以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
<実施形態>
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置1の上面図である。
図1を参照して、半導体装置1は、平面視四角形状のチップ状に形成された半導体層2を含む。半導体層2は、第1主面3と、第1主面3の反対側に位置する第2主面4と、第1主面3および第2主面4を接続する4つの側面5a,5b,5c,5dとを含む。
4つの側面5a,5b,5c,5dは、一対の側面5a,5b、および、一対の接続側面5c,5dを含む。一対の側面5a,5bは、図1の左右方向に互いに対向している。一対の接続側面5c,5dは、図1の上下方向に互いに対向し、かつ、一対の側面5a,5bを接続している。
半導体層2には、素子形成領域6と、当該素子形成領域6の外側の領域である、外側領域7、耐圧保持領域8およびスクライブ領域9とが設定されている。
素子形成領域6は、半導体層2の第1主面3の法線方向から見た平面視(以下、単に「平面視」という。)において、半導体層2の中央領域に設定されている。外側領域7は、素子形成領域6の外側の領域に設定されている。耐圧保持領域8は、外側領域7の外側の領域に設定されている。スクライブ領域9は、耐圧保持領域8の外側の領域に設定されている。
素子形成領域6は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)が形成された領域である。素子形成領域6は、アクティブ領域とも称される領域である。素子形成領域6は、平面視において、半導体層2の各辺に平行な4辺を有する平面視四角形状に設定されている。素子形成領域6は、半導体層2の周縁から当該半導体層2の内側に間隔を空けて設定されている。
外側領域7は、素子形成領域6を他の領域(耐圧保持領域8)から区画する領域である。外側領域7は、半導体層2の周縁および素子形成領域6の周縁の間の領域において、素子形成領域6を取り囲む無端状(平面視四角環状)に設定されている。
耐圧保持領域8は、半導体装置1の耐圧を向上させるための領域である。耐圧保持領域8は、半導体層2の周縁および外側領域7の周縁の間の領域において、外側領域7を取り囲む無端状(平面視四角環状)に設定されている。
スクライブ領域9は、製造時にダイシングブレード等の切断部材が通過する領域である。スクライブ領域9は、半導体層2の周縁および耐圧保持領域8の周縁の間の領域において、耐圧保持領域8を取り囲む無端状(平面視四角環状)に設定されている。
半導体層2の第1主面3の上には、表面電極10が形成されている。表面電極10は、ゲート電極11、エミッタ電極12、フィールドプレート電極13、および、等電位ポテンシャル電極14を含む。ゲート電極11、エミッタ電極12、フィールドプレート電極13、および、等電位ポテンシャル電極14は、それらを縁取る絶縁領域15によって、それぞれ電気的に絶縁されている。
ゲート電極11は、主に、外側領域7に形成されている。ゲート電極11は、ゲートパッド16およびゲートフィンガー17を含む。ゲートパッド16は、平面視において、側面5aの中央領域に沿って形成されている。ゲートパッド16は、本実施形態では、平面視四角形状に形成されている。ゲートパッド16は、外側領域7から素子形成領域6内に引き出されており、素子形成領域6および外側領域7の境界領域を横切っている。
ゲートフィンガー17は、外側領域7において、ゲートパッド16から引き出されており、素子形成領域6を3方向から区画している。ゲートフィンガー17は、側面5b側において、一対の開放端18,19を有している。ゲートフィンガー17は、一対の開放端18,19およびゲートパッド16の間の領域を帯状に延びている。ゲートフィンガー17は、より具体的には、第1ゲートフィンガー20および第2ゲートフィンガー21を含む。
第1ゲートフィンガー20は、ゲートパッド16の接続側面5c側の端部から引き出されている。第1ゲートフィンガー20は、側面5b側において、開放端18を有している。第1ゲートフィンガー20は、ゲートパッド16および開放端18の間の領域において、側面5aおよび接続側面5cに沿って帯状に延びている。
第2ゲートフィンガー21は、ゲートパッド16の接続側面5d側の端部から引き出されている。第2ゲートフィンガー21は、側面5b側において、開放端19を有している。第2ゲートフィンガー21は、ゲートパッド16および開放端19の間の領域において、側面5aおよび接続側面5cに沿って帯状に延びている。
エミッタ電極12は、エミッタパッド22、エミッタ引き回し部23およびエミッタ接続部24を含む。
エミッタパッド22は、ゲートパッド16の周縁およびゲートフィンガー17の周縁によって区画された平面視凹状の領域内に形成されている。エミッタパッド22は、ゲートパッド16の周縁およびゲートフィンガー17の周縁に沿う平面視凹状に形成されている。エミッタパッド22は、ゲートパッド16外の素子形成領域6のほぼ全域を被覆している。エミッタパッド22の周縁は、素子形成領域6から外側領域7内に引き出されており、素子形成領域6および外側領域7の境界領域を横切っている。
エミッタ引き回し部23は、外側領域7に形成されている。エミッタ引き回し部23は、ゲートフィンガー17の外側の領域において、帯状に引き回されている。エミッタ引き回し部23は、本実施形態では、ゲートフィンガー17を取り囲む無端状(平面視四角環状)に形成されている。エミッタ引き回し部23は、ゲートフィンガー17を取り囲む有端状に形成されていてもよい。
エミッタ接続部24は、エミッタパッド22から引き出されている。エミッタ接続部24は、ゲートフィンガー17の一対の開放端18,19の間の領域を横切って、エミッタ引き回し部23に接続されている。エミッタ引き回し部23は、エミッタ接続部24を介してエミッタパッド22に電気的に接続されている。
素子形成領域6に形成されたIGBTは、その構造上、npn型の寄生バイポーラトランジスタを含む。素子形成領域6外の領域で生じたアバランシェ電流が素子形成領域6に流れ込むと、寄生バイポーラトランジスタがオン状態となる。この場合、たとえばラッチアップにより、IGBTの制御が不安定になる。
そこで、本実施形態では、エミッタパッド22、エミッタ引き回し部23およびエミッタ接続部24を含むエミッタ電極12によって、素子形成領域6外の領域で生じたアバランシェ電流を回収するアバランシェ電流回収構造25を形成している。
より具体的には、エミッタ引き回し部23により、素子形成領域6外の領域で生じたアバランシェ電流が回収される。回収されたアバランシェ電流は、エミッタ接続部24を介してエミッタパッド22から取り出される。これにより、素子形成領域6外の領域で生じた不所望な電流によって寄生バイポーラトランジスタがオン状態になるのを抑制できる。よって、ラッチアップを抑制できるから、IGBTの制御の安定性を高めることができる。
図1を再度参照して、フィールドプレート電極13は、耐圧保持領域8に形成されている。図1では、フィールドプレート電極13がラインで示されている。フィールドプレート電極13は、外側領域7からスクライブ領域9に間隔を空けて、複数(本実施形態では5つ)形成されている。
各フィールドプレート電極13は、エミッタ引き回し部23に沿って帯状に引き回されている。各フィールドプレート電極13は、本実施形態では、エミッタ引き回し部23を取り囲む無端状(平面視四角環状)に形成されている。少なくとも1つのフィールドプレート電極13が、有端状に形成されていてもよい。
等電位ポテンシャル電極14は、スクライブ領域9に形成されている。等電位ポテンシャル電極14は、フィールドプレート電極13に沿って帯状に引き回されている。等電位ポテンシャル電極14は、本実施形態では、フィールドプレート電極13を取り囲む無端状(平面視四角環状)に形成されている。等電位ポテンシャル電極14は、所謂EQR(EQui-potential Ring)電極として形成されている。
次に、半導体装置1の内部構造について具体的に説明する。図2は、図1に示す一点鎖線II-IIに沿う断面図である。図3は、図1に示す一点鎖線III-IIIに沿う断面図である。
図2および図3を参照して、半導体層2は、n-型半導体基板31を含む単層構造を有している。n-型半導体基板31は、本実施形態では、FZ(Floating Zone)法によって形成されたシリコン製のFZ基板である。半導体層2の第2主面4には、裏面電極としてのコレクタ電極32が接続されている。
素子形成領域6において、半導体層2の第1主面3の表層部には、p-型チャネル領域33が形成されている。p-型チャネル領域33は、本実施形態では、平面視において、半導体層2の各辺に平行な4辺を有する平面視四角形状に形成されている。p型チャネル領域33は、半導体層2の周縁から当該半導体層2の内側に間隔を空けて形成されている。
素子形成領域6は、本実施形態では、p-型チャネル領域33を半導体層2の第1主面3および第2主面4に投影した領域でもある。素子形成領域6は、平面視においてp型チャネル領域33の周縁によって取り囲まれた領域によって定義され得る。
素子形成領域6において、p-型チャネル領域33に対して半導体層2の第2主面4側の領域にはn-型ドリフト領域34が形成されている。n-型ドリフト領域34は、p型チャネル領域33と電気的に接続されている。n-型ドリフト領域34は、n-型半導体基板31の一部の領域を利用して形成されている。n-型ドリフト領域34は、素子形成領域6に加えて、外側領域7、耐圧保持領域8およびスクライブ領域9にも形成されている。
素子形成領域6において、半導体層2の第2主面4の表層部には、p+型コレクタ領域35が形成されている。p+型コレクタ領域35は、半導体層2外において、コレクタ電極32と電気的に接続されている。p+型コレクタ領域35は、半導体層2内において、n-型ドリフト領域34と電気的に接続されている。
p+型コレクタ領域35は、素子形成領域6に加えて、外側領域7、耐圧保持領域8およびスクライブ領域9にも形成されている。p+型コレクタ領域35は、本実施形態では、半導体層2の第2主面4の表層部の全域に形成されている。p+型コレクタ領域35は、p型チャネル領域33と対向する対向領域に加えて、p型チャネル領域33と対向しない非対向領域にも形成されている。
n-型ドリフト領域34およびp+型コレクタ領域35の間の境界領域には、本実施形態では、n型バッファ領域36が形成されている。n型バッファ領域36は、n-型ドリフト領域34のn型不純物濃度よりも高いn型不純物濃度を有する高濃度かつ低抵抗な領域である。n型バッファ領域36は、n-型ドリフト領域34およびp+型コレクタ領域35の間の境界領域を延びるように形成されている。
p+型コレクタ領域35は、本実施形態ではn-型バッファ領域36を介してn-型ドリフト領域34と電気的に接続されている。図示はしないがn-型バッファ領域36およびp+型コレクタ領域35の間の境界領域には、n型のフィールドストップ領域がさらに形成されていてもよい。
