JP2023078632A - 固体電解コンデンサ - Google Patents

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良弥 小関
Yoshiya Koseki
桃世 宮本
Momoyo Miyamoto
佳保里 桐山
Kaori Kiriyama
慧歩 土屋
Keiho Tsuchiya
智裕 畑井
Tomohiro Hatakei
俊一 平尾
Shunichi Hirao
徹 雨夜
Toru Amaya
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Abstract

【課題】良好な周波数特性を有する固体電解コンデンサを提供する。【解決手段】固体電解コンデンサは、誘電体酸化皮膜が形成された陽極箔と、陽極箔に対向する陰極箔と、陽極箔と陰極箔との間に介在し、導電性高分子を含む固体電解質層とを備える。陽極箔は、多数のトンネル状のエッチングピットを有する。前記導電性高分子は、メチレンホスホン酸基がエチレンジオキシ骨格に導入された3,4-エチレンジオキシチオフェンの重合体を含む。【選択図】図1

Description

本発明は、陽極箔と陰極箔との間に固体電解質が介在する固体電解コンデンサに関する。
固体電解コンデンサは、タンタルあるいはアルミニウム等のような弁作用金属を陽極箔及び陰極箔として備えている。陽極箔は、弁作用金属を焼結体あるいはエッチング箔等の形状にすることで拡面化され、拡面化された表面に陽極酸化等の処理によって誘電体酸化皮膜を有する。陽極箔と陰極箔との間には、陽極箔に密着して真の陰極として作用する固体電解質層が介在する。
固体電解質としては、二酸化マンガンや7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体が知られている。近年は、高い導電性を有するポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)が固体電解質として急速に普及している。ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)は、典型的にはポリスチレンスルホン酸(PSS)がドープされることにより、高い導電性が発現する。
このような電解コンデンサは各種用途で用いられる。例えばパワーエレクトロニクスの分野において、交流電源の電力をコンバータ回路で直流電力に変換し、この直流電力をインバータ回路にて所望の交流電力に変換する電力変換回路には、コンバータ回路から出力される直流の脈動を抑制して平滑化してからインバータ回路に入力するために、平滑コンデンサが設けられている。また、半導体スイッチング素子の安定動作やノイズ除去のために、デカップリングコンデンサが当該半導体スイッチング素子の近傍に設けられる。
特開2021-64737号公報
近年、パワーエレクトロニクスの分野において、SiCやGaN等のワイドバンドギャップ半導体を用いたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が注目されている。これらワイドバンドギャップ半導体が用いられたデバイスは、シリコンを用いた従前のパワーデバイスに比べて、オン抵抗が低く、スイッチング動作が高速で、高温環境下でも動作可能であるといった特長を有する。
このワイドバンドギャップ半導体の特長を生かして、電力変換器等は、低いオン抵抗及び高速スイッチングで電力損失の抑制による高効率化に向かい、その結果、冷却ファンやヒートシンク等の冷却部品の簡略化や高周波化による受動品の小型化、更にはコスト削減や省エネ化に貢献することになる。
このような電力変換器等のパワーデバイスを有する機器の近年の動向に対し、当該機器に共に組み込まれる固体電解コンデンサにおいても、ワイドバンドギャップ半導体に対応し得るような周波数特性を獲得する必要がある。即ち、固体電解コンデンサに周波数依存性がなく、換言すれば高い周波数領域においても特性が落ちることなく、高い容量出現率を有し、また低い等価直列抵抗(ESR)を有する必要がある。
