以下、本発明の実施の形態(以下、実施形態とする)について、図面を用いて説明する。
[印刷対象物]
錠剤印刷装置Sは、錠剤Tbを印刷対象物とする。錠剤Tbは、裸錠(素錠)、糖衣錠、フィルムコーティング錠(FC錠)、腸溶錠、ゼラチン被包錠、多層錠、有核錠等の錠剤やタブレットを含む。また、錠剤Tbは、硬カプセル、軟カプセル等のカプセル錠も含む。このような錠剤Tbの用途は、医薬用、食用、洗剤用、工業用等を問わない。
[錠剤印刷装置]
図1を参照して、実施形態の錠剤印刷装置Sを説明する。錠剤印刷装置Sは、供給装置10、搬送装置20、センサ30、カメラ40、印刷部50、排出装置60、回収装置70、収納装置80、制御装置90を有する。
[供給装置]
供給装置10は、搬送装置20に錠剤Tbを供給する装置である。供給装置10は、ホッパー11、振動フィーダ12、整列フィーダ14、受け渡しフィーダ16を有する。
ホッパー11は、錠剤Tbを収容する容器である。振動フィーダ12は、ホッパー11から順次排出される錠剤Tbを、整列フィーダ14に向けて移動させる搬送路である。振動フィーダ12には、図示しない加振器が設けられている。この加振器が振動フィーダ12に加える振動によって、錠剤Tbが移動する。振動フィーダ12は、ホッパー11側の垂直方向の経路と、整列フィーダ14に延びた傾斜した経路を有する。
整列フィーダ14は、振動フィーダ12から錠剤Tbを受け取って、受け渡しフィーダ16に渡す装置である。図示しない駆動源により回動する2つのプーリに、搬送ベルトが巻き掛けられている。搬送ベルトの搬送路上には、整列ガイドが設けられている。整列ガイドは、錠剤Tbを、例えば、2列に分けて整列させて、各列の錠剤Tbを受け渡しフィーダ16に向けて順次搬送する。
受け渡しフィーダ16は、図示しない2つのプーリに、吸引穴を有する搬送ベルトが巻き掛けられている。搬送ベルトの内側には、図示しない吸引装置に結合した吸引チャンバが設けられている。
受け渡しフィーダ16は、整列フィーダ14の後端部の上方と搬送装置20の前端部の上に亘って配置されている。
受け渡しフィーダ16の搬送ベルトは、整列フィーダ14からの錠剤Tbを吸引チャンバの吸引作用によって受け取る。錠剤Tbを受け取った受け渡しフィーダ16の搬送ベルトは、吸引チャンバの吸引作用が働かなくなる位置で、搬送装置20に錠剤Tbを引き渡す。このように、供給装置10が搬送装置20へ錠剤Tbを引き渡す際に、2以上の錠剤Tbが互いに接する場合がある。
[搬送装置]
搬送装置20は、錠剤Tbを搬送する装置である。搬送装置20は、整列フィーダ14の下流側に配置されている。搬送装置20は、搬送ベルト21、駆動プーリ22、テンションプーリ23、2つの調整プーリ24a、24b、吸引チャンバ25、エンコーダ27を有する。搬送ベルト21は、錠剤Tbを吸着保持して移動することにより、錠剤Tbを搬送するベルトである。搬送ベルト21は、無端状であり、駆動プーリ22、テンションプーリ23、2つの調整プーリ24a、24bに巻き掛けられている。なお、以下の説明では、搬送装置20において、搬送される錠剤Tbが先に通過する位置を上流側、後に通過する位置を下流側とする。無端状の搬送ベルト21の上側と下側で、上流側と下流側とは逆となる。
搬送ベルト21には、図2に示すように、複数の通孔26が設けられている。複数の通孔26は、搬送ベルト21の移動方向に所定間隔で形成されている。後述するように、この通孔26に吸引空気を通すことにより、図中、点線の円で示した錠剤Tbが搬送ベルト21に吸着される。供給装置10から渡される状態によっては、図2の一方の列に示すように、2以上の錠剤Tbが互いに接する状態となり、この状態で搬送ベルト21に吸着されて搬送される。
駆動プーリ22は、モータMによって回転する。駆動プーリ22が回転することにより、搬送ベルト21が駆動される。駆動プーリ22は、図示はしないが、搬送ベルト21の搬送方向に直交する幅方向に、所定の間隔で平行に配置された2つのプーリを有している。
テンションプーリ23は、水平方向に移動可能に設けられている。テンションプーリ23の水平方向の位置を調整することにより、搬送ベルト21のテンションが調整される。2つの調整プーリ24a、24bは、上下方向に独立して移動可能に設けられている。2つの調整プーリ24a、24bによって、搬送ベルト21の上側の水平部分と下側の水平部分の高さが調整される。
吸引チャンバ25は、搬送ベルト21の裏面側から、通孔26を介して吸引することにより、搬送ベルト21の表面に錠剤Tbを吸着保持させる。この吸引を行なうために、吸引チャンバ25には、所定の部位に形成された排気口25aに、図示しない真空ポンプ等の吸気装置が結合されている。
吸引チャンバ25は、概ね箱状であり、環状の搬送ベルト21の内側に設けられている。吸引チャンバ25は、駆動プーリ22の2つのプーリの間に入り込んでいる。吸引チャンバ25には、駆動プーリ22の2つのプーリの軸が回転自在に貫通する孔が、吸引チャンバ25の気密性を保持しつつ形成されている。
このような吸引チャンバ25において、駆動プーリ22と調整プーリ24aとの間に張られる搬送ベルト21に対向した平面状の上側の壁部を、上側部分の壁部と呼ぶ。また、駆動プーリ22と調整プーリ24bとの間に張られる搬送ベルト21に対向した平面状の下側の壁部を、下側部分の壁部と呼ぶ。さらに、駆動プーリ22の2つのプーリの間に入り込んで、搬送ベルト21に対向する円弧状に湾曲した壁部を、駆動プーリ22側部分の壁部と呼ぶ。また、吸引チャンバ25の円弧状に湾曲した壁部と逆側の端部は、2つの調整プーリ24a、24bに対向する壁部によって閉鎖されている。吸引チャンバ25の各壁部には、調整プーリ24a、24bに対向する壁部は除いて、複数の吸引孔が形成されている。
排気口25aを介して結合される吸引装置の吸引作用により、吸引チャンバ25内の吸引が行われる。これにより、吸引チャンバ25の各壁部の吸引孔、更に、搬送ベルト21に形成された通孔26を通して、空気が吸引され、搬送ベルト21の表面に錠剤Tbが吸着保持される。
調整プーリ24aの上下方向の位置を調整することにより、搬送ベルト21の上側部分と吸引チャンバ25の壁部との間の隙間が調整される。また、調整プーリ24bの上下方向の位置を調整することにより、搬送ベルト21の下側部分と吸引チャンバ25の壁部との間の隙間が調整される。これらの隙間及び搬送ベルト21のテンションのそれぞれの調整を、調整プーリ24a、24b及びテンションプーリ23の位置調整によって行う。
