JP3754522B2 - Nb▲3▼Sn超電導線材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、核磁気共鳴(NMR)装置等に用いられる超電導マグネットの構成素材として使用されるNb3 Sn超電導線材に関し、特に加工性、耐力、強度に優れたNb3 Sn超電導線材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
超電導物質によって実現される永久電流現象を利用して、電力を消費せずに電流をコイル状に流して磁場を発生させる超電導マグネットは、核融合炉、磁気浮上列車、NMR装置、各種物性試験機器等に用いられている。この様な超電導マグネットには、従来からNbTi、Nb3 Sn等の超電導物質を線材にしたものが使用されている。特に、8T以上の高磁界を発生させるマグネットには、Nb3 Sn超電導線材が用いられる。
【0003】
図1は、この様な線材の例を示す拡大横断面図である。図1(a)は外部安定型と呼ばれるタイプであって、この種の超電導線材では広く用いられているタイプである。中心部はCu−Sn合金(ブロンズ)中にNbフィラメントが埋め込まれたNb/Cu−Sn合金複合多芯部からなり、これを取り囲む様にTaまたはNbからなる環状のバリア領域が形成されている。最外周部はCuよりなり、何らかの原因で超電導状態が失われた場合にも、電流を優先的に流し、線材の焼損を防ぐための安定化領域である。Nb3 Sn線材は、最終的な熱処理時に、多芯部のNbとブロンズの界面にNb3 Snを生成させることにより超電導特性を得る。またバリア層は、熱処理の際ブロンズ中のSnが最外周部のCu中に不純物として拡散し、安定化領域のCuを汚染することを防ぐために設けられている。図1(b)は内部安定型と呼ばれるタイプであって、中心部に安定化のためのCuを配していることを特徴とする。このタイプでは中心部のCuの周りにTaまたはNbからなる環状のバリア領域が形成され、さらにその外周にNb/Cu−Sn合金複合多芯部が設けられている。
【0004】
この様なNb3 Sn線材を用いた高磁界マグネットは蓄積エネルギーが大きく、励磁時にマグネットを構成する超電導線材に高い電磁応力が印可される。従って、超電導線材自体にも高い電磁応力に耐えられる耐力、強度が要求される。特に、Nb3 Sn線材の臨界電流は歪みに対して敏感で、歪みが約0.2%を超えると臨界電流が歪みと共に減少していくので、Nb3 Sn線材の高強度化が検討されており、これまでにもいくつかの方法が提案されている。
【0005】
特開平3−171514号では、線材内に補強材としてTa,Ta合金材を挿入する方法が提案され、また補強材としてCu−Nb合金を用いる方法(東北大学金属材料研究所 強磁場超伝導材料研究センター 平成6年度年次報告、p143)やアルミナ分散銅を用いる方法(東北大学金属材料研究所 強磁場超伝導材料研究センター 平成6年度年次報告、p147)も提案されている。これらのうち、図2にTaを補強材とするNb3 Sn線材の横断面図を示す(特開平3−171514号)。
【0006】
これら補強材を用いた線材の中で、線材の耐力、強度が最も向上するのはTaを用いた線材である。補強材としてTaを用いた場合には、他の補強材に比べて少ない量で所望の強度にすることが可能であるから、線材断面積に占める補強材の割合を少なく、即ち超電導に寄与するNb/Cu−Sn合金複合多芯部の割合を多くすることが可能となる。その結果、線材断面積あたりの臨界電流密度が高くとれることになり、超電導マグネットのコンパクト化にも寄与し得る。また、特開平3−171514号に記載されている様に、Taは低温で非常に優れた導電性を有するためTa自体を安定化材として用いることも可能であり、従ってTaを補強及び安定化の両目的で使用したものでは、線材断面積あたりの臨界電流密度をより一層高くとることができる様になる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、補強材としてTaを用いたNb3 Sn線材を製造する過程においては、図3に示す様に線材が正常に加工されない場合や断線を生じる場合があった。断線が発生した場合は言うまでもないが、正常に加工できない場合も、Nb3 Snからなる超電導フィラメントの内部断線をもたらし、その結果、臨界電流の低下を引き起こすことになる。
