JP2023151498A - 化合物超電導前駆体素線、化合物超電導前駆体撚線および化合物超電導撚線 - Google Patents

化合物超電導前駆体素線、化合物超電導前駆体撚線および化合物超電導撚線 Download PDF

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Abstract

【課題】従来よりも、撚線製造性および超電導特性に優れた化合物超電導前駆体素線、化合物超電導前駆体撚線及び化合物超電導撚線を提供する。【解決手段】化合物超電導前駆体素線1は、複数本の化合物超電導前駆体フィラメント11及び複数本の化合物超電導前駆体フィラメントを埋設し、第一安定化材を含む第一マトリックス前駆体12で構成される化合物超電導前駆体部10と、化合物超電導前駆体部の外周側に配置される強化材部30と、強化材部の内周側及び外周側の少なくとも一方に配置され、第二安定化材からなる安定化材部40とを有し、安定化材部のビッカース硬さ(HV)が90以下であり、かつ、化合物超電導前駆体素線の0.2%引張耐力が200MPa以上である。【選択図】図1

Description

本開示は、化合物超電導前駆体素線、化合物超電導前駆体撚線および化合物超電導撚線に関する。
強磁場発生用の大型超電導マグネットに適用される、NbSnなどの化合物超電導素線を複数本撚り合わせることによって大電流化した化合物超電導撚線において、マグネット運転時に印加される電磁応力による素線の動きに起因する性能低下を抑制し、導体電流密度を増大するために、撚りピッチを短くし、撚線のボイド率(撚線中の空隙部の割合)を小さくする構造とすることがある。
しかしながら、化合物超電導生成熱処理前の素線(以下、化合物超電導前駆体素線ともいう)を撚り合わせる工程(撚線工程)において、撚りピッチを短くし、その後の圧縮工程において撚線のボイド率を小さくすると、化合物超電導前駆体素線に対して局所的に大きい加工応力が印加される頻度が多くなり、化合物超電導前駆体素線に異常変形や断線が発生することにより、製造歩留まりが著しく低下するという問題があった。さらに、この異常状態にあるNbSn前駆体素線を撚り合わせた撚線に超電導生成熱処理を施したNbSn超電導マグネットは、励磁時に生じる電磁応力によって、NbSn素線中のNbSnフィラメントに大きな歪が印加され、超電導特性が低下するだけでなく、極端な場合、NbSnフィラメントにクラックが入り超電導状態を維持できなくなるという問題があった。
一方、NbSn前駆体素線内部に高強度材を複合した、高強度型NbSn前駆体素線および複数の素線を撚り合わせた撚線を用い超電導生成熱処理を施して得られるNbSn超電導マグネットは、励磁時に生じる大きな電磁応力下においても優れた超電導特性を示す。しかしながら、高強度材を複合したNbSn前駆体素線は、その構成によっては、素線自体のスプリングバックが大きいため、撚りピッチを短くしたり、撚線のボイド率を小さくしたりする必要がある場合に、所定の撚線構造で要求された寸法に制御することが困難であり、撚線製造性における問題があった。これまで、上記のような問題に対処するために、多くの技術開発が実施されてきた。
例えば、特許文献1では、Cu母材の中にNbフィラメントを多数本埋設したCuNb強化材と複合化したNbSn超電導線についての記述がある。また、特許文献2では、化合物超電導素線の断面構造を規定し、高強度化を優先したCuNb強化タイプの化合物超電導撚線についての記述がある。しかしながら、特許文献1~2は、応力下での超電導性能向上に着目したものであり、撚線加工性の向上については配慮されていないため、大容量導体の製造に、そのまま適用することはできない。
また、特許文献3では、PIT法によるNbSn超伝導前駆体素線において、特定のSn拡散バリア構造で撚線化することにより、高い伝導度のCuによる安定化を確実にし、特に良好な電流安定性を得る技術が開示されている。しかしながら、特許文献3は、撚線の製造性の向上や、撚線自体の強化を意図していないため、運転時に大きな電磁応力が印加される化合物超電導撚線導体には適用できない。
また、特許文献4では、合金素線を焼鈍によって調質し、撚線の加工性を向上する手法が開示されている。また、特許文献5では、寸法規定した撚線を焼鈍してから、成型加工することにより、形状を改善する手法が開示されている。また、特許文献6では、焼鈍した素線または1次撚り線を成型加工後、再焼鈍することにより、撚線の形状を改善する手法が開示されている。しかしながら、特許文献4~6は、いずれも、撚線加工性の向上を意図したものであるが、運転時に大きな電磁応力が印加される化合物超電導撚線導体に、そのまま適用することはできない。
また、非特許文献1および2は、Nbロッド法Cu-Nb強化型NbSn線材の性能を示したものであり、大容量導体に用いる化合物超電導前駆体撚線の製造性を向上する技術を示したものではない。
また、非特許文献3および4では、ITER-CS用導体(国際核融合実験炉用センターソレノイド用導体)の通電特性を向上させるために、撚りピッチを短く、撚線のボイド率を小さくすることにより、運転時の強大な電磁応力による性能低下を抑制する技術が紹介されているが、撚線の製造性を向上する技術を示したものではない。
また、非特許文献5は、多くの銅線と共撚りし、撚りピッチを長く、撚線のボイド率を小さくし、平角形状にした、多重撚線の開発結果についての報告であり、撚線の製造性を向上する技術を示したものではない。
特許文献1~6および非特許文献1~5が述べているのは、化合物超電導線材および撚線導体設計を適正化するための学術的研究成果である。合理的に、実機コイル用撚線導体を設計し製造するためには、解決すべき課題として、運転時の電磁応力下での超電導特性の向上および撚線の製造性の向上を両立する必要がある。
特許第6155253号公報 国際公開第2020/066908号 特許第6425673号公報 特許第6201815号公報 特許第3148212号公報 特許第2930994号公報
