<実施形態>
実施の一形態について図面を参照して説明する。
(錠剤印刷装置の構成例)
実施形態に係る錠剤印刷装置1の構成例について図1及び図2を参照して説明する。
図1に示すように、実施形態に係る錠剤印刷装置1は、供給装置10と、印刷装置20と、回収装置30と、制御装置40とを備える。
供給装置10は、ホッパ11、整列フィーダ12及び受渡フィーダ13を有する。この供給装置10は、印刷装置20の一端側に位置付けられ、印刷対象物である錠剤Tを印刷装置20に供給することが可能に構成されている。ホッパ11は、多数の錠剤Tを収容し、収容した錠剤Tを整列フィーダ12に順次供給する。整列フィーダ12は、供給された錠剤Tを一列に整列し、受渡フィーダ13に向けて搬送方向A1(時計回り方向)に搬送する。受渡フィーダ13は、整列フィーダ12上に一列に並ぶ各錠剤Tを錠剤Tの上側から順次吸引して保持し、保持した各錠剤Tを印刷装置20まで一列で搬送して印刷装置20に渡す。整列フィーダ12としては、例えばベルト搬送機構や振動フィーダが用いられる。受渡フィーダ13としては、例えばベルト搬送機構が用いられる。この受渡フィーダ13のベルト搬送機構は、搬送方向A2(反時計回り方向)に回転している。供給装置10は制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。
印刷装置20は、搬送部21と、検出部22と、第1の撮像部23と、インクジェットヘッド24と、第2の撮像部25と、移動機構26と、メンテナンス部27と、乾燥部28とを備える。
ここで、図2に示すように、検出部22、第1の撮像部23、インクジェットヘッド24及び第2の撮像部25は、例えば、それぞれ二つずつ設けられているが、その個数は特に限定されるものではく、錠剤Tの搬送路の数に応じて設定される。なお、各検出部22の構成、各第1の撮像部23の構成、各インクジェットヘッド24の構成及び各第2の撮像部25の構成は、それぞれ同じであるため、以下ではそれぞれの一方について説明する。
図1に戻り、搬送部21は、搬送ベルト21a、駆動プーリ21b、複数の従動プーリ21c、モータ21d、位置検出器21e及び吸引チャンバ21fを有する。搬送ベルト21aは、無端状のベルトであり、駆動プーリ21b及び各従動プーリ21cに架け渡されている。駆動プーリ21b及び各従動プーリ21cは装置本体(図示せず)に回転可能に設けられており、駆動プーリ21bはモータ21dに連結されている。モータ21dは制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。位置検出器21eは、エンコーダなどの機器であり、モータ21dに取り付けられている。この位置検出器21eは電気的に制御装置40に接続されており、検出信号を制御装置40に送信する。搬送部21は、モータ21dによる駆動プーリ21bの回転によって各従動プーリ21cと共に搬送ベルト21aを走行させ、搬送ベルト21a上の錠剤Tを搬送方向A1(時計回り方向)に搬送する。
搬送ベルト21aには、図2に示すように、円形状の吸引孔21gが複数形成されている。これらの吸引孔21gは、それぞれ錠剤Tを吸着する貫通孔であり、平行に伸びる二本の搬送路を形成するように搬送方向A1に沿って二列に並べられている。各吸引孔21gは、吸引チャンバ21f(図1参照)に形成された吸引路(図示せず)を介して吸引チャンバ21f内に接続されており、吸引チャンバ21fにより吸引力を得ることが可能になっている。吸引チャンバ21fには、ブロワが吸引管(いずれも図示せず)を介して接続されており、ブロワの作動により吸引チャンバ21f内が減圧される。吸引管は、吸引チャンバ21fの側面(搬送方向A1と平行な面)の略中央に接続されている。また、ブロワは制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。吸引チャンバ21f内が減圧されると、搬送ベルト21aの各吸引孔21g上に置かれた錠剤Tは吸引孔21gにより吸引され、搬送ベルト21a上に保持される。
検出部22は、供給装置10が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、吸引孔21gで形成される搬送路の上方に設けられている。この検出部22は、レーザ光の投受光によって検出部22の直下の検出位置に到達した錠剤T(錠剤Tの到来)、すなわち搬送ベルト21a上の錠剤TのX方向(図2参照)の位置を検出する。また、検出部22は、搬送ベルト21a上の錠剤Tの高さを検出する。検出部22としては、例えば、変位センサが用いられる。また、変位センサとしては、反射型レーザセンサなどの各種のレーザセンサが用いられる。検出部22は制御装置40に電気的に接続されており、制御装置40に検出信号を送信する。