本発明はこの様な状況の下になされたものであり、その目的は、加工性に優れると共に、高耐力、高強度なNb3 Sn超電導線材を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の様な課題を解決し得た本発明のNb3 Sn超電導線材とは、Snを含有するCu基合金材中にNbまたはNb合金材からなるフィラメントが埋め込まれたNb/Cu−Sn合金複合多芯部と、Ta層またはTa合金層を夫々必須的に含むNb3 Sn超電導線材において、線材横断面における前記Ta層またはTa合金層の平均結晶粒径が0.3〜2.0μmであることを特徴とするNb3 Sn超電導線材である。
【0009】
或いは、Nb/Cu−Sn合金複合多芯部と、Ta合金層を夫々必須的に含むNb3 Sn超電導線材において、前記Ta合金層は、Nb,V,Zr,Hfから選ばれる1種以上を合計で0.1〜10%含有するものであることを特徴とするNb3 Sn超電導線材である。
【0010】
また或いは、Nb/Cu−Sn合金複合多芯部と、Ta層またはTa合金層を夫々必須的に含むNb3 Sn超電導線材において、前記Nb/Cu−Sn合金複合多芯部と前記Ta層またはTa合金層との間に、前記TaまたはTa合金のヴィッカース硬度と前記Cu−Sn合金のヴィッカース硬度の間のヴィッカース硬度を有する金属または合金からなる中間層が形成されていることを特徴とするNb3 Sn超電導線材である。
【0011】
【発明の実施の形態】
上述の様な加工の問題は、
1)fcc金属中に埋設されたbcc金属の引き抜き加工時には、bcc金属の一部の変形モードのみが加工されるために不均一変形が発生すること、
2)特に1)の状況はfcc金属とbcc金属の間の変形抵抗差が大きな時に顕著となること、
等に起因するものであることが分かった。本発明者らの検討の結果、以下の様な手段により、Taの不均一変形は抑制できることが判明した。
【0012】
▲1▼線材横断面におけるTa層またはTa合金層の平均結晶粒径を0.3〜2.0μmに制御する。
▲2▼Ta合金層に、Nb,V,Zr,Hfから選ばれる1種以上を合計で0.1〜10%含有するTa合金を用いる。
▲3▼Nb/Cu−Sn合金複合多芯部とTa層またはTa合金層との間に、前記TaまたはTa合金のヴィッカース硬度と前記Cu−Sn合金のヴィッカース硬度の間のヴィッカース硬度を有する金属または合金からなる中間層を形成する。
【0013】
また、上記▲1▼〜▲3▼の手段の中から2つ以上を併用することにより、Taの不均一変形防止効果が一層高いものとなる。以下、それぞれの手段について詳細に説明する。
【0014】
まず、Ta層またはTa合金層の平均結晶粒径を制御する手段について説明する。従来、補強材として用いられていたTa層においては、線材加工前のTaの平均結晶粒径で100〜150μm程度のものが使用されていたため、その後の線材加工により最終のTa層の平均結晶粒径が横断面では2.5〜5μm程度となっていた。
【0015】
本発明者らが、Ta層の平均結晶粒径を種々変化させて線材を加工したところ、最終的に線材に加工した際の線材の横断面におけるTa層の結晶粒径を従来より微細化したものではTa層の不均一変形が抑制されることが判明した。線材横断面におけるTa層の結晶粒径が微細化されることで、Ta層の不均一変形が抑制される理由の詳細は不明であるが、任意の方位を持つ多数の微細な結晶粒からTa層が構成される場合、引き抜き加工で粒内に不均一変形が生じたとしても、Ta層全体としては変形が顕著でなくなることによるものと類推される。
【0016】
線材横断面におけるTa層の平均結晶粒径は0.3〜2.0μmに制御される必要がある。平均結晶粒径が2.0μmを超える場合には、結晶粒の方位の影響が出やすいためTaの不均一変形を十分には抑えることができない。一方、平均結晶粒径が0.3μm未満の場合は、結晶粒の微細化によってTaの加工硬化が進むことになり、かえって変形抵抗差を大きくしてしまう場合がある。Ta層の不均一変形を抑制するために、より好ましい平均結晶粒径の下限は0.5μm、他方上限は1.0μmである。
