JP2023151286A - 表面処理鋼板 - Google Patents

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保明 河村
Yasuaki Kawamura
隆志 藤井
Takashi Fujii
邦彦 東新
Kunihiko Toshin
浩平 植田
Kohei Ueda
大地 上田
Daichi Ueda
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Abstract

【課題】電着塗装膜が無い状態で優れた耐食性を有する表面処理鋼板を開示する。【解決手段】表面処理鋼板であって、Zn含有めっき層を有するめっき鋼板と、前記めっき鋼板の少なくとも一方の主面に設けられた表面処理層と、を有し、前記表面処理層が、少なくとも、外層としての塗膜を有し、前記塗膜が、3μm以上10μm以下の平均膜厚を有し、前記塗膜が、バインダー樹脂と、防錆剤と、導電剤とを含み、前記防錆剤が、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムのうちの少なくとも一方のマグネシウム化合物を含み、前記導電剤が、第1導電顔料としての亜鉛粉を含み、前記塗膜が、前記マグネシウム化合物を5体積%以上15体積%以下含み、前記塗膜が、前記亜鉛粉を5体積%以上30体積%以下含む、表面処理鋼板。【選択図】なし

Description

本願は表面処理鋼板を開示する。
自動車等の構成材として表面処理鋼板が用いられている。表面処理鋼板は、例えば、Zn含有めっき層を有するめっき鋼板と、当該めっき鋼板の少なくとも一方の主面に設けられた表面処理層とを有する。従来技術においては、表面処理層として塗膜を採用し、且つ、塗膜を構成する成分の種類や含有量を調整することで、表面処理鋼板の溶接性や耐食性を向上させている。
例えば、特許文献1には、めっき鋼板の少なくとも片面に塗膜を有する表面処理鋼板において、前記塗膜に、バインダー樹脂と、Vを含む非酸化物セラミックス粒子と、ドープ型酸化亜鉛粒子とを所定量含ませることで、表面処理鋼板の溶接性や耐食性を向上させる技術が開示されている。
また、特許文献2には、Zn含有めっき鋼板の少なくとも片面に2層以上の塗膜を形成してなる塗装鋼板において、前記塗膜の最外層を所定の厚みとし、前記塗膜の最外層に所定の非クロム化合物を含ませ、且つ、前記塗装鋼板を所定の条件でイオン交換水に浸漬したときの浸漬水の電気伝導度が30μS/cm以上となるように前記塗膜の構成を工夫することで、塗装鋼板の端面の耐食性を向上させる技術が開示されている。
また、特許文献3には、金属材の表面に有機皮膜を有する塗装金属材において、前記有機皮膜に、ウレタン結合を有する所定の樹脂と、所定の導電性粒子とを含ませることで、塗装金属材の溶接性や耐食性を向上させる技術が開示されている。
また、特許文献4には、金属板の表面に被覆層を有する被覆金属板において、前記被覆層に所定の粒径の導電性粒子を所定量含ませることで、被覆金属板の溶接性や耐食性を向上させる技術が開示されている。
また、特許文献5には、バインダー樹脂と、Zn系金属粉と、Mgを含有する縮合リン酸アルミニウムとを含有する塗料組成物を用いてめっき鋼板を塗装することで、優れた耐食性を確保する技術が開示されている。
国際公開第2018/092244号 特開2012-136025号公報 特開2004-042622号公報 特開2004-183080号公報 特開2017-122186号公報
自動車等の構成材としての表面処理鋼板は電着塗装が施されたうえで使用され得る。一方で、用途によっては、電着塗装が施されずに、表面処理鋼板の塗膜が露出した状態で使用される場合もある。この場合、電着塗装膜が無い状態での耐食性が要求される。特に、溶接部においては溶接時の熱影響によって塗膜及びめっき層が広範囲に亘って消失し、腐食の起点となり易い。従来の表面処理鋼板においては、電着塗装膜が無い状態での耐食性、特に、溶接部の耐食性を高めることについて十分な検討がなされておらず、改善の余地がある。
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
表面処理鋼板であって、
Zn含有めっき層を有するめっき鋼板と、
前記めっき鋼板の少なくとも一方の主面に設けられた表面処理層と、を有し、
前記表面処理層が、少なくとも、外層としての塗膜を有し、
前記塗膜が、3μm以上10μm以下の平均膜厚を有し、
前記塗膜が、バインダー樹脂と、防錆剤と、導電剤とを含み、
前記防錆剤が、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムのうちの少なくとも一方のマグネシウム化合物を含み、
前記導電剤が、第1導電顔料としての亜鉛粉を含み、
前記塗膜が、前記マグネシウム化合物を5体積%以上15体積%以下含み、
前記塗膜が、前記亜鉛粉を5体積%以上30体積%以下含むもの、
を開示する。
本開示の表面処理鋼板において、
前記導電剤が、ドープ型酸化物粒子、50質量%以上のSiを含有するSi合金、50質量%以上のSiを含有するSi化合物、及び、これらの複合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の第2導電顔料を含んでいてもよく、
前記塗膜が、前記第2導電顔料を5体積%以上20体積%以下含んでいてもよい。
本開示の表面処理鋼板において、前記ドープ型酸化物粒子が、ドープ型酸化亜鉛粒子であってもよい。
本開示の表面処理鋼板において、前記Si合金又は前記Si化合物が、70質量%以上のSiを含有するフェロシリコンであってもよい。
本開示の表面処理鋼板において、
