<第1の実施形態>
第1の実施形態について図1から図5を参照して説明する。
(基本構成)
図1に示すように、第1の実施形態に係る錠剤印刷装置1は、供給装置10と、第1の印刷装置20と、第2の印刷装置30と、回収装置40と、制御装置50とを備えている。なお、第1の印刷装置20及び第2の印刷装置30は基本的に同じ構造である。
供給装置10は、ホッパ11、整列フィーダ12及び受け渡しフィーダ13を有している。この供給装置10は、印刷対象となる錠剤Tを第1の印刷装置20に供給することが可能に構成されており、第1の印刷装置20の一端側に位置付けられている。ホッパ11は、多数の錠剤Tを収容し、整列フィーダ12に錠剤Tを順次供給する。整列フィーダ12は、供給された錠剤Tを二列に整列し、受け渡しフィーダ13に向けて搬送する。受け渡しフィーダ13は、整列フィーダ12上の錠剤Tを順次吸引して第1の印刷装置20まで二列で搬送し、第1の印刷装置20に二列のまま供給する。この供給装置10は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。整列フィーダ12及び受け渡しフィーダ13としては、例えば、ベルト搬送機構を用いることが可能である。なお、印刷対象となる錠剤Tは立体形状で、厚みを有する。
第1の印刷装置20は、搬送装置(錠剤搬送装置)21と、検出装置22と、第1の撮像装置(印刷用の撮像装置)23と、印刷ヘッド装置24と、第2の撮像装置(検査用の撮像装置)25と、乾燥装置26とを備えている。
搬送装置21は、搬送ベルト21a、駆動プーリであるプーリ体21b、複数(図1の例では、三つ)の従動プーリ21c、モータ(駆動部)21d、位置検出器21e及び吸引チャンバ21fを有している。搬送ベルト21aは、無端状に形成されており、プーリ体21b及び各従動プーリ21cに架け渡されている。プーリ体21b及び各従動プーリ21cは装置本体に回転可能に設けられており、プーリ体21bはモータ21dに連結されている。モータ21dは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。位置検出器21eは、エンコーダなどの機器であり、モータ21dに取り付けられている。この位置検出器21eは電気的に制御装置50に接続されており、検出信号を制御装置50に送信する。制御装置50は、その検出信号に基づいて搬送ベルト21aの位置や速度、移動量などの情報を得ることができる。この搬送装置21は、モータ21dによるプーリ体21bの回転によって各従動プーリ21cと共に搬送ベルト21aを回転させ、その搬送ベルト21a上の錠剤Tを図1及び図2中の矢印A1の方向(搬送方向A1)に搬送する。
ここで、図2に示すように、搬送ベルト21aの表面には、円形状の吸引孔21gが複数形成されている。これらの吸引孔21gは、それぞれ錠剤Tを吸着する貫通孔であり、二本の搬送経路を形成するように搬送方向A1に沿って平行に二列に並べられている。各吸引孔21gは、吸引チャンバ21f(図1参照)に接続されており、その吸引チャンバ21fにより吸引力を得ることが可能になっている。吸引チャンバ21fは、搬送ベルト21aの各吸引孔21gに置かれた錠剤Tに吸引力を与える(作用させる)ためのチャンバである。この吸引チャンバ21fには、ポンプなどの吸気装置が吸引管(いずれも図示せず)を介して接続されており、吸気装置の作動によって吸引チャンバ21fの内部は減圧される。なお、吸引管は、吸引チャンバ21fの側面(搬送方向A1と平行な面)の略中央に接続されている。また、吸気装置は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
検出装置22は、複数の検出部22a(図2の例では、二つ)を有している。検出部22aは、供給装置10によって搬送ベルト21aにおける錠剤Tが供給される位置よりも、搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に錠剤Tの搬送経路ごとに一つずつ並べられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。検出部22aは、レーザ光の投受光によって搬送ベルト21a上の錠剤Tの位置(搬送方向A1の位置)を検出し、下流に位置する各装置のトリガーセンサとして機能する。検出部22aとしては、反射型レーザセンサなど各種のレーザセンサを用いることが可能である。各検出部22aは制御装置50に電気的に接続されており、制御装置50に検出信号を送信する。
第1の撮像装置23は、複数の撮像部23a(図2の例では、二つ)を有している。撮像部23aは、検出装置22が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に錠剤Tの搬送経路ごとに一つずつ並べられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。この撮像部23aは、前述の錠剤Tの位置情報に基づき、錠剤Tが撮像部23aの直下に到達したタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像(印刷用の画像)を取得し、取得した画像を制御装置50に送信する。撮像部23aとしては、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの撮像素子を有する各種のカメラを用いることが可能である。各撮像部23aは制御装置50に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置50により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられている。
印刷ヘッド装置24は、インクジェット方式の複数の印刷ヘッド24a(図2の例では、二つ)を有している。印刷ヘッド24aは、第1の撮像装置23が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に錠剤Tの搬送経路ごとに一つずつ並べられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。印刷ヘッド24aは、複数のノズル24b(図2参照:ただし、図示では四つだけ表示)を具備し、それらのノズル24bから個別にインクを吐出する。この印刷ヘッド24aにおいて、ノズル24bが形成されている面がノズル面M1である(図1参照)。印刷ヘッド24aは、ノズル24bが並ぶ整列方向が水平面内で搬送方向A1と交差するように(例えば直交するように)設けられている。印刷ヘッド24aとしては、圧電素子、発熱素子または磁歪素子などの駆動素子を有する各種のインクジェット方式の印刷ヘッドを用いることが可能である。各印刷ヘッド24aは制御装置50に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置50により制御される。
第2の撮像装置25は、複数の撮像部25a(図2の例では、二つ)を有している。撮像部25aは、印刷ヘッド装置24が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に錠剤Tの搬送経路ごとに一つずつ並べられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。この撮像部25aは、前述の錠剤Tの位置情報に基づき、錠剤Tが撮像部25aの直下に到達したタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像(検査用の画像)を取得し、取得した画像を制御装置50に送信する。撮像部25aとしては、前述の撮像部23aと同様、CCDやCMOSなどの撮像素子を有する各種のカメラを用いることが可能である。各撮像部25aは制御装置50に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置50により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられている。
