JP2022155890A - インク、インクメディアセット及び耐擦性の向上方法 - Google Patents

インク、インクメディアセット及び耐擦性の向上方法 Download PDF

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Abstract

【課題】インク難吸収性の印刷メディア、特にオフセットコート紙等のコート紙に使用したときに、爪などの擦過痕がついたとしても、塗膜のぎらつきの変化が少ない、保存安定性に優れたインク、インクと印刷メディアのインクメディアセット、及びその耐擦性の向上方法の提供。【解決手段】顔料、分散染料、溶剤染料からなる群から選択される水不溶性の着色剤、重量平均分子量が50000未満である分散剤としての樹脂、重量平均分子量が50000以上である少なくとも1種類以上の樹脂エマルション、及び、粒子径が3nm以上35nm未満であるシラン修飾シリカゾルを含む、インク組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、インク、インクメディアセット及び耐擦性の向上方法に関する。
各種のカラー印刷方法の中で、インクジェットプリンタを用いる印刷方法(インクジェット印刷方法)は、代表的な方法の1つである。この方法は、インクの小滴を発生させ、これを紙等の印刷メディアに付着させ印刷を行う。インクジェット技術の進歩により、銀塩写真やオフセット印刷によって実現されてきた高精細な印刷の分野においても、インクジェット印刷方法が用いられるようになってきた。そのような分野においては、印刷メディアとしてコート紙のような、インク難吸収性の印刷メディアが多用されている。
また、近年では産業用インクジェット印刷の需要が高まり、これまでとは異なる特性が要求されるようになっている。そのような特性の1つとして、印刷メディアに付着したインクの耐擦性の向上が強く要望されている。
例えば、インクジェットプリンタを用いてコート紙に印刷をして、得られた印字物を爪などで線擦過すると、線擦過した箇所のみ、塗膜が押し付けられて表面が平滑になる。結果として、線擦過した箇所のみ光がより強く鏡面反射され、ぎらつきが生じる。線擦過した箇所だけがぎらついてしまうことで、印字物全体の見栄えが悪くなるため、印刷品質が低下してしまう。従って、爪などの擦過痕がついたとしても、塗膜のぎらつきの変化が少ないインクが強く要望されている。
塗膜のぎらつきを抑制する手法としては、印刷前のコート紙に前処理剤を塗布することや、印刷後のコート紙にオーバーコート剤を塗布することが挙げられる。しかし、印刷コスト抑制や印刷スピード向上、工程追加による装置の大型化を考慮すると、前処理剤やオーバーコート剤を利用することなく、先に述べた耐擦性が得られることが望ましい。
特許5273434号公報 特許4679322号公報 WO2016/035787
本発明は、インク難吸収性の印刷メディア、特にオフセットコート紙に使用したときに、爪などの擦過痕がついたとしても、塗膜のぎらつきの変化が少ないインクジェット印刷用水性インク組成物、インクと印刷メディアのインクメディアセット、及びその耐擦性の向上方法の提供を課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、 顔料、分散染料、溶剤染料からなる群から選択される水不溶性の着色剤、重量平均分子量が50000未満である分散剤としての樹脂、重量平均分子量が50000以上である少なくとも1種類以上の樹脂エマルション、及び、粒子径が3nm以上35nm未満であるシラン修飾シリカゾルを含む、インク組成物が、上記の課題を解決でき、かつインクの保存安定性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下の1)~7)に関する。
1)
顔料、分散染料、溶剤染料からなる群から選択される水不溶性の着色剤、重量平均分子量が50000未満である分散剤としての樹脂、重量平均分子量が50000以上である少なくとも1種類以上の樹脂エマルション、及び、粒子径が3nm以上35nm未満であるシラン修飾シリカゾルを含む、インク組成物。
2)
上記樹脂エマルションが、アクリル樹脂エマルション及び酸化ポリエチレン樹脂エマルションを含む、1)に記載のインク組成物
3)
上記樹脂エマルションの、インク組成物中における固形分総量が、0.6質量%以上6.0質量%以下である、1)または2)に記載のインク組成物。
4)
1)~3)のいずれか一項に記載のインク組成物と、他のインク組成物と、を含むインク組成物セット。
5)
1)~3)のいずれか一項に記載のインク組成物、又は、4)に記載のインク組成物セットを用い印刷された、印刷メディア。
6)
1)~3)のいずれか一項に記載のインク組成物、又は、4)に記載のインク組成物セットと、5)に記載の印刷メディアと、のインクメディアセット。
7)
1)~3)のいずれか一項に記載のインク組成物、又は、4)に記載のインク組成物セットを使用した、耐擦性の向上方法。
本発明により、インク難吸収性の印刷メディア、特にオフセットコート紙等のコート紙に前処理剤やオーバーコート剤を塗布することなく、爪などの擦過痕がついたとしても塗膜のぎらつきの変化が少ないインクジェット印刷用水性インク組成物、インクメディアセット及び耐擦性の向上方法を提供できた。
本明細書において、「C.I.」とは、「カラーインデックス」を意味する。また、本明細書においては、実施例等も含めて「%」及び「部」は、特に断りのない限り、いずれも質量基準で記載する。
また、本明細書において「アルキレン」、「プロピレン」、「アルキル」の用語は、特に断りのない限り、直鎖、及び分岐鎖の両方の構造を包含する意味で使用する。また、質量%の値で、小数点を有する値で記載しているものは、小数点以下2桁目までを有効とし、小数点以下2桁目の数値を四捨五入し、小数点以下1桁目までを記載する。