前記表面処理層が、前記塗膜と前記めっき鋼板との間の内層として、無機系又は有機無機複合系の皮膜を有していてもよく、
前記皮膜が、0.1μm以上1.0μm以下の平均膜厚を有していてもよい。
本開示の表面処理鋼板は優れた耐食性及び溶接性を有する。また、電着塗装膜が無い状態においても優れた耐食性を有し、溶接部の耐食性にも優れる。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、これらの説明は、本発明の実施形態の単なる例示を意図するものであって、本発明は以下の実施形態に限定されない。
実施形態に係る表面処理鋼板は、Zn含有めっき層を有するめっき鋼板と、前記めっき鋼板の少なくとも一方の主面に設けられた表面処理層と、を有する。前記表面処理層は、少なくとも、外層としての塗膜を有する。前記塗膜は、3μm以上10μm以下の平均膜厚を有する。前記塗膜は、バインダー樹脂と、防錆剤と、導電剤とを含む。前記バインダー樹脂は、エポキシ樹脂を含む。前記防錆剤は、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムのうちの少なくとも一方のマグネシウム化合物を含む。前記導電剤は、第1導電顔料としての亜鉛粉を含む。前記塗膜は、前記マグネシウム化合物を5体積%以上15体積%以下含む。前記塗膜は、前記亜鉛粉を5体積%以上30体積%以下含む。
1.めっき鋼板
めっき鋼板は、例えば、母材鋼板と、母材鋼板の少なくとも一方の主面に設けられたZn含有めっき層とを有する。本願にいう「主面」とは板の表側又は裏側に相当する面である。Zn含有めっき層は、母材鋼板の一方の主面のみに設けられていてもよいし、両方の主面に設けられていてもよい。また、Zn含有めっき層は、母材鋼板の主面の全体に設けられていてもよいし、主面の一部に設けられていてもよい。
母材鋼板としては、種々の化学組成や金属組織を有するものを採用し得る。母材鋼板は、普通鋼板であっても、クロム等の添加元素を含む鋼板であってもよく、目的とする機械特性や成形性等を考慮して母材鋼板の化学組成や金属組織を調整すればよい。また、母材鋼板の厚みも特に限定されるものではなく、例えば、0.2mm以上であってもよく、6.0mm以下であってもよい。
Zn含有めっき層は、当業者に公知の化学組成を有するものであってよい。例えば、Zn含有めっき層は、Zn以外にAl等の添加元素を含んでいてよく、また、合金化処理が施されてなる場合はFe等を含んでいてよい。一例として、Zn含有めっき層は、少なくともAlとMgとを含有するZn-Al-Mg合金めっき層であってもよく、さらにSiを含有するZn-Al-Mg-Si合金めっき層であってもよい。これら元素の含有量(濃度)は、質量%で、Al:0~60%、Mg:0~10%、Si:0~2%、Mn:0~1%、Ni:0~1%、Sb:0~1%、Fe:0~20%であってもよい。Zn含有めっき層は、合金化溶融亜鉛めっき層、溶融亜鉛めっき層又は電気亜鉛めっき層であってもよい。母材鋼板に対する亜鉛含有めっき層の付着量は特に限定されるものではなく、一般的な付着量であってよい。例えば、Zn系合金めっき層の厚さは1~30μmであってもよい。
2.表面処理層
表面処理層は、めっき鋼板の少なくとも一方の主面に設けられる。表面処理層は、めっき鋼板の一方の主面のみに設けられていてもよいし、両方の主面に設けられていてもよい。また、表面処理層は、めっき鋼板の主面の全体に設けられていてもよいし、主面の一部に設けられていてもよい。表面処理層は、上記のめっき鋼板の表面のうち、Zn含有めっき層の表面に積層され得る。
表面処理層は、少なくとも、外層としての塗膜を有する。表面処理層は、塗膜のみからなるものであってもよいし、外層としての塗膜と、内層としての化成処理皮膜と、の二層構成を有するものであってもよい。表面処理層が当該二層構成を有するものである場合、より優れた耐食性等を発揮し得る。一方で、表面処理層が内層としての化成処理皮膜を有していない場合、より優れたスポット溶接性を発揮し得る。
2.1 塗膜
本実施形態に係る表面処理鋼板において、塗膜は、バインダー樹脂と、防錆剤と、導電剤と、を含む。
(バインダー樹脂)
バインダーの種類に特に制限はなく、表面処理鋼板の塗膜を構成するバインダー樹脂として公知のものをいずれも採用可能である。バインダー樹脂は、各種の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂から選ばれる1種以上の樹脂であってよい。バインダー樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂及びオレフィン樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂が挙げられる。
エポキシ樹脂は、芳香族エポキシ樹脂であってもよいし、脂肪族エポキシ樹脂であってもよいし、アミン類等のエポキシ樹脂であってもよい。エポキシ樹脂の具体例として、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は硬化剤と組み合わされたものであってよい。硬化剤としてはフェノール樹脂等の各種のエポキシ硬化剤が採用され得る。バインダー樹脂としてポリエステル樹脂が採用される場合、当該ポリエステル樹脂は、-20~70℃のガラス転移温度Tgを有するものであってもよく、3000~30000の数平均分子量を有するものであってもよい。バインダー樹脂としてウレタン樹脂が採用される場合、当該ウレタン樹脂は、0~50℃のTgを有するものであってもよく、5000~25000の数平均分子量を有するものであってもよい。バインダー樹脂としてアクリル樹脂が採用される場合、当該アクリル樹脂は、0~50℃のTgを有するものであってもよく、3000~25000の数平均分子量を有するものであってもよい。バインダー樹脂は、各種の硬化剤を含んでいてもよい。例えば、メラミン樹脂やイソシアネート樹脂等が採用され得る。