第1の撮像部23は、検出部22が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、吸引孔21gで形成される搬送路の上方に設けられている。この第1の撮像部23は、検出部22により検出された錠剤TのX方向の位置情報に基づき、錠剤Tが第1の撮像部23の直下の撮像位置に到達した第1の撮像タイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む第1の画像を取得し、取得した第1の画像を制御装置40に送信する。第1の画像は、錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向(図2参照)の位置を検出するため、また、錠剤Tの損傷や異物付着(例えば、割れや欠け、汚れなど)の有無を検出するために用いられる。第1の撮像部23としては、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの撮像素子を有する各種のカメラが用いられる。第1の撮像部23は制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられる。
ここで、錠剤TのX方向及びY方向の位置は、例えば、第1の撮像部23の撮像領域の中心(基準位置)に対するXY座標系の位置である。また、θ方向の位置は、例えば、第1の撮像部23の撮像領域のXY平面に沿った水平面内での錠剤Tの回転度合いを示す位置である。このθ方向の位置は、錠剤Tに割線が設けられている場合や錠剤Tが楕円形や長円形、四角形などに成型されている場合など、錠剤Tが方向性を有する形体である場合に検出される。なお、X方向およびY方向は、水平方向における位置である。
第1の撮像部23は、さらにカバー23a(図2参照)を備える。カバー23aは、第1のカバーに相当し、第1の撮像部23の受光部分に異物が付着することを防止するための部材である。カバー23aは、搬送ベルト21aに非接触であり、第1の撮像部23を囲うように設けられている。カバー23aの下端は、後述するインクジェットヘッド24の退避位置H3と同じ高さである(図9参照)。カバー23aの下端は、インクジェットヘッド24の退避位置H3と同じ高さに必ずしもある必要は無く、錠剤Tと接触しない高さであればよい。カバー23aは、例えば、ステンレスなどの金属で形成されている。
インクジェットヘッド24は、第1の撮像部23が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、吸引孔21gで形成される搬送路の上方に設けられている。インクジェットヘッド24は、複数(例えば数百個から数千個)のノズル24a(図2参照)を有し、ノズル24aが一列に並ぶ方向(ノズル列)が水平面内で搬送方向A1と直交(交差の一例)するように設けられている。インクジェットヘッド24は、ノズル24aごとの駆動素子の動作によって各ノズル24aから個別にインクを吐出する。このインクジェットヘッド24としては、圧電素子、発熱素子又は磁歪素子などの駆動素子を有する各種のインクジェット方式の印刷ヘッドが用いられる。インクジェットヘッド24は制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。
第2の撮像部25は、インクジェットヘッド24が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、吸引孔21gで形成される搬送路の上方に設けられている。この第2の撮像部25は、検出部22により検出された錠剤TのX方向の位置情報に基づき、錠剤Tが第2の撮像部25の直下の撮像位置に到達した第2の撮像タイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む第2の画像を取得し、取得した第2の画像を制御装置40に送信する。第2の画像は、錠剤Tに印刷された印刷パターンを検査するために用いられる。第2の撮像部25としては、前述の第1の撮像部23と同様、例えば、CCDやCMOSなどの撮像素子を有する各種のカメラが用いられる。第2の撮像部25は制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。必要に応じて撮像用の照明も設けられる。
第2の撮像部25は、さらにカバー25a(図2参照)を備える。カバー25aは、第2のカバーに相当し、第2の撮像部25の受光部分に異物が付着することを防止するための部材である。カバー25aは、搬送ベルト21aに非接触であり、第2の撮像部25を囲うように設けられている。カバー25aの下端は、後述するインクジェットヘッド24の退避位置H3と同じ高さである(図9参照)。カバー23aの下端は、インクジェットヘッド24の退避位置H3と同じ高さに必ずしもある必要は無く、錠剤Tと接触しない高さであればよい。カバー25aは、例えば、ステンレスなどの金属で形成されている。