M. Sugimoto, et al.、「Development of Nb-rod-method Cu-Nb rein-forced Nb3Sn Rutherford cables for react-and-wind processed wide-bore high magnetic field coils」、IEEE Trans. Appl. Supercond.、Vol.25 No.3(2015)6000605 M. Sugimoto, et al.、「Evaluation of Various Nb-Rod-Method Cu-Nb/Nb3Sn Wires designed for Practical React-and-Wind Coils」、IEEE Trans. Appl. Supercond.、Vol.30 No.4 (2020)6000905 IEEE Trans. on Appl. Super.、24 3(2014)4802404、Y.Takahashi IEEE Trans. on Appl. Super.、24 3(2014)4200705、Y.Nabara IEEE Trans. on Appl. Super.、27 4(2017)4800206、L.Muzzi
NbSnなどの化合物系超電導線材を用いた大型超電導マグネットの製造に適用される大型超電導導体は、撚線構造を有する。その撚線構造は、丸撚り構造や平角構造があるが、撚線断面当たりの電流密度を向上させ、撚りが崩れないようにするために、成型加工(圧縮加工)を施す。このような撚線構造では、撚線が1重撚り(素線を1回だけ撚り合わせる撚線)で製作されるのではなく、複数回撚り合わせて製作する多重撚り構造(高次撚り構造)とする場合がある。
上記のように、従来技術においては、大型超電導マグネットに適用されるNbSn超電導撚線において、電流密度の増大と通電時に電磁応力による超電導素線の動きを抑制するために、撚りピッチを短くする構成や、撚線のボイド率を小さくする構成を採用する。そのため、NbSn生成熱処理前の素線(NbSn前駆体素線)を用いた撚線製造工程において、撚りピッチを短くする撚線加工工程で素線が断線したり、撚線のボイド率を小さくする圧縮工程において、素線内部の構造材の異常変形が生じ、極端な場合、断線したりする。このような不具合状態にあるNbSn前駆体撚線導体を用いて、コイル巻線をした後、NbSn生成熱処理を施す(ワインド・アンド・リアクト法による)NbSn超電導マグネットや、NbSn生成熱処理を施した後、コイル巻線を行う(リアクト・アンド・ワインド法による)NbSn超電導マグネットのいずれにおいても、マグネット運転時に生じる電磁応力によって、NbSn超電導撚線を構成する素線中のNbSnフィラメントに大きな歪が印加され超電導特性が低下し、極端な場合、NbSnフィラメントにクラックが入り、超電導状態を維持できなくなるという問題があった。
本開示の目的は、従来よりも、撚線製造性および超電導特性に優れた化合物超電導前駆体素線、化合物超電導前駆体撚線および化合物超電導撚線を提供することである。
[1] 複数本の化合物超電導前駆体フィラメント、および前記複数本の化合物超電導前駆体フィラメントを埋設し、第一安定化材を含む第一マトリックス前駆体で構成される化合物超電導前駆体部と、前記化合物超電導前駆体部の外周側に配置される強化材部と、前記強化材部の内周側および外周側の少なくとも一方に配置され、第二安定化材からなる安定化材部とを有する化合物超電導前駆体素線であって、前記安定化材部のビッカース硬さ(HV)が90以下であり、かつ、前記化合物超電導前駆体素線の0.2%引張耐力が200MPa以上である、化合物超電導前駆体素線。
[2] 前記強化材部が、Nb、Ta、V、W、Mo、Fe、TiおよびHfの群から選択される1種の金属または2種以上の金属で構成される合金もしくは複合材からなる、上記[1]に記載の化合物超電導前駆体素線。
[3] 前記強化材部が、複数本の強化フィラメント、および前記複数本の強化フィラメントを埋設し、第三安定化材を含む第三マトリックスで構成される、上記[1]に記載の化合物超電導前駆体素線。
[4] 前記強化フィラメントが、Nb、Ta、V、W、Mo、Fe、TiおよびHfの群から選択される1種の金属または2種以上の金属で構成される合金からなり、前記第三安定化材が銅または銅合金である、上記[3]に記載の化合物超電導前駆体素線。
[5] 前記化合物超電導前駆体フィラメントがNbSn前駆体であり、前記化合物超電導前駆体部と前記強化材部との間に、NbもしくはTaまたはそれらの合金もしくは複合材からなるSn拡散防止部をさらに有する、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の化合物超電導前駆体素線。
[6] 前記第一安定化材が銅または銅合金である、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の化合物超電導前駆体素線。
[7] 前記第二安定化材が銅または銅合金である、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の化合物超電導前駆体素線。
[8] 前記化合物超電導前駆体素線において、前記強化材部の占積率が、5.0%以上40.0%以下、かつ、前記化合物超電導前駆体部の占積率よりも小さく、前記強化材部の外周側に配置される前記安定化材部の占積率が15.0%以上である、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の化合物超電導前駆体素線。
[9] 上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の化合物超電導前駆体素線を複数本撚り合わせてなる1次撚線を複数本撚り合わせてなる2次撚線を構成要素として有する、化合物超電導前駆体撚線。
[10] 上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の化合物超電導前駆体素線の1本または複数本と銅素線または銅合金素線の1本または複数本とを撚り合わせてなる1次撚線を複数本撚り合わせてなる2次撚線を構成要素として有する、化合物超電導前駆体撚線。
[11] 前記銅素線または前記銅合金素線のビッカース硬さ(HV)が90以下である、上記[10]に記載の化合物超電導前駆体撚線。