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、良好な周波数特性を有する固体電解コンデンサを提供することにある。
上記課題を解決すべく、本発明の固体電解コンデンサは下記特徴を有する。誘電体酸化皮膜が形成された陽極箔と、陰極箔と、前記陽極箔と前記陰極箔との間に介在し、導電性高分子を含む固体電解質層と、を備え、前記陽極箔は、多数のトンネル状のエッチングピットを有し、前記導電性高分子は、エチレンジオキシ骨格にメチレンホスホン酸基が導入された3,4-エチレンジオキシチオフェンの重合体を含む。
更に、本発明の固体電解コンデンサは、電解液が含浸されているようにしてもよい。
本発明の固体電解コンデンサは、高い周波数領域でも高い容量出現率を有し、また低い等価直列抵抗を有する。
実施例と比較例の周波数と静電容量の関係を示すグラフである。 実施例と比較例の周波数と等価直列抵抗の関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態に係る電解コンデンサついて説明する。尚、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
(全体構成)
電解コンデンサは、誘電体酸化皮膜の誘電分極作用により静電容量を得て静電容量により電荷の蓄電及び放電を行う受動素子である。この電解コンデンサは、誘電体酸化皮膜が表面に形成された陽極箔、陰極箔、固体電解質層及びセパレータを備えている。陽極箔と陰極箔とは対向配置され、セパレータ及び固体電解質層は、陽極箔と陰極箔の間に介在する。陽極箔と陰極箔とは、セパレータを挟んで交互に積層される積層型により配置され、又はセパレータを挟みつつ巻回される巻回型により配置される。
固体電解質層は、導電性高分子を含む。導電性高分子は、セパレータに坦持され、陽極箔の表面に形成された誘電体酸化皮膜に密着し、誘電体酸化皮膜と陰極箔の間に連なるように配置されて導電パスを作出し、真の陰極となる。電解コンデンサには、固体電解質層と電解液とを併用でき、電解液は、コンデンサ素子の空隙に充填される。コンデンサ素子は、誘電体酸化皮膜が形成された陽極箔と陰極箔が固体電解質層とセパレータを介して対向して成る。
コンデンサ素子は、有底筒状の外装ケースに挿入される。外装ケースの開口端部には、封口体が装着され、コンデンサ素子は、開口端部の加締め加工により封止される。封口体は、例えば、ゴムから構成され、又はゴムと硬質基板の積層体から構成される。ゴムとしてはエチレンプロピレンゴムやブチルゴム等が挙げられる。陽極箔及び陰極箔には陽極リード及び陰極リードが接続されており、陽極リード及び陰極リードは封口体から引き出されている。
(電極箔)
陽極箔及び陰極箔は、弁作用金属を材料として延伸された長尺の箔体である。弁作用金属は、アルミニウム、タンタル、ニオブ、酸化ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス及びアンチモン等である。純度は、陽極箔に関して99.9%以上が望ましく、陰極箔に関して99%以上が望ましいが、ケイ素、鉄、銅、マグネシウム、亜鉛等の不純物が含まれていても良い。
陽極箔は、片面又は両面に多数のトンネル状のエッチングピットが形成されて拡面化されている。トンネル状のエッチングピットは、160V以上の中高圧用途に適し、箔厚み方向に掘り込まれた孔である。このトンネル状のエッチングピットは、最深部が陽極箔内に収まる長さを有していてもよいし、陽極箔の一方の面から他方の面へ陽極箔を貫く貫通孔であってもよい。トンネル状のエッチングピットは、エッチング処理によって形成される。エッチング処理では、典型的には、塩酸等のハロゲンイオンが存在する酸性水溶液中で直流電流を流してエッチングピットを形成し、硝酸等の酸性水溶液中で直流電流を流してエッチングピットを拡径する。