上記インク組成物は、顔料、分散染料、溶剤染料からなる群から選択される水不溶性の着色剤、重量平均分子量が50000未満である分散剤としての樹脂、重量平均分子量が50000以上である少なくとも1種類以上の樹脂エマルション、及び、粒子径が3nm以上35nm未満であるシラン修飾シリカゾルを含む。なお、本明細書中においてインク組成物をインクと略記することがある。
[顔料、分散染料、溶剤染料からなる群から選択される水不溶性の着色剤]
上記顔料、分散染料、溶剤染料からなる群から選択される水不溶性の着色剤は、顔料、分散染料、溶剤染料から選択される水不溶性の着色剤であれば特に限定されない。例えば、公知の顔料、分散染料、及び溶剤染料等が使用できる。本明細書において水不溶性の着色剤とは、25℃の水1リットルに対する溶解度が通常5g以下、好ましくは3g以下、より好ましくは1g以下、さらに好ましくは0.5g以下の着色剤を意味する。溶解度の下限は0gを含む。
なお、本明細書においては特に断りのない限り、「顔料、分散染料、溶剤染料から選択される水不溶性の着色剤」を、「着色剤」と略記することがある。
着色剤は併用することができる。着色剤を併用する場合、上記インクが黒インク以外のカラーインクの場合は2種類以上用いることが、黒インクの場合は3~5種類用いることがそれぞれ好ましい。
但し、黒インクが着色剤としてカーボンブラックを含有する場合、上記着色剤の種類は2種類、又は1種類が好ましい。本明細書において、カラーインクとは、黒インク以外の有色インク(例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、レッド、オレンジ、ブラウン、バイオレット、ブルー、グリーン等の各色のインク)を指す。
また、顔料、分散染料、及び溶剤染料の中では顔料が好ましい。顔料としては、無機顔料、有機顔料が挙げられる。
上記無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物、水酸化物、硫化物、フェロシアン化物、及び金属塩化物等が挙げられる。
上記黒インクが含有する着色剤としては、例えば、サーマルブラック、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック、ランプブラック、ガスブラック、及びチャンネルブラック等のカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの具体例としては、例えば、コロンビア・カーボン社製のRavenシリーズ;キャボット社製のMonarchシリーズ、Regalシリーズ、及びMogulシリーズ;オリオンエンジニアドカーボンズ社製のColorBlackシリーズ、Printexシリーズ、SpecIalBlackシリーズ、及びNeroxシリーズ;三菱化学社製のMAシリーズ、MCFシリーズ、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、及びNo.2300等が挙げられる。
上記有機顔料としては、例えば、アゾ、ジスアゾ、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリノン、ジオキサジン、ペリレン、ペリノン、チオインジゴ、アンソラキノン、及びキノフタロン等の各種の顔料が挙げられる。
有機顔料としては、公知の有機顔料が挙げられる。公知の有機顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、24、55、73、74、75、83、93、94、95、97、98、108、114、128、129、138、139、150、151、154、180、185、193、199、202、213等のイエロー;C.I.Pigment Red 5、7、12、48、48:1、57、88、112、122、123、146、149、150、166、168、177、178、179、184、185、202、206、207、254、255、257、260、264、269、272等のレッド;C.I.Pigment Blue 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、25、60、66、80等のブルー;C.I.Pigment Violet 19、23、29、37、38、50等のバイオレット;C.I.Pigment Orange 13、16、43、68、69、71、73等のオレンジ;C.I.Pigment Green7、36、54等のグリーン;C.I.Pigment Black 1等のブラックの各色の顔料が挙げられる。
分散染料としては、公知の分散染料が挙げられる。それらの中ではC.I.Dispersから選択される染料が好ましい。その具体例としては、例えば、C.I.Dispers Yellow 9、23、33、42、49、54、58、60、64、66、71、76、79、83、86、90、93、99、114、116、119、122、126、149、160、163、165、180、183、186、198、200、211、224、226、227、231、237等のイエロー;C.I.Dispers Red 60、73、88、91、92,111、127、131、143、145、146、152、153、154、167、179、191、192、206、221、258、283等のレッド;C.I.Dispers Orange 9、25、29、30、31、32、37、38、42、44、45、53、54、55、56、61、71、73、76、80、96、97等のオレンジ;C.I.Dispers Violet 25、27、28、54、57、60、73、77、79、79:1等のバイオレット;C.I.Dispers Blue 27、56、60、79:1、87、143、165、165:1、165:2、181、185、197、202、225、257、266、267、281、341、353、354、358、364、365、368等のブルーの各色の分散染料が挙げられる。