[12] 前記化合物超電導前駆体撚線を構成する前記化合物超電導前駆体素線の1本または複数本の横断面のうち、前記化合物超電導前駆体部の最大扁平率が0超0.2以下である、上記[9]~[11]のいずれか1つに記載の化合物超電導前駆体撚線。
[13] 上記[9]~[12]のいずれか1つに記載の化合物超電導前駆体撚線を加熱させてなる化合物超電導撚線。
本開示によれば、従来よりも、撚線製造性および超電導特性に優れた化合物超電導前駆体素線、化合物超電導前駆体撚線および化合物超電導撚線を提供することができる。
図1は、実施形態の化合物超電導前駆体素線の一例を示す横断面図である。 図2は、実施形態の化合物超電導前駆体素線の他の例を示す横断面図である。 図3は、実施形態の化合物超電導前駆体撚線の一例を示す横断面図である。 図4は、実施形態の化合物超電導前駆体撚線を構成する化合物超電導前駆体素線の一例を示す横断面図である。 図5は、実施形態の化合物超電導撚線を構成する化合物超電導素線の一例を示す横断面図である。 図6は、実施形態の化合物超電導撚線を構成する化合物超電導素線の他の例を示す横断面図である。 図7は、実施形態の化合物超電導撚線を構成する化合物超電導素線の他の例を示す横断面図である。
以下、実施形態に基づき詳細に説明する。
本発明者らは、複数の化合物超電導素線を撚り合わせてなるNbSn前駆体撚線などの化合物超電導前駆体撚線において、その製造性に優れ、かつ、化合物超電導撚線として超電導マグネットに組み込んだときに、優れた超電導特性を得るために、鋭意研究を重ねた結果、化合物超電導素線を構成する安定化材部の特性および化合物超電導前駆体素線の特性がそれぞれ所定の関係を満たすことで、従来技術が抱える問題を解決した化合物超電導前駆体素線およびそれを用いた化合物超電導前駆体撚線、ならびに撚線後に化合物超電導相を生成するための化合物超電導生成熱処理を施して得られる化合物超電導撚線を発明するに至った。
はじめに、実施形態の化合物超電導前駆体素線について説明する。
実施形態の化合物超電導前駆体素線は、複数本の化合物超電導前駆体フィラメント、および複数本の化合物超電導前駆体フィラメントを埋設し、第一安定化材を含む第一マトリックス前駆体で構成される化合物超電導前駆体部と、化合物超電導前駆体部の外周側に配置される強化材部と、強化材部の内周側および外周側の少なくとも一方に配置され、第二安定化材からなる安定化材部とを有し、安定化材部のビッカース硬さ(HV)が90以下であり、かつ、化合物超電導前駆体素線の0.2%引張耐力が200MPa以上である。
図1は、実施形態の化合物超電導前駆体素線の一例を示す横断面図である。図1に示すように、化合物超電導前駆体素線1は、化合物超電導前駆体部10と強化材部30と安定化材部40とを有する。
化合物超電導前駆体素線1を構成する化合物超電導前駆体部10は、複数本の化合物超電導前駆体フィラメント11と第一マトリックス前駆体12とで構成される。化合物超電導前駆体部10は、線状であり、化合物超電導前駆体素線1の軸方向(素線軸方向)に沿って延在している。第一マトリックス前駆体12は、複数本の化合物超電導前駆体フィラメント11を埋設し、第一安定化材を含む。
化合物超電導前駆体フィラメント11は、後述する化合物超電導相を生成するための化合物超電導生成熱処理を施すことによって、後述する図5~7に示す化合物超電導相を含む化合物超電導フィラメント21になる。後述する化合物超電導素線3を構成する化合物超電導相がNbSnで形成される金属化合物超電導相であることが好ましいことから、化合物超電導前駆体フィラメント11はNbSn前駆体であることが好ましく、Nbであることがより好ましい。化合物超電導相の種類に応じて、化合物超電導前駆体フィラメント11を構成する材料は適宜選択される。
第一安定化材を含む第一マトリックス前駆体12は、化合物超電導生成熱処理を施すことによって、図5~7に示す第一安定化材を含む第一マトリックス22になる。第一マトリックス22は、化合物超電導素線3における、化合物超電導フィラメント21の損傷の抑制、磁気的安定化、熱的安定化という効果を奏することができる。第一マトリックス前駆体12を構成する第一安定化材が銅または銅合金であると、これらの効果がさらに向上する。
また、化合物超電導相がNbSnで形成される金属化合物超電導相であることが好ましいことから、第一安定化材はCu-Sn合金で形成されていることが好ましい。化合物超電導素線3を構成する化合物超電導相の種類に応じて、第一安定化材を構成する材料は適宜選択される。
第一マトリックス前駆体12の第一安定化材がCu-Sn合金である場合、第一安定化材はSnを最大で15.8質量%(固溶限)まで含有することができる。加えて、第一マトリックス前駆体12の第一安定化材は、CuおよびSn以外の他の元素を少量であれば含有してもよく、例えばTiなどを0.20質量%以上0.35質量%以下の範囲で含有することが好ましい。
図1および後述する図2、5~6では、ブロンズ法によってNbSnの化合物超電導相を生成する例を示しているが、NbSnの化合物超電導相の生成には、内部スズ法などの別の方法を適用してもよい。また、ここでは、化合物超電導相がNbSnである例を示しているが、化合物超電導相は、NbTiなどの合金系超電導体と比較して、歪感受性の大きい超電導特性を有する化合物超電導体でもよい。
化合物超電導前駆体素線1を構成する強化材部30は、筒状であり、化合物超電導前駆体部10の外周側に配置される。強化材部30は、Nb、Ta、V、W、Mo、Fe、TiおよびHfの群から選択される1種の金属または2種以上の金属で構成される合金もしくは複合材からなることが好ましい。なお、強化材部30は、不可避不純物を含んでもよい。強化材部30は、引張り歪および曲げ歪に強い高強度機能を具備するという効果を奏することができる。
また、図2に示すように、強化材部30aは、複数本の強化フィラメント31と第三マトリックス32とで構成されてもよい。第三マトリックス32は、複数本の強化フィラメント31を埋設し、第三安定化材を含む。複数本の強化フィラメント31および第三マトリックス32を備える強化材部30aは、強化材部30に比べて、高強度機能だけでなく安定化機能を適切に具備するという効果を奏することができる。