素子形成領域6において、半導体層2の第1主面3には複数のトレンチゲート構造37が間隔を空けて形成されている。複数のトレンチゲート構造37は、本実施形態では、同一方向に沿って延びる平面視帯状に形成されている。半導体層2の第1主面3には、平面視格子状のトレンチゲート構造37が形成されていてもよい。
トレンチゲート構造37は、ゲートトレンチ38、ゲート絶縁膜39および埋め込みゲート電極40を含む。
ゲートトレンチ38は、半導体層2の第1主面3を掘り下げて形成されている。ゲートトレンチ38は、p-型チャネル領域33を貫通するように形成されており、n-型ドリフト領域34内に位置する底部を有している。ゲート絶縁膜39は、一方表面(半導体層2側の表面)およびその反対側の他方表面がゲートトレンチ38の内壁面に沿って形成されている。
ゲートトレンチ38は、半導体層2の第1主面3に対してほぼ垂直を成す断面視四角形状に形成されていてもよい。ゲートトレンチ38は、その深さ方向に沿って開口幅が徐々に狭まる断面視テーパ形状に形成されていてもよい。ゲートトレンチ38の底部は、半導体層2の第1主面3に対して平行に形成されていてもよい。ゲートトレンチ38の底部は、その側面から外方に向かって丸みを帯びるように形成されていてもよい。
埋め込みゲート電極40は、ゲート絶縁膜39を挟んでゲートトレンチ38に埋め込まれている。ゲートトレンチ38の内壁面は、半導体層2の第1主面3の一部を形成している。埋め込みゲート電極40は、たとえばポリシリコン、銅、アルミニウムおよびタングステンのうちの少なくとも1つの導電体を含んでいてもよい。
ゲートトレンチ38外の半導体層2の第1主面3には、当該第1主面3を被覆する表面絶縁膜41が形成されている。ゲート絶縁膜39は、ゲートトレンチ38外において表面絶縁膜41に連なっている。
図3を参照して、トレンチゲート構造37は、外側領域7の近傍に形成された任意のトレンチゲート構造37を含む。当該任意のトレンチゲート構造37の埋め込みゲート電極40は、ゲートトレンチ38内から外側領域7に向けて引き出されたゲート引き出し部42を含む。
ゲート引き出し部42は、ゲートトレンチ38内からゲートパッド16の直下の領域(図示せず)、および/または、ゲートフィンガー17の直下の領域に引き出されている。図3では、ゲートフィンガー17の直下の領域にゲート引き出し部42が形成されている例を示している。ゲート引き出し部42は、ゲートパッド16およびゲートフィンガー17と電気的に接続されている。これにより、トレンチゲート構造37が、ゲート電極11に電気的に接続されている。
各トレンチゲート構造37の側方において、p型チャネル領域33の表層部にはn+型エミッタ領域43が形成されている。n+型エミッタ領域43は、半導体層2の第1主面3から露出している。各トレンチゲート構造37の側方には、半導体層2の第1主面3から第2主面4に向かって、n+型エミッタ領域43、p-型チャネル領域33およびn-型ドリフト領域34が順に形成されている。
互いに隣り合うトレンチゲート構造37の間の領域において、p型チャネル領域33の表層部には、エミッタパッド22用の第1コンタクト凹部44が形成されている。第1コンタクト凹部44は、トレンチゲート構造37が延びる方向と等しい方向に沿って延びる平面視帯状に形成されている。トレンチゲート構造37が平面視格子状に形成されている場合、第1コンタクト凹部44は、トレンチゲート構造37によって取り囲まれた領域内に形成されていてもよい。
第1コンタクト凹部44は、半導体層2の第1主面3を掘り下げて形成されている。第1コンタクト凹部44は、ゲートトレンチ38よりも浅く、p型チャネル領域33内に位置する底部を有している。p-型チャネル領域33は、第1コンタクト凹部44の底部から露出している。p-型チャネル領域33およびn+型エミッタ領域43は、第1コンタクト凹部44の側部から露出している。
p型チャネル領域33は、本実施形態では、p-型不純物濃度が他の領域よりも高いp+型コンタクト領域45を含む。p+型コンタクト領域45は、p-型チャネル領域33において第1コンタクト凹部44の底部に沿う領域に形成されている。p+型コンタクト領域45は、第1コンタクト凹部44の底部に加えて、第1コンタクト凹部44の側部、ならびに、第1コンタクト凹部44の底部および側部を接続する角部に沿って形成されている。p+型コンタクト領域45は、第1コンタクト凹部44の底部だけに沿って形成されていてもよい。p-型チャネル領域33は、互いに隣り合うトレンチゲート構造37によって共有されている。埋め込みゲート電極40は、ゲート絶縁膜39を挟んで、n+型エミッタ領域43、p-型チャネル領域33およびn-型ドリフト領域34と対向している。
トレンチゲート構造37、n+型エミッタ領域43、p-型チャネル領域33およびn-型ドリフト領域34によって、IGBTのチャネル構造46が形成されている。IGBTのチャネルは、トレンチゲート構造37の側方において、n+型エミッタ領域43およびn-型ドリフト領域34の間のp型チャネル領域33に形成される。
図3を参照して、素子形成領域6において、素子形成領域6および外側領域7の境界領域には、ダミーチャネル構造47が形成されている。ダミーチャネル構造47は、n+型エミッタ領域43を含まない点を除いて、チャネル構造46と同様の構造を有している。n+型エミッタ領域43を含まないダミーチャネル構造47では、トレンチゲート構造37の側方にIGBTのチャネルは形成されない。
素子形成領域6および外側領域7の境界領域では、素子形成領域6内の電流と、素子形成領域6外の電流とが合流するため、電流密度が比較的高くなる傾向がある。IGBTのチャネル構造46では、その構造上、前述したnpn型の寄生バイポーラトランジスタが形成される。
したがって、素子形成領域6および外側領域7の境界領域にIGBTのチャネル構造46を形成すると、npn型の寄生バイポーラトランジスタがオン状態になり、ラッチアップの原因と成り得る。
これに対して、ダミーチャネル構造47では、n+型エミッタ領域43を含まないので、その構造上、npn型の寄生バイポーラトランジスタは形成されない。したがって、素子形成領域6および外側領域7の境界領域にダミーチャネル構造47を形成することによって、寄生バイポーラトランジスタに起因するラッチアップを抑制することができる。
図3を参照して、外側領域7において、半導体層2の第1主面3の表層部には、p+型終端領域51が形成されている。p+型終端領域51は、外側領域7を定義している。素子形成領域6は、p+型終端領域51の内周縁により取り囲まれた領域によっても定義される。
p+型終端領域51は、p-型チャネル領域33のp型不純物濃度よりも高いp型不純物濃度を有する高濃度かつ低抵抗な領域である。p+型終端領域51は、本実施形態では、p型チャネル領域33を取り囲むように無端状(平面視四角環状)に形成されている。
p+型終端領域51の底部は、半導体層2の厚さ方向に関して、p型チャネル領域33の底部よりも半導体層2の第2主面4に近い位置に形成されている。p+型終端領域51の底部は、半導体層2の厚さ方向に関して、ゲートトレンチ38の底部よりも半導体層2の第2主面4に近い位置に形成されている。
p+型終端領域51においてp型チャネル領域33側に位置する内縁領域は、ダミーチャネル構造47のトレンチゲート構造37の底部にオーバラップしている。p+型終端領域51の内縁領域は、p型チャネル領域33の底部にオーバラップしていてもよい。
p+型終端領域51の底部は、p+型コレクタ領域35から半導体層2の第1主面3側に間隔を空けて形成されている。p+型終端領域51は、n-型ドリフト領域34の一部の領域を挟んでp+型コレクタ領域35と対向している。p+型終端領域51は、表面絶縁膜41を挟んでゲートパッド16、および/または、ゲートフィンガー17に対向している。p+型終端領域51は、表面絶縁膜41を挟んでゲート引き出し部42に対向している。
図3を参照して、耐圧保持領域8において、半導体層2の第1主面3の表層部には、p+型フィールドリミット領域52が形成されている。p+型フィールドリミット領域52は、耐圧保持領域8において、電界を緩和する。p+型フィールドリミット領域52は、p+型終端領域51のp型不純物濃度とほぼ等しいp型不純物濃度を有している。p+型フィールドリミット領域52は、p+型終端領域51の深さとほぼ等しい深さを有している。
p+型フィールドリミット領域52は、外側領域7およびスクライブ領域9の間の領域において、p+型終端領域51に沿って形成されている。p+型フィールドリミット領域52は、本実施形態では、p+型終端領域51を取り囲むように無端状(平面視四角環状)に形成されている。これにより、p+型フィールドリミット領域52は、FLR(Field Limiting Ring)領域として形成されている。
p+型フィールドリミット領域52は、本実施形態では、外側領域7からスクライブ領域9に向けて、間隔を空けてこの順に形成された複数(本実施形態では、5個)のp+型フィールドリミット領域52を含む。p+型フィールドリミット領域52は、少なくとも1つ形成されていればよい。したがって、5個以上のp+型フィールドリミット領域52が形成されていてもよい。
図3を参照して、スクライブ領域9において、半導体層2の第1主面3の表層部には、n+型チャネルストップ領域53が形成されている。n+型チャネルストップ領域53は、n-型ドリフト領域34のn型不純物濃度よりも高いn型不純物濃度を有する高濃度かつ低抵抗な領域である。n+型チャネルストップ領域53は、半導体層2の内方領域に形成されたpn接合部からの空乏層の拡がりを抑制する。
n+型チャネルストップ領域53は、p+型フィールドリミット領域52に沿って形成されている。n+型チャネルストップ領域53は、p+型フィールドリミット領域52を取り囲む無端状(平面視四角環状)に形成されている。n+型チャネルストップ領域53は、耐圧保持領域8およびスクライブ領域9の間の境界領域を横切るように形成されていてもよい。
外側領域7において、p+型終端領域51の表層部には、エミッタパッド22用の第2コンタクト凹部54と、エミッタ引き回し部23用の第3コンタクト凹部55とが形成されている。
第2コンタクト凹部54は、半導体層2の第1主面3を掘り下げて形成されている。第2コンタクト凹部54は、p+型終端領域51の内縁に沿って形成されている。第2コンタクト凹部54は、素子形成領域6を取り囲む無端状(平面視四角環状)に形成されている。第2コンタクト凹部54は、p+型終端領域51内に位置する底部を有している。第2コンタクト凹部54は、第1コンタクト凹部44とほぼ等しい深さで形成されている。
第3コンタクト凹部55は、半導体層2の第1主面3を掘り下げて形成されている。第3コンタクト凹部55は、p+型終端領域51の外縁に沿って形成されている。第3コンタクト凹部55は、素子形成領域6を取り囲む無端状(平面視四角環状)に形成されている。第3コンタクト凹部55は、p+型終端領域51内に位置する底部を有している。第3コンタクト凹部55は、第1コンタクト凹部44とほぼ等しい深さで形成されている。
