JP6958380B2 - 印刷方法、処理液とインクのセット、及び印刷装置 - Google Patents
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Description
本発明の印刷方法は、記録媒体上に処理液を付与する処理液付与工程と、前記記録媒体上にインクを付与するインク付与工程と、を含む印刷方法であって、前記処理液が、下記構造単位(a)−1を有するノニオン性樹脂を含有し、前記ノニオン性樹脂のガラス転移温度が、15℃以下であり、前記インクが、下記構造単位(a)−1を有するノニオン性樹脂と、色材と、を含有し、更に必要に応じてその他の工程を含む。
そこで、鋭意検討した結果、処理液中の前記ノニオン性樹脂のガラス転移温度が、15℃以下である場合に、印刷物における処理液の層の記録媒体とインクの層に対する密着性が更に向上し、爪で擦ってもインクが剥がれない優れた耐摩擦性を両立できる印刷物を得ることができることを見出し、本発明に至った。
前記処理液付与工程は、記録媒体上に処理液を付与する工程である。
前記処理液付与手段は、記録媒体上に処理液を付与する手段である。
前記処理液付与工程は、前記処理液付与手段により好適に実施することができる。
前記処理液は、下記構造単位(a)−1を有するノニオン性樹脂を含有し、前記ノニオン性樹脂のガラス転移温度が、15℃以下であり、有機溶媒と、水と、カチオン性樹脂及び多価金属塩の少なくともいずれかと、界面活性剤を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含む。
前記ノニオン性樹脂は、電荷を利用せずとも分散可能な樹脂である。
前記ノニオン性樹脂には、粒子状のノニオン性樹脂粒子を用いることが好ましい。
前記ノニオン性樹脂とは、処理液又はインクから遠心分離により固形分を単離後、例えば、熱分解GC−MS(装置名:GC−17A、株式会社島津製作所製)により、カルボキシル基、スルホ基等の酸性官能基、又はアミノ基等の塩基性官能基を含有するモノマーが検出されない樹脂粒子を意味する。
前記ノニオン性樹脂は、電荷を持たないため、電荷を有する凝集剤を処理液中に含んでいる場合においても、凝集剤がノニオン性樹脂を凝集することなく、均一で良好な定着性(耐摩擦性)に優れた印刷方法を提供できる。また、凝集剤が色材を凝集する効果を邪魔することなく、耐ビーディング性にも優れた印刷方法を提供できる。
前記構造単位(a)−1は、処理液又はインクから遠心分離により固形分を単離後、ノニオン性樹脂を精製し、赤外分光法(IR)、熱分解GC−MS(装置名:GC−17A、株式会社島津製作所製)、NMRにより検出することができる。
前記ノニオン性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、処理液又はインクから遠心分離により固形分を単離後、ノニオン性樹脂を精製し、例えば、DSC(示差走査型熱量計)により測定することができる。
前記市販品としては、例えば、商品名:スーパーフレックス500M(Tg:−39℃)、商品名:スーパーフレックスE2000(Tg:−38℃)(以上、第一工業製薬株式会社製)、商品名:ハイドランWLI−611(Tg:−15℃)(DIC株式会社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記市販品としては、例えば、商品名:スミカフレックス408HQE、商品名:スミカフレックス808HQ、商品名:スミカフレックス850HQ(Tg:30℃)(以上、住化ケムテックス株式会社製)、商品名:ビニブラン1225(日信化学工業株式会社製)などが挙げられる。
前記カチオン性樹脂は、インク中の着色剤との電荷的な作用によって会合し、着色剤の凝集体を形成して、着色剤を液相から分離し、記録媒体への定着を促進させることができる。また、前記処理液中にカチオン性樹脂を高濃度に含有することにより、インク吸収性の低い記録媒体を用いてもカールやビーディングを防止でき、高画質な画像を形成できる。
前記市販品としては、例えば、商品名:DK6810(星光PMC株式会社製)、商品名:カチオマスターPDT−2、商品名:カチオマスターPD−30(以上、四日市合成株式会社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記多価金属塩は、インク中の着色剤との電荷的な作用によって会合し、着色剤の凝集体を形成して、着色剤を液相から分離させ、記録媒体への定着を促進させるものであり、処理液中にカチオン性樹脂を高濃度に含有することで、インク吸収性の低い記録媒体を用いてもカールやビーディングを防止でき、高画質な画像を形成できる。