塗膜におけるバインダー樹脂の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、50体積%以上又は60体積%以上であってもよく、90体積%以下、80体積%以下又は70体積%以下であってもよい。
(防錆剤)
防錆剤は、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムのうちの少なくとも一方のマグネシウム化合物を含む。本実施形態においては、塗膜が後述の亜鉛粉とともにマグネシウム化合物を含むことで、以下の効果が期待できる。まず、マグネシウム化合物は電離し易く、伝導度を上昇させる機能を有する。これにより、亜鉛粉による犠牲防食距離が増加し易くなる。すなわち、スポット溶接部のように塗膜やZn含有めっき層が広範囲に亘って消失した部分が存在していたとしても、当該部分に近接する塗膜に含まれる亜鉛粉によって当該部分の広い範囲に防食効果を及ぼすことができる。また、マグネシウム化合物は、亜鉛粉の犠牲防食による防食生成物を沈着させる効果を有する。通常、亜鉛粉が犠牲防食によって防食生成物(例えば、水酸化Zn)となった場合、当該防食生成物は易溶性であることから、溶出により防食効果が容易に失われ易い。これに対し、防食生成物とマグネシウムとを複合化させることで、防食生成物の溶出が抑制され、スポット溶接部のような塗膜やめっき層が欠損した部分に対して防食生成物が沈着し易くなり、優れた耐食性が発現され易くなる。
塗膜における上記のマグネシウム化合物の含有量は、5体積%以上15体積%以下である。マグネシウム化合物の含有量が少な過ぎると、上記した犠牲防食距離を増大させる効果や、防食生成物を沈着させる効果が確保され難い。一方、マグネシウム化合物の含有量が多過ぎると、マグネシウム化合物の溶出によって塗膜に空隙が生じ易くなり、表面処理鋼板の塗膜が存在する部分において、塗膜によって本来確保される耐食性が低下する虞がある。塗膜における上記のマグネシウム化合物の含有量は、6体積%以上、7体積%以上又は8体積%以上であってもよく、14体積%以下、13体積%以下又は12体積%以下であってもよい。
上記のマグネシウム化合物の形状は特に限定されるものではない。マグネシウム化合物は例えば粒子状(粉体状)であってもよい。マグネシウム化合物の平均粒径は、塗膜の平均膜厚の2.0倍以下であることが好ましい。マグネシウム化合物の平均粒径が大き過ぎると、マグネシウム化合物が塗膜から突出して脱落し易くなる。マグネシウム化合物の平均粒径は、塗膜の平均膜厚の1.5倍以下又は1.0倍以下であってもよい。マグネシウム化合物の平均粒径の下限は特に限定されるものではない。例えば、塗膜の厚みの1/10以上又は1/5以上であってもよい。尚、本願において、マグネシウム化合物の「平均粒径」とは、塗膜に存在する粒子が一次粒子として存在する場合は平均一次粒子径をいい、凝集して存在する場合は平均二次粒子径をいう。塗膜に含まれるマグネシウム化合物の「平均粒径」は以下のようにして特定する。すなわち、塗膜が形成された表面処理鋼板を切断し、その断面を露出させたうえで研磨し、このようにして得られた研磨後断面を走査型電子顕微鏡で観察して、観察像を得る。観察像の視野に存在するマグネシウム化合物粒子から数個を任意に選び出し、それぞれの粒子の円相当直径を求め、その平均値を平均粒子径とする。観察像中の粒子がマグネシウム化合物であるか否かは、元素分析等を行うことで容易に判断することができる。
塗膜は、上記のマグネシウム化合物に加えて、それ以外の種類の防錆剤(その他の防錆剤)を含んでいてもよい。その他の防錆剤は、無機防錆剤であってもよいし、有機防錆剤であってもよい。その他の防錆剤は、防錆機能を発揮する元素であるP及びVのうちの少なくとも1種を含むものであってもよい。Pを含む防錆剤としては、例えば、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸等のリン酸類、リン酸三アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のアンモニウム塩、Na、Mg、Al、K、Ca、Mn、Ni、Zn、Fe等との金属リン酸塩、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸類及びそれらの塩、フィチン酸等の有機リン酸類及びそれらの塩等が挙げられる。また、Vを含む防錆剤としては、五酸化バナジウム、メタバナジン酸HVO3、メタバナジウム酸アンモニウム、オキシ三塩化バナジウムVOCl、三酸化バナジウムV、二酸化バナジウム、オキシ硫酸バナジウムVOSO、バナジウムオキシアセチルアセトネートVO(OC(=CH)CHCOCH、バナジウムアセチルアセトネートV(OC(=CH)CHCOCH、三塩化バナジウムVCl等が挙げられる。また、その他の防錆剤は、グアニジノ基含有化合物、ピグアニジノ基含有化合物、チオカルボニル基含有化合物等であってもよい。その他の防錆剤の形態は、例えば、粒子状であってよい。粒子の大きさの詳細については上述したマグネシウム化合物のそれと同様である。その他の防錆剤は水溶性であっても非水溶性であってもよい。その他の防錆剤が水溶性である場合、例えば、塗膜が湿潤環境下に晒された場合に、防錆剤が水に溶解して溶出し、めっき層の腐食を抑制する防錆機能が発揮され得る。塗膜におけるその他の防錆剤の含有量は、特に限定されるものではない。その他の防錆剤の含有量は、上記のマグネシウム化合物の含有量よりも多くてもよいし、少なくてもよいし、同じであってもよい。例えば、塗膜におけるその他の防錆剤の含有量は、0体積%以上、0.5体積%以上、1.0体積%以上又は5.0体積%以上であってもよく、15体積%以下又は10体積%以下であってもよい。