強化材部30aを構成する強化フィラメント31は、Nb、Ta、V、W、Mo、Fe、TiおよびHfの群から選択される1種の金属または2種以上の金属で構成される合金からなることが好ましい。なお、強化フィラメント31は、不可避不純物を含んでもよい。
例えば強化フィラメント31がNbを主として含有する場合、不可避不純物として、例えば、Oが150ppm以下、Hが15ppm以下、Cが100ppm以下、Nが100ppm以下、Feが50ppm以下、Niが50ppm以下、Tiが20ppm以下、Siが50ppm以下、Wが300ppm以下、およびTaが1000ppm以下含まれることがある。また、強化フィラメント31がTaを主として含有する場合、不可避不純物として、O、H、C、N、Fe、Ni、Ti、Si、W、NbおよびMoが含まれることがある。
強化フィラメント31を構成するこれらの金属または合金は、化合物超電導生成熱処理時に、Cuに固溶しにくいため、Cuとの化合物が形成されにくく、曲げ歪特性の向上に有効に寄与する。そのなかでも、強化フィラメント31は、化合物超電導素線3への影響を考慮すると、強磁性を示さないNb、Ta、V、W、MoおよびHfの群から選択される1種の金属または2種以上の金属で構成される合金からなることが好ましく、さらに、加工性の点からはNb、TaおよびVの群から選択される1種の金属または2種以上の金属で構成される合金からなることが好ましい。
また、強化フィラメント31を構成する上記元素群から選択される2種以上の金属で構成される合金としては、銅または銅合金との複合加工性に優れるという点で、Nb-Ta合金であることが好ましい。また、上記元素群から選択される金属と銅とで構成される合金としては、銅または銅合金との複合加工性に優れるという点で、Cu-Nb合金またはCu-V合金であることが好ましい。
上記のCuに固溶しにくいとは、化合物超電導生成熱処理(例えば、600℃~750℃)において、強化フィラメント31を構成する金属または合金がCuに固溶する割合が1at%未満であることをいう。
上記のように、強化材部30aでは、Cuに固溶しにくい金属材料で構成される複数の強化フィラメント31が第三マトリックス32に埋設されている。そのため、強化材部30a内の強化フィラメント31に金属間化合物が生成されることを抑制でき、強化材部30に比べて、強化材部30aは引張り歪および曲げ歪に強い高強度な構成要素として機能できる。
強化材部30aの第三マトリックス32を構成する第三安定化材は、銅または銅合金であることが好ましい。なお、第三安定化材は、不可避不純物を含んでもよい。第三安定化材の不可避不純物としては、O、Fe、SおよびBiが挙げられる。第三安定化材を含む第三マトリックス32は、強化材部30に強化機能に加えて安定化機能を具備させるという効果を奏することができる。
化合物超電導前駆体素線1を構成する安定化材部40は、筒状であり、強化材部30の内周側および外周側の少なくとも一方に配置される。安定化材部40は、第二安定化材からなる。図1~2では、安定化材部40が強化材部30の内周側および外周側の両方に配置される例を示している。安定化材部40は、強化材部30の加工中の異常変形を抑制し、安定化機能を具備するという効果を奏することができる。
安定化材部40を構成する第二安定化材は、銅または銅合金であることが好ましく、無酸素銅であることがより好ましい。なお、第二安定化材は、不可避不純物を含んでもよい。第二安定化材の不可避不純物としては、O、Fe、SおよびBiが挙げられる。
また、上記のように、化合物超電導前駆体素線1では、化合物超電導前駆体部10を構成する第一安定化材、安定化材部40を構成する第二安定化材、および強化材部30aを構成する第三安定化材を使用している。ここでいう安定化材とは、JIS H 7005:2005に規定されているように、冷媒と熱的接触を確保し、および/または、電気的分流回路として働くように超電導体に電気的および/または熱的に接触させた、一般的には金属である材料であって、超電導体に複合化されて超電導体の安定性を増加させる常電導金属材料を意味する。具体的には、銅やアルミニウムなどの常電導金属は、極低温で比抵抗が低く、熱伝導が良いため、超電導線のマトリックスとして使用した場合、超電導状態から常電導状態への転移があっても、これらの常電導金属に電流がバイパスして流れる。これにより、後述する化合物超電導素線3において、発熱が抑えられ、また、発生した熱はすばやく伝播・拡散し、冷却される。さらには、外部の磁束変動をダンピングして超電導体にじかに磁束変動を伝えない、銅やアルミニウムなどの常電導金属が、超電導線の安定化材として広く用いられる。
また、安定化材部40のビッカース硬さ(HV)が90以下であり、かつ、化合物超電導前駆体素線1の0.2%引張耐力が200MPa以上である。安定化材部40のビッカース硬さは、化合物超電導前駆体素線1の軸方向に垂直な横断面における安定化材部40のビッカース硬さである。また、化合物超電導前駆体素線1の0.2%引張耐力は、化合物超電導前駆体素線1の軸方向の0.2%引張耐力である。
安定化材部40のビッカース硬さ(HV)が90以下であり、かつ、化合物超電導前駆体素線1全体の0.2%引張耐力が200MPa以上であると、従来生じていた化合物超電導前駆体素線1の断線や化合物超電導前駆体素線1内部の化合物超電導前駆体部10の異常変形を抑制し、撚線製造性を向上できる。さらに、複数の化合物超電導前駆体素線1を撚り合わせてなる化合物超電導前駆体撚線を用いて製造した化合物超電導マグネットは、励磁したときに生じる強大な電磁応力下においても堅牢であり、優れた超電導特性を維持することができる。このように、化合物超電導前駆体素線1および化合物超電導前駆体撚線2は製造性に優れており、化合物超電導撚線は堅牢かつ超電導特性に優れているので、合理的な設計の化合物超電導マグネットに供することができる。