エンコーダ27は、モータMの駆動軸の回転に伴って動作するロータリーエンコーダである。エンコーダ27は、錠剤Tbの位置を特定するために、錠剤Tbが基準となる位置を通過してからのエンコーダーパルスのカウント値を出力する。なお、錠剤Tbの位置の特定に用いることができればよいので、エンコーダ27の種類は特定されない。
[センサ]
センサ30は、搬送装置20に搬送される錠剤Tbの有無を検出する検出部である。センサ30は、搬送装置20に搬送される錠剤Tbを検出すると、出力信号がOFFからONとなり、錠剤Tbを検出し続けている間は出力信号がONを維持し、錠剤Tbを検出しなくなると出力信号がONからOFFとなる。
センサ30は、例えば、レーザセンサのように、反射型の光学センサを用いることができる。センサ30は、センサ30から検出対象までの距離を検出し、これに応じた出力信号を出す。例えば、センサ30は、センサ30から搬送ベルト21の表面までの距離、センサ30から錠剤Tbの表面までの距離を検出する。「センサ30から」とは、「所定の基準位置から」を意味し、センサの距離の演算手法により異なる。例えば、センサ下面を所定の基準位置とすることができるが、これには限定されない。
センサ30の出力信号は、検出した距離に応じたアナログ信号とすることもできるが、本実施形態においては、検出した距離に応じてONとOFFを切り替えるデジタル信号とする。つまり、検出する距離が所定のしきい値を超えている場合には、錠剤Tbが存在しないとして、センサ30の出力信号はOFFである。検出する距離がしきい値以下となると、錠剤Tbが存在するとして、センサ30の出力信号がOFFからONとなる。検出する距離がしきい値以下を維持している場合には、錠剤Tbが存在し続けているとして、センサ30の出力信号がONを維持する。検出距離がしきい値を超えた場合には、錠剤Tbが存在しなくなったとして、センサ30の出力信号はONからOFFとなる。
なお、しきい値との比較を、検出する距離に応じた波形の振幅値とすることもできる。この振幅値は、レーザが通過した位置の錠剤Tbの厚さに相当する。従って、この場合、センサ30は、振幅値がしきい値を超える場合に、その出力信号がOFFからONとなり、振幅値がしきい値以下の場合に、ONからOFFとなる。
センサ30は、搬送ベルト21の印刷位置Ppよりも、錠剤Tbの搬送方向の上流側の錠剤検出位置Pdで、錠剤Tbの有無を検出する。上記のように、センサ30の出力信号は、錠剤Tbの存在を検出している間はONとなり、錠剤Tbを検出しなくなるとOFFとなる。このセンサ30の出力信号が、1つの錠剤Tbの通過時間を超えて、ONになり続けている場合、2以上の錠剤Tbが連続して接している状態を示していることになる。
[カメラ]
カメラ40は、各錠剤Tbを印刷前に撮像する撮像部である。カメラ40は、後述する第1のトリガ信号、第2のトリガ信号に基づいて、各錠剤Tbを、それぞれ全体が撮像領域に入っているタイミングで撮像する。具体的には、錠剤Tbの中心が撮像領域の中心にくるタイミングで撮像する。撮像領域は、撮像部が撮像できる範囲をいい、視野範囲ともいう。
カメラ40は、印刷部50よりも上流側で、錠剤Tbを撮像して、この撮像画像に基づいて、錠剤Tbの姿勢を確認する。ここで、錠剤Tbの姿勢とは、搬送ベルト21の上の錠剤Tbの位置、向き、鉛直方向の傾斜、表裏などの状態を示す。また、例えば、割れ、欠け、汚れ等の錠剤Tbの損傷(外観不良)の状態を確認する。カメラ40の撮像領域は、搬送ベルト21の錠剤検出位置Pdと、その下流で印刷を行う印刷位置Ppとの間の所定範囲を含む。すなわち、カメラ40は、錠剤検出位置Pdと、その下流で印刷を行う印刷位置Ppとの間に配置される。撮像領域は、少なくとも1つの錠剤Tbの全体が撮像できる大きさであればよい。撮像される画像のデータ量を抑えつつ、1つの錠剤Tbの全体を確実に撮像できるようにするため、同時に2つの錠剤Tbの全体が収まるが、3つの錠剤Tbの全体は収まらない大きさとすることが考えられる。さまざまな錠剤Tbのサイズでこのような撮像領域とするために、例えば、カメラ40に含まれるレンズの倍率を変更することが考えられる。これは、倍率の異なるレンズに交換することやズームレンズを用いることで変更することができる。また、撮像した画像から上述の撮像領域のデータにおいてのみ画像処理を行うようにして、上述の撮像領域になるようにすることもできる。あるいはカメラ40によって取り込まれる画像の範囲を調整することによって、上述の撮像領域とすることもできる。
第1のトリガ信号、第2のトリガ信号のタイミングから、錠剤Tbが撮像領域に収まるタイミングまでのエンコーダーパルス値が決まっている。このため、カメラ40は、このエンコーダーパルス値に基づいて、錠剤Tbの全体が撮像領域に収まる位置に来るタイミングで撮像する。これは、印刷部による印刷、印刷確認においても同様である。
[印刷部]
印刷部50は、搬送装置20に搬送される錠剤Tbに印刷を行う機構である。印刷部50は、後述する第1のトリガ信号及び第2のトリガ信号に対応する錠剤Tbに印刷を行う。但し、印刷部50は、印刷可能な錠剤Tbのみに印刷する。つまり、カメラ40によって撮像され、錠剤Tbの姿勢や外観の状態が印刷可能とされた錠剤Tbが印刷の対象となる。ここで、印刷不可能な錠剤Tbとは、例えば、印刷できない姿勢(許容できないほど傾いた状態や位置のずれ)となっている錠剤や、許容できないほどの損傷を有している錠剤のことを言う。
印刷部50は、印刷ヘッド51、印刷確認カメラ52、乾燥ユニット53を有する。印刷ヘッド51は、印刷データに従って、錠剤Tbの表面に印刷を行うインクジェットプリンタのヘッドである。印刷ヘッド51は、圧電素子や熱素子等のエネルギー発生素子を駆動させることにより、インク滴を噴出して印刷を行う複数のノズルを有する。印刷ヘッド51は、カメラ40の下流側の印刷位置Ppにおいて、搬送ベルト21の表面に対向して配置されている。
ところで、カメラ40により撮像された錠剤Tbの姿勢は、各錠剤Tb毎に相違する。このため、印刷ヘッド51は、各錠剤Tbの姿勢の相違があっても、これに応じた印刷パターンで、正しい位置に印刷するように調整する。