移動機構26は、各インクジェットヘッド24を昇降方向(図1中の上下方向)に移動させる。この移動機構26は、図2に示すように、例えば、アーム26a及びアーム移動機構26bを有する。アーム26aは、各インクジェットヘッド24を保持する保持部である。例えば、アーム26aは、搬送ベルト21aの搬送面に各インクジェットヘッド24の吐出面を対向させて保持する。搬送ベルト21aの搬送面は、搬送ベルト21aにおいて錠剤Tが載置される面であって、搬送ベルト21aのインクジェットヘッド24側の面である。インクジェットヘッド24の吐出面は、インクジェットヘッド24においてノズル24aが形成されている面であって、インクジェットヘッド24の搬送ベルト21a側の面である。アーム移動機構26bは、アーム26aを保持して昇降方向に移動させる機構である。このアーム移動機構26bは、吸引チャンバ21fの側面(搬送方向A1と平行な面)に隣接する位置に設けられている。アーム移動機構26bとしては、例えば、リニアガイド機構が用いられる。アーム移動機構26bは制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。このような移動機構26は、アーム移動機構26bによりアーム26a、すなわち各インクジェットヘッド24を昇降させて搬送ベルト21aの搬送面と各インクジェットヘッド24の吐出面との間隔(離間距離)を変えることが可能である。
なお、本実施の形態では、インクジェットヘッド24の最大上昇位置は、後述するメンテナンス位置H2である。しかし、インクジェットヘッド24の最大上昇位置は、これに限定されない。インクジェットヘッド24の最大上昇位置は、メンテナンス位置H2よりも高い位置であってもよい。つまり、最大上昇位置は、例えば、後述の冷却部61によって、インクジェットヘッド24のノズル付近が乾燥しない程度の高さであればよい。ただし、インクジェットヘッド24の最大上昇位置が低いほど、後述するカバー53の天井の高さも低くすることができる。カバー53の天井の高さが低いほど、カバー53によって覆われる空間の体積も小さくなる。したがって、後述する冷却部61の冷却効率を向上させることができる。
メンテナンス部27は、各インクジェットヘッド24に関するメンテナンス動作を行う。メンテナンス作業としては、例えば、ワイピング動作やインク受け動作などがある。メンテナンス部27は、図2に示すように、例えば、ワイピング部27a及び受け皿27bを有する。ワイピング部27aは、メンテナンス部27のY方向(図2参照)の往復移動により各インクジェットヘッド24の吐出面を清掃する清掃部である。受け皿27bは、各インクジェットヘッド24からそれぞれ吐出された液滴を受ける受け部材である。このようなメンテナンス部27は、吸引チャンバ21fの側面(搬送方向A1と平行な面)に隣接する位置に設けられ、搬送ベルト21aの搬送面と各インクジェットヘッド24の吐出面との間に不図示の移動機構(例えば、リニアガイド機構)によって移動可能に構成されている。なお、メンテナンス実行時、搬送ベルト21aの搬送面と各インクジェットヘッド24の吐出面との間隔は、それらの面の間にメンテナンス部27が移動してメンテナンス作業を行うことが可能な距離だけ移動機構26によって広げられる。
乾燥部28は、搬送ベルト21aに対向する位置に配置されており、例えば、搬送部21の下方に設けられている。この乾燥部28は、搬送ベルト21a上の各錠剤Tに塗布されたインクを乾燥させる。乾燥部28としては、エアなどの気体により乾燥を行う送風機、放射熱により乾燥を行うヒータ、あるいは、気体及びヒータを併用して温風や熱風により乾燥を行う送風機などの各種の乾燥機が用いられる。乾燥部28は制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。
回収装置30は、乾燥部28が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、搬送部21の下方に設けられている。この回収装置30は、再利用品回収部31と、不良品回収部32と、良品回収部33とを有する。回収装置30は、再利用品回収部31により再利用品の錠剤Tを回収し、不良品回収部32により不良品の錠剤Tを回収し、良品回収部33により良品の錠剤Tを回収する。例えば、再利用品は再利用可能な錠剤であり、無損傷及び異物未付着の非印刷錠である。また、不良品は異物付着の非印刷錠や無損傷及び異物未付着の印刷不合格錠(印刷済錠)などであり、良品は無損傷及び異物未付着の印刷合格錠(印刷済錠)である。なお、再利用品回収部31、不良品回収部32及び良品回収部33における搬送方向A1への並び順は、図1に示す並び順に限定されるものではなく、適宜変更されてもよい。回収装置30は制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。
再利用品回収部31は、噴射ノズル31aと、回収ボックス31bとを有する。また、不良品回収部32は、噴射ノズル32aと、回収ボックス32bとを有する。良品回収部33は、噴射ノズル33aと、回収ボックス33bとを有する。これらの噴射ノズル31a、32a、33aは基本的に同じ構造を有し、各回収ボックス31b、32b、33bも基本的に同じ構造を有する。このため、代表として噴射ノズル31a及び回収ボックス31bについて説明する。