図1に戻り、乾燥装置26は、第2の撮像装置25が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、例えば、搬送装置21の下方に設けられている。この乾燥装置26は、二列の搬送経路に共通の乾燥装置であり、搬送ベルト21a上の各錠剤Tに塗布されたインクを乾燥させる。乾燥装置26としては、放射熱により乾燥対象を乾燥させるヒータ、あるいは、温風や熱風により乾燥対象を乾燥させる送風機など各種の乾燥部を用いることが可能である。乾燥装置26は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
なお、乾燥装置26の上方を通過した錠剤Tは、搬送ベルト21aの移動に伴って搬送され、搬送ベルト21aにおける各従動プーリ21c側の端部付近の位置に到達する。この位置で吸引作用が錠剤Tに働かなくなり、錠剤Tは搬送ベルト21aに保持された状態から解放され、第1の印刷装置20から第2の印刷装置30に受け渡される。
第2の印刷装置30は、搬送装置31と、検出装置32と、第1の撮像装置(印刷用の撮像装置)33と、印刷ヘッド装置34と、第2の撮像装置(検査用の撮像装置)35と、乾燥装置36とを備えている。搬送装置31は、搬送ベルト31a、駆動プーリであるプーリ体31b、複数(図1の例では、三つ)の従動プーリ31c、モータ(駆動部)31d、位置検出器31e及び吸引チャンバ31fを有している。なお、第2の印刷装置30を構成する各要素は、前述の第1の印刷装置20の対応する構成要素と基本的に同じ構造であるため、その説明を省略する。第2の印刷装置30の搬送方向は図1中の矢印A2の方向(搬送方向A2)である。
回収装置40は、不良品回収装置41と、良品回収装置42とを備えている。この回収装置40は、第2の印刷装置30の乾燥装置36が設けられた位置よりも搬送方向A2の下流側に位置付けられて設けられており、不良品回収装置41により不良品の錠剤Tを回収し、良品回収装置42により良品の錠剤Tを回収する。
不良品回収装置41は、噴射ノズル41aと、収容部41bとを有している。噴射ノズル41aは、第2の印刷装置30の吸引チャンバ31f内に設けられており、搬送ベルト31aにより搬送される錠剤T(不良品の錠剤T)に向けて気体(例えば、エア)を噴射し、搬送ベルト31aから錠剤Tを落下させる。このとき、噴射ノズル41aから噴射された気体は、搬送ベルト31aの吸引孔(図2に示す吸引孔21gと同様である)を通過して錠剤Tに当たる。噴射ノズル41aは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。収容部41bは、搬送ベルト31aから落下した錠剤Tを受け取って収容する。
良品回収装置42は、気体吹出部42aと、収容部42bとを有している。この良品回収装置42は、不良品回収装置41が設けられた位置よりも搬送方向A2の下流側に位置付けられて設けられている。気体吹出部42aは、第2の印刷装置30の搬送装置31内であってその搬送装置31の端部、すなわち搬送ベルト31aにおける各従動プーリ31c側の端部に設けられている。気体吹出部42aは、例えば印刷処理中、常に搬送ベルト31aに向けて気体(例えば、エア)を吹き出し、搬送ベルト31aから錠剤Tを落下させる。このとき、気体吹出部42aから吹き出された気体は、搬送ベルト31aの吸引孔(図2に示す吸引孔21gと同様である)を通過して錠剤Tに当たる。この気体吹出部42aとしては、例えば、搬送方向A2に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に延びるスリット状の開口を有するエアブローを用いることが可能である。気体吹出部42aは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。収容部42bは、搬送ベルト31aから落下した錠剤Tを受け取って収容する。
ここで、不良品回収装置41を通過した錠剤Tは、搬送ベルト31aの移動に伴って搬送され、搬送ベルト31aにおける各従動プーリ31c側の端部付近の位置に到達する。この位置で吸引作用が錠剤Tに働かなくなるが、気体吹出部42aを設けることで、搬送ベルト31aから錠剤Tを確実に落下させて収容部42bに回収することができる。
制御装置50は、画像処理部51、印刷処理部52、検査処理部53及び記憶部54を備えている。画像処理部51は画像を処理する。印刷処理部52は印刷に係る処理を行う。検査処理部53は検査に係る処理を行う。記憶部54は処理情報や各種プログラムなどの各種情報を記憶する。このような制御装置50は、供給装置10や第1の印刷装置20、第2の印刷装置30を制御し、また、第1の印刷装置20や第2の印刷装置30の個々の検出装置22、32から送信される錠剤Tの位置情報、第1の印刷装置20や第2の印刷装置30の個々の撮像装置23、25、33、35から送信される画像などを受信する。
(制御板)
図1及び図2に示すように、前述の印刷ヘッド装置24の各印刷ヘッド24aには、それらに共通の制御板27が設けられている。この制御板27について図3及び図4を参照して説明する。なお、第2の印刷装置30の印刷ヘッド装置34用の制御板37(図1参照)も基本的に同じ構造であるため、その説明を省略する。
図3及び図4に示すように、制御板27は、例えば長方形の板状に形成されている。この制御板27は、その長手方向が錠剤Tの搬送方向A1に水平面内で直交する方向にされ、さらに、各印刷ヘッド24aの下面(ノズル面M1)に対して垂直にされ、各印刷ヘッド24aにおける搬送方向A1の上流側(搬送方向上流側)の面に設けられ、搬送ベルト21aと印刷ヘッド24aのノズル面M1の高さ位置との間に位置付けられている。制御板27における搬送ベルト21a側の端部は、複数の櫛歯27aが搬送方向A1に水平面内で直交する方向に並ぶ櫛歯形状に形成されている。各櫛歯27aは、例えば四角柱形状に形成されている。このような制御板27は、各印刷ヘッド24aより搬送方向A1の上流側に位置し、搬送ベルト21aと各印刷ヘッド24aとの間に生じる気流を制御する。
制御板27の長手方向長さ(搬送方向A1に水平面内で直交する方向の長さ)は、各印刷ヘッド24aの全ノズル24bが並ぶ列の長さ以上であり、制御板27の厚さ、すなわち短手方向長さ(搬送方向A1に沿う方向の長さ)は、例えば2mm程度である。また、各櫛歯27aの下端と搬送ベルト21aの上面との垂直離間距離は、例えば1mm程度であり、各櫛歯27aの下端は、搬送ベルト21aの上面よりも高く、搬送ベルト21aの上面に載置された錠剤Tの頂点よりも低い位置に存在する。櫛歯27aの短手方向長さ(搬送方向A1に水平面内で直交する方向の長さ)は例えば2mm程度であり、隣接する二つの櫛歯27aの水平離間距離も例えば2mm程度である。ただし、隣接する二つの櫛歯27aのうち、搬送ベルト21aにより搬送される錠剤Tを挟むことになる二つの櫛歯27aの水平離間距離は、印刷対象の錠剤Tの直径(錠剤Tの水平方向の最大サイズの一例)に応じ、その直径より大きくなっている。つまり、制御板27は、搬送ベルト21aにより搬送される錠剤Tに当たることを回避する形状に形成されている。なお、錠剤Tの直径は、錠剤Tの種類によって様々であるが、例えば、5〜12mm程度である。
このような制御板27の材料としては、SUS(ステンレス鋼)などの金属を用いることが可能である。制御板27の材料としては、食品衛生法適合品であれば良く、SUS以外の材料、例えば、アルミや樹脂を用いることも可能である。
ここで、制御板27は、二列に並ぶ各印刷ヘッド24aに対して共用部材として一枚だけ設けられているが、これに限るものではなく、一枚ずつ設けられていても良い。また、全ての櫛歯27aは四角柱形状に形成されているが、これに限るものではなく、例えば、三角柱形状や六角柱形状、あるいは、円柱形状や楕円柱形状に形成されても良い。また、全ての櫛歯27aを同じ形状に形成しなくても良く、各櫛歯27aの一部を異なる形状としても良く、あるいは、各櫛歯27aをそれぞれ異なる形状としても良い。
