実施の一形態について図面を参照して説明する。
ここで、錠剤印刷装置において、搬送される錠剤の粉が錠剤の搬送に不具合を与えることは前述したとおりであるが、錠剤が搬送ベルトから落下するような搬送不良が惹き起されるよりも早く、搬送中の錠剤がずれたり、揺動したりして、印刷不良となることがある。この現象に対して、錠剤を搬送する搬送ベルトへの粉の付着度合い(粉付着度)と、印刷不良と、搬送速度との間に相関関係があることを見出した。これから説明する本実施形態は、この知見に基づくものである。
(基本構成)
図1及び図2に示すように、実施の一形態に係る錠剤印刷装置1は、供給装置10と、搬送装置20と、検出装置30と、第1の撮像装置40と、第2の撮像装置50と、印刷装置60と、第3の撮像装置70と、回収装置80と、ヘッド清掃装置90と、ベルト清掃装置100と、画像処理装置110と、制御装置120とを備えている。
供給装置10は、ホッパ11及びシュータ12を具備する。ホッパ11は、多数の錠剤Tを収容し、その収容された錠剤Tをシュータ12に順次供給する。シュータ12は、供給された錠剤Tを複数列(図2の例では、二列)に整列させ、搬送装置20に供給する。この供給装置10は制御装置120に電気的に接続されており、その駆動が制御装置120により制御される。
搬送装置20は、搬送ベルト21、駆動プーリ22、複数(図1の例では、三つ)の従動プーリ23、駆動部24及び吸引部25を具備する。搬送ベルト21は、無端状に形成されており、駆動プーリ22及び各従動プーリ23に架け渡されている。駆動プーリ22及び各従動プーリ23は軸を中心として回転可能に設けられており、駆動プーリ22は駆動部24に連結されている。駆動部24は、例えばモータなどであり、制御装置120に電気的に接続されており、その駆動が制御装置120により制御される。この駆動部24は、ロータリーエンコーダなどの位置検出器24aを備えている。位置検出器24aは検出信号を制御装置120に送信する。制御装置120は、その検出信号に基づいて搬送ベルト21の位置や速度、移動量などの情報を得ることができる。この搬送装置20は、駆動部24による駆動プーリ22の回転によって各従動プーリ23と共に搬送ベルト21を回転させ、その搬送ベルト21上の錠剤Tを図1及び図2中の矢印A1の方向(搬送方向A1)に搬送する。以降、この搬送ベルト21によって錠剤Tを搬送する速度を、搬送ベルト21の速度と言う。
ここで、図2に示すように、搬送ベルト21の表面M1には、円形状の吸引孔21aが複数形成されている。これらの吸引孔21aは、それぞれ錠剤Tを吸着する貫通孔であり、二本の搬送経路を形成するように搬送方向A1に沿って平行に二列に並べられている。各吸引孔21aは、吸引部25に接続されており、その吸引部25により吸引力を得ることが可能になっている。吸引部25は、各吸引孔21aにより搬送ベルト21の表面M1上の錠剤Tを吸引して保持する。このような搬送ベルト21の表面M1には、錠剤Tが供給装置10によって載置される。
検出装置30は、複数の検出部31(図2の例では、二つ)を具備する。検出部31は、供給装置10より搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に並べられ、錠剤Tの搬送経路ごとに一つずつ搬送ベルト21の上方に設けられている。これらの検出部31は、レーザ光の投受光によって搬送ベルト21上の錠剤Tを検出する。検出部31としては、例えば、反射型レーザセンサなど各種のレーザセンサを用いることが可能である。また、レーザ光のビーム形状としては、スポットやラインなど各種の形状を用いることが可能である。各検出部31は制御装置120に電気的に接続されており、制御装置120に検出信号を送信する。
第1の撮像装置40は、複数の撮像部41(図2の例では、二つ)を具備し、搬送ベルト21上の粉付着度検出用の画像を取得する撮像装置として機能する。撮像部41は、錠剤Tが搬送ベルト21上に存在することがない位置、例えば供給装置10より搬送方向A1の上流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に二つ並べられ、搬送ベルト21の上方に設けられている。撮像部41は、常に錠剤Tが搬送ベルト21の表面M1に載置されていない位置で搬送ベルト21の撮像を行い、搬送ベルト21の表面M1の画像(粉付着度検出用の画像)を取得し、取得した画像を画像処理装置110に送信する。撮像部41としては、例えば、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの撮像素子を有する各種のカメラを用いることが可能である。各撮像部41は画像処理装置110を介して制御装置120に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置120により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられている。
第2の撮像装置50は、複数の撮像部51(図2の例では、二つ)を具備し、搬送ベルト21上に供給された錠剤Tの破損(例えば、欠け)や汚れなどの不具合及び位置を検出する検出装置として機能する。撮像部51は、検出装置30より搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に並べられ、錠剤Tの搬送経路ごとに一つずつ搬送ベルト21の上方に設けられている。撮像部51の撮像視野は、搬送ベルト21により搬送される錠剤Tが少なくとも1つ入る大きさに設定されている。撮像部51は、例えば、錠剤Tが直下に到達したタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像(錠剤位置検出用の画像)を取得し、取得した画像を画像処理装置110に送信する。錠剤Tが撮像部51の直下に到達するタイミングは、検出装置30による錠剤Tの検出を契機として、前述した位置検出器24aによって算出することができる。撮像部51としては、例えば、CCDやCMOSなどの撮像素子を有する各種のカメラを用いることが可能である。各撮像部51は画像処理装置110を介して制御装置120に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置120により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられている。