上記理由から、安定化材部40のビッカース硬さは、90以下、好ましくは80以下、より好ましくは70以下である。同様の理由から、化合物超電導前駆体素線1の0.2%引張耐力は、200MPa以上、好ましくは230MPa以上、より好ましくは250MPa以上である。尚、安定化材部40のビッカース硬さは、撚線加工や圧縮工程において、許容できない異常変形や有害な外傷の発生を抑制するために50以上であることが望ましい。また、化合物超電導前駆体素線1の0.2%引張耐力は、良好な撚線加工性を維持するために、400MPa以下であることが望ましい。
また、化合物超電導前駆体部10の化合物超電導前駆体フィラメント11がNbSn前駆体である場合、化合物超電導前駆体素線1は、化合物超電導前駆体部10と強化材部30との間に、NbもしくはTaまたはそれらの合金もしくは複合材からなるSn拡散防止部50をさらに有することが好ましい。
Sn拡散防止部50は、化合物超電導生成熱処理時に、NbSnフィラメントを化合物超電導体部20に形成するための第一マトリックス前駆体12を構成するCu-Sn合金中のSnが、強化材部30や安定化材部40に拡散することを防止し、安定化材部40を構成する第二安定化材および強化材部30を構成する第三安定化材の残留抵抗比の低下を抑止すると共に、化合物超電導前駆体フィラメント11のNbフィラメントと反応してNbSnを生成するために必要なSn量を、Cu-Sn合金中に保持する機能を有している。
また、化合物超電導前駆体素線1において、強化材部30の占積率が、5.0%以上40.0%以下、かつ、化合物超電導前駆体部10の占積率よりも小さく、強化材部30の外周側に配置される安定化材部40の占積率が15.0%以上であることが好ましい。強化材部30の占積率および安定化材部40の占積率がそれぞれ上記範囲内であると、化合物超電導前駆体素線1の臨界電流をさらに向上できる。
各構成部の占積率とは、化合物超電導前駆体素線1の軸方向に垂直な横断面積に占める各構成部の面積の割合である。具体的には、強化材部30の占積率は、化合物超電導前駆体素線1の横断面積に占める強化材部30の面積の割合である。化合物超電導前駆体部10の占積率は、化合物超電導前駆体素線1の横断面積に占める化合物超電導前駆体部10の面積の割合である。安定化材部40の占積率は、化合物超電導前駆体素線1の横断面積に占める安定化材部40の面積の割合である。
次に、実施形態の化合物超電導前駆体撚線について説明する。
実施形態の化合物超電導前駆体撚線は、上記実施形態の化合物超電導前駆体素線を複数本撚り合わせてなる1次撚線を複数本撚り合わせてなる2次撚線を構成要素として有する。また、他の実施形態の化合物超電導前駆体撚線は、上記実施形態の化合物超電導前駆体素線の1本または複数本と銅素線または銅合金素線の1本または複数本とを撚り合わせてなる1次撚線を複数本撚り合わせてなる2次撚線を構成要素として有する。化合物超電導前駆体素線のみで構成される2次撚線を構成要素として有する上記実施形態の化合物超電導前駆体撚線に対して、他の実施形態の化合物超電導前駆体撚線では、各次撚線に1本以上の銅素線または銅合金素線が含まれる。
図3は、他の実施形態の化合物超電導前駆体撚線の一例を示す横断面図である。ここでは、2本の化合物超電導前駆体素線1と1本の銅素線60とを共撚りさせてなる1次撚線2aを3本撚り合わせてなる2次撚線2bを構成要素とし、4本の2次撚線2bを撚り合わせてなる3次撚線2cを平角成型加工させてなる化合物超電導前駆体撚線2を示している。
化合物超電導前駆体撚線2の製造時、成型加工を施す前の状態で、200℃以上500℃以下で、数秒以上数時間以内の熱処理を施すことによって、化合物超電導前駆体素線1を調質する。この調質は、成型加工を施す前の状態であればよく、撚り合わせる前の化合物超電導前駆体素線1でもよいし、1次撚線2aでもよいし、2次撚線2bでもよいし、3次撚線2cでもよい。この調質によって、安定化材部40のビッカース硬さおよび化合物超電導前駆体素線の0.2%引張耐力を制御する。また、1次撚線などの撚線を調質する場合、化合物超電導前駆体素線に撚り合わせられる銅素線または銅合金素線の強度を制御する調質を行うことが好ましい。
化合物超電導前駆体撚線2において、銅素線または銅合金素線のビッカース硬さ(HV)は、90以下であることが好ましく、80以下であることがより好ましく、70以下であることがさらに好ましい。銅素線または銅合金素線のビッカース硬さは、銅素線または銅合金素線の軸方向に垂直な横断面における銅素線または銅合金素線のビッカース硬さである。銅素線または銅合金素線のビッカース硬さ(HV)が上記範囲内である化合物超電導前駆体撚線2は、核融合炉などに搭載される強磁場発生用の大型超電導マグネットに好適に用いられる。
また、図4は、実施形態の化合物超電導前駆体撚線を構成する化合物超電導前駆体素線の一例を示す横断面図である。化合物超電導前駆体撚線を構成する化合物超電導前駆体素線1の1本または複数本の横断面のうち、化合物超電導前駆体部10の最大扁平率が0超0.2以下であることが好ましい。換言すると、化合物超電導前駆体撚線を構成する1本または複数本の化合物超電導前駆体素線1の横断面のうち、最も変形している化合物超電導前駆体部10の扁平率は0超0.2以下であることが好ましい。化合物超電導前駆体撚線を構成する化合物超電導前駆体素線1が1本である場合、1本の化合物超電導前駆体素線1を構成している化合物超電導前駆体部10の扁平率は0超0.2以下であることが好ましい。化合物超電導前駆体部10の扁平率が0である場合、化合物超電導前駆体部10の横断面形状は真円である。
化合物超電導前駆体部10の扁平率は、(1-(b/a))で定義される。aは、化合物超電導前駆体素線1の横断面(素線軸方向に垂直な断面)における、化合物超電導前駆体部10の長軸長さである。bは、化合物超電導前駆体素線1の横断面における、化合物超電導前駆体部10の短軸長さである。化合物超電導前駆体部10の長軸長さは、化合物超電導前駆体部10の最大外形寸法に相当し、化合物超電導前駆体部10の短軸長さは、化合物超電導前駆体部10の最小外形寸法に相当する。
化合物超電導前駆体部10の扁平率が上記範囲内であると、化合物超電導前駆体撚線を化合物超電導生成熱処理して得られる化合物超電導撚線は高い臨界電流を維持できる。こうした理由から、化合物超電導前駆体部10の扁平率が小さいほど、化合物超電導撚線の超電導特性が良好である。