なお、図4に示すように、搬送ベルト21aの各吸引孔21gは、吸引チャンバ21fに形成された溝28a及び複数の貫通孔28bを介して吸引チャンバ21f内に接続されている。溝28aは、搬送ベルト21aがプーリ体21b及び各従動プーリ21cに架け渡されたときに、搬送ベルト21aの各吸引孔21gの直下に位置するように錠剤Tの搬送経路ごとに形成されている。この溝28aの底面に各貫通孔28bが搬送方向A1に並ぶように形成されている。吸引チャンバ21fの内部が吸引されると、溝28aや各貫通孔28bを介して吸引孔21g上の錠剤Tが吸引されることになる。
また、図4に示すように、制御板27の長手方向長さ(搬送方向A1に水平面内で直交する方向の長さ)は、印刷対象の錠剤Tの同方向の長さ(搬送方向A1に水平面内で直交する方向の長さ)以上である。このため、吸引孔21g上に錠剤Tが吸引され搬送されているとき、錠剤Tが制御板27の下方を通過するときの搬送路は制御板27によって覆われることとなる。なお、例えば、錠剤Tが円盤形である場合、この「同方向の長さ」とは、錠剤Tの直径である。
(印刷工程)
次に、前述の錠剤印刷装置1が行う印刷処理及び検査処理について説明する。
まず、印刷に要する印刷データなどの各種情報が制御装置50の記憶部54に記憶される。そして、供給装置10のホッパ11に印刷対象の錠剤Tが多数投入されると、錠剤Tはホッパ11から整列フィーダ12に順次供給され始め、整列フィーダ12により二列に並べられて移動する。この二列で移動する錠剤Tは受け渡しフィーダ13により搬送ベルト21aに順次供給される。搬送ベルト21aは、モータ21dによるプーリ体21b及び各従動プーリ21cの回転によって搬送方向A1に回転している。このため、搬送ベルト21a上に供給された錠剤Tは搬送ベルト21a上で二列に並んで所定の移動速度で搬送されていく。なお、搬送ベルト31aもモータ31dによるプーリ体31b及び各従動プーリ31cの回転によって搬送方向A2に回転している。
その後、搬送ベルト21a上の錠剤Tは検出装置22によって検出される。これにより、錠剤Tの位置情報(搬送方向A1の位置)が取得され、制御装置50に入力される。この錠剤Tの位置情報は、記憶部54に保存されて後処理で用いられる。次に、搬送ベルト21a上の錠剤Tが前述の錠剤Tの位置情報に基づくタイミングで第1の撮像装置23によって撮像され、撮像された画像が制御装置50に送信される。第1の撮像装置23から送信された個々の画像に基づき、錠剤Tの位置ずれ情報(例えば、X方向、Y方向及びθ方向での錠剤Tの位置ずれ)が画像処理部51により生成され、記憶部54に保存される。この錠剤Tの位置ずれ情報に基づき、錠剤Tに対する印刷条件(インクの吐出位置や吐出速度など)が印刷処理部52により設定され、記憶部54に保存される。
次いで、搬送ベルト21a上の個々の錠剤Tは、前述の錠剤Tの位置情報に基づくタイミング、すなわち錠剤Tが印刷ヘッド装置24の下方に到達したタイミングで、前述の印刷条件に基づいて印刷ヘッド装置24により印刷が実行される。印刷ヘッド装置24の各印刷ヘッド24aにおいて、各ノズル24bからインクが適宜吐出され、その錠剤Tの上面に文字(例えばアルファベット、片仮名、番号)やマーク(例えば記号、図形)などの識別情報が印刷される。
識別情報が印刷された錠剤Tは、前述の錠剤Tの位置情報に基づくタイミングで第2の撮像装置25によって撮像され、撮像された画像が制御装置50に送信される。第2の撮像装置25から送信された個々の画像に基づき、錠剤Tごとの印刷パターンの印刷位置を示す印刷位置情報が画像処理部51により生成され、記憶部54に保存される。その印刷位置情報に基づき、錠剤Tに対する印刷良否が検査処理部53により判断され、錠剤Tごとの印刷良否の結果を示す印刷良否結果情報が記憶部54に保存される。例えば、印刷パターンが錠剤Tの所定位置に印刷されているか否かが判断される。
検査後の錠剤Tは、搬送ベルト21aの移動に伴って搬送され、乾燥装置26の上方を通過する。このとき、錠剤Tに塗布されたインクは、錠剤Tが乾燥装置26の上方を通過する間に乾燥装置26によって乾燥し、インクが乾燥した錠剤Tは搬送ベルト21aの移動に伴って搬送されていき、搬送ベルト21aにおける各従動プーリ21c側の端部付近に位置する。この位置で吸引作用が錠剤Tに働かなくなり、錠剤Tは搬送ベルト21aに保持された状態から解放され、第1の印刷装置30から第2の印刷装置30に渡される。
その後、第2の印刷装置30でも、前述と同じように印刷処理及び検査処理が行われる。検査後の錠剤Tは、搬送ベルト31aの移動に伴って搬送されていき、乾燥装置36の上方を通過する。そして、インクが乾燥した錠剤Tは、不良品回収装置41に到達する。不良品の錠剤Tは、噴射ノズル41aから噴射された気体により搬送ベルト31aから落とされ、収容部41bによって回収される。一方、良品の錠剤Tは、不良品回収装置41を通過し、良品回収装置42に到達する。この位置で良品の錠剤Tは、吸引作用が錠剤Tに働かなくなるとともに、気体吹出部42aから吹き出された気体によって搬送ベルト31aから離れて落下し、収容部42bによって回収される。
このような印刷工程では、吸引孔21g上に供給された錠剤Tは、吸引孔21gからの吸引によって搬送ベルト21a上に保持されるが、吸引孔21gが錠剤Tによって完全に塞がれないことがあり、この場合には、吸引孔21gから空気が吸引されるため、その吸引孔21gの上方には気流が発生する。また、錠剤Tの搬送時には、搬送ベルト21aの移動によって搬送方向A1に沿って搬送ベルト21a上を流れる気流も発生する。また、印刷ヘッド24aやその周辺の部材が搬送ベルト21a上方に存在すると、搬送ベルト21a上を流れる気流がこれらの部材にぶつかってさらに乱気流が発生する。
このように気流が発生するが、各印刷ヘッド24aの下方やその周辺に生じる気流は制御板27によって制御されている。すなわち、制御板27は、搬送ベルト21aの移動によって搬送方向A1に沿って搬送ベルト21aと印刷ヘッド24aとの間に生じる気流が遮られる遮蔽部と気流が通過する開口部とを有することで、気流を制御する。本実施形態の場合、遮蔽部とは各櫛歯27aであり、開口部とは各櫛歯27aの間の空間である。例えば、搬送方向A1に沿って搬送ベルト21a上を流れる気流は制御板27にぶつかり、制御板27の各櫛歯27aの間を通過する。これにより、搬送ベルト21aと各印刷ヘッド24aとの間に発生する気流が制御され、錠剤Tや搬送ベルト21aに付着した粉が各印刷ヘッド24aの下方やその周辺で生じる気流によって舞うことが抑えられるので、その粉が印刷ヘッド24aの下面(ノズル面)に付着することを抑制することが可能となる。また、制御板27の上流側においては、錠剤Tや搬送ベルト21aに付着した粉が気流によって舞っても、その粉の一部は制御板27により遮られるため、印刷ヘッド24aの下面に付着することを抑制することが可能となる。
ここで、図5に示すように、制御板27を有さない従来の錠剤印刷装置、制御板27の櫛歯27aを有さない遮蔽板を備えた錠剤印刷装置、本実施形態の錠剤印刷装置1の制御板27が樹脂性であるもの、及び本実施形態の錠剤印刷装置1の制御板27が金属性であるものを用いて、30分間に亘って錠剤Tに対して印刷を行い、印刷ヘッド24aに付着している粉の量を目視にて観察し、また、印刷不良の錠剤Tの発生率を観察した。図5は、その結果を表わすものである。
まず、制御板27を有さない従来の錠剤印刷装置においては、印刷ヘッド24aに粉が多量に付着するとともに、印刷不良の錠剤Tが多発した。