噴射ノズル31a及び回収ボックス31bは、搬送ベルト21aの各吸引孔21gが並ぶ搬送路を挟んで互いに対向する位置に設けられている。噴射ノズル31aは、吸引チャンバ21f内に配置されており、例えば、搬送ベルト21aに向けて気体(例えばエア)を噴射し、搬送ベルト21aから錠剤Tを落下させる。このとき、噴射ノズル31aから噴射された気体は、搬送ベルト21aの吸引孔21gを通過して錠剤Tに当たる。噴射ノズル31aは制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。回収ボックス31bは、噴射ノズル31aの直下であって搬送部21の下方に設けられている。この回収ボックス31bは、噴射ノズル31aから噴射された気体により搬送ベルト21aから落下した錠剤Tを受け取って収容する。
ここで、再利用品回収部31及び不良品回収部32を通過した錠剤Tは、搬送ベルト21aの移動に伴って搬送され、搬送ベルト21aにおける各従動プーリ21c側の端部付近の位置に到達する。この位置で吸引作用が錠剤Tに働かなくなるが、噴射ノズル33aによって錠剤Tの上方から錠剤Tに気体が吹き付けられ、錠剤Tは搬送ベルト21aから落下する。したがって、噴射ノズル33aを設けることで、搬送ベルト21aから錠剤Tを確実に落下させることができる。回収ボックス33bは、噴射ノズル33aから噴射された気体により搬送ベルト21aから落下した錠剤Tを受け取って収容する。
制御装置40は、各種情報及び各種プログラムに基づいて錠剤印刷装置1の各部、例えば、供給装置10や印刷装置20、回収装置30などを制御する。また、制御装置40は、搬送部21の位置検出器21eや検出部22からそれぞれ送信される検出情報(例えば検出信号)などを受信し、また、第1の撮像部23や第2の撮像部25から送信される画像情報などを受信する。制御装置40は、例えば、集積回路などの電子回路又はコンピュータなどにより実現される。
(錠剤印刷装置の冷却機能)
次に、錠剤印刷装置1の冷却機能について図2から図7を参照して説明する。
図2から図4に示すように、錠剤印刷装置1は、筐体51を有する。この筐体51は、錠剤印刷装置1が備える各部を内蔵する。各部は、供給装置10、印刷装置20、回収装置30及び制御装置40を含むが、図3の例では、冷却部61及び発熱源62、また、搬送部21、各インクジェットヘッド24、移動機構26及びメンテナンス部27が示されている。
筐体51は、ドア52、ドア55、及びカバー53を有する。ドア52およびドア55は、開閉可能に筐体51に取り付けられている。ドア52には、開口部52aが形成されている。この開口部52aは、冷却部61の外装が嵌まるサイズに、さらに、ドア52が閉じられると、冷却部61のドア52側の端部が開口部52aに挿入されるように形成されている。この開口部52aには、パッキンなどの隙間部材が設けられてもよい。筐体51は、インクジェットヘッド24の上方側および発熱源62の上方側に保持部51aを有する。保持部51aは、例えば、インクジェットヘッド24や第1の撮像部23、第2の撮像部25の上側を覆う面状の板である。保持部51aの上方には、後述する入力装置40aや出力装置40bなどが収容されている。保持部51aの下方には、検出部22、第1の撮像部23、第2の撮像部25などが収容されている。また、筐体51の内部における、搬送部21と発熱源62との間には、仕切り部材54が設けられている。
仕切り部材54は、第1領域R1と第2領域R2とを仕切るための壁であり、これを有
することにより発熱源62の熱が第1領域R1側へ流れ込むことを防止している。仕切り部材54は、例えば、ステンレス等の金属の板で形成されている。仕切り部材54のX方向の長さは、搬送部21のX方向の長さと同じである。仕切り部材54の上端は、筐体51の天井と接続されるが、必ずしも筐体51の天井に接続する必要は無い。仕切り部材54の上端と筐体51の天井との間には隙間が設けられていてもよい。第1の撮像部23あるいは第2の撮像部25と制御基板とを接続するケーブルが存在する。仕切り部材54には、ケーブル等が通過可能な不図示の孔が設けられている。また、図4及び図5に示すように、仕切り部材54には開口54aが設けられる。開口54aは、移動機構26がインクジェットヘッド24と接続するための開口である。また、開口54aは、メンテナンス部27が第1領域R1と第2領域R2とを行き来するための開口でもある。
本実施形態では、開口54aは、切り欠きである。開口54aの外形は、T字の形状である。例えば、矩形又は四角形の形状の仕切り部材54の一部がT字の形状に切り欠かれ、仕切り部材54の一部にT字の形状の開口54aが形成される。具体的には、開口54aは、仕切り部材54の上端からZ方向において下方向に切り欠いて形成される。開口54aの、仕切り部材54の上端側におけるX方向の長さは、ドア52の長さと同じである。開口54aの下に出っ張った部分におけるX方向の長さは、カバー53のX方向における長さと同じである。開口54aは、メンテナンス部27と仕切り部材54が交差する位置に設けられる。つまり、開口54aの出っ張り部分が設けられた位置における仕切り部材54の上端は、メンテナンス部27が第1領域R1と第2領域R2とを行き来することができる高さに位置するように設けられる。なお、開口54aがT字の形状の切り欠きであることは、仕切り部材54と保持部51aとの干渉を避けるためであり、保持部51aが無い場合など、開口54aは、T字以外の形状の切り欠きであってもよく、あるいは、矩形や四角形、円形などの形状の孔であってもよい。