(導電剤)
導電剤は、塗膜の導電性を向上させて、表面処理鋼板の溶接性を向上させる機能を有する。本願においては、例えば、体積抵抗率として1.0×10Ω/cm以下を有するものが導電剤となり得る。上述の通り、本実施形態においては、導電剤が第1導電顔料としての亜鉛粉を含む。亜鉛粉は、上述の通り、犠牲防食能を有することから、導電剤であると同時に防錆剤としても機能し得るものであるが、本願においては導電剤としてカウントする。
表面処理鋼板が溶接された場合、溶接時の熱影響により、鋼板表面の広い範囲に亘って塗膜やZn含有めっき層が消失する。そのため、溶接部には耐食性が確保され難い。溶接部に対して電着塗装を施すことで耐食性が確保され得るが、電着塗装は必ずしも実施されないことから、電着塗装膜が無い状態で如何にして溶接部の耐食性を高めるかが重要となる。本実施形態に係る表面処理鋼板においては、塗膜に亜鉛粉を含ませることで、塗膜から犠牲防食成分を供給して耐食性の底上げを行う。ただし、亜鉛粉単独では、犠牲防食距離が短く、溶接部等のような塗膜やめっき層が広範囲に亘って消失した部分に対して十分な耐食性を付与することは難しい。そのため、本実施形態に係る表面処理鋼板においては、塗膜中に亜鉛粉とともに上記のマグネシウム化合物を含ませる。これにより、上述したように、犠牲防食距離が増大するとともに、防食成分が沈着し易くなり、防食効果を高めることができる。結果として、溶接部等のような塗膜やめっき層が広範囲に亘って消失した部分に対しても優れた耐食性を付与することができる。
塗膜における上記の亜鉛粉の含有量は、5体積%以上30体積%以下である。亜鉛粉の含有量が少な過ぎると、上記した防食効果が確保され難い。一方、亜鉛粉の含有量が多過ぎると、亜鉛粉の溶出によって塗膜に空隙が生じ易くなり、表面処理鋼板の塗膜が存在する部分において、塗膜によって本来確保される耐食性が低下する虞がある。塗膜における亜鉛粉の含有量は、7体積%以上、10体積%以上、12体積%以上又は15体積%以上であってもよく、27体積%以下、25体積%以下、22体積%以下又は20体積%以下であってもよい。
亜鉛粉は塗膜中に含ませることが可能な程度の粉体状であればよい。亜鉛粉の平均粒径は、塗膜の平均膜厚の2.0倍以下であることが好ましい。亜鉛粉の平均粒径が大き過ぎると、亜鉛粉が塗膜から突出して脱落し易くなる。亜鉛粉の平均粒径は、塗膜の平均膜厚の1.5倍以下又は1.0倍以下であってもよい。亜鉛粉の平均粒径の下限は特に限定されるものではない。例えば、塗膜の厚みの1/10以上又は1/5以上であってもよい。尚、本願において、塗膜に含まれる亜鉛粉の「平均粒径」とは、塗膜に存在する粒子が一次粒子として存在する場合は平均一次粒子径をいい、凝集して存在する場合は平均二次粒子径をいう。亜鉛粉の「平均粒径」は、上記のマグネシウム化合物の粒径と同様にして特定可能である。すなわち、塗膜が形成された表面処理鋼板を切断し、その断面を露出させたうえで研磨し、このようにして得られた研磨後断面を走査型電子顕微鏡で観察して、観察像を得る。観察像の視野に存在する亜鉛粒子から数個を任意に選び出し、それぞれの粒子の円相当直径を求め、その平均値を平均粒子径とする。観察像中の粒子が亜鉛粉であるか否かは、元素分析等を行うことで容易に判断することができる。
塗膜は、上記の亜鉛粉に加えて、それ以外の種類の導電剤(その他の導電剤)を含んでいてもよい。その他の導電剤としては、例えば、各種の金属や金属化合物が挙げられる。具体的には、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、錫等の金属;マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、錫、アンチモン、テルル等の合金;又は亜鉛や上記した金属元素の酸化物等の化合物であってよい。中でも、上記の亜鉛のほか、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、クロム、鉄、ニッケル、錫、亜鉛-アルミニウム合金、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム-シリコン合金、亜鉛-鉄合金、亜鉛-クロム合金、亜鉛-ニッケル合金、鉄-ニッケル合金、鉄-クロム合金、ステンレス鋼、フェロシリコン、フェロマンガン、フェロホスホル、酸化亜鉛等が入手し易い。塗膜におけるその他の導電剤の含有量は特に限定されるものではなく、目的とする溶接性と耐食性とを考慮して適宜決定されればよい。
特に、導電剤が、ドープ型酸化物粒子、50質量%以上のSiを含有するSi合金、50質量%以上のSiを含有するSi化合物、及び、これらの複合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の第2導電顔料を含む場合、導電性(溶接性)や塗膜の密着性等を向上させ易い。この場合、塗膜における第2導電顔料の含有量は、5体積%以上30体積%以下であってもよい。
導電剤がドープ型酸化物粒子を含む場合、当該ドープ型酸化物粒子の具体例としては、ドープ型酸化亜鉛粒子が挙げられる。ドープ型酸化亜鉛粒子としては、例えば、B、Al、Ga、In等の周期表13族元素、及び、P、As等の周期表15族元素よりなる群から選ばれる少なくとも一種のドープ元素を、酸化亜鉛粒子にドープすることによって導電性を向上させたものが挙げられる。ドープ元素がAl又はGaである場合、導電性を一層向上させ易い。ドープ元素の含有量は、未ドープの酸化亜鉛粒子に対して、例えば、0.05atom%以上又は0.1atom%以上であってよく、5atom%以下であってよい。
