<第1の実施形態>
第1の実施形態について図1から図11を参照して説明する。
(錠剤印刷装置の構成例)
第1の実施形態に係る錠剤印刷装置1の構成例について図1から図4を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、第1の実施形態に係る錠剤印刷装置1は、供給部10と、搬送部20と、センサ30と、第1の撮像部40と、印刷部50と、第2の撮像部60と、カバー部70と、ブロー装置80と、回収部90と、制御装置100とを備える。センサ30、第1の撮像部40及び第2の撮像部60は、それぞれ錠剤Tを検出する検出部として機能する。
供給部10は、ホッパ11及びシュータ12を有している。この供給部10は、搬送部20の一端側に位置付けられ、印刷対象物である錠剤Tを搬送部20に供給することが可能に構成されている。ホッパ11は、多数の錠剤Tを収容し、収容した錠剤Tをシュータ12に順次供給する。シュータ12は、ホッパ11から供給された錠剤Tを一列に整列させて搬送部20に供給する。供給部10は制御装置100に電気的に接続されており、その駆動が制御装置100により制御される。
搬送部20は、搬送ベルト21、駆動プーリ22、複数の従動プーリ23、モータ24、位置検出器25及び吸引チャンバ26を有する。搬送ベルト21は、無端状のベルトであり、駆動プーリ22及び各従動プーリ23に架け渡されている。駆動プーリ22及び各従動プーリ23は装置本体(図示せず)に回転可能に設けられており、駆動プーリ22はモータ24に連結されている。モータ24は制御装置100に電気的に接続されており、その駆動が制御装置100により制御される。位置検出器25は、エンコーダなどの機器であり、モータ24に取り付けられている。この位置検出器25は電気的に制御装置100に接続されており、検出信号を制御装置100に送信する。搬送部20は、モータ24による駆動プーリ22の回転によって各従動プーリ23と共に搬送ベルト21を回転させ、搬送ベルト21上の錠剤Tを図1中の矢印H1の回転方向、すなわち搬送方向H1に搬送する。
搬送ベルト21には、円形状の吸引孔21a(図2参照)が複数形成されている。これらの吸引孔21aは、それぞれ錠剤Tを吸着する貫通孔であり、一本の搬送路を形成するように搬送方向H1に沿って一列に並べられている。各吸引孔21aは、吸引チャンバ26(図1参照)に形成された吸引路(図示せず)を介して吸引チャンバ26内に接続されており、吸引チャンバ26により吸引力を得ることが可能になっている。吸引チャンバ26には、ポンプが吸引管(いずれも図示せず)を介して接続されており、ポンプの作動により吸引チャンバ26内が減圧される。吸引管は、吸引チャンバ26の側面(搬送方向H1と平行な面)の略中央に接続されている。また、ポンプは制御装置100に電気的に接続されており、その駆動が制御装置100により制御される。吸引チャンバ26内が減圧されると、搬送ベルト21の各吸引孔21a上に置かれた錠剤Tは吸引孔21aにより吸引され、搬送ベルト21上に保持される。
センサ30は、供給部10が設けられた位置よりも搬送方向H1の下流側に位置付けられ、搬送ベルト21の上方に設けられている。このセンサ30は、レーザ光の投受光によってセンサ30の直下の検出位置に到達した錠剤T(錠剤Tの到来)、すなわち搬送ベルト21上の錠剤TのX方向(図2参照)の位置を検出する。センサ30としては、例えば、変位センサや近接センサなどが用いられる。また、変位センサとしては、例えば、反射型レーザセンサなどの各種のレーザセンサが用いられる。センサ30は制御装置100に電気的に接続されており、制御装置100に検出信号を送信する。
第1の撮像部40は、センサ30が設けられた位置よりも搬送方向H1の下流側に位置付けられ、搬送ベルト21の上方に設けられている。この第1の撮像部40は、センサ30により検出された錠剤TのX方向の位置情報に基づき、錠剤Tが第1の撮像部40の直下の撮像位置に到達した第1の撮像タイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む第1の画像を取得し、取得した第1の画像を制御装置100に送信する。第1の画像は、錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向(図2参照)の位置を検出するため、また、錠剤Tの割れや欠け、汚れ(例えば異物の付着)の有無を検出するために用いられる。第1の撮像部40としては、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの撮像素子を有する各種のカメラが用いられる。第1の撮像部40は制御装置100に電気的に接続されており、その駆動が制御装置100により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられる。
ここで、錠剤TのX方向及びY方向の位置は、例えば、第1の撮像部40の撮像領域の中心(基準位置)に対するXY座標系の位置である。また、θ方向の位置は、例えば、第1の撮像部40の撮像領域のY方向の中心線に対する錠剤Tの回転度合いを示す位置である。このθ方向の位置は、錠剤Tに割線が設けられている場合や錠剤Tが楕円形や長円形、四角形などに成型されている場合など、錠剤Tが方向性を有する形体である場合に検出される。
印刷部50は、インクジェットヘッド51を有する。インクジェットヘッド51は、第1の撮像部40が設けられた位置よりも搬送方向H1の下流側に位置付けられ、搬送ベルト21の上方に設けられている。インクジェットヘッド51は、複数(例えば数百個から数千個)のノズル51a(図2参照)を有し、ノズル51aが一列に並ぶ方向(ノズル列)が水平面内で搬送方向H1と直交(交差の一例)するように設けられている。インクジェットヘッド51は、ノズル51aごとの駆動素子の動作によって各ノズル51aから個別にインクを吐出する。このインクジェットヘッド51としては、圧電素子、発熱素子又は磁歪素子などの駆動素子を有する各種のインクジェット方式の印刷ヘッドが用いられる。インクジェットヘッド51は制御装置100に電気的に接続されており、その駆動が制御装置100により制御される。
第2の撮像部60は、印刷部50が設けられた位置よりも搬送方向H1の下流側に位置付けられ、搬送ベルト21の上方に設けられている。この第2の撮像部60は、センサ30により検出された錠剤TのX方向の位置情報に基づき、錠剤Tが第2の撮像部60の直下の撮像位置に到達した第2の撮像タイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む第2の画像を取得し、取得した第2の画像を制御装置100に送信する。第2の画像は、錠剤Tに印刷された印刷パターンを検査するために用いられる。第2の撮像部60としては、前述の第1の撮像部40と同様、例えば、CCDやCMOSなどの撮像素子を有する各種のカメラが用いられる。第2の撮像部60は制御装置100に電気的に接続されており、その駆動が制御装置100により制御される。必要に応じて撮像用の照明も設けられる。
