JP2023055811A - インクジェット用インク、インクセット、インクメディアセット、及び印刷メディア - Google Patents

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阿衣子 松村
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Abstract

【課題】インク非吸収メディアへの濡れ性が良好なインクジェット用インク、そのインクを備えるインクセット、そのインク又はインクセットと印刷メディアとを備えるインクメディアセット、及びそのインク又はインクセットが備える各インクが付着した印刷メディアを提供する。【解決手段】本発明のインクは、顔料、水溶性有機溶剤、及び有機化合物(但し、上記顔料及び上記水溶性有機溶剤を除く。)を含有し、25℃における表面張力が43.1mN/m以下である。本発明のインクは、例えば、上記水溶性有機溶剤のlogP値が-5.420を超え、且つ、1.258未満であり、上記有機化合物の対PET界面張力が15.50mN/m以下であり、上記水溶性有機溶剤の総質量(A)と上記有機化合物の総質量(B)との比((B)/(A))が0.005~1であるという条件を満たす。【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット用インク、インクセット、インクメディアセット、及び印刷メディアに関する。
カラー印刷方法の中でも代表的方法の1つであるインクジェットプリンタによる印刷方法(インクジェット印刷方法)は、インクの小滴を発生させ、これを紙等の印刷メディアに付着させ印刷を行うものである。近年、インクジェット印刷方法は、産業用途としての応用が進んでおり、様々な印刷メディアに対応できることが求められている。
産業用途に用いられる印刷メディアの中には、フィルムに代表されるインク非吸収性メディアも存在する。そのようなインク非吸収性メディアに印刷するため、有機溶剤を主溶媒とした溶剤インクや、重合性モノマーを含有させた硬化性インク等の開発が進められてきた。しかし、これらのインクは、自然環境、生体等に対する安全上の問題が多く、用途に限りがあった。そこで、近年は、水を主溶媒とした水系インクの開発が盛んになってきている(例えば、特許文献1~3参照)。
しかし、特許文献1~3で提案されている従来のインクは、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムやPP(ポリプロピレン)フィルムのようなインク非吸収性メディアに対する濡れ性が不十分であった。
特許第5504890号公報 特開2020-125382号公報 特開2020-55943号公報
本発明は、インク非吸収メディアへの濡れ性が良好なインクジェット用インク、そのインクジェット用インクを備えるインクセット、そのインクジェット用インク又はインクセットと印刷メディアとを備えるインクメディアセット、及びそのインクジェット用インク又はインクセットが備える各インクジェット用インクが付着した印刷メディアを提供することを課題とする。
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
1)
顔料、水溶性有機溶剤、及び有機化合物(但し、前記顔料及び前記水溶性有機溶剤を除く。)を含有し、下記(1)~(3)のいずれかの条件を満たし、且つ、25℃における表面張力が43.1mN/m以下である、インクジェット用インク。
(1)前記水溶性有機溶剤のlogP値が-5.420を超え、且つ、1.258未満であり、
1質量部の前記有機化合物と9質量部の1,4-ブタンジオールと90質量部の精製水とを混合した混合液をPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに接触させたときの該混合液とPETフィルムとの間の25℃における界面張力を、前記有機化合物の対PET界面張力と定義したとき、前記有機化合物の対PET界面張力が15.50mN/m以下であり、
前記インクジェット用インクに含有される前記水溶性有機溶剤の総質量を(A)とし、前記有機化合物の総質量を(B)としたとき、(B)/(A)で求められる値が0.005~1である。
(2)前記有機化合物が、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、及びジエチレングリコールモノフェニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種である。
(3)前記有機化合物がC7-C9の1,2-アルカンジオールであり、
前記インクジェット用インクに含有される前記水溶性有機溶剤の総質量を(A)とし、1,2-アルカンジオールの総質量を(C)としたとき、(C)/(A)で求められる値が0.4未満である。
2)
前記有機化合物の対PET界面張力が14.00mN/m以下である、1)に記載のインクジェット用インク。
3)
前記有機化合物の対PET界面張力が11.00mN/m以下である、1)に記載のインクジェット用インク。
4)
1)~3)のいずれか1項に記載のインクジェット用インクと、該インクジェット用インクとは異なる他のインクジェット用インクとを備える、インクセット。
5)
1)~3)のいずれか1項に記載のインクジェット用インク、又は4)に記載のインクセットと、印刷メディアとを備える、インクメディアセット。
6)
1)~3)のいずれか1項に記載のインクジェット用インク、又は4)に記載のインクセットが備える各インクジェット用インクが付着した印刷メディア。
本発明によれば、インク非吸収メディアへの濡れ性が良好なインクジェット用インク、そのインクジェット用インクを備えるインクセット、そのインクジェット用インク又はインクセットと印刷メディアとを備えるインクメディアセット、及びそのインクジェット用インク又はインクセットが備える各インクジェット用インクが付着した印刷メディアを提供することができる。
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について詳細に説明する。
本明細書において、「C.I.」とは、「カラーインデックス」を意味する。
また、本明細書において、「アルキレン」、「プロピレン」、「アルキル」の用語は、特に断りのない限り、直鎖状及び分岐鎖状の両方の構造を包含する意味で使用する。
<インクジェット用インク>