陰極箔は、拡面化がされていないプレーン箔であってもよいし、必要に応じてトンネル状のエッチングピット若しくは海綿状のエッチングピットが形成されて拡面化されていてもよいし、又は弁作用金属の粒子を蒸着若しくは焼結させて拡面化されていてもよい。海綿状のエッチングピットは、塩酸等のハロゲンイオンが存在する酸性水溶液中で交流電流を流すことで形成される。
陽極箔の表層に形成される誘電体酸化皮膜は、固体電解コンデンサの誘電体層であり、典型的には、陽極箔の表層に形成される酸化皮膜である。陽極箔がアルミニウム箔であれば、誘電体酸化皮膜は、拡面化された領域を酸化させた酸化アルミニウム層である。この誘電体酸化皮膜は化成処理によって形成される。化成処理では、化成液中で、所望の耐電圧を目指して電圧印加する。化成液は、ハロゲンイオン不在の溶液であり、例えば、リン酸二水素アンモニウム等のリン酸系の化成液、ホウ酸アンモニウム等のホウ酸系の化成液、アジピン酸アンモニウム等のアジピン酸系の化成液等である。陰極箔の表層にも、化成処理によって意図的に酸化皮膜が形成され、又は自然的に酸化皮膜が形成されていてもよい。陰極箔の表層に自然的に発生する自然酸化皮膜は、陰極箔が空気中の酸素と反応することにより形成される。
(固体電解質層)
固体電解質層は、導電性高分子を含んでいる。導電性高分子は、エチレンジオキシ骨格にメチレンホスホン酸基が導入された3,4-エチレンジオキシチオフェンの重合体である。この導電性高分子としては、例えば、以下化学式(A)で表されるように、骨格の2位の位置にメチレンホスホン酸基が導入された3,4-エチレンジオキシチオフェンの重合体が挙げられる。または、この導電性高分子としては、骨格の1位の位置にメチレンホスホン酸基が導入された3,4-エチレンジオキシチオフェンの重合体が挙げられる。
Figure 2023078632000002
導電性高分子は、エチレンジオキシ骨格にメチレンホスホン酸基が導入された3,4-エチレンジオキシチオフェンの単量体のみが重合した単一重合体の他、この単量体ユニットと3,4-エチレンジオキシチオフェン又は3,4-エチレンジオキシチオフェンの誘導体が含まれる共重合体であってもよい。尚、以下、エチレンジオキシ骨格にメチレンホスホン酸基が導入された3,4-エチレンジオキシチオフェンの重合体をホスホン酸基導入PEDOTと呼ぶ。
この導電性高分子において、側鎖のメチレンホスホン酸基は、水素イオン供与性のドーパントとして作用する。そのため、ホスホン酸基導入PEDOTは、自己ドープ型導電性高分子として導電性を発現する。さらに、メチレンホスホン酸基のドーピングの程度によって溶媒に対する溶解性が向上し、可溶化する。また、メチレンホスホン酸基は、陽極箔への吸着性が高く、固体電解質層と陽極箔との密着性を向上させる。そのため、この導電性高分子は、120Hz等の低周波数領域はもとより、100kHz等の高周波数領域においても、固体電解コンデンサの容量出現率を高くし、また等価直列抵抗を低くする。即ち、周波数帯に依らず、固体電解コンデンサの容量出現率は高くなり、等価直列抵抗は低くなる。
但し、陽極箔はトンネル状のエッチングピットによって拡面化されている必要がある。陽極箔にはトンネル状のエッチングピットが形成され、且つ固体電解質にエチレンジオキシ骨格にメチレンホスホン酸基が導入された3,4-エチレンジオキシチオフェンの重合体を導電性高分子として含んでいる場合に、周波数帯に依らず、120Hz等の低周波数領域から100kHz等の高周波数領域まで、固体電解コンデンサの容量出現率は高くなり、また等価直列抵抗は低くなる。
ここで、容量出現率は、陽極箔の箔容量に対する固体電解コンデンサの静電容量の割合であり、静電容量を箔容量で除した結果の百分率である。箔容量は、陽極箔から規定面積の試験片を切り出し、白金板を対向電極としてガラス製の測定槽内の静電容量測定液に浸漬し、静電容量計を用いて計測する。例えば、規定面積は1cmとし、静電容量測定液は30℃の五ホウ酸アンモニウム水溶液とし、静電容量計はポテンショスタットと周波数応答アナライザ、電気化学インピーダンスアナライザー又はLCRメータ等とし、測定条件としてDCバイアス電圧は1.5Vとし、交流振幅を1Vとする。