印刷確認カメラ52は、印刷後の錠剤Tbを撮像する撮像部である。印刷確認カメラ52は、後述する第1のトリガ信号、第2のトリガ信号に基づいて、各錠剤Tbを、全体が撮像領域に入っているタイミングで撮像する。印刷確認カメラ52は、印刷ヘッド51を通過した後の錠剤Tbを撮像して、この撮像画像に基づいて、印刷状態を確認する。印刷確認カメラ52の撮像領域は、錠剤Tbの搬送方向Dにおける印刷位置Ppの下流側の所定範囲に設定されている。すなわち、カメラ52は、印刷位置Ppの下流側に配置される。
乾燥ユニット53は、搬送ベルト21の下側部分の下方に設けられている。乾燥ユニット53は、搬送ベルト21の駆動プーリ22側に設けられ、錠剤Tbが搬送ベルト21に搬送される際に、表面に印刷された文字やマークのインクを乾燥して定着させる装置である。
[排出装置]
排出装置60は、不良品の錠剤Tbを搬送装置20から排出する装置である。排出装置60は、2つのエアー噴射ノズル61、62を有する。エアー噴射ノズル61、62の吹き出し側は、吸引チャンバ25内に、搬送ベルト21を挟んで、後述する回収トレイ71、72に対向する位置に設けられている。排出装置60のエアー噴射ノズル61は、印刷がなされなかった錠剤Tbのうち、姿勢不良により印刷されなかった錠剤Tbが、回収トレイ71に対応する位置に来た時に、エアーを噴射して、回収トレイ71に落下させる。このような姿勢不良により印刷されなかった錠剤Tbは、「再利用品」として回収トレイ71に回収されることになる。エアー噴射ノズル62は、不良品の錠剤Tbが、回収トレイ72に対応する位置に来た時に、エアーを噴射して、回収トレイ72に落下させる。ここで、不良品の錠剤Tbは、外観不良(許容できない損傷の度合い)の錠剤Tb、印刷不良の錠剤Tbを含む。
[回収装置]
回収装置70は、不良品の錠剤Tbを回収する装置である。回収装置70は、回収トレイ71、72を有する。回収トレイ71、72は、乾燥ユニット53の下流側に順次配置され、上側が開放された容器である。この回収トレイ71、72は、上記のエアー噴射ノズル61、62に、搬送ベルト21を挟んで対向している。
[収納装置]
収納装置80は、良品の錠剤Tbを収納する装置である。収納装置80は、回収装置70の下流側に、吸引チャンバ25の吸引作用が働かなくなる位置に配置され、上側が開放されたトレイである。
なお、錠剤Tbは、上記のように、整列フィーダ14によって2列に配列される。そして、錠剤Tbは、受け渡しフィーダ16を介して、搬送装置20の搬送ベルト21に供給される。この場合、搬送ベルト21上の2列の錠剤Tbのそれぞれについて印刷を行うために、実際には、上述したセンサ30、カメラ40、印刷ヘッド51、印刷確認カメラ52、乾燥ユニット53、2つのエアー噴射ノズル61、62及び2つの回収トレイ71、72は、当該2列の錠剤Tbに対応するように、2セット設けられている。この2セットは同じ動作を行うので、以下、1セットについて説明する。
[制御装置]
制御装置90は、錠剤印刷装置Sの動作を制御する装置である。制御装置90は、例えば、専用の電子回路若しくは所定のプログラムで動作するコンピュータ等によって実現できる。この制御装置90の制御による各部の動作の詳細は、本実施形態の作用として後述する。
このような制御を実現するための制御装置90の構成を、仮想的な機能ブロック図である図3を参照して説明する。すなわち、制御装置90は、機構制御部91、第1の信号生成部92a、第2の信号生成部92b、抽出部93a、補正部93b、不良判定部94、追跡部96、記憶部97及び入出力制御部98を有する。機構制御部91は、供給装置10、搬送装置20、印刷部50等の機構部の駆動源、バルブ、スイッチ、電源等を制御する。つまり、機構制御部91によって、供給装置10、搬送装置20の搬送速度、カメラ40の撮像、印刷部50による印刷、排出装置60による不良品の錠剤Tbの排出等が制御される。
第1の信号生成部92aは、センサ30が錠剤Tb有りの検出に基づいて、第1のトリガ信号を生成する。例えば、第1の信号生成部92aは、センサ30の出力信号が立ち上がった時点、つまりOFFからONとなった時点を基準に、第1のトリガ信号を生成する。第1のトリガ信号は、図4に示すように、短いパルス信号である。この第1のトリガ信号は、例えば、カメラ40で錠剤Tbを撮像するために生成される。したがって、第1のトリガ信号に基づいて、カメラ40の撮像領域内に錠剤Tbが到達するタイミングが演算可能となる。制御装置90は、好ましくは、カメラ40の撮像領域の中心に錠剤Tbの中心が来るようなタイミングを決定する。具体的にカメラ40の撮像タイミングは、出力信号がOFFからONとなった時点から錠剤Tbの半径に相当する時間長と、センサ30からカメラ40までの距離に基づく時間長とを足し合わせたものとなる。図4では、互いに接して搬送されている2以上の錠剤Tbを模式的に示している。理解を簡単にするために、図4では、4つの錠剤Tbが図中、右に向かって互いに接して連なり、左端の錠剤Tbを先頭の錠剤Tbとして、搬送ベルト21上において右から左に搬送される様子を示している。この左端の錠剤Tbすなわち先頭の錠剤Tbの左端がセンサ30に到達し、出力信号がOFFからONに変わっている。
第2の信号生成部92bは、センサ30が錠剤Tb有りの検出を維持している間、錠剤Tbのサイズに基づいて算出される所定のタイミングで、第2のトリガ信号を生成する。ここで言う「所定のタイミング」とは、例えば、錠剤Tbの直径に相当する時間長(設定値)taである。第2の信号生成部92bは、第1のトリガ信号を生成したタイミングからさらに時間長taが経過したタイミングで第2のトリガ信号を生成する。より具体的には、第2の信号生成部92bは、センサ30がONになってから時間長taを経過してもONを維持している場合において、第2のトリガ信号を生成する。この第2のトリガ信号も、図4に示すように、短いパルス信号である。但し、第2のトリガ信号は、個々の錠剤Tbを実際に検出して生成されるものではなく、各錠剤Tbが通過したと想定して生成されるいわばダミーのトリガ信号である。この第2のトリガ信号も、例えば、カメラ40で錠剤Tbを撮像するために生成される。したがって、第2のトリガ信号に基づいて、カメラ40の撮像領域内に錠剤Tbが到達するタイミングが演算可能となる。制御装置90は、好ましくは、カメラ40の撮像領域の中心に錠剤Tbの中心が来るようなタイミングを決定する。具体的にカメラ40の撮像タイミングは、出力信号がOFFからONとなった時点から錠剤Tbの半径に相当する時間長と、錠剤Tbの直径に相当する時間長と、センサ30からカメラ40までの距離に基づく時間長とを足し合わせたものとなる。さらに、後続の第2のトリガ信号は、これらの時間長に、錠剤Tbの直径に相当する時間長を足し合わせていったものとなる。