次に、実施形態の化合物超電導撚線について説明する。実施形態の化合物超電導撚線は、上記実施形態の化合物超電導前駆体撚線を加熱させてなる。この加熱処理は、化合物超電導相を生成するための化合物超電導生成熱処理である。
図5は、実施形態の化合物超電導撚線を構成する化合物超電導素線の一例を示す横断面図であり、図1の構成を有する化合物超電導前駆体素線を加熱させてなる化合物超電導素線の横断面図である。図6は、図2の構成を有する化合物超電導前駆体素線を加熱させてなる化合物超電導素線の横断面図である。図7は、図4の状態の化合物超電導前駆体素線を加熱させてなる化合物超電導素線の横断面図である。
図5~7に示すように、化合物超電導素線3は、化合物超電導体部20と強化材部30、30aと安定化材部40とを有する。化合物超電導素線3は、複数の化合物超電導前駆体素線1を備える化合物超電導前駆体撚線2に対して化合物超電導生成熱処理を施すことによって得ることができる。化合物超電導生成熱処理は、コイル巻線前の化合物超電導前駆体撚線2に対して実施してもよいし、コイル巻線後の化合物超電導前駆体撚線2に対して実施してもよい。
化合物超電導素線3を構成する化合物超電導体部20は、化合物超電導相を含む複数本の化合物超電導フィラメント21および第一マトリックス22で構成される。化合物超電導体部20は、線状であり、化合物超電導素線3の軸方向に沿って延在している。第一マトリックス22は、複数本の化合物超電導フィラメント21を埋設し、第一安定化材を含む。
化合物超電導相は、NbSnで形成される金属化合物超電導相であることが好ましい。化合物超電導相は、NbSnに限定されるものではなく、例えば、NbAlや、超電導特性を有する他の金属化合物超電導相で形成されてもよい。
第一安定化材を含む第一マトリックス22は、化合物超電導素線3における、化合物超電導フィラメント21の損傷の抑制、磁気的安定化、熱的安定化という効果を奏することができる。第一マトリックス22を構成する第一安定化材が銅または銅合金であると、これらの効果がさらに向上する。
化合物超電導相がNbSnで形成される金属化合物超電導相であることが好ましいことから、ブロンズ法NbSn前駆体素線の場合、第一安定化材はCu-Sn合金で形成されていることが好ましい。また、化合物超電導相の種類に応じて、第一安定化材を構成する材料は適宜選択される。
第一マトリックス22の第一安定化材がCu-Sn合金である場合、第一マトリックス22中のSn含有割合は、化合物超電導前駆体素線1を構成する第一マトリックス前駆体12中のSn含有割合よりも小さい。Cu-Sn合金中のSnが化合物超電導フィラメント21としてのNbSnフィラメントの生成に使用される結果として、第一マトリックス22中のSn含有割合が0.1質量%以上2.0質量%程度に小さくなっても、第一マトリックス22はCuに相当する安定化材としての機能を有しない。
図5~6では、ブロンズ法によって製造した化合物超電導体部20を示している。ブロンズ法では、第一安定化材であるCu-Sn合金の第一マトリックス前駆体12中に、化合物超電導前駆体フィラメント11であるNbフィラメントが複数本埋設された状態の化合物超電導前駆体素線1に対し、化合物超電導相を生成するための化合物超電導生成熱処理を施すと、第一マトリックス前駆体12中のSnが拡散して、Nbフィラメントの表面と反応することによって、Nbフィラメントから化合物超電導フィラメント21であるNbSnフィラメントを生成することができる。
また、図5~6に示す化合物超電導体部20の拡大図では、Snと反応せずに残った未反応Nbの芯部分23が存在する例を示している。ただし、化合物超電導前駆体素線1の第一マトリックス前駆体12中に含有されるSnの量や、化合物超電導前駆体素線1の化合物超電導前駆体フィラメント11の径サイズなどによっては、未反応の芯部分23が化合物超電導体部20の化合物超電導フィラメント21に存在せず、化合物超電導フィラメント21はNbSnからなることもある。
強化材部30は、筒状または周方向に亘って同心円状に分散して配置されており、化合物超電導体部20の外周側に配置される。化合物超電導素線3を構成する強化材部30は、化合物超電導前駆体素線1を構成する強化材部30と基本的に同じ構成および機能を有する。
安定化材部40は、筒状であり、強化材部30の内周側および外周側の少なくとも一方に配置される。図5~7では、安定化材部40が強化材部30の内周側および外周側の両方に配置される例を示している。化合物超電導素線3を構成する安定化材部40は、化合物超電導前駆体素線1を構成する安定化材部40と基本的に同じ構成および機能を有する。
上記で述べたように、化合物超電導前駆体素線1の0.2%引張耐力が所定範囲内であり、化合物超電導前駆体素線1中の強化材部30、30aにより、引張に対する耐力を適切に保つことができるので、撚りピッチを短くする撚線工程や、撚線のボイド率を小さくする成型加工(圧縮加工)で従来生じていた化合物超電導前駆体素線の断線が抑制される。さらに、安定化材部40のビッカース硬さが所定範囲内であり、強化材部30、30aが化合物超電導前駆体部10を保護するので、撚線のボイド率を小さくする成型加工において、安定化材部40が選択的に変形して、化合物超電導前駆体部10の異常変形が抑制される。その結果、撚線製造性が向上し、化合物超電導前駆体部10の変形が少ない化合物超電導前駆体撚線2を得ることができる。
また、化合物超電導前駆体撚線2をコイル巻線した後に化合物超電導生成熱処理を施す方法(ワインド・アンド・リアクト法)で製造した化合物超電導マグネット、および化合物超電導前駆体撚線2を化合物超電導生成熱処理した後にコイル巻線をする方法(リアクト・アンド・ワインド法)で製造した化合物超電導マグネットのいずれの場合においても、マグネット励磁時に、撚線中の化合物超電導素線3に印加される電磁力によって生じる、化合物超電導素線3の化合物超電導フィラメント21に印加される歪が、強化材部30、30aを複合していることにより小さくなるだけでなく、化合物超電導体部20の変形が少ないので、超電導特性が向上する。