仕切り部材54は、図5に示すように、一枚の板から形成されていてもよく、図6に示すように、複数の板54bを組み合わせて形成されていてもよい。この場合、保持部51aの上方を塞ぐ板54bが存在してもよい。また、図7に示すように、仕切り部材54は、複数の板54bと、筐体51に取り付け可能なフレーム54cから形成されていてもよい。なお、フレーム54cに代えて筐体51の柱や梁などに複数の板54bが取り付けられていてもよい。
図2及び図3に戻り、カバー53は、搬送部21の上方の空間をドア52側(正面側)から塞ぐカバー部材である。カバー53により囲まれた空間には、少なくとも各インクジェットヘッド24が存在している。また、カバー53は、仕切り部材54の開口54aの一部を覆うように仕切り部材54に取り付けられ、搬送部21の上方の空間を塞ぐカバーである。つまり、カバー53により囲まれた空間は、仕切り部材54の開口54aと連通している。なお、本実施の形態では、開口54aの上部は、保持部51aによって仕切られているため、カバー53で覆うことができない。しかしながら、カバー53が開口54aの全てを覆うことができる場合には覆っても良い。要は、インクジェットヘッド24に向けて第2領域R2の気体が流れ込む範囲をカバー53が覆うことができればよい。
カバー53は、例えば、本体53bとドア部53cを有する。本体53bは、搬送部21の上方の空間を覆い、正面側から見た外形がU字の開口を下に向けた状態のU字形状である部材である。本体53bは、U字の開口を下に向けた状態で仕切り部材54の開口54aの一部または全てを覆うように仕切り部材54に接続されている。したがって、本体53bは、搬送方向A1と直交する2つの側面とこの2つの側面同士を接続する天井を有する。本体53bの天井は、最大上昇位置のときのインクジェットヘッド24の上部より高い。また、本体53bの天井は、最大上昇位置のインクジェットヘッド24の上端よりもインクジェットヘッド24の昇降ストロークの範囲内の高さ分高い位置にある。本体53bは、カバー23aとカバー25aの間をちょうど埋める感じで設けられている。
ドア部53cは、本体53bに対し開閉可能なドアである。ドア部53cは、例えば、4つの側面のうちの1つが欠けた箱状の形状である。ドア部53cは、欠けた側面がインクジェットヘッド24と対向する状態で、不図示のヒンジを介して本体53bの仕切り部材54側とは反対側の端部に取付けられている。また、ドア部53cは、カバー25aに着脱可能に設けられている。そのため、本実施の形態では、カバー53は、カバー23aとカバー25aとの間であって、搬送部21の上方の空間を塞ぐ第3のカバーに相当する。
ドア部53cは、錠剤印刷装置1が稼働している間、カバー25aに取付けられる。また、ドア部53cは、インクジェットヘッド24の取付・取外しの際には、カバー25aから取外され、不図示のヒンジを介してカバー23a側に移動する。そのため、正面側からインクジェットヘッド24の取付・取外しを行うことができる。したがって、インクジェットヘッド24の取付・取外しを容易に行うことができる。
カバー53のドア52側の面(搬送方向A1と平行な面)には、通気部53aが形成されている。通気部53aの上部は、本体53bの天井と同じ高さか数cm(センチメートル)低い位置にある。また、本体53bの天井は、最大上昇位置のインクジェットヘッド24の上端よりもインクジェットヘッド24の昇降ストロークの範囲内の高さ分高い位置にある。この通気部53aとしては、例えば、金網などのメッシュ部材、あるいは、パンチング板などのパンチング部材が用いられる。通気部53aは、冷却部61が取り込んだ外気を通気部53aからカバー53内に供給するためのものである。この通気部53aを塞ぐように冷却部61がカバー53のドア52側の面に設けられている。また、通気部53aの下端は、最大上昇位置にあるインクジェットヘッド24の上部より高さ方向において高いことが好ましい。通気部53aの下端がインクジェットヘッド24の上部より高いと、インクジェットヘッド24によって冷却ガスの流れが妨げられることが無い。そのため、冷却部61からの冷却ガスが第2領域R2に流れ易くなる。なお、この場合には、通気部53aの上端は、通気部53aの下端よりも上に設けることは言うまでもない。