本実施形態に係るインクジェット用インク(以下、単に「インク」ともいう。)は、顔料、水溶性有機溶剤、及び有機化合物(但し、上記顔料及び上記水溶性有機溶剤を除く。)を含有し、下記(1)~(3)のいずれかの条件を満たし、且つ、25℃における表面張力が43.1mN/m以下である。
(1)上記水溶性有機溶剤のlogP値が-5.420を超え、且つ、1.258未満であり、
1質量部の上記有機化合物と9質量部の1,4-ブタンジオールと90質量部の精製水とを混合した混合液をPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに接触させたときの該混合液とPETフィルムとの間の25℃における界面張力を、上記有機化合物の対PET界面張力と定義したとき、上記有機化合物の対PET界面張力が15.50mN/m以下であり、
本実施形態に係るインクに含有される上記水溶性有機溶剤の総質量を(A)とし、上記有機化合物の総質量を(B)としたとき、(B)/(A)で求められる値が0.005~1である。
(2)上記有機化合物が、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、及びジエチレングリコールモノフェニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種である。
(3)上記有機化合物がC7-C9の1,2-アルカンジオールであり、
本実施形態に係るインクに含有される上記水溶性有機溶剤の総質量を(A)とし、1,2-アルカンジオールの総質量を(C)としたとき、(C)/(A)で求められる値が0.4未満である。
本実施形態に係るインクの25℃における表面張力は、27.0~42.4mN/mであることが好ましく、27.0~41.2mN/mであることがより好ましく、29.0~39.8mN/mであることがさらに好ましい。インクの表面張力を上記の範囲とすることにより、インク非吸収性メディアに対する濡れ性が良好となる傾向にある。
以下、本実施形態に係るインクに含有される成分について詳細に説明する。なお、以下に説明する各成分は、そのうちの1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
[顔料]
顔料としては、無機顔料、有機顔料、体質顔料、中空粒子等が挙げられる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物、金属フェロシアン化物、金属塩化物等が挙げられる。
本実施形態に係るインクが黒インクであり、且つ、顔料が無機顔料である場合、該黒インクが含有する無機顔料としては、サーマルブラック、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック、ランプブラック、ガスブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの具体例としては、例えば、コロンビア・カーボン社製のRavenシリーズ;キャボット社製のMonarchシリーズ、Regalシリーズ、及びMogulシリーズ;オリオンエンジニアドカーボンズ社製のColorBlackシリーズ、Printexシリーズ、SpecIalBlackシリーズ、及びNeroxシリーズ;三菱ケミカル(株)製のMAシリーズ、MCFシリーズ、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、及びNo.2300;等が挙げられる。
本実施形態に係るインクが白インクであり、且つ、顔料が無機顔料である場合、該白インクが含有する無機顔料としては、亜鉛、シリコン、アルミニウム、チタン、ストロンチウム、ジルコニウム等の金属の酸化物、窒化物、又は酸化窒化物;ガラス、シリカ等の無機化合物;などが挙げられる。これらの中でも、二酸化チタン及び酸化亜鉛が好ましい。
有機顔料としては、例えば、アゾ、ジスアゾ、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリノン、ジオキサジン、ペリレン、ペリノン、チオインジゴ、アンソラキノン、キノフタロン等の各種の顔料が挙げられる。これらの中でも、ジスアゾ顔料が好ましい。
有機顔料の具体例としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、24、55、73、74、75、83、93、94、95、97、98、108、114、128、129、138、139、150、151、154、155、180、185、193、199、202、213等のイエロー顔料;C.I.Pigment Red 5、7、12、48、48:1、57、88、112、122、123、146、149、150、166、168、177、178、179、184、185、202、206、207、254、255、257、260、264、269、272等のレッド顔料;C.I.Pigment Blue 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、25、60、66、80等のブルー顔料;C.I.Pigment Violet 19、23、29、37、38、50等のバイオレット顔料;C.I.Pigment Orange 13、16、43、68、69、71、73等のオレンジ顔料;C.I.Pigment Green 7、36、54等のグリーン顔料;C.I.Pigment Black 1等のブラック顔料;などが挙げられる。これらの中でも、C.I.Pigment Blue 15:4が好ましい。
体質顔料としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー、硫酸バリウム、ホワイトカーボン等が挙げられる。体質顔料は、他の顔料と併用されることが多い。
中空粒子としては、例えば、米国特許第4880465号明細書、特許第3562754号公報、特許第6026234号公報、特許第5459460号公報、特開2003-268694号公報、特許第4902216号公報等に記載されている公知の中空粒子を用いることができ、特に、白色顔料として用いることが好ましい。
顔料の平均粒径は、30~300nmであることが好ましく、50~250nmであることがより好ましい。本明細書において平均粒径とは、レーザ光散乱法を用いて測定した粒子の平均粒径を指す。
顔料の含有率は、本実施形態に係るインクの総質量に対して、1~30質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましく、2~8質量%であることがさらに好ましい。
