<第1の実施形態>
第1の実施形態について図1から図5を参照して説明する。
(錠剤印刷装置の構成例)
図1に示すように、第1の実施形態に係る錠剤印刷装置1は、供給装置10と、第1の印刷装置20と、第2の印刷装置50と、回収装置30と、制御装置40とを備える。
供給装置10は、ホッパ11、整列フィーダ12及び受渡フィーダ13を有する。この供給装置10は、第1の印刷装置20の一端側に位置付けられ、印刷対象物である錠剤Tを第1の印刷装置20に供給することが可能に構成されている。ホッパ11は、多数の錠剤Tを収容し、収容した錠剤Tを整列フィーダ12に順次供給する。整列フィーダ12は、供給された錠剤Tを一列に整列し、受渡フィーダ13に向けて搬送方向A1(時計回り方向)に搬送する。整列フィーダ12としては、例えば、ベルト搬送機構や振動フィーダが用いられる。受渡フィーダ13は、整列フィーダ12上に一列に並ぶ各錠剤Tを錠剤Tの上側から順次吸引して保持し、保持した各錠剤Tを第1の印刷装置20まで一列で搬送して第1の印刷装置20に渡す。受渡フィーダ13としては、例えば、ベルト搬送機構が用いられる。受渡フィーダ13のベルト搬送機構は、搬送方向A2(反時計回り方向)に回転する。供給装置10は制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。
第1の印刷装置20は、搬送部21と、検出部22と、第1の撮像部23と、形状検出部26と、インクジェットヘッド24と、第2の撮像部25と、乾燥部27とを備える。インクジェットヘッド24は印刷部の一例である。
搬送部21は、搬送ベルト21a、駆動プーリ21b、複数の従動プーリ21c、モータ21d、位置検出器21e及び吸引チャンバ21fを有する。搬送ベルト21aは、無端状のベルトであり、駆動プーリ21b及び各従動プーリ21cに架け渡されている。駆動プーリ21b及び各従動プーリ21cは装置本体(図示せず)に回転可能に設けられており、駆動プーリ21bはモータ21dに連結されている。モータ21dは制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。位置検出器21eは、エンコーダなどの機器であり、モータ21dに取り付けられている。この位置検出器21eは電気的に制御装置40に接続されており、検出信号を制御装置40に送信する。搬送部21は、モータ21dによる駆動プーリ21bの回転によって各従動プーリ21cと共に搬送ベルト21aを走行させ、搬送ベルト21a上の錠剤Tを搬送方向A1(時計回り方向)に搬送する。
搬送ベルト21aには、図2に示すように、円形状の吸引孔21gが複数形成されている。これらの吸引孔21gは、それぞれ錠剤Tを吸着する貫通孔であり、一本の搬送路を形成するように搬送方向A1に沿って一列に並べられている。各吸引孔21gは、吸引チャンバ21f(図1参照)に形成された吸引路(図示せず)を介して吸引チャンバ21f内に接続されており、吸引チャンバ21fにより吸引力を得ることが可能になっている。吸引チャンバ21fには、ポンプが吸引管(いずれも図示せず)を介して接続されており、ポンプの作動により吸引チャンバ21f内が減圧される。吸引管は、吸引チャンバ21fの側面(搬送方向A1と平行な面)の略中央に接続されている。また、ポンプは制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。吸引チャンバ21f内が減圧されると、搬送ベルト21aの各吸引孔21g上に置かれた錠剤Tは概ねその中心近傍が吸引孔21gにより吸引され、搬送ベルト21a上に保持される。
検出部22は、供給装置10が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、各吸引孔21gが並ぶ搬送路の上方に設けられている。この検出部22は、レーザ光の投受光によって検出部22の直下の検出位置に到達した錠剤T(錠剤Tの到来)、すなわち搬送ベルト21a上の錠剤Tの搬送方向A1の位置を検出する。検出部22としては、例えば、変位センサが用いられる。また、変位センサとしては、反射型レーザセンサなどの各種のレーザセンサが用いられる。検出部22は制御装置40に電気的に接続されており、制御装置40に検出信号を送信する。
第1の撮像部23は、検出部22が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、各吸引孔21gが並ぶ搬送路の上方に設けられている。この第1の撮像部23は、検出部22により検出された錠剤Tの搬送方向A1の位置情報に基づき、錠剤Tが第1の撮像部23の直下の撮像位置に到達した第1の撮像タイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む第1の画像を取得し、取得した第1の画像を制御装置40に送信する。第1の画像は、錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向(図2参照)の位置を検出するために用いられる。第1の撮像部23としては、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの撮像素子を有する各種のカメラが用いられる。第1の撮像部23は制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられる。
ここで、錠剤TのX方向及びY方向の位置は、例えば、第1の撮像部23の撮像領域の中心(基準位置)に対するXY座標系の位置である。また、θ方向の位置は、例えば、第1の撮像部23の撮像領域のXY平面に沿った水平面内での錠剤Tの回転度合いを示す位置である。このθ方向の位置は、錠剤Tに割線が設けられている場合や錠剤Tが楕円形や長円形、三角形、四角形などに成型されている場合など、錠剤Tが方向性を有する形体である場合に検出される。なお、X方向およびY方向は、水平方向における位置である。
形状検出部26は、第1の撮像部23が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、各吸引孔21gが並ぶ搬送路の上方に設けられている。この形状検出部26は、例えば、光切断法によって対象物の三次元形状を検出する。この光切断法では、搬送ベルト21aの搬送面上の対象物にスリット光(帯状の光)を照射しつつ対象物を所定間隔で撮像し、対象物が載置された搬送ベルト21aの搬送面より高い部分を計測する。例えば、形状検出部26は、スリット光源26a及びカメラ26bを有する。この形状検出部26は、スリット光源26aにより対象物にスリット光を照射しつつ、カメラ26bにより所定間隔で撮像を繰り返すことで、所定間隔ごとに1ライン分の撮像データであるラインデータを取得し、所定間隔ごとのラインデータを制御装置40に順次送信する。所定間隔ごとのラインデータは、1ラインにおける対象物の高さデータ(対象物の縦断面の高さデータ)となる。なお、対象物が搬送ベルト21a上にない場合のラインデータは、1ラインにおける対象物の高さが0であるデータとして得られる。形状検出部26は制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。