なお、多価金属塩はイオン性のものが好ましい。特に、上記多価金属塩がカルシウム塩である場合、反応液の安定性がより良好となる。
前記マグネシウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、珪酸マグネシウムなどが挙げられる。
前記バリウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫酸バリウムなどが挙げられる。
前記亜鉛化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫化亜鉛、炭酸亜鉛などが挙げられる。
前記アルミニウム化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、珪酸アルミニウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。
これらの中でも、潮解性による先塗り層の強度低下を防ぐ点から、酢酸カルシウムが好ましい。
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、エチル−1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
また、記録媒体への浸透性を高める点から、1,2−オクタンジオールを使用することが好ましい。
前記水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水;超純水などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記水の含有量としては、処理液全量に対して、60質量%以下が好ましく、30質量%以上50質量%以下がより好ましい。前記含有量が60質量%以下であると、水が蒸発した際の処理液の粘度上昇、ゲル化、不溶物の析出などの発生を抑制することができる。
前記界面活性剤は、処理液の表面張力を下げ、各種記録媒体への濡れ性を向上させ、処理液をムラなく塗布することができる効果を有する。前記界面活性剤は、処理液が適度に濡れやすくすることによって、各種記録媒体への浸透速度を速めることができ、定着性やブリードなどの不具合を改善することが可能となる。
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S−1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
(但し、一般式(S−1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF−618、KF−642、KF−643(信越化学工業株式会社)、EMALEX−SS−5602、SS−1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ−2105、FZ−2118、FZ−2154、FZ−2161、FZ−2162、FZ−2163、FZ−2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK−33、BYK−387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F−1)及び一般式(F−2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
上記一般式(F−1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0〜10の整数が好ましく、nは0〜40の整数が好ましい。
一般式(F−2)
CnF2n+1−CH2CH(OH)CH2−O−(CH2CH2O)a−Y
上記一般式(F−2)で表される化合物において、YはH、又はCmF2m+1でmは1〜6の整数、又はCH2CH(OH)CH2−CmF2m+1でmは4〜6の整数、又はCpH2p+1でpは1〜19の整数である。nは1〜6の整数である。