カバー部70は、図1から図3に示すように、センサ30、第1の撮像部40、印刷部50のインクジェットヘッド51及び第2の撮像部60を収容する筐体である。このカバー部70は、その下面が搬送ベルト21により搬送される錠剤Tに当接しないよう、錠剤Tの厚さ(例えば、2~4mm)に合わせて、搬送ベルト21の上面から所定距離(例えば、5~12mm)だけ離されて搬送ベルト21の上面の上方に設けられている。なお、例えば、撮像用の照明(例えば、ライン照明やリング照明)が設けられる場合、その照明もカバー部70内に設けられる。
図3に示すように、カバー部70の下面には、四つの貫通孔70a、70b、70c、70dが搬送方向H1に沿って形成されている。カバー部70内のセンサ30は、貫通孔70aに対向する位置に設けられ、搬送ベルト21上の錠剤Tを検出することが可能になっている。また、カバー部70内の第1の撮像部40は、貫通孔70bに対向する位置に設けられ、搬送ベルト21上の錠剤Tを撮像することが可能になっている。カバー部70内のインクジェットヘッド51は、貫通孔70cに挿入されて設けられ、搬送ベルト21上の錠剤Tに印刷を行うことが可能になっている。カバー部70内の第2の撮像部60は、貫通孔70dに対向する位置に設けられ、搬送ベルト21上の錠剤Tを撮像することが可能になっている。
各貫通孔70a、70b、70dは、ガラスなどの透光部材71、72によって塞がれている。各透光部材71は、例えば、カバー部70の内部の底面にそれぞれ設けられている。また、貫通孔70cは、シリコンなどの密閉部材73を介して貫通孔70cにインクジェットヘッド51が挿入されることで塞がれている。このようにカバー部70は密閉状態に形成されており、そのカバー部70の内部は、例えば、陽圧(正圧)に維持されている。なお、各透光部材71、72は、各貫通孔70a、70b、70dを塞ぐことが可能であれば、例えば、各貫通孔70a、70b、70dに嵌められて設けられてもよく、また、カバー部70の外面に設けられてもよい。
ブロー装置80は、図1から図3に示すように、複数のブロー部81を有する。これらのブロー部81は、それぞれ各貫通孔70a、70b、70d、すなわちセンサ30、第1の撮像部40及び第2の撮像部60に対応させてカバー部70の下面に設けられている。各ブロー部81は、それぞれ平面視で搬送方向H1に対して水平に直交する方向(Y方向:図2参照)に気体を吹き出し、カバー部70の下面(カバー部70の搬送ベルト21側の面)、すなわち各貫通孔70a、70b、70dを塞ぐ透光部材71、72の下面に気体を吹き付ける。気体としては、例えば、空気や窒素などが用いられる。各ブロー部81は制御装置100に電気的に接続されており、それぞれの駆動が個別に制御装置100により制御される。
図4に示すように、ブロー部81は、例えば、貫通孔70aを塞ぐ透光部材71の下面に向けて気体を吹き出し、透光部材71の下面に気体を吹き付けるが、これに限定されるものではない。例えば、ブロー部81が気体を吹き出す方向(気体の吹き出し方向)は、透光部材71の下面、すなわちカバー部70の下面に向かう方向であっても、カバー部70の下面の付近又は周囲に向かう方向であってもよい。つまり、気体の吹き出し方向は、ブロー部81から吹き出された気体がカバー部70の下面に到達すれば、特に限定されるものではない。
図1及び図2に戻り、回収部90は、第2の撮像部60が設けられた位置よりも搬送方向H1の下流側に位置付けられ、搬送部20における搬送方向H1の下流側の端部に設けられている。搬送部20は、搬送ベルト21上の錠剤Tが所定の位置、例えば、搬送部20における搬送方向H1の下流側の端部に到達した場合に錠剤Tの保持を解除する。回収部90は、搬送部20による保持が解除されて落下する錠剤Tを不良品と良品とに分けて回収するように構成されている。例えば、落下途中の錠剤Tに気体を吹き付け、錠剤Tの落下方向を不良品と良品で変えることで、あるいは、板等の部材により落下経路を変えることで、落下する錠剤Tを不良品と良品とに分けて回収することが可能である。例えば、不良品は非印刷錠や印刷不合格錠などであり、良品は印刷合格錠である。なお、非印刷錠としては、異物付着の非印刷錠(異物が付着している非印刷錠)や異物未付着の非印刷錠(異物が付着していない非印刷錠)があり、それらの非印刷錠を区別して回収することも可能である。回収部90は制御装置100に電気的に接続されており、その駆動が制御装置100により制御される。
制御装置100は、各種情報及び各種プログラムに基づいて錠剤印刷装置1の各部、例えば、供給部10や搬送部20、センサ30、第1の撮像部40、印刷部50、第2の撮像部60、ブロー装置80、回収部90などを制御する。また、制御装置100は、位置検出器25やセンサ30から送信される検出情報(例えば検出信号)などを受信し、また、第1の撮像部40や第2の撮像部60から送信される画像情報などを受信する。制御装置100は、例えば、集積回路などの電子回路又はコンピュータなどにより実現される。
(制御装置の構成例)
次に、制御装置100の構成例について図5を参照して説明する。
図5に示すように、制御装置100は、画像処理部101と、記憶部102と、制御部103とを有する。この制御装置100には、入力装置100aや出力装置100bが接続されている。入力装置100aは、例えば、スイッチやタッチパネル、キーボード、マウスなどにより実現される。また、出力装置100bは、例えば、ディスプレイやランプ、メータなどにより実現される。
画像処理部101は、第1の撮像部40により撮像された第1の画像及び第2の撮像部60によって撮像された第2の画像を取り込み、公知の画像処理技術を用いて画像を処理する。例えば、画像処理部101は、第1の撮像部40から得られた第1の画像を処理し、錠剤Tの割れや欠け、汚れの有無を取得し、さらに、錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置を取得する。また、画像処理部101は、第2の撮像部60から得られた第2の画像を処理し、錠剤Tに印刷された印刷パターン(例えば、文字やマーク)の印刷位置や形状、サイズを取得する。画像処理部101は、取得した錠剤Tの割れや欠け、汚れの有無情報、取得した各錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置情報、さらに、各錠剤T上の印刷パターンの印刷位置情報、形状情報及びサイズ情報を制御部103に送信する。