p+型終端領域51は、第2コンタクト凹部54の底部に沿う領域に形成されたp+型コンタクト領域56を含む。p+型コンタクト領域56は、p+型終端領域51においてp型不純物濃度が他の領域よりも高い高濃度領域である。
p+型コンタクト領域56は、第2コンタクト凹部54の底部に加えて、第2コンタクト凹部54の側部、ならびに、第2コンタクト凹部54の底部および側部を接続する角部に沿って形成されている。p+型コンタクト領域56は、第2コンタクト凹部54の底部だけに沿って形成されていてもよい。
p+型終端領域51は、第3コンタクト凹部55の底部に沿う領域に形成されたp+型コンタクト領域57を含む。p+型コンタクト領域57は、p+型終端領域51においてp型不純物濃度が他の領域よりも高い高濃度領域である。
p+型コンタクト領域57は、第3コンタクト凹部55の底部に加えて、第3コンタクト凹部55の側部、ならびに、第3コンタクト凹部55の底部および側部を接続する角部に沿って形成されている。p+型コンタクト領域57は、第3コンタクト凹部55の底部だけに沿って形成されていてもよい。
耐圧保持領域8において、p+型フィールドリミット領域52の表層部には、フィールドプレート電極13用の第4コンタクト凹部58が形成されている。
第4コンタクト凹部58は、半導体層2の第1主面3を掘り下げて形成されている。第4コンタクト凹部58は、p+型フィールドリミット領域52に沿って形成されている。第4コンタクト凹部58は、素子形成領域6を取り囲む無端状(平面視四角環状)に形成されている。第4コンタクト凹部58は、p+型フィールドリミット領域52内に位置する底部を有している。第4コンタクト凹部58は、第1コンタクト凹部44とほぼ等しい深さで形成されている。
p+型フィールドリミット領域52は、第4コンタクト凹部58の底部に沿う領域に形成されたp+型コンタクト領域59を含む。p+型コンタクト領域59は、p+型フィールドリミット領域52においてp型不純物濃度が他の領域よりも高い高濃度領域である。
p+型コンタクト領域59は、第4コンタクト凹部58の底部に加えて、第4コンタクト凹部58の側部、ならびに、第4コンタクト凹部58の底部および側部を接続する角部に沿って形成されている。p+型コンタクト領域59は、第4コンタクト凹部58の底部だけに沿って形成されていてもよい。
スクライブ領域9において、半導体層2の第1主面3の表層部には、等電位ポテンシャル電極14用の第5コンタクト凹部60が形成されている。
第5コンタクト凹部60は、半導体層2の第1主面3を掘り下げて形成されている。第5コンタクト凹部60は、n+型チャネルストップ領域53に沿って形成されている。第5コンタクト凹部60は、耐圧保持領域8を取り囲む無端状(平面視四角環状)に形成されている。第5コンタクト凹部60は、第1コンタクト凹部44とほぼ等しい深さで形成されている。n+型チャネルストップ領域53は、第5コンタクト凹部60から露出している。
半導体層2において、第5コンタクト凹部60の底部に沿う領域には、p+型コンタクト領域61が形成されている。p+型コンタクト領域61は、第5コンタクト凹部60の底部に加えて、第5コンタクト凹部60の側部、ならびに、第5コンタクト凹部60の底部および側部を接続する角部に沿って形成されている。p+型コンタクト領域61は、第5コンタクト凹部60の底部だけに沿って形成されていてもよい。
図2および図3を参照して、半導体層2の第1主面3の上には絶縁層64が形成されている。絶縁層64は、素子形成領域6、外側領域7、耐圧保持領域8およびスクライブ領域9を被覆している。絶縁層64は、複数の絶縁膜が積層された積層構造を有していてもよいし、1つの絶縁膜だけを含む単層構造を有していてもよい。絶縁層64は、たとえば酸化膜(SiO2膜)または窒化膜(SiN膜)を含んでいてもよい。
絶縁層64には、エミッタ電極12用の第1コンタクト孔65、第2コンタクト孔67および第3コンタクト孔68が形成されている。第1コンタクト孔65、第2コンタクト孔67および第3コンタクト孔68は、それぞれ、第1コンタクト凹部44、第2コンタクト凹部54および第3コンタクト凹部55と一対一対応の関係で面一に連通している。
絶縁層64には、フィールドプレート電極13用の第4コンタクト孔69が形成されている。第4コンタクト孔69は、第4コンタクト凹部58に面一に連通している。
絶縁層64には、等電位ポテンシャル電極14用の第5コンタクト孔70が形成されている。第5コンタクト孔70は、第5コンタクト凹部60に面一に連通している。
絶縁層64には、ゲート電極11用のゲートコンタクト孔71が形成されている。ゲートコンタクト孔71は、ゲートパッド16の直下の領域、および/または、ゲートフィンガー17の直下の領域において、ゲート引き出し部42を露出させている。図3では、ゲートコンタクト孔71がゲートフィンガー17の直下の領域に形成されている例を示している。
絶縁層64の上には、前述の表面電極10が形成されている。表面電極10は、絶縁層64の上に形成された第1導電体層72と、当該第1導電体層72の上に形成された第2導電体層73とを含む積層構造を有している。
第1導電体層72は、窒化チタン層またはチタン層からなる単層構造を有していてもよいし、窒化チタン層および当該窒化チタン層の上に形成されたチタン層を含む積層構造を有していてもよい。第1導電体層72は、窒化チタン層および/またはチタン層を含むことにより、バリア電極層として機能する。第1導電体層72は、一方表面(半導体層2側の表面)およびその反対側の他方表面が、絶縁層64の表面および半導体層2の表面に沿って形成されている。
第2導電体層73は、一方表面(半導体層2側の表面)およびその反対側の他方表面が、第1導電体層72に沿って形成されている。第2導電体層73は、たとえば、銅、銅を
含む合金、アルミニウムまたはアルミニウムを含む合金のうちの少なくとも一種の導電体を含んでいてもよい。第2導電体層73は、たとえばアルミニウム-銅合金(Al-Cu合金)を含んでいてもよい。第2導電体層73は、たとえばアルミニウム-シリコン-銅合金(Al-Si-Cu合金)を含んでいてもよい。
表面電極10のうちのゲートパッド16、および/または、ゲートフィンガー17は、絶縁層64の上からゲートコンタクト孔71に入り込んでいる。ゲートパッド16、および/または、ゲートフィンガー17は、ゲートコンタクト孔71内で、ゲート引き出し部42と電気的に接続されている。
表面電極10のうちのエミッタパッド22は、絶縁層64の上から第1コンタクト孔65および第2コンタクト孔67に入り込んでいる。エミッタパッド22は、第1コンタクト孔65内で、p型チャネル領域33およびn+型エミッタ領域43に電気的に接続されている。エミッタパッド22は、第2コンタクト孔67内でp+型終端領域51に電気的に接続されている。
図示はしないが、表面電極10のうちのエミッタ接続部24は、第2コンタクト孔67に入り込んでいてもよい。
表面電極10のうちのエミッタ引き回し部23は、絶縁層64の上から第3コンタクト孔68に入り込んでいる。エミッタ引き回し部23は、第3コンタクト孔68内で、p+型終端領域51に電気的に接続されている。
半導体層2において、素子形成領域6外の領域を流れるアバランシェ電流は、p+型終端領域51を介してエミッタ電極12によって回収される。したがって、前述のアバランシェ電流回収構造25は、エミッタパッド22、エミッタ引き回し部23およびエミッタ接続部24に加えて、これらと電気的に接続されたp+型終端領域51をさらに含む。
表面電極10のうちのフィールドプレート電極13は、絶縁層64の上から第4コンタクト孔69に入り込んでいる。フィールドプレート電極13は、第4コンタクト孔69内でp+型フィールドリミット領域52に電気的に接続されている。
表面電極10のうちの等電位ポテンシャル電極14は、絶縁層64の上から第5コンタクト孔70に入り込んでいる。等電位ポテンシャル電極14は、第5コンタクト孔70内でn+型チャネルストップ領域53に電気的に接続されている。
次に、半導体層2の第2主面4側の構造について具体的に説明する。図4は、図1に示す半導体層2の第2主面4側の構造を説明するための平面図である。
図4を参照して、半導体層2の第2主面4の表層部には、n+型カソード領域80が形成されている。図4では、クロスハッチングによってn+型カソード領域80が示されている。
n+型カソード領域80は、半導体層2のn型不純物濃度よりも高いn型不純物濃度を有している。n+型カソード領域80は、半導体層2の第2主面4(p+型コレクタ領域35)に対してn型不純物を選択的に導入することにより形成されている。n+型カソード領域80は、n型不純物およびp型不純物を含み、当該n型不純物のn型不純物濃度が、当該p型不純物のp型不純物濃度よりも高い領域である。
図2~図4を参照して、n+型カソード領域80は、n+型内側カソード領域81およびn+型外側カソード領域82を含む。n+型内側カソード領域81は、素子形成領域6内に形成されている。n+型外側カソード領域82は、外側領域7内に形成されている。
n+型内側カソード領域81およびn+型外側カソード領域82は、同一のイオン注入マスクを利用したn型不純物注入工程を経て形成されている。したがって、n+型外側カソード領域82は、n+型内側カソード領域81の深さとほぼ等しい深さで形成されている。また、n+型外側カソード領域82は、n+型内側カソード領域81のn型不純物濃
度とほぼ等しいn型不純物濃度で形成されている。
n+型内側カソード領域81およびn+型外側カソード領域82は、互いに異なるイオン注入マスクを利用したn型不純物注入工程を経て形成されてもよい。したがって、n+型外側カソード領域82は、n+型内側カソード領域81の深さとは異なる深さで形成されていてもよい。また、n+型外側カソード領域82は、n+型内側カソード領域81のn型不純物濃度とは異なるn型不純物濃度で形成されていてもよい。
図4を参照して、半導体層2の第2主面4において、素子形成領域6には、空き領域83(図4の二点鎖線で囲まれた領域参照)と、カソード形成領域84とが設定されている。空き領域83は、n+型内側カソード領域81が形成されない領域である。カソード形成領域84は、n+型内側カソード領域81が形成される領域である。
空き領域83は、本実施形態では、平面視において前述のゲートパッド16と重なる領域に設定されている。空き領域83は、平面視において、ゲートパッド16および素子形成領域6が重なる領域を取り囲むように設定されていてもよい。空き領域83は、平面視四角形状に設定されていてもよい。
カソード形成領域84は、平面視において前述のエミッタパッド22と重なる領域に設定されている。カソード形成領域84は、本実施形態では、空き領域83外の領域において、平面視凹形状に設定されている。