印刷装置60は、インクジェット方式の複数のインクジェットヘッド61(図2の例では、二つ)を具備する。インクジェットヘッド61は、第2の撮像装置50より搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に並べられ、錠剤Tの搬送経路ごとに一つずつ搬送ベルト21の上方に設けられている。インクジェットヘッド61は、複数の吐出口61a(図2参照)を具備し、それらの吐出口(ノズルの開口)61aから個別にインクを吐出する。このインクジェットヘッド61は、吐出口61aが並ぶ整列方向が水平面内で搬送方向A1と交差するように(例えば直交するように)設けられている。インクジェットヘッド61としては、例えば、圧電素子、発熱素子又は磁歪素子などの駆動素子を有する各種のインクジェットヘッドを用いることが可能である。各インクジェットヘッド61は制御装置120に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置120により制御される。
第3の撮像装置70は、複数の撮像部71(図2の例では、二つ)を具備し、搬送ベルト21上で印刷された錠剤Tの印刷状態を検出する印刷検査装置として機能する。撮像部71は、印刷装置60より搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に並べられ、錠剤Tの搬送経路ごとに一つずつ搬送ベルト21の上方に設けられている。撮像部71の撮像視野は、搬送ベルト21により搬送される錠剤Tが少なくとも1つ入る大きさに設定されている。撮像部71は、錠剤Tが直下に到達したタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像(印刷状態検査用の画像)を取得し、取得した画像を画像処理装置110に送信する。撮像部71としては、例えば、CCDやCMOSなどの撮像素子を有する各種のカメラを用いることが可能である。各撮像部71は画像処理装置110を介して制御装置120に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置120により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられている。
回収装置80は、第3の撮像装置70より搬送方向A1の下流側に位置付けられ、搬送装置20における搬送方向A1の下流側の端部に設けられている。この回収装置80は、搬送装置20による保持が解除されて落下する錠剤Tを順次受けて回収することが可能に構成されている。なお、搬送装置20は、搬送ベルト21上の個々の錠剤Tが所望の位置、例えば、搬送装置20における搬送方向A1の下流側の端部に到達した場合に錠剤Tの保持を解除する。
ヘッド清掃装置90は、図2に示すように、搬送ベルト21におけるY方向のマイナス端部(−端部)側に隣接する待機位置に設けられている。このヘッド清掃装置90は、移動機構(不図示)によって待機位置と、搬送ベルト21の上面及び各インクジェットヘッド61の下面の間に位置する清掃位置とに移動することが可能に形成されている。このヘッド清掃装置90は、清掃時、待機位置から清掃位置に移動し、二列の搬送経路の上方に個別に位置する各インクジェットヘッド61の下面(ノズル面)を清掃して吐出口61aやその吐出口61a周辺などから粉を除去する。ヘッド清掃装置90としては、例えば、ブレードや布、ブラシなどのワイプ機構、あるいは、そのワイプ機構に、空気を吸引する吸引機構を組み合わせたバキュームワイプ機構などを用いることが可能である。ヘッド清掃装置90は制御装置120に電気的に接続されており、その駆動が制御装置120により制御される。
ベルト清掃装置100は、搬送ベルト21における各従動プーリ23側の下方に位置付けられ、搬送ベルト21の表面M1に対向する位置に設けられている。このベルト清掃装置100は、搬送ベルト21の移動に応じて、搬送ベルト21の表面M1を順次清掃する。ベルト清掃装置100は制御装置120に電気的に接続されており、その駆動が制御装置120により制御される。
図3に示すように、前述のベルト清掃装置100は、清掃ブラシ101、気体吹付部102、気体吸引部103を備えている。
清掃装置100は、搬送ベルト21の表面M1に対向する位置に設けられていて、図示しない移動機構によって搬送ベルト21に向かって移動可能となっている。この清掃ブラシ101は、例えば、ブラシローラであり、移動する搬送ベルト21の表面M1に接触して、搬送ベルト21の回転方向と逆方向に回転することによってその表面M1を掃き、搬送ベルト21の表面M1に付着した錠剤Tの粉を取り除く。この清掃ブラシ101は、搬送ベルト21に対して押付機構101aにより押し付けられるようになっている。押付機構101aは、例えばバネなどの部材であり、この押付機構101aを介して清掃ブラシ101は気体吹付部102に設けられている。また、押付機構101aは、搬送ベルト21に対して清掃ブラシ101を押し付ける押付力を可変することが可能に形成されている。清掃装置100は、制御装置120に電気的に接続されており、搬送ベルト21に向かう方向に移動するための駆動が制御装置120により制御される。この制御装置120の制御により、清掃ブラシ101を、搬送ベルト21の表面M1に当接しない位置と当接する位置との間で移動させたり、押付機構101aによる押付力を制御する。