【0017】
また、Ta層はTa単独であっても構わないが、Ta合金であっても良い。ここで言うTa合金とは、Taを90%以上含有する合金を指すものである。Taを90%以上含有するTa合金であれば、Nb3 Sn超電導線材中にTa層を設ける本来の理由である線材の高耐力、高強度化に十分な特性が保たれるからである。補強材として、Taを90%以上とするTa合金層を使用すれば、本発明の目的である優れた加工性と高耐力、高強度を併せ持つと共に、残部に種々の目的により他の元素を含有することができる。含有する元素は、目的に応じて選択可能であり、特に限定されるものではない。
【0018】
上記平均結晶粒径を制御する方法では、Taを90%以上とする範囲では、Ta合金中の含有元素に関係なく、Ta合金層の不均一変形を防止できるが、逆にTa合金中の含有元素およびその含有量を適切に調整することによれば、結晶粒のサイズが従来のレベルであってもTa合金層の不均一変形を防止できることが分かった。この場合、Ta合金層は、Nb,V,Zr,Hfから選ばれる1種以上を合計で0.1〜10%含有するTa合金である必要がある。上述の特開平3−171514号にも、Ta層としてTa合金を使用し得ることが記載されているが、含有する元素の例として、O,Fe,Niが挙げられている。本発明者らの検討の結果、これらの元素を含有することにより、Nb3 Sn超電導線材の高耐力、高強度化は達成し得るが、加工性の面では十分な効果が得られないことが分かった。Nb,V,Zr,Hfから選ばれる1種以上を含有することにより、Taの不均一変形防止に効果が上がる理由は、合金化によってすべり変形モードが変化し、特定モードのみ変形することがなくなることによると考えられる。含有量が合計で0.1〜10%であるのは、0.1%未満では、含有量が少なすぎてTaの不均一変形が十分に抑制できないためである。また、10%を超えると、Ta合金自体の加工硬化が進み、かえって変形抵抗差を大きくしてしまう場合がある。より望ましい含有量の下限は0.5%、他方上限は5%である。
【0019】
この場合のTa合金は、Nb,V,Zr,Hfから選ばれる1種以上を合計で0.1〜10%含有するTa合金である必要があるが、Taを90%以上含有する合金であれば、残部に他の元素を含んでいても構わない。Nb,V,Zr,Hfから選ばれる1種以上を合計で0.1〜10%含有すると共に、Taを90%以上含有するTa合金であれば、Nb3 Sn超電導線材中にTa層を設ける本来の理由である線材の高耐力、高強度化に十分な特性が保たれるからである。この様なTa合金層を使用すれば、本発明の目的である優れた加工性と高耐力、高強度を併せ持つと共に、残部に種々の目的により他の元素を含有することができる。含有する元素は、目的に応じて選択可能であり、特に限定されるものではない。
【0020】
Ta合金層として、Nb,V,Zr,Hfから選ばれる1種以上を合計で0.1〜10%含有するTa合金を用いると共に、線材横断面におけるTa合金層の平均結晶粒径を0.3〜2.0μmに制御することで、より一層不均一変形防止効果が高まる。
【0021】
次に、Nb/Cu−Sn合金複合多芯部とTa層またはTa合金層との間に中間層を形成する方法について説明する。Ta層の不均一変形は、上述の通り、TaとNb/Cu−Sn合金複合多芯部との間で変形抵抗差が大きいことに起因している。図4に示す様に、Taとブロンズとでは、例えばヴィッカース硬度で約100の硬度差があり、この硬度差が変形抵抗差の要因の一つとなっている。TaとNb/Cu−Sn合金複合多芯部との間に、Taのヴィッカース硬度とブロンズのヴィッカース硬度の間のヴィッカース硬度を有する金属または合金からなる中間層を形成すれば、TaとNb/Cu−Sn合金複合多芯部との間の硬度差が、Taと中間層の界面および中間層とNb/Cu−Sn合金複合多芯部の界面での硬度差に分散される。