こうしたことから、撚線製造性と超電導特性の両方が向上するので、結果として、合理的なマグネット設計が可能になる。具体的には、ワインド・アンド・リアクト法で製造する化合物超電導マグネットにおいて、励磁時に生じる電磁応力が、化合物超電導撚線に繰り返して印加される場合、強化材部に加工歪が印加されて強度が増大し、化合物超電導フィラメントの残留歪が緩和される効果により、超電導特性が向上する。また、リアクト・アンド・ワインド法で製造する化合物超電導マグネットにおいて、化合物超電導撚線に室温で適切な事前曲げ歪印加処理を施すことによって、優れた超電導特性を得ることができる。その結果、いずれの製造方法においても、合理的な化合物超電導マグネット設計が可能になる。
以上説明した実施形態によれば、化合物超電導素線を構成する安定化材部の特性および化合物超電導前駆体素線の特性がそれぞれ所定の関係を満たすことによって、従来よりも撚線製造性および超電導特性に優れ、合理的なマグネット設計が可能になる。
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本開示の範囲内で種々に改変することができる。
次に、実施例および比較例について説明するが、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
化合物超電導体部がブロンズ法によって形成されたNbSnであり、TaからなるSn拡散防止部を備え、強化材部が無酸素銅のマトリックス中にNbフィラメントを埋設したCu-Nb複合材であり、無酸素銅の安定化材部を強化材部の外周側に有する複数の化合物超電導素線を備える化合物超電導撚線を製造した。以下、詳細に説明する。
Tiが添加されたCuSn合金に複数本のNbロッドを埋設したビレットに対して、押出加工と伸線加工とを施すことによって、NbロッドとCuSn合金の複合素線を得た。続いて、無酸素銅管の中央部にこの複合素線を複数本配置して集合体を構成し、この集合体の外周に管状のTaをSn拡散防止部として配置し、管状のTaの外周に無酸素銅管を配置し、無酸素銅管の外周に、無酸素銅に複数本のNbロッドを埋設したビレットに対して押出加工と伸線加工とを施して得られたCu-Nb強化材部用の素線を複数本配置することにより、化合物超電導前駆体素線用ビレットを得た。続いて、化合物超電導前駆体素線用ビレットに対して、押出し伸線加工を施すことによって、素線を得た。続いて、素線を200℃以上500℃以下で、数秒以上数時間以内の熱処理を施すことによって、素線を調質して化合物超電導前駆体素線を得た。
続いて、図3に示すように、直径0.83mmの2本の化合物超電導前駆体素線と直径0.83mmの1本の銅素線とを撚り合わせて1次撚りし、3本の1次撚線を撚り合わせて2次撚りし、4本の2次撚り線を撚り合わせて3次撚りし、3次撚線を平角成型加工して、化合物超電導前駆体撚線を得た。1次撚り、2次撚り、3次撚りの撚りピッチは、それぞれ25mm、48mm、90mmとした。3次撚線の平角成型加工は、撚線のボイド率30%とした。ここで、撚線のボイド率とは、図3に示す矩形状の点線内の面積に占める、全ての化合物超電導前駆体素線および全ての銅素線の合計面積を除いた面積の割合である。
続いて、化合物超電導前駆体撚線を570℃以上670℃以下で、数100時間の化合物超電導生成熱処理を施すことによって、表1に示す化合物超電導撚線を得た。
(実施例2)
強化材部をTaに変更し、安定化材部を強化材部の内周側と外周側に備え、強化材部および安定化材部の占積率ならびに化合物超電導前駆体素線の0.2%引張耐力を表1の値に変更したこと以外は実施例1と同様にして、化合物超電導撚線を製造した。
(比較例1)
調質を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、化合物超電導撚線を製造した。
(比較例2)
調質を行わなかったこと以外は実施例2と同様にして、化合物超電導撚線を製造した。
(比較例3)
強化材部を設けず、安定化材部の占積率を表1の値に変更したこと以外は実施例1と同様にして、化合物超電導撚線を製造した。
(比較例4)
調質を行わなかったこと以外は比較例3と同様にして、化合物超電導撚線を製造した。
上記実施例および比較例で製造した化合物超電導前駆体撚線から取り出した化合物超電導前駆体素線、および化合物超電導撚線から取り出した化合物超電導素線について下記の特性を調査した。結果を表1に示す。
安定化材部のビッカース硬さは、次のようにして測定した。まず、化合物超電導前駆体素線をエポキシ系樹脂に埋め込んだサンプルを化合物超電導前駆体素線の軸方向に対して垂直に切断し、切断面を研磨した。続いて、JIS Z 2244に準拠し、化合物超電導前駆体素線の横断面に対して、ダイヤモンドでできた角錐形圧子を、荷重10g、時間15秒で押し付け、生じた圧痕を計測するマイクロビッカース硬さ試験によって、安定化材部のビッカース硬さを測定した。
化合物超電導前駆体素線の0.2%引張耐力は、JIS C 3002の5.(引張り)に準ずる方法を適用した。具体的には、長さ180mmの化合物超電導前駆体素線の両端40mmをチャッキングし、軸方向に0.2%~0.5%の引張歪を印加してから除荷したときに得られたヤング率に等しい直線を、歪0.2%までオフセットし、応力歪曲線との交点(応力度)を0.2%引張耐力とした。
化合物超電導素線の臨界電流は、次のようにして測定した。長さ5cmの化合物超電導素線を液体ヘリウム中(4.2K)で、外部磁場14.5Tを素線の軸方向に対して垂直に印加した状態で、化合物超電導素線に通電し、4端子法(電圧タップ間距離1cm)で0.1μV/cmの電界が化合物超電導素線に発生したときの電流値を臨界電流値とした。
Figure 2023151498000002
表1に示すように、安定化材部のビッカース硬さが90以下であり、かつ、化合物超電導前駆体素線の0.2%引張耐力が200MPa以上である化合物超電導前駆体素線を用いると、撚線製造性および超電導特性に優れていた。