なお、カメラ40の撮像に続く印刷や検査などの後流の処理も、それぞれの処理がされる位置に錠剤Tbが到達するタイミングが、第1のトリガ信号あるいは、第2のトリガ信号に基づいて決定される。
本実施形態では、互いに接して搬送されている各錠剤Tbの中心が、錠剤検出位置Pdを通過したと想定されるタイミングで第2のトリガ信号を生成する。これは、その後のカメラ40による撮像、印刷ヘッド51による印刷、印刷確認カメラ52による撮像等は、錠剤Tbが撮像領域、印刷領域の中心に来たときに行うことが望ましいためである。錠剤Tbの中心と想定される位置で生成された第2のトリガ信号を基準として、錠剤Tbの中心が、撮像領域、印刷領域の中心に来るエンコーダーパルス数を設定する。これにより、錠剤Tbが、撮像領域、印刷領域から外れることを防止できる。
例えば、図4に示すように、錠剤Tbの1つ分の搬送方向の長さが、1点を通過する時間長をtaとする。この時間長taは、錠剤Tbの1つ分の搬送方向の長さを、搬送速度で除算することにより求めることができる。錠剤Tbが平面方向から見て円形である場合には、1つ分の搬送方向の長さは、その直径とすればよい。また、この時間長taの半分の時間長をthとする。
そして、第1の信号生成部92aは、センサ30の出力信号がOFFからONに立ち上がってから、時間長thのタイミングで第1のトリガ信号を生成する。第2の信号生成部92bは、第1のトリガ信号に続く第2のトリガ信号(1)を、第1のトリガ信号から、時間長taのタイミングで生成する。第2の信号生成部92bは、その後の第2のトリガ信号(2)、(3)…を、それぞれ直前の第2のトリガ信号から、時間長taのタイミングで生成する。これにより、錠剤検出位置Pdを、錠剤Tbの中心が通過したと想定されるタイミングで第1のトリガ信号、第2のトリガ信号が生成される。
第2のトリガ信号の生成は、図4に示すように、センサ30の出力信号がONになってから、OFFになるまでの間で行われる。つまり、錠剤Tbがなくなってセンサ30で検出されなくなると、第2のトリガ信号も生成されなくなる。このように生成される第2のトリガ信号によって、互いに接して搬送されている2以上の錠剤Tbがある場合に、先頭より後の錠剤Tbも存在するものとして、撮像、印刷等の処理を行うことができる。
カメラ40は、第1のトリガ信号及び第2のトリガ信号を基準として撮像を行う。第1のトリガ信号及び第2のトリガ信号を基準として撮像を行うとは、例えば、上記のように、生成された第1のトリガ信号及び第2のトリガ信号から、錠剤Tbが移動してその全体が撮像領域に入る時間長が経過した時点で撮像する。この時間長は、上記のように、エンコーダーパルス数で設定できる。
抽出部93aは、画像データにおける錠剤の画像の内接円の中心位置を、錠剤の中心位置として抽出する。画像データにおいて、錠剤Tbの画像は、その輪郭内が背景と区別される色となる。例えば、図5に示すように、黒色の背景に、錠剤Tbが白で塗りつぶされた図形で表示されるように、画像の濃淡等により画像処理される。このため、図5(A)に示すように、錠剤Tbが平面方向から見て独立した円形であれば、その円形の重心を求めれば、錠剤Tbの中心位置を求めることができる。このようにして求めた錠剤Tbの中心位置を、図5(A)で点線の+印で示す。
しかし2以上の錠剤Tbが接している場合、例えば、図5(B)に示すように、全体が撮像される錠剤Tbと一部が撮像される錠剤Tbの2つの錠剤Tbが、一つの図形となるので、この図形の重心を求めても、各錠剤Tbの中心とは異なる位置となってしまう。図5(B)では、本来求めたい各錠剤Tbの中心を実線の+印、2つの錠剤Tbで一つとなった図形から求めた中心を点線の+印で示す。一方、本実施形態は、図5(C)の一点鎖線で示すように、錠剤Tbの画像の内接円Cの中心位置を、錠剤Tbの中心とする。これは、錠剤Tbの中心とほぼ一致する。内接円が複数得られる場合、最も径の大きい内接円の中心を選択する。図5(C)では、全体が撮像されている錠剤Tbの内接円C1の方が、一部が撮像されている錠剤Tbの内接円C2より大きいので、全体が撮像されている錠剤Tbの内接円C1の中心が選択され、点線で示す+印のように必要な錠剤Tbの中心の位置を正しく求めることができる。
補正部93bは、抽出部93aにより抽出された錠剤Tbの中心位置に応じて、カメラ40の撮像タイミングを補正する。カメラ40の撮像タイミングは、上記のように、第1のトリガ信号、第2のトリガ信号に基づいて決定される。しかし、第2のトリガ信号は、各錠剤Tbを実際に検出して生成されたものではないため、実際の錠剤Tbの位置とはズレがある。
このため、補正部93bは、実際に撮像した画像データから、抽出された錠剤Tbの中心位置がカメラ40の撮像領域の中心からズレている場合、このズレを解消するように、印刷部50による印刷のタイミングを補正する。例えば、抽出された錠剤Tbの中心位置がカメラ40の撮像領域の中心よりも上流側にある場合には、印刷部50による印刷のタイミングを遅らせる。抽出された錠剤Tbの中心位置がカメラ40の撮像領域の中心よりも下流側にある場合には、印刷部50による印刷のタイミングを早くする。
不良判定部94は、不良品の錠剤Tbを判定する。不良判定部94は、例えば、カメラ40により撮像された画像データから、汚れ、カケ等の損傷が有る外観不良の錠剤Tbを不良品と判定する。また、不良判定部94は、例えば、印刷確認カメラ52により撮像された画像データから、正常に印刷がなされていない印刷不良の錠剤Tbを、不良品と判定する。但し、不良判定部94は、搬送ベルト21上の姿勢から印刷できない錠剤Tbについても識別するが、外観不良ではなく、姿勢不良の錠剤Tbについては再投入の可能性があるため、不良品とは判定しない。なお、外観不良の錠剤Tb、姿勢から印刷できない錠剤Tbについては、印刷部50による印刷の対象から除外される。