また、溶剤染料としてはC.I.Solventから選択される染料が好ましい。
上記インクの総質量中における、着色剤の総含有量は通常1~30%、好ましくは1~10%、より好ましくは2~7%である。
また、着色剤の平均粒径は通常50nm~250nm、好ましくは60nm~200nmである。本明細書において平均粒径とは、レーザ光散乱法を用いて測定した粒子の平均粒径を言う。
[分散剤としての樹脂]
上記分散剤としての樹脂としては、例えば、スチレン及びその誘導体;ビニルナフタレン及びその誘導体;α,β-エチレン性不飽和性カルボン酸の脂肪族アルコールエステル;アクリル酸及びその誘導体;マイレン酸及びその誘導体;イタコン酸及びその誘導体;ファール酸及びその誘導体;酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びそれらの誘導体等よりなる群の単量体から選択される、少なくとも2つの単量体(好ましくは、このうち少なくとも1つが親水性の単量体)から構成される共重合体が挙げられる。そのような共重合体としては、例えば、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体等が挙げられる。
これらの中ではスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート-(メタ)アクリル酸共重合体が好ましく;スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体がより好ましく;(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体がさらに好ましく;メタクリル酸エステル-メタクリル酸共重合体が特に好ましい。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル」の用語は、「アクリル」と「メタクリル」の両方を含む意味で用いる。「(メタ)アクリレート」等も同様である。
共重合体の種類としては、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体及びグラフト共重合体、及び/又はそれらの塩等が挙げられる。
分散剤としての樹脂は合成することも、市販品として入手することもできる。市販品の具体例としては、例えば、いずれもジョンソンポリマー社製のジョンクリル62、67、68、678、及び687等のスチレン-アクリル系共重合体;モビニールS-100A(ヘキスト合成社製の変性酢酸ビニル共重合体);ジュリマーAT-210(日本純薬株式会社製のポリアクリル酸エステル共重合体)等が挙げられる。
合成により得られる共重合体としては、国際公開第2013/115071号ガゼットに開示されたA-Bブロックポリマーが好ましく挙げられる。
上記分散剤としての樹脂の重量平均分子量(MW)は、50000未満であり、3000以上50000未満であることが好ましく、さらに好ましくは7000~25000である。また、上記分散剤としての樹脂の酸価としては、50~300KOHmg/gであることが好ましく、さらに好ましくは80~275KOHmg/g、特に好ましくは80~250KOHmg/gである。
上記分散剤としての樹脂は、着色剤と混合した状態;又は、着色剤の表面の一部、若しくは全てを分散剤としての樹脂で被覆した状態のいずれとしても使用することができる。また、これらの両方の状態を併用することもできる。
上記インクは、水不溶性の着色剤と分散剤としての樹脂を含有する分散液を調製した後、他の成分と混合して調製するのが好ましい。分散液の調製方法は、公知の方法を使用することができる。その一例としては、転相乳化法が挙げられる。すなわち、2-ブタノン等の有機溶剤に分散剤としての樹脂を溶解し、中和剤の水溶液を加えて乳化液を調製する。得られた乳化液に着色剤を加えて分散処理を行う。このようにして得られた液から有機溶剤と一部の水を減圧留去することにより、目的とする分散液を得ることができる。
分散処理は、例えば、サンドミル(ビーズミル)、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、マイクロフルイダイザー等を用いて行うことができる。一例として、サンドミルを用いるときは、粒子径が0.01mm~1mm程度のビーズを使用し、ビーズの充填率を適宜設定して分散処理を行うことができる。
上記のようにして得られた分散液に対して、ろ過及び/又は遠心分離等の操作をすることができる。この操作により、分散液が含有する粒子の粒子径の大きさを揃えることができる。
分散液の調製中に泡立ちが生じるときは、公知のシリコン系、アセチレングリコール系等の消泡剤を極微量加えることができる。
上記以外の分散液の調製方法としては、酸析法、界面重合法、in-situ重合法、液中硬化被膜法、コアセルベーション(相分離)法、液中乾燥法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等が挙げられる。これらの中では転相乳化法、酸析法、及び界面重合法が好ましい。
分散液中における水不溶性の着色剤の平均粒径(D50)は通常300nm以下、好ましくは30~280nm、より好ましくは40~270nm、さらに好ましくは50~250nmである。
また、同様にD90は通常400nm以下、好ましくは350nm以下、より好ましくは300nm以下である。下限は100nm以上が好ましい。