その結果、TaとNb/Cu−Sn合金複合多芯部との間の変形抵抗差が緩和され、Ta層の不均一変形が抑制されることが分かった。図5にNbを中間層として用いた場合の夫々の層のヴィッカース硬度をグラフに示す。また図6に中間層を用いたNb3 Sn超電導線材例の横断面図を示す。中間層を形成する金属または合金は、ヴィッカース硬度がTaとブロンズの間であれば本発明の効果が得られ、例えば、Nb,V,Ti等が挙げられる。加工性の点からは、Nb、Nb合金、V、V合金から選ばれる1種であることが望ましい。ここで、Nb合金、V合金とは、それぞれNbまたはVを90%以上含有する合金を意味する。NbまたはVを90%以上含有する合金であれば、ヴィッカース硬度がTaとブロンズの間であると共に、加工性の効果も損なうことがないので、本発明の目的を達すると同時に、残部に種々の目的に応じて、他の元素を含有することが可能となる。含有する元素は、目的に応じて選択可能であり、特に限定されるものではないが、例えば、Ti,Zr,Hf,Ta等を挙げることができる。
【0022】
以上説明してきた本発明は、Snを含有するCu基合金材中にNbまたはNb合金材からなるフィラメントが埋め込まれたNb/Cu−Sn合金複合多芯部と、Ta層またはTa合金層の少なくとも2層からなるNb3 Sn超電導線材であれば、その効果を発揮しうるものであり、様々なNb3 Sn超電導線材の構成に適用できるものである。例えば、Ta層を補強材としてだけでなく安定化領域として使用する図2、図6の様な場合においても、或いは図7、図8の様に補強材とは別にCuの安定化領域およびバリア層を形成する場合においても、発明の効果を得ることができるものである。また、超電導領域を形成するNb/Cu−Sn合金複合多芯部においては、超電導特性を損なわない範囲で、NbやCu基合金に他の元素を含有することが可能である。Nb合金としては、例えば、Ti,Ta,Zr,Hfのいずれか1種以上を含有するNb合金を挙げることができる。Cu基合金としては、Snの他に、例えばTi,Ta,Zr,Hf,Ge,Si,Mgのいずれか1種以上を含むCu基合金を挙げることができる。
【0023】
以下実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0024】
【実施例】
(実験例1) 図7に示す様な、外部安定型のNb3 Sn超電導線材を作製して実験を行った。
まず、直径60mmのCu−13%Sn合金の中心とその周囲に直径11.3mmの孔を7カ所あけ、該孔と同サイズのNb棒を該孔内に挿入し、押出ビレットを作製した。その後、該ビレットを静水圧押出法により直径20mmに押出し、これを引き抜き加工により伸線し、六角ダイスにより対辺長1.5mmの六角断面に仕上げ、その後所定の長さに切断した。この六角線を、直径10.5mmのTa棒の周りに582本束ねた。ここでTa棒は種々の平均結晶粒径を持つものを用意した。このTaと六角線の複合体を、厚さ0.2mmのNbシート2層で巻き、更に外形60mm、内径47mmのCuパイプに挿入し、多芯押出ビレットとした。該多芯ビレットを直径20mmに静水圧押出し、その後引き抜き加工を経て、1.05×1.77(mm)の平角導体を作製した。尚、この伸線加工の工程において、途中適宜、中間焼鈍を施した。伸線できた線材を650℃、100時間で熱処理して、NbとCu−Sn合金の界面にNb3 Snを生成させた。
【0025】
この超電導線材の断面観察を光学顕微鏡により行い、Taの平均結晶粒径の測定およびTaの不均一変形の有無の確認を行った。ここで伸線後の線材のTa層の平均結晶粒径は、素材のTa棒の結晶粒径とほぼ比例関係にあることが確認できた。また臨界電流(温度:4.2K 磁場:12T)、液体ヘリウム中(温度:4.2K)での0.2%耐力および引張強度も測定した。結果を表1に示す。
【0026】
Taの平均結晶粒径が0.3〜2.0(μm)の試料No.3、4、5では、Taの不均一変形が抑制され、超電導フィラメントの断線もないことが確認できた。一方、No.6は平均結晶粒径が2.0μmを超えるため、Taの不均一変形が見られ、No.1、2は伸線途中で断線したため評価が行えなかった。また、臨界電流、0.2%耐力および引張強度の値も、No.3、4、5は、No.6に比べて大きく、超電導特性も良好であった。