気体吹付部102は、清掃ブラシ101を覆う形状に形成されており、その清掃ブラシ101に向かって気体を吹き付けるように設けられている。この気体吹付部102には、気体供給機構102aが接続されており、その気体供給機構102aから気体(例えば、空気)が供給される。気体供給機構102aは制御装置120に電気的に接続されており、その駆動が制御装置120により制御される。例えば、制御装置120は、気体吹付部102による気体の吹付力や吹付量を制御する。
気体吸引部103は、中空形状に形成されており、気体吹付部102周辺に設けられている。この気体吸引部103には、吸引ポンプなどを有する気体吸引機構103aが接続されており、その気体吸引機構103aにより気体吹付部102の周囲に吸引力が与えられる。気体吸引機構103aは制御装置120に電気的に接続されており、その駆動が制御装置120により制御される。例えば、制御装置120は、気体吸引部103による気体の吸引力や吸引量を制御する。
このようなベルト清掃装置100は、清掃ブラシ101の掃き動作及び気体吹付部102による気体吹付動作によって搬送ベルト21に付着した粉を取り除き、気体吹付部102と搬送ベルト21との隙間から出てくる粉を気体吸引部103により空気と共に吸引する。このように、清掃ブラシ101や気体吹付部102によって、搬送ベルト21に付着した粉を確実に取り除くことができる。さらに、気体吸引部103によって、一度取り除かれた粉が周囲の装置に付着したり、あるいは、搬送ベルト21に再付着したりすることを抑えることができる。
図1に戻り、画像処理装置110は、第1の撮像装置40により撮像された粉状態検出用の画像、第2の撮像装置50により撮像された錠剤位置検出用の画像及び第3の撮像装置70によって撮像された印刷状態検査用の画像を取り込み、公知の画像処理技術を用いて画像を処理する。
例えば、画像処理装置110は、第1の撮像装置40から得られた粉付着度検出用の画像を処理し(一例として、二値化処理し)、錠剤Tの粉が搬送ベルト21の表面M1に付着した粉付着度を検出する。この粉付着度は、例えば、搬送ベルト21に付着した粉の色濃度に基づくものとすることができる。色濃度の具体的な検出については後述する。したがって、画像処理装置110は、搬送ベルト21の粉付着度を検出する粉付着検出装置として機能する。
また、画像処理装置110は、第2の撮像装置50から得られた錠剤位置検出用の画像を処理し、錠剤Tの破損や汚れなどの不具合を検出し、また、錠剤TのX方向(搬送方向A1)、Y方向及びθ方向の位置を検出する(図2参照)。
錠剤Tの不具合の検出結果、すなわち錠剤Tの不具合情報とは、画像処理の結果から錠剤Tの破損や汚れなどの不具合が錠剤Tにあるか否かであって、正しい錠剤画像を予め画像処理装置110に記憶させておき、この正しい錠剤画像と実際の錠剤画像とを比較して求められる。
また、X方向及びY方向の位置とは、例えば、撮像部51の撮像視野の中心に対するXY座標系の位置である。また、θ方向の位置とは、例えば、撮像部51の撮像視野のY方向の中心線に対する錠剤Tの回転度を示す位置である。このθ方向の位置は、錠剤Tに割り線が設けられている場合や錠剤Tが楕円形や長円形、四角形などに成型されている場合など、錠剤Tが方向性を有する形態の場合に検出される。また、画像処理装置110は、第3の撮像装置70から得られた、前述のインクジェットヘッド61による印刷を終えた錠剤Tの印刷状態検査用の画像を処理し、錠剤Tに印刷された印刷パターン(例えば、文字やマークなど)の印刷位置を検出する。
前述の画像処理装置110は、前述のように検出した搬送ベルト21の粉付着度情報、各錠剤Tの不具合情報、各錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置情報、さらに、各錠剤T上の印刷パターンの印刷位置情報を制御装置120に送信する。なお、画像処理装置110が各情報を送信する際には、それらの情報に各撮像部41、51、71の識別情報を付加して送信する。これにより、制御装置120は、送信された情報が、各撮像部41、51、71のうちいずれの撮像部に対応する位置情報であるかを把握することができる。
制御装置120は、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータと、処理情報や各種プログラムなどを記憶する記憶部(いずれも図示せず)を備えている。この制御装置120は、各種情報や各種プログラムに基づいて供給装置10、搬送装置20、第1の撮像装置40、第2の撮像装置50、印刷装置60、第3の撮像装置70、ヘッド清掃装置90、ベルト清掃装置100及び画像処理装置110を制御する。また、制御装置120は、検出装置30や位置検出器24aから送信される検出信号などを受信する。
この制御装置120は、画像処理装置110から送信された錠剤Tの不具合情報に基づいて、錠剤Tの破損や汚れなどの不具合が錠剤Tにある場合、その錠剤Tに対する印刷を禁止し、その錠剤Tを回収装置80以外の回収容器(不図示)により回収する。一方、不具合が錠剤Tにない場合には、その錠剤Tに対する印刷を許可する。
また、制御装置120は、画像処理装置110から送信された搬送ベルト21の粉付着度情報に基づいて、錠剤Tの粉が搬送ベルト21の表面M1に付着している粉付着度が所定値より高いか否かを判断する。例えば、制御装置120は、前述の粉付着度が所定値より高いと判断した場合、インクジェットヘッド61の清掃や搬送ベルト21の清掃などを行い、一方、粉付着度が所定値以下であると判断した場合には、印刷動作を許可する(詳しくは、後述する)。