また、実施例1と比較例1の比較、および実施例2と比較例2の比較をすると、安定化材部のビッカース硬さおよび化合物超電導前駆体素線の0.2%引張耐力を制御する調質を施すことによって、化合物超電導前駆体撚線の横断面で、最も変形が大きい化合物超電導前駆体素線の化合物超電導前駆体部の扁平率が0.2以下となり、その結果、撚り戻した化合物超電導素線の臨界電流が、相対的に高い値を維持していた。
また、比較例3~4に比べて実施例1~2では、化合物超電導前駆体部の異常変形発生頻度が少なく、最も変形した化合物超電導前駆体部の扁平率が小さいことから、本開示の効果により、撚線製造性が向上した。そして、引張応力200MPa印加時の臨界電流(4.2K、14.5T)は、強化材部と複合化することの効果により、強化材部がない場合よりも、3割近く高い値であった。
なお、上記の実施例のように、Cu-Nb複合材中のNbはフィラメント状にCuマトリックス中に分散させることが有効であるが、CuとNbとをそれぞれシート状に積層させても同様な効果を得ることができる。また、上記の実施例では、化合物超電導前駆体素線や銅素線の表面処理を施していないが、素線表面にCrメッキなどの処理を施すと、化合物超電導前駆体撚線の化合物超電導生成熱処理時に、撚線中で接触する素線表面の無酸素銅部位同士が融着することが無く、化合物超電導撚線自体の可とう性や、超電導マグネット運転において、変動磁場が印加された時に素線間に流れる結合電流による付加的な交流損失発生を抑制することができる。さらに、上記の実施例においては、素線直径、各次の撚り本数、撚りピッチ、撚り次数(多重に撚り合わせる回数)、成型加工後のボイド率について、撚線製造が難しい具体的な数値に対して効果を確認したが、本発明の効果は、これらの数値に限定されるものではなく、化合物超電導撚線の通電容量等の要求特性を満足するために任意に設計された、素線直径、各次撚線の撚り本数、撚りピッチ、撚り次数、ボイド率に対して有効である。
1 化合物超電導前駆体素線
2 化合物超電導前駆体撚線
2a 1次撚線
2b 2次撚線
2c 3次撚線
3 化合物超電導素線
10 化合物超電導前駆体部
11 化合物超電導前駆体フィラメント
12 第一マトリックス前駆体
20 化合物超電導体部
21 化合物超電導フィラメント
22 第一マトリックス
23 芯部分
30、30a 強化材部
31 強化フィラメント
32 第三マトリックス
40 安定化材部
50 Sn拡散防止部
60 銅素線

Claims (13)

  1. 複数本の化合物超電導前駆体フィラメント、および前記複数本の化合物超電導前駆体フィラメントを埋設し、第一安定化材を含む第一マトリックス前駆体で構成される化合物超電導前駆体部と、
    前記化合物超電導前駆体部の外周側に配置される強化材部と、
    前記強化材部の内周側および外周側の少なくとも一方に配置され、第二安定化材からなる安定化材部と
    を有する化合物超電導前駆体素線であって、
    前記安定化材部のビッカース硬さ(HV)が90以下であり、かつ、前記化合物超電導前駆体素線の0.2%引張耐力が200MPa以上である、化合物超電導前駆体素線。
  2. 前記強化材部が、Nb、Ta、V、W、Mo、Fe、TiおよびHfの群から選択される1種の金属または2種以上の金属で構成される合金もしくは複合材からなる、請求項1に記載の化合物超電導前駆体素線。
  3. 前記強化材部が、複数本の強化フィラメント、および前記複数本の強化フィラメントを埋設し、第三安定化材を含む第三マトリックスで構成される、請求項1に記載の化合物超電導前駆体素線。
  4. 前記強化フィラメントが、Nb、Ta、V、W、Mo、Fe、TiおよびHfの群から選択される1種の金属または2種以上の金属で構成される合金からなり、前記第三安定化材が銅または銅合金である、請求項3に記載の化合物超電導前駆体素線。
  5. 前記化合物超電導前駆体フィラメントがNbSn前駆体であり、前記化合物超電導前駆体部と前記強化材部との間に、NbもしくはTaまたはそれらの合金もしくは複合材からなるSn拡散防止部をさらに有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物超電導前駆体素線。
  6. 前記第一安定化材が銅または銅合金である、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物超電導前駆体素線。
  7. 前記第二安定化材が銅または銅合金である、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物超電導前駆体素線。
  8. 前記化合物超電導前駆体素線において、
    前記強化材部の占積率が、5.0%以上40.0%以下、かつ、前記化合物超電導前駆体部の占積率よりも小さく、
    前記強化材部の外周側に配置される前記安定化材部の占積率が15.0%以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物超電導前駆体素線。
  9. 請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物超電導前駆体素線を複数本撚り合わせてなる1次撚線を複数本撚り合わせてなる2次撚線を構成要素として有する、化合物超電導前駆体撚線。
  10. 請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物超電導前駆体素線の1本または複数本と銅素線または銅合金素線の1本または複数本とを撚り合わせてなる1次撚線を複数本撚り合わせてなる2次撚線を構成要素として有する、化合物超電導前駆体撚線。
  11. 前記銅素線または前記銅合金素線のビッカース硬さ(HV)が90以下である、請求項10に記載の化合物超電導前駆体撚線。
  12. 前記化合物超電導前駆体撚線を構成する前記化合物超電導前駆体素線の1本または複数本の横断面のうち、前記化合物超電導前駆体部の最大扁平率が0超0.2以下である、請求項9~11のいずれか1項に記載の化合物超電導前駆体撚線。
  13. 請求項9~12のいずれか1項に記載の化合物超電導前駆体撚線を加熱させてなる化合物超電導撚線。
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