aは4〜14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113、S−121、S−131、S−132、S−141、S−145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC−135、FC−170C、FC−430、FC−431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF−470、F−1405、F−474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN−100、FSN、FSO−100、FSO、FS−300、UR、キャプストーンFS−30、FS−31、FS−3100、FS−34、FS−35(いずれも、Chemours社製);FT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF−136A,PF−156A、PF−151N、PF−154、PF−159(オムノバ社製)、ユニダインDSN−403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS−3100、FS−34、FS−300、株式会社ネオス製のFT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF−151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN−403Nが特に好ましい。
前記界面活性剤がポリオキシアルキレンアルキルエーテルである場合の含有量としては、処理液全量に対して、0.5質量%以上3質量%以下が好ましく、1質量%以上2質量%以下がより好ましい。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抑泡剤、pH調整剤、抗菌剤、キレート試薬、防錆剤、酸化防止剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記処理液は、気泡による塗布ムラの発生防止のため抑泡剤を含有することができる。
前記抑泡剤としては、シリコーン系抑泡剤等、従来インクに用いられている抑泡剤を使用できるが、界面活性能が高く、少量で表面張力を低下できる界面活性剤、特に上記一般式(F−1)で表されるフッ素系界面活性剤を用いる場合には、気泡の発生を抑えるために、N−オクチル−2−ピロリドン、2,4,7,9−テトラメチルデカン−4,7−ジオール、及び2,5,8,11−テトラメチルドデカン−5,8−ジオールから選択される抑泡剤を用いることが好ましい。
前記処理液が酸性を示す場合は、塗布装置の金属部材等を腐食させることがあることから、長期間の使用による種々不具合防止のために、pH調整剤を含有することができる。
前記pH調整剤としては、例えば、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。pH調整剤の含有量は、前記処理液のpHが、4〜8になるように適宜調整することが好ましい。
前記抗菌剤としては、例えば、デヒドロ硫酸ナトリウム、ソルビタン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記キレート試薬としては、例えばエチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
前記防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記付着量が、0.1g/m2以上であると、画像品質を向上することができ、30.0g/m2以下であると、特にインク吸収性の低い記録媒体の場合には、処理液の乾燥性を向上でき、カールの発生を防止できる。
前記記録媒体としては、特に制限なく用いることができ、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることができる。本発明は表面にコーティングを施したコート紙や非浸透性基材などの低吸収性記録媒体に対して特に好適に用いることができる。
前記非浸透性基材とは、水透過性、吸収性及び/又は吸着性が低い表面を有する基材を意味し、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれ、より定量的には、ブリストー(Bristow)法において、接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である基材をいう。商業印刷に用いられるコート紙や、紙器等で用いられる古紙パルプを中層、裏層に配合し、表面にコーティングを施した板紙のような低吸収性の記録媒体は、本発明に用いる記録媒体として、特に効果が高い。
前記インク付与工程は、記録媒体上にインクを付与する工程である。
前記インク付与手段は、記録媒体上にインクを付与する手段である。
前記インク付与工程は、前記インク付与手段により好適に実施することができる。