[水溶性有機溶剤]
水溶性有機溶剤とは、25℃の水に対する溶解度が50g/L以上であるものを意味する。水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1-C6アルカノール;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルピロリジン-2-オン等のラクタム;1,3-ジメチルイミダゾリジン-2-オン又は1,3-ジメチルヘキサヒドロピリミド-2-オン等の環式尿素類;アセトン、2-メチル-2-ヒドロキシペンタン-4-オン、エチレンカーボネート等のケトン、ケトアルコール、又はカーボネート;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(好ましくは、分子量400、800、1540、又はそれ以上のもの)、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール等のC2-C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ、若しくはポリアルキレングリコール又はチオグリコール;グリセリン、ジグリセリン、ヘキサン-1,2,6-トリオール、トリメチロールプロパン等のC3-C9ポリオール(トリオール);エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル(好ましくは、C4-C10のモノ、ジ、若しくはトリエチレングリコールエーテル、又はC4-C13のモノ、ジ、若しくはトリプロピレングリコールエーテル);1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール等のC5-C9アルカンジオール;γ-ブチロラクトン;ジメチルスルホキシド;等が挙げられる。これらの中でも、C2-C5ジチレングリコールエーテル、C3-C6アルカンジオール、3-メトキシ-1-ブタノール、及び3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールが好ましく、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、3-メトキシ-1-ブタノール、及び3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールがより好ましい。
本実施形態に係るインクが上記(1)の条件を満たす場合、水溶性有機溶剤のlogP値は、-5.420を超え、且つ、1.258未満であり、-1.164~1.188であることが好ましい。本明細書における「logP値」とは、オクタノール/水分配係数を指し、例えば、Perkin Elmer社製のChemDraw Professional ver.16.0を用いて計算して得られる「ClogP」の数値で表すことが可能である。
水溶性有機溶剤の含有率は、本実施形態に係るインクの総質量に対して、1~20質量%であることが好ましく、1~15質量%であることがより好ましく、1~10質量%であることがさらに好ましく、3~7質量%であることが特に好ましい。
[有機化合物]
本実施形態に係るインクが上記(1)の条件を満たす場合、有機化合物としては、対PET界面張力が15.50mN/m以下であるものが使用される。この場合、有機化合物の対PET界面張力は、14.00mN/m以下であることが好ましく、11.00mN/m以下であることがより好ましい。本明細書における「対PET界面張力」とは、有機化合物(1質量部)と1,4-ブタンジオール(9質量部)と精製水(90質量部)とを混合した混合液をPETフィルムに接触させたときの、該混合液とPETフィルムとの間の25℃における界面張力を意味し、該混合液のPETフィルムに対する接触角から、ヤングの式を用いて算出することができる。PETフィルムとしては、例えば、東洋紡(株)製のPETフィルム(E5102)が使用される。
対PET界面張力が15.50mN/m以下である有機化合物としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、トリエチレングリコールモノベンジルエーテル、モノオキシエチレンβ-ナフチルエーテル、ジオキシエチレンβ-ナフチルエーテル、トリオキシエチレンβ-ナフチルエーテル等のグリコールエーテル(好ましくは、モノ、ジ、又はトリエチレングリコールアリールエーテル);2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-ノナンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール等のアルカンジオール(好ましくは、C7-C10の両末端アルカンジオール);等が挙げられ、モノ、ジ、又はトリエチレングリコールアリールエーテル及びC7-C10の両末端アルカンジオールが好ましく、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、及び1,8-オクタンジオールがより好ましい。
また、本実施形態に係るインクが上記(2)の条件を満たす場合、有機化合物としては、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、及びジエチレングリコールモノフェニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種が使用される。
また、本実施形態に係るインクが上記(3)の条件を満たす場合、有機化合物としては、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-ノナンジオール等のC7-C9の1,2-アルカンジオールが使用される。
上記の有機化合物は、インクが印刷メディア上に着弾した後、インクと印刷メディアとの界面に配向しやすい性質を有している。この性質により、インクと印刷メディアとの界面にて生じる界面張力を下げ、印刷メディア上でのインクの濡れ広がりを促進することで、優れた濡れ性が発揮されると考えられる。
有機化合物の含有率は、インク非吸収性メディアに対する濡れ性の観点から、本実施形態に係るインクの総質量に対して、0.05~1.5質量%であることが好ましく、0.1~1質量%であることがより好ましく、0.3~0.7質量%であることがさらに好ましい。