この固体電解質層は、導電性高分子溶液を用いて形成されることが好ましい。導電性高分子溶液は、導電性高分子が溶解した溶液又は導電性高分子の粒子又は粉末が分散した分散液であり、pHが調整され、また必要に応じて各種添加剤が加えられている。更に、導電性高分子溶液には、例えば、有機バインダー、界面活性剤、分散剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の慣用の添加剤が含まれていてもよい。
導電性高分子溶液の溶媒としては、導電性高分子が溶解し、又は導電性高分子の粒子または粉末が分散するものであり、水又は水と有機溶媒の混合物が好ましい。有機溶媒としては、極性溶媒、アルコール類、エステル類、炭化水素類、カーボネート化合物、エーテル化合物、鎖状エーテル類、複素環化合物、ニトリル化合物等が挙げられる。
この導電性高分子溶液の作製工程では、例えば、導電性高分子を構成するモノマーと酸化剤を添加し、化学酸化重合が完了するまで攪拌し、次いで、限外濾過、陽イオン交換、及び陰イオン交換などの精製手段により残留モノマーや不純物を除去する。この作製工程により、粒子又は粉末状の導電性高分子が得られる。そして、この導電性高分子の粒子又は粉末を水に分散させた分散液に対してpH調整剤によりpH調整を行い、超音波ホモジナイザー等を用いて分散処理を行い、必要に応じて各種添加剤を加え、更に超音波ホモジナイザー等を用いて分散処理を行えばよい。
エチレンジオキシ骨格にメチレンホスホン酸基が導入された3,4-エチレンジオキシチオフェンのモノマーは次の製造方法によって得ることできる。即ち、まず、エチレンジオキシ骨格にハロゲン置換体を有するメチレン基が導入された3,4-エチレンジオキシチオフェンを、硫酸、パラトルエンスルホン酸又はメタンスルホン酸等の酸性触媒の存在下で加熱する。次に、エチレンジオキシ骨格にハロゲン置換体を有するメチレン基が導入された3,4-エチレンジオキシチオフェンとトリス(トリアルキルシリル)ホスファイトとによりミカエリス-アルブゾフ転移反応を生じさせ、ハロゲンをホスホン酸ビス(トリアルキルシリル)基又はホスホン酸ジエステル基で置換する。最後に、反応後の化合物に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム又はアンモニアの水溶液等の塩基性水溶液を作用させることで脱保護を起こす。これにより、エチレンジオキシ骨格にメチレンホスホン酸基が導入された3,4-エチレンジオキシチオフェンは得られる。
導電性高分子は、このようにして作製された導電性高分子溶液に陽極箔、陰極箔及びセパレータの各々を浸漬及び乾燥させることで、これら陽極箔、陰極箔及びセパレータに固体電解質として付着する。または、コンデンサ素子を導電性高分子溶液に浸漬及び乾燥させることにより、固体電解質を形成してもよい。浸漬の他、導電性高分子溶液を滴下塗布又はスプレー塗布してもよい。乾燥工程は複数回繰り返してもよく、減圧環境下で乾燥してもよい。
浸漬後は、乾燥工程により導電性高分子溶液の溶媒を除去する。乾燥工程では、陽極箔、陰極箔及びセパレータの各々又はコンデンサ素子を例えば40℃以上200℃以下の温度環境下に3分以上180分以下の範囲で晒す。この乾燥工程は複数回繰り返してもよい。減圧環境下で乾燥してもよく、例えば5kPa以上100kPa以下の圧力で減圧する。
(セパレータ)
セパレータは、クラフト、マニラ麻、エスパルト、ヘンプ、レーヨン等のセルロースおよびこれらの混合紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、それらの誘導体などのポリエステル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ビニロン系樹脂、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、トリメチルペンテン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等があげられ、これらの樹脂を単独で又は混合して用いることができる。