また、制御装置120は、前述の粉付着度に応じて、その粉付着度に対応する搬送ベルト21の速度で搬送ベルト21を駆動させる。この粉付着度と搬送ベルト21の速度との関係は、例えば、図5に示すように予め実験等で求められ、関係式あるいは関係テーブルとして制御装置120に記憶されている。そして、制御装置120は、記憶された関係式や関係テーブルに基づいて、所定のタイミングでの粉付着度によって、搬送ベルト21の速度を調整する。
また、制御装置120は、画像処理装置110から送信された錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置情報に基づいて、X方向、Y方向及びθ方向の位置が検出された錠剤Tに対する印刷条件を設定する。なお、記憶部には、文字や記号などの印刷パターン及びその印刷パターンの錠剤T上での印刷位置などを含む印刷データ、搬送ベルト21の移動速度データなどが記憶されている。例えば、制御装置120は、錠剤TのY方向の位置情報に基づいて、インクジェットヘッド61において今回の印刷に用いるノズル(吐出口61a)の使用範囲を決定し、錠剤TのX方向の位置情報に基づいて、錠剤Tに対して印刷を開始するタイミングを決定する。また、制御装置120は、錠剤Tのθ方向の位置情報に基づいて、錠剤Tのθ方向の位置に対応させて印刷条件を設定する。一例として、印刷パターンの向きを0度から179度の範囲で1度ずつ回転させた180通りの印刷データを制御装置120の記憶部に登録しておき、それらの印刷データの中から、検出されたθ方向の位置に適合する角度の印刷データを選択して印刷条件を設定する。
また、制御装置120は、画像処理装置110から送信された錠剤Tの印刷パターンの印刷位置情報に基づいて、印刷パターン(例えば、文字やマークなど)が錠剤Tに正常に印刷されたか否かを判断する。これは、正しい印刷パターンを予め制御装置120に記憶させておき、この正しい印刷パターンと実際の印刷後の錠剤T上の印刷パターンとを比較して行われる。制御装置120は、印刷パターンが錠剤Tに正常に印刷されたと判断した場合、その検査に合格した錠剤Tを回収装置80により回収する。一方、印刷パターンが錠剤Tに正常に印刷されなかったと判断した場合には、その検査に不合格の錠剤Tを回収装置80以外の回収容器により回収する。
(印刷工程)
次に、前述の錠剤印刷装置1が行う印刷工程(印刷処理)について図4を参照して説明する(図1も適宜参照)。なお、印刷を実行するまでの間には、印刷に要する印刷データなどの各種情報が制御装置120の記憶部に記憶されており、また、供給装置10のホッパ11には印刷対象の錠剤Tが多数投入されている。
図4に示すように、ステップS1において、供給装置10から搬送装置20に対する錠剤Tの供給が停止している状態で、搬送装置20の搬送ベルト21が駆動される。この搬送ベルト21は、駆動部24による駆動プーリ22及び各従動プーリ23の回転に伴い、搬送方向A1に回転する。搬送ベルト21は、インクジェットヘッド61に対して、予め設定された速度で駆動される。この搬送ベルト21の速度は、搬送装置20の定格速度Vに速度係数kが乗算されたものとなる。この速度係数kは、後述のように搬送ベルト21の粉付着度に対応して実験等によって定められる。そして、最初に搬送ベルト21の駆動を開始するステップS1においては、初期値として上述の速度係数kは1.0とされる。これにより、搬送ベルト21の速度は定格速度Vとなる。
ステップS2において、第1の撮像装置40により搬送ベルト21の表面M1(錠剤Tの載置面)の撮像が開始される。そして、ステップS3において、搬送ベルト21が回転している状態で、供給装置10から錠剤Tが搬送ベルト21上に順次供給される。ステップS4において、搬送ベルト21の粉付着度の測定がおこなわれる。すなわち、搬送ベルト21が動いている状態で、撮像装置40の各撮像部41により画像が連続的に撮影され、搬送ベルト21の画像が順次取得される。この搬送ベルト21の粉付着度検出用の画像が画像処理装置110により処理され、搬送ベルト21の粉付着度情報が順次生成される。
ステップS5において、前述の搬送ベルト21の粉付着度情報に基づいて、搬送ベルト21の粉付着度が所定値より高いか否かが判断される。このステップS5は、搬送ベルト21に対する清掃の必要性の有無を判断するものである。粉付着度の判断では、例えば、搬送ベルト21に付着した粉の色濃度が所定値よりも高いか否かが判定され、搬送ベルト21に付着した粉の粉付着度が判断される。なお、一回目の判断段階では錠剤Tの供給が停止状態であるため、搬送ベルト21上に粉は付着しておらず、粉付着度は所定値より高くない(NO)と判断されることになる。
ここで、前述の色濃度を検出する方法としては、予め用いる搬送ベルト21の階調を測定しておき、これをゼロとして設定する。例えば、搬送ベルト21が黒色である場合には、粉が付着していない状態の搬送ベルト21の黒色をゼロとして設定する。そして、例えば白い錠剤の粉が搬送ベルト21に付着すると、階調の変化に伴い、出力値がゼロよりも高い数値へ移行することとなる。この出力値において所定値を定めておき、出力値が所定値より高いときには粉付着度が高いと判断される。なお、搬送ベルト21上に粉以外のゴミが付着して出力値が高くなることと区別するため、所定時間以上、出力値が所定値より高い状態が続くことを条件として、粉付着度を判定するようにすることが望ましい。
ステップS5において、搬送ベルト21の粉付着度が所定値より高くないと判断されると(NO)、ステップS6において、前述の搬送ベルト21の速度にかかる速度係数kを更新する必要があるかどうか判断する。これは、現在の速度係数kが、ステップS4で測定された粉付着度に対応する速度係数kとなっているかを判定し、現在の速度係数kと相違する場合は、速度係数kを更新する。すなわち、錠剤Tへの印刷処理が進んで、搬送ベルト21に粉が堆積するにつれて、粉付着度は大きく変化してゆく。図5に示すように、速度係数kも、この変化した粉付着度に対応して変わることになる。したがって、ステップS4で測定された粉付着度に対応する速度係数kが、現在設定されている速度係数kと同じかどうかを比較して、相違する場合、更新が必要と判断して速度係数kを新たな係数に更新し(ステップS7)、相違しない場合は更新せずに、次のステップS8へ進む。