ここで、カメラ26bによる撮像の繰り返し間隔である所定間隔は、時間(例えば、パルスや周波数)又は距離(例えば、0.05mm)に基づく間隔である。つまり、所定間隔は所定時間又は所定距離であり、カメラ26bによる撮像は所定時間又は所定距離ごとに繰り返される。
インクジェットヘッド24は、形状検出部26が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、各吸引孔21gが並ぶ搬送路の上方に設けられている。インクジェットヘッド24は、複数(例えば数百個から数千個)のノズル24a(図2参照)を有し、ノズル24aが一列に並ぶ方向(ノズル列)が水平面内で搬送方向A1と直交(交差の一例)するように設けられている。インクジェットヘッド24は、ノズル24aごとの駆動素子の動作によって各ノズル24aから個別にインクを吐出する。このインクジェットヘッド24としては、圧電素子、発熱素子又は磁歪素子などの駆動素子を有する各種のインクジェット方式の印刷ヘッドが用いられる。インクジェットヘッド24は制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。
第2の撮像部25は、インクジェットヘッド24が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、各吸引孔21gが並ぶ搬送路の上方に設けられている。この第2の撮像部25は、検出部22により検出された錠剤Tの搬送方向A1の位置情報に基づき、錠剤Tが第2の撮像部25の直下の撮像位置に到達した第2の撮像タイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む第2の画像を取得し、取得した第2の画像を制御装置40に送信する。第2の画像は、錠剤Tに印刷された印刷パターンを検査するために用いられる。第2の撮像部25としては、前述の第1の撮像部23と同様、CCDやCMOSなどの撮像素子を有する各種のカメラが用いられる。第2の撮像部25は制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。必要に応じて撮像用の照明も設けられる。
乾燥部27は、搬送ベルト21aに対向する位置に配置されており、例えば、搬送部21の下方に設けられている。この乾燥部27は、搬送ベルト21a上の各錠剤Tに塗布されたインクを乾燥させる。乾燥部27としては、エアなどの気体により乾燥を行う送風機、放射熱により乾燥を行うヒータ、あるいは、気体及びヒータを併用して温風や熱風により乾燥を行う送風機などの各種の乾燥機が用いられる。乾燥部27は制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。
ここで、第1の印刷装置20及び第2の印刷装置50は、上下に搬送部21及び搬送部51の個々の一部が重なるように配置されており、上側の第1の印刷装置20で印刷された錠剤Tが反転されて下側の第2の印刷装置50に受け渡され、錠剤Tの両面が印刷される。通常、第1の印刷装置20から第2の印刷装置50への錠剤Tのスムーズな受け渡しのため、第1の印刷装置20の搬送速度と第2の印刷装置50の搬送速度は常に同一である。
第2の印刷装置50は、第1の印刷装置20と同じ構造を有する。すなわち、第2の印刷装置50は、搬送部51、検出部52、第1の撮像部53、形状検出部56、インクジェットヘッド54、第2の撮像部55及び乾燥部57を備える。搬送部51は、搬送ベルト51a、駆動プーリ51b、複数の従動プーリ51c、モータ51d、位置検出器51e及び吸引チャンバ51fを有する。この搬送部51は、搬送ベルト51a上の錠剤Tを搬送方向A2(反時計回り方向)に搬送する。また、形状検出部56は、スリット光源56a及びカメラ56bを有する。インクジェットヘッド54は印刷部の一例である。なお、第2の印刷装置50を構成する各要素は、第1の印刷装置20を構成する各要素と基本的に同じ構造であるため、その説明を省略する。
回収装置30は、乾燥部57が設けられた位置よりも搬送方向A2の下流側に位置付けられ、搬送部51の下方に設けられている。この回収装置30は、再利用品回収部31、不良品回収部32及び良品回収部33を有する。回収装置30は、再利用品回収部31により再利用品の錠剤Tを回収し、不良品回収部32により不良品の錠剤Tを回収し、良品回収部33により良品の錠剤Tを回収する。例えば、再利用品は再利用可能な錠剤であり、無損傷及び異物未付着の非印刷錠である。また、不良品は異物付着の非印刷錠や無損傷及び異物未付着の印刷不合格錠(印刷済錠)などであり、良品は無損傷及び異物未付着の印刷合格錠(印刷済錠)である。なお、再利用品回収部31、不良品回収部32及び良品回収部33における搬送方向A2への並び順は、図1に示す並び順に限定されるものではなく、適宜変更されてもよい。回収装置30は制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。
再利用品回収部31は、噴射ノズル31a及び回収ボックス31bを有する。また、不良品回収部32は、噴射ノズル32a及び回収ボックス32bを有する。良品回収部33は、噴射ノズル33a及び回収ボックス33bを有する。これらの噴射ノズル31a、32a、33aは基本的に同じ構造を有し、各回収ボックス31b、32b、33bも基本的に同じ構造を有する。このため、代表として噴射ノズル31a及び回収ボックス31bについて説明する。
噴射ノズル31a及び回収ボックス31bは、搬送ベルト51aの各吸引孔51gが並ぶ搬送路を挟んで互いに対向する位置に設けられている。噴射ノズル31aは、吸引チャンバ51f内に配置されており、例えば、搬送ベルト51aに向けて気体(例えばエア)を噴射し、搬送ベルト51aから錠剤Tを落下させる。このとき、噴射ノズル31aから噴射された気体は、搬送ベルト51aの吸引孔51gを通過して錠剤Tに当たる。噴射ノズル31aは制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。回収ボックス31bは、噴射ノズル31aの直下であって搬送部51の下方に設けられている。この回収ボックス31bは、噴射ノズル31aから噴射された気体により搬送ベルト51aから落下した錠剤Tを受け取って収容する。
ここで、再利用品回収部31及び不良品回収部32を通過した錠剤Tは、搬送ベルト51aの移動に伴って搬送され、搬送ベルト51aにおける各従動プーリ51c側の端部付近の位置に到達する。この位置で吸引作用が錠剤Tに働かなくなるが、噴射ノズル33aによって錠剤Tの上方から錠剤Tに気体が吹き付けられ、錠剤Tは搬送ベルト51aから落下する。したがって、噴射ノズル33aを設けることで、搬送ベルト51aから錠剤Tを確実に落下させることができる。回収ボックス33bは、噴射ノズル33aから噴射された気体により搬送ベルト51aから落下した錠剤Tを受け取って収容する。