筐体51内には、第1領域R1及びその第1領域R1につながる(連通する)第2領域R2が存在する。第1領域R1には、搬送部21や各インクジェットヘッド24などが設けられており、第2領域R2には、発熱源62が設けられている。なお、移動機構26は第1領域R1及び第2領域R2にわたって存在しており、メンテナンス部27は待機位置が第2領域R2に存在し、メンテナンス位置が第1領域R1に存在することになる。なお、メンテナンス部27のメンテナンス位置とは、インクジェットヘッド24のメンテナンス(パージやダミー吐出、ワイピング等)を行う位置であり、インクジェットヘッド24の下方の位置である。メンテナンス部27の待機位置とはインクジェットヘッド24のメンテナンスを行わないときのメンテナンス部27の位置であり、図3に示すように第2領域R2の所定位置である。メンテナンス部27は、メンテナンス位置と待機位置とを移動し、つまり、図3の左右方向において移動することになる。
ここで、第1領域R1は筐体51における仕切り部材54よりもドア52側の領域である。第2領域R2は、筐体51における仕切り部材54よりも発熱源62側の領域である。
各インクジェットヘッド24は、移動機構26により昇降方向(図3中の上下方向)に移動するが、それらの吐出面の昇降方向の移動範囲Haは、各インクジェットヘッド24が通常位置する通常位置H1と、メンテナンス部27が各インクジェットヘッド24に関するメンテナンス作業を行うためのメンテナンス位置H2との間の範囲である。メンテナンス位置H2は、メンテナンス部27が搬送ベルト21aの搬送面と各インクジェットヘッド24の吐出面との間に移動してメンテナンス作業を行うための位置である。
冷却部61は、外気を取り込んでカバー53内に送る。冷却部61としては、例えば、空気の流れをつくる冷却ファンが用いられるが、これに限定されるものではない。冷却部61は、少なくとも第1領域R1に第2領域R2の温度より低い温度の気体を供給することができればよく、例えば、チューブなどにより圧縮気体を供給する供給部などが用いられてもよい。なお、気体としては、例えば、空気や窒素などの気体が用いられる。
また、冷却部61は、錠剤Tの搬送方向A1であるX方向に交差する方向(例えば、直交する直交方向であるY方向)において発熱源62に対してインクジェットヘッド24を間にして対向するように設けられている。具体的には、冷却部61は、各インクジェットヘッド24が並ぶ方向(Y方向)の端部側に設けられている。これは、冷却部61により供給される気体を全てのインクジェットヘッド24に当てるためである。
また、冷却部61は、錠剤Tの搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば、直交する直交方向であるY方向)に沿って気体を吹き出して供給する。気体は発熱源62側の第2領域R2に向かって供給されるため、発熱源62側の第2領域R2から吸引孔21gへの空気の流入を妨げることができる。冷却部61から供給される気体によって、第2領域R2から吸引孔21gへ流入する空気の流入量が減少すれば、吸引孔21gに吸い込まれる空気の温度は下がることになり、ひいては第1領域R1の温度も下がることになる。なお、気体の供給方向としては、例えば、インクジェットヘッド24の上方に冷却部61を設けるようにすることで、インクジェットヘッド24の上方から下方に向けて気体を供給しても良く、吸引孔21gへ流れ込む空気の温度を下げることができれば、その気体の供給方向は特に限定されるものではない。
また、冷却部61の下端は、昇降方向に移動する各インクジェットヘッド24の吐出面よりも常に高くなるよう、すなわち各インクジェットヘッド24の吐出面の昇降方向の移動範囲Haの上限よりも上になるように設けられている。つまり、冷却部61は、移動機構26により移動するインクジェットヘッド24の吐出面を避けて気体を吹き出すように設けられている。
このような冷却部61は制御装置40に電気的に接続されており、その駆動が制御装置40により制御される。例えば、冷却部61は、装置電源が投入されている状態で、常時駆動されてもよく、あるいは、所定時間だけ駆動されたり、所定時間だけ停止されたりしてもよい。また、錠剤印刷開始から所定時間(例えば、所定数の錠剤Tが印刷される所定時間)は発熱源62による熱の拡散が弱いため、その所定時間経過後に冷却部61が駆動されてもよい。また、筐体51の第2領域R2側には冷却部161が設けられる。
冷却部161は、第2領域R2内の空気を取り込んで装置外部へ排出する。冷却部161は、例えば、筐体51の、装置外部と第2領域R2とを隔てる部分に設けられる。冷却部161としては、例えば、冷却ファンが用いられる。しかし、冷却部161は、これに限定されるものではない。冷却部161は、ブロワやポンプなどでもよい。冷却部161がブロワやポンプで有った場合、冷却部161は、装置外部に設けられる。そして、冷却部161は、筐体51の、第2領域R2に接する部分と配管を介して接続される。
発熱源62は、熱を発する源となるものである。例えば、発熱源62は、搬送部21の搬送動作及びインクジェットヘッド24の印刷動作の一方又は両方に係る発熱源である。この発熱源62としては、例えば、制御装置40などの制御基板、錠剤Tの吸引保持に用いるブロワ、錠剤Tの搬送に用いるモータなどがある。