同様にD10は通常10nm以上、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上、上限は100nm以下である。
粒径は、レーザ光散乱を用いて測定できる。
[樹脂エマルション]
前記樹脂エマルションは、重量平均分子量(MW)は50000以上であり、ポリマー及びワックスから選択される、1種類以上を含むことが好ましい。
前記ポリマーとしては、例えば、ウレタン系、ポリエステル、アクリル系、酢酸ビニル系、塩化ビニル系、スチレン-アクリル系、アクリル-シリコン系、スチレン-ブタジエン系の各ポリマー又はそれを含有するエマルションが挙げられる。これらの中ではウレタン系、アクリル系、及びスチレン-ブタジエン系から選択されるポリマーが好ましく、アクリル系ポリマーがより好ましい。
前記ポリマーは、合成することも、市販品として購入することもできる。ポリマーを合成するときは、例えば、国際公開2015/147192号ガゼット等が開示するポリマーが好ましい。
市販品としては、例えば、スーパーフレックス 126、130、150、170、210、420、470、820、830、890(第一工業製薬株式会社製のウレタン系樹脂エマルション);ハイドラン HW-350、HW-178、HW-163、HW-171、AP-20、AP-30、WLS-201、WLS-210(DIC株式会社製のウレタン系樹脂エマルション);0569、0850Z、2108(JSR株式会社製のスチレン-ブタジエン系樹脂エマルション);AE980、AE981A、AE982、AE986B、AE104(株式会社イーテック製のアクリル系樹脂エマルション)等が挙げられる。
前記ワックスとしては、ワックスエマルションが好ましく、水系ワックスエマルションがより好ましい。ワックスとしては、天然ワックス及び合成ワックスを用いることができる。
天然ワックスとしては、石油系ワックスであるパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等;褐炭系ワックスであるモンタンワックス等;植物系ワックスであるカルナバワックス、キャンデリアワックス等;動植物系ワックスである蜜蝋、ラノリン等のワックスを、水性媒体中に分散させたエマルジョン等が挙げられる。
上記合成ワックスとしては、例えば、ポリアルキレンワックス(好ましくはポリC2-C4アルキレンワックス)、酸化ポリアルキレンワックス(好ましくは酸化ポリC2-C4アルキレンワックス)、及びパラフィンワックスが挙げられる。前記のうち、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス及びパラフィンワックスから選択される1種類以上のワックスが好ましく、酸化ポリエチレンワックスがより好ましい。
また、ワックスの平均粒径は、インクジェットヘッドの目詰まりを防止するために50nm~5μmが好ましく、100nm~1μmがより好ましい。
上記ワックスの市販品としては、例えば、ビックケミー・ジャパン社製のCERAFLOUR 925、929、950、991;AQUACER 498、515、526、531、537、539、552、1547;AQUAMAT 208、263、272;MINERPOL 221等;三井化学社製の三井ハイワックス NL100、NL200、NL500、4202E、1105A、2203A、NP550、NP055、NP505等;三洋化学社製のKUE-100、11、東邦化学株式会社製HYTEC E-6500、9015、6400等が挙げられる。
前記インクの総質量に対する樹脂エマルションの総含有量は、インクの紙への定着性、インクの吐出性、およびインクの保存安定性の観点から、通常0.6%~6.0%、好ましくは1.0%~5%である。
[シラン修飾シリカゾル]
上記シラン修飾シリカゾルとは、液体中にシラン修飾シリカのコロイド粒子が分散しているものを指す。このシラン修飾シリカゾルは、インク組成物の保存安定性の観点から、水系または水溶性有機溶剤系シラン修飾シリカゾルであることが好ましい。上記シラン修飾シリカゾルは、シリカ粒子表面の一部または全部をシランで被覆したゾルを指し、インクの保存安定性の観点から、シリカ粒子表面のシラノール基の一部または全部をシランや、一般的なシランカップリング剤などのシラン誘導体等で処理し被覆したものが特に好ましい。また、シリカ粒子表面のシラン被覆は、目的に応じその被覆率を任意に変化させたシラン修飾シリカゾルとして得ることができる。また、上記インクが、2種以上の上記シラン修飾シリカゾルを含む場合、上記被覆率の異なるものを併用しても良いし、上記被覆に用いるシラン、シラン誘導体を任意で選択し、かつ、単独あるいは複数を組み合わせて処理に用いても良い。粒子表面の置換基同士の立体反発によって、ゾルそのものが高安定化され、インクとしても安定化されるためである。また、シラン処理し被覆したシラン修飾シリカゾルは、市販品として入手しても良いし、シラン処理していない市販品のシリカゾルをシランカップリング剤などで処理して得ても良い。上記シラン修飾シリカゾルの市販品の具体例としては、例えば、ヌーリオン社製Levasilシリーズなどが挙げられる。一方、上記シラン処理していないシリカゾルの市販品の具体例としては、例えば、日産化学株式会社製スノーテックスシリーズ、日揮触媒化成株式会社製SIシリーズ、日本化学工業株式会社製シリカドールシリーズ、扶桑化学工業株式会社製PLシリーズ、などが挙げられる。また、水溶性有機溶剤系シリカゾルであれば、日産化学株式会社製メタノールシリカゾル、IPA-ST、EG-ST、NPC-ST-30、PGM-ST、NMP-STなどが挙げられる。