追跡部96は、搬送装置20における錠剤Tbの位置を追跡する。より具体的には、追跡部96は、エンコーダ27によるエンコーダーパルスのカウント値から、移動する各錠剤Tbがどの位置にあるかを特定する。例えば、追跡部96は、第1のトリガ信号や、第2のトリガ信号に基づいて、錠剤Tbが、カメラ40の撮像領域、印刷部50の印刷及び印刷確認位置に到達するまでの追跡を行う。また、追跡部96は、不良判定部94により不良品と判定された錠剤Tb及び姿勢から印刷できないとされた錠剤Tbの搬送装置20における位置を追跡する。
記憶部97は、錠剤印刷装置Sの処理に必要な各種の情報を記憶する。記憶される情報は、センサ30からの出力信号、第1のトリガ信号及び第2のトリガ信号の生成タイミング、撮像、印刷等を行うタイミングを決めるエンコーダーパルス数、不良品の錠剤Tbを判定するためのしきい値等の基準、カメラ40に撮像された画像データ、印刷する文字、マーク等の内容を示す印刷データ、追跡される錠剤Tbの位置等を含む。
入出力制御部98は、制御対象となる各部との間での信号の変換や入出力を制御するインタフェースである。
なお、制御装置90には、装置の状態を確認するためのディスプレイ、ランプ、メータ等の出力装置99aが接続されている。センサ30からの出力信号、トリガ信号、カメラ40に撮像された画像データ等を、出力装置99aに表示してもよい。また、制御装置90には、オペレータが、錠剤印刷装置Sの動作に必要な情報を入力するためのスイッチ、タッチパネル、キーボード、マウス等の入力装置99bが接続されている。
[動作]
本実施形態の錠剤印刷装置Sにおいて、錠剤Tbの表面に文字やマークを印刷する手順を、図面を参照して説明する。なお、以下の動作で、良品でないものとして排出される錠剤Tbとしては、割れ、欠け、異物、汚れなどの外観上の問題がある外観不良の錠剤Tbがある。これは不良品となる。また、印刷の状態が良好でない印刷不良の錠剤Tbがある。これも不良品となる。一方、姿勢が不良のため印刷等がなされなかった錠剤Tbがある。これは不良品ではないが、排出される。
錠剤Tbに対する印刷手順を、図6、図7のフローチャート、図8〜図11の説明図を参照して説明する。まず、図6のフローチャートに示すように、供給装置10が、錠剤Tbを搬送装置20に供給する(ステップS101)。つまり、ホッパー11に収容された錠剤Tbは、振動フィーダ12を経由して、整列フィーダ14に渡される。整列フィーダ14は、例えば、2列に配列された錠剤Tbを、受け渡しフィーダ16に渡す。受け渡しフィーダ16は、搬送装置20に、錠剤Tbを渡す。搬送装置20は、図2に示すように、錠剤Tbを、搬送ベルト21に2列で吸着保持された状態で搬送する。
搬送される錠剤Tbについて、第1のトリガ信号又は第2のトリガ信号が生成される(ステップS102)。この第1のトリガ信号又は第2のトリガ信号の生成の手順を、図7のフローチャートを参照して説明する。なお、図6のフローチャートは、ステップS102で、全ての錠剤Tbに対する第1のトリガ信号、第2のトリガ信号を生成した後、ステップS103以降の処理を行っていることを示しているわけではない。各錠剤Tbについて第1のトリガ信号又は第2のトリガ信号の生成が行われているのと同時並行に、先行する錠剤Tbに対する撮像、印刷等の処理が行われている。
図7に示すように、センサ30は、搬送装置20に搬送される各列の錠剤Tbが、錠剤検出位置Pdに来るのを待つ(ステップS201のNO)。錠剤Tbが錠剤検出位置Pdに来ると、図8(A)、図10(A)に示すように、センサ30は、錠剤Tbの存在を検出して出力信号をONにする(ステップS202のYES)。このとき、第1の信号生成部92aは、第1のトリガ信号を生成する(ステップS203)。
図8に示すように、錠剤Tbが間隔を空けて搬送されている場合、図8(C)に示すように、第2のトリガ信号が生成される所定のタイミング(すなわち、第1のトリガ信号から錠剤Tbの直径分の時間長taの経過)となる前に(ステップS203のNO)、錠剤Tbをセンサ30が検出しなくなり、出力信号がOFFになる(ステップS205のYES)。このように、錠剤Tbが間隔を空けて搬送されている場合、第1のトリガ信号のみが生成される。
一方、図10に示すように、2以上の錠剤Tbが接して搬送されている場合、図10(B)に示すように、第2のトリガ信号が生成される所定のタイミングとなっても(ステップS203のYES)、センサ30のからの出力信号は、ONになったままである。したがって、センサ30の出力信号がOFFからONとなる立ち上がりが発生しないので、この立ち上がりによって生成される第1のトリガ信号は生成されない。つまり、センサ30が錠剤の検出をしない状態から錠剤を検出する状態に変化することがないために第1のトリガ信号が生成されない。このため、第2の信号生成部92bは、第2のトリガ信号を生成する(ステップS204)。
さらに、図10(C)(D)に示すように、センサ30からの出力信号がONを維持している場合には(ステップS205のNO)、所定のタイミングが到来する毎に(ステップS203のYES)、第2の信号生成部92bが、第2のトリガ信号を生成する(ステップS204)。このような第2のトリガ信号の生成タイミングの例は、上記の図4で説明した通りである。そして、錠剤Tbをセンサ30が検出しなくなると、出力信号がOFFになる(ステップS205のYES)。したがって、以降は第2のトリガ信号は生成されない。
次に、図6のフローチャートに戻り、カメラ40は、図8(D)に示すように、トリガ信号を基準として、各錠剤Tbを撮像するタイミングを判定して(ステップS103)、そのタイミングで撮像する(ステップS104)。例えば、図8(D)に示すように、センサ30の出力信号をONからOFFとした錠剤Tbが移動して、その全体が撮像領域に入る時点で撮像する。なお、図9(A)〜(C)に示すように、後続の錠剤Tbについても、上記と同様に、センサ30による検出、トリガ信号の生成が行われ、順次撮像が行われる。
また、図10(C)(D)に示すように、2以上の錠剤Tbが接して搬送されている場合にも、上記と同様にトリガ信号に基づいて、各錠剤Tbの撮像が行われる。なお、この場合のトリガ信号は、2以上の錠剤Tbが接して搬送されている錠剤Tbのうち、先頭の錠剤Tbは第1のトリガ信号であり、この先頭の錠剤Tbに接して続く錠剤Tbは第2のトリガ信号となる。抽出部93aは、撮像した画像データから、錠剤Tbの中心位置を内接円により抽出する。中心を抽出することは、姿勢の一部である「位置」をみることを意味する。前述したように、補正部93bは、抽出された錠剤Tbの中心位置がカメラ40の撮像領域の中心からズレている場合、このズレを解消するように、印刷部50による印刷のタイミングを補正してもよい。また、印刷確認カメラ52による撮像のタイミング、排出装置60による排出のタイミングを補正してもよい。