ところで、前述のように速度係数kは実験等で求められる。これは、粉付着度と、錠剤Tへの印刷の状態と、搬送ベルト21の速度との関係を予め実験等で求めることである。さらに、錠剤Tの種類によってこれらの関係が変わるので、錠剤Tの種類ごとに求めることになる。
具体的には、さまざまな粉付着度の搬送ベルト21において、印刷の良否を調べる。この時の印刷の良否基準は、例えば印刷された識別情報の視認性や位置のずれとなる。そして、さまざまな粉付着度の搬送ベルト21において、搬送ベルトの速度を変えて、同様に印刷の良否を調べる。これらの調べた結果から、印刷の状態が良となる粉付着度と搬送ベルト21の速度との関係を求める。これにより、粉付着度に対応する、印刷が良となる搬送ベルト21の速度の、定格速度Vに対する比率である速度係数kを得て、制御装置120に記憶させておく。
図5は、粉付着度と印刷が良となる速度係数kとの関係を示す模式図である。縦軸は速度係数kを示し、上限は1.0である。横軸は粉付着度比を示し、前述の搬送ベルト21を清掃するか否かを判断する基準となる所定値を100とした比率(%)で示している。
図5に示すように、粉付着度が高くなると、印刷が良となる搬送ベルト21の速度係数は小さくなる。また、粉付着度が30%あたりまではその速度係数はあまり下がらないが、50%を過ぎたあたりから速度係数の下がり方が大きくなる。つまり、粉付着度が大きくなると錠剤Tへの印刷が不良となるが、錠剤Tの搬送の速度を下げることによって、印刷が不良とならないようになることを示している。そして、印刷を不良としない錠剤Tの搬送速度、すなわち搬送ベルト21の速度は、粉付着度が有る程度大きくなると急速に遅くなることを示している。これは、錠剤Tと搬送ベルト21との間に存在する粉の影響で、錠剤Tの保持力が弱まることから、錠剤Tが移動することによる気流の影響が相対的に強まり、錠剤Tがずれたり、揺れ動いたりするためと考えられる。錠剤の形状によってはこの気流の影響が特に大きくなる場合が有る。
上述のように、実験によって求めた図5に示されるような粉付着度と搬送ベルト21の速度係数kとの関係を示す線となる関係式あるいは関係表を、必要な錠剤Tの種類の分だけ用意して、制御装置120に記憶しておくことになる。
図4に戻って、ステップS8において、搬送ベルト21上の錠剤Tに対する印刷が開始される。
搬送ベルト21上の錠剤Tは、錠剤Tの搬送経路ごとに検出部31によって検出され、その検出部31による検出信号がトリガ信号として制御装置120に入力される。その後、搬送ベルト21上の錠剤Tは、錠剤Tの搬送経路ごとに撮像部51によって撮像される。前述のトリガ信号に基づくタイミング、すなわち錠剤Tが撮像部51の下方に到達したタイミングで錠剤Tの上面が撮像部51により撮像され、その撮像された画像が画像処理装置110に送信される。
そして、撮像部51から送信された印刷前検査用の画像に基づき、錠剤Tの不具合情報が画像処理装置110により生成され、制御装置120に送信される。その錠剤Tの不具合情報に基づき、錠剤Tの不具合の有無が制御装置120により判断される。不具合が錠剤Tにあると判断されると、その錠剤Tに対する印刷が禁止される。また、撮像部51から送信された錠剤位置検出用の画像に基づき、錠剤Tの位置情報(例えば、錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置情報)が画像処理装置110により生成され、制御装置120に送信される。その錠剤Tの位置情報に基づき、錠剤Tに対する印刷条件が制御装置120により設定される。
その後、搬送ベルト21上の錠剤Tは、前述のトリガ信号に基づくタイミング、すなわち錠剤Tがインクジェットヘッド61の下方に到達したタイミングで、前述の印刷条件に基づいて印刷装置60により印刷が実行される。印刷装置60の各インクジェットヘッド61において、各吐出口61aからインクが適宜吐出され、その錠剤Tの上面に文字やマークなどの識別情報が印刷される。この錠剤Tに塗布されたインクは常温で急速に乾燥する。
インクが乾燥した錠剤Tは、第3の撮像装置70により検査される。すなわち、インクが乾燥した錠剤Tは、錠剤Tの搬送経路ごとに撮像部71によって撮像され、その撮像された画像が画像処理装置110に送信される。撮像部71から送信された印刷状態検査用の画像に基づき、印刷パターンの検査情報が画像処理装置110により生成され、制御装置120に送信される。その印刷パターンの検査情報に基づき、錠剤Tに対する印刷良否が制御装置120により判断される。
その後、検査が完了した錠剤Tは、搬送ベルト21の下流側の端部に位置すると、搬送ベルト21に保持された状態から解放され、搬送ベルト21から落下して回収装置80により回収される。このとき、前述の不具合がなく、印刷パターンの検査が合格であった錠剤Tは、そのまま落下して回収装置80により回収されるが、不具合があった錠剤Tや印刷パターンの検査が不合格であった錠剤Tは、搬送途中でエアの吹き付けにより排除される。なお、エアの吹き付けにより排除された錠剤Tは、例えば、回収装置80の隣に設けられた他の回収容器(不図示)によって回収される。また、不具合があった錠剤Tや印刷パターンの検査が不合格であった錠剤Tが多発した場合(例えば、欠けのある錠剤Tや印刷パターンの検査が不合格であった錠剤Tが連続して10個検出された場合)には、制御装置120は錠剤印刷装置1に不具合が発生したと判断し、新たな錠剤Tの搬送ベルト21への供給を停止し、この時点で搬送ベルト21上に存在する錠剤Tを回収して錠剤印刷装置1を停止させる。このとき、搬送ベルト21上に残存している錠剤Tは、回収装置80の隣に設けられた他の回収容器(不図示)に回収する。これによって、良品が回収される回収装置80内に、未印刷の錠剤Tが混入するのを防止することができる。なお、このように回収された錠剤Tのうち、欠け等の破損がなく、かつ未印刷の錠剤Tは、錠剤印刷装置1に再投入することができる。