次に、制御板27の櫛歯27aを有さない遮蔽板を備えた錠剤印刷装置においても、従来の錠剤印刷装置同様、印刷ヘッド24aに粉が多量に付着するとともに、印刷不良の錠剤Tが多発した。これは、吸引孔21gの上方に発生している気流の大部分が櫛歯27aを有さない遮蔽板にぶつかってさらなる乱流が発生し、かつ、遮蔽板と搬送ベルト21aとの間の隙間において流速が増すことによって、印刷ヘッド24aの下方においてさらに気流が発生して粉が舞いあがってしまうことによると考えられる。
次に、本実施形態の錠剤印刷装置1で、樹脂性の制御板27を備えたものにおいては、印刷ヘッド24aに粉の付着はほとんど見られず、さらに、印刷不良の錠剤Tもなかった。また、制御板27には粉の付着が見られた。
次に、本実施形態の錠剤印刷装置1で、金属性の制御板27を備えたものにおいては、印刷ヘッド24aに粉の付着はほとんど見られず、さらに、印刷不良の錠剤Tもなかった。加えて、制御板27にも粉の付着が見られなかった。
ここで、搬送ベルト21a面上に吸引して搬送される錠剤Tが、搬送ベルト21aと各印刷ヘッド24aとの間に発生する気流によって揺れてしまった場合、錠剤Tの印刷面の姿勢が保てなくなる恐れがある。さらに、錠剤Tは立体形状で、厚みを有するため、錠剤Tが印刷ヘッド24aの下方を通過する際は、印刷ヘッド24aのノズル面M1と錠剤Tの印刷面との距離は、ノズル面M1と錠剤Tが吸引されていない搬送ベルト21aの上面との距離よりも短くなる。例えば、印刷ヘッド24aのノズル面M1と錠剤Tの印刷面との距離は、ノズル面M1と錠剤Tが吸引されていない搬送ベルト21aの上面との距離に対し、20〜25%(20%以上25%以下の範囲内)になる。
そのため、錠剤Tの印刷面の姿勢は、錠剤Tが印刷ヘッド24aの下方を通過するときの急激な圧力変動によって生じる乱気流や、搬送ベルト21a上に流れる気流が印刷ヘッド24aにぶつかって印刷ヘッド24aの近くに生じる乱気流の影響を受けやすい。このような気流の影響を受けて錠剤Tの印刷面の姿勢が保てなくなると、印刷位置がずれたり、印刷がぶれたりして印刷不良を起こす可能性がある。したがって、印刷ヘッド24a周辺の搬送ベルト21a面上においても気流を制御する必要がある。
上記のように搬送方向A1に沿って搬送ベルト21a上を流れる気流は制御板27にぶつかり、制御板27における開口部を通過する。これにより、搬送ベルト21a上を流れる気流を、搬送方向A1に沿った層流に整流することができる。
また、制御板27の長手方向長さ(搬送方向A1に水平面内で直交する方向の長さ)は、印刷対象の錠剤Tの同方向の長さ(搬送方向A1に水平面内で直交する方向の長さ)以上である。このため、搬送ベルト21a上の錠剤Tの搬送路を覆うように制御板27を配置し、搬送ベルト21a上を流れる気流を、搬送方向A1に沿った層流に整流することができる。
また、制御板27は、搬送ベルト21aにより搬送される錠剤Tに当たることを回避する形状であり、制御板27の下端の一部は、搬送ベルト21aの上面よりも高く、搬送ベルト21a上の錠剤Tの頂点より低い位置に存在している。そのため、錠剤Tの搬送を妨げずに、搬送ベルト21a表面に近い気流も層流に整流することができる。
以上説明したように、第1の実施形態によれば、搬送ベルト21aと印刷ヘッド24aとの間に生じる気流を制御する制御板27が、印刷ヘッド24aより搬送方向A1の上流側に位置付けられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。これにより、各印刷ヘッド24aの下方やその周辺に生じる気流は制御されるので、錠剤Tや搬送ベルト21aに付着した粉が各印刷ヘッド24aの下方やその周辺で生じる気流によって舞うことを抑制することができる。また、錠剤Tや搬送ベルト21aに付着した粉が気流によって舞っても、その粉の一部は制御板27により遮られるため、印刷ヘッド24aの下面に付着することを抑制することができる。したがって、錠剤Tの粉が印刷ヘッド24aの下面に付着することを抑え、印刷ヘッド24aのインクの吐出不良や飛翔方向不良を抑制することが可能になるので、錠剤Tの粉に起因する印刷品質の低下を抑えることができる。
また、印刷ヘッド24aの下方やその周辺の搬送ベルト21a上の気流を層流に整流し、乱気流の発生を抑制することができる。これにより、搬送ベルト21aに吸引保持された錠剤Tの揺れを抑制することが可能となるので、錠剤Tの印刷面の姿勢が維持できないことに起因する印刷品質の低下を抑えることができる。
なお、制御板27は、印刷ヘッド24a自体に設けられているが、これに限るものではなく、他の部材に設けられても良い(以下の第2の実施形態及び第3の実施形態参照)。ただし、制御板27が印刷ヘッド24a自体に設けられている場合には、印刷対象の錠剤Tの品種を変更して錠剤Tの厚さが変わる際、印刷ヘッド24aの高さ位置を調整すれば、その高さ位置の調整と同時に制御板27の高さ位置も自動的に調整することになる。制御板27を印刷ヘッド24a以外に設けた場合には、印刷ヘッド24aの高さ位置と制御板27の高さ位置を個別に調整する必要があるが、制御板27を印刷ヘッド24a自体に設けることで、錠剤Tの厚さに合わせて印刷ヘッド24aの高さ位置と制御板27の高さ位置とを同時に調整することが可能であり、効率的な調整を実現することができる。
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について図6を参照して説明する。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点であるカバー60について説明し、その他の説明を省略する。
図6に示すように、第2の実施形態では、カバー60が設けられている。カバー60は、検出装置22(二つの検出部22a)、第1の撮像装置23(二つの撮像部23a)、印刷ヘッド装置24(二つの印刷ヘッド24a)及び第2の撮像装置25(二つの撮像部25a)を収容する筐体である。このカバー60は、その下面が搬送ベルト21aにより搬送される錠剤Tに当接しないよう、錠剤Tの厚さ(例えば、2〜4mm)に合わせて、搬送ベルト21aの上面から所定距離(例えば、5〜12mm)だけ離されて搬送ベルト21aの上方に設けられている。
カバー60の下面には、カバー60内の各検出部22aが搬送ベルト21a上の錠剤Tをそれぞれ検出することが可能になるよう、二つの貫通孔60aが搬送方向A1に水平面内で直交する方向に並べられて形成されており、カバー60内の各撮像部23aが搬送ベルト21a上の錠剤Tをそれぞれ撮像することが可能になるよう、二つの貫通孔60bが前述の貫通孔60aが並ぶ方向と同じ方向に並べられて形成されている。さらに、カバー60の下面には、カバー60内の各印刷ヘッド24aが搬送ベルト21a上の錠剤Tにそれぞれ印刷を行うことが可能になるよう、二つの貫通孔60cが前述の貫通孔60aが並ぶ方向と同じ方向に並べられて形成されており、カバー60内の各撮像部25aが搬送ベルト21a上の錠剤Tをそれぞれ撮像することが可能になるよう、二つの貫通孔60dが前述の貫通孔60aが並ぶ方向と同じ方向に並べられて形成されている。
各貫通孔60a、60b、60dは、カバー60の内部の底面に設けられたガラスなどの透光部材61、62によって塞がれている。また、各貫通孔60cは、シリコンなどの密閉部材63を介して貫通孔60cに印刷ヘッド24aが挿入されて塞がれている。このようにして、カバー60は密閉状態に形成されており、そのカバー60の内部は陽圧(正圧)に維持されている。
このようなカバー60の下面には、制御板27が撮像部23aと印刷ヘッド24aとの間に(少なくとも錠剤Tの搬送方向A1における印刷ヘッド24aより上流側)に位置付けられて設けられている。この制御板27により、第1の実施形態と同様、搬送ベルト21aと各印刷ヘッド24aとの間に生じる気流を制御することが可能になるので、錠剤Tの粉に起因する印刷品質の低下を抑えることができる。
また、本実施形態によれば、錠剤印刷装置1の運転を停止して、装置全体の清掃を行うときに、カバー60を取り外すことによって、カバー60に取り付けられた制御板27も共に取り外すことが可能になり、このカバー60及び制御板27を一度に清掃することができる。したがって、清掃作業を効率的に行うことができる。なお、検出装置22、第1の撮像装置23、第2の撮像装置25は、カバー60によって覆われているので、粉が付着することがなく、清掃する必要がない。したがって、清掃作業を簡略化することができる。