導電剤がSi合金又はSi化合物を含む場合、当該Si合金又はSi化合物の具体例としては、70質量%以上のSiを含有するフェロシリコンが挙げられる。塗膜に導電剤としてフェロシリコンを含ませることで、塗膜の導電性とともに耐食性をさらに向上させ易い。特に、70質量%以上のSiを含有するフェロシリコンは、耐食性と成形性とに優れる。
その他の導電剤は例えば粒子状であってよい。その他の導電剤が粒子状である場合、その平均粒子径は、特に限定されるものではなく、塗膜の厚み等を考慮して適切な大きさのものが選択されればよい。導電剤の平均粒子径は、塗膜の厚みの1/10以上又は1/5以上であってよく、また、2.0倍以下、1.5倍以下又は1.0倍以下であってよい。導電剤の平均粒子径は、例えば、0.1μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上又は1.0μm以上であってもよく、また、20μm以下、10μm以下、8.0μm以下、6.0μm以下、5.0μm以下、4.0μm以下又は2.5μm以下であってもよい。尚、導電剤の「平均粒子径」とは、塗膜に存在する粒子が一次粒子として存在する場合は平均一次粒子径をいい、凝集して存在する場合は平均二次粒子径をいう。当該平均粒子径は、上記のマグネシウム化合物の平均粒径と同様にして特定可能である。すなわち、塗膜が形成された表面処理鋼板を切断し、その断面を露出させたうえで研磨し、このようにして得られた研磨後断面を走査型電子顕微鏡で観察して、観察像を得る。観察像の視野に存在する導電粒子から数個を任意に選び出し、それぞれの粒子の円相当直径を求め、その平均値を平均粒子径とする。観察像中の粒子がその他の導電剤であるか否かは、元素分析等を行うことで容易に判断することができる。
(その他の成分)
塗膜には、上記した成分以外のその他の成分が含まれていてもよい。その他の成分としては、各種添加剤が挙げられる。例えば、上記した防錆顔料や導電顔料以外の顔料(意匠性の向上を目的とした光輝顔料等)、潤滑剤、消泡剤、増粘剤等である。塗膜におけるその他の成分の含有量は特に限定されるものではない。
(平均膜厚)
本実施形態において、塗膜は、3μm以上10μmの平均膜厚を有する。塗膜が薄過ぎると、十分な耐食性が得られない場合がある。一方、塗膜が厚過ぎると、スポット溶接性が低下する場合がある。塗膜の平均膜厚は、4μm以上又は5μm以上であってもよく、9μm以下又は7μm以下であってもよい。塗膜の平均膜厚は、以下の通りにして測定する。すなわち、塗膜が形成された表面処理鋼板を切断し、その断面を露出させたうえで研磨し、このようにして得られた研磨後断面を走査型電子顕微鏡で観察して、観察像を得る。観察像の視野に存在する塗膜の厚みを、めっき鋼板の面方向に1μmの間隔で10点以上測定し、その平均値を平均膜厚とする。或いは、塗膜に含まれる成分から塗膜の密度を割り出したうえで、塗膜の重量を測定することで、塗膜の平均膜厚を特定してもよい。本実施形態においては、いずれかの方法により特性された平均膜厚が1μm以上10μm以下であればよい。
(付着量)
塗膜の付着量は、特に限定されるものではない。例えば、塗膜の付着量は、2.0g/m以上、3.5g/m以上又は5.0g/m以上であってもよく、20g/m以下、15g/m以下又は10g/m以下であってもよい。尚、表面処理鋼板における塗膜の付着量は、重量法や断面観察によって測定することができる。重量法での付着量測定としては、所定サイズに切断した鋼板の初期重量を測定した後、バインダー樹脂を溶解可能な溶剤や専用の薬剤を用いて塗膜を取り除く方法や樹脂ビーズ、アルミナビーズを用いたブラスト処理により塗膜を取り除く方法、を用いることで塗膜を取り除いた鋼板の重量測定を行い、これら差分を求めることで算出することが可能である。
2.2 化成処理皮膜
本実施形態に係る表面処理鋼板において、表面処理層は、前記塗膜と前記鋼板との間の内層として、無機系又は有機無機複合系の皮膜を有していてもよく、前記皮膜が、0.1μm以上1.0μm以下の平均膜厚を有していてもよい。当該皮膜は、化成処理皮膜とも言い得る。すなわち、表面処理層は、外層としての塗膜と、内層としての化成処理皮膜との二層構成を有するものであってもよい。
(構成成分)
めっき鋼板の表面に内層として化成処理皮膜を設け、さらに当該化成処理皮膜の表面に上述の塗膜を設けることで、めっき鋼板に対する塗膜の密着性等が向上する。化成処理皮膜は、クロムを実質的に含有しない層(クロメートフリー層)であってもよい。化成処理に用いられるクロメートフリーの処理液としては、液相シリカ、気相シリカ、ケイ酸塩等のケイ素化合物を主成分とするシリカ系処理液、ジルコン系化合物を主成分とするジルコン系処理液、これらの混合物等が挙げられる。化成処理皮膜はバインダー樹脂を含んでいてもよい。例えば、化成処理皮膜は、上述の塗膜を構成し得るバインダー樹脂として例示されたもののうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。化成処理皮膜におけるバインダー樹脂の含有量やバインダー樹脂以外の成分の含有量は、特に限定されるものではない。例えば、化成処理皮膜におけるバインダー樹脂の含有量は0体積%以上50体積%以下であってもよく、また、バインダー樹脂以外の成分の含有量は50体積%以上100体積%以下であってもよい。内層としての化成処理皮膜は、バインダーとして無機成分を含む無機系の皮膜であってもよいし、有機無機複合系の皮膜であってもよい。化成処理皮膜には、各種添加剤が含まれていてもよい。例えば、意匠性の向上を目的とした光輝顔料、潤滑剤、消泡剤、増粘剤等である。化成処理皮膜におけるその他の成分の含有量は特に限定されるものではない。