【0027】
【表1】
【0028】
(実験例2) 実験例1と同様、図7に示す様な、外部安定型のNb3 Sn超電導線材を作製して実験を行った。
まず、直径60mmのCu−13%Sn合金の中心とその周囲に直径11.3mmの孔を7カ所あけ、該孔と同サイズのNb棒を該孔内に挿入し、押出ビレットを作製した。その後、該ビレットを静水圧押出法により直径20mmに押出し、これを引き抜き加工により伸線し、六角ダイスにより対辺長1.5mmの六角断面に仕上げ、その後所定の長さに切断した。この六角線を、直径10.5mmのTa合金棒の周りに582本束ねた。ここでTa合金棒はTaに種々の元素を含有したものを用意した。尚、Ta合金棒の平均結晶粒径は95μmであり、最終熱処理後、超電導線材とした際のTa合金層の平均結晶粒径は2.5μmであった。このTaと六角線の複合体を、厚さ0.2mmのNbシート2層で巻き、更に外形60mm、内径47mmのCuパイプに挿入し、多芯押出ビレットとした。該多芯ビレットを直径20mmに静水圧押出し、その後引き抜き加工を経て、1.05×1.77(mm)の平角導体を作製した。尚、この伸線加工の工程において、途中適宜、中間焼鈍を施した。伸線できた線材を650℃、100時間で熱処理して、NbとCu−Sn合金の界面にNb3 Snを生成させた。
【0029】
この超電導線材の断面観察を光学顕微鏡により行い、Ta合金の不均一変形の有無の確認を行った。また臨界電流(温度:4.2K 磁場:12T)、液体ヘリウム中(温度:4.2K)での0.2%耐力および引張強度も測定した。結果を表2に示す。尚、試料No.14はNbとHfを同時に含有したものである。
【0030】
Nb,V,Zr,Hfから選ばれる1種以上を合計で0.1〜10%含有するTa合金を用いた試料No.8、9、11〜14では、Taの不均一変形が抑制され、超電導フィラメントの断線もないことが確認できた。一方、Ta以外の元素を含有しなかったNo.7では、Taの不均一変形が見られ、No.10、15は伸線途中で断線したため、評価ができなかった。また、臨界電流、0.2%耐力および引張強度の値も、No.8、9、11〜14は、No.7に比べて大きく、超電導特性も良好であった。
【0031】
【表2】
【0032】
(実験例3) 図8に示す様な、外部安定型のNb3 Sn超電導線材を作製して実験を行った。このとき、中心部のTa層の周囲に、厚さ0.2mmのNbシートを約10層巻くこと以外は、実験例1と同様の方法にて超電導線材を作製した。尚、使用したTa棒の平均結晶粒径は95μmであり、最終熱処理後、超電導線材とした際のTa層の平均結晶粒径は2.5μmであった。
【0033】
この超電導線材(試料No.16)の断面観察を光学顕微鏡により行い、Ta合金の不均一変形の有無の確認を行った。また臨界電流(温度:4.2K 磁場:12T、13T)、液体ヘリウム中(温度:4.2K)での0.2%耐力および引張強度も測定した。結果を表3に示す。尚、比較材として実験例2で用いた試料No.7のデータも示す。
【0034】
No.16の試料では、Taの不均一変形が抑制され、超電導フィラメントの断線もないことが確認できた。また、臨界電流、0.2%耐力および引張強度の値も、No.16はNo.7に比べて大きく、超電導特性も良好であった。
【0035】
【表3】
【0036】
【発明の効果】
以上説明してきた様に、本発明のNb3 Sn超電導線材によれば、線材の製造時においてTa層またはTa合金層に不均一変形が生じない、即ち線材製造時の加工性に優れると共に、超電導線材となった後も高耐力、高強度を有するNb3 Sn超電導線材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の超電導線材の例を示す横断面図であり、(a)は外部安定型、(b)は内部安定型である。
【図2】Taを補強材とするNb3 Sn線材の例を示す横断面図であり、(a)はTaを内部に配置するタイプ、(b)はTaを外部に配置するタイプ、(c)はTaを内部に分散して配置するタイプである。