制御装置40は、各種情報及び各種プログラムに基づいて錠剤印刷装置1の各部、例えば、供給装置10や第1の印刷装置20、第2の印刷装置50、回収装置30などを制御する。また、制御装置40は、搬送部21の位置検出器21eや検出部22、搬送部51の位置検出器51eや検出部52からそれぞれ送信される検出データ(例えば検出信号)などを受信し、また、第1の撮像部23や第2の撮像部25、形状検出部26、第1の撮像部53、第2の撮像部55、形状検出部56からそれぞれ送信される画像データなどを受信する。制御装置40は、例えば、集積回路などの電子回路又はコンピュータなどにより実現される。
(制御装置の構成例)
次に、制御装置40の構成例について図3を参照して説明する。
図3に示すように、制御装置40は、画像処理部41と、記憶部42と、制御部43と、形状検査部44とを有する。形状検査部44は、形状検出部26及び形状検出部56のそれぞれから所定間隔ごとのラインデータを受信する。なお、形状検査部44、形状検出部26及び形状検出部56は、錠剤検査装置として機能する。
制御装置40には、入力装置40a、出力装置40b及びストレージ40cが接続されている。入力装置40aは、例えば、スイッチやタッチパネル、キーボード、マウスなどにより実現される。また、出力装置40bは、例えば、ディスプレイやランプ、メータなどにより実現される。ストレージ40cは、例えば、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスクなどの記憶装置によって実現される。このストレージ40cは、外部ストレージとして機能する。
画像処理部41は、第1の撮像部23により撮像された第1の画像及び第2の撮像部25によって撮像された第2の画像を取り込み、公知の画像処理技術を用いて画像を処理する。例えば、画像処理部41は、第1の撮像部23から得られた第1の画像を処理し、錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置を取得する。また、画像処理部41は、第2の撮像部25から得られた第2の画像を処理し、錠剤Tに印刷された印刷パターン(例えば、文字やマーク)の印刷位置や形状、サイズを取得する。画像処理部41は、取得した各錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置情報、さらに、各錠剤T上の印刷パターンの印刷位置情報、形状情報及びサイズ情報を制御部43に送信する。
記憶部42は、処理情報や各種プログラムなどを記憶する。例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスクなどの記憶装置によって実現される。記憶部42には、印刷に関する印刷データ、搬送速度データなどが記憶される。印刷データは、文字やマークなどの印刷パターンの情報を含む。
制御部43は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMCU(Micro Control Unit)、MPU(Micro Processing Unit)などのコンピュータであり、各部を制御する。この制御部43は、例えば、ハードウェア及びソフトウェアの一方又は両方により実現されてもよい。例えば、制御部43は、記憶部42に記憶された各種情報や各種プログラムに基づいて、供給装置10や第1の印刷装置20、第2の印刷装置50、回収装置30、画像処理部41、記憶部42などを制御する。また、制御部43は、搬送部21の位置検出器21eや検出部22、搬送部51の位置検出器51eや検出部52からそれぞれ送信される検出信号などを受信する。
形状検査部44は、位置取得部44a、記憶管理部44b、データ生成部44c、複数の判定部44d及び結果管理部44eを有する。この形状検査部44は、例えば、ハードウェア及びソフトウェアの一方又は両方により実現されてもよい。
位置取得部44aは、第1の印刷装置20において、検出部22による情報から、搬送部21により搬送される錠剤Tごとに搬送ベルト21a上の錠剤Tの搬送方向A1の位置データを取得する。この位置取得部44aは、位置検出器21eからの情報(例えば、エンコーダ信号)に基づいて、検出部22により検出された錠剤Tの搬送ベルト21a上の搬送方向A1の位置を追跡し、搬送ベルト21a上の錠剤Tの搬送方向A1の位置データを得る。また、位置取得部44aは、第2の印刷装置50において、検出部52による情報から、搬送部51により搬送される錠剤Tごとに搬送ベルト51a上の錠剤Tの搬送方向A2の位置データを取得する。この位置取得部44aは、位置検出器51eからの情報に基づいて、検出部52により検出された錠剤Tの搬送ベルト21a上の搬送方向A2の位置を追跡し、搬送ベルト51a上の錠剤Tの搬送方向A2の位置データを得る。位置取得部44aは、取得した錠剤Tごとの位置データを記憶部42に送信して保存する。なお、位置取得部44aは、検出部22又は検出部52により検出された錠剤Tに対し、シーケンシャルID(identification/identifier)などの識別データを付す。これにより、錠剤Tごとの識別データに基づいて錠剤Tごとの位置データを管理することが可能になる。
記憶管理部44bは、第1の印刷装置20において、形状検出部26から送信された所定間隔ごとのラインデータを搬送ベルト21a上の搬送方向A1の位置(例えば、ラインデータの取得位置)に関連付けて順次記憶する。また、記憶管理部44bは、第2の印刷装置50において、形状検出部56から送信された所定間隔ごとのラインデータを搬送ベルト51a上の搬送方向A2の位置(例えば、ラインデータの取得位置)に関連付けて順次記憶する。つまり、記憶管理部44bは、搬送ベルト51a上の搬送方向A1(A2)の位置に関連付けられた所定間隔ごとのラインデータを複数記憶する。記憶管理部44bは所定間隔ごとにラインデータを記憶し、例えば搬送ベルト21a一周分にあたる複数のラインデータを記憶する。例えば、記憶管理部44bは、バッファ領域を有しており、印刷運転中、そのバッファ領域に所定間隔ごとのラインデータを順次記憶し続ける。なお、記憶管理部44bのバッファ領域は、記憶部42の内に設けられてもよい。記憶管理部44bは、例えば、一定期間のプロファイルデータ(例えば、所定間隔ごとのラインデータ)を保持するメモリバッファ機構を有する。メモリバッファ機構のプロファイル位置は、位置検出器21e又は位置検出器51eからの信号(例えば、エンコーダ信号)と同期する。これにより、所定間隔ごとのラインデータを搬送ベルト21a上の搬送方向A1の位置又は搬送ベルト51a上の搬送方向A2の位置に関連付けることが可能である。
データ生成部44cは、位置取得部44aにより取得された錠剤Tごとの位置データ(例えば、錠剤Tの搬送方向A1の位置データ又は錠剤Tの搬送方向A2の位置データ)に基づいて、記憶管理部44bにより複数記憶された所定間隔ごとのラインデータから錠剤Tごとに所定範囲のラインデータを切り出す。例えば、データ生成部44cは、搬送ベルト21a一周分にあたる複数のラインデータから、所定範囲に含まれる複数のラインデータ(所定範囲のラインデータ)を錠剤Tごとに切り出す。次いで、データ生成部44cは、切り出した錠剤Tごとの所定範囲のラインデータに基づいて、錠剤Tごとに錠剤Tの三次元形状データを生成する。データ生成部44cは、各判定部44dに対して錠剤Tごとの三次元形状データを送信する。また、データ生成部44cは、錠剤Tごとの三次元形状データを記憶部42に送信して保存する。なお、錠剤Tごとの識別データに基づいて錠剤Tごとの三次元形状データを管理することが可能である。