n+型外側カソード領域82は、カソード形成領域84において、ダミーチャネル構造47よりも内方領域に形成されている。n+型外側カソード領域82は、ダミーチャネル構造47の直下の領域に形成されていないことが好ましい。
この構成では、素子形成領域6および外側領域7の境界領域の近傍においてn+型外側カソード領域82を通る電流経路が形成されない。したがって、素子形成領域6および外側領域7の境界領域において、不所望な電流の増加や、当該電流の増加に起因する不所望な電界の集中を抑制できる。むろん、n+型外側カソード領域82が、ダミーチャネル構造47の直下の領域に形成された構造が採用されていてもよい。
n+型内側カソード領域81は、空き領域83外のカソード形成領域84に形成されるため、素子形成領域6において不均等なパターンとなる。より具体的には、n+型内側カソード領域81は、素子形成領域6において少なくとも非点対称である不均等なパターンとなる。n+型内側カソード領域81は、素子形成領域6において非線対称である不均等なパターンで形成されていてもよい。n+型内側カソード領域81は、素子形成領域6において非点対称であり、かつ、非線対称である不均等なパターンで形成されていてもよい。
以下では、説明の便宜上、図4に示した+X方向および-X方向ならびに+Y方向および-Y方向を用いることがある。+X方向および-X方向は、一対の接続側面5c,5dに沿う2つの方向であり、これらを総称するときには単に「X方向」という。+Y方向および-Y方向は、一対の側面5a,5bに沿う2つの方向であり、これらを総称するときには単に「Y方向」という。
n+型内側カソード領域81は、本実施形態では、カソード形成領域84において、連続的に延びるように引き回された平面視葛折状のライン状パターン部85を含む。より具体的には、ライン状パターン部85は、複数の第1ライン86および複数の第2ライン87を含む。
複数の第1ライン86は、X方向に沿って延び、かつY方向に沿って間隔を空けて形成されている。複数の第2ライン87は、Y方向に沿って延び、かつY方向に隣り合う第1ライン86同士を接続している。
複数の第1ライン86は、第1ライン群88、第2ライン群89および第3ライン群90を含む。
第1ライン群88は、素子形成領域6において、空き領域83よりも+Y方向側の領域に形成された複数の第1ライン86を含む。
第2ライン群89は、素子形成領域6において、空き領域83よりも-Y方向側の領域に形成された複数の第1ライン86を含む。
第3ライン群90は、素子形成領域6において、第1ライン群88および第2ライン群89の間の領域に形成された複数の第1ライン86を含む。第3ライン群90は、空き領域83よりも+X方向側の領域に形成されている。
第1ライン群88のX方向の長さおよび第2ライン群89のX方向の長さは、本実施形態では、ほぼ等しい値に設定されている。第1ライン群88のX方向の長さおよび第2ライン群89のX方向の長さは、異なる値に設定されていてもよい。第3ライン群90のX方向の長さは、第1ライン群88のX方向の長さおよび第2ライン群89のX方向の長さよりも小さい値に設定されている。
第1ライン群88は、空き領域83とY方向に対向するように、当該空き領域83の+Y方向側の領域に引き出された第1ライン引き出し部91を含む。
第2ライン群89は、空き領域83を挟んで第1ライン群88とY方向に対向するように、当該空き領域83の-Y方向側の領域に引き出された第2ライン引き出し部92を含む。
第2ライン87は、第2ライン87Aおよび第2ライン87Bを含む。第2ライン87Aは、Y方向に隣り合う2つの第1ライン86の+X方向端部同士を接続している。第2ライン87Bは、Y方向に隣り合う2つの第1ライン86の-X方向端部同士を接続している。第2ライン87Aおよび第2ライン87Bは、Y方向に沿って交互に形成されている。
第1ライン86のY方向幅および第2ライン87のX方向幅で定義されるn+型内側カ
ソード領域81のライン幅は、たとえば1μm以上100μm以下、より好ましくは10
μm以上50μm以下である。
n+型内側カソード領域81は、一様なライン幅を有していてもよいし、一様でないライン幅を有していてもよい。たとえば、n+型内側カソード領域81は、それぞれ異なるY方向幅を有する複数の第1ライン86を含んでいてもよい。また、n+型内側カソード領域81は、それぞれ異なるX方向幅を有する複数の第2ライン87を含んでいてもよい。
素子形成領域6の平面視面積SAに対する空き領域83の平面視面積SBの比SB/SAは、たとえば0.03(3%)以上0.3(30%)以下であってもよい。
素子形成領域6の平面視面積SAに対するn+型内側カソード領域81の平面視面積SCの比SC/SAを、以下では、n+型内側カソード領域81の面積比SC/SAという。素子形成領域6の平面視面積SAに対するp+型コレクタ領域35の平面視面積SDの比SD/SAを、以下では、p+型コレクタ領域35の面積比SD/SAという。
n+型内側カソード領域81の面積比SC/SAは、p+型コレクタ領域35の面積比SD/SAよりも小さい値に設定されている。n+型内側カソード領域81の面積比SC/SAは、たとえば0.1(10%)以下、より具体的には、0.01(1%)以上0.07(7%)以下である。
図4を参照して、外側領域7には、n+型外側カソード領域82が形成されている。n+型外側カソード領域82は、外側領域7において素子形成領域6の周囲に沿って形成されている。n+型外側カソード領域82は、半導体層2の第2主面4の表層部において、p-型チャネル領域33と対向する対向領域外の領域である非対向領域に形成されている。
n+型外側カソード領域82は、本実施形態では、素子形成領域6の周囲に沿って連続的に延びるように引き回されたライン状パターン部93を含む。より具体的には、n+型外側カソード領域82は、素子形成領域6の4辺に沿う4つのライン状パターン部93を含み、当該4つのライン状パターン部93が一体となった構造を有している。これにより、n+型外側カソード領域82は、素子形成領域6を取り囲むように無端状(平面視四角環状)に形成されている。
図3を再度参照して、n+型外側カソード領域82は、外側領域7において、p+型コレクタ領域35を貫通して形成されている。n+型外側カソード領域82は、半導体層2の一部の領域(本実施形態では、n-型ドリフト領域34およびn型バッファ領域36)と電気的に接続されている。
n+型外側カソード領域82は、半導体層2の一部の領域(本実施形態では、n-型ドリフト領域34およびn型バッファ領域36)を挟んでp+型終端領域51と対向している。n+型外側カソード領域82は、本実施形態では、その全域に亘って、p+型終端領域51と対向している。
n+型外側カソード領域82のライン幅は、たとえば1μm以上100μm以下、より好ましくは10μm以上50μm以下である。n+型外側カソード領域82のライン幅は、当該n+型外側カソード領域82が延びる方向に直交する方向の幅である。
次に、半導体装置1の電気的構造について説明する。図5は、図1に示す半導体装置1の電気的構造を示す回路図である。
図5を参照して、半導体装置1は、IGBTと、還流ダイオード(Free Wheeling Diode)Dとを含む。IGBTおよび還流ダイオードDにより、RC-IGBT(Reverse Conducting - Insulated Gate Bipolar Transistor)と称される逆導電絶縁ゲートバイポーラトランジスタが形成されている。
IGBTは、ゲート電極11、エミッタ電極12およびコレクタ電極32を含む。還流ダイオードDは、エミッタ電極12およびコレクタ電極32の間に接続されている。
より具体的には、還流ダイオードDは、アノードおよびカソードを含む。還流ダイオードDのアノードは、IGBTのエミッタ電極12に電気的に接続されている。還流ダイオードDのカソードは、IGBTのコレクタ電極32に電気的に接続されている。
さらに具体的には、還流ダイオードDは、本実施形態では、内側還流ダイオードDiおよび外側還流ダイオードDoを含む。
内側還流ダイオードDiは、素子形成領域6において、p-型チャネル領域33およびn-型ドリフト領域34の間に形成されたpn接合部を含む。内側還流ダイオードDiは、n+型内側カソード領域81をカソードとして含み、p型チャネル領域33をアノードとして含む。
内側還流ダイオードDiのアノード電極は、主にエミッタ電極12のエミッタパッド22によって形成されている。内側還流ダイオードDiのカソード電極は、n+型内側カソード領域81に接続されたコレクタ電極32によって形成されている。
外側還流ダイオードDoは、外側領域7において、p+型終端領域51およびn-型ドリフト領域34の間に形成されたpn接合部を含む。外側還流ダイオードDoは、n+型外側カソード領域82をカソードとして含み、p+型終端領域51をアノードとして含む。
外側還流ダイオードDoのアノード電極は、主にエミッタ電極12のエミッタ引き回し部23によって形成されている。外側還流ダイオードDoのカソード電極は、n+型外側カソード領域82に接続されたコレクタ電極32によって形成されている。
このような構造の半導体装置1によれば、図6を用いて説明される順方向電圧VF-順方向電流IF特性を達成することができる。
図6は、図1に示す半導体装置1の順方向電圧VF-順方向電流IF特性をシミュレーションにより求めたグラフである。
図6において、縦軸は順方向電流IFであり、横軸は順方向電圧VFである。
順方向電圧VFとは、エミッタ電極12およびコレクタ電極32の間に印加される電圧である。順方向電流IFとは、順方向電圧VFを印加した際に、エミッタ電極12およびコレクタ電極32の間を流れる電流である。
順方向電圧VFは、n+型エミッタ領域43およびp+型コレクタ領域35の間に印加される電圧でもある。順方向電流IFは、n+型エミッタ領域43およびp+型コレクタ領域35の間を流れる電流でもある。
図6のグラフには、破線で示された第1特性S1と、実線で示された第2特性S2とが示されている。
第1特性S1は、n+型外側カソード領域82を有さない構造の半導体装置(以下、単に「第1参考例に係る半導体装置」という。)の順方向電圧VF-順方向電流IF特性である。第2特性S2は、n+型外側カソード領域82を有する本実施形態に係る半導体装置1の順方向電圧VF-順方向電流IF特性である。
第1特性S1には、第1シミュレーション条件により求められた第1特性S1Aと、第2シミュレーション条件により求められた第2特性S1Bとが含まれる。第2特性S2には、第1シミュレーション条件により求められた第1特性S2Aと、第2シミュレーション条件により求められた第2特性S2Bとが含まれる。