図11は、2以上の錠剤Tbが接して搬送されている状態を示す。錠剤Tbが並んでいる方向が搬送方向である。錠剤Tbが搬送される時にセンサ30の検出が行われる軌跡を点線で示す。例えば、図11(B)に示すように、錠剤Tbの中心がセンサ30の検出が行われる位置で搬送方向の直角方向にずれていたり、図11(C)に示すように、錠剤Tbが重なり合っている場合もある。この場合、実際の錠剤Tbの位置と、錠剤Tbのサイズに基づいて生成される第2のトリガ信号とがズレてゆく。このズレは、同じような状態が連続しているとして、接している錠剤Tbの数が多いほど累積して大きくなる。このような場合には、補正部93bによる印刷部50による印刷のタイミングの補正、印刷確認カメラ52による撮像のタイミングの補正、排出装置60の排出のタイミングを補正することが効果的である。
不良判定部94は、撮像された画像データに基づいて、錠剤Tbが印刷可能か否かを判定する(ステップS105)。不良判定部94による判定は、姿勢が印刷できる程度か否かに基づいて行う。姿勢には、錠剤Tbの表裏、搬送ベルト21上での位置、搬送ベルト21上で保持されている向きや鉛直方向の傾きなどを含む。姿勢不良により印刷できない錠剤Tbについては、印刷できない錠剤として識別するが、再投入の可能性があるため、不良品とは判定せず、再利用品として、回収トレイ71に回収する。また、不良判定部94は、撮像された画像データから、錠剤Tbの汚れ、カケ等の損傷、錠剤Tbの姿勢を検出し、損傷の程度に基づいて、印刷できるか否かを判定する。このような外観不良の錠剤Tbは、不良品として判定される。
印刷可能と判定された場合(ステップS105のYES)、印刷ヘッド51は、図9(D)に示すように、印刷位置Ppを通過する錠剤Tbに印刷を行う(ステップS106)。この印刷のために、印刷すべき文字やマーク等の印刷データと、検出された錠剤Tbの損傷及び姿勢の情報に基づいて、印刷ヘッド51の複数のノズルからのインク滴の噴出パターンが生成される。この噴出パターンにより印刷ヘッド51がインク滴を噴出することにより、錠剤Tbの表面の所定の位置に、所定の向きで文字やマーク等を印刷する。
印刷不可と判定された場合(ステップS105のNO)、印刷ヘッド51は、印刷位置Ppを通過する錠剤Tbに印刷を行わない。つまり、印刷しないというデータが生成されることになる。このように印刷不可と判定されて印刷されなかった錠剤Tbは外観不良によって印刷がなされなかったものであるか否かを判定し(ステップS110)、外観不良によるものである場合には(ステップS110のYES)不良品となる(ステップS111)。したがって、外観不良ではなく、姿勢不良により印刷不可となった錠剤Tbは(ステップS110のNO)、前述したとおり再利用品として判定される(ステップS114)。以後、追跡部96は、エンコーダ27の値に基づいて、印刷がされなかった錠剤Tbの位置を追跡する。
更に、印刷位置Ppにおいて印刷された錠剤Tbが、印刷確認カメラ52の撮影領域に進入すると、印刷確認カメラ52で所定の撮像領域の撮像がなされる。不良判定部94は、撮像された画像データに基づいて、錠剤Tbに正常に文字やマークが印刷されたか否かを判定する(ステップS107)。正常に印刷されなかったと判定された錠剤Tbについては(ステップS107のYES)、不良品と判定され(ステップS111)、以後、追跡部96が、エンコーダ27の値に基づいて位置を追跡する。正常に印刷されていると判定された錠剤Tbについては(ステップS107のNO)、不良品として判定されずに搬送される。
印刷確認カメラ52の撮影領域を通過した錠剤Tbは、搬送ベルト21の移動に伴ってさらに搬送され、乾燥ユニット53に対向して搬送される際に、表面に印刷された文字やマークのインクが乾燥され定着する。
汚れ、欠け等の損傷による外観不良品ではないが、姿勢等により、印刷がなされずに追跡部96により位置が追跡されている錠剤Tbは、回収トレイ71に対応する排出位置に来ると(ステップS115のYES)、エアー噴射ノズル61がエアーを噴射する。これにより、錠剤Tbは、搬送ベルト21から飛ばされて、回収トレイ71に落ちて再利用品として排出、回収される(ステップS116)。
一方、欠けや汚れ等の損傷すなわち外観不良及び印刷が正常になされずに、不良品として追跡部96により位置が追跡されている錠剤Tbは、回収トレイ72に対応する排出位置に来ると(ステップS112のYES)、エアー噴射ノズル62がエアーを噴射する。これにより、錠剤Tbは、搬送ベルト21から飛ばされて、回収トレイ72に落ちて回収される(ステップS113)。
正常に印刷された良品の錠剤Tbは(ステップS107のNO)、搬送端の良品排出位置に向かって移動を続ける(ステップS108のNO)。そして、良品排出位置に到達すると(ステップS108のYES)、吸引チャンバ25の吸引作用が働かなくなり、収納装置80内に落ちて収容される(ステップS109)。つまり、良品として排出される。
[作用効果]
以上のような本実施形態の錠剤印刷装置Sは、錠剤Tbを搬送する搬送装置20と、
搬送装置20に搬送される錠剤Tbの有無を検出するセンサ30と、センサ30による錠剤Tb有りの検出に基づいて、第1のトリガ信号を生成する第1の信号生成部92aと、センサ30が錠剤Tb有りの検出を維持している間、錠剤Tbのサイズに基づいて算出される所定のタイミングで、第2のトリガ信号を生成する第2の信号生成部92bと、搬送装置20に搬送され、第1のトリガ信号及び前記第2のトリガ信号に対応する錠剤Tbに印刷する印刷部50とを有する。
このため、2以上の錠剤Tbが接して搬送されている場合であっても、第1のトリガ信号に続き、第2のトリガ信号を生成することにより、先頭の錠剤Tbのみならず、後に続く錠剤Tbについても、印刷等の処理を行うことができる。