記憶部102は、処理情報や各種プログラムなどを記憶する。例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。記憶部102には、印刷に関する印刷データ、搬送ベルト21の移動速度データなどが記憶される。印刷データは、文字やマークなどの印刷パターンの情報を含む。
制御部103は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のコンピュータであり、各部を制御する。例えば、制御部103は、記憶部102に記憶された各種情報や各種プログラムに基づいて、供給部10や搬送部20、センサ30、第1の撮像部40、印刷部50、第2の撮像部60、回収部90、画像処理部101、記憶部102などを制御する。また、制御部103は、センサ30や位置検出器25から送信される検出信号などを受信する。なお、制御部103は、例えば、ハードウェア及びソフトウェアの一方又は両方により実現される。
例えば、制御部103は、ブロー装置80の各ブロー部81を常に駆動させる。詳しくは、制御部103は、各ブロー部81が常時気体を吹き出すように各ブロー部81を制御する。これに応じて、各ブロー部81はそれぞれ常に気体を吹き出し、カバー部70の下面に吹き付ける。各ブロー部81からそれぞれ吹き出された気体は、カバー部70の各透光部材71、72の下面に吹き付けられ、各透光部材71、72の下面に付着している異物(例えば、粉やゴミ)が取り除かれる。なお、制御装置100は、各ブロー部81にそれぞれ接続された配管(図示せず)に設けられた調整弁(図示せず)を制御し、各ブロー部81からそれぞれ吹き出される気体の流速や流量を個別に調整することが可能である。通常、各ブロー部81からそれぞれ吹き出される気体の流速や流量は、予め設定されており、例えば、記憶部102に記憶されている。ただし、各ブロー部81からそれぞれ吹き出される気体の流速や流量は、所定条件に応じて変更されてもよく、あるいは、入力装置100aに対するユーザの入力操作に応じて変更されてもよい。なお、各ブロー部81からの気体の流速や流量は、錠剤Tの径や形状、錠剤Tの搬送スピードによって予め実験により最適なものを求め、設定することができる。
また、制御部103は、センサ30から送信された検出情報、すなわち搬送ベルト21上の錠剤Tが検出されたタイミングに基づき、搬送ベルト21において錠剤TのX方向の位置を取得し、この錠剤TのX方向の位置を示す位置情報に基づき、第1の撮像部40の第1の撮像タイミング、印刷部50のインクジェットヘッド51の印刷開始タイミング、第2の撮像部60の第2の撮像タイミングを設定し、それらのタイミングを示すタイミング情報を生成して記憶部102に保存する。印刷開始タイミングとは、インクジェットヘッド51の直下の印刷位置に到達した錠剤Tに対して印刷を開始するタイミングである。なお、制御部103は、位置検出器25から送信された検出情報に基づき、搬送ベルト21の移動量(回転量)や速度などの情報を取得することが可能である。
また、制御部103は、画像処理部101から送信された錠剤Tの割れや欠け、汚れの有無情報に基づいて、その有無情報が得られた錠剤Tに対する印刷可否を設定する。そして、制御部103は、印刷可に設定された錠剤Tに対して印刷条件を設定する。このとき、制御部103は、画像処理部101から送信された錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置情報に基づいて、その位置情報が得られた錠剤Tに対して印刷条件を設定する。例えば、制御部103は、錠剤TのY方向の位置情報や印刷データに基づいて、インクジェットヘッド51において対象の錠剤Tの印刷に使用するノズル51aの範囲、すなわち使用ノズル範囲を決定し、その使用ノズル範囲や印刷開始タイミングなどを含む印刷条件を設定する。なお、錠剤Tが方向性を有する形状である場合、制御部103は、錠剤Tのθ方向の位置情報に基づいて、錠剤Tのθ方向の位置に対応させて印刷条件を設定する。一例として、制御部103は、印刷パターンの向きを0度から179度の範囲で1度ずつ回転させた180通りの印刷パターンを記憶部102に登録しておき、それらの印刷パターンの中から、錠剤Tのθ方向の位置に適合する角度の印刷パターンを選択して印刷条件を設定する。
また、制御部103は、画像処理部101から送信された、錠剤Tに印刷された印刷パターンの印刷位置情報、形状情報及びサイズ情報に基づいて、印刷パターンが所定形状及び所定サイズで錠剤Tの所定位置に印刷されたか否か、すなわち印刷パターンが錠剤Tに正常に印刷されたか否かを判断する(印刷状態検査)。例えば、制御部103は、印刷パターンの形状及びサイズ判断において、検査用の印刷パターンを記憶部102に登録しておき、その検査用の印刷パターンと実際の印刷後の錠剤T上の印刷パターン(錠剤Tに印刷された印刷パターン)とを比較する。
なお、制御部103は、適宜各種情報(例えば、錠剤Tの割れや欠け、汚れの有無情報や位置情報、タイミング情報、印刷条件、印刷良否情報など)を記憶部102に保存するが、対象の錠剤Tが回収部90により回収されると、例えば、搬送部20における搬送方向H1の下流側の端部から落下して所定時間(例えば数秒)が経過した時点で、記憶部102から各種情報を削除する。ただし、それらの情報が後工程などで必要となる場合には、錠剤Tごとの各種情報を消去せずに残しておいたり、装置外の保存用メディアに保存しておいたりすることも可能である。錠剤Tごとの各種情報を保存しておく場合には、この情報と製造日時やロット番号などと紐づけて保存しておき、印刷後の錠剤Tについて出荷後に不良品が発生した場合などに遡って原因追及ができるようにしてもよい。
(印刷工程)
次に、前述の錠剤印刷装置1が行う印刷工程について図1及び図2を参照して説明する。この印刷工程は、検査工程も含む。なお、印刷に要するデータや気体の吹き出しに要するデータなどの各種情報は、記憶部102に予め記憶されている。
錠剤印刷装置1が印刷処理を開始すると、モータ24は駆動し、搬送ベルト21はモータ24による駆動プーリ22及び従動プーリ23の回転に伴って搬送方向H1に回転する。搬送ベルト21が搬送方向H1に回転している状態で、錠剤Tがホッパ11からシュータ12に順次供給され、シュータ12により一列に並べられて搬送ベルト21上に一定間隔ではなくランダムに供給される。搬送ベルト21上に供給された錠剤Tは、搬送ベルト21上で一列に並んで所定の移動速度で搬送されていく。