ステップS9において、全ての錠剤Tの印刷が完了したか否かが判断される。全ての錠剤Tの印刷が完了したと判断されると(YES)、ステップS10において、搬送ベルト21の撮像が停止され、ステップS11において、搬送ベルト21が停止される。一方、全ての錠剤Tの印刷が完了していないと判断されると(NO)、処理が前述のステップS4に戻され、ステップS4からの処理が繰り返される。
このように、全ての錠剤Tの印刷が完了するまで、錠剤Tの印刷処理が繰り返される。このため、時間が経過していくと、搬送ベルト21の表面M1に付着する錠剤Tの粉が堆積していくことになる。この粉堆積量が増加していき、搬送ベルト21の粉付着度が増加してゆくにつれて、ステップS7において、搬送ベルト21の速度の速度係数kは、増加する粉付着度に応じた値に更新される。また、ステップS5において、搬送ベルト21の粉付着度が所定値より高いと判断されると(YES)、ステップS12において、錠剤Tの供給が停止される。
次いで、ステップS13において、搬送ベルト21に対する清掃がベルト清掃装置100により実行される。ベルト清掃装置100は、まず、搬送ベルト21に清掃ブラシ101を予め定めた押付力で接触するよう移動する。そして、清掃ブラシ101の掃き動作及び気体吹付部102による気体吹付動作によって搬送ベルト21に付着した粉を取り除き、その粉を気体吸引部103により空気と共に吸引する。搬送ベルト21の清掃が終了すると、再度、ステップS4に戻り、ステップS4からの処理が繰り返されることとなる。
なお、錠剤Tの位置を正確に測定するため、錠剤Tと異なる色の搬送ベルト21、例えば、白や水色、黄色などの各色の錠剤Tに対して、黒色の搬送ベルト21を用いることが多い。ところが、搬送ベルト21は多数の錠剤Tを順次搬送するため、搬送を繰り返すうちに、搬送ベルト21の表面M1には、錠剤Tの粉が堆積する。これにより、搬送ベルト21の表面色が錠剤Tの色に近づいていくため、撮像画像から錠剤Tの位置を正確に検出することが困難となる。したがって、錠剤Tの粉が搬送ベルト21に付着することは、印刷不良を招くことになる。また、粉の影響により錠剤Tの保持を正常に行うことが難しくなり、錠剤Tが搬送中に移動して、印刷時の位置ずれや揺動が生じたり、また、搬送ベルト21上から落下したりすることもある。
一方、前述の印刷工程によれば、搬送ベルト21は、搬送ベルト21の粉付着度に応じて、ベルト清掃装置100により清掃される。これにより、錠剤Tの粉の影響による錠剤Tの位置検出精度の低下を抑制することが可能となるので、印刷不良の発生を抑えることができる。さらに、錠剤Tの粉の影響による錠剤Tの保持力の低下を抑制することが可能となるので、印刷時の位置ずれや揺れ動きなどを抑え、より確実に印刷不良の発生を抑制することができる。
また、搬送ベルト21の表面M1を撮像する場合や搬送ベルト21の表面M1を清掃する場合など、錠剤Tの供給を停止して各動作が実行される。これにより、錠剤Tが各動作を妨げることが無くなるので、各動作を正確に実行することができる。粉の発生原因である錠剤Tが搬送ベルト21の表面に存在しない状態で、搬送ベルト21の表面M1を清掃することが可能となるので、錠剤Tを搬送しながら搬送ベルト21の表面M1を清掃することに比べ、搬送ベルト21の表面M1から確実に粉を除去することができる。
また、前述の制御装置120は、搬送ベルト21の粉付着度に応じて、ベルト清掃装置100における押付機構101aによる押付力、気体吹付部102による気体の吹付力又は吹付量、気体吸引部103による気体の吸引力又は吸引量のいずれかを制御することが可能である。例えば、制御装置120は、粉付着度が高くなるにしたがって押圧力、気体の吹付力又は吹付量、気体の吸引力又は吸引量を大きくしたり、粉付着度が低くなるにしたがって小さくしたりする。また、押圧力、気体の吹付力や吹付量、気体の吸引力や吸引量を適宜組み合わせて、それぞれの大小を変えることも可能である。例えば、押圧力を小さくするが、気体の吹付力と吸引力を大きくしたりする。このように搬送ベルト21の粉付着度に応じて、ベルト清掃装置100の清掃能力を適宜調整することができる。
さらに、錠剤Tの粉が搬送ベルト21の表面M1に付着している粉付着度に応じて、搬送ベルト21の速度が設定される。特に、粉付着度が増加してゆくにつれて、搬送ベルト21の速度は遅く設定される。したがって、錠剤Tの粉が搬送ベルト21に付着して、搬送する時の錠剤Tの保持力が低下しても、印刷時の位置ずれや揺れ動きなどを抑え、より確実に印刷不良の発生を抑制することができる。
以上説明したように、実施の一形態によれば、搬送ベルト21における錠剤Tが載置される表面M1が第1の撮像装置40により撮像され、その撮像された画像に基づいて、搬送ベルト21の表面M1に対する錠剤Tの粉付着度が画像処理装置110により検出される。その粉付着度に応じて搬送ベルト21の速度が調整されるように構成したため、錠剤Tの供給を停止して搬送ベルト21の清掃を行うまでの間でも、印刷時の位置ずれや揺れ動きなどが抑制されるので、より確実に印刷不良の発生を抑制することができる。また、頻繁に停止して清掃することで生産性が落ちることになるが、停止の回数を減らして印刷処理を続けることができるので、生産性の低下を抑制することができる。
(他の実施形態)