(平均膜厚)
化成処理皮膜の平均膜厚は、特に限定されるものではない。めっき鋼板と塗膜との密着性を一層向上させる観点、耐食性や溶接性を一層向上させる観点等から、化成処理皮膜の平均膜厚は、0.1μm以上1.0μm以下であるとよい。化成処理皮膜の平均膜厚は、塗膜の平均膜厚と同様にして測定することができる。すなわち、化成処理皮膜が形成された表面処理鋼板を切断し、その断面を露出させたうえで研磨し、このようにして得られた研磨後断面を走査型電子顕微鏡で観察して、観察像を得る。観察像の視野に存在する化成処理皮膜の厚みを、めっき鋼板の面方向に1μmの間隔で10点以上測定し、その平均値を平均膜厚とする。或いは、化成処理皮膜に含まれる成分から化成処理皮膜の密度を割り出したうえで、化成処理皮膜の重量を測定することで、化成処理皮膜の平均膜厚を特定してもよい。
(付着量)
表面処理鋼板において、化成処理皮膜の付着量は、特に限定されるものではない。例えば、化成処理皮膜の付着量が、200mg/m以上2000mg/m以下である場合、表面処理鋼板の耐食性を一層向上させ易い。尚、表面処理鋼板における化成処理皮膜の付着量は、蛍光X線ならびに断面分析によって測定することができる。具体的には、各化成処理に対して検量線板を作製する。化成処理板ならびに検量線板を蛍光X線で測定し、含有される元素のX線強度と検量線板のX線強度より、作製した化成処理板の付着量を算出する。
3.効果
上述したように、本実施形態に係る表面処理鋼板においては、塗膜中に所定量の亜鉛粉とともに所定量のマグネシウム化合物が含まれることで、亜鉛粉とマグネシウム化合物とによる複合効果によって、犠牲防食距離が増大し、且つ、防食成分を沈着させ易くなる。これにより、例えば、溶接部のような塗膜やめっき層が広範囲に亘って消失した部分にも優れた耐食性を付与することができる。また、塗膜が導電剤を含むとともに塗膜の平均膜厚が一定以下であることで、優れた溶接性を確保することもできる。
4.表面処理鋼板の製造方法
上記の表面処理鋼板は、例えば、以下の方法によって製造することができる。すなわち、表面処理鋼板の製造方法は、
Zn含有めっき層を有するめっき鋼板を得ること、及び、
前記めっき鋼板の少なくとも一方の主面にバインダー樹脂と、防錆剤と、導電剤とを含む塗料を塗布することで、塗膜を形成すること、
を含んでいてもよい。
或いは、表面処理鋼板の製造方法は、
Zn含有めっき層を有するめっき鋼板を得ること、
前記めっき鋼板の少なくとも一方の主面に化成処理を施すことで、化成処理皮膜を形成すること、及び、
前記化成処理皮膜の表面にバインダー樹脂と、防錆剤と、導電剤とを含む塗料を塗布することで、塗膜を形成すること、
を含んでいてよい。
4.1 めっき鋼板の作製
Zn含有めっき層を有するめっき鋼板は、例えば、連続鋳造によってスラブを得ること、前記スラブに対して熱間圧延を施して熱延板を得ること、前記熱延板を巻き取ること、前記熱延板に対して冷間圧延を施して冷延版を得ること、前記冷延板を焼鈍すること、焼鈍後の板に対してめっき処理を施すこと、及び、任意にスキンパスを行うこと、等を経て得ることができる。連続鋳造条件、熱間圧延条件、巻き取り条件、冷間圧延条件、焼鈍条件、及び、めっき条件については、従来公知の一般的な条件であってよい。
4.2 化成処理
本開示の製造方法においては、上記のようにして得られためっき鋼板の少なくとも一方の主面に化成処理を施すことで、内層としての化成処理皮膜を形成してもよい。化成処理は、上述したような各種の処理液を鋼板表面に塗布して乾燥することによって行うことができる。
4.3 塗膜の形成
本開示の製造方法においては、上記のようにして得られためっき鋼板の表面、又は、上記のようにして形成された化成処理皮膜の表面に、バインダー樹脂、防錆剤及び導電剤を含む塗料を塗布して乾燥することで、外層としての塗膜を形成してもよい。ここで、塗膜に含まれる防錆剤の種類、防錆剤の含有量、塗膜の厚み等を調整することで、上記の実施形態に係る表面処理鋼板を得ることができる。
以下、実施例を示しつつ本発明についてさらに説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱せず、その目的を達する限りにおいては、種々の条件を採用可能とするものである。
1.表面処理鋼板の製造
1.1 合金化溶融亜鉛めっき鋼板の準備
以下の5種の亜鉛系めっき鋼板と冷延鋼板を準備し、水系アルカリ脱脂剤(日本パーカライジング(株)製FC-301)の水溶液(2.5質量%、40℃)に2分間浸漬して表面を脱脂した後、水洗、乾燥して表面処理用の基材金属板とした。
GA:合金化溶融亜鉛めっき鋼板(板厚0.8mm、10質量%Fe、めっき付着量45g/m
ZL:電気Zn-10質量%Ni合金めっき鋼板(板厚0.8mm、めっき付着量40g/m
GI:溶融亜鉛めっき鋼板(板厚0.8mm、めっき付着量60g/m
EG:電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.8mm、めっき付着量40g/m
CR:冷延鋼板(板厚0.8mm、めっき無し)
1.2 内層(化成処理皮膜)の形成
次に、以下の化成処理用の処理液Sを準備し、当該処理液を表3及び4に示される付着量となるようにバーコートの番手を変更しつつ、上記の基材金属板上に塗布し、その後、熱風炉にて金属板表面への到達温度が70℃となるようにしつつ乾燥し、風乾することで、金属板の表面に化成処理皮膜を形成した。化成処理皮膜の平均膜厚は0.2μmであった。
S:Zr化合物、シランカップリング剤、シリカ微粒子、ポリエステル樹脂からなるNv10%の化成処理用の処理液
1.3 外層(塗膜)の形成