尚、セパレータは、陽極箔と陰極箔のショート防止のために、陽極箔と陰極箔を隔て、また陽極箔及び陰極箔の間の固体電解質を保持する。固体電解質の形状が自力で保持され、固体電解質によって陰極箔と陽極箔を隔離できる場合、セパレータを固体電解コンデンサから排除できる。
(電解液)
固体電解コンデンサは、固体電解質のみを備えるほか、電解液が併用されてもよい。電解液は、導電性高分子の付着工程と乾燥工程の後にコンデンサ素子に含浸させる。この電解液は、少なくとも誘電体酸化皮膜の修復作用を担う。
電解液の溶媒は、特に限定されるものではないが、プロトン性の有機極性溶媒又は非プロトン性の有機極性溶媒を用いることができる。プロトン性の極性溶媒として、一価アルコール類、及び多価アルコール類、オキシアルコール化合物類、水などが代表として挙げられ、例えばエチレングリコール又はプロピレングリコールである。非プロトン性の極性溶媒としては、スルホン系、アミド系、ラクトン類、環状アミド系、ニトリル系、スルホキシド系などが代表として挙げられ、例えばスルホラン、γ-ブチロラクトン、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートである。
電解液に含まれる溶質は、アニオン及びカチオンの成分が含まれ、典型的には、アジピン酸や安息香酸等の有機酸若しくはその塩、ホウ酸やリン酸等の無機酸若しくはその塩、又はボロジサリチル酸等の有機酸と無機酸との複合化合物若しくはそのイオン解離性のある塩であり、単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。これら有機酸の塩、無機酸の塩、ならびに有機酸と無機酸の複合化合物の少なくとも1種の塩としては、アンモニウム塩、四級アンモニウム塩、四級化アミジニウム塩、アミン塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。アニオンとなる酸及びカチオンとなる塩基を溶質成分として別々に電解液に添加してもよい。
さらに、電解液には他の添加剤を添加することもできる。添加剤としては、ポリエチレングリコール、ホウ酸と多糖類(マンニット、ソルビットなど)との錯化合物、ホウ酸と多価アルコールとの錯化合物、ホウ酸エステル、ニトロ化合物、リン酸エステル、コロイダルシリカなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ニトロ化合物は、電解コンデンサ内の水素ガスの発生量を抑制する。ニトロ化合物としては、o-ニトロ安息香酸、m-ニトロ安息香酸、p-ニトロ安息香酸、o-ニトロフェノール、m-ニトロフェノール、p-ニトロフェノール等が挙げられる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
次のようにして実施例の固体電解コンデンサを作製した。陽極箔としてアルミニウム箔を用意した。アルミニウム箔の両面に直流エッチングによって多数のトンネル状のピットを形成した。直流エッチングの工程では、塩酸を含む水溶液中でアルミニウム箔に直流電流を流してピットを形成し、次いで、硝酸を含む水溶液中でアルミニウム箔に直流電流を流してピットを拡径した。
更に、トンネル状のピットを形成したアルミニウム箔を化成処理の工程に移し、アルミニウム箔に誘電体酸化皮膜を形成した。化成処理の工程では、90℃のホウ酸アンモニウム水溶液にアルミニウム箔を浸漬しつつ、当該アルミニウム箔に電流密度25mAcm-2で通電して650Vの化成電圧にまで到達させた後、その電圧を20分間保持した。