特に、本実施形態に係るインクが上記(1)の条件を満たす場合、本実施形態に係るインクに含有される水溶性有機溶剤の総質量を(A)とし、有機化合物の総質量を(B)としたとき、(B)/(A)で求められる値は0.005~1であり、0.007~1であることが好ましく、0.01~1であることがより好ましく、0.05~0.2であることがさらに好ましい。
また、本実施形態に係るインクが上記(3)の条件を満たす場合、本実施形態に係るインクに含有される水溶性有機溶剤の総質量を(A)とし、1,2-アルカンジオールの総質量を(C)としたとき、(C)/(A)で求められる値は0.4未満であり、0.01~0.3であることが好ましく、0.05~0.2であることがより好ましい。
[水]
本実施形態に係るインクは、水を含有していてもよい。水としては、金属イオン等の不純物の含有量が少ない水、すなわち、イオン交換水、蒸留水等が好ましい。
本実施形態に係るインクが水を含有する場合、その含有率は、本実施形態に係るインクの総質量に対して、50~90質量%であることが好ましく、60~90質量%であることがより好ましく、70~90質量%であることがさらに好ましい。
[分散剤]
本実施形態に係るインクは、分散剤を含有していてもよい。分散剤としては、例えば、スチレン及びその誘導体;ビニルナフタレン及びその誘導体;α,β-エチレン性不飽和性カルボン酸の脂肪族アルコールエステル;(メタ)アクリル酸及びその誘導体;マイレン酸及びその誘導体;イタコン酸及びその誘導体;ファール酸及びその誘導体;酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びそれらの誘導体;等のモノマーから選択される少なくとも2種類のモノマー(好ましくは、このうち少なくとも1種類が親水性のモノマー)から構成される共重合体が挙げられる。親水性のモノマーとしては、アクリル酸やメタクリル酸など、重合後にカルボキシ基が残るモノマーが挙げられる。
このような共重合体としては、例えば、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体等が挙げられる。これらの中でも、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体、及びポリエチレングリコール(メタ)アクリレート-(メタ)アクリル酸共重合体が好ましく、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、及び(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体がより好ましく、(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体がさらに好ましく、メタクリル酸エステル-メタクリル酸共重合体が特に好ましい。共重合体の種類としては、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体等が挙げられる。これらの共重合体は、塩の形態であってもよい。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル」の用語は、「アクリル」及び「メタクリル」の両方を含む意味で用いる。「(メタ)アクリレート」等も同様である。
分散剤は、合成することも市販品として入手することもできる。
合成により得られる分散剤としては、例えば、国際公開第2013/115071号に開示されたA-Bブロックポリマーが挙げられる。国際公開第2013/115071号に開示されたA-BブロックポリマーのAブロックを構成するモノマーは、(メタ)アクリル酸、及び直鎖状又は分岐鎖状のC4アルキル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種類のモノマーであり、メタクリル酸及びn-ブチルメタクリレートから選択される少なくとも1種類のモノマーが好ましく、これら2種類のモノマーを併用するのがより好ましい。また、国際公開第2013/115071号に開示されたA-BブロックポリマーのBブロックを構成するモノマーは、ベンジルメタクリレート及びベンジルアクリレートから選択される少なくとも1種類のモノマーであり、ベンジルメタクリレートが好ましい。A-Bブロックポリマーの具体例としては、国際公開第2013/115071号の合成例3~8に開示されたブロック共重合体が挙げられる。
市販品として入手可能な分散剤としては、例えば、Joncyrl 62、67、68、678、687(BASF社製のスチレン-アクリル系共重合体);アロンAC-10SL(東亜合成(株)製のポリアクリル酸);BYKJET 9151、9152、9170、9171(BYK社製の湿潤分散剤);等が挙げられる。
分散剤の質量平均分子量(MW)は、3000~50000であることが好ましく、7000~25000であることがより好ましい。分散剤の質量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフ法(GPC法)により測定することができる。具体的には、GPC装置としてHLC-8320GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてTSK gel Super MultIpore HZ-H(東ソー(株)製、内径4.6mm×15cm)を2本用い、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、標準試料としてTSK Standard(東ソー(株)製)を用いて測定することができる。
分散剤の酸価は、50~300mgKOH/gであることが好ましく、80~275mgKOH/gであることがより好ましく、80~250mgKOH/gであることがさらに好ましい。
分散剤は、顔料と混合した状態で使用することができる。また、顔料の表面の一部又は全部を分散剤で被覆した状態で使用することもできる。あるいは、これらの両方の状態を併用してもよい。
本実施形態に係るインクが分散剤を含有する場合、顔料の総質量に対する分散剤の総質量の比は、0.01~1.0であることが好ましく、0.05~0.6であることがより好ましく、0.1~0.5であることがさらに好ましい。
[定着樹脂]
本実施形態に係るインクは、定着樹脂を含有していてもよい。本実施形態に係るインクが定着樹脂を含有することで、印刷メディアに印刷した画像の耐水性、耐擦過性、耐アルコール性等の画像堅牢度が向上する傾向にある。定着樹脂としては、ポリマー及びワックスから選択される少なくとも1種が好ましい。