搬送ベルト21上の錠剤Tは、センサ30によって検出される。詳しくは、搬送ベルト21上の錠剤Tが、センサ30の直下の検出位置(例えばレーザ光の照射位置)に到達するタイミングでセンサ30により検出され、その錠剤Tが検出されたタイミングに基づき、搬送ベルト21において錠剤TのX方向の位置が制御部103によって認識される。そして、その錠剤TのX方向の位置を示す位置情報が制御部103により生成され、記憶部102に保存される。
次に、搬送ベルト21上の錠剤Tが第1の撮像部40によって撮像される。詳しくは、搬送ベルト21上の錠剤Tが、第1の撮像部40の直下の撮像位置に到達した第1の撮像タイミングで第1の撮像部40によって撮像され、その第1の撮像部40による撮像により得られた第1の画像が制御装置100に送信される。この第1の画像に基づいて、錠剤Tの割れや欠け、汚れの有無情報、また、錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置情報が画像処理部101により生成され、記憶部102に保存される。錠剤Tの割れや欠け、汚れの有無情報に基づき、対象の錠剤Tへの印刷可否が設定され、また、錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置情報や印刷パターンなどの情報に基づき、印刷可に設定された錠剤T(印刷可の錠剤T)に対する使用ノズル範囲や印刷開始タイミングなどを含む印刷条件が記憶部102に設定される。なお、前述の印刷開始タイミング(錠剤Tに対して印刷を開始するタイミング)に基づいて、錠剤Tに対する吐出タイミング(錠剤Tに対してインクを吐出するタイミング)が決定される。
この印刷条件に基づいて印刷が印刷部50により実行される。つまり、印刷部50のインクジェットヘッド51が、搬送ベルト21上の印刷可の錠剤Tに所定の印刷パターンを印刷するように制御部103により制御される。詳しくは、第1の撮像部40の下方を通過した搬送ベルト21上の印刷可の錠剤Tは、インクジェットヘッド51の直下の印刷位置に到達した印刷開始タイミングで、前述の印刷条件に基づいてインクジェットヘッド51によって印刷される。インクジェットヘッド51では、各ノズル51aからインクが適宜吐出され、錠剤Tの上面である被印刷面に印刷パターン(例えば、番号、アルファベット、片仮名、記号、図形)が印刷される。この錠剤Tに塗布されたインクは搬送中に乾燥する。なお、気体あるいは熱による乾燥を行う乾燥部(図示せず)を設け、その乾燥部によりインクを乾燥させるようにしても良い。
その後、搬送ベルト21上の印刷済の錠剤Tが第2の撮像部60によって撮像される。詳しくは、搬送ベルト21上の印刷済の錠剤Tは、第2の撮像部60の直下の撮像位置に到達した第2の撮像タイミングで第2の撮像部60によって撮像され、その第2の撮像部60による撮像により得られた第2の画像が制御装置100に送信される。
この第2の画像は、制御装置100の画像処理部101によって解析される。詳しくは、錠剤Tに印刷された印刷済の印刷パターンに関する情報、すなわち印刷済の印刷パターンの印刷位置や形状、サイズが画像処理部101により取得される。第2の撮像部60から送信された第2の画像が画像処理部101により解析され、錠剤Tにおいて印刷済の印刷パターンの印刷位置や形状、サイズを示す検査情報が生成され、記憶部102に保存される。
この検査情報に基づいて印刷状態検査が制御部103により実行される。詳しくは、記憶部102に保存された前述の印刷位置や形状、サイズに係る検査情報に基づき、印刷パターンが錠剤Tに正常に印刷されたか否かが制御部103により判断され、錠剤Tの印刷良否を示す印刷良否情報が生成されて記憶部102に保存される。例えば、印刷状態検査では、印刷に使用した印刷パターンが検査用の印刷パターンとして記憶部102に保存され、検査用の印刷パターンの所定の印刷位置や形状、サイズに関する良品情報と、記憶部102に保存された実際の印刷済の印刷パターンの印刷位置や形状、サイズに関する検査情報とが比較され、印刷パターンが錠剤Tに正常に印刷されたか否か(合格又は不合格)が判断される。
最後、搬送ベルト21上の錠剤Tが回収部90により回収される。詳しくは、検査後の錠剤Tが搬送ベルト21の移動に伴って搬送ベルト21の下流側の端部に位置すると、搬送ベルト21に保持された状態から解放され、搬送ベルト21から落下して回収部90により回収される。このとき、合格錠剤の錠剤Tは、そのまま落下して回収部90により良品として回収されるが、不合格錠剤や非印刷錠の錠剤Tは、搬送ベルト21から落下する途中でエアの吹き付けにより良品と分けて回収部90により不良品として回収される。
このような印刷工程において、全てのブロー部81から気体がそれぞれ常に吹き出されている。この全てのブロー部81からそれぞれ吹き出された気体は、カバー部70の下面、すなわちカバー部70内のセンサ30、第1の撮像部40及び第2の撮像部60に対向する各透光部材71、72の下面に吹き付けられる。これにより、各透光部材71、72の下面、詳しくは図3に示す各貫通孔70a、70b、70dから露出する各透光部材71、72の下面に付着している異物(例えば粉やゴミ)が取り除かれるので、センサ30が透光部材71の下面に付着した異物を検出して錠剤Tを誤検知すること、また、第1の撮像部40や第2の撮像部60などの撮像部が各透光部材71、72の下面に付着した異物を撮像して錠剤Tを誤検知することを抑えることができる。また、全てのブロー部81から気体がそれぞれ常に吹き出されているので、各貫通孔70a、70b、70dから露出する各透光部材71、72の下面に異物が付着することを抑えることもできる。このようにして、異物の付着による誤検知を抑制することが可能になるので、効率よく錠剤Tに印刷を行うことができる。
ここで、例えば、センサ30が透光部材71の下面に付着した異物を検出すると、錠剤Tがセンサ30の直下に到来したタイミングを誤って検知するという誤検知が発生する。この誤検知の錠剤Tには正確な印刷が行われず、その錠剤Tは不合格錠剤(不良品)として排出されてしまう。また、第1の撮像部40や第2の撮像部60などの撮像部が透光部材71、72の下面に付着した異物を撮像して検出すると、錠剤Tに異物が付着しているという誤検知が発生する。この誤検知の錠剤Tには印刷が行われず、その錠剤Tは非印刷錠剤(不良品)として排出されてしまう。このように各透光部材71、72の下面、すなわちカバー部70の下面に異物が付着していると、効率よく錠剤Tに印刷することはできないが、前述のように各ブロー部81によりカバー部70の下面から異物を取り除くことで、異物の付着による誤検知を抑え、効率よく錠剤Tに印刷を行うことが可能になる。