前述の実施形態においては、搬送ベルト21の粉付着度によって搬送ベルト21の速度を遅くするとしたが、一定以上搬送ベルト21の速度を遅くすると、生産性が低くなりすぎてしまい、清掃した方が最終的な生産性の低下を抑制する場合が有り、このような搬送ベルト21の速度を清掃要否の判断に用いることも可能である。図5では、例えば、前述の速度係数kを0.7としている様子を、二点鎖線で示している。
なお、前述の搬送ベルト21の速度に関する関係は、実験で求めた値に基づく近似式とし、その近似式による算出値を用いてもよいし、ある間隔(ステップ)での値としたテーブルを用いてもよい。このような間隔での値を図5において一点鎖線で示す。
また、前述のステップS5において粉付着度が所定値より高い場合に、錠剤Tの供給を停止し、その後、この時点で搬送ベルト21上に載っている錠剤Tを全て印刷処理して回収装置80により回収することとなる。なお、錠剤Tの供給の停止と同時に印刷処理も停止し、この時点でインクジェットヘッド61を通過して印刷が完了している錠剤Tと、未印刷の錠剤Tとを分けて回収するようにしても良い。
また、錠剤Tの到来を判定する検出装置30による出力から、「錠剤Tが到来しないタイミング」を測り、このタイミングで、錠剤Tの印刷前検査用のカメラ(前述の実施形態の第2の撮像装置50)で搬送ベルト21の画像を撮像して、粉付着度をみるようにしても良い。
また、検出部31としてのレーザ変位計で反射率も測定することが可能である。この反射率の変化で搬送ベルト21の粉付着度を検出しても良い。錠剤Tが存在するときには、錠剤Tの到来を検出し、錠剤Tが存在しないときに反射率を計測することができる。レーザ変位計の分解能は1μm程度あり、常時検出することが可能であるため、錠剤Tの検出とともに搬送ベルト21上の粉の積り具合を検出することもできる。なお、レーザ光が搬送ベルト21上の吸引孔21aを検知しない位置(例えば吸引孔21aのすぐ横あたり)に当たるようにレーザ変位計を設けることが望ましい。
また、搬送ベルト21に付着している粉の量で印刷ヘッド61の清掃タイミングを測るとしたが、これに限るものではない。例えば、ベルト清掃装置100にて集積された粉の量から判断するようにしても良い。ただし、この集積された粉の量は、搬送ベルト21に付着していた粉の量である。したがって、どちらの場合でも、搬送ベルト21の表面M1に対する錠剤Tの粉付着度に基づいて搬送ベルト21の速度を調整することになる。
また、粉付着度の判断基準としては、色濃度を挙げたが、これに限るものではなく、粉の付着面積によって粉付着度を判断するようにしても良い。
また、前述の実施形態においては、搬送ベルト21の粉付着度検出用の画像として、回収装置80よりも下流側の錠剤Tが搬送ベルト21上に搭載されていない位置で搬送ベルト21の表面M1(錠剤Tの載置面)を撮像して用いることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、第3の撮像装置70と回収装置80との間など、錠剤Tが搬送ベルト21上に搭載されている位置で搬送ベルト21の表面M1を撮像して用いることも可能である。ただし、搬送ベルト21の表面M1に対する粉の粉付着度の検出精度を向上させるためには、例えば、所定の撮像視野内に錠剤Tが入っていない状態で撮像を行い、錠剤Tを含まない画像を用いることが望ましい。なお、錠剤Tを含む画像によって粉付着度を検出する場合には、撮像に用いる撮像装置の撮像範囲は、錠剤の大きさ以上の範囲とすることが必要となる。
また、前述の実施形態においては、第1の撮像装置40により撮像された画像を用いて搬送ベルト21の粉付着度を検出することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、第2の撮像装置50や第3の撮像装置70により撮像された画像を用いて搬送ベルト21の粉付着度を検出しても良い。
なお、前述の実施形態によれば、搬送ベルト21の粉付着度が所定値より高いと判断されると錠剤Tの供給が停止されて搬送ベルト21の清掃を行うとしたが、この搬送ベルト21の清掃と同時にインクジェットヘッド61の清掃を行うようにしても良い。これにより、インクジェットヘッド61の吐出口61aやその吐出口61a周辺に付着した粉が除去される。このため、錠剤Tの粉がインクジェットヘッド61に付着することによってノズルの目詰まりやインクの飛翔方向の変化などが抑制されるので、印刷不良の発生を抑えることができる。このインクジェットヘッド61の清掃は、各吐出孔61aからインクを吐出させ(ダミー吐出)、吐出口61aに付着した粉やインクを排除することが可能である。また、インクジェットヘッド61の各吐出口61aからインクを染みださせ、吐出口61aやその周辺に付着した粉やインクをワイプ機構による拭き取ることで除去する(ワイピング)ことも可能である。ワイピングにおいては、布やブレードで掻き取る方法を用いても良いし、バキュームワイプ機構によって粉やインクを排除するようにしても良いし、これらを組み合わせても良い。なお、インクジェットヘッド61の清掃は、搬送ベルト21の清掃とともに行わずに定期的に行うようにしても良いし、搬送ベルト21の清掃とともに行うのに加えて定期的に行うようにしても良い。
また、前述の実施形態においては、清掃ブラシ101、気体吹付部102及び気体吸引部103によりベルト清掃装置100を構成することを例示したが、これに限るものではなく、清掃ブラシ101、気体吹付部102及び気体吸引部103のいずれか一つ又は二つだけでベルト清掃装置100を構成するようにしても良い。
また、清掃ブラシ101としてブラシローラを用いているが、これに限るものではなく、例えば、図6に示すような直線ブラシ201などを用いても良い。図6に示すように、直線ブラシ201は、ベルト清掃装置200に設けられている。ベルト清掃装置200は、直線ブラシ201の他に、気体吸引部202を備えている。直線ブラシ201は気体吸引管201aと一体となっており、直線ブラシ201に付着した錠剤Tの粉は気体吸引管201aに吸引される。なお、直線ブラシ201および気体吸引管201aは、図示しない移動機構によって搬送ベルト21に対して接離可能に設けられており、搬送ベルト21に対する直線ブラシ201の押圧の程度を変更できる。