この陽極箔の120Hzにおける箔容量は、0.686μFcm-2であった。陽極箔の箔容量は、試料面積を1cmに規定した陽極箔を温度30℃の五ホウ酸アンモニウム水溶液に浸漬し、DCバイアス電圧1.5V、交流振幅1Vとし、Solartron analytical製のポテンショスタットSI1287及び周波数応答アナライザ1252Aを用いて測定した。
箔片面につき1cm四方の箔表面が4箇所露出するように、陽極箔の両面をイミドテープでマスキングした。8箇所の露出領域に対して、導電性高分子溶液を40μLずつ滴下し、乾燥させた。導電性高分子溶液に含有している導電性高分子は、ホスホン酸基導入PEDOTである。導電性高分子溶液の溶媒は水である。導電性高分子は、導電性高分子溶液中の2wt%を占める。乾燥工程では、室温で5分間静置後、115℃の温度環境下に15分間晒した。これにより、陽極箔上に導電性高分子を含む固体電解質層が形成された。
陽極箔上に固体電解質層が形成された後、8箇所の露出領域に固体電解質層の上からカーボンペーストを塗工し、130℃の温度環境下に10分間放置することで硬化させた。更に、8箇所の露出領域に対して、カーボン層の上から銀ペーストを塗工すると同時に、引出端子として銅箔を接着した。銀ペーストは、陽極箔の片面に塗工された後、硬化前の銀ペースト部に銅箔を接着した状態で130℃の温度環境下に5分間放置することで仮硬化させた。これにより銀層と銅箔とを接続した。同様の手順により陽極箔の他の片面に銀ペーストの塗工及び片面の銀層に接続された銅箔を折り返して接着した後、130℃で25分間放置した。このようにして全8箇所の露出領域に対して、銀ペーストで接続した銅箔を介して陽極箔上に形成された片面の露出領域と他の片面に形成された露出領域を接続した。以上のカーボン層、銀層及び銅箔層は、固体電解コンデンサの陰極箔に相当する。
このようにして実施例の固体電解コンデンサが製造された。実施例の固体電解コンデンサにおいては、陽極箔は多数のトンネル状のエッチングピットを有し、固体電解質層に含まれる導電性高分子は、エチレンジオキシ基骨格にメチレンホスホン酸基が導入された3,4-エチレンジオキシチオフェンを単一重合体として含む。
更に比較例1の固体電解コンデンサを作製した。比較例1の固体電解コンデンサは、固体電解質層に含まれる導電性高分子の種類が実施例と異なる。固体電解コンデンサのその他全ての構成、作製方法及び作製条件は、実施例の固体電解コンデンサと同一である。比較例1の固体電解コンデンサの固体電解質層に含まれる導電性高分子は、ポリスチレンスルホン酸(PSS)がドープされたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT:PSS)である。導電性高分子の固形分濃度は実施例と同一である。尚、実施例と異なり、固体電解質には、この導電性高分子の乾燥後の固形分量に対して83wt%の割合のソルビトールが含まれる。
これら実施例及び比較例1の固体電解コンデンサを4個ずつ作製し、各測定周波数における静電容量と等価直列抵抗を測定した。静電容量及び等価直列抵抗は、DCバイアス電圧1.5V、交流振幅1Vとし、LCRメータ(株式会社エヌエフ回路設計ブロック製、型番ZM2376)を用いて20℃の温度下で行った。
測定周波数が120Hz及び100kHzのときの静電容量の測定結果、等価直列抵抗(ESR)の測定結果、及び容量出現率の計算結果を下表1に示す。容量出現率は、同一測定周波数における静電容量の測定結果を陽極箔の箔容量で除算し、100を乗算することで百分率に換算して得た。また、4つの実施例と4つの比較例1の周波数と静電容量(Cap)の関係を図1のグラフに示し、4つの実施例と4つの比較例1の周波数と等価直列抵抗(ESR)の関係を図2のグラフに示す。図1及び図2において、実線は実施例の群であり、点線は比較例1の群である。
(表1)
Figure 2023078632000003