上記シラン修飾シリカゾルの粒子径は、擦過痕がぎらつきにくくなる観点から、3nm以上35nm未満とし、より好ましくは5nm以上20nm未満である。また、シラン修飾シリカゾルのインク組成物中の含有量は、擦過痕がぎらつきにくくなる観点と、保存安定性の観点から、0.2質量%以上5.0質量%以下とすることが好ましく、0.5質量%以上4.0質量%以下であることがより好ましく、0.8質量%以上3.5質量%以下であることがさらに好ましく、0.9質量%以上3.3質量%以下であることが特に好ましい。
前記インクは、例えば、有機溶剤、界面活性剤、防黴剤、防腐剤、pH調整剤、防錆剤、消泡剤、水等のインク調製剤を、それぞれ、必要に応じて含有することができる。これらインク調製剤は、1種類を使用することも、2種類以上を併用することもできる。
[有機溶剤]
有機溶剤は特に制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、テキサノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール又は第三ブタノール等のC1-C6アルカノール;N,N-ジメチルホルムアミド又はN,N-ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン又はN-メチルピロリジン-2-オン等のラクタム;1,3-ジメチルイミダゾリジン-2-オン又は1,3-ジメチルヘキサヒドロピリミド-2-オン等の環式尿素類;アセトン、2-メチル-2-ヒドロキシペンタン-4-オン、エチレンカーボネート等のケトン、ケトアルコール又はカーボネート;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(好ましくは分子量400、800、1540又はそれ以上のもの)、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール又はジチオジグリコール等のC2-C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ又はポリアルキレングリコール又はチオグリコール;グリセリン、ジグリセリン、ヘキサン-1,2,6-トリオール、トリメチロールプロパン等のC3-C9ポリオール(トリオール);エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル(好ましくはC3-C10のモノ、ジ若しくはトリエチレングリコールエーテル、及びC4-C13のモノ、ジ若しくはトリプロピレングリコールエーテルよりなる群から選択されるグリコールエーテル);1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール等の、C5-C9アルカンジオール;γ-ブチロラクトン又はジメチルスルホキシド等;等が挙げられ、1,2-ヘキサンジオール、テキサノールが好ましい。
[界面活性剤]
界面活性剤としては、アニオン、ノニオン、シリコン系、及びフッ素系の各界面活性剤が挙げられる。これらの中ではシリコン系、及びフッ素系から選択される界面活性剤が好ましく、生体や環境への安全性の観点からはシリコン系界面活性剤がより好ましい。
アニオン界面活性剤としてはアルキルスルホカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、N-アシルアミノ酸又はその塩、N-アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(例えば、花王株式会社製のエマルゲン A-60、A-90、A-500)等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレングリコール(アルコール)系;ポリグリコールエーテル系等が挙げられる。これらの市販品としては、例えば、日信化学株式会社のサーフィノール 104、104PG50、82、420、440、465、485、オルフィン STG;花王株式会社製のエマルゲン A-60、A-90、A-500等が挙げられる。
シリコン系界面活性剤としては、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。その一例としては、エアープロダクツ社製のダイノール 960、980;日信化学株式会社製のシルフェイス SAG001、SAG002、SAG003、SAG005、SAG503A、SAG008、SAG009、SAG010;及び、BYK Additives & Instruments社製のBYK-345、347、348、349、3455、LP-X23288、LP-X23289、LP-X23347;Evonic Tego Chemie社製のTEGO Twin 4000、TEGO Wet KL 245、250、260、265、270、280等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸系化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物等が挙げられる。
[防黴剤]
防黴剤の具体例としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン-1-オキシド、p-ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン及びその塩等が挙げられる。
[防腐剤]
防腐剤の例としては、例えば有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリールスルホン系、ヨードプロパギル系、ハロアルキルチオ系、ニトリル系、ピリジン系、8-オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系又は無機塩系等の化合物が挙げられる。
有機ハロゲン系化合物の具体例としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられる。