次に、表1に示される組成比(体積%)を有する塗膜を形成するため、表1と同様の固形分濃度となるように各成分を混合し、塗膜形成用の塗料組成物を準備した。この組成物を表2に示される付着量となるようにバーコートの番手や希釈率を変更しつつ、基材金属板上又は化成処理皮膜上にバーコータで塗布し、最高到達温度200℃となる条件でオーブンを用いて乾燥することにより、外層としての塗膜を形成した。塗膜の平均膜厚は表2に示される膜厚(μm)であった。尚、塗料組成物に含まれる成分を以下に示す。
(防錆顔料)
MgO:酸化マグネシウム(平均粒径3μm)
Mg(OH):水酸化マグネシウム(平均粒径3μm)
Si1:シリカ(吸油量50ml/100g、平均粒径3μm)
Si2:シリカ(吸油量300ml/100g、平均粒径3μm)
PA :トリポリリン酸アルミニウム(吸油量10ml/100g、平均粒径2μm)
PM :リン酸マグネシウム(吸油量30ml/100g、平均粒径2μm)
(導電顔料)
Zn :亜鉛粉(平均粒径3μm)
FeSi:フェロシリコン粒子(平均粒径3μm、70質量%以上のSiを含有)
SUS :SUS粒子(平均粒径5μm)
ZnO :ドープ型酸化亜鉛粒子(ハクスイテック(株)製23-Kt、平均粒径0.5μm)
(バインダー樹脂)
B1:エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製エポキシ樹脂1001B80)
B2:ポリエステル樹脂(東洋紡社製ポリエステル樹脂バイロン200)
B3:メラミン樹脂:(allnex社製メラミン樹脂CYMEL325)
2.性能評価試験
各々の表面処理鋼板に対して、以下の性能評価試験を行った。
2.1 耐食性試験
表面処理鋼板の端面をシールテープし、下記サイクル条件のサイクル腐食試験を240サイクル実施した。
(サイクル条件)
塩水噴霧(SST、5%NaCl、35℃雰囲気)2hr、乾燥(60℃)2hr、及び湿潤(50℃、98%RH)4hrを1サイクルとして、実施した。
その後、平面部の腐食状況を観察し、下記評点を付与した。かかる耐食性試験において、「3」、「4」又は「5」である場合、スポット溶接部以外の平面部の耐食性に優れると判断した。結果を表3、4に示す。
1:評価面(スポット溶接を実施していない平面、以下同様)からの白錆発生面積率が50%以上又は、評価面からの赤錆発生が確認
2:評価面からの白錆発生面積率が20%以上50%未満
3:評価面からの白錆発生面積率が10%以上20%未満
4:評価面からの白錆発生面積率が5%以上10%未満
5:評価面からの白錆発生面積率が5%未満
2.2 スポット溶接部耐食性試験
表面処理鋼板を、先端径5mm、R40のCF型Cr-Cu電極を用い、加圧力1.96kN、溶接電流8kA、通電時間12サイクル/50Hzにてスポット溶接後、端面をシールテープし、下記サイクル条件のサイクル腐食試験を60サイクル実施した。
(サイクル条件)
塩水噴霧(SST、5%NaCl、35℃雰囲気)2hr、乾燥(60℃)2hr、及び湿潤(50℃、98%RH)4hrを1サイクルとして、実施した。
その後、スポット溶接部の腐食状況を観察し、下記評点を付与した。かかる耐食性試験において、「3」、「4」又は「5」である場合、スポット溶接部の耐食性に優れると判断した。結果を表3、4に示す。
1:スポット溶接周辺部(スポット溶接部とその周辺部とを含む領域、以下同様)から赤錆が確認
2:スポット溶接周辺部からの白錆発生面積率が20%以上50%未満
3:スポット溶接周辺部からの白錆発生面積率が10%以上20%未満
4:スポット溶接周辺部からの白錆発生面積率が5%以上10%未満
5:スポット溶接周辺部からの白錆発生面積率が5%未満
2.3 スポット溶接性
表面処理鋼板を、先端径5mm、R40のCF型Cr-Cu電極を用い、加圧力1.96kN、溶接電流8kA、通電時間12サイクル/50Hzにてスポット溶接の連続打点性試験を行い、ナゲット径が3√t(tは板厚)を下回る直前の打点数を求めた。以下の評価点を用いてスポット溶接性の優劣を評価した。かかる溶接性試験において、「4」、「5」又は「6」である場合、溶接性に優れると判断した。結果を表3及び4に示す。
1:ナゲットが生成せず1点も溶接できない、又は、打点数が10打点未満
2:打点数が10打点以上50打点未満
3:打点数が50打点以上200打点未満
4:打点数が200点以上1000打点未満
5:打点数が1000点以上2000打点未満
6:打点数が2000点以上
Figure 2023151286000001
Figure 2023151286000002
3.結果と考察
表1及び2に示される結果から以下のことが分かる。
No.1及び2については、塗膜におけるマグネシウム化合物の含有量が5体積%未満と少な過ぎたため、亜鉛粉の犠牲防食距離を増大させる効果や、防食生成物を沈着させる効果が確保され難かった。そのため、No.1及び2の双方ともに、スポット溶接後の溶接部の耐食性が大きく劣る結果となった。また、No.1について平面部の耐食性にも劣る結果となった。
No.6については、塗膜におけるマグネシウム化合物の含有量が15体積%超と多過ぎたため、塩水噴霧によって塗膜からマグネシウム化合物が溶出した際、塗膜に多くの空隙が形成され、平面部の耐食性を低下させる結果となった。
No.7及び8については、塗膜における亜鉛粉の含有量が5体積%未満と少な過ぎたため、亜鉛粉による犠牲防食効果が得られなかった。そのため、塩水噴霧による耐食性が低下し、また、スポット溶接後の溶接部の耐食性も大きく劣る結果となった。さらに、導電顔料が少な過ぎたことから、スポット溶接性も低下した。