前記インクは、下記構造単位(a)−1を有するノニオン性樹脂と、色材と、を含有し、有機溶媒と、水と、界面活性剤と、を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含む。
前記ノニオン性樹脂には、処理液におけるノニオン性樹脂と同様のものを用いることができる。
前記ノニオン性樹脂には、粒子状のノニオン性樹脂粒子を用いることが好ましい。
前記その他の樹脂粒子に用いられる樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられ、これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いてもよい。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。
前記市販品の樹脂粒子としては、例えば、商品名:マイクロジェルE−1002、商品名:E−5002(スチレン−アクリル系樹脂粒子、以上、日本ペイント株式会社製)、商品名:ボンコート4001(アクリル系樹脂粒子、DIC株式会社製)、商品名:ボンコート5454(スチレン−アクリル系樹脂粒子、DIC株式会社製)、商品名:SAE−1014(スチレン−アクリル系樹脂粒子、日本ゼオン株式会社製)、商品名:サイビノールSK−200(アクリル系樹脂粒子、サイデン化学株式会社製)、商品名:プライマルAC−22、商品名:プライマルAC−61(アクリル系樹脂粒子、以上、ローム・アンド・ハース社製)、商品名:ナノクリルSBCX−2821、商品名:ナノクリル3689(アクリル−シリコーン系樹脂粒子、以上、東洋インキ株式会社製)、商品名:#3070(メタクリル酸メチル重合体樹脂粒子、御国色素株式会社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記有機溶剤としては、処理液における有機溶剤と同様のものを用いることができる。これらの中でも、グリセリン、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオールが好ましい。これらは溶解性と水分蒸発による噴射特性不良の防止に対して優れた効果を奏する。また、保存安定性及び吐出安定性に優れたインクを作製することができる。
また、前記記録媒体への浸透性を高める点から、1,2−オクタンジオールを使用することが好ましい。
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
竹本油脂社製RT−100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
前記インクは、前記処理液と同様に、必要に応じて界面活性剤その他微量添加剤などを添加してもよく、具体例も上述のとおりである。
前記界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などが挙げられ、前記処理液に使用できる界面活性剤を使用できるが、フッ素系界面活性剤が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。単独ではインク中に容易に溶解しない場合でも、複数のものを混合することにより可溶化され、安定に存在することができる場合がある。これらの中でも、下記構造式(1)で表されるフッ素系界面活性剤がより好ましい。
前記撹拌混合としては、通常の撹拌羽を用いた撹拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機などを用いて行うことができる。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE−80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7〜12が好ましく、8〜11がより好ましい。
前記インクは、ノニオン性樹脂、着色剤、必要に応じて、その他の成分、例えば、有機溶媒、水、界面活性剤、その他の樹脂を水中に分散又は溶解し、更に必要に応じて撹拌混合して製造することができる。
前記分散は、例えば、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシャイカー、超音波分散機等により行うことができ、撹拌混合は通常の撹拌羽を用いた撹拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機などにより行うことができる。