ポリマーとしては、例えば、ウレタン系、ポリエステル、アクリル系、酢酸ビニル系、塩化ビニル系、スチレン-アクリル系、アクリル-シリコン系、スチレン-ブタジエン系の各ポリマーが挙げられる。これらの中でも、ウレタン系、アクリル系、及びスチレン-ブタジエン系から選択されるポリマーが好ましく、アクリル系ポリマー及びウレタン系ポリマーがより好ましい。
ポリマーは、エマルションの状態の市販品を入手することができる。ポリマーエマルションの市販品としては、スーパーフレックス 420、470、890(以上、第一工業製薬(株)製のウレタン系樹脂エマルション);ハイドラン HW-350、HW-178、HW-163、HW-171、AP-20、AP-30、WLS-201、WLS-210(以上、DIC(株)製のウレタン系樹脂エマルション);0569、0850Z、2108(以上、JSR(株)製のスチレン-ブタジエン系樹脂エマルション);AE980、AE981A、AE982、AE986B、AE104(以上、(株)イーテック製のアクリル系樹脂エマルション);NeoCryl A-1105、A-1125、A-1127(以上、DSM Coating Resin社製のアクリル樹脂エマルション);等が挙げられる。
ワックスとしては、天然ワックス及び合成ワックスを用いることができる。
天然ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;モンタンワックス等の褐炭系ワックス;カルナバワックス、キャンデリアワックス等の植物系ワックス;蜜蝋、ラノリン等の動植物系ワックス;などが挙げられる。
合成ワックスとしては、例えば、ポリアルキレンワックス(好ましくは、ポリC2-C4アルキレンワックス)、酸化ポリアルキレンワックス(好ましくは、酸化ポリC2-C4アルキレンワックス)、パラフィンワックス等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス、及びパラフィンワックスが好ましい。
ワックスの平均粒径は、インクジェットヘッドの目詰まりを防止するため、50nm~5μmであることが好ましく、100nm~1μmであることがより好ましい。
ワックスは、エマルションの状態の市販品を入手することができる。ワックスエマルションの市販品としては、例えば、CERAFLOUR 925、929、950、991、AQUACER 498、515、526、531、537、539、552、1547、AQUAMAT 208、263、272;MINERPOL 221(以上、BYK社製);三井ハイワックス NL100、NL200、NL500、4202E、1105A、2203A、NP550、NP055、NP505(以上、三井化学(株)製);KUE-100、11(以上、三洋化学工業(株)製);HYTEC P-5300、E-6500、9015、6400(以上、東邦化学工業(株)製);等が挙げられる。
本実施形態に係るインクが定着樹脂を含有する場合、その含有率は、本実施形態に係るインクの総質量に対して、0.1~30質量%であることが好ましく、1~20質量%であることがより好ましく、2~15質量%であることがさらに好ましく、3~10質量%であることが特に好ましく、7~9質量%であることが極めて好ましい。
[界面活性剤]
本実施形態に係るインクは、定着樹脂を含有していてもよい。界面活性剤としては、アニオン系、ノニオン系、シリコーン系、及びフッ素系の各界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、シリコーン系及びフッ素系から選択される界面活性剤が好ましく、生体や環境への安全性の観点からはシリコーン系界面活性剤がより好ましい。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、N-アシルアミノ酸又はその塩、N-アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(例えば、花王(株)製のエマルゲン A-60、A-90、A-500)等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレングリコール(又はアセチレンアルコール)系(例えば、エボニックジャパン(株)製のサーフィノール 104、104PG50、82、420、440、465、485;オルフィン STG;等);ポリグリコールエーテル系;などが挙げられる。
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。その一例としては、エアープロダクツ社製のダイノール 960、980;日信化学工業(株)製のシルフェイス SAG001、SAG002、SAG003、SAG005、SAG503A、SAG008、SAG009、SAG010;BYK社製のBYK-345、347、348、349、3450(別名:BYKLPX 23289)、3451(別名:BYKLPX 23347)、3455、LP-X23288、LP G20726;Evonic Tego Chemie社製のTEGO Twin 4000、TEGO Wet KL 245、250、260、265、270、280;等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸系化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物等が挙げられる。市販品としては、例えば、Chemours社製のCapstone FS-30、FS-31等が挙げられる。
[その他の成分]
本実施形態に係るインクは、必要に応じて、防黴剤、防腐剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、消泡剤、水溶性紫外線吸収剤、酸化防止剤等のインク調製剤を含有していてもよい。各インク調製剤の含有量は、インクの用途等に応じて任意に設定することができる。
(防黴剤)
防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン-1-オキシド、p-ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン及びその塩等が挙げられる。
(防腐剤)