図4に示すように、所定範囲L1は、水平面などの平面内で錠剤Tの最長の長さ以上であって所定のマージン(例えば、最長の長さ±1mm)を有する範囲に設定されている。なお、図4の例では、錠剤Tは平面視で三角形の形状である。錠剤Tの位置データ(例えば、錠剤Tの中心の位置データ)から搬送ベルト21a上の錠剤Tの搬送方向A1の位置が判明しているため、例えば、その位置を中央とする所定範囲L1分のラインデータが記憶管理部44bからデータ生成部44cによって読み出される。この所定範囲L1のラインデータは、錠剤Tごとに読み出される。つまり、データ生成部44cは、前述の記憶管理部44bに記憶された搬送ベルト21a一周分に当たる複数のラインデータ(所定間隔ごとのラインデータ)から、錠剤Tの1錠分に対応する所定範囲L1に含まれる複数のラインデータを読み出す。これにより、1つの錠剤T分のラインデータを錠剤Tごとに求めることができる。
図4の例では、「錠剤(1)」に対応する所定範囲L1は、「(1)開始位置」から「(1)終了位置」までの範囲である。「錠剤(2)」に対応する所定範囲L1は、「(2)開始位置」から「(2)終了位置」までの範囲である。「錠剤(3)」に対応する所定範囲L1は、「(3)開始位置」から「(3)終了位置」までの範囲である。開始位置はラインデータの読み出し開始位置(切り出し開始位置)であり、終了位置はラインデータの読み出し終了位置(切り出し終了位置)である。なお、錠剤Tは搬送ベルト21a上に所定間隔ではなくランダムな間隔で並ぶため、図4の「錠剤(2)」と「錠剤(3)」のように、「錠剤(2)」に対応する「所定範囲L1」と「錠剤(3)」に対応する「所定範囲L1」が重なることがある。
各判定部44dは、データ生成部44cにより生成された錠剤Tごとの三次元形状データに基づいて、錠剤Tごとに錠剤Tの形状検査を行う。例えば、各判定部44dは、データ生成部44cにより生成された三次元形状データに所定の三次元形状データが存在するか否かを判定する処理を実行し、錠剤Tの三次元形状の合否を判断する。例えば、データ生成部44cにより生成された三次元形状データに所定の三次元形状データが存在した場合には、錠剤Tに異常(例えば、欠けなどの損傷や異物付着)がなく、検査結果は合格となる。一方、データ生成部44cにより生成された三次元形状データに所定の三次元形状データが存在しない場合には、錠剤Tに異常があり、検査結果は不合格となる。各判定部44dは、その合否を示す錠剤Tごとの形状検査の結果データを結果管理部44eに送信する。なお、錠剤Tごとの識別データに基づいて錠剤Tごとの形状検査の結果データを管理することが可能である。
結果管理部44eは、各判定部44dから送信される錠剤Tごとの形状検査の結果データを錠剤Tの識別データ(例えば、シーケンシャルID)に基づいて並び替え、錠剤Tごとの形状検査の結果データを記憶部42に保存して管理する。なお、制御部43は、記憶部42に記憶された錠剤Tの三次元形状データや錠剤Tの形状検査の結果データを出力装置40bに送信し、出力装置40bのディスプレイにより表示してもよい。
図3の例では、判定部44dは二つであるが、これに限定されるものではなく、二つ以上であればよい。データ生成部44cは、各判定部44dに対し、錠剤Tごとの三次元形状データを所定順序で送信する。判定部44dが二つである場合には、二つの判定部44dに対し、錠剤Tごとの三次元形状データを交互に送信することになる。所定順序は、あらかじめ設定されているが、例えば、入力装置40aに対するユーザの入力操作に応じて変更されてもよい。また、所定順序は、例えば、各判定部44dの個々の処理能力に基づく優先度(例えば、処理能力が高いほど、優先度が高い)に応じて設定されてもよい。
ここで、上記の制御部43は、第1の印刷装置20において、検出部22から送信された検出情報、すなわち搬送ベルト21a上の錠剤Tが検出されたタイミングに基づき、搬送ベルト21aにおいて錠剤Tの搬送方向A1の位置を取得し、この錠剤Tの搬送方向A1の位置を示す位置情報に基づき、第1の撮像部23の第1の撮像タイミング、インクジェットヘッド24の印刷開始タイミング、第2の撮像部25の第2の撮像タイミングを設定し、それらのタイミングを示すタイミング情報を生成して記憶部42に保存する。印刷開始タイミングとは、インクジェットヘッド24の直下の印刷位置に到達した錠剤Tに対して印刷を開始するタイミングである。制御部43は、位置検出器21eから送信された検出情報に基づき、搬送ベルト21aの移動量(回転量)や速度などの情報を取得することが可能である。なお、制御部43は、第1の印刷装置20において、例えば印刷運転中、常に形状検出部26のカメラ26bによる撮像を行う。カメラ26bは、所定間隔ごとに撮像を繰り返し、所定間隔ごとのラインデータを取得する。このような処理は第2の印刷装置50でも同様である。
なお、印刷運転中とは、錠剤Tがホッパ11から整列フィーダ12に順次供給され始めたときから、検査が終了したと制御部43が判断するまでの間の期間である。つまり、ステップS1から後述のステップS12のYesとなるまでの間の期間である。
また、制御部43は、第1の印刷装置20において、判定部44dによる錠剤Tの形状検査の結果データに基づいて、その結果データが得られた錠剤Tに対する印刷可否を印刷可否情報として設定する。そして、制御部43は、印刷可に設定された錠剤Tに対して印刷条件を印刷条件情報として設定する。このとき、制御部43は、画像処理部41から送信された錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置情報に基づいて、その位置情報が得られた錠剤Tに対して印刷条件を設定する。例えば、制御部43は、錠剤TのY方向の位置情報や印刷データに基づいて、インクジェットヘッド24において対象の錠剤Tの印刷に使用するノズル24aの範囲、すなわち使用ノズル範囲を決定し、その使用ノズル範囲や印刷開始タイミングなどを含む印刷条件を設定する。なお、錠剤Tが方向性を有する形状である場合、制御部43は、錠剤Tのθ方向の位置情報に基づいて、錠剤Tのθ方向の位置に対応させて印刷条件を設定する。一例として、制御部43は、印刷パターンの向きを0度から179度の範囲で1度ずつ回転させた180通りの印刷パターンを記憶部42に登録しておき、それらの印刷パターンの中から、錠剤Tのθ方向の位置に適合する角度の印刷パターンを選択して印刷条件を設定する。このような処理は第2の印刷装置50でも同様である。