【図3】製造時に正常に加工できなかったNb3 Sn線材の例を示す横断面図である。
【図4】Taとブロンズのヴィッカース硬度の測定結果を示すグラフである。
【図5】Ta、Nbおよびブロンズのヴィッカース硬度の測定結果を示すグラフである。
【図6】Nb/Cu−Sn合金複合多芯部とTa層またはTa合金層との間に中間層を用いたNb3 Sn超電導線材の例を示す横断面図であり、(a)はTaを内部に配置するタイプ、(b)はTaを外部に配置するタイプ、(c)はTaを内部に分散して配置するタイプである。
【図7】実験例1、2に用いた、Taを補強材とするNb3 Sn線材の例を示す横断面図である。
【図8】実験例3に用いた、Nb/Cu−Sn合金複合多芯部とTa層との間に中間層を用いたNb3 Sn線材の例を示す横断面図である。
【符号の説明】
1 Nb/Cu−Sn合金複合多芯部
2 Cu安定化領域
3 Cu安定化領域への不純物の拡散を防ぐバリア層
4 Ta層またはTa合金層
5 Taとブロンズの中間の硬度を有する金属または合金からなる中間層
Claims (7)
- Snを含有するCu基合金材中にNbまたはNb合金材からなるフィラメントが埋め込まれたNb/Cu−Sn合金複合多芯部と、補強材としてTa層またはTa合金層を夫々必須的に含むNb3Sn超電導線材において、
棒状の前記Ta層またはTa合金層を前記Nb/Cu−Sn合金複合多芯部の内部に配置するか、
前記Ta層またはTa合金層を前記Nb 3 Sn超電導線材の最外部に配置するか、或いは
棒状の前記Ta層またはTa合金層を前記Nb/Cu−Sn合金複合多芯部の内部に分散して配置し、且つ
線材横断面における前記Ta層またはTa合金層の平均結晶粒径が0.3〜2.0μmであることを特徴とするNb3Sn超電導線材。 - Snを含有するCu基合金材中にNbまたはNb合金材からなるフィラメントが埋め込まれたNb/Cu−Sn合金複合多芯部と、補強材としてTa合金層を夫々必須的に含むNb3Sn超電導線材において、
棒状の前記Ta合金層を前記Nb/Cu−Sn合金複合多芯部の内部に配置するか、
前記Ta合金層を前記Nb 3 Sn超電導線材の最外部に配置するか、或いは
棒状の前記Ta合金層を前記Nb/Cu−Sn合金複合多芯部の内部に分散して配置し、且つ
前記Ta合金層は、Nb,V,Zr,Hfから選ばれる1種以上を合計で0.1〜10%(重量%、以下同じ)含有するものであることを特徴とするNb3Sn超電導線材。 - Snを含有するCu基合金材中にNbまたはNb合金材からなるフィラメントが埋め込まれたNb/Cu−Sn合金複合多芯部と、Ta合金層を夫々必須的に含むNb 3 Sn超電導線材において、
前記Ta合金層は、Nb,V,Zr,Hfから選ばれる1種以上を合計で0.1〜10%含有すると共に、
線材横断面における前記Ta合金層の平均結晶粒径が0.3〜2.0μmであることを特徴とするNb3Sn超電導線材。 - Snを含有するCu基合金材中にNbまたはNb合金材からなるフィラメントが埋め込まれたNb/Cu−Sn合金複合多芯部と、Ta層またはTa合金層を夫々必須的に含むNb3Sn超電導線材において、
前記Nb/Cu−Sn合金複合多芯部と前記Ta層またはTa合金層との間に、前記TaまたはTa合金のヴィッカース硬度と前記Cu−Sn合金のヴィッカース硬度の間のヴィッカース硬度を有する金属または合金からなる中間層としてNb、Nb合金、V、V合金、TiおよびTi合金から選ばれる1つ以上よりなる層が形成されていることを特徴とするNb3Sn超電導線材。 - 前記中間層が、Nb、Nb合金、V、V合金から選ばれる1つ以上よりなる請求項4に記載のNb3Sn超電導線材。
- 線材横断面における前記Ta層またはTa合金層の平均結晶粒径が0.3〜2.0μmである請求項4または5に記載のNb3Sn超電導線材。
- 前記Ta合金層が、Nb,V,Zr,Hfから選ばれる1種以上を0.1〜10%含有するものである請求項4〜6のいずれかに記載のNb3Sn超電導線材。
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