すなわち、センサ30の出力信号のON、OFFで錠剤Tbの有無を検出し、その後のカメラ40での撮像や、印刷部50による印刷処理などのために、センサ30の出力信号がOFFからONとなる立ち上がりに基づいて、トリガ信号を生成する場合、2以上の錠剤Tbが接して搬送されていると、センサ30の出力信号のOFFからONとなる立ち上がりが、先頭の錠剤Tbにしか生じない。このため、後に続く錠剤Tbにはトリガ信号が生成されないので、このような錠剤Tbが搬送装置20に供給されたこと自体が、錠剤印刷装置Sに認識されない。したがって、このような錠剤Tbは、印刷等の処理がまったく行われない。さらに、このような処理されない錠剤Tbが、排除されることもない。すると、結果的に良品の収納装置80へ収納され、良品と混在することになる。このような混在があると、収納装置80内に収納された錠剤Tbから良品と処理されなかった錠剤Tbとを分別する必要が生じてしまうために、生産性が落ちる。
本実施形態の錠剤印刷装置Sでは、このように互いに接して搬送されているために、供給されていることが錠剤印刷装置Sに認識されない錠剤Tbをなくすことができる。よって、このような錠剤Tbと良品との分別を行う必要もなく、高い生産性を得ることができる。さらに、動画の様な撮像によって、逐次錠剤Tbの有無を判断する必要がないので、高速の処理ができ、高い生産性を得ることができる。
本実施形態は、第1のトリガ信号及び第2のトリガ信号に基づいて、各錠剤Tbを、全体が撮像領域に入っているタイミングで撮像する撮像部であるカメラ40、印刷確認カメラ52と、この撮像部により撮像された画像データに基づいて、不良品の錠剤Tbか否かを判定する不良判定部94とを有する。
このため、2以上の錠剤Tbが接して搬送されている場合に、先頭の錠剤Tbも、後続の錠剤Tbも、すべての錠剤Tbにおいて、外観不良、印刷不良による不良品と、良品とを区別することができる。さらに、姿勢不良で印刷されなかった錠剤Tbについても区別することができるので、錠剤印刷装置Sに再投入して、印刷することができる。したがって、確実に不良品の錠剤Tbを分別でき、再投入可能にもかかわらず不良品としてしまうな錠剤Tbを失くすことができるので、高い生産性を得ることができる。
本実施形態は、画像データにおける錠剤Tbの画像の内接円の中心位置を、錠剤Tbの中心位置として抽出する抽出部93aと、印刷部50による印刷のタイミングを、抽出部93aにより抽出された中心位置に応じて補正する補正部93bとを有する。
このため、順次搬送されてくる錠剤Tbのズレを補正して、良好なタイミングで、印刷部50による印刷を行うことができ、印刷位置がずれることを防止することができる。特に、内接円の中心位置に基づいて補正するため、重心を用いる場合に比べて、正確な補正が実現できる。また、2以上の錠剤Tbが接して搬送されているときに、それらの錠剤Tbが互いに重なっていたり、搬送方向の直交方向にずれるように接していて、錠剤Tbの1つ分の搬送方向の長さと連なっている長さが整数倍にならないとしても、印刷部50による印刷処理を行うことができる。したがって、高い生産性を得ることができる。
[他の実施形態]
本発明は、上記の実施形態には限定されない。
(1)カメラ40を設置しない態様も構成可能である。つまり、上記の実施形態では、第1のトリガ信号又は第2のトリガ信号が生成された錠剤Tbに対し、カメラ40が撮像し、その撮像画像に基づいて、印刷等を処理している。しかし、カメラ40を省略して、第1のトリガ信号又は第2のトリガ信号が生成された錠剤Tbに対し、印刷部50による印刷をしてもよい。この場合であっても、2以上の錠剤Tbが接して搬送されている場合の処理は同様にできる。
(2)第1のトリガ信号、第2のトリガ信号の生成は、種々の態様が考えられる。例えば、全ての生成タイミングを、センサ30による錠剤Tbの検出、つまり、出力信号のONを基準に決定してもよい。例えば、図4で示した例で説明すると、第1のトリガ信号を、出力信号ONからth後の錠剤中心あたりで生成する。第2のトリガ信号(1)は、出力信号ONからth+taのタイミングで生成する。第2のトリガ信号(2)は、出力信号ONからth+ta+taのタイミングで生成する。第2のトリガ信号(3)は、出力信号ONからth+ta+ta+taのタイミングで生成する。
また、第1のトリガ信号及び第2のトリガ信号の生成タイミングは、カメラ40の視野範囲の中心に、錠剤Tbの中心が来るようなタイミングとすることが好ましい。カメラ40の視野範囲の中心に来るタイミングは、第1のトリガ信号については、センサ30の出力信号ONから錠剤Tbの半径に相当する時間長thと、センサ30からカメラ40までの距離に基づく時間長とを足し合わせたものとすることが好ましい。また、第2のトリガ信号については、センサ30の出力信号ONから錠剤Tbの半径に相当する時間長thと、錠剤Tbの直径に相当する時間長taと、センサ30からカメラ40までの距離に基づく時間長とを足し合わせたものとすることが好ましい。第2のトリガ信号においては、錠剤Tbの直径に相当する時間長taは、上記のように、順次足し合わされていく。なお、このように撮像領域に入る時間長が経過した時点で、第1のトリガ信号及び第2のトリガ信号が生成され、この時点で撮像を行ってもよい。
なお、第1の信号生成部92aの第1のトリガ信号の生成、第2の信号生成部92bによる第2のトリガ信号の生成のタイミングは、上記には限定されない。例えば、第1の信号生成部92aは、センサ30の出力信号の立ち上がりを検知したら、すぐに第1のトリガ信号を生成してもよい。この場合、第2の信号生成部92bは、センサ30の出力信号の立ち上がりから、錠剤のサイズに基づいて算出される所定のタイミングで、第2のトリガ信号を生成してもよい。さらに、センサ30の出力信号がONとなった時に、上記のような第1のトリガ信号及び第2のトリガ信号を生成してもよい。そして、所定の時間長未満で、出力信号がOFFとなった場合、生成した第2のトリガ信号を消失させてもよい。
(3)上記の実施形態では、第2のトリガ信号を生成するタイミングとして、錠剤Tbの1つ分の搬送方向の長さが移動する時間長としている。但し、この所定の時間長は、厳密に1つ分の時間長とする必要はない。