また、制御部43は、第1の印刷装置20において、画像処理部41から送信された、錠剤Tに印刷された印刷パターンの印刷位置情報、形状情報及びサイズ情報(これらの情報は第2の画像に基づく情報である)に基づいて、印刷パターンが所定形状及び所定サイズで錠剤Tの所定位置に印刷されたか否か、すなわち印刷パターンが錠剤Tに正常に印刷されたか否かを判断し、錠剤Tの印刷良否情報を設定する(印刷状態検査)。例えば、制御部43は、印刷パターンの形状及びサイズ判断において、検査用の印刷パターンを記憶部42に登録しておき、その検査用の印刷パターンと実際の印刷後の錠剤T上の印刷パターン(錠剤Tに印刷された印刷パターン)とを比較する。このような処理は第2の印刷装置50でも同様である。
なお、制御部43は、適宜各種情報(例えば、錠剤Tの位置情報、タイミング情報、印刷可否情報、印刷条件情報、印刷良否情報など)を記憶部42に保存するが、対象の錠剤Tが回収装置30により回収されると、例えば、搬送部51における搬送方向A2の下流側の端部から落下して所定時間(例えば数秒)が経過した時点で、記憶部42から各種情報を削除する。ただし、それらの情報が後工程などで必要となる場合には、錠剤Tごとの各種情報を消去せずに残しておいたり、装置外の保存用メディア(外部ストレージ)に保存しておいたりすることも可能である。錠剤Tごとの各種情報を保存しておく場合には、この情報と製造日時やロット番号などと紐づけて保存しておき、印刷後の錠剤Tについて出荷後に不良品が発生した場合などに遡って原因を追及することができるようにしてもよい。
(印刷工程)
次に、前述の錠剤印刷装置1が行う印刷工程について図5を参照して説明する。この印刷工程は検査工程も含む。なお、印刷や検査に要するデータなどの各種情報は、記憶部42に予め記憶されている。
図5に示すように、ステップS1において、供給装置10のホッパ11に印刷対象の錠剤Tが多数投入されると、錠剤Tはホッパ11から整列フィーダ12に順次供給され始め、整列フィーダ12により一列に並べられて移動する。この一列で移動する錠剤Tは受渡フィーダ13により第1の印刷装置20の搬送ベルト21aに順次供給される。搬送ベルト21aは、モータ21dによる駆動プーリ21b及び各従動プーリ21cの回転によって搬送方向A1に回転している。このため、搬送ベルト21a上に供給された錠剤Tは搬送ベルト21a上で一列に並んで所定の搬送速度で搬送されていく。
ステップS2において、搬送ベルト21a上の錠剤Tは、検出部22によって検出される。詳しくは、搬送ベルト21a上の錠剤Tが、検出部22の直下の検出位置(例えば、レーザ光の照射位置)に到達すると検出部22によって検出され、その錠剤Tが検出されたタイミングに基づき、搬送ベルト21aにおいて錠剤Tの搬送方向A1の位置が位置取得部44aによって認識される。そして、その錠剤Tの搬送方向A1の位置を示す位置データが位置取得部44aにより生成され、記憶部42に保存される。
ステップS3において、搬送ベルト21a上の錠剤Tが第1の撮像部23によって撮像される。詳しくは、搬送ベルト21a上の錠剤Tが、第1の撮像部23の直下の撮像位置に到達した第1の撮像タイミングで第1の撮像部23によって撮像され、その第1の撮像部23による撮像により得られた第1の画像が制御装置40に送信される。この第1の画像に基づいて、錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置データが画像処理部41により生成され、記憶部42に保存される。
ステップS4において、搬送ベルト21a上の錠剤Tが形状検出部26のカメラ26bによって撮像される。詳しくは、錠剤印刷装置1の印刷運転中、搬送ベルト21aの上面が所定間隔でカメラ26bによって常に撮像される。カメラ26bによる撮像によって得られた画像データ、すなわちラインデータは制御装置40に送信され、制御装置40の記憶管理部44bにより搬送ベルト21a上の搬送方向A1の位置に関連付けられて記憶される。位置取得部44aにより得られた錠剤Tの搬送方向A1の位置データに基づいて、記憶管理部44bにより複数記憶された所定間隔ごとのラインデータから所定範囲のラインデータがデータ生成部44cにより切り出され、切り出された所定範囲のラインデータに基づいて、錠剤Tの三次元形状データが生成される。
ステップS5において、データ生成部44cにより生成された錠剤Tの三次元形状データに基づいて、搬送ベルト21a上の錠剤Tに異常(例えば、欠けなどの損傷や異物付着)があるか否かを検査する錠剤形状検査が判定部44dにより実行される。例えば、判定部44dは、データ生成部44cにより生成された三次元形状データに所定の三次元形状データが存在した場合、錠剤Tに異常がないと判定し、検査結果を合格にする。一方、判定部44dは、データ生成部44cにより生成された三次元形状データに所定の三次元形状データが存在しない場合には、錠剤Tに異常があると判定し、検査結果を不合格とする。なお、所定の三次元形状データは、あらかじめ設定されており、記憶部42などに記憶されているが、例えば、印刷対象である錠剤Tの種類が変更されて錠剤Tの形状が変わった場合には、入力装置40aに対するユーザの入力操作に応じて変更される。
ステップS6において、錠剤形状検査の結果データに基づき、対象の錠剤Tへの印刷可否が制御部43により判断される。対象の錠剤Tへの印刷が可であると判断されると(ステップS6のYes)、処理はステップS7に進む。なお、錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置情報や印刷パターンなどの情報に基づき、印刷可に設定された錠剤T(印刷可の錠剤T)に対する使用ノズル範囲や印刷開始タイミングなどを含む印刷条件が記憶部42に設定される。前述の印刷開始タイミング(錠剤Tに対して印刷を開始するタイミング)に基づいて、錠剤Tに対する吐出タイミング(錠剤Tに対してインクを吐出するタイミング)が決定される。一方、対象の錠剤Tへの印刷が否であると判断されると(ステップS6のNo)、対象の錠剤Tに対する印刷や検査に関する動作が制限され、処理はステップS11に進む。なお、錠剤Tの印刷可否情報は、適宜記憶部42に保存される。また、印刷や検査に関する動作の「制限」とは、少なくとも対象となる錠剤Tに対する印刷及び印刷状態検査に関する処理を行わないことを意味する。
ステップS7において、上記の印刷条件に基づいて印刷がインクジェットヘッド24により実行される。つまり、インクジェットヘッド24が、搬送ベルト21a上の印刷可の錠剤Tに所定の印刷パターンを印刷するように制御部43により制御される。詳しくは、第1の撮像部23の下方を通過した搬送ベルト21a上の印刷可の錠剤Tは、インクジェットヘッド24の直下の印刷位置に到達した印刷開始タイミングで、前述の印刷条件に基づいてインクジェットヘッド24によって印刷される。インクジェットヘッド24では、各ノズル24aからインクが適宜吐出され、錠剤Tの上面である被印刷面に印刷パターン(例えば、番号、アルファベット、片仮名、記号、図形)が印刷される。