また、ブロー部81による気体の吹き出し方向は、平面視で搬送方向H1と水平に直交する方向である。これにより、少なくともブロー部81の下方通過時にしか錠剤Tが気流にさらされないので、ブロー部81から吹き出された気体が錠剤Tの姿勢に影響を与えることを抑えることができる。例えば、ブロー部81による気体の吹出方向が搬送方向H1と平行であった場合、搬送方向に並ぶ複数の錠剤Tに対して長時間気流があたることになってしまい、複数の錠剤Tの姿勢が変更されてしまうことが考えられる。錠剤Tの姿勢が変更されると、センサ30で検出した錠剤Tの位置と第1の撮像部40で撮像する錠剤Tの位置や姿勢が変化してしまうことになる。つまり、その後の撮像や印刷がうまくいかなくなり、効率よく錠剤Tに印刷を行うことが難しくなる。また、ブロー部81から吹き出された気体がインクジェットヘッド51の印刷に影響を与えることを抑えることができる。例えば、インクジェットヘッド51から吐出されたインクの進行方向が気流により曲げられると、印刷不良が生じ、効率よく錠剤Tに印刷を行うことが難しくなる。したがって、気体の吹き出し方向は、平面視で搬送方向H1と水平に交差する方向の中であって、インクジェットヘッド51の直下を避ける方向(例えば、搬送方向H1の下流側に向かう方向でない方向)であることが望ましく、搬送方向H1に直交する方向が最も望ましい。
なお、印刷対象の錠剤Tが、素錠やOD錠(口腔内崩壊錠)のような、粉を固めて成形した錠剤である場合には、錠剤Tの粉が搬送ベルト21に溜まったり、その粉が浮遊したりするため、カバー部70の下面に粉が付着しやすい。このため、錠剤Tの種類に応じて、各ブロー部81からそれぞれ吹き出される気体の流れの強さを変えるようにしてもよい。例えば、錠剤Tの種類が素錠やOD錠である場合、気体の流れを強くし、錠剤Tの種類が異物(例えば粉)を出しにくい錠剤である場合、気体の流れを弱くしてもよく、また、気体の流れを強くしたときには元の強さに戻してもよい。
(気体の吹き出し強さ調整の処理例)
次に、気体の吹き出し強さ調整の処理例1から処理例6について図6から図11を参照して説明する。これらの処理例1から処理例6の各処理は、単独で用いられてもよく、また、並列的に又は直列的に適宜組み合わされて用いられてもよい。
(処理例1)
図6に示すように、処理例1では、ステップS1において、制御部103は、各ブロー部81からそれぞれ吹き出される気体の流れを第1の強さにするように各ブロー部81を制御する。その後、ステップS2において、制御部103は、センサ30が錠剤Tを検出している状態を所定時間以上維持したか否かを判断する。
ステップS2において、制御部103は、センサ30が錠剤Tを検出している状態を所定時間以上維持したと判断すると(ステップS2のYes)、ステップS3において、各ブロー部81のうちセンサ30に対応するブロー部81から吹き出される気体の流れを第1の強さから第2の強さにするよう、センサ30に対応するブロー部81を制御する。その後、処理はステップS2に戻される。なお、第2の強さは、第1の強さより強い(第2の強さ>第1の強さ)。
一方、ステップS2において、制御部103は、センサ30が錠剤Tを検出している状態を所定時間以上維持していないと判断すると(ステップS2のNo)、ステップS4において、各ブロー部81からそれぞれ吹き出される気体の流れを第1の強さに維持するよう、又は、各ブロー部81のうちセンサ30に対応するブロー部81から吹き出される気体の流れを第2の強さから第1の強さに戻すよう、センサ30に対応するブロー部81を制御する。その後、処理はステップS2に戻される。
ここで、レーザ変位計などのセンサ30が錠剤Tを検出している状態とは、センサ30の出力値(検出値)がONである状態であり、センサ30が錠剤Tを検出している状態を所定時間以上維持したか否かは、センサ30の出力値が所定時間以上継続して「ON」であるか否かで判断される。センサ30が誤検知していない場合には、錠剤Tがセンサ30の直下に搬送されてくるたびに「ON」になり、錠剤Tがセンサ30の下方に存在しなくなると「OFF」になることを繰り返す。つまり、正常時にはセンサ30は「ON」と「OFF」を交互に繰り返すことになる。異常時(誤検知しているとき)には、所定時間以上継続して「ON」の状態を保っていることになる。この判断処理は、例えば、他の処理例でも同様である。
また、第1の強さや第2の強さは所定値である。気体の流れの強さとは、気体の流速や流量などが変更されて変化するものである。例えば、気体の流速が上げられたり、気体の流量が上げられたりすることで、気体の流れが強くされ、逆に、気体の流速が下げられたり、気体の流量が下げられたりすることで、気体の流れが弱くされる。上記の所定時間は、例えば、通常時(異常時以外の時)のセンサ30が錠剤Tを検出している状態を維持している時間よりも長く設定されている。第1の強さや第2の強さ、所定時間などの情報は予め記憶部102に設定されているが、入力装置100aに対するユーザの入力操作に応じて変更されてもよい。
なお、制御部103は、センサ30が錠剤Tを検出している状態を所定時間以上維持しなくなった場合、気体の流れを第2の強さから第1の強さに戻すよう、センサ30に対応するブロー部81を制御するが、これに限るものではなく、例えば、ステップS3において、気体の流れを強くしてから所定時間経過した場合、気体の流れを第2の強さから第1の強さに戻すよう、センサ30に対応するブロー部81を制御してもよい。この場合には、ステップS4の処理を不要とすることができる。
また、気体の流れの強さが、第1の強さや第2の強さであること、また、強くなっていることや弱くなっていることを、例えば、ディスプレイやランプ、メータなどの出力装置100bによりユーザに報知するようにしてもよい。これにより、ユーザは気体の流れの強さがどの程度の強さであるのかを把握することができる。
このような処理例1によれば、センサ30が錠剤Tを検出している状態を所定時間以上維持した場合、センサ30によって錠剤Tとして検出されている対象物は錠剤Tではなく、センサ30に対応する透光部材71の下面に付着している異物(例えば粉やゴミ)であると判断し、センサ30に対応するブロー部81から吹き出される気体の流れが強くされる。これにより、センサ30に対応する透光部材71の下面、詳しくは図3に示す貫通孔70aから露出する透光部材71の下面に付着している異物が取り除かれるので、センサ30が錠剤Tの到来を誤検知することを抑えることができる。