インク付与手段(101)には、インクを吐出するヘッドを集積したヘッドユニット(110K、110C、110M、110Y)と、それぞれのヘッドユニットに対応し、ヘッドのメンテナンスを行うメンテナンスユニット(111K、111C、111M、111Y)、インクを供給するインクカートリッジ(107K、107C、107M、107Y)、カートリッジからのインクを一部貯蔵し、ヘッドに適切な圧力でインクを供給するサブインクタンク(108K、108C、108M、108Y)を備えている。
各ヘッドユニットのノズル列は、記録媒体(114)の搬送方向に直行するように配列されており、記録領域以上の長さのノズル列を形成している。給紙トレイから記録媒体(114)が分離コロにて一枚に分離され、加圧コロにて搬送ベルトに密着されることで搬送ベルト上に固定され、ヘッドユニット下を通過する際に記録媒体に液滴を吐出することで、高速に液滴にて記録媒体にパターンニングができ、分離爪にて搬送ベルトから分離され、排紙ローラと排紙コロにて支えられて排紙トレイに記録物が排出される。
何れの方式を用いても処理液を任意の位置に任意の量だけ塗布することができる。
ヘッドユニットはヘッド外周部材(160)にヘッド(154A)〜(154L)を固定しており、ヘッドはノズルの一部が重複するように千鳥配置で固定されている。
なお、処理液を記録媒体に塗布する形態としては、図7〜図9などの方式が挙げられる。
図9は2本ロールによる塗布方式について記載したものであり、吐出ヘッドから吐出された処理液(135)を塗布ローラ(401)及び膜厚制御ローラ(402)によって所定の膜厚に制御して記録媒体(114)に塗布する。また、塗布ローラ(401)上に残留した過剰の処理液は可動ブレード(134)にて回収される。なお、ここでは図示しないが、図9の搬送方向下部にはインクの吐出ヘッドが設けられている。
本発明の処理液とインクのセットは、下記構造単位(a)−1を有するノニオン性樹脂を含有し、前記ノニオン性樹脂のガラス転移温度が、15℃以下である処理液、及び下記構造単位(a)−1を有するノニオン性樹脂と、色材と、を含有するインクを有し、さらに必要に応じてその他の材料を有する。
前記インクとしては、印刷方法におけるインクと同様のものを用いることができる。
<ノニオン性ウレタン樹脂エマルションの調製>
1,6−ヘキサンジオール1モルに対して、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート1.4モル、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート三量体1モルに対して分子量1,000のポリエチレングリコールモノメチルエーテルを1/3モル反応させたジイソシアネート化合物0.1モル、及び15質量%のN−メチル−2−ピロリドンを反応フラスコに仕込み、窒素気流下で、90℃で2時間反応させてプレポリマーを得た。
<処理液1の調製>
グリセリン7.0質量%、1,3−ブタンジオール5.0質量%、1,2−オクタンジオール2.0質量%、カチオン性樹脂粒子(下記一般式(1)で表される構造単位を有する樹脂粒子、商品名:DK6810、星光PMC株式会社製)35.0質量%(固形分量)、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(商品名:エマルゲン103、花王株式会社製)0.4質量%、プロキセルLV(アビシア社製)0.1質量%、ベンゾトリアゾール0.1質量%、及びイオン交換水を添加し、1時間撹拌し均一に混合した。さらに、N−オクチル−2−ピロリドン1.2質量%を加えて更に1時間撹拌し均一に混合した。その後、ウレタン樹脂エマルション(第一工業製薬株式会社製、商品名:スーパーフレックスE2000、構造単位(a)−1を有する樹脂粒子、ガラス転移温度:−38℃)2.0質量%を加えて合計を100質量%とし、1時間撹拌して均一に混合した。
<処理液2〜24の調製>
処理液の調製例1において、下記表1〜4の組成に変更した以外は、処理液の調製例1と同様にして、処理液2〜24を得た。
・ウレタン樹脂エマルション:第一工業製薬株式会社製、商品名:スーパーフレックスE2000、構造単位(a)−1を有する樹脂粒子、Tg:−38℃
・ノニオン性ウレタン樹脂エマルジョン:DIC株式会社製、商品名:ハイドランWLI−611、構造単位(a)−1を有する樹脂、Tg:−15℃
・アニオン性ウレタン樹脂エマルション:三井化学株式会社製、商品名:タケラックW−5661、アニオン性樹脂エマルション
・カチオン性樹脂粒子1:星光PMC株式会社製、商品名:DK6810、下記一般式(1)で表される構造単位を有する樹脂、前記一般式(1)中、X−はCl−を表し、nは10〜13を表す。
・酢酸カルシウム1水和物:昭和化学工業株式会社製