ステップS8において、搬送ベルト21a上の印刷済の錠剤Tが第2の撮像部25によって撮像される。詳しくは、搬送ベルト21a上の印刷済の錠剤Tは、第2の撮像部25の直下の撮像位置に到達した第2の撮像タイミングで第2の撮像部25によって撮像され、その第2の撮像部25による撮像により得られた第2の画像が制御装置40に送信される。この第2の画像は、制御装置40の画像処理部41によって処理される。詳しくは、錠剤Tに印刷された印刷済の印刷パターンに関する情報、すなわち印刷済の印刷パターンの印刷位置や形状、サイズが画像処理部41により取得される。第2の撮像部25から送信された第2の画像が画像処理部41により処理され、錠剤Tにおいて印刷済の印刷パターンの印刷位置や形状、サイズを示す検査情報が生成され、記憶部42に保存される。
ステップS9において、上記の検査情報に基づいて印刷状態検査が制御部43により実行される。詳しくは、記憶部42に保存された前述の印刷位置や形状、サイズに係る検査情報に基づき、印刷パターンが錠剤Tに正常に印刷されたか否かが制御部43により判断され、錠剤Tの印刷良否を示す印刷良否情報が生成されて記憶部42に保存される。例えば、印刷状態検査では、印刷に使用した印刷パターンが検査用の印刷パターンとして記憶部42に保存され、検査用の印刷パターンの所定の印刷位置や形状、サイズに関する良品情報と、記憶部42に保存された実際の印刷済の印刷パターンの印刷位置や形状、サイズに関する検査情報とが比較され、印刷パターンが錠剤Tに正常に印刷されたか否か(合格又は不合格)が判断される。
ステップS10において、第2の印刷装置50で上記ステップS2~S9の処理が繰り返される。上記第1の印刷装置20で印刷された錠剤Tは、反転されて下側の第2の印刷装置50に受け渡され、第2の印刷装置50において上記ステップS2~S9の処理が実行される。これにより、錠剤Tに対する両面印刷が実現される。なお、搬送ベルト51aは、モータ51dによる駆動プーリ51b及び各従動プーリ51cの回転によって搬送方向A2に回転している。このため、搬送ベルト51a上に受け渡された錠剤Tは搬送ベルト51a上で一列に並んで所定の搬送速度で搬送されていく。
ステップS11において、第2の印刷装置50の搬送ベルト51a上の錠剤Tが回収装置30により回収される。詳しくは、再利用品の錠剤Tが搬送ベルト51aの移動に伴って再利用品回収部31に到達すると、噴射ノズル31aによって錠剤Tの上方から錠剤Tに気体が吹き付けられ、錠剤Tは搬送ベルト51aから落下して回収ボックス31bにより収容される。同様に、不良品の錠剤Tが搬送ベルト21aの移動に伴って不良品回収部32に到達すると、噴射ノズル32aによって錠剤Tの上方から錠剤Tに気体が吹き付けられ、錠剤Tは搬送ベルト51aから落下して回収ボックス32bにより収容される。また、良品の錠剤Tが搬送ベルト51aにおける各従動プーリ51c側の端部付近の位置に到達すると、錠剤Tに吸引作用が働かなくなり、噴射ノズル33aによって錠剤Tの上方から錠剤Tに気体が吹き付けられ、錠剤Tは搬送ベルト51aから落下して回収ボックス33bにより収容される。このような気体の吹き付けに関する制御は、例えば、錠剤Tの位置情報、錠剤形状検査の結果情報、印刷可否情報、印刷良否情報(印刷状態検査の結果情報)などの各種の情報に基づいて制御部43により実行される。
ステップS12において、印刷が終了したか否かが制御部43により判断される。例えば、印刷済の錠剤Tの数がカウントされ、その数が所定の生産数に達すると、印刷が終了したと判断される。印刷が終了したと判断されると(ステップS12のYes)、処理が終了する。一方、印刷が終了していないと判断されると(ステップS12のNo)、処理はステップS1に戻る。なお、印刷終了の判断に関して、入力装置40aに対するユーザの入力操作に応じて、例えば、ユーザが印刷終了ボタンを押下することに応じて、印刷が終了したと判断されてもよい。
このような印刷工程によれば、位置取得部44aにより取得された錠剤Tごとの位置データに基づいて、記憶管理部44bにより複数記憶された所定間隔ごとのラインデータ(複数のラインデータ)から、錠剤Tごとに所定範囲のラインデータが切り出され、切り出された錠剤Tごとの所定範囲のラインデータに基づいて、錠剤Tごとに錠剤Tの三次元形状データが生成される。これにより、錠剤Tが存在する位置に対応する所定範囲のラインデータが切り出されるので、所定間隔で取得されるラインデータの中に、錠剤が有ることを示すデータがあるか否かを常に確認する必要が無くなる。これにより、処理負荷を軽減することができる。
ここで、印刷運転中、常に、形状検出部26(56)による撮像を行わずに、位置取得部44aにより取得された錠剤Tの位置データに基づいて形状検出部26(56)により2つの錠剤Tの一部が並んだ状態(図4中の錠剤(2)及び錠剤(3)参照)を撮像する場合を検討する。この場合、位置データに基づいて都度形状検出部26(56)による撮像を行うことになり、所定間隔ごとのラインデータが記憶管理部44bに記憶されない。そのため、錠剤Tの位置データに基づいて所定範囲のラインデータを得るために、形状検出部26(56)によって錠剤Tごとに撮像する必要がある。
例えば、図4中の錠剤(2)を検出し、位置取得部44aによって作成された位置データに基づいて所定範囲のラインデータを取得するよう形状検出部26により撮像が行われる。次に、図4中の錠剤(3)が検出され、位置取得部44aによって作成された位置データに基づいて所定範囲のラインデータを取得するよう形状検出部26に信号が送られる。しかし、形状検出部26は、錠剤(2)の所定範囲を撮像した後、錠剤(3)の所定範囲を撮像するため、錠剤(3)の撮像データに欠けが生じるおそれがある。具体的には、形状検出部26が図4中の「(2)開始位置」から「(2)終了位置」までの範囲を撮像した後、錠剤(3)の撮像を開始することになる。この場合、錠剤(3)の撮像において、図4中の「(3)開始位置」から「(2)終了位置」までの間のラインデータが得られないおそれがある。
実施形態に係る錠剤印刷装置1では、錠剤印刷装置1が印刷運転中、形状検出部26が常に撮像を行うことによって得られた、複数の、所定間隔ごとのラインデータの中から、錠剤Tの位置データに基づいて所定範囲のラインデータが切り出されるので、形状検出部26(56)により検出される搬送ベルト21a(51a)の検出ライン上で、2つの錠剤Tの一部が並んでいても(図4中の錠剤(2)及び錠剤(3)参照)、それぞれの所定範囲のラインデータを取得することができる。つまり、検出ライン上で、2つの錠剤Tの一部が並んでいても、それぞれの錠剤Tにおいて欠けの無い三次元形状データを得ることができる。なお、錠剤Tの位置データに基づいて、複数の、所定間隔ごとのラインデータの中から所定範囲のラインデータを切り出すことは、複数の錠剤Tの一部がY方向(搬送方向A1と直交する方向)において重複して並んで搬送される可能性が高まる、平面視で楕円形や長円形、三角形などの形状の錠剤Tを処理する際に好適である。