ピリジンオキシド系化合物の具体例としては、例えば2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウムが挙げられる。
イソチアゾリン系化合物としては、例えば1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンマグネシウムクロライド、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンカルシウムクロライド、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンカルシウムクロライド等が挙げられる。
その他の防腐防黴剤の具体例として、無水酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム又は安息香酸ナトリウム、アーチケミカル社製、商品名プロクセルGXL(S)、プロクセルLV、プロクセルXL-2(S)等が挙げられる。
[pH調整剤]
pH調整剤の具体例としては、例えばジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水);炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;ケイ酸ナトリウム、酢酸カリウム等の有機酸のアルカリ金属塩;及び、リン酸二ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。
[防錆剤]
防錆剤の具体例としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール又はジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
[消泡剤]
消泡剤としては、例えば、シリコン系、シリカ鉱物油系、オレフィン系、アセチレン系等が挙げられる。市販の消泡剤としては、例えば、いずれも信越化学工業株式会社製のサーフィノールDF37、DF58、DF110D、DF220、MD-20、オレフィンSK-14等が挙げられる。
[水]
上記インクは、水を含有する水性インクである。インクが含有する水としては、金属イオン等の不純物の含有量が少ない水、すなわち、イオン交換水、蒸留水等が好ましい。そのような水は、公知の方法により調製することができる。
上記インクを調製するときは、公知の分散インクの製造方法を使用することができる。その一例としては、例えば、着色剤と分散剤としての樹脂とから、水性の分散液を調製し、この分散液に水、各種の有機溶剤、及び必要に応じてインク調製剤を加えて混合することにより、インクを調製する方法が挙げられる。
上記インクをインクジェットインクとして使用するときは、金属陽イオンの塩化物(例えば塩化ナトリウム)、及び硫酸塩(例えば硫酸ナトリウム)等の無機不純物の含有量の少ないインクが好ましい。このような無機不純物は、市販品の着色剤に含まれることが多い。無機不純物含有量の目安は、おおよそ着色剤の総質量に対して1質量%以下程度であり、下限は分析機器の検出限界以下、すなわち0%が理想である。
無機不純物の少ない着色剤を得る方法としては、例えば、逆浸透膜を用いる方法;着色剤の固体をメタノール等のC1-C4アルコール及び水の混合溶媒中で懸濁撹拌し、着色体を濾過分離して、乾燥する方法;又は、イオン交換樹脂で無機不純物を交換吸着する方法;等の脱塩処理が挙げられる。
また、上記インクをインクジェットインクとして使用するときは、インクを精密濾過することが好ましい。精密濾過をするときは、メンブランフィルター及び/又はガラス濾紙等を用いることができる。精密濾過を行うときのフィルター等の孔径は通常0.5μm~20μm、好ましくは0.5μm~10μmである。
上記インクは、各種の印刷分野に使用することができる。例えば、筆記、印刷、情報印刷、捺染等の用途に好適である。特に、インクジェット印刷に用いることが好ましい。
上記インクジェット印刷方法は、上記インクの液滴を印刷信号に応じて吐出させて、印刷メディアに付着させることにより印刷を行う方法である。インクの吐出を行うインクジェットプリンタのインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
インクジェット印刷方法としては、インク中の着色剤の含有量の低いインクを小さい体積で多数射出して画質を改良する方法;実質的に同じ色相で、インク中の着色剤の含有量が異なる複数のインクを用いて画質を改良する方法;及び、無色透明のインクと、着色剤を含有するインクとを併用することにより、印刷メディアに対する着色剤の定着性を向上させる方法等も挙げられる。上記インクは、これらの方法においても着色剤を含有するインクとして使用することができる。
インクジェット印刷方式は、公知の方式を使用できる。その一例としては、例えば、電荷制御方式、ドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式ともいう。)、音響インクジェット方式、サーマルインクジェット方式等が挙げられる。
上記の印刷メディアは、インク難吸収性の印刷メディアが特に好ましい。インク難吸収性の印刷メディアとしては、例えばグラビア印刷やオフセット印刷等に用いられるメディア、アート紙、コート紙、マット紙、キャスト紙等が挙げられる。難吸収性の印刷メディアは、紙の表面に白色顔料を塗布した塗工紙を指す。一般的に、よりよい印刷画像を得るためには、紙面の平滑性が必要であるが、パルプだけで作った紙の表面には顕微鏡で見るとかなり凹凸がある。そこで微粒子状クレーや炭酸カルシウムなどを結合剤とともに水に分散させて紙の表面に塗り,平滑性を向上させたものが難吸収性の印刷メディアである。