防腐剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリールスルホン系、ヨードプロパギル系、ハロアルキルチオ系、ニトリル系、ピリジン系、8-オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物が挙げられる。有機ハロゲン系化合物の具体例としては、例えば、ペンタクロロフェノールナトリウム等が挙げられる。ピリジンオキシド系化合物の具体例としては、例えば、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウム等が挙げられる。イソチアゾリン系化合物の具体例としては、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンマグネシウムクロライド、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンカルシウムクロライド、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンカルシウムクロライド等が挙げられる。その他の防腐防黴剤の具体例としては、無水酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、アーチケミカル社製の商品名プロクセルGXL(S)、プロクセルLV、プロクセルXL-2(S)等が挙げられる。
(pH調整剤)
pH調整剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水);炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;ケイ酸ナトリウム、酢酸カリウム等の有機酸のアルカリ金属塩;リン酸二ナトリウム等の無機塩基;などが挙げられる。
(キレート試薬)
キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラシル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
(防錆剤)
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
(消泡剤)
消泡剤としては、例えば、シリコーン系、シリカ鉱物油系、オレフィン系、アセチレン系等の化合物が挙げられる。市販の消泡剤としては、例えば、信越化学工業(株)製のサーフィノールDF37、DF58、DF110D、DF220、MD-20、オルフィンSK-14等が挙げられる。
(水溶性紫外線吸収剤)
水溶性紫外線吸収剤としては、例えば、スルホ化されたベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾ-ル系化合物、サリチル酸系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、例えば、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、複素環類等が挙げられる。
[インクの調製方法等]
本実施形態に係るインクの調製方法としては、特に制限されず、公知の調製方法を採用することができる。その一例としては、例えば、顔料及び分散剤を含有する水性の分散液を調製し、この分散液に、水溶性有機溶剤、有機化合物、及び必要に応じてインク調製剤を加えて混合する方法が挙げられる。
分散液の調製方法としては、例えば、転相乳化法、酸析法、界面重合法、in-situ重合法、液中硬化被膜法、コアセルベーション(相分離)法、液中乾燥法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等が挙げられる。これらの中でも、転相乳化法、酸析法、及び界面重合法が好ましく、転相乳化法がより好ましい。
転相乳化法により分散液を調製する場合、例えば、2-ブタノン等の有機溶剤に分散剤を溶解し、中和剤の水溶液を加えて乳化液を調製する。得られた乳化液に顔料を加えて分散処理を行う。このようにして得られた液から有機溶剤と一部の水とを減圧留去することにより、目的とする分散液を得ることができる。
分散処理は、サンドミル(ビーズミル)、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、マイクロフルイダイザー等を用いて行うことができる。例えば、サンドミルを用いるときは、粒子径0.01~1mm程度のビーズを使用し、ビーズの充填率を適宜設定して分散処理を行うことができる。上記のようにして得られた分散液に対して、濾過、遠心分離等の操作をすることにより、分散液に含有される粒子の粒子径を揃えることができる。分散液の調製中に泡立ちが生じるときは、公知のシリコーン系、アセチレングリコール系等の消泡剤を極微量加えることができる。
本実施形態に係るインクは、金属陽イオンの塩化物(例えば、塩化ナトリウム)、金属硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム)等の無機不純物の含有率が少ないことが好ましい。このような無機不純物は、市販品の顔料に含まれることが多い。無機不純物の含有率の目安は、おおよそ顔料の総質量に対して1質量%以下程度であり、下限は分析機器の検出限界以下、すなわち0質量%が理想である。無機不純物の少ない顔料を得る方法としては、例えば、逆浸透膜を用いる方法;顔料の固体をメタノール等のC1-C4アルコール及び水の混合溶媒中で懸濁撹拌し、顔料を濾過分離して、乾燥する方法;イオン交換樹脂で無機不純物を交換吸着する方法;等が挙げられる。
本実施形態に係るインクは、精密濾過しておくことが好ましい。精密濾過には、メンブランフィルター、ガラス濾紙等を用いることができる。精密濾過を行うときのフィルター等の孔径は、通常0.5~20μm、好ましくは0.5~10μmである。
本実施形態に係るインクは、保存安定性、再分散性、耐擦過性、発色性、及び彩度にも優れる。また、本実施形態に係るインクを用いて記録された画像は、耐水性、耐光性、耐熱性、耐酸化ガス性(例えば、耐オゾンガス性)等の各種堅牢性にも優れる。また、本実施形態に係るインクは、画像形成の際の塗工ムラが少なく、画像形成性にも優れる。
<インクセット、インクメディアセット>
本実施形態に係るインクセットは、上述した本実施形態に係るインクと、該インクとは異なる他のインクとを備えるものである。他のインクとしては、本実施形態に係るインクと構成が異なるものであれば特に限定されないが、本実施形態に係るインクと色相が異なるものが好ましい。