以上説明したように、第1の実施形態によれば、錠剤印刷装置1は、搬送部21(51)により搬送される錠剤Tごとに搬送部21(51)上の錠剤Tの搬送方向A1の位置データを取得する位置取得部44aと、搬送部21(51)に対してスリット光を照射しつつ所定間隔で撮像を繰り返し、所定間隔ごとに撮像データであるラインデータを求める形状検出部26(56)と、形状検出部26(56)により求められた所定間隔ごとのラインデータを搬送部21(51)上の搬送方向A1の位置に関連付けて順次記憶する記憶管理部44bと、位置取得部44aにより取得された錠剤Tごとの位置データに基づいて、記憶管理部44bにより記憶された複数のラインデータから錠剤Tごとに所定範囲のラインデータを切り出し、切り出した錠剤Tごとの所定範囲のラインデータに基づいて、錠剤Tごとに錠剤Tの三次元形状データを生成するデータ生成部44cと、データ生成部44cにより生成された錠剤Tごとの三次元形状データに基づいて、錠剤Tごとに錠剤Tの形状検査を行う判定部44dとを備える。これにより、複数のラインデータから錠剤Tごとに所定範囲のラインデータが切り出され、その切り出された錠剤Tごとの所定範囲のラインデータ(すなわち、錠剤Tごとの三次元形状データ)に基づいて錠剤Tごとの形状検査が実行される。したがって、所定間隔ごとのラインデータの全データに対し、高い部分を示すデータがあるか否かを確認する処理(例えば、錠剤の有無又は形状を確認する処理)が常に実行される場合に比べ、高速なデータ処理を実現することができる。その結果、迅速な検査を行うことが可能になる。
<第2の実施形態>
第2の実施形態について図6を参照して説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点について説明する。
図6は、判定部44dが二つの例であり、一つを判定部A、もう一つを判定部Bとして示したものである。図6に示すように、第2の実施形態では、制御装置40のデータ生成部44cは、確認信号を各判定部44dに対し、すなわち図6の例では、判定部A及び判定部Bに対して送信する。確認信号は、判定部Aや判定部Bのステータス(ステータスデータ)の送信を要求する要求信号である。
図6の例では、データ生成部44cは、一定間隔で判定部A及び判定部Bに対して交互に、ステータスの送信を要求する確認信号を送信する。確認信号を受けた判定部A又は判定部Bは、自身のステータス(処理の状態)に応じて、レディ状態(R)又はビジー状態(B)を通知する信号をデータ生成部44cに送信する。なお、レディ状態とは、検査処理をしておらず、待機している状態のことである。ビジー状態とは、検査処理をしているため、新たな三次元形状データを受け入れられない状態のことである。
データ生成部44cは、レディ状態を通知する信号を受信した場合、その信号を送信した判定部A又は判定部Bに三次元形状データを送信し、ビジー状態を通知する信号を受信した場合、その信号を送信した判定部A又は判定部Bに三次元形状データを送信しない。判定部A及び判定部Bは、検査処理が終わり次第、形状検査の結果データに錠剤Tの識別データ(例えば、シーケンシャルID)を付して結果管理部44eに送信する。結果管理部44eは、錠剤Tの識別データを参照し、形状検査の結果データを並び替えて管理する。
ここで、錠剤Tの形状/姿勢や、不良の有無及び不良の量によって、各判定部44d(図6の例では、判定部A及び判定部B)では、検査処理の開始から検査結果の送信完了までにかかる時間が異なることがある。第2の実施形態によれば、空いている判定部44dを使用することが可能になるので、処理を効率的に行うことができる。
以上説明したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同じ効果を得ることができる。また、データ生成部44cは、各判定部44dに対し、各判定部44dのステータスの送信を要求する確認信号を送信する。これにより、データ生成部44cは、各判定部44dのステータスを知ることが可能になるので、例えば、ビジー状態である判定部44dに検査処理を指示して(例えば、三次元形状データを送信して)処理が停滞することなどを避けることができる。つまり、データ生成部44cは適切に各判定部44dに対して検査処理(例えば、三次元形状データ)を振り分けることが可能であり、高速なデータ処理を実現することができる。
なお、データ生成部44cは、各判定部44dに対して一定間隔で確認信号を送信するが、これに限られるものではなく、例えば、三次元形状データの送信タイミングから1錠の錠剤Tに要する検査時間が経過したら確認信号を送信してもよく、あるいは、確認信号を一度送信してから所定時間が経過したら確認信号を送信してもよい。また、各判定部44dが、データ生成部44cから三次元形状データを受信したことをトリガとして、ビジー状態となったことを通知する信号をそれぞれ送信するようにしてもよい。また、確認信号が不要とされ、判定部44dが、錠剤Tの形状検査の結果データを送る際に、レディ状態となったことを通知する信号をデータ生成部44cに送信するようにしてもよい。
<第3の実施形態>
第3の実施形態について図7を参照して説明する。第3の実施形態では、第1の実施形態との相違点について説明する。
第3の実施形態では、記憶管理部44bは、錠剤印刷装置1のメンテナンス中(例えば、搬送及び印刷の停止中)に、バッファ領域又は記憶部42に記憶されたデータ(例えば、所定間隔ごとのラインデータ、切り出した所定範囲のラインデータ、錠剤Tの三次元形状データ(画像データ)、錠剤Tの形状検査の結果データ又は各種の画像データなどの各種情報)を他のストレージ40cに移動させる。このデータの移動とは、元の場所内のデータをその元の場所から削除しつつ他の場所に移動させて保存することである。また、錠剤印刷装置1のメンテナンスとは、供給装置10や第1の印刷装置20、第2の印刷装置50、回収装置30、制御装置40などのいずれか又は全ての装置に対するメンテナンスを含む。
例えば、記憶管理部44bは、バッファ領域又は記憶部42に記憶されたデータを製造日時(印刷日時)又はロット番号などと関連付けてストレージ40cに移動させる。これにより、印刷後の錠剤Tについて出荷後に不良品が発生した場合などに遡って原因を追及することができる。なお、製造日時又はロット番号などは、あらかじめ設定されており、記憶部42などに記憶されているが、例えば、入力装置40aに対するユーザの入力操作に応じて変更されてもよい。
図7に示すように、ステップS21において、メンテナンスタイミングが到来したか否かが制御部43により判断される。メンテナンスタイミングが到来したと判断されると(ステップS21のYes)、ステップS22において、メンテナンス指令が制御部43によりメンテナンス対象の各部(例えば、供給装置10や第1の印刷装置20、第2の印刷装置50、回収装置30、制御装置40などのいずれか又は全ての装置)に出される。
次いで、ステップS23において、データ移動指令が制御部43から記憶管理部44bに出される。記憶管理部44bのバッファ領域又は記憶部42に記憶されたデータが記憶管理部44bによってストレージ40cに移動させられる。ステップS24において、データ移動が完了したか否かが制御部43により判断される。データ移動が完了したと判断されると(ステップS24のYes)、ステップS25において、メンテナンスが完了したか否かが制御部43により判断される。メンテナンスが完了したと判断されると(ステップS25のYes)、処理が終了する。メンテナンスの完了は、例えば、入力装置40aに対するユーザの入力操作によって指示される。