市販品として入手できるインク難吸収性の印刷メディアとしては、例えば、王子製紙株式会社製のオフセットコート紙OKトップコート+等が挙げられる。
上記インクジェット印刷方法で印刷メディアに印刷するときは、例えば上記インクを含有する容器(インクタンク等という。)をインクジェットプリンタの所定の位置に装填し、上記の印刷方法で印刷メディアに印刷する。
上記インクジェット印刷方法は、上記カラーインクから選択される複数のインクのインクセットとして、フルカラーの印刷ができる。そのときは、各色のインクを含有する容器を上記と同様にインクジェットプリンタの所定の位置に装填し、上記の印刷方法で印刷メディアに印刷する。
上記した全ての成分等は、そのうちの1種類のみを使用することができる。また、必要に応じて複数、及び複数の種類を選択し、それらを併用することもできる。
上記した全ての内容について、好ましいもの同士の組み合わせはより好ましく、より好ましいもの同士の組み合わせはさらに好ましい。好ましいものとより好ましいものとの組み合わせ、より好ましいものとさらに好ましいものとの組み合わせ等についても同様である。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。また、各合成反応等の操作は、特に断りのない限りいずれも攪拌下にて行った。
実施例において、分散液中の顔料固形分の定量が必要なときは、株式会社エイ・アンド・デイ社製のMS-70を用い、乾燥重量法により求めた。顔料固形分は、固形分の全量から、顔料固形分のみを算出した換算値である。なお、実施例中に記載の各インクは、上記インク組成物に含まれる。
[合成例1]分散液1の調製。
国際公開第2013/115071号の合成例3を追試することにより、合成例3のブロック共重合体を調製した。得られたブロック共重合体の酸価は105mgKOH/g、Mwは25000であった。得られたブロック共重合体6.6部を2-ブタノン20部に溶解し、これに0.36部の水酸化ナトリウムを50部のイオン交換水に溶解させた液を加え、30分撹拌して乳化液とした。得られた乳化液にORION社製Nerox 605(20部)を加え、サンドグラインダーで1500rpmの条件下、15時間分散処理を行って液を得た。得られた液にイオン交換水120部を加えて分散用ビーズをろ過分離してろ液を得た。得られたろ液からエバポレーターで2-ブタノン及び水の一部を減圧留去することにより、顔料固形分が12%の分散液1を得た。
[合成例2]アクリル樹脂エマルション2の調製。
ガラス製反応容器(容量3リットル)に水(100部)、過硫酸アンモニウム(0.3部)、反応性乳化剤(1部)を加えて液を得た。反応容器内部の空気を窒素で置換した後、液の温度を70℃に昇温した。この液に、水(120部)、反応性乳化剤(0.9部)、メタクリル酸(2部)、メタクリル酸メチル(37部)、アクリル酸2-エチルヘキシル(59部)、及びメタクリル酸アリル(2部)からなる液を3時間で滴下した。液の滴下中は、窒素を導入しながら70℃の液温を維持して反応を行なった。液の滴下終了後、さらに70℃で2時間反応させて液を得た後、40℃に冷却して液を得た。得られた液にトリエタノールアミン(3.1部)を加えることにより、固形分25%の白色懸濁液としてアクリル樹脂2のエマルションを得た。得られたアクリル樹脂2のエマルションを「A2」とする。得られたアクリル樹脂2エマルションの酸価は13KOHmg/g、Tgは-10℃であった。
[合成例3]疎水性シランで表面処理されたシラン修飾シリカゾル3の調製。
撹拌機、滴下ロート及び温度計を備えたガラス製反応器(容量3リットル)に、水(3.3部)、日産化学株式会社製スノーテックス30(80部)を添加して混合した。この溶液に、信越シリコーン社製メチルトリメトキシシランKBM-13(0.7部)を0.5時間かけて滴下した。液の滴下終了後、60℃の液温を維持して攪拌しながら3時間保持した。反応を完結させ25℃まで冷却し、水でシリカ濃度が30%になるよう調整することで、疎水性シランで表面処理されたシラン修飾シリカゾル3を80部得た。シラン修飾シリカゾル3の粒径は12nmであった。
[実施例1~8]:インクの調製。
下記表1に記載の各成分を混合した後、3μmのメンブランフィルターで濾過することにより、評価試験用の実施例1~7のインクをそれぞれ得た。
[比較例1~9]:比較用のインクの調製。
下記表2に記載の各成分を混合した後、3μmのメンブランフィルターで濾過することにより、比較用の比較例1~9のインクを得た。
表1及び表2中の略号等は、以下の意味を表す。
DP1:分散液1。
12HD:1,2-ヘキサンジオール。
PG:1,2-プロピレングリコール。
TEX:テキサノール
TEA:トリエタノールアミン。
BYK349:BYK社製、BYK-349。
A2:アクリル樹脂エマルション2。(樹脂エマルションに該当、固形分25%)
AQ515:BYK社製、AQUACER515。(樹脂エマルションに該当、固形分35%)
CC151:ヌーリオン社製LevasilCC151。(シラン修飾シリカゾルに該当、固形分15%、粒径5nm)
CC301:ヌーリオン社製LevasilCC301。(シラン修飾シリカゾルに該当、固形分28%、粒径7nm)
CC401:ヌーリオン社製LevasilCC401。(シラン修飾シリカゾルに該当、固形分37%、粒径12nm)
CC503:ヌーリオン社製LevasilCC503。(シラン修飾シリカゾルに該当、固形分50%、粒径34nm)
S3:疎水性シランで表面処理されたシリカゾル3。(シラン修飾シリカゾルに該当、固形分30%、粒径12nm)
ST30:日産化学株式会社製スノーテックス30。(比較例ゾルに該当、固形分30%)
STXS:日産化学株式会社製スノーテックスXS。(比較例ゾルに該当、固形分20%)
STC:日産化学株式会社製スノーテックスC。(比較例ゾルに該当、固形分20%)