また、本実施形態に係るインクセットは、上述した本実施形態に係るインク又はインクセットと、印刷メディアとを備えるものである。
印刷メディアとしては、特に制限されないが、インク難吸収性又はインク非吸収性の印刷メディアが好ましく、インク非吸収性の印刷メディアがより好ましい。インク難吸収性の印刷メディアとしては、インク受容層を有しない普通紙、グラビア印刷やオフセット印刷等に用いられるメディア、アート紙、コート紙、マット紙、キャスト紙等が挙げられる。また、インク非吸収性の印刷メディアとしては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、PP(ポリプロピレン)フィルム、塩化ビニルシート、ガラス、ゴム等が挙げられる。
<インクジェット印刷方法>
本実施形態に係るインクジェット印刷方法は、上述した本実施形態に係るインクの液滴を印刷信号に応じて吐出させて、印刷メディアに付着させることにより印刷を行う方法である。インクの吐出を行うインクジェットプリンタのインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本実施形態に係るインクジェット印刷方法には、インク中の顔料の含有率の低いインクを小さい体積で多数射出して画質を改良する方法;実質的に同じ色相で、インク中の顔料の含有率が異なる複数のインクを用いて画質を改良する方法;無色透明のインクと、顔料を含有するインクとを併用することにより、印刷メディアに対する顔料の定着性を向上させる方法;等も含まれる。
インクジェット印刷方式としては、公知の方式を採用することができる。その一例としては、例えば、電荷制御方式、ドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式ともいう。)、音響インクジェット方式、サーマルインクジェット方式等が挙げられる。また、インクジェット印刷方式は、マルチパス方式及びシングルパス方式(1パス印刷方式)のいずれであってもよい。産業用インクジェットプリンタにおいては、印刷速度を高速にする目的で、ラインヘッド型のインクジェットプリンタを用いたシングルパスでの印刷も好ましく行われる。
印刷メディアに印刷するときは、例えば、インクを含有する容器(インクタンク)をインクジェットプリンタの所定の位置に装填し、上記の印刷方法で印刷メディアに印刷する。なお、各色のインクを含有する容器をインクジェットプリンタの所定の位置に装填し、上記の印刷方法で印刷メディアに印刷することにより、フルカラーの印刷を実現することもできる。
インク受容層を有しない印刷メディアを用いるときは、色材の定着性等を向上させる目的で、印刷メディアに表面改質処理を施すことも好ましく行われる。表面改質処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理等が挙げられる。表面改質処理の効果は、経時的に減少していくことが一般的に知られている。このため、表面改質処理工程とインクジェット印刷工程とを連続して行うことが好ましく、表面改質処理工程をインクジェット印刷工程の直前に行うことがより好ましい。
上述した全ての事項について、好ましいもの同士の組み合わせはより好ましく、より好ましいもの同士の組み合わせはさらに好ましい。好ましいものとより好ましいものとの組み合わせ、より好ましいものとさらに好ましいものとの組み合わせ等についても同様である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、実施例により限定されるものではない。
実施例においては、特に断りのない限り、「部」は質量部を、「%」は質量%をそれぞれ意味する。また、分散液中の顔料固形分の定量が必要なときは、(株)エイ・アンド・デイ製のMS-70を用い、乾燥重量法により求めた。顔料固形分は、固形分の全量から、顔料固形分のみを算出した換算値である。
<調製例1:顔料分散液DP1の調製>
国際公開第2013/115071号の合成例3を追試することにより、ブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体の酸価は105mgKOH/g、質量平均分子量は25000であった。得られたブロック共重合体(6部)を2-ブタノン(30部)に溶解させ、均一な溶液とした。この液に、28%アンモニア水溶液(0.68部)をイオン交換水(53部)に溶解させた液を加え、1時間撹拌して乳化液を得た。この乳化液にC.I.Pigment Blue 15:4(大日精化工業(株)製、CHROMOFINE BLUE 4851)(20部)を加え、1500rpmの条件下で15時間、サンドグラインダー中で分散処理を行った。得られた液にイオン交換水(100部)を滴下し、濾過して分散用ビーズを取り除いた後、エバポレータで2-ブタノン及び水の一部を減圧留去し、顔料固形分12%の顔料分散液を得た。得られた顔料分散液を「DP1」とする。
<調製例2:顔料分散液DP2の調製>
BYKJET 9151(BYK社製)(8部)をイオン交換水(72部)に溶解し、1時間撹拌した。得られた溶液にC.I.Pigment Blue 15:4(大日精化工業(株)製、Chromofine blue 4851)(20部)を加え、1500rpmの条件下で15時間、サンドグラインダー中で分散処理を行った。得られた液にイオン交換水(70部)を滴下し、濾過して分散用ビーズを取り除くことにより、顔料固形分11.6%の顔料分散液を得た。得られた顔料分散液を「DP2」とする。
<調製例3:顔料分散液DP3の調製>
Joncyrl 68(BASF社製、質量平均分子量:13000)(9部)及びトリエタノールアミン(6部)をイオン交換水(75部)に溶解し、1時間撹拌した。得られた溶液にC.I.Pigment Blue 15:4(大日精化工業(株)製、Chromofine blue 4851)(30部)を加え、1500rpmの条件下で15時間、サンドグラインダー中で分散処理を行った。得られた液にイオン交換水(40部)を滴下し、濾過して分散用ビーズを取り除くことにより、顔料固形分18.7%の顔料分散液を得た。得られた顔料分散液を「DP3」とする。
<実施例1~19及び比較例1~8>