ここで、上記の所定時間は、例えば、錠剤Tが10錠通過する時間よりも長い時間など、錠剤Tが連接して搬送されてくる可能性が著しく低い時間を設定する。つまり、錠剤Tが連接して搬送されてきたことによりセンサ30の「ON」出力が継続しているのではなく、カバー70に異物が付着していることに起因して「ON」出力が継続していると推定され得る時間を予め実験等で求め、これを設定する。
なお、ステップS2においてセンサ30による錠剤検出が所定時間以上維持され、ステップS3において気体の流れが第2の強さに変更されたにもかかわらず、再度ステップS2においてセンサ30により錠剤検出が所定時間以上続く場合には、処理を中断し、メンテナンス処理を行ってもよい。これは、以降の処理例2~6においても同様である。
(処理例2)
図7に示すように、処理例2では、ステップS11において、制御部103は、各ブロー部81からそれぞれ吹き出される気体の流れを第1の強さにするように各ブロー部81を制御する。その後、制御部103は、ステップS12において、センサ30が錠剤Tを検出している状態を所定時間以上維持したか否かを判断し、ステップS13において、第1の撮像部40又は第2の撮像部60により得られた撮像画像内に錠剤Tが存在しないか否かを判断する。
ステップS12において、制御部103は、センサ30が錠剤Tを検出している状態を所定時間以上維持したと判断し(ステップS12のYes)、ステップS13において、撮像画像内に錠剤Tが存在しないと判断すると(ステップS13のYes)、センサ30によって錠剤Tとして検出されているにも拘わらず、撮像画像に当該錠剤Tが存在しないのであるから、センサ30によって検知された対象物は錠剤Tではなく、センサ30に対応する透光部材71の下面に付着している異物(例えば粉やゴミ)であると判断し、ステップS14において、各ブロー部81のうちセンサ30に対応するブロー部81から吹き出される気体の流れを第1の強さから第2の強さにするよう、センサ30に対応するブロー部81を制御する。その後、処理はステップS12に戻される。
一方、ステップS12において、制御部103は、センサ30が錠剤Tを検出している状態を所定時間以上維持していないと判断すると(ステップS12のNo)、あるいは、ステップS13において、撮像画像内に錠剤Tが存在すると判断すると(ステップS13のNo)、ステップS15において、各ブロー部81からそれぞれ吹き出される気体の流れを第1の強さに維持するよう、又は、各ブロー部81のうちセンサ30に対応するブロー部81から吹き出される気体の流れを第2の強さから第1の強さに戻すよう、センサ30に対応するブロー部81を制御する。その後、処理はステップS12に戻される。
このような処理例2によれば、センサ30が錠剤Tを検出している状態を所定時間以上維持しているにもかかわらず、第1の撮像部40又は第2の撮像部60により得られた撮像画像内に錠剤Tが存在しない場合に、センサ30に対応するブロー部81から吹き出される気体の流れが強くされる。これにより、センサ30に対応する透光部材71の下面、詳しくは図3に示す貫通孔70aから露出する透光部材71の下面に付着している異物が取り除かれるので、センサ30が錠剤Tの到来を誤検知することを確実に抑えることができる。
(処理例3)
図8に示すように、処理例3は、ステップS21において、制御部103は、各ブロー部81からそれぞれ吹き出される気体の流れを第1の強さにするように各ブロー部81を制御する。その後、ステップS22において、制御部103は、第1の撮像部40及び第2の撮像部60により得られた各撮像画像の一方又は両方に異物が所定枚数(所定の撮像画像枚数)以上認められるか否かを判断する。
ステップS22において、制御部103は、各撮像画像の一方又は両方に異物が所定枚数以上認められると判断すると(ステップ22のYes)、ステップS23において、異物が所定枚数以上認められた撮像画像を取得した撮像部(第1の撮像部40及び第2の撮像部60の一方又は両方)に対応するブロー部81から吹き出される気体の流れを第1の強さから第2の強さにするように該当のブロー部81を制御する。その後、処理はステップS22に戻される。
一方、ステップS22において、制御部103は、各撮像画像の一方又は両方に異物が所定枚数以上認められないと判断すると(ステップS22のNo)、ステップS24において、各ブロー部81からそれぞれ吹き出される気体の流れを第1の強さに維持するよう、又は、異物が所定枚数以上認められた撮像画像を取得した撮像部に対応するブロー部81から吹き出される気体の流れを第2の強さから第1の強さに戻すように該当のブロー部81を制御する。その後、処理はステップS22に戻される。
このような処理例3によれば、第1の撮像部40及び第2の撮像部60によりそれぞれ得られた各撮像画像の一方又は両方に異物が所定枚数以上認められる場合、異物が所定枚数以上認められた撮像画像を取得した撮像部(第1の撮像部40及び第2の撮像部60の一方又は両方)に対応するブロー部81から吹き出される気体の流れが強くされる。つまり、撮像画像の中で同一位置に異物付着が所定枚数以上認められると、その異物は錠剤Tに付着したゴミではなく、カバー部70に付着したゴミであると判断され、該当のブロー部81から吹き出される気体の流れが強くされる。これにより、第1の撮像部40に対する透光部材71や第2の撮像部60に対する透光部材72の下面、詳しくは図3に示す各貫通孔70b、70dから露出する各透光部材71、72の下面に付着している異物が取り除かれるので、第1の撮像部40や第2の撮像部60などの撮像部が透光部材71、72の下面に付着した異物を撮像して錠剤Tを誤検知することを抑えることができる。
ここで、所定枚数とは、同一の撮像部で異なる錠剤Tを撮像して得られる複数の撮像画像の枚数として設定される。例えば、搬送される複数の錠剤Tを、第1の撮像部40により順次撮像した5つの撮像画像において同一位置(同一範囲内)に異物が認められた場合には、撮像画像に存在する異物は錠剤Tに付着しているものではなく、カバー部70の下面に付着している異物であると判断する。第1の撮像部40と第2の撮像部60で同一錠剤を撮像し、これら2つの撮像画像の同一位置に異物が認められた場合には、異物は錠剤Tに付着したものである可能性が高い。一方、異なる錠剤Tを撮像した撮像画像において、所定枚数以上異物が認められることで、カバー部70に異物が付着していることを推測することができる。
なお、撮像画像に異物が所定枚数以上認められるか否かが判断されるが、所定枚数にかえて、所定枚数の撮像画像を得るための時間である所定時間が用いられてもよい。例えば、搬送ベルト21上において一列に並ぶ錠剤Tの間隔が一定でなく不規則である場合には、所定枚数が用いられることが望ましい。一方、搬送ベルト21上において一列に並ぶ錠剤Tの間隔が一定である場合には、所定枚数又は所定時間が用いられる。
(処理例4)