(制御装置の構成例)
次に、制御装置40の構成例について図8を参照して説明する。
図8に示すように、制御装置40は、画像処理部41と、記憶部42と、制御部43とを有する。この制御装置40には、入力装置40aや出力装置40bが接続されている。入力装置40aは、例えば、スイッチやタッチパネル、キーボード、マウスなどにより実現される。また、出力装置40bは、例えば、ディスプレイやランプ、メータなどにより実現される。
画像処理部41は、第1の撮像部23により撮像された第1の画像及び第2の撮像部25によって撮像された第2の画像を取り込み、公知の画像処理技術を用いて画像を処理する。例えば、画像処理部41は、第1の撮像部23から得られた第1の画像を処理し、錠剤Tの損傷や異物付着の有無を取得し、さらに、錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置を取得する。また、画像処理部41は、第2の撮像部25から得られた第2の画像を処理し、錠剤Tに印刷された印刷パターン(例えば、文字やマーク)の印刷位置や形状、サイズを取得する。画像処理部41は、取得した錠剤Tの損傷や異物付着の有無情報、取得した各錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置情報、さらに、各錠剤T上の印刷パターンの印刷位置情報、形状情報及びサイズ情報を制御部43に送信する。
記憶部42は、処理情報や各種プログラムなどを記憶する。例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。記憶部42には、印刷に関する印刷データ、搬送ベルト21aの移動速度データなどが記憶される。印刷データは、文字やマークなどの印刷パターンの情報を含む。
制御部43は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMCU(Micro Control Unit)、MPU(Micro Processing Unit)などのコンピュータであり、各部を制御する。例えば、制御部43は、記憶部42に記憶された各種情報や各種プログラムに基づいて、供給装置10や印刷装置20、回収装置30、画像処理部41、記憶部42などを制御する。また、制御部43は、搬送部21の位置検出器21eや検出部22からそれぞれ送信される検出信号などを受信する。なお、制御部43は、例えば、ハードウェア及びソフトウェアの一方又は両方により実現される。
(メンテナンスによるインクジェットヘッドの移動)
例えば、制御部43は、メンテナンス作業を実行するとき、各インクジェットヘッド24の吐出面を通常位置H1からメンテナンス位置H2に移動させるように移動機構26を制御する。各インクジェットヘッド24の吐出面がメンテナンス位置H2に移動すると、次に、制御部43は、メンテナンス部27をY方向のメンテナンス位置に移動させて各インクジェットヘッド24の吐出面をメンテナンスする。また、必要に応じて、メンテナンス部27の受け皿27bが各インクジェットヘッド24の吐出面に対向する位置までメンテナンス部27を移動させ、各インクジェットヘッド24にインクを連続して吐出させ、その後、メンテナンス部27を元の位置に戻す。
ここで、通常、通常位置H1やメンテナンス位置H2などは、予め設定されており、例えば、記憶部42に記憶されている。ただし、通常位置H1やメンテナンス位置H2などは、所定条件に応じて変更されてもよく、あるいは、入力装置40aに対するユーザの入力操作に応じて変更されてもよい。
(錠剤の高さ異常によるインクジェットヘッドの移動)
また、制御部43は、錠剤印刷実行時、検出部22により検出された錠剤Tの高さに関する高さ情報に基づいて、搬送ベルト21a上の錠剤Tの高さが異常であるか否かを判定する。制御部43は、例えば、錠剤Tの高さが所定の閾値を超えた場合、搬送ベルト21a上の錠剤Tの高さが異常であると判定する。図9に示すように、高さが異常な状態である錠剤(以下、「高さ異常錠剤」ともいう。)Tは、例えば、起立姿勢の錠剤である。起立姿勢の錠剤Tは、錠剤Tの姿勢が搬送ベルト21aの搬送面に対して垂直な状態又は傾いている状態であり、その姿勢のまま搬送ベルト21aによりインクジェットヘッド24の直下に向けて搬送されていくと、所定の通常位置H1に吐出面が位置するインクジェットヘッド24に衝突する。錠剤Tは、吸引孔21gによる吸引作用により起立姿勢で搬送ベルト21a上に保持される場合がある。特に、錠剤Tの被保持面がR形状を有している場合には、錠剤Tの中央部分でない1点が吸引される領域となることがあり、起立姿勢で保持されることがある。