第1シミュレーション条件とは、ゲート-エミッタ電圧VGEが0Vの状態で、0V以上5V以下の順方向電圧VFを印加して、順方向電流IFを測定する条件である。第2シミュレーション条件とは、ゲート-エミッタ電圧VGEが15Vの状態で、0V以上5V以下の順方向電圧VFを印加して、順方向電流IFを測定する条件である。ゲート-エミッタ電圧VGEは、ゲート電極11およびエミッタ電極12(n+型エミッタ領域43)の間に印加される電圧である。
第1特性S1Aを参照して、第1参考例に係る半導体装置では、第1シミュレーション条件下において順方向電圧VF-順方向電流IF特性は正常である。しかし、第2特性S1Bを参照して、第2シミュレーション条件下になると、順方向電圧VFが0Vから5Vまで増加しても、順方向電流IFが10Aを超えない。
第1参考例に係る半導体装置では、ゲート-エミッタ電圧VGEが印加された状態で順方向電圧VFがさらに印加されると、順方向電流IFが流れ難くなることが理解される。したがって、第1参考例に係る半導体装置では、比較的高い順方向電流IFを得ようとすると、比較的高い順方向電圧VFを印加せざるを得なくなる。その結果、順方向電圧が悪化する。順方向電圧の悪化は、スナップバック現象の原因にも成り得る。
一方、第2特性S2Bを参照して、本実施形態に係る半導体装置1では、第1シミュレーション条件下において順方向電圧VF-順方向電流IF特性は正常である。そして、第2シミュレーション条件下では、順方向電圧VF-順方向電流IF特性が、参考例に係る半導体装置の順方向電圧VF-順方向電流IF特性よりも改善していることがわかる。
つまり、本実施形態に係る半導体装置1では、ゲート-エミッタ電圧VGEの印加の有無に起因する順方向電圧VF-順方向電流IF特性の大きな変動が、抑制されている。
本実施形態に係る半導体装置1では、ゲート-エミッタ電圧VGEが15Vの状態で1.6Vの順方向電圧VFを印加した場合、順方向電流IFが2A以上である。ゲート-エミッタ電圧VGEが15Vの状態で2Vの順方向電圧VFを印加した場合、順方向電流IFが8A以上である。ゲート-エミッタ電圧VGEが15Vの状態で3Vの順方向電圧VFを印加した場合、順方向電流IFが20A以上である。
参考例に係る半導体装置では、本実施形態に係る半導体装置1のような順方向電圧VF-順方向電流IF特性を達成することはできない。
以上のように、本実施形態に係る半導体装置1では、素子形成領域6にIGBTが形成されているのに加えて、半導体層2に、内側還流ダイオードDiおよび外側還流ダイオードDoを含む還流ダイオードDが形成されている。
内側還流ダイオードDiは、素子形成領域6において、p-型チャネル領域33およびn-型ドリフト領域34の間に形成されたpn接合部を含む。内側還流ダイオードDiは、n+型内側カソード領域81をカソードとして含み、p型チャネル領域33をアノードとして含む。
内側還流ダイオードDiのアノード電極は、主にエミッタ電極12のエミッタパッド22によって形成されている。内側還流ダイオードDiのカソード電極は、n+型内側カソード領域81に接続されたコレクタ電極32によって形成されている。
外側還流ダイオードDoは、外側領域7において、p+型終端領域51およびn-型ドリフト領域34の間に形成されたpn接合部を含む。外側還流ダイオードDoは、n+型外側カソード領域82をカソードとして含み、p+型終端領域51をアノードとして含む。
外側還流ダイオードDoのアノード電極は、主にエミッタ電極12のエミッタ引き回し部23によって形成されている。外側還流ダイオードDoのカソード電極は、n+型外側カソード領域82に接続されたコレクタ電極32によって形成されている。
このような構造によれば、図6の第2特性S2を参照して、ゲート-エミッタ電圧VGEが印加された状態で、順方向電圧VFが印加されたとしても、順方向電流IFが流れ難くなるのを抑制できる。よって、順方向電圧VFの悪化を抑制することができ、かつ、当該順方向電圧VFの悪化に起因するスナップバック現象を抑制できる。
また、本実施形態に係る半導体装置1では、内側還流ダイオードDiのn+型内側カソード領域81が、素子形成領域6において連続的かつ不均等に延びるように引き回されたライン状パターン部85を含む。このような構造によれば、次の図7を用いて説明される効果を奏することができる。
図7は、図1に示す半導体装置1のピーク順方向サージ電流IFSMをシミュレーションにより求めたグラフである。
図7において、縦軸はピーク順方向サージ電流IFSMであり、横軸はn+型内側カソード領域81の面積比SC/SAである。
ピーク順方向サージ電流IFSMとは、半導体装置1が破壊しない範囲で許容される1周期以上の商用正弦半波電流のピーク値である。ピーク順方向サージ電流IFSMの値が高い程、半導体装置1のピーク順方向サージ電流IFSMに対する耐量(以下、単に「ピーク順方向サージ電流耐量」という。)が優れているといえる。
図7のグラフには、プロットP1が示されている。プロットP1は、本実施形態に係る半導体装置1のピーク順方向サージ電流IFSMの特性を示している。より具体的には、プロットP1は、n+型内側カソード領域81の面積比SC/SAが、0.037(3.7%)である場合のピーク順方向サージ電流IFSMの特性を示している。
図7のグラフには、プロットP2~P5が示されている。プロットP2~P5は、近似直線Lで結ばれている。プロットP2~P5は、第2参考例に係る半導体装置のピーク順方向サージ電流IFSMの特性を示している。
第2参考例に係る半導体装置は、n+型外側カソード領域82を含まない。第2参考例に係る半導体装置では、n+型内側カソード領域81が、規則的な行列状のドット状パターンで素子形成領域6内に形成されている。
プロットP2は、第2参考例に係る半導体装置において、n+型内側カソード領域81の面積比SC/SAが0.012(1.2%)である場合の、ピーク順方向サージ電流IFSMの特性を示している。
プロットP3は、第2参考例に係る半導体装置において、n+型内側カソード領域81の面積比SC/SAが、0.019(1.9%)である場合の、ピーク順方向サージ電流IFSMの特性を示している。
プロットP4は、第2参考例に係る半導体装置において、n+型内側カソード領域81の面積比SC/SAが、0.023(2.4%)である場合の、ピーク順方向サージ電流IFSMの特性を示している。
プロットP5は、第2参考例に係る半導体装置において、n+型内側カソード領域81の面積比SC/SAが、0.032(3.2%)である場合の、ピーク順方向サージ電流IFSMの特性を示している。
図7の近似直線Lを参照して、第2参考例に係る半導体装置では、n+型内側カソード領域81の面積比SC/SAが小さくなると、ピーク順方向サージ電流IFSMが低下している。また、第2参考例に係る半導体装置では、n+型内側カソード領域81の面積比SC/SAが大きくなると、ピーク順方向サージ電流IFSMが増加している。
したがって、第2参考例に係る半導体装置では、n+型内側カソード領域81の平面視面積SCとピーク順方向サージ電流IFSMとの間に大凡リニアな関係が成立しているといえる。
しかし、第2参考例に係る半導体装置では、n+型内側カソード領域81の面積比SC/SAがいずれの場合であっても、ピーク順方向サージ電流IFSMが700A未満であり、比較的に低い。近似直線Lを参照するに、第2参考例に係る半導体装置では、n+型内側カソード領域81の面積比SC/SAを「1」に近づけると、比較的高い値のピーク順方向サージ電流IFSMを実現できると考えられる。
しかし、実際には、n+型内側カソード領域81の面積比SC/SAが「1」に近づくほど、p+型コレクタ領域35の面積比SD/SAが「0」に近づくので、IGBTの機能が失われる。
したがって、第2参考例に係る半導体装置では、n+型内側カソード領域81の面積比SC/SAを調整したとしても、結果として近似直線Lで示されるリニアな関係の中でしかピーク順方向サージ電流IFSMを調整できるに過ぎない。このようなリニアな関係は、素子形成領域6において、n+型内側カソード領域81が平面視四角形状や平面視円形状等の規則的な行列状に配列されている場合に顕著に観られる。
そこで、本実施形態に係る半導体装置1では、n+型内側カソード領域81が、素子形成領域6において、連続的かつ不均等に延びるライン状パターン部85を含む構造を採用した。
これにより、図7のプロットP1を参照して、近似直線Lで示される前記リニアな関係から切り離してピーク順方向サージ電流IFSMを設定することができた。より具体的には、図7のプロットP1を参照して、700A以上、より具体的には900A以上のピーク順方向サージ電流IFSMを実現することができた。
以上のように、n+型内側カソード領域81およびn+型外側カソード領域82を含むことにより、順方向電圧VFの悪化の抑制を図ることができる半導体装置1を提供できる。そして、このような構造において、連続的かつ不均等に延びるライン状パターン部85を含むn+型内側カソード領域81を備えることによって、ピーク順方向サージ電流耐量の向上を図ることができる半導体装置1を提供できる。
本実施形態に係るn+型外側カソード領域82の構造およびn+型内側カソード領域81の構造は、前述の形態に限定されるものではなく、種々の形態を取り得る。以下、n+型外側カソード領域82の変形例およびn+型内側カソード領域81の変形例を説明する。
<n+型外側カソード領域82の第1変形例>
図8は、n+型外側カソード領域82の第1変形例を示す平面図である。図8は、図4に対応する平面図である。図8において、図4等に示された構成と同様の構成については同一の参照符号を付して説明を省略する。
図8では、説明の便宜上、n+型外側カソード領域82だけを示し、素子形成領域6内の構造等の図示を省略している。図8では、クロスハッチングによってn+型外側カソード領域82が示されている。
前述の実施形態では、n+型外側カソード領域82が、素子形成領域6の4辺に沿う4つのライン状パターン部93を含み、当該4つのライン状パターン部93が一体となった無端状の構造を有している例について説明した。
これに対して、図8を参照して、本変形例に係るn+型外側カソード領域82は、前記4つのライン状パターン部93のうちの任意の1つのライン状パターン部93が、他のライン状パターン部93とは別体となった有端状の構造を有している。
n+型外側カソード領域82は、前記4つのライン状パターン部93のうちの2つまたは3つのライン状パターン部93が、他のライン状パターン部93とは別体となった構造を有していてもよい。
つまり、n+型外側カソード領域82は、前記4つのライン状パターン部93のうちの少なくとも1つのライン状パターン部93が、他のライン状パターン部93とは別体となった構造を有していてもよい。
また、n+型外側カソード領域82は、前記4つのライン状パターン部93のうちの互いに隣り合う少なくとも2つのライン状パターン部93が互いに接続された構造を有していてもよい。
このような構造の半導体装置1であっても、前述の実施形態に係る作用効果とほぼ同様の作用効果を奏することができる。
<n+型外側カソード領域82の第2変形例>