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について図7及び図8を参照して説明する。なお、第3の実施形態では、第2の実施形態との相違点(気体吹き付け部及び気体吸引部)について説明し、その他の説明を省略する。
図7及び図8に示すように、第3の実施形態では、カバー60に加え、二つの気体吹き付け部70及び二つの気体吸引部80が設けられている。各気体吹き付け部70及び各気体吸引部80が付着物除去機構として機能する。この付着物除去機構は、搬送ベルト21a上の錠剤Tまたはカバー60の下面に付着した付着物(例えば、粉やゴミ)に対して気体(例えば、空気や不活性ガス)を吹き付け、錠剤Tまたはカバー60の下面から付着物を吹き飛ばし、吹き飛ばした付着物を空気と共に吸引することによって、錠剤Tまたはカバー60の下面から付着物を除去する。また、錠剤Tが搬送ベルト21aによって搬送されることによって錠剤Tの粉が装置内に舞うことがあるが、この装置内を舞う粉、特にカバー60近傍を舞う粉も気体吹き付け部70及び気体吸引部80によって除去する。
カバー60は、検出装置22、第1の撮像装置23、印刷ヘッド装置24及び第2の撮像装置25に加え、二つの気体吹き付け部70を収容する筐体である。このカバー60は、第2の実施形態と同様、その下面が搬送ベルト21aにより搬送される錠剤Tに当接しないよう、錠剤Tの厚さに合わせて、搬送ベルト21aの上面から所定距離だけ離されて搬送ベルト21aの上方に設けられている。カバー60の下面には、第2の実施形態と同様、制御板27が撮像部23aと印刷ヘッド24aとの間に位置付けられて設けられている。この制御板27により、搬送ベルト21aと各印刷ヘッド24aとの間に生じる気流を制御することが可能になるので、錠剤Tの粉に起因する印刷品質の低下を抑えることができる。
カバー60の下面には、カバー60内の各気体吹き付け部70が搬送ベルト21aの上面に対して気体を吹き付けることが可能になるよう、複数の貫通孔60eが形成されている。これらの貫通孔60eは、例えば、気体吹き付け部70ごとに搬送方向A1に一列に並ぶように形成されている。気体吹き付け部70から吹き出された気体は、カバー60の下面を貫通する各貫通孔60eを通過し、搬送ベルト21a上に吹き付けられることになる。例えば、貫通孔60eの直径は数mm(一例として2mm程度)である。なお、各貫通孔60eは、カバー60の内部の底面に設けられた各気体吹き付け部70によって覆われている。これにより、カバー60は密閉状態に形成されており、そのカバー60の内部は陽圧(正圧)に維持されている。
各気体吹き付け部70は、カバー60の下面の各貫通孔60eにつながっており、それらの貫通孔60eから気体を吹き出し、搬送ベルト21a上に気体を吹き付ける。これにより、搬送ベルト21a上の錠剤Tが気体吹き付け部70の下方を通過する際、気体が搬送ベルト21a上の錠剤Tに向かって吹き付けられ、搬送ベルト21aの上面や錠剤Tに付着した付着物は錠剤Tから吹き飛ばされる。なお、各気体吹き付け部70は、気体供給部に流量調整弁(いずれも図示せず)を介して接続されており、その気体供給部から各気体吹き付け部70に気体が供給される。
また、カバー60の下面には、誘導板90が気体吹き付け部70の下方における搬送方向A1の下流側に位置付けられ、気体吹き付け部70ごとに設けられている。これらの誘導板90は、長方形状に形成されており、その長手方向が、搬送方向A1に水平面内で直交する方向に平行にされ、印刷ヘッド装置24側に倒されて傾斜している。誘導板90は、気体吹き付け部70から各貫通孔60eを介して吹き出された気体の一部を搬送方向A1の下流側に向けて流し、カバー60の下面に沿って搬送方向A1に流れる気流を生じさせる。これにより、カバー60の下面に付着した付着物に気体が吹き付けられ、カバー60の下面から付着物が吹き飛ばされる。なお、誘導板90は、二列に並ぶ気体吹き付け部70に対して一枚ずつ設けられているが、これに限るものではなく、共用部材として一枚だけ設けられていても良い。
各気体吸引部80は、搬送ベルト21aの側面に隣接して搬送ベルト21aを挟むように位置付けられ、吸引チャンバ21fに取り付けられている。これらの気体吸引部80は、吸気口81、排気口82及び内部流路83(図8参照)をそれぞれ有している。
吸気口81及び排気口82は、搬送方向A1に延びる長方形状(スリット状)に形成されている。吸気口81は、搬送ベルト21aの上面とカバー60の下面との間の空間から空気を吸い込むための開口であり、気体吸引部80における搬送ベルト21a側に位置付けられ、搬送ベルト21aの上面より高い位置に設けられている。この吸気口81の開口は、搬送方向A1において制御板27より上流側に終端が位置するように設けられている。これによって気体吹き付け部70からの気体が各印刷ヘッド24aにまで流れないようになっており、各印刷ヘッド24aのノズル24bが乾燥して吐出不良が起こることを防いだり、ノズル24bから吐出されたインクが気流の影響を受けて吐出方向が狂ったりすることを防いでいる。排気口82は、気体吸引部80における搬送ベルト21a側に位置付けられ、搬送ベルト21aより低い位置に設けられており、吸引チャンバ21fの内部に接続されている。内部流路83は、気体吸引部80の内部に形成されており、吸気口81及び排気口82をつなぐ流路である。
ここで、錠剤Tの搬送のため、吸引チャンバ21fの内部が吸引されると、各気体吸引部80において、排気口82から空気が吸引される。そして、排気口82につながる内部流路83を介して吸気口81から、搬送ベルト21aの上面とカバー60の下面との間の空間の空気が吸引される。これにより、気体吹き付け部70により吹き付けられた気体によって吹き飛ばされた付着物は、吸気口81から空気と共に吸引されることになる。
なお、吸気口81の高さ方向の長さを変化させることで、気体吸引部80の吸引力を調整することが可能である。ただし、吸気口81の高さ方向の長さは、錠剤Tの高さよりも短いことが望ましい。通常、吸気口81から空気を吸引する吸引力は、錠剤Tが吸気口81から吸い込まれるような吸引力に設定されていないが、吸引力の調整が不十分である場合や錠剤Tの種類(錠剤Tのサイズが異なる)が変更された場合など、錠剤Tが吸気口81から吸い込まれる懸念がある。このため、吸気口81の高さ方向の長さを錠剤Tの高さよりも短くすることで、錠剤Tが吸気口81から吸い込まれることを抑制することができる。なお、吸気口81の長手方向長さは、搬送ベルト21a上の錠剤Tに付着した付着物を取り除くために必要とされる吸引範囲に基づき、適宜設定されている。
また、気体吹き付け部70からの気体や、吸気口81から空気が吸引される吸引力によって、錠剤Tの位置(X方向、Y方向及びθ方向における錠剤Tの位置、錠剤Tの傾きなどの姿勢を含む)が搬送ベルト21a上で変わってしまったり、錠剤Tが搬送ベルト21aから落下したりすることなどがないよう、気体吹き付け部70からの気体の量や吸気口81からの空気の吸引力の設定が行われる。
また、気体吹き付け部70からの気体の吹き付け及び気体吸引部80からの空気の吸引は、錠剤印刷装置1の運転中、常に行われる。たとえ錠剤Tが一定時間、気体吹き付け部70や検出装置22、第1の撮像装置23、印刷ヘッド装置24に到来しなくても、気体吹き付け部70からの気体の吹き付け及び気体吸引部80からの空気の吸引を行うことで、搬送ベルト21a上に付着している粉を除去したり、搬送ベルト21aに粉が付着したりすることを抑えることができる。搬送ベルト21a上や、透明部材61に錠剤Tの粉が大量に付着していると、第1の撮像装置23にてその粉が集積した部分が撮像されてしまい、錠剤Tが存在しないにも拘わらず誤検知が起きて搬送ベルト21aに印刷が行われることがあるが、常に気体吹き付け部70からの気体の吹き付け及び気体吸引部80からの空気の吸引を行うことで、このような誤検知を防ぐことができる。