図9に示すように、処理例4は、基本的に処理例3と同じ処理の流れであるが、処理例4では、処理例3のステップS22(図8参照)に替えて、ステップS32において、制御部103は、第1の撮像部40及び第2の撮像部60により得られた各撮像画像の一方又は両方において、錠剤Tが存在しない位置(撮像画像における錠剤Tが存在しない領域)に異物が所定枚数以上認められるか否かを判断する。その後の処理の流れは、処理例3と同様である。
このような処理例4によれば、第1の撮像部40及び第2の撮像部60によりそれぞれ得られた各撮像画像の一方又は両方において、錠剤Tが存在しない位置に異物が認められ、さらにその異物が所定枚数以上認められた撮像画像を取得した撮像部(第1の撮像部40及び第2の撮像部60の一方又は両方)に対応するブロー部81から吹き出される気体の流れが強くされる。つまり、撮像画像の中で錠剤Tが存在しない位置に異物付着が所定枚数(所定時間)以上認められると、その異物はカバー部70に付着した粉又はゴミであると判断されるとともに、第1の強さでのブローでは異物が除去不可能であると判断され、該当のブロー部81から吹き出される気体の流れが強くされる。これにより、第1の撮像部40に対する透光部材71や第2の撮像部60に対する透光部材72の下面、詳しくは図3に示す各貫通孔70b、70dから露出する各透光部材71、72の下面に付着している異物が取り除かれるので、第1の撮像部40や第2の撮像部60などの撮像部が透光部材71、72の下面に付着した異物を撮像して錠剤Tを誤検知することを抑えることができる。
(処理例5)
図10に示すように、処理例5は、基本的に処理例3と同じ処理の流れであるが、処理例5では、処理例3のステップS22(図8参照)に替えて、ステップS42において、制御部103は、第1の撮像部40及び第2の撮像部60により得られた各撮像画像の両方(二つの撮像画像)において、異物の有無又は異物の位置が一致しないか否かを判断する。その後の処理の流れは、処理例3と同様であるが、ステップS23において、制御部103は、第1の撮像部40及び第2の撮像部60の両方に対応する各ブロー部81から吹き出される気体の流れを第1の強さから第2の強さにするように該当の各ブロー部81を制御する。
このような処理例5によれば、第1の撮像部40及び第2の撮像部60によりそれぞれ得られた各撮像画像の両方において、異物の有無又は異物の位置が一致しない場合、第1の撮像部40及び第2の撮像部60の両方に対応する各ブロー部81からそれぞれ吹き出される気体の流れが強くされる。つまり、同一の錠剤Tについて第1の撮像部40で撮像した画像と第2の撮像部60で撮像した画像とにおいて、異物の有無や位置が一致しない場合には、その異物は錠剤Tに付着した粉又はゴミではなく、カバー部70に付着した粉又はゴミであると判断され、該当の各ブロー部81から吹き出される気体の流れが強くされる。これにより、第1の撮像部40に対する透光部材71や第2の撮像部60に対する透光部材72の下面、詳しくは図3に示す各貫通孔70b、70dから露出する各透光部材71、72の下面に付着している異物が取り除かれるので、第1の撮像部40や第2の撮像部60などの撮像部が透光部材71、72の下面に付着した異物を撮像して錠剤Tを誤検知することを抑えることができる。
(処理例6)
図11に示すように、処理例6は、基本的に処理例3と同じ処理の流れであるが、処理例6では、処理例3のステップS22(図8参照)に替えて、ステップS52において、制御部103は、インクジェットヘッド51のメンテナンス中であるか否かを判断する。その後の処理の流れは、処理例3と同様であるが、ステップS23において、制御部103は、全てのブロー部81から吹き出される気体の流れを第1の強さから第2の強さにするように該当の全ての各ブロー部81を制御する。
このような処理例6によれば、インクジェットヘッド51のメンテナンス中である場合、全てのブロー部81からそれぞれ吹き出される気体の流れが強くされる。これにより、メンテナンス中、センサ30、第1の撮像部40及び第2の撮像部60に対する各透光部材71、72の下面、詳しくは図3に示す各貫通孔70a、70b、70dから露出する各透光部材71、72の下面に付着している異物が取り除かれるので、センサ30が透光部材71の下面に付着した異物を検出して錠剤Tを誤検知すること、また、第1の撮像部40や第2の撮像部60などの撮像部が透光部材71、72の下面に付着した異物を撮像して錠剤Tを誤検知することを抑えることができる。
なお、インクジェットヘッド51のメンテナンス中であるか否かは、例えば、センサ30、第1の撮像部40、第2の撮像部60による錠剤Tの検出が所定時間以上なされなかったときにメンテナンス中と判断することができる。あるいは、制御装置100が、作業者によって「メンテナンスモード」が選択されたことを検知し、メンテナンス中であると判断してもよい。
通常、メンテナンス時には搬送ベルト21上に錠剤Tが存在しておらず、各ブロー部81から吹き出された気体の流れにより錠剤Tの姿勢が変化することもないため、強い気流が生じてもよい。また、インクジェットヘッド51のメンテナンス時には、メンテナンス部に設けられる吸引部により液滴の吸引を行うことがあり、これによって空気の流れが起き、インクジェットヘッド51に付着した粉やゴミなどが舞い上がり、カバー部70に付着することもあるが、各ブロー部81から吹き出された気体の流れを強くすることで、舞い上がった粉やゴミなどがカバー部70の下面に付着することを抑えることができる。また、舞い上がった粉やゴミなどがカバー部70の下面に付着しても、その粉やゴミなどを取り除くことも可能である。
以上説明したように、第1の実施形態によれば、錠剤印刷装置1は、搬送ベルト21により搬送される錠剤Tを検出する検出部(例えば、センサ30、第1の撮像部40又は第2の撮像部60)と、検出部により検出された錠剤Tに印刷を行うインクジェットヘッド51と、検出部を覆うカバー部70と、カバー部70の搬送ベルト21側の面に対して、平面視で錠剤Tの搬送方向H1と水平に交差する方向に気体を吹き付けるブロー部81と、ブロー部81を制御する制御部103とを備える。これにより、ブロー部81により気体がカバー部70の下面に吹き付けられ、カバー部70の下面に付着している異物(例えば粉やゴミ)が取り除かれるので、検出部がカバー部70の下面に付着した異物を検出して錠剤Tを誤検知することを抑えることが可能となる。したがって、異物の付着による誤検知を抑制し、効率よく錠剤Tに印刷を行うことができる。
<第2の実施形態>
第2の実施形態について図12を参照して説明する。