以上説明したように、第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同じ効果を得ることができる。また、記憶管理部44bは、錠剤印刷装置1のメンテナンス中に、バッファ領域又は記憶部42に記憶されたデータを他のストレージ40cに移動させる。これにより、ユーザは後でデータを確認することが可能となるので、ユーザの利便性を向上させることができる。例えば、記憶管理部44bは、バッファ領域又は記憶部42に記憶されたデータを製造日時(印刷日時)又はロット番号などと関連付けてストレージ40cに移動させる。このようにして、印刷後の錠剤Tについて出荷後に不良品が発生した場合などに遡って原因を追及することができる。
<他の実施形態>
前述の説明においては、実施形態に係る錠剤印刷装置1(錠剤印刷方法)を用いて錠剤Tに印刷を行うが、これは、実施形態に係る錠剤印刷装置1(錠剤印刷方法)を用いて錠剤Tに印刷を行い、印刷済の錠剤Tを製造すると言い換えることも可能である。すなわち、錠剤印刷装置1を錠剤製造装置に、錠剤印刷方法を錠剤製造方法に言い換えることができる。
また、前述の説明においては、実施形態に係る構成が錠剤印刷装置1に適用されているが、錠剤検査装置に適用されてもよい。また、実施形態に係る構成が錠剤印刷装置1に適用された場合にも、運転モードに検査モードがあり、検査モードが選択されると、インクジェットヘッド24(54)が使用されずに検査だけが実行されてもよい。検査運転中、搬送ベルト21aの上面が所定間隔でカメラ26bによって常に撮像される。また、検査工程は、形状検査だけを行ってもよく、他の装置で錠剤Tになされた印刷の検査を合わせて行ってもよい。他の装置でなされた印刷の検査を行う場合、印刷の検査は第1の撮像部23で行っても、第2の撮像部25で行っても、いずれでもよい。また、形状検査を行った結果、異常があったときには、印刷検査を省略するようにしてもよい。なお、形状検出部26(56)による撮像は、装置運転中、常に行われ、装置運転中とは、前述の説明における印刷運転中のみならず、検査運転中(検査工程のみの実施)も含まれる。
また、前述の説明においては、検出部22(52)による情報から錠剤Tの位置データが位置取得部44aにより生成され、この位置データに基づいて、記憶管理部44bにより複数記憶された所定間隔ごとのラインデータから錠剤Tごとに所定範囲のラインデータを切り出しているが、これに限られるものではない。第1の撮像部23(53)による撮像により得られた第1の画像に基づいて生成された位置データに基づいて、ラインデータを切り出すようにしてもよい。また、第1の画像に基づいて、検出部22(52)により取得され位置取得部44aにより生成された位置データを補正するようにしてもよい。この場合、位置取得部44aにより生成された錠剤Tの搬送方向A1の位置を示す位置データに基づき、第1の撮像部23(53)によって第1の画像が撮像される。第1の画像に基づいて画像処理部41により錠剤TのX方向、Y方向の位置データが生成される。次に、錠剤TのX方向、Y方向の位置データから、錠剤Tの中心(重心を含む)の位置データが求められる。画像処理部41は、錠剤Tの中心の位置データによって錠剤Tの搬送方向A1の位置を示す位置データに補正をかける。画像処理部41は、補正された錠剤Tの搬送方向A1の位置を示す位置データ(補正された位置データ)を位置取得部44aに送信する。補正された位置データに基づいて、記憶管理部44bにより記憶された複数の所定間隔ごとのラインデータから所定範囲のラインデータがデータ生成部44cにより切り出され、切り出された所定範囲のラインデータに基づいて、錠剤Tの三次元形状データが生成される。このようにすることで、錠剤Tの中心の位置をより正確に得ることができ、所定範囲の所定のマージンをより小さくすることができる。
また、前述の説明においては、判定部44dが複数設けられているが、これに限られるものではなく、一つであってもよい。また、判定部44dが複数設けられているが、データ生成部44c及び判定部44dが検査ソフトとされ、その検査ソフトが複数設けられてもよい。
また、前述の説明においては、形状検出部26(56)が、インクジェットヘッド24(54)が設けられた位置よりも搬送方向A1(A2)の上流側に設けられているが、これに限られるものではなく、その位置よりも搬送方向A1(A2)の下流側に設けられてもよい。
また、前述の説明においては、錠剤Tを一列で搬送することを例示したが、これに限るものではなく、その列数は二列以上の複数列であってもよく、特に限定されるものではなく、搬送ベルト21a(51a)の本数も二本以上であってもよく、特に限定されるものではない。また、インクジェットヘッド24(54)の個数も二個以上であってもよく、特に限定されるものではない。
また、前述の説明においては、インクジェットヘッド24(54)として、ノズル24a(54a)が一列に並ぶ印刷ヘッドを例示したが、これに限るものではなく、例えば、ノズル24aが複数列に並ぶ印刷ヘッドを用いるようにしてもよい。また、水平面内において搬送方向A1と直交する方向にインクジェットヘッド24(54)を複数並べて用いるようにしてもよい。
また、前述の説明においては、インクジェットヘッド24(54)をノズル24a(54a)が並ぶ方向が水平面内において搬送方向A1と直交する方向になるように設けることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、ノズル24a(54a)が並ぶ方向が水平面内において搬送方向A1(A2)と斜めに交差する方向になるように設けるようにしてもよい。
また、前述の説明においては、錠剤Tが搬送ベルト21a(51a)上に一定間隔ではなくランダムに供給されるとしたが、これに限られるものではなく、一定間隔で供給されてもよい。また、前述の説明においては、搬送ベルト21a(51a)上に形成された吸引孔21g(51g)によって錠剤Tが吸引保持されるとしたが、これに限るものではなく、ポケットなどに収容保持され搬送されるようにしてもよく、あるいは、搬送ベルト21a(51a)上に自重により保持され搬送されるようにしてもよい。
ここで、前述の錠剤Tとしては、医薬用、飲食用、洗浄用、工業用あるいは芳香用として使用される錠剤を含めることができる。また、錠剤Tとしては、裸錠(素錠)や糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠、多層錠、有核錠などがあり、硬カプセルや軟カプセルなど各種のカプセル錠も錠剤Tに含めることができる。さらに、錠剤Tの形状としては、円盤形やレンズ形、三角形、楕円形など各種の形状がある。また、印刷対象の錠剤Tが医薬用や飲食用である場合には、使用するインクとして可食性インクが好適である。この可食性インクとしては、合成色素インク、天然色素インク、染料インク、顔料インクのいずれを使用しても良い。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。