さらに、搬送ベルト21a上に粉が付着した状態で新たに錠剤Tが供給されると、錠剤Tが搬送ベルト21a上で滑ってしまい、搬送ベルト21aから落下したり、搬送ベルト21a上で姿勢が変わったりしてしまう。錠剤印刷装置1の運転中常に付着物除去機構によって気体の吹き付け及び吸引が行われることで、錠剤Tの搬送を再開した際の、錠剤Tの搬送ベルト21a上での滑りも抑えることができる。
前述のような構成において、錠剤Tの印刷時、各気体吹き付け部70によって気体が各貫通孔60eから搬送ベルト21a上に吹き出されている。さらに、吸引チャンバ21f内の空気は吸引されており、それに応じて、搬送ベルト21aの上面とカバー60の下面との間の空間の空気が各気体吸引部80の個々の吸気口81から吸引されている。この状態で、搬送ベルト21aにより搬送されている錠剤Tは、気体吹き付け部70の下方を通過するとき、気体吹き付け部70によって気体が吹き付けられる。このとき、錠剤Tに付着物が付着している場合、その付着物は錠剤Tから吹き飛ばされ、その吹き飛ばされた付着物が空気と共に気体吸引部80によって吸引される。このようにして、錠剤Tに付着した付着物が取り除かれるので、付着物が付着した状態の錠剤Tに対して印刷を行うことを抑制することが可能となり、印刷品質の低下を抑えることができる。
また、気体が気体吹き付け部70によって搬送ベルト21a上に吹き付けられているが、その一部は誘導板90によりカバー60の下面に沿って搬送方向A1に流れるように誘導されている。これにより、カバー60の下面に付着した付着物に対して気体が吹き付けられ、カバー60の下面から付着物が吹き飛ばされる。吹き飛ばされた付着物は、空気と共に気体吸引部80によって吸引される。このようにして、カバー60の下面、すなわち透光部材61、62に付着した付着物が取り除かれるので、検出異常や認識異常を抑制することが可能となり、印刷品質の低下を抑えることができる。さらに、カバー60近傍を舞う錠剤Tの粉も吸引して除去することができるため、錠剤Tやカバー60の下面、搬送ベルト21aなどに、錠剤Tの粉が付着することを抑制することができる。なお、誘導板90の長手方向長さ、搬送方向A1に沿う長さ、及び傾斜角度は、透光部材61、62に付着した付着物を吹き飛ばすことが可能な長さ及び角度に設定されており、かつ、その下方を搬送される錠剤Tに触れることのないように設けられている。また、誘導板90は、透光部材61、62に付着した付着物を吹き飛ばすことが可能であれば、平板に限らず、湾曲形状を有する板であっても良い。
また、前述のように気体の一部は、誘導板90によりカバー60の下面に沿って流れるが、そのカバー60の下面に沿って搬送方向A1に流れてきた気体は制御板27にぶつかり、その一部の気体は気体吸引部80の吸気口81から吸引される。このとき、カバー60の下面から吹き飛ばされた付着物も気体と共に吸気口81から吸引される。これにより、カバー60の下面に沿って流れる気流やカバー60の下面から吹き飛ばされた付着物が各印刷ヘッド24aの印刷に悪影響を及ぼすことが抑えられるので、印刷品質の低下を抑えることができる。
なお、前述の搬送ベルト21aは、錠剤Tの搬送時、振動してしまうことがある。このとき、搬送ベルト21aが揺れて搬送ベルト21aに付着した付着物(例えば、粉やゴミ)が舞い上がろうとしても、その舞い上がりは気体吹き付け部70から吹き付けられる気体によって抑えられ、さらに、付着物が舞い上がったとしても、舞い上がった付着物は気体吸引部80によって吸引される。これにより、搬送ベルト21aに付着した付着物が搬送ベルト21a上の錠剤Tに付着することが抑えられるので、印刷品質の低下を抑えることができる。
また、前述の気流による粉の舞いを抑えるためには、吸引孔21gの吸引力、すなわち錠剤Tを吸引する吸引力を搬送ベルト21aの全部あるいは一部分(例えば、印刷ヘッド24aの下方を含む所定領域)で弱めることも可能である。ところが、錠剤Tを吸引する吸引力を弱めると、その吸引力低下部分において搬送ベルト21aが振動してしまうことがある。このとき、搬送ベルト21aが揺れて搬送ベルト21aに付着した付着物が舞い上がろうとしても、その舞い上がりは気体吹き付け部70から吹き付けられる気体によって抑えられ、さらに、付着物が舞い上がったとしても、舞い上がった付着物は気体吸引部80によって吸引される。これにより、搬送ベルト21aに付着した付着物が搬送ベルト21a上の錠剤Tに付着することが抑えられるので、印刷品質の低下を抑えることができる。
(カバーの変形例)
また、前述の説明においては、カバー60の各貫通孔60eが搬送方向A1に沿って一列に並ぶように形成されていることを例示したが、これに限るものではなく、二列以上に並んでいても良く、あるいは、列状でなくランダムに形成されていても良い。また、貫通孔60eがスリット状に形成されていても良い。
また、前述の説明においては、検出装置22、第1の撮像装置23、印刷ヘッド装置24及び第2の撮像装置25をカバー60内に収容することを例示したが、これに限るものではない。カバー60を備えていることで、検出装置22、第1の撮像装置23、印刷ヘッド装置24及び撮像装置25自体に粉が付着することがなく、カバー60だけを取り外して洗浄することができるため、錠剤Tの品種を切り替える際には効率的である。しかし、付着物除去機構が十分に機能するのであれば、カバー60が備えられていなくても良い。このときには、誘導板90は気体吹き付け部70自体に取り付けられる。このようにカバー60をなくすことによって、検出装置22、第1の撮像装置23、印刷ヘッド装置24及び第2の撮像装置25の高さ位置をそれぞれ自由に変更することが可能となる。
(気体吸引部の変形例1及び変形例2)
前述の説明においては、気体吸引部80の吸気口81を搬送方向A1に延びる長方形状に形成することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、搬送方向A1に沿って徐々に狭くなる三角形状に形成したり(変形例1)、あるいは、延伸長さが異なる複数の長方形状の吸気口81を、個々の左端を揃えて高さ方向に並べたりするようにしても良い(変形例2)。これらの場合には、気体吸引部80において吸引力は搬送方向A1に沿って、すなわち印刷ヘッド装置24側(図7中の右側)に向かうにつれて徐々に弱くなるため、気体吸引部80の吸引により生じる気流が印刷ヘッド装置24の印刷に悪影響を及ぼすことが抑えられるので、印刷品質の低下をより確実に抑えることができる。なお、気体吸引部80の搬送方向A1下流側の吸気口81付近においては、気体吹き付け部70からの気体が直接的には供給されず、誘導板90を介して供給されるだけであるから、吸気口81から吸い込む空気の量が減っても問題はない。なお、円形状や楕円形状の吸気口81を、そのサイズを変えて搬送方向A1に沿って一列や複数列に並べて用いることも可能である。
(気体吸引部の変形例3)
前述の説明においては、気体吸引部80の吸気口81の高さ方向の長さを変化させることで、気体吸引部80の吸引力を調整することが可能であることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、気体吸引部80の内部流路83内に吸引力調整部材(図示せず)を設けるようにしても良い。この吸引力調整部材は、搬送方向A1に延びる長方形状(スリット状)の貫通孔を有しており、内部流路83を塞ぐようにその内部に設けられ、その内部流路83を通過する気体の流量を変えて吸引力を調整する。貫通孔のスリット幅(貫通孔における搬送方向A1に水平面内で直交する方向の幅)が異なる数種の吸引力調整部材を用意し、それらの吸引力調整部材から、必要とする吸引力に応じて一つの吸引力調整部材を選択して用いることで、気体吸引部80の吸引力を容易に調整することができる。