第2の実施形態では、図12に示すように、錠剤Tが二列で搬送されている。この場合、供給部10は搬送ベルト21に対して錠剤Tを二列にするように供給する。図12の例では、錠剤Tは、二列で搬送されているが、これに限定されるものではない。錠剤Tが二列で搬送される場合には、センサ30、第1の撮像部40及び第2の撮像部60は列ごとに設けられている。なお、インクジェットヘッド51は、各列に共通するように設けられているが、これに限定されるものではなく、列ごとに設けられてもよい。
ブロー部81は、複数のセンサ30、複数の第1の撮像部40及び複数の第2の撮像部60のそれぞれに対して設けられている。図12の例では、ブロー部81は六個設けられており、搬送方向H1に二列に並べられている。列ごとのブロー部81は、各列の内側を避けて外側に向かって気体を吹き出す。詳しくは、各ブロー部81は、平面視で複数の吸引孔21aが二列に並ぶ列間に位置するようにカバー部70の下面に設けられている。これらのブロー部81は、それぞれカバー部70の下面に沿ってカバー部70と搬送ベルト21との間の空間の外側に向かって互いに逆方向に気体を吹き出す。
なお、三列以上の複数列で搬送する場合には、各ブロー部81はそれぞれ外側に向かって気体を吹き出すようにする。このとき、内側に位置する搬送列に対応するブロー部81は外側に位置する搬送列の錠剤Tに向かって気体を吹き出すことになるが、外側(つまり隣接する搬送列が少ない方向)に向かって気体を吹き出すようにすることでブロー部81から吹き出された気体が錠剤Tの姿勢に影響を与えるリスクを最小にすることができる。
このような構成によれば、気体の吹き出し方向は、平面視で搬送方向H1と水平に交差する方向であり、隣り合う搬送列に向かない方向、すなわち隣り合う搬送列の外側に向く方向である。これにより、少なくともブロー部81の下通過時にしか錠剤Tが気流にさらされないため、気体の吹き出しによる気流が錠剤Tの姿勢に影響を与えることを抑えられるので、効率よく錠剤Tに印刷を行うことができる。また、ブロー部81から吹き出された気体がインクジェットヘッド51の印刷に影響を与えることを抑えられるので、効率よく錠剤Tに印刷を行うことができる。
なお、搬送方向H1に並ぶ各ブロー部81の個々の気体の吹き出し方向は同じになっているが、これに限定されるものではなく、異なっていてもよい。また、各ブロー部81の個々の気体の吹き出し方向は、平面視で搬送方向H1と水平に交差する方向であるため、平面視で搬送方向Hの上流側に傾斜する方向であっても、平面視で搬送方向Hの下流側に傾斜する方向であってもよいが、インクジェットヘッド51側への気体の吹き付けを抑えるため、インクジェットヘッド51側と反対側に傾斜する方向であることが好ましい。例えば、センサ30及び第1の撮像部40に対応する各ブロー部81の個々の気体の吹き出し方向は、平面視で搬送方向H1の上流側に傾斜する方向であり、第2の撮像部60に対応するブロー部81の気体の吹き出し方向は、平面視で搬送方向H1の下流側に傾斜する方向であることが望ましい。
以上説明したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同じ効果を得ることができる。また、錠剤Tを複数列で搬送する場合でも、気体の吹き出しによる気流が錠剤Tの姿勢やインクジェットヘッド51の印刷に影響を与えることが抑えられるので、効率よく錠剤Tに印刷を行うことができる。
<他の実施形態>
前述の説明においては、実施の一形態に係る錠剤印刷装置1(錠剤印刷方法)を用いて錠剤Tに印刷を行うが、これは、実施の一形態に係る錠剤印刷装置1(錠剤印刷方法)を用いて錠剤Tに印刷を行い、印刷済の錠剤Tを製造すると言い換えることも可能である。すなわち、錠剤印刷装置1を錠剤製造装置に、錠剤印刷方法を錠剤製造方法に言い換えることができる。
また、前述の説明においては、錠剤Tを一列又は二列で搬送することを例示したが、これに限るものではなく、その列数は三列又は五列以上であってもよく、特に限定されるものではなく、搬送ベルト21の本数も二本以上であってもよく、特に限定されるものではない。また、インクジェットヘッド51の個数も二個以上であってもよく、特に限定されるものではない。
また、前述の説明においては、インクジェットヘッド51として、ノズル51aが一列に並ぶ印刷ヘッドを例示したが、これに限るものではなく、例えば、ノズル51aが複数列に並ぶ印刷ヘッドを用いるようにしてもよい。また、水平面内において搬送方向H1と直交する方向にインクジェットヘッド51を複数並べて用いるようにしてもよい。
また、前述の説明においては、インクジェットヘッド51をノズル51aが並ぶ方向が水平面内において搬送方向H1と直交する方向になるように設けることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、ノズル51aが並ぶ方向が水平面内において搬送方向H1と交差する方向になるように設けるようにしてもよい。
また、前述の説明においては、錠剤Tの片面を印刷することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、搬送部20、センサ30、第1の撮像部40、印刷部50及び第2の撮像部60を一つのユニットし、そのユニットを上下に重ねて配置して、上側の搬送部20で印刷した錠剤Tを反転して下側の搬送部20に受け渡し、錠剤Tの両面を印刷するようにしてもよい。
また、前述の説明においては、錠剤Tが搬送ベルト21上に一定間隔ではなくランダムに供給されるとしたが、これに限るものではなく、一定間隔で供給されてもよい。また、前述の説明においては、搬送ベルト21上に形成された吸引孔21aによって錠剤Tが吸引保持されるとしたが、これに限るものではなく、ポケットなどに収容保持され搬送されるようにしてもよく、あるいは、搬送ベルト21上に自重により保持され搬送されるようにしてもよい。
ここで、前述の錠剤Tとしては、医薬用、飲食用、洗浄用、工業用あるいは芳香用として使用される錠剤を含めることができる。また、錠剤Tとしては、裸錠(素錠)や糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠、多層錠、有核錠などがあり、硬カプセルや軟カプセルなど各種のカプセル錠も錠剤Tに含めることができる。さらに、錠剤Tの形状としては、円盤形やレンズ形、三角形、楕円形など各種の形状がある。また、印刷対象の錠剤Tが医薬用や飲食用である場合には、使用するインクとして可食性インクが好適である。この可食性インクとしては、合成色素インク、天然色素インク、染料インク、顔料インクのいずれを使用しても良い。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。