・塩化カルシウム2水和物:昭和化学工業株式会社製
・硫酸マグネシウム(無水):昭和化学工業株式会社製
・塩化ニッケル6水和物:昭和化学工業株式会社製
・硫酸亜鉛(無水):昭和化学工業株式会社製
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル:花王株式会社製、商品名:エマルゲン103
・プロキセルLV:アビシア社製
<エチレン酢酸ビニル樹脂エマルションの調製>
窒素吹き込み口、温度計、及び撹拌機を備えた耐圧50リットルオートクレーブに商品名:PVA−217(重合度:1,700、けん化度:88モル%、株式会社クラレ製)を1,061g、イオン交換水19,440g、L(+)酒石酸ナトリウム12.7g、酢酸ナトリウム10.6g、及び塩化第一鉄0.4gを仕込み、95℃で完全に溶解し、その後60℃に冷却し、窒素置換を行った。次に、酢酸ビニル22,360gを仕込んだ後、エチレンを45kg/cm2まで加圧して導入し、0.4%過酸化水素水溶液1,000gを5時間かけて圧入し、60℃で乳化重合を行った。重合初期のpHを確認したところ、5.2であった。
得られたエチレン酢酸ビニル樹脂エマルションのガラス転移温度(Tg)をDSC(装置名:Thermo plus EVO2/DSC、リガク株式会社製)にて測定したところ0℃であった。
<顔料分散体1の調製>
−カルボキシル基含有樹脂の合成−
撹拌装置、滴下装置、温度センサ、及び上部に窒素導入装置を有する還流装置を取り付けた反応容器を有する自動重合反応装置(轟産業株式会社製:重合試験機DSL−2AS型)の反応容器にメチルエチルケトンを550g仕込み、撹拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃で加温した後、滴下装置によりメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル75.0g、メタクリル酸77.0g、スチレン80.0g、メタクリル酸ブチル150.0g、アクリル酸ブチル98.0g、メタクリル酸メチル20.0g、及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(商品名:パーブチルO、日本油脂株式会社製)40.0gの混合溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に同温度で15時間反応を継続させて、酸価:100mgKOH/g、重量平均分子量21,000、ガラス転移温度(Tg、計算値)31℃のアニオン性基含有スチレン−アクリル系共重合体Aのメチルエチルケトン溶液を得た。反応終了後、メチルエチルケトンの一部を減圧留去し、不揮発分を50質量%に調整した[共重合体A溶液]を得た。
冷却用ジャケットを備えた混合槽に、カーボンブラック(商品名:Raven1080、コロンビヤンカーボン日本株式会社製)を1,000g、前記[共重合体A溶液]800g、10%水酸化ナトリウム水溶液143g、メチルエチルケトン100g、及び水1,957gを仕込み、撹拌混合した。混合液を直径0.3mmのジルコニアビーズを充填した分散装置(三井鉱山株式会社製:SCミルSC100)に通し、循環方式(分散装置より出た分散液を混合槽に戻す方式)により6時間分散した。分散装置の回転数は2,700回転/分間とし、冷却用ジャケットには冷水を通して分散液温度が40℃以下に保たれるようにした。分散終了後、混合槽より分散原液を抜き取り、次いで、水10,000gで混合槽及び分散装置流路を洗浄し、分散原液と合わせて希釈分散液を得た。ガラス製蒸留装置に希釈分散液を入れ、メチルエチルケトンの全量と水の一部を留去した。室温まで冷却後、撹拌しながら10%塩酸を滴下してpH4.5に調整した後、固形分をヌッチェ式濾過装置(日本化学機械製造社製、加圧濾過機)で濾過、水洗した。ケーキを容器に取り、20%水酸化カリウム水溶液200gを加えた後、ディスパ(特殊機化工業株式会社製、TKホモディスパー)にて分散し、更に水を加えて不揮発分を調整して、不揮発分20質量%のカーボンブラックが水酸化カリウム中で中和されたカルボキシル基含有スチレン−アクリル系共重合体で被覆された複合粒子として水性媒体中に分散した[水性顔料分散体1]を得た。
<顔料分散体2の調製>
顔料分散体の調製例1において、カーボンブラックを銅フタロシアニン(大日精化工業株式会社製、SEIKALIGHT BLUE A612)に変更した以外は、顔料分散体の調製例1と同様にして、[水性顔料分散体2(シアン)]を得た。
<インク1の調製例>
