程についても、研削抵抗に基づいて切込速度のオーバーライド値を変更してもよい。
(C-4)上記実施形態では、砥石台30は、ワーク回転軸AXに垂直なX軸に沿った方向に移動可能に設けられている。これに対して、砥石台30は、ワーク回転軸AXに対して傾斜した方向に移動可能に設けられていてもよい。
(C-5)上記実施形態では、研削抵抗測定装置34は、砥石31を回転させるモータの電流値を測定する電流計である。これに対して、研削抵抗測定装置34は、例えば、テーブル21をZ軸に沿った方向に移動させるZ軸モータ41の電流値を測定する電流計でもよいし、砥石31によるワークWの研削時に発生するアコースティックエミッション(AE)を検出するAEセンサでもよい。
(C-6)上記実施形態では、研削装置100は円筒研削盤である。これに対して、研削装置100は、内面研削盤や、センタレス研削盤、平面研削盤であってもよい。
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
10…ベッド、20…ワーク支持部、21…テーブル、22…主軸台、23…心押台、24…主軸、25…チャック、26…主軸回転駆動装置、27…ツルーイング装置、28…センタ、30…砥石台、31…砥石、32…砥石軸、33…砥石回転駆動装置、34…研削抵抗測定装置、40…Z軸送り装置、41…Z軸モータ、50…X軸送り装置、51…X軸モータ、60…制御装置、61…CPU、62…記憶部、100…研削装置、311…コア、312…砥石層、610…研削加工実行部、611…情報取得部、612…下限比較部、613…上限比較部、614…切込速度変更部、615…動作制御部、616…オーバーライド変更部、621…加工プログラム、622…ツルーイングプログラム、623…暫定加工プログラム、624…全体プログラム、AX…ワーク回転軸、BX…砥石回転軸、W…ワーク
Claims (5)
- 研削装置であって、
ワークを軸線回りに回転可能に支持するワーク支持部と、
前記ワークの軸線に交差する交差方向に移動可能に設けられ、前記ワークを研削する砥石を回転可能に設けられた、砥石台と、
前記砥石が前記ワークを研削するときの研削抵抗を測定する研削抵抗測定装置と、
前記砥石台を前記交差方向に沿って前記ワークに向かって移動させる速度である切込速度の設定値である速度設定値と、前記研削抵抗の下限閾値と、を記憶する記憶部と、
前記切込速度を変更する切込速度変更部と、を備え、
前記切込速度変更部は、
前記砥石のツルーイング後の各ワークの加工において、前記研削抵抗が前記下限閾値を下回るまでは、前記砥石台の前記切込速度を、前記速度設定値を超えない範囲で前記研削抵抗が低下するほど増加させ、
前記研削抵抗が前記下限閾値を下回った後の各ワークの加工において、前記砥石台の前記切込速度を前記速度設定値とする、
研削装置。 - 請求項1に記載の研削装置であって、
前記切込速度変更部は、粗研削工程における前記切込速度を変更する、
研削装置。 - 研削装置であって、
ワークを軸線回りに回転可能に支持するワーク支持部と、
前記ワークの軸線に交差する交差方向に移動可能に設けられ、前記ワークを研削する砥石を回転可能に設けられた、砥石台と、
前記砥石が前記ワークを研削するときの研削抵抗を測定する研削抵抗測定装置と、
前記砥石台を前記交差方向に沿って前記ワークに向かって移動させる速度である切込速度の設定値である速度設定値と、前記切込速度のオーバーライド値の設定値であるオーバーライド設定値と、前記研削抵抗の下限閾値と、を記憶する記憶部と、
前記切込速度の前記オーバーライド値を変更するオーバーライド変更部と、
前記切込速度を変更する切込速度変更部と、を備え、
前記オーバーライド変更部は、
前記砥石のツルーイング後の各ワークの加工において、前記研削抵抗が前記下限閾値を下回るまでは、前記オーバーライド値を、前記オーバーライド設定値を超えない範囲で前記研削抵抗が低下するほど増加させ、
前記研削抵抗が前記下限閾値を下回った後の各ワークの加工において、前記オーバーライド値を前記オーバーライド設定値とし、
前記切込速度変更部は、
前記砥石台の前記切込速度を、前記速度設定値と前記オーバーライド値を乗じた速度とする、
研削装置。 - 請求項3に記載の研削装置であって、
前記オーバーライド変更部は、粗研削工程における前記オーバーライド値を変更する、
研削装置。 - 請求項1から4のいずれか一項に記載の研削装置であって、
前記研削抵抗測定装置は、前記研削抵抗を表す値として前記砥石を回転させるモータの電流値を測定する電流計である、
研削装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2022073154A JP2023162663A (ja) | 2022-04-27 | 2022-04-27 | 研削装置 |
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JP2022073154A Pending JP2023162663A (ja) | 2022-04-27 | 2022-04-27 | 研削装置 |
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2022
- 2022-04-27 JP JP2022073154A patent/JP2023162663A/ja active Pending
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