図9は、n+型外側カソード領域82の第2変形例を示す平面図である。図9は、図4に対応する平面図である。図9において、図4等に示された構成と同様の構成については同一の参照符号を付して説明を省略する。
図9では、説明の便宜上、n+型外側カソード領域82だけを示し、素子形成領域6内の構造等の図示を省略している。図9では、クロスハッチングによってn+型外側カソード領域82が示されている。
前述の実施形態では、n+型外側カソード領域82が、素子形成領域6の4辺に沿う4つのライン状パターン部93を含み、当該4つのライン状パターン部93が一体となった無端状の構造を有している例について説明した。
これに対して、図9を参照して、本変形例に係るn+型外側カソード領域82は、互いに別体とされた複数のライン状パターン部93を有している。複数のライン状パターン部93は、素子形成領域6の4辺のうちの互いに対向する2辺に沿ってそれぞれ形成されている。
n+型外側カソード領域82は、素子形成領域6の4辺のうちの互いに交差する任意の2辺だけに沿って形成された2つのライン状パターン部93を含んでいてもよい。
n+型外側カソード領域82は、素子形成領域6の4辺のうちの任意の1辺だけに沿って形成された1つのライン状パターン部93を含んでいてもよい。
n+型外側カソード領域82は、素子形成領域6の4辺のうちの任意の3辺に沿う3つのライン状パターン部93を含んでいてもよい。
つまり、n+型外側カソード領域82は、素子形成領域6の4辺のうちの少なくとも1辺に沿って形成されたライン状パターン部93を含んでいてもよい。
このような構造の半導体装置1であっても、前述の実施形態に係る作用効果とほぼ同様の作用効果を奏することができる。
<n+型外側カソード領域82の第3変形例>
図10は、n+型外側カソード領域82の第3変形例を示す平面図である。図10は、図4に対応する平面図である。図10において、図4等に示された構成と同様の構成については同一の参照符号を付して説明を省略する。
図10では、説明の便宜上、n+型外側カソード領域82だけを示し、素子形成領域6内の構造等の図示を省略している。図10では、クロスハッチングによってn+型外側カソード領域82が示されている。
図10を参照して、本変形例では、複数のn+型外側カソード領域82が形成されている。複数のn+型外側カソード領域82は、第1n+型外側カソード領域82A、第2n+型外側カソード領域82Bおよび第3n+型外側カソード領域82Cを含む。第1~第3n+型外側カソード領域82A,82B,82Cは、外側領域7から耐圧保持領域8側に向かって順に間隔を空けて形成されている。
第1~第3n+型外側カソード領域82A,82B,82Cは、外側領域7に形成されていてもよい。第1~第3n+型外側カソード領域82A,82B,82Cのうちの少なくとも一つは、耐圧保持領域8に形成されていてもよい。たとえば、第3n+型外側カソード領域82Cが、耐圧保持領域8に形成されていてもよい。
第1n+型外側カソード領域82Aは、素子形成領域6の周囲に沿って連続的に延びるように引き回されたライン状パターン部93を含む。第1n+型外側カソード領域82Aは、素子形成領域6を取り囲む無端状(本変形例では平面視四角環状)に形成されている。
第2n+型外側カソード領域82Bは、第1n+型外側カソード領域82Aの周囲に沿って連続的に延びるように引き回されたライン状パターン部93を含む。第2n+型外側カソード領域82Bは、第1n+型外側カソード領域82Aを取り囲む無端状(本変形例では平面視四角環状)に形成されている。
第3n+型外側カソード領域82Cは、第2n+型外側カソード領域82Bの周囲に沿って連続的に延びるように引き回されたライン状パターン部93を含む。第3n+型外側カソード領域82Cは、第2n+型外側カソード領域82Bを取り囲む無端状(本変形例では平面視四角環状)に形成されている。
このような構造の半導体装置1であっても、前述の実施形態に係る作用効果とほぼ同様の作用効果を奏することができる。
n+型外側カソード領域82の個数は、3個に限定されるものではない。したがって、たとえば素子形成領域6を取り囲むように2個のn+型外側カソード領域82が形成されていてもよい。また、素子形成領域6を取り囲むように4個以上のn+型外側カソード領域82が形成されていてもよい。
<n+型外側カソード領域82の第4変形例>
図11は、n+型外側カソード領域82の第4変形例を示す平面図である。図11は、図4に対応する平面図である。図11において、図4等に示された構成と同様の構成については同一の参照符号を付して説明を省略する。
図11では、説明の便宜上、n+型外側カソード領域82だけを示し、素子形成領域6内の構造等の図示を省略している。図11では、クロスハッチングによってn+型外側カソード領域82が示されている。
前述の実施形態では、n+型外側カソード領域82が、連続的に延びる複数のライン状パターン部93を含む例について説明した。
これに対して、図11を参照して、本変形例に係るn+型外側カソード領域82は、複数のドット状パターン部94を含む。複数のドット状パターン部94は、素子形成領域6の周囲に沿って間隔を空けて間欠的に形成されている。
本変形例では、n+型外側カソード領域82が、平面視円形状のドット状パターン部94を含む例を示している。n+型外側カソード領域82は、平面視円形状のドット状パターン部94に代えてまたはこれに加えて、平面視三角形状、平面視四角形状や平面視六角形状等の平面視多角形状のドット状パターン部94や、平面視楕円形状のドット状パターン部94等を含んでいてもよい。
このような構造の半導体装置1であっても、前述の実施形態に係る作用効果とほぼ同様の作用効果を奏することができる。
前述の実施形態、ならびに、前述の第1変形例~第4変形例に係るn+型外側カソード領域82は、それらの間で任意に組み合わされてもよい。
たとえば、第4変形例に係るドット状パターン部94を含むn+型外側カソード領域82を、第1変形例~第3変形例に係るライン状パターン部93を含むn+型外側カソード領域82に組み合わせてもよい。
この場合、n+型外側カソード領域82は、素子形成領域6の周囲に沿って連続的に延びるように引き回されたライン状パターン部93と、素子形成領域6の周囲に沿って間隔を空けて間欠的に形成されたドット状パターン部94とを含む構造となる。
<n+型内側カソード領域81の第1変形例>
図12は、n+型内側カソード領域81の第1変形例を示す平面図である。図12は、図4に対応する平面図である。図12では、前述の第3変形例に係るn+型外側カソード領域82(図10参照)が適用された例を示している。
図12において、図4等に示された構成と同様の構成については同一の参照符号を付して説明を省略する。図12では、クロスハッチングによってn+型内側カソード領域81およびn+型外側カソード領域82が示されている。
前述の実施形態では、n+型内側カソード領域81において、第1ライン群88が第1ライン引き出し部91を含み、第2ライン群89が第2ライン引き出し部92を含む構造を有している例について説明した。
これに対して、本変形例に係るn+型内側カソード領域81では、第1ライン群88が第1ライン引き出し部91を含まず、第2ライン群89が第2ライン引き出し部92を含まない構造を有している。
本変形例に係るn+型内側カソード領域81は、素子形成領域6の+X方向側に偏在するように形成されている。n+型内側カソード領域81は、素子形成領域6に対して不均等(非点対称)なパターンで形成されている。
n+型内側カソード領域81は、第1ライン群88が第1ライン引き出し部91を含む一方、第2ライン群89が第2ライン引き出し部92を含まない構造を有していてもよい。n+型内側カソード領域81は、第1ライン群88が第1ライン引き出し部91を含まない一方、第2ライン群89が第2ライン引き出し部92を含む構造を有していてもよい。
このような構造の半導体装置1であっても、前述の実施形態に係る作用効果とほぼ同様の作用効果を奏することができる。
<n+型内側カソード領域81の第2変形例>
図13は、n+型内側カソード領域81の第2変形例を示す平面図である。図13は、図4に対応する平面図である。
図13では、前述の第3変形例に係るn+型外側カソード領域82(図10参照)に、前述の第2変形例に係るn+型外側カソード領域82(図9参照)および第4変形例に係るn+型外側カソード領域82(図11参照)が組み合わされた構造のn+型外側カソード領域82が適用された例を示している。
図13において、図4等に示された構成と同様の構成については同一の参照符号を付して説明を省略する。図13では、クロスハッチングによってn+型内側カソード領域81およびn+型外側カソード領域82が示されている。
前述の実施形態では、n+型内側カソード領域81が、第2ライン87Aおよび第2ライン87Bを含む第2ライン87を含み、連続的に連なる平面視葛折状のライン状パターン部85で形成された例について説明した。
これに対して、本変形例に係るn+型内側カソード領域81は、連続的に連なる平面視櫛歯状のライン状パターン部85で形成された構造を有している。より具体的には、本変形例に係るn+型内側カソード領域81は、第2ライン87が、Y方向に互いに隣り合う第1ライン86の+X方向端部同士を接続する第2ライン87Aだけを含む構造を有している。
これにより、n+型内側カソード領域81が平面視櫛歯状のライン状パターン部85で形成されている。n+型内側カソード領域81は、素子形成領域6に対して不均等(非点対称)に形成されている。
このような構造の半導体装置1であっても、前述の実施形態に係る作用効果とほぼ同様の作用効果を奏することができる。
<n+型内側カソード領域81の第3変形例>
図14は、n+型内側カソード領域81の第2変形例を示す平面図である。図14は、図4に対応する平面図である。図14では、前述の第4変形例に係るn+型外側カソード領域82(図11参照)が適用された例を示している。
図14において、図4等に示された構成と同様の構成については同一の参照符号を付して説明を省略する。図14では、クロスハッチングによってn+型内側カソード領域81およびn+型外側カソード領域82が示されている。
前述の実施形態では、n+型内側カソード領域81が、連続的に延びるように引き回されたライン状パターン部85を含む例について説明した。
これに対して、本変形例に係るn+型内側カソード領域81は、複数のドット状パターン部95を含む。複数のドット状パターン部95は、素子形成領域6の空き領域83を除くカソード形成領域84において、X方向およびY方向に間隔を空けて行列状に配列されている。
n+型内側カソード領域81は、行列状配列の複数のドット状パターン部95に代えてまたはこれに加えて、千鳥状配列の複数のドット状パターン部95を含んでいてもよい。n+型内側カソード領域81は、素子形成領域6に対して不均等(非点対称)なパターンで形成されている。