グリセリン22.0質量%、1,3−ブタンジオール11.0質量%、1,2−オクタンジオール2.0質量%、フッ素系界面活性剤(商品名:FS−300、DuPont社製)0.4質量%、2,4,7,9−テトラメチルデカン−4,7−ジオール1.1質量%、プロキセルLV(アビシア社製)0.1質量%、及び2−アミノ−2−エチル−1、3−プロパンジオール0.5質量%、及びイオン交換水を1時間撹拌し均一に混合し、ノニオン性ウレタン樹脂エマルション(構造単位(a)−1を有する樹脂粒子、ガラス転移温度:−20℃)2.0質量%を加えて更に1時間撹拌し均一に混合した後、水性顔料分散体1(固形分量)8.0質量%を加えて更に1時間撹拌し均一に混合した。この混合物を平均孔径が0.8μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにより加圧濾過し、粗大粒子やゴミを除去してインク1を得た。
<インク2〜14の調製>
インクの調製例1において、下記表5〜6の組成に変更した以外は、インクの調製例1と同様にして、インク2〜14を得た。
・酢酸ビニル−アクリル樹脂エマルション:住化ケムテックス株式会社製、Tg:30℃
・ポリエステル樹脂:ユニチカ株式会社製、商品名:エリーテルKA−5034、Tg:67℃
・アクリル樹脂:DIC株式会社製、商品名:ボンコートCF−6140、Tg:12℃
・フッ素系界面活性剤:DuPont社製、商品名:FS−300
処理液1と、インク1と、を組み合わせて処理液とインクのセット1とした。
処理液1を、20mLのガラス瓶に入れ、60℃の恒温槽内に2週間放置し、25℃で粘度計(装置名:SV−10、株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて、初期粘度と、2週間保存後の粘度と、を測定し、初期粘度と2週間保存後の粘度との差(粘度上昇レベル(粘度変化率))を算出し、下記評価基準に基づいて、「保存安定性」を評価した。△以上であると、実使用上、好適に使用することができる。
[評価基準]
○:初期粘度からの粘度変化率が、1%未満
△:初期粘度からの粘度変化率が、1%以上5%以下
×:初期粘度からの粘度変化率が、5%を超えているか、凝集物が発生している
処理液1を株式会社小林製作所製のワイヤーバー(巻線径:0.05mm)を用いて、記録媒体(商品名:New−DV(特殊白板紙)、北越紀州製紙株式会社製)へ塗布量が2g/m2となるように均一に塗布した。
ドットパターンで形成された3cm四方のベタ画像のベタ部を、目視により観察し、下記評価基準に基づいて、「耐ビーディング性」を評価した。数値が大きいほど耐ビーディング性が良好である。ランク3以上であると、実使用上、好適に使用することができる。
[評価基準]
ランク5:ビーディングは見られない
ランク4:極微量のビーディングが見られるが問題ない(凝視しないと分からないレベル)
ランク3:ややビーディングが見られるが問題ない
ランク2:ビーディングが見られ、目視で明らかに分かるレベル(問題となるレベル)
ランク1:激しいビーディングが見られる(処理液未塗布と同レベル)
ドットパターンで形成された3cm四方のベタ画像のベタ部を、爪で擦った後の画像品質を、目視により観察し、下記評価基準に基づいて、「耐摩擦性(爪スクラッチ)」を評価した。○以上であると、実使用上、好適に使用することができる。
[評価基準]
◎:爪スクラッチで傷が発生せず、画像濃度の変化がほぼ見られない。
○:爪スクラッチで傷が発生せず、画像濃度が変化する
△:爪スクラッチで微小な傷が僅かに発生する。
×:爪スクラッチで傷が明確に発生する。
実施例1において、処理液1とインク1のセットを、下記表7の処理液とインクのセットとした。得られた処理液とインクのセットを用いて、実施例1と同様にして、「保存安定性」、「耐ビーディング性」、及び「耐摩擦性」を評価した。結果を下記表7に示す。
<1> 記録媒体上に処理液を付与する処理液付与工程と、
前記記録媒体上にインクを付与するインク付与工程と、を含む印刷方法であって、
前記処理液が、下記構造単位(a)−1を有するノニオン性樹脂を含有し、前記ノニオン性樹脂のガラス転移温度が、15℃以下であり、
前記インクが、下記構造単位(a)−1を有するノニオン性樹脂と、色材と、を含有することを特徴とする印刷方法である。
<3> 前記処理液がカチオン性樹脂及び多価金属塩の少なくともいずれかを含む前記<1>から<2>のいずれかに記載の印刷方法である。
<4> 前記処理液中の前記多価金属塩が、カルシウム塩、マグネシウム塩、及びニッケル塩から選択される少なくとも1種である前記<3>に記載の印刷方法である。