なお、吸引力調整部材の貫通孔を搬送方向A1に延びる長方形状に形成しているが、これに限るものではなく、円形状や楕円形状、三角形状など各種の形状に形成しても良い。また、貫通孔の数も限定されるものではなく、複数でも良い。例えば、円形状や楕円形状などの複数の貫通孔を搬送方向A1に一列に並ぶように形成しても良く、複数列(例えば、二列や三列)に並ぶように形成しても良く、また、不規則(ランダム)に形成しても良い。
また、貫通孔を形成する吸引力調整部材が着脱可能であり、印刷対象である錠剤Tの品種を変更する際に交換できるようにしても良い。このようにすることで、印刷対象が変更になっても容易に吸引力を調整することができる。なお、この吸引力調整部材は、気体吸引部80内であればどこに取り付けられていても良く、吸気口81に取り付けられていても良いし、排気口82に取り付けられていても良い。
また、気体吸引部80は、搬送方向A1において印刷ヘッド24aよりも上流側にだけ設けられている例を説明したが、これに限るものではなく、その他の場所にも設けられていても良い。搬送ベルト21a全周、あるいはその一部に設けられても良い。気体吸引部80を複数設けることによって、搬送ベルト21aに付着した粉を吸引する機会が増えるので、印刷ヘッド24aに粉が付着したり、錠剤Tの位置が搬送中にずれたりすることによる印刷品質が低下することを抑制することができる。
特に、気体吸引部80を遠心力の働く部分(プーリ体21b、従動プーリ21c部分)に設けた場合には、搬送ベルト21aに付着した粉が遠心力によって浮遊し易いので、効率的に気体吸引部80によって粉を吸引することができる。また、従動プーリ21c部分における搬送ベルト21aの吸引孔21gは、吸引チャンバ21fに接続されていないため、吸引孔21gによって粉が吸引されない。したがって、この部分に気体吸引部80を設けると特に効果的である。
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態について図9を参照して説明する。なお、第4の実施形態では、第1の実施形態との相違点(制御板の構成)について説明し、その他の説明を省略する。
図9に示すように、第4の実施形態に係る制御板27Aの搬送ベルト21a側の端部は、複数の櫛歯27bが長手方向(搬送方向A1に水平面内で直交する方向)に並ぶ鋸形状に形成されている。各櫛歯27bは、下方(すなわち、搬送ベルト21aの上面)に向かって徐々に細くなるように形成されている。このような制御板27Aにより、前述の各実施形態と同様、搬送ベルト21aと印刷ヘッド24aとの間に生じる気流を制御することが可能になるので、錠剤Tの粉に起因する印刷品質の低下を抑えることができる。
なお、前述の櫛歯27bの全体を徐々に細くする以外にも、櫛歯27bの先端だけを細くするようにしても良く、また、櫛歯27bを下方に向かって徐々に細くする以外にも、下方に向かって徐々に太くするようにしても良い。あるいは、櫛歯27bの中央部分が太くなるようにしても良い。
<第5の実施形態>
次に、第5の実施形態について図10及び図11を参照して説明する。なお、第5の実施形態では、第1の実施形態との相違点(制御板の構成)について説明し、その他の説明を省略する。
図10に示すように、第5の実施形態に係る制御板27Bは、支持部27c及び複数の櫛歯27dを有する。支持部27cは長方形の板状に形成されている。各櫛歯27dは、支持部27cの長手方向(搬送方向A1に水平面内で直交する方向)に並ぶように支持部27cの下端に設けられている。このような制御板27Bにより、前述の各実施形態と同様、搬送ベルト21aと各印刷ヘッド24aとの間に生じる気流を制御することが可能になるので、錠剤Tの粉に起因する印刷品質の低下を抑えることができる。
また、搬送方向A1に沿って搬送ベルト21a上を流れる気流は制御板27Bにぶつかり、制御板27Bにおける、気流が通過する開口部(各櫛歯27dの間の空間)を通過する。このような制御板27Bにより、前述の各実施形態と同様、搬送ベルト21a上を流れる気流を、搬送方向A1に沿った層流に整流することができる。このような制御板27Bにより、印刷ヘッド24aの下方やその周辺の搬送ベルト21a上の気流を層流に整流し、乱気流の発生を抑制することができる。これにより、搬送ベルト21aに吸引保持された錠剤Tの揺れを抑制することが可能となるので、錠剤Tが印刷ヘッド24aの下方を通過するときに、錠剤Tの印刷面の姿勢が維持できないことに起因する印刷品質の低下を抑えることができる。
なお、前述の支持部27cを長方形の板状にする以外にも、他の形状の板状、あるいは、棒状に形成するようにしても良く、また、櫛歯27dを下方に向かって徐々に細くしても良く、下方に向かって徐々に太くするようにしても良く、櫛歯27dの先端だけを細くするようにしても良い。あるいは、櫛歯27dの中央部分が太くなるようにしても良い。また、図11に示すように、錠剤Tが通過する上方にも錠剤Tに接触しないように(錠剤Tに接触しない高さで)櫛歯27dを設けるようにしても良い。この図11の場合、搬送ベルト21aにより搬送される錠剤Tを挟むことになる二つの櫛歯27aを「隣接する二つの櫛歯27a」とし、その水平離間距離は、印刷対象の錠剤Tの直径(錠剤Tの水平方向の最大サイズの一例)に応じ、その直径より大きくなっている。
<第6の実施形態>
次に、第6の実施形態について図12を参照して説明する。なお、第6の実施形態では、第1の実施形態との相違点(制御板の構成)について説明し、その他の説明を省略する。
図12に示すように、第6の実施形態に係る制御板27Cには、長方形状の複数の貫通孔27eが長手方向(搬送方向A1に水平面内で直交する方向)に一列に並ぶように形成されている。このような制御板27Cにより、前述の各実施形態と同様、搬送ベルト21aと各印刷ヘッド24aとの間に生じる気流を制御することが可能になるので、錠剤Tの粉に起因する印刷品質の低下を抑えることができる。
また、搬送方向A1に沿って搬送ベルト21a上を流れる気流は制御板27Cにぶつかり、制御板27Cにおける、気流が通過する開口部(貫通孔27e)を通過する。このような制御板27Cにより、前述の各実施形態と同様、搬送ベルト21a上を流れる気流を、搬送方向A1に沿った層流に整流することができる。これにより、搬送ベルト21aに吸引保持された錠剤Tの揺れを抑制することが可能となるので、錠剤Tが印刷ヘッド24aの下方を通過するときに、錠剤Tの印刷面の姿勢が維持できないことに起因する印刷品質の低下を抑えることができる。
なお、前述の貫通孔27eの形状は長方形状に限られるものではなく、例えば、楕円形状や三角形状でも良い。また、貫通孔27eの間隔は一定に限られるものではなく、不規則でも良い。例えば、錠剤Tが通過する上方に貫通孔27eを設けないようにしても良い。あるいは、錠剤Tが通過する上方の貫通孔27eの開口面積を、その他の場所に設けられている貫通孔27eの開口面積よりも小さくしたり、大きくしたりしても良い。
<第7の実施形態>
次に、第7の実施形態について図13を参照して説明する。なお、第7の実施形態では、第1の実施形態との相違点(制御板の構成)について説明し、その他の説明を省略する。
図13に示すように、第7の実施形態に係る制御板27Dには、円形状の複数の貫通孔27fが長方形の長手方向(搬送方向A1に水平面内で直交する方向)及び短手方向に一列に所定間隔で並ぶように形成されている。この制御板27Dとしては、例えば、パンチングボードやメッシュ状の板を用いることが可能である。このような制御板27Dにより、前述の各実施形態と同様、搬送ベルト21aと印刷ヘッド24aとの間に生じる気流を制御することが可能になるので、錠剤Tの粉に起因する印刷品質の低下を抑えることができる。