本変形例では、n+型内側カソード領域81が、平面視円形状のドット状パターン部95を含む例を示している。n+型内側カソード領域81は、平面視円形状のドット状パターン部95に代えてまたはこれに加えて、平面視三角形状、平面視四角形状や平面視六角形状等の平面視多角形状のドット状パターン部95や、平面視楕円形状のドット状パターン部95等を含んでいてもよい。
このような構造の半導体装置1では、n+型内側カソード領域81の平面視面積SCとピーク順方向サージ電流IFSMとの間に成立するリニアな関係(図7の近似直線L参照)から切り離してピーク順方向サージ電流IFSMを設定し難いと考えられる。
しかし、n+型外側カソード領域82が形成されているから、n+型外側カソード領域82による順方向電圧VFの悪化の抑制効果を得ることができる。
したがって、本変形例では、ライン状パターン部85および/またはドット状パターン部95を含むn+型内側カソード領域81と、ライン状パターン部93および/またはドット状パターン部94を含むn+型外側カソード領域82との組み合わせが許容されている。
これにより、設計の自由度に不要な制限を設けることなく、順方向電圧VFおよびピーク順方向サージ電流IFSMを設定できるという利点を得ることができる。
<n+型内側カソード領域81の第4変形例>
図15は、n+型内側カソード領域81の第4変形例を示す平面図である。図15は、図4に対応する平面図である。図15では、前述の第2変形例に係るn+型外側カソード領域82(図9参照)が適用された例を示している。
図15において、図4等に示された構成と同様の構成については同一の参照符号を付して説明を省略する。図15では、クロスハッチングによってn+型内側カソード領域81およびn+型外側カソード領域82が示されている。
図15を参照して、本変形例では、平面視において素子形成領域6の中央領域にゲートパッド16が形成されている。ゲートパッド16は、接続部96を介して外側領域7に形成されたゲートフィンガー17に接続されている。接続部96は、ゲートパッド16から外側領域7に向けて引き出されている。
エミッタパッド22は、ゲートパッド16の周縁、ゲートフィンガー17の周縁および接続部96の周縁によって区画された平面視凹状の領域内に形成されている。エミッタパッド22は、本実施形態では、ゲートパッド16の内縁およびゲートフィンガー17の内縁に沿う平面視凹状に形成されている。
本変形例では、半導体層2の第2主面4において、素子形成領域6の中央領域に形成されたゲートパッド16の直下の領域に、前述の空き領域83が設定されている。前述のカソード形成領域84は、空き領域83の周縁および素子形成領域6の周縁の間の領域に設定されている。
本変形例に係るn+型内側カソード領域81は、空き領域83を取り囲むように連続的に延びる平面視四角形の螺旋状のライン状パターン部85を含む。本変形例に係るライン状パターン部85は、前述の実施形態と同様、複数の第1ライン86および複数の第2ライン87を含む。
n+型内側カソード領域81は、素子形成領域6の中央領域を除く領域に形成されている。このような構造であっても、n+型内側カソード領域81は、素子形成領域6に対して不均等(非点対称)なパターンとなる。
このような構造の半導体装置1であっても、前述の実施形態に係る作用効果とほぼ同様の作用効果を奏することができる。
本変形例では、n+型内側カソード領域81が、平面視四角形の螺旋状のライン状パターン部85を含む例について説明した。しかし、n+型内側カソード領域81は、平面視円形の螺旋状のライン状パターン部85を含んでいてもよい。また、n+型内側カソード領域81は、平面視三角形や平面視六角形等の平面視四角形以外の平面視多角形の螺旋状のライン状パターン部85を含んでいてもよい。
前述の実施形態、ならびに、前述の第1変形例~第4変形例に係るn+型内側カソード領域81は、それらの間で任意に組み合わされてもよい。
たとえば、前述の第4変形例に係るドット状パターン部95を含むn+型内側カソード領域81(図15参照)が、前述の実施形態に係る平面視葛折状のライン状パターン部85を含むn+型内側カソード領域81の一部の領域に組み合わされてもよい。この場合、n+型内側カソード領域81は、平面視葛折状のライン状パターン部85と、ドット状パターン部95とを含む構造となる。
また、前述の第2変形例に係る平面視櫛歯状のn+型内側カソード領域81(図13参照)が、前述の実施形態に係る平面視葛折状のn+型内側カソード領域81の一部の領域に組み合わされてもよい。この場合、前述の実施形態に係るn+型内側カソード領域81は、平面視葛折状のライン状パターン部85と、平面視櫛歯状のライン状パターン部85とを含む構造となる。
むろん、平面視葛折状のライン状パターン部85と、平面視櫛歯状のライン状パターン部85と、ドット状パターン部95とを含む構造のn+型内側カソード領域81が採用されてもよい。
<n+型カソード領域80の変形例>
図16は、n+型カソード領域80の変形例を示す平面図である。図16は、図4に対応する平面図である。
図16において、図4等に示された構成と同様の構成については同一の参照符号を付して説明を省略する。図16では、クロスハッチングによってn+型内側カソード領域81およびn+型外側カソード領域82が示されている。
前述の実施形態では、n+型内側カソード領域81の全体が素子形成領域6内に形成されている。また、前述の実施形態では、n+型内側カソード領域81から間隔を空けて、n+型外側カソード領域82の全体が外側領域7内に形成されている。
これに対して、本変形例では、n+型内側カソード領域81およびn+型外側カソード領域82が一体的に形成されている。ここでは、平面視葛折状のn+型内側カソード領域81および平面視四角環状のn+型外側カソード領域82が一体的に形成された例が示されている。
n+型内側カソード領域81においてn+型外側カソード領域82の一部として引き出された部分は、外側領域7において、外側還流ダイオードDoの一部を形成している。
n+型外側カソード領域82においてn+型内側カソード領域81の一部として引き出された部分は、素子形成領域6において、内側還流ダイオードDiの一部を形成している。
このような構造の半導体装置1であっても、前述の実施形態に係る作用効果とほぼ同様の作用効果を奏することができる。
前述の第1~第4変形例に係るn+型外側カソード領域82(図8~図11参照)と、前述の第1~第4変形例に係るn+型内側カソード領域81(図12~図15参照)との任意の組み合わせ構造において、n+型内側カソード領域81およびn+型外側カソード領域82が一体的に形成されてもよい。
たとえば、n+型内側カソード領域81は、n+型外側カソード領域82から素子形成
領域6の中央領域に向かって連続的に引き回された平面視螺旋状のライン状パターン部85を含んでいてもよい。
また、n+型内側カソード領域81は、n+型外側カソード領域82から素子形成領域6の中央領域に向かって連続的に引き回された平面櫛歯形状のライン状パターン部85を含んでいてもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、さらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態および各変形例において、半導体層2は、FZ法により製造されたn-型半導体基板31に代えて、たとえばシリコン製のp-型半導体基板と、当該p-型半導体基板の主面からシリコンをエピタキシャル成長させて形成したn-型のエピタキシャル層とを含んでいてもよい。
この場合、p-型の半導体基板が、p+型コレクタ領域35に相当する構成となる。また、n-型のエピタキシャル層が、n-型ドリフト領域34に相当する構成となる。この場合、n+型内側カソード領域81およびn+型外側カソード領域82は、p-型の半導体基板(p+型コレクタ領域35)に対するn型不純物の注入によって形成される。
前述の実施形態および前述の各変形例において、ゲート電極11は、側面5aの中央領域以外の領域に沿って形成されていてもよい。また、ゲートフィンガー17の一対の開放端18,19は、側面5b以外の領域に沿って形成されていてもよい。
たとえば、ゲート電極11は、側面5a,5b,5c,5dのうちの任意の2つ側面を接続する角部に沿って形成されていてもよい。この場合、ゲートフィンガー17の一対の開放端18,19は、ゲート電極11が配置された角部の対角に位置する角部に沿って形成されてもよい。
前述の実施形態および各変形例において、p+型終端領域51が存在しない構造が採用されてもよい。この場合、外側還流ダイオードDoは、p-型チャネル領域33およびn-型ドリフト領域34の間に形成されたpn接合部を含む。外側還流ダイオードDoは、n+型外側カソード領域82をカソードとして含み、p型チャネル領域33をアノードとして含む。
前述の実施形態および各変形例において、エミッタ引き回し部23およびエミッタ接続部24が存在しない構造が採用されてもよい。この場合、外側還流ダイオードDoのアノード電極は、エミッタパッド22によって形成される。外側還流ダイオードDoのカソード電極は、n+型外側カソード領域82に接続されたコレクタ電極32によって形成される。
むろん、前述の実施形態および各変形例において、p+型終端領域51、エミッタ引き回し部23およびエミッタ接続部24が存在しない構造が採用されてもよい。
前述の実施形態および各変形例では、平面視葛折状、平面視櫛歯形状、平面視ドット状のn+型内側カソード領域81が形成された例について説明した。しかし、n+型内側カソード領域81は、平面視ストライプ状に形成されていてもよい。また、n+型内側カソード領域81は、平面視格子状に形成されていてもよい。
前述の実施形態および各変形例において、空き領域83は、平面視でゲートパッド16と重なる領域外の領域に設定されてもよい。
前述の実施形態および各変形例において、空き領域83は、平面視でゲートパッド16と重なっていなくてもよい。
前述の実施形態および各変形例において、n+型内側カソード領域81は、平面視でゲートパッド16と重なる領域に形成されていてもよい。
前述の実施形態および各変形例において、空き領域83が存在しない構造が採用されてもよい。
前述の実施形態および前述の各変形例において、n+型内側カソード領域81は、素子形成領域6において、均等(線対称かつ点対称)な平面視形状のライン状パターン部85を含んでいてもよい。
前述の実施形態および前述の各変形例において、n+型内側カソード領域81は、素子形成領域6において、均等(線対称かつ点対称)な配列のドット状パターン部95を含んでいてもよい。
前述の実施形態および各変形例において、n+型外側カソード領域82の少なくとも一部が、耐圧保持領域8に形成された構造が採用されてもよい。この構成において、n+型外側カソード領域82の少なくとも一部が、p+型フィールドリミット領域52と対向していてもよい。
前述の実施形態および各変形例において、n+型外側カソード領域82の全部が、耐圧保持領域8に形成された構造が採用されてもよい。この構成において、n+型外側カソード領域82の少なくとも一部または全部が、p+型フィールドリミット領域52と対向していてもよい。