ST50T:日産化学株式会社製スノーテックス50T。(比較例ゾルに該当、固形分50%)
ST30L:日産化学株式会社製スノーテックス30L。(比較例ゾルに該当、固形分30%)
SD40:日本化学工業株式会社製シリカドール40。(比較例ゾルに該当、固形分40%)
GXL(s):ロンザ社製、プロクセルGXL(s)。
粒径:ゾルの粒子径。(単位はnm)
分散体量:インク中のゾルの量。(質量%)
Binder量:インク中の樹脂エマルションの総含有量。(質量%)
下記表1及び表2中の、ハイフンは、それぞれ、成分に関しては0部であることを、粒径、分散体量及びBinder量については、該当する成分を含まないので数字記載が不可であることを、それぞれ表す。
Figure 2022155890000001
Figure 2022155890000002
[インクジェット印刷]
実施例1~8の各インクを、インク難吸収性の印刷メディアである王子製紙株式会製のオフセットコート紙「OKトップコート+」とを組み合わせることにより、インクメディアセットとした。得られたインクメディアセットを使用し、インクジェットプリンタを用いて、シングルパス(1パス)方式にてインクジェット印刷を行った。吐出したインクの液適量は12ピコリットル、ヘッド温度は32℃である。また、ヘッドとして京セラ600dpiヘッドを使用した。
インクジェット印刷は、100%Dutyの画像となるように行い、印刷画像を得た。得られた画像を全乾させたのちに試験片として用い、下記の擦過試験を行った。
また、比較例1~9の各インクと、上記「OKトップコート+」とを組み合わせることにより、インクメディアセットとした。上記の実施例1~8のインクメディアセットを使用する代わりに、比較例1~9のインクメディアセットを使用する以外は、上記と同様にしてインクジェット印刷、及び、下記の擦過試験を行った。
[擦過性試験]
上記のようにして得た印字物を、爪で線擦過したのち、印字物を蛍光灯にかざした際の、擦過痕がついた箇所とそうでない箇所のぎらつきの差を観察した。評価基準は下記のとおりである。
A:「擦過部にぎらつきや光沢の変化がない」と観察者10人中10人全員が判定した
B:「擦過部にぎらつきや光沢の変化がある」と観察者10人中10人全員が判定した
C:擦過時に擦過部のインクが紙からはがれてしまい、ぎらつきの差を観察できなかった
該擦過性試験結果として、評価B以下のものについては、擦過部がぎらついて見えてしまうこと、または擦過部のインクが紙からはがれることで、擦過痕が顕在化し、印字物の見栄えが著しく悪くなるため実用性に欠ける。
[保存安定性試験]
ポリプロピレン製保存瓶(アイボーイ広口びん、アズワン株式会社製)にインクを100g入れて蓋をした状態で、60℃の環境下に2週間放置した。放置後、3μmのメンブランフィルター(セルロース混合エステルタイプ、アドバンテック東洋株式会社製)でインクをろ過し、フィルター上の残渣物の発生の有無について、また、インクの粘度変化率について、判定した。評価基準は下記のとおりである。なお、粘度の変化率は、下記式により算出した。
粘度の変化率=(保存後の測定値-調製直後の測定値)/(調製直後の測定値)×100%。
A:残渣物の発生が全くなく、粘度変化率が±5%未満。
B:わずかの残渣物の発生があり、粘度変化率が±5%未満。
C:わずかの残渣物の発生があり、粘度変化率が±5%以上、かつ、±10%未満。
D:多量の残渣物の発生がある、あるいは、粘度変化率が±10%以上、の少なくともいずれか一方を満たす。
評価結果を下記表3に示す。
Figure 2022155890000003
表3の結果から、各実施例のインクは、擦過性に優れ、また、保存安定性も全てB以上であり、優れた擦過性と保存安定性を兼ね備えていることが分かった。
本発明のインクは、インク難吸収性の印刷メディア、特にオフセットコート紙等のコート紙に前処理剤やオーバーコート剤を塗布することなく、爪などの擦過痕がついたとしても塗膜のぎらつきの変化が少ないインクジェット印刷用水性インク組成物、及びインクメディアセットとして極めて有用である。

Claims (7)

  1. 顔料、分散染料、溶剤染料からなる群から選択される水不溶性の着色剤、重量平均分子量が50000未満である分散剤としての樹脂、重量平均分子量が50000以上である少なくとも1種類以上の樹脂エマルション、及び、粒子径が3nm以上35nm未満であるシラン修飾シリカゾルを含む、インク組成物。
  2. 上記樹脂エマルションが、アクリル樹脂エマルション及び酸化ポリエチレン樹脂エマルションを含む、請求項1に記載のインク組成物
  3. 上記樹脂エマルションの、インク組成物中における固形分総量が、0.6質量%以上6.0質量%以下である、請求項1または2に記載のインク組成物。
  4. 請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のインク組成物と、他のインク組成物と、を含むインク組成物セット。
  5. 請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のインク組成物、又は、請求項4に記載のインク組成物セットを用い印刷された、印刷メディア。
  6. 請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のインク組成物、又は、請求項4に記載のインク組成物セットと、請求項5に記載の印刷メディアと、のインクメディアセット。
  7. 請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のインク組成物、又は、請求項4に記載のインク組成物セットを使用した、耐擦性の向上方法。
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