表1及び図1に示すように、実施例の固体電解コンデンサは、120Hzにおいて比較例1の固体電解コンデンサと比べて1.5倍程度の容量出現率を得られている。100kHzにおいては、比較例1の固体電解コンデンサが殆ど静電容量を引き出すことができていないのに対し、実施例の固体電解コンデンサは、比較例1の10倍以上の容量出現率を得ることでき、しかも静電容量は120Hz等の低周波数帯域と遜色がない。
また、表1及び図1に示すように、実施例の固体電解コンデンサの等価直列抵抗は、120Hzにおいて比較例1の固体電解コンデンサと比べて50分の1程度になっている。100kHzにおいては、比較例1の固体電解コンデンサも等価直列抵抗が低くなってきてはいる。しかし、実施例の固体電解コンデンサの等価直列抵抗は、その比較例1の10分の1にも満たない程度にまで低減している。
更に比較例2の固体電解コンデンサを作製した。比較例2の固体電解コンデンサは、固体電解質層に含まれる導電性高分子の種類が実施例と同じホスホン酸基導入PEDOTであるが、陽極箔の表層に形成した拡面層の態様が異なる。比較例2の固体電解コンデンサでは、陽極箔に塩酸等のハロゲンイオンが存在する酸性水溶液中で交流電流を流すことで、多数の海綿状のエッチングピットが形成された。比較例2の固体電解コンデンサのその他全ての構成、作製方法及び作製条件は、実施例の固体電解コンデンサと同一である。
また、比較例3の固体電解コンデンサを作製した。比較例3の固体電解コンデンサは、固体電解質層に含まれる導電性高分子の種類が実施例と異なるPEDOT:PSSであり、更に陽極箔の表層に形成したのは多数の海綿状のエッチングピットである。比較例3の固体電解コンデンサのその他全ての構成、作製方法及び作製条件は、実施例の固体電解コンデンサと同一である。
これら比較例2及び3の固体電解コンデンサの各測定周波数における静電容量と等価直列抵抗を測定した。静電容量と等価直列抵抗の測定方法及び測定条件は実施例と同一である。測定周波数が120Hz及び100kHzのときの比較例2及び3の静電容量の測定結果、等価直列抵抗(ESR)の測定結果、及び容量出現率の計算結果を実施例の一つと共に下表2に示す。
(表2)
Figure 2023078632000004
まず、比較例2及び3の陽極箔の120Hzにおける箔容量は、3.79μFcm-2であった。箔容量の測定方法及び測定条件は実施例と同じである。比較例2及び比較例3を比べるとわかるように、比較例2はホスホン酸基導入PEDOTを固体電解質層に含むが、PEDOT:PSSを固体電解質層に含む比較例3と120Hzにおける静電容量が変わらず、100kHzにおける容量出現率は大きく劣る結果となった。また、比較例2はホスホン酸基導入PEDOTを固体電解質層に含むが、PEDOT:PSSを固体電解質層に含む比較例3と比べて等価直列抵抗が大きくなってしまった。
即ち、表1及び表2を総合すると、ホスホン酸基導入PEDOTを固体電解質層に含むが、陽極箔に海綿状のエッチングピットを形成したときには、寧ろ容量出現率と等価直列抵抗が悪化する結果となるが、ホスホン酸基導入PEDOTを固体電解質層に含み、且つ陽極箔に多数のトンネル状のエッチングピットを形成したときには、120Hzといった低周波領域から100kHzといった高周波領域まで、周波数に依らず、良好な容量出現率と等価直列抵抗が実現されることが確認された。

Claims (2)

  1. 誘電体酸化皮膜が形成された陽極箔と、
    陰極箔と、
    前記陽極箔と前記陰極箔との間に介在し、導電性高分子を含む固体電解質層と、
    を備え、
    前記陽極箔は、多数のトンネル状のエッチングピットを有し、
    前記導電性高分子は、エチレンジオキシ骨格にメチレンホスホン酸基が導入された3,4-エチレンジオキシチオフェンの重合体を含むこと、
    を特徴とする固体電解コンデンサ。
  2. 電解液が含浸されていること、
    を特徴とする請求項1記載の固体電解コンデンサ。
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