また、前述の実施形態においては、清掃ブラシ101は搬送ベルト21の進行方向と逆方向に回転するとしたが、これに限らず回転しなくても良い。あるいは、清掃ブラシ101が搬送ベルト21の進行方向と同方向に、速度差を持って回転するようにしても良い。すなわち、清掃ブラシ101は搬送ベルト21の表面を掃くことができれば良い。
また、ベルト清掃装置100の位置は、搬送ベルト21における各従動プーリ23側の下方であるとしたが、これに限るものではなく、錠剤Tの搬送、撮像、および印刷を妨げない場所であれば良い。例えば、ベルト清掃装置100が第3の撮像装置70と回収装置80との間に設けられていたとしても、退避可能に設けられており、錠剤Tの搬送、撮像、および印刷を妨げないように退避していれば問題ない。錠剤Tの供給を停止しているステップにおいては、錠剤Tが搬送ベルト21上に存在しないので、退避する必要もない。
また、ベルト清掃装置100、200は、ロールブラシ、直線ブラシを用いるとしたが、これに限らず、布、あるいは無端状のロール布等によって拭き取るようにしても良い。
また、前述の実施形態においては、錠剤Tを二列で搬送することを例示したが、これに限るものではなく、その列数は一列や三列又は四列以上であっても良く、特に限定されるものではない。
また、前述の実施形態においては、搬送ベルト21を一本だけ設けることを例示したが、これに限るものではなく、二本以上設けるようにしても良く、その数は特に限定されるものではない。
また、前述の実施形態においては、錠剤Tの搬送経路ごとにインクジェットヘッド61を設けることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、一つのインクジェットヘッド61によって二列以上の錠剤Tに印刷を行うようにしても良い。
また、前述の実施形態においては、インクジェットヘッド61として、吐出口61aが一列に並ぶインクジェットヘッドを例示したが、これに限るものではなく、例えば、吐出口61aが複数列に並ぶインクジェットヘッドを用いるようにしても良い。また、錠剤Tの搬送方向A1に沿ってインクジェットヘッドを複数並べて用いるようにしても良い。
また、前述の実施形態においては、インクジェットヘッド61による印刷を行う例示をしたが、これに限るものではなく、印刷装置60による印刷としては、レーザによるマーキングや転写ローラによる転写印刷であっても適用できる。搬送ベルト21に粉が付着して、錠剤Tが、搬送中あるいは印刷時に揺れていたり、ずれたりすることを防止でき、錠剤Tの印刷不良を抑えることができる。
また、前述の実施形態においては、錠剤Tの片面を印刷することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、搬送装置20などを上下に重ねて配置して、上側の搬送装置20で印刷した錠剤Tを反転して下側の搬送装置20に受け渡すようにして、錠剤Tの両面を印刷するようにしても良い。
また、前述の実施形態においては、錠剤Tを保持するための穴部として円形の吸引孔21aを例示したが、これに限るものではなく、例えば、長方形や楕円形、スリット状などの吸引孔を用いることが可能であり、吸引孔21aの形状は特に限定されるものではない。また、吸引孔21aとして貫通孔を例示したが、これに限るものではない。例えば、吸引部25を無くし、吸引孔21aの代わりに、錠剤Tを収容する凹部形状の穴部を搬送ベルト21の表面M1に形成することも可能である。
また、前述の実施形態においては、搬送ベルト21における各従動プーリ23側の部分を除く外周に亘って吸引部25を形成することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、吸引部25を搬送ベルト21の全周に亘って形成するようにしても良く、少なくとも、錠剤Tが供給されてから回収されるまでの間に吸引部25を形成していれば良い。
また、前述の実施形態においては、錠剤Tに印刷されたインクが自然乾燥することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、搬送ベルト21上の錠剤Tを印刷後に乾燥させる乾燥装置を設けることも可能である。この乾燥装置としては、例えば、放射熱により乾燥対象を乾燥させるヒータ、あるいは、温風や熱風により乾燥対象を乾燥させる送風機など各種の乾燥装置を用いることが可能である。
また、前述の実施形態においては、検出装置30に基づいて印刷のタイミングを取ることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、第2の撮像装置50に基づいて印刷のタイミングを取るようにしても良い。
ここで、前述の錠剤としては、医薬用、飲食用、洗浄用、工業用あるいは芳香用として使用される錠剤を含めることができる。また、錠剤としては、例えば、裸錠(素錠)や糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠、多層錠、有核錠などがあり、硬カプセルや軟カプセルなど各種のカプセル錠も錠剤に含めることができる。さらに、錠剤の形状としては、円盤形やレンズ形、三角形、楕円形など各種の形状がある。また、印刷対象の錠剤が医薬用や飲食用である場合には、使用するインクとして可食性インクが好適である。この可食性インクとしては、合成色素インク、天然色素インク、染料インク、顔料インクのいずれを使用しても良い。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。