No.13については、塗膜における亜鉛粉の含有量が30体積%超と多過ぎたため、スポット溶接性が低下する結果となった。詳細な理由は不明であるが、塗膜表面における亜鉛粉の比率が高くなった結果、スポット溶接において電極と塗膜とが接触した際に電極表面に亜鉛及び塗膜成分が堆積し易くなり、電極が損耗して連続打点性が低下した可能性がある。
No.15~18については、塗膜においてマグネシウム化合物に替えて、その他の防錆剤のみを添加したため、マグネシウム化合物による効果(亜鉛粉の犠牲防食距離を増大させる効果や、防食生成物を沈着させる効果)が得られなかった。そのため、スポット溶接後の溶接部の耐食性に劣る結果となった。
No.19については、No.1及び2と同様に、塗膜におけるマグネシウム化合物の含有量が5体積%未満と少な過ぎたため、亜鉛粉の犠牲防食距離を増大させる効果や、防食生成物を沈着させる効果が確保され難かった。そのため、スポット溶接後の溶接部の耐食性が大きく劣る結果となった。
No.26~28については、塗膜において亜鉛粉に替えて、その他の導電剤のみを添加したため、亜鉛粉による犠牲防食効果が得られなかった。そのため、スポット溶接後の溶接部の耐食性に劣る結果となった。また、No.27については、平面部の耐食性にも劣る結果となった。
No.49は、Zn含有めっき層を有しない鋼板を用いた例である。No.49は、スポット溶接部以外の平面部においては塗膜中の亜鉛粉によって耐食性が確保できたが、スポット溶接部では犠牲防食成分としての亜鉛量が不十分となり、耐食性に劣る結果となった。
No.50~52については、塗膜の平均膜厚が3μm未満と薄過ぎたため、溶接部及び溶接部以外の平面部ともに、十分な耐食性が得られなかった。
No.56については、塗膜の平均膜厚が10μm超と厚過ぎたため、溶接性が低下する結果となった。
これに対し、No.3~5、9~12、14、20~25、29~48、及び、53~55については、(1)塗膜が、3μm以上10μm以下の平均膜厚を有し、(2)塗膜が、バインダー樹脂と、防錆剤と、導電剤とを含み、(3)防錆剤が、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムのうちの少なくとも一方のマグネシウム化合物を含み、(4)導電剤が、第1導電顔料としての亜鉛粉を含み、(5)塗膜が、マグネシウム化合物を5体積%以上15体積%以下含み、(6)塗膜が、前記亜鉛粉を5体積%以上30体積%以下含むことから、マグネシウム化合物と亜鉛粉との複合効果により、犠牲防食距離が増大し、且つ、防食成分を沈着させることができた。これにより、塗膜やめっき層が広範囲に亘って消失した溶接部にも優れた耐食性を付与することができた。また、塗膜が導電剤を含むとともに塗膜の平均膜厚が一定以下であることで、優れた溶接性を確保することもできた。
以上の結果から、以下の要件を満たす表面処理鋼板は、優れた溶接性を有し、且つ、電着塗装が無い場合でも、溶接部や溶接部以外の部分の双方において優れた耐食性が確保されるものといえる。
表面処理鋼板であって、
Zn含有めっき層を有するめっき鋼板と、
前記めっき鋼板の少なくとも一方の主面に設けられた表面処理層と、を有し、
前記表面処理層が、少なくとも、外層としての塗膜を有し、
前記塗膜が、3μm以上10μm以下の平均膜厚を有し、
前記塗膜が、バインダー樹脂と、防錆剤と、導電剤とを含み、
前記防錆剤が、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムのうちの少なくとも一方のマグネシウム化合物を含み、
前記導電剤が、第1導電顔料としての亜鉛粉を含み、
前記塗膜が、前記マグネシウム化合物を5体積%以上15体積%以下含み、
前記塗膜が、前記亜鉛粉を5体積%以上30体積%以下含む、
表面処理鋼板。

Claims (5)

  1. 表面処理鋼板であって、
    Zn含有めっき層を有するめっき鋼板と、
    前記めっき鋼板の少なくとも一方の主面に設けられた表面処理層と、を有し、
    前記表面処理層が、少なくとも、外層としての塗膜を有し、
    前記塗膜が、3μm以上10μm以下の平均膜厚を有し、
    前記塗膜が、バインダー樹脂と、防錆剤と、導電剤とを含み、
    前記防錆剤が、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムのうちの少なくとも一方のマグネシウム化合物を含み、
    前記導電剤が、第1導電顔料としての亜鉛粉を含み、
    前記塗膜が、前記マグネシウム化合物を5体積%以上15体積%以下含み、
    前記塗膜が、前記亜鉛粉を5体積%以上30体積%以下含む、
    表面処理鋼板。
  2. 前記導電剤が、ドープ型酸化物粒子、50質量%以上のSiを含有するSi合金、50質量%以上のSiを含有するSi化合物、及び、これらの複合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の第2導電顔料を含み、
    前記塗膜が、前記第2導電顔料を5体積%以上20体積%以下含む、
    請求項1に記載の表面処理鋼板。
  3. 前記ドープ型酸化物粒子が、ドープ型酸化亜鉛粒子である、
    請求項2に記載の表面処理鋼板。
  4. 前記Si合金又は前記Si化合物が、70質量%以上のSiを含有するフェロシリコンである、
    請求項2又は3に記載の表面処理鋼板。
  5. 前記表面処理層が、前記塗膜と前記めっき鋼板との間の内層として、無機系又は有機無機複合系の皮膜を有し、
    前記皮膜が、0.1μm以上1.0μm以下の平均膜厚を有する、
    請求項1~4のいずれか1項に記載の表面処理鋼板。
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