前述の実施形態および各変形例において、n+型外側カソード領域82の少なくとも一部が、スクライブ領域9に形成された構造が採用されてもよい。この構成において、n+型外側カソード領域82の少なくとも一部が、n+型チャネルストップ領域53と対向していてもよい。
前述の実施形態および各変形例において、n+型外側カソード領域82の全部が、スクライブ領域9に形成された構造が採用されてもよい。この構成において、n+型外側カソード領域82の少なくとも一部または全部が、n+型チャネルストップ領域53と対向していてもよい。
前述の実施形態および前述の各変形例において、各半導体部分の導電型が反転された構成が採用されてもよい。つまり、p型の部分がn型とされ、n型の部分がp型とされてもよい。
前述の実施形態および各変形例において、トレンチゲート型のIGBTに代えてまたはこれに加えて、プレーナゲート型のIGBTが素子形成領域6に形成されてもよい。その一例が、図17に示されている。
図17は、プレーナゲート型のIGBTが採用された構造を有する半導体装置101の模式的な断面図である。図17において、前述の実施形態において述べた構成と同様の構成については同一の参照符号を付して説明を省略する。
図17を参照して、本変形例に係る半導体装置101は、前述の半導体層2を含む。半導体層2の第1主面3の表層部には、前述のp型チャネル領域33が間隔を空けて形成されている。p-型チャネル領域33の表層部には、当該p型チャネル領域33の周縁から内側に間隔を隔てて前述のn+型エミッタ領域43および前述のp+型コンタクト領域45が形成されている。
半導体層2の第2主面4の表層部には、前述のn型バッファ領域36、前述のp+型コレクタ領域35および前述のn+型カソード領域80が形成されている。半導体層2において、p型チャネル領域33およびn型バッファ領域36の間の領域が前述のn-型ドリフト領域34である。
素子形成領域6において、半導体層2の第1主面3上には、プレーナゲート構造102が形成されている。プレーナゲート構造102は、ゲート絶縁膜103およびゲート電極104を含む。
ゲート電極104は、ゲート絶縁膜103を挟んでn+型エミッタ領域43、p-型チャネル領域33およびn-型ドリフト領域34と対向している。プレーナゲート構造102は、前述の絶縁層64によって被覆されている。本変形例では、素子形成領域6は、p+型終端領域51により取り囲まれた領域によって定義されている。
絶縁層64には、p-型チャネル領域33およびn+型エミッタ領域43を露出させるコンタクト孔105が形成されている。前述のエミッタ電極12は、絶縁層64上からコンタクト孔105に入り込み、当該コンタクト孔105内で、p型チャネル領域33およびn+型エミッタ領域43と電気的に接続されている。半導体層2の第2主面4側には、p+型コレクタ領域35およびn+型カソード領域80と電気的に接続されるように前述のコレクタ電極32が形成されている。
以上、本変形例に係る半導体装置101によっても前述の実施形態において述べた作用効果と同様の作用効果を奏することができる。
以下、この明細書および図面から抽出される特徴の例を示す。以下、順方向電圧の悪化を抑制できる半導体装置を提供する。
[A1]第1主面およびその反対側の第2主面を有し、素子形成領域および前記素子形成領域外の外側の領域が設定された第1導電型の半導体層と、前記素子形成領域において前記半導体層の前記第1主面の表層部に形成された第2導電型のチャネル領域と、前記チャネル領域の表層部に形成された第1導電型のエミッタ領域と、前記素子形成領域において前記半導体層の前記第1主面に形成され、かつゲート絶縁膜を挟んで前記チャネル領域と対向するゲート電極と、前記素子形成領域において前記半導体層の前記第2主面の表層部に形成された第2導電型のコレクタ領域と、前記素子形成領域において前記半導体層の前記第2主面の表層部に形成された第1導電型の内側カソード領域と、前記外側の領域において前記半導体層の前記第2主面の表層部に形成された第1導電型の外側カソード領域とを含む、半導体装置。
この半導体装置では、ゲート電極およびエミッタ領域の間に所定の電圧が印加された状態で、エミッタ領域およびコレクタ領域の間に所定の順方向電圧が印加されたとしても、エミッタ領域およびコレクタ領域の間に順方向電流が流れ難くなるのを抑制できる。よって、順方向電圧の悪化を抑制することができ、かつ、当該順方向電圧の悪化に起因するスナップバック現象を抑制できる。
[A2]前記半導体層の前記第1主面に形成され、かつ、前記エミッタ領域に接続されたエミッタ電極と、前記半導体層の前記第2主面に形成され、かつ、前記コレクタ領域、前記内側カソード領域および前記外側カソード領域に接続されたコレクタ電極とをさらに含む、A1に記載の半導体装置。
[A3]前記半導体層には、前記エミッタ電極をアノード電極とし、かつ、前記内側カソード領域に接続された前記コレクタ電極をカソード電極とする内側ダイオードが形成されており、前記半導体層には、前記エミッタ電極をアノード電極とし、かつ、前記外側の領域において前記外側カソード領域に接続された前記コレクタ電極をカソード電極とする外側ダイオードが形成されている、A2に記載の半導体装置。
[A4]前記外側の領域において前記チャネル領域に沿うように前記半導体層の前記第1主面の表層部に形成された第2導電型の終端領域をさらに含む、A1に記載の半導体装置。
[A5]前記半導体層には、前記チャネル領域をアノードとし、かつ、前記内側カソード領域をカソードとする内側ダイオードが形成されており、前記半導体層には、前記終端領域をアノードとし、かつ、前記外側カソード領域をカソードとする外側ダイオードが形成されている、A4に記載の半導体装置。
[A6]前記外側カソード領域は、前記半導体層の一部の領域を挟んで前記終端領域と対向している、A4またはA5に記載の半導体装置。
[A7]前記終端領域の底部は、前記チャネル領域の底部よりも前記半導体層の前記第2主面に近い位置に形成されている、A4~A6のいずれか一つに記載の半導体装置。
[A8]前記終端領域は、前記チャネル領域の第2導電型不純物濃度よりも高い第2導電型不純物濃度を有している、A4~A7のいずれか一つに記載の半導体装置。
[A9]前記外側の領域は、前記半導体層の前記第1主面の法線方向から見た平面視において、前記素子形成領域を取り囲むように形成されており、前記終端領域は、前記半導体層の前記第1主面の法線方向から見た平面視において、前記チャネル領域を取り囲むように形成されている、A4~A8のいずれか一つに記載の半導体装置。
[A10]前記コレクタ領域は、前記素子形成領域に加えて、前記外側の領域において前記半導体層の前記第2主面の表層部にも形成されており、前記外側カソード領域は、前記コレクタ領域を貫通して形成され、前記半導体層と電気的に接続されている、A1~A9のいずれか一つに記載の半導体装置。
[A11]前記外側カソード領域は、前記素子形成領域の周囲に沿って連続的に延びるように形成されたパターンを含む、A1~A10のいずれか一つに記載の半導体装置。
[A12]前記外側カソード領域は、前記素子形成領域の周囲に沿って間隔を空けて形成されたパターンを含む、A1~A11のいずれか一つに記載の半導体装置。
[A13]前記外側カソード領域は、前記素子形成領域の周囲に沿って連続的に延びるように形成された第1パターンと、前記素子形成領域の周囲に沿って間隔を空けて形成された第2パターンとを含む、A1~A12のいずれか一つに記載の半導体装置。
[A14]前記内側カソード領域は、前記コレクタ領域を貫通して形成され、前記半導体層と電気的に接続されている、A1~A13のいずれか一つに記載の半導体装置。
[A15]前記内側カソード領域は、前記素子形成領域において連続的に延びるように形成されたパターンを含む、A1~A14のいずれか一つに記載の半導体装置。
[A16]前記内側カソード領域は、前記素子形成領域において間隔を空けて形成されたパターンを含む、A1~A15のいずれか一つに記載の半導体装置。
[A17]前記内側カソード領域は、前記外側カソード領域の深さと等しい深さを有している、A1~A16のいずれか一つに記載の半導体装置。
[A18]前記内側カソード領域は、前記外側カソード領域の第1導電型不純物濃度と等しい第1導電型不純物濃度を有している、A1~A17のいずれか一つに記載の半導体装置。
[A19]前記エミッタ領域および前記ゲート電極の間に15Vの電圧を印加した状態で、前記エミッタ領域および前記コレクタ領域の間に1.6Vの順方向電圧を印加した時、前記エミッタ領域および前記コレクタ領域の間を流れる順方向電流が2A以上である、A1~A18のいずれか一つに記載の半導体装置。
[A20]前記エミッタ領域および前記ゲート電極の間に15Vの電圧を印加した状態で、前記エミッタ領域および前記コレクタ領域の間に2Vの順方向電圧を印加した時、前記エミッタ領域および前記コレクタ領域の間を流れる順方向電流が8A以上である、A1~A19のいずれか一つに記載の半導体装置。
[A21]前記エミッタ領域および前記ゲート電極の間に15Vの電圧を印加した状態で、前記エミッタ領域および前記コレクタ領域の間に3Vの順方向電圧を印加した時、前記エミッタ領域および前記コレクタ領域の間を流れる順方向電流が20A以上である、A1~A20のいずれか一つに記載の半導体装置。
[A22]第1主面およびその反対側の第2主面を有する第1導電型の半導体層と、前記半導体層の前記第1主面の表層部に形成された第2導電型のチャネル領域と、前記チャネル領域の表層部に形成された第1導電型のエミッタ領域と、前記半導体層の前記第1主面に形成され、かつゲート絶縁膜を挟んで前記チャネル領域と対向するゲート電極と、前記半導体層の前記第2主面の表層部において前記チャネル領域と対向する対向領域に形成された第2導電型のコレクタ領域と、前記半導体層の前記第2主面の表層部において前記対向領域に形成された第1導電型の内側カソード領域と、前記半導体層の前記第2主面の表層部において前記対向領域外の領域である非対向領域に形成された第1導電型の外側カソード領域とを含む、半導体装置。
この半導体装置では、ゲート電極およびエミッタ領域の間に所定の電圧が印加された状態で、エミッタ領域およびコレクタ領域の間に所定の順方向電圧が印加されたとしても、エミッタ領域およびコレクタ領域の間に順方向電流が流れ難くなるのを抑制できる。よって、順方向電圧の悪化を抑制することができ、かつ、当該順方向電圧の悪化に起因するスナップバック現象を抑制できる。
[A23]前記チャネル領域に沿うように前記半導体層の前記第1主面の表層部に形成された第2導電型の終端領域をさらに含み、前記外側カソード領域は、前記半導体層の一部の領域を挟んで前記終端領域と対向するように形成されている、A22に記載の半導体装置。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。