また、搬送方向A1に沿って搬送ベルト21a上を流れる気流は制御板27Dにぶつかり、制御板27Dにおける、気流が通過する開口部(貫通孔27f)を通過する。このような制御板27Dにより、前述の各実施形態と同様、搬送ベルト21a上を流れる気流を、搬送方向A1に沿った層流に整流することができる。これにより、搬送ベルト21aに吸引保持された錠剤Tの揺れを抑制することが可能となるので、錠剤Tが印刷ヘッド24aの下方を通過するときに、錠剤Tの印刷面の姿勢が維持できないことに起因する印刷品質の低下を抑えることができる。
なお、前述の貫通孔27fの形状は円形状に限られるものではなく、例えば、四角形状や楕円形状、三角形状でも良い。また、貫通孔27fの間隔は一定に限られるものではなく、不規則でも良い。
ここで、図4、図9、図10、図11、図12及び図13に示した各実施形態を組み合わせることも可能である。また、各実施形態においては、錠剤Tのサイズや形状に応じて、櫛歯27a、27b又は27dのサイズや形状、あるいは、貫通孔27e又は27fのサイズや形状を適宜選択する。錠剤Tの種類によって発生する気流も変わるため、これに応じて櫛歯27a、27b又は27dのサイズや形状、あるいは、貫通孔27e又は27fのサイズや形状によって搬送ベルト21aや印刷ヘッド24aの周辺の気流の方向や流速の分布などを制御するために、櫛歯27a、27b又は27dのサイズや形状、あるいは、貫通孔27e又は27fのサイズや形状を適宜選択する。
なお、制御板27、27A、27Bにおける「気流が遮られる遮蔽部」とは複数の櫛歯27a、27b、27dである。「気流が通過する開口部」とは複数の櫛歯27a、27b、27dの各櫛歯の間の空間である。また、制御板27C、27Dにおける「気流が遮られる遮蔽部」とは、複数の貫通孔27e、27f以外の部分である。また「気流が通過する開口部」とは複数の貫通孔27e、27fである。
また、第1から第5のいずれかの実施形態に係る制御板27、27A又は27Bは櫛歯形状に形成されているので、印刷対象の錠剤Tの品種を変更するために装置内を清掃する場合、第6又は第7の実施形態に係る27C又は27Dに比べて、制御板27、27A又は27Bを清掃しやすく、清潔に保つことができる。
また、制御板27、27A又は27Bは櫛歯形状に形成されているので、搬送ベルト21a上を流れる気流を複数の櫛歯27a、27b、27dの各櫛歯の間を通過させることによって、各櫛歯に沿った気流に整流し、より容易に搬送方向A1に沿って流れる層流に整流することができる。これにより、上述したように、搬送ベルト21a面に吸引保持された錠剤Tを揺らす可能性のある乱気流の発生を抑制して印刷を行うことができる。
また、制御板27、27A又は27Bは櫛歯形状に形成され、搬送ベルト21aの上面に向かって開口するように配置されている。すなわち、制御板27、27A又は27Bの下端部は開口しているが、制御板27、27A又は27Bの下端部が開口していない場合には、制御板27、27A又は27Bの下端部と搬送ベルト21aとの隙間が狭くなり、この隙間を通過する気流の流速が増すことによってさらに乱気流が発生することが考えられる。しかしながら、制御板27、27A又は27Bは、櫛歯形状に形成されることによって搬送ベルト21a付近での気流を遮る部分を少なくすることができる。このため、搬送ベルト21a付近において流速が増すことによって印刷ヘッド24aの下方の搬送ベルト21a面上においてさらに乱気流が発生することなく、吸引保持されている錠剤Tの揺れを抑制して印刷を行うことができる。
<他の実施形態>
前述の各実施形態においては、錠剤Tを二列で搬送することを例示したが、これに限るものではなく、その列数は一列や三列または四列以上であっても良く、特に限定されるものではない。
また、前述の各実施形態においては、搬送ベルト21aを一本だけ設けることを例示したが、これに限るものではなく、二本以上設けるようにしても良く、その数は特に限定されるものではない。例えば、複数本の搬送ベルト21aを並列に並べることが可能である。
また、前述の各実施形態においては、搬送ベルト21aの吸引孔21gとして円形の吸引孔を用いることを例示したが、これに限るものではなく、長方形や楕円形、スリット状などの吸引孔を用いることが可能であり、搬送ベルト21aの吸引孔21gの形状は特に限定されるものではない。
また、前述の各実施形態においては、錠剤Tの搬送経路ごとに印刷ヘッド24aを設けることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、一つの印刷ヘッド24aによって二列以上の錠剤Tに印刷を行うようにしても良い。
また、前述の各実施形態においては、インクジェット方式の印刷ヘッド24aとして、ノズル24bが一列に並ぶ印刷ヘッドを例示したが、これに限るものではなく、例えば、ノズル24bが複数列に並ぶ印刷ヘッドを用いるようにしても良い。また、錠剤Tの搬送方向A1に沿って印刷ヘッド24aを複数並べて用いるようにしても良い。
また、前述の各実施形態においては、第1の印刷装置20及び第2の印刷装置30を上下に重ねて配置して、錠剤Tの両面または片面を印刷することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、第1の印刷装置だけを設け、錠剤Tの片面だけを印刷するようにしても良い。
また、前述の各実施形態においては、気体吹出部42aが良品回収装置42に備えられていることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、搬送装置21における、第2の搬送装置31側の端部や、受け渡しフィーダ13から搬送装置21に錠剤Tを受け渡す箇所に備えられるようにしても良い。つまり、搬送ベルト21aから錠剤Tを離脱させたい箇所において、気体吹出部42aを用いれば良い。
また、前述の各実施形態においては、気体吹出部42aが気体を処理中常に吹き出すことを例示したが、これに限るものではなく、間欠的に吹き出すようにしても良い。
また、前述の各実施形態においては、制御板27、37は平板であることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、湾曲形状の板であっても良い。
また、前述の各実施形態においては、制御板27は、各印刷ヘッド24aの下面(ノズル面M1)に対して垂直にされるように配置されることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、搬送方向A1に対して傾斜して設けられるようにしても良い。
また、第2の実施形態においては、カバー60の下面に制御板27が撮像部23aと印刷ヘッド24aとの間に位置付けられて設けられていることを例示したが、これに限るものではなく、カバー60における搬送方向A1の上流側(錠剤搬送方向上流側)の先端に制御板27を設けても良い。
また、第3の実施形態においては、誘導板90は長方形状としたが、櫛歯や貫通孔が設けられた形状、すなわち、開口部と遮蔽部を有する形状であっても良い。この場合、気体吹き付け部70から噴出された気体を整流することができ、その整流された気流で付着物の再付着を抑制できる。また、気体吹き付け部70から気体を噴出することによる新たな乱気流の発生も抑止できる。なお、図7の誘導板90が開口部と遮蔽部を有する形状であれば、制御板27を省略することも可能である。
ここで、前述の錠剤としては、医薬用、飲食用、洗浄用、工業用あるいは芳香用として使用される錠剤を含めることができる。また、錠剤としては、裸錠(素錠)や糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠、多層錠、有核錠などがあり、硬カプセルや軟カプセルなど各種のカプセル錠も錠剤に含めることができる。さらに、錠剤の形状としては、円盤形やレンズ形、三角形、楕円形など各種の形状がある。また、印刷対象の錠剤が医薬用や飲食用である場合には、使用するインクとして可食性インクが好適である。この可食性インクとしては、合成色素インク、天然色素インク、染料インク、顔料インクのいずれを使用しても良い。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。