下記表1~4に記載の各成分を混合した後、孔径3μmのメンブランフィルターで濾過することにより、実施例1~19及び比較例1~8の各インクを得た。表1~4中の各成分の欄の数値はその成分の使用量(部)を表し、「-」はその成分を使用していないことを意味する。また、表4の表面張力の欄の「-」はインクの非相溶性により表面張力測定が不可能であったことを意味し、対PET界面張力の欄の「-」は有機化合物が非含有であることを意味する。
下記表1~4中の略号等は、それぞれ下記を表す。
DP1:調製例1で得た顔料分散液
DP2:調製例2で得た顔料分散液
DP3:調製例3で得た顔料分散液
1,4-BD:1,4-ブタンジオール(東京化成工業(株)製)
1,5-PD:1,5-ペンタンジオール(東京化成工業(株)製)
BDG:ジエチレングリコールモノブチルエーテル(東京化成工業(株)製)
PnP:プロピレングリコールモノプロピルエーテル(ダウ・ケミカル社製)
DEGBME:ジエチレングリコールブチルメチルエーテル(東京化成工業(株)製)
EGmBz:エチレングリコールモノベンジルエーテル(東京化成工業(株)製)
1,8-OD:1,8-オクタンジオール(東京化成工業(株)製)
DEGmBz:ジエチレングリコールモノベンジルエーテル(東京化成工業(株)製)
DEGPh:ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(日本乳化剤(株)製)
1,9-ND:1,9-ノナンジオール(東京化成工業(株)製)
EGPh:エチレングリコールモノフェニルエーテル(東京化成工業(株)製)
1,2-HepD:1,2-ヘプタンジオール(東京化成工業(株)製)
DPnB:ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(ダウ・ケミカル社製)
PnB:プロピレングリコールモノブチルエーテル(ダウ・ケミカル社製)
SF440:界面活性剤(EVONIK社製、サーフィノール440)
DEGHE:ジエチレングリコールモノへキシルエーテル(日本乳化剤(株)製)
Figure 2023055811000001
Figure 2023055811000002
Figure 2023055811000003
Figure 2023055811000004
<評価>
[相溶性評価]
実施例1~19及び比較例1~8の組成のうち顔料分散液以外の材料を含む混合液を調製し、混合液の相溶性を評価した。結果を下記表5~7に示す。
-相溶性評価基準-
A:均一であり完全に混合している状態
B:液面に油滴はないが、懸濁しており、完全には溶解していない状態
C:混合液の液面に油滴が浮いており、完全には溶解していない状態
D:混合液中の成分が分離しており、全く溶解していない状態
[接触角測定]
PETフィルム(東洋紡(株)製、E5102)を基材として使用し、上記で得た各インクとPETフィルムとの接触角を測定し、下記評価基準に従って評価した。具体的には、接触角計としてDM-501Hi(協和界面科学(株)製)を使用し、液滴量を2μLとして、インク着弾10秒後の接触角を25℃で測定した。結果を下記表5~7に示す。接触角の数値が低い程、PETフィルムに対してインクがよく濡れ広がっていることを意味するため、下記評価基準がB以上であることが実用上好ましい。下記表7中、「-」は、インク材料が混合しないため、インクとしての評価が不可であったことを示す。
-接触角評価基準-
A:接触角≦18°
B:18°<接触角≦20°
C:20°<接触角≦22°
D:22°<接触角
Figure 2023055811000005
Figure 2023055811000006
Figure 2023055811000007
上記表5~7に示すとおり、実施例1~19のインクは、比較例1~8のインクに比べてPETフィルムに対する濡れ性に優れており、相溶性についても同等以上であった。この結果から、実施例1~19のインクは、濡れ性及び相溶性を兼ね備えた優れたインクであることが分かる。

Claims (6)

  1. 顔料、水溶性有機溶剤、及び有機化合物(但し、前記顔料及び前記水溶性有機溶剤を除く。)を含有し、下記(1)~(3)のいずれかの条件を満たし、且つ、25℃における表面張力が43.1mN/m以下である、インクジェット用インク。
    (1)前記水溶性有機溶剤のlogP値が-5.420を超え、且つ、1.258未満であり、
    1質量部の前記有機化合物と9質量部の1,4-ブタンジオールと90質量部の精製水とを混合した混合液をPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに接触させたときの該混合液とPETフィルムとの間の25℃における界面張力を、前記有機化合物の対PET界面張力と定義したとき、前記有機化合物の対PET界面張力が15.50mN/m以下であり、
    前記インクジェット用インクに含有される前記水溶性有機溶剤の総質量を(A)とし、前記有機化合物の総質量を(B)としたとき、(B)/(A)で求められる値が0.005~1である。
    (2)前記有機化合物が、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、及びジエチレングリコールモノフェニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種である。
    (3)前記有機化合物がC7-C9の1,2-アルカンジオールであり、
    前記インクジェット用インクに含有される前記水溶性有機溶剤の総質量を(A)とし、1,2-アルカンジオールの総質量を(C)としたとき、(C)/(A)で求められる値が0.4未満である。
  2. 前記有機化合物の対PET界面張力が14.00mN/m以下である、請求項1に記載のインクジェット用インク。
  3. 前記有機化合物の対PET界面張力が11.00mN/m以下である、請求項1に記載のインクジェット用インク。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載のインクジェット用インクと、該インクジェット用インクとは異なる他のインクジェット用インクとを備える、インクセット。
  5. 請求項1~3のいずれか1項に記載のインクジェット用インク、又は請求項4に記載のインクセットと、印刷メディアとを備える、インクメディアセット。
  6. 請求項1~3のいずれか1項に記載のインクジェット用インク、又は請求項4に記載のインクセットが備える各インクジェット用インクが付着した印刷メディア。
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