<5> 前記処理液全量に対する前記処理液中の前記ノニオン性樹脂の含有量が、0.5質量%以上15質量%以下である前記<1>から<4>のいずれかに記載の印刷方法である。
<6> 前記処理液中の前記多価金属塩の濃度が、0.05モル/kg以上0.5モル/kg以下である前記<3>から<5>のいずれかに記載の印刷方法である。
<7> 前記処理液全量に対する前記処理液中の前記カチオン性樹脂の含有量が、1質量%以上50質量%以下である前記<3>から<6>のいずれかに記載の印刷方法である。
<8> 前記処理液中の前記カチオン性樹脂が、下記一般式(1)又は一般式(2)で表される構造単位を有する前記<3>から<7>のいずれかに記載の印刷方法である。
<10> 前記インク及び前記処理液が、有機溶剤を含み、前記有機溶剤が、1,3−ブタンジオールを含む前記<1>から<9>のいずれかに記載の印刷方法である。
<11> 前記処理液中の前記ノニオン性樹脂のガラス転移温度が、0℃以下である前記<1>から<10>のいずれかに記載の印刷方法である。
<12> 前記多価金属塩が、チタン化合物塩、クロム化合物塩、銅化合物塩、コバルト化合物塩、ストロンチウム化合物塩、バリウム化合物塩、鉄化合物塩、アルミニウム化合物塩、カルシウム化合物塩、マグネシウム化合物塩、亜鉛化合物塩、及びニッケル化合物塩から選択される少なくとも1種である前記<3>から<11>のいずれかに記載の印刷方法である。
<13> 前記多価金属塩が、カルシウム化合物塩、マグネシウム化合物塩、及びニッケル化合物塩から選択される少なくとも1種である前記<12>に記載の印刷方法である。
<14> 前記多価金属塩が、カルシウム化合物塩である前記<13>に記載の印刷方法である。
<15> 前記インクは、前記処理液が付与された領域に付与する前記<1>から<14>のいずれかに記載の印刷方法である。
<16> 下記構造単位(a)−1を有するノニオン性樹脂を含有し、前記ノニオン性樹脂のガラス転移温度が、15℃以下である処理液、及び
下記構造単位(a)−1を有するノニオン性樹脂と、色材と、を含有するインクを有することを特徴とする処理液とインクのセットである。
<18> 前記処理液全量に対する前記処理液中の前記ノニオン性樹脂の含有量が、0.5質量%以上15質量%以下である前記<16>から<17>のいずれかに記載の処理液とインクのセットである。
<19> 記録媒体と、
インクと、
前記記録媒体上に処理液を付与する処理液付与手段と、
前記記録媒体上に前記インクを付与するインク付与手段と、を有する印刷装置であって、
前記処理液が、下記構造単位(a)−1を有するノニオン性樹脂を含有し、前記ノニオン性樹脂のガラス転移温度が、15℃以下であり、
前記インクが、下記構造単位(a)−1を有するノニオン性樹脂と、色材と、を含有することを特徴とする印刷装置である。
下記構造単位(a)−1を有するノニオン性樹脂と、色材と、を含有するインクと、
を有し、前記処理液に含まれる前記ノニオン性樹脂のガラス転移温度(Tg)が、前記インクに含まれる前記ノニオン性樹脂のガラス転移温度(Tg)以下であることを特徴とする処理液とインクのセット。
130 インク
Claims (13)
- 前記インク中の前記ノニオン性樹脂のガラス転移温度が、20℃以下である請求項1に記載の印刷方法。
- 前記処理液がカチオン性樹脂及び多価金属塩の少なくともいずれかを含む請求項1から2のいずれかに記載の印刷方法。
- 前記処理液中の前記多価金属塩が、カルシウム塩、マグネシウム塩、及びニッケル塩から選択される少なくとも1種である請求項3に記載の印刷方法。
- 前記処理液全量に対する前記処理液中の前記ノニオン性樹脂の含有量が、0.5質量%以上15質量%以下である請求項1から4のいずれかに記載の印刷方法。
- 前記処理液中の前記多価金属塩の濃度が、0.05モル/kg以上0.5モル/kg以下である請求項3から5のいずれかに記載の印刷方法。
- 前記処理液全量に対する前記処理液中の前記カチオン性樹脂の含有量が、1質量%以上50質量%以下である請求項3から6のいずれかに記載の印刷方法。
- 前記インク全量に対する前記インク中の前記ノニオン性樹脂の含有量が、0.5質量%以上20質量%以下である請求項1から7のいずれかに記載の印刷方法。
- 前記インク及び前記処理液が、有機溶剤を含み、前記有機溶剤が、1,3−ブタンジオールを含む請求項1から8のいずれかに記載の印刷方法。
- 前記インクは、前記処理液が付与された領域に付与する請求項1から9のいずれかに記載の印刷方法。
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