図11(A)に示すように、錠剤Tbの中心がセンサ30の検出位置Pdを通過するように並んでいる理想的な状況を想定すると、厳密な1つ分の時間長としてもよい。しかし、図11(B)に示すように、錠剤Tbの中心がセンサ30の検出位置Pdからずれていたり、図11(C)に示すように、錠剤Tbが重なり合っている場合もある。また、図11(D)に示すように、平面方向から見て円形でない錠剤Tbの場合、1つ分の時間長を厳密には特定し難い。このため、設定される1つ分の時間長は、厳密な1つ分の時間長に対して長短の幅のある値であってもよい。
例えば、設定される1つ分の時間長を、厳密な1つ分以上2つ分未満の通過時間としてもよい。上限は、先頭の錠剤Tbと後続を正確に区別するために、厳密な1つ分の通過時間の1.8倍程度とすることが考えられるが、より好ましくは1.5倍とすることが考えられる。また、1つの分の錠剤Tbが通過する時間の平均をとって、それを所定の時間長とすることも考えられる。錠剤印刷装置Sを運転しながら、1つの錠剤Tbが通過する時間の平均をとり、所定の時間長を、この平均値に逐次変更してもよい。
上記の態様では、設定値の一例として錠剤Tbの直径に相当する時間長taを挙げた。但し、設定値はこれに限られず、「時間」に代えて「距離」により制御することもできる。「距離」とした場合には、搬送ベルト21の伸び縮みによる時間的誤差をなくすことができるので、より正確に印刷等の制御ができる。
(4)補正部93bによる補正について、2以上の錠剤Tbが接して搬送されていても、その中心が搬送方向の直線上にほぼ揃ってまっすぐに連なる場合は、先頭の錠剤Tbが撮像部の撮像領域に入れば、後続の錠剤Tbも、撮像領域に入るため、補正の必要性は低い。したがって、上記のような錠剤Tbと第2のトリガ信号とのズレが許容できるものであれば、補正部93bによる印刷部50の印刷タイミング、印刷確認カメラ52の撮像タイミング、排出装置60の排出タイミングに対する補正は行わなくても良い。この場合は、処理を簡素化できるので生産性を高くすることができる。
また、上述の実施形態においては、第1のトリガ信号及び第2のトリガ信号に基づいて印刷部50による印刷、印刷確認カメラ52による撮像、排出装置60による排出を行う例を挙げたが、これに限らず、カメラ40による撮像によって得られた錠剤Tbの位置に基づいて、印刷部50、印刷確認カメラ52、排出装置60による処理のタイミングを決定するようにしても良い。
(5)排出装置60による排出、回収装置70による回収は、外観不良の錠剤Tb、印刷不良の錠剤Tb、姿勢不良で印刷されなかった錠剤Tbを、区別して排出し、回収してもよい。つまり、回収トレイをそれぞれの錠剤Tbに対応して用意しておき、各回収トレイに対応する位置に来た時に、排出装置60が排出すればよい。また、これらの錠剤Tbを全て同じ回収トレイに回収してもよい。あるいは、事後の処理に応じて分別してもよい。例えば、外観不良は、検査精度が悪く誤って判断された可能性もあるので、そのまま廃棄せず再検査を行う。また、印刷不良も同様に、検査に誤りがある可能性もある。これらのような場合、それぞれを分別して、それぞれの再検査処理を行っても良いし、ひとまとめに回収して一つの検査装置での再検査としても良い。また、検査精度が高いと判明している場合には、これらの再検査を行わずに廃棄してもよい。また、姿勢不良や、2以上の錠剤Tbが接して搬送されたために排出すべきとされた錠剤Tbは、ひとまとめに回収して再投入しても良い。これらを適宜組み合わせるように分別しても良い。
(6)上記の実施形態は、錠剤Tbの一方の面に印刷する錠剤印刷装置Sとして説明した。但し、本発明は、上記と同様の構成の搬送装置、センサ、カメラ、印刷機構、排出装置、回収装置、収納装置を追加して、錠剤Tbの両面に印刷を可能とする錠剤印刷装置Sとして構成することもできる。この場合、搬送装置20の良品が離脱する位置において、収納装置80ではなく、追加された搬送装置が良品を、他方の面が印刷される面となるように受け取る。そして、追加されたセンサ、カメラ、印刷機構、排出装置、回収装置、収納装置によって、上記と同様に、他方の面への印刷、不良品の回収、良品の収納が行われる。
(7)また、排出装置、回収装置、収納装置は、追加された搬送装置にのみ配置し、追加された搬送装置にて不良品の回収、良品の収納としても良い。この場合は、搬送装置20に供給された錠剤Tbは排出されることなくそのまま追加された搬送装置に受け渡される。搬送装置20で判定された結果は追加された搬送装置での錠剤Tbの追跡にも適用される。
(8)実施形態において、設定した各種の値に対する大小判断、一致不一致の判断等において、以上、以下として値を含めるように判断するか、より大きい、上回る、超える、より小さい、下回る、未満として値を含めないように判断するかの設定は自由である。
(9)実施形態において、センサ30はレーザセンサのような反射型の光学センサを用いるとしたが、レーザのビーム形状は限定されない。例えば、スポットビームでもよく、ラインビームでも良い。また、ラインセンサのようなイメージセンサでも適用できる。ラインセンサを適用する場合は、画像として処理をするのではなく、例えば輝度を示す情報に所定のしきい値を超えた出力が存在したら錠剤Tbの有無を検出する出力信号をONとする。また、レーザでない光でも良く、超音波を用いるものでも良い。搬送ベルト21上の錠剤Tbが検出できればさまざまなセンサが適用可能である。
(10)実施形態において、カメラ40の撮像画像から錠剤Tbの割れ、欠けや汚れ等の状態を確認したが、この錠剤Tbの状態の確認は必ずしも行わなくても良い。また、カメラ40とは別に設けた撮像部で錠剤Tbの状態の確認を行っても良い。例えば、印刷確認カメラ52で行う、あるいはまったく別に設けたカメラで行うことも可能である。印刷の後で錠剤Tbの状態の確認を行う場合は、印刷ヘッド51が印刷可能な錠剤Tbとする判定の条件に、錠剤Tbの割れ、欠けや汚れ等の外観上の状態は含まれない。
(11)実施形態において、インクジェットプリンタで説明したが、印刷部50は、非接触でさまざまなタイミングで錠剤Tbに印刷ができればよく、例えばレーザプリンタでも良い。
(12)実施形態において、乾燥ユニット53を設けているが、搬送中の乾燥が可能であれば、乾燥ユニット53は必ずしも設けなくても良い。
(13)供給装置10の構成、受け渡し方法は、搬送装置20に錠剤Tbを供給できるものであればよく、上記の態様には限定されない。
(14)以上、本発明の実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。