また、制御部43は、搬送ベルト21a上の錠剤Tの高さが異常であるか否かに基づいて、搬送ベルト21aが錠剤Tを搬送する搬送速度を変え、また、搬送ベルト21aの搬送面とインクジェットヘッド24の吐出面との間隔を変える。例えば、制御部43は、搬送ベルト21a上の錠剤Tの高さが異常である場合、搬送ベルト21aの搬送速度を下げるように搬送部21を制御し、搬送ベルト21aの搬送面とインクジェットヘッド24の吐出面との間隔を広げるように移動機構26を制御する。その後、制御部43は、高さが異常な状態である錠剤Tがインクジェットヘッド24の直下を通過すると、インクジェットヘッド24を通常位置H1に戻すように移動機構26を制御し、搬送ベルト21aの搬送速度を元に戻すように搬送部21を制御する。
より具体的には、制御部43は、図9に示すように、高さが異常な状態である錠剤Tに対し、インクジェットヘッド24が上昇してインクジェットヘッド24の吐出面が所定の通常位置H1から所定の退避位置H3に移動するように移動機構26を制御する。これにより、搬送ベルト21aの搬送面とインクジェットヘッド24の吐出面との間隔が広がる。高さが異常な状態である錠剤Tが、その状態のまま搬送ベルト21aにより、所定の退避位置H3に吐出面が位置するインクジェットヘッド24の直下に到達しても、そのインクジェットヘッド24に衝突することなく、インクジェットヘッド24の直下を通過する。その後、高さが異常な状態である錠剤Tがインクジェットヘッド24の直下を通過したタイミングで、インクジェットヘッド24が下降してインクジェットヘッド24の吐出面が所定の退避位置H3から所定の通常位置H1に移動するように移動機構26を制御する。これにより、搬送ベルト21aの搬送面とインクジェットヘッド24の吐出面との間隔が元に戻る。
ここで、通常、所定の閾値や所定の通常位置H1、所定の退避位置H3などは、予め設定されており、例えば、記憶部42に記憶されている。通常位置H1はインクジェットヘッド24の吐出面の移動範囲Haの下限値であり、所定の退避位置H3は、移動範囲Haの上限値であるメンテナンス位置H2よりも低い位置である。ただし、所定の閾値や所定の通常位置H1、所定の退避位置H3などは、所定条件に応じて変更されてもよく、あるいは、入力装置40aに対するユーザの入力操作に応じて変更されてもよい。所定の閾値は、例えば錠剤Tの厚み+1mmの値を設定する。錠剤Tの被印刷面とインクジェットヘッド24の吐出面との距離は、通常1mm程度であり、錠剤Tの厚みは2~8mm程度であるので、錠剤Tが3mmだった場合を考えると、検出された錠剤Tの高さが4mmを超えたときに閾値を上回り、高さが異常である錠剤Tであると判定されることになり、インクジェットヘッド24への錠剤Tの衝突を防ぐことができる。所定の通常位置H1は、例えば、インクジェットヘッド24が搬送ベルト21a上の寝た状態(通常姿勢)の錠剤Tに衝突せず、搬送ベルト21a上の錠剤Tに正常に印刷することが可能な位置(例えば、錠剤Tの被印刷面から1mm離れた高さ位置)が実験的又は理論的に求められて設定されている。また、所定の退避位置H3は、インクジェットヘッド24が搬送ベルト21a上の高さが異常な状態である錠剤Tに接触しない位置(例えば、搬送ベルト21aから、錠剤Tの長径以上に離れた高さ位置)である。なお、どちらの位置に関しても、適宜マージンが取られる。
また、制御部43は、検出部22から送信された検出情報、すなわち搬送ベルト21a上の錠剤Tが検出されたタイミングに基づき、搬送ベルト21aにおいて錠剤TのX方向の位置を取得し、この錠剤TのX方向の位置を示す位置情報に基づき、第1の撮像部23の第1の撮像タイミング、インクジェットヘッド24の印刷開始タイミング、第2の撮像部25の第2の撮像タイミングを設定し、それらのタイミングを示すタイミング情報を生成して記憶部42に保存する。印刷開始タイミングとは、インクジェットヘッド24の直下の印刷位置に到達した錠剤Tに対して印刷を開始するタイミングである。なお、制御部43は、位置検出器21eから送信された検出情報に基づき、搬送ベルト21aの移動量(回転量)や速度などの情報を取得することが可能である。
また、制御部43は、画像処理部41から送信された錠剤Tの損傷や異物付着の有無情報(この情報は第1の画像に基づく情報である)に基づいて、その有無情報が得られた錠剤Tに対する印刷可否を印刷可否情報として設定する。そして、制御部43は、印刷可に設定された錠剤Tに対して印刷条件を印刷条件情報として設定する。このとき、制御部43は、画像処理部41から送信された錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置情報に基づいて、その位置情報が得られた錠剤Tに対して印刷条件を設定する。例えば、制御部43は、錠剤TのY方向の位置情報や印刷データに基づいて、インクジェットヘッド24において対象の錠剤Tの印刷に使用するノズル24aの範囲、すなわち使用ノズル範囲を決定し、その使用ノズル範囲や印刷開始タイミングなどを含む印刷条件を設定する。なお、錠剤Tが方向性を有する形状である場合、制御部43は、錠剤Tのθ方向の位置情報に基づいて、錠剤Tのθ方向の位置に対応させて印刷条件を設定する。一例として、制御部43は、印刷パターンの向きを0度から179度の範囲で1度ずつ回転させた180通りの印刷パターンを記憶部42に登録しておき、それらの印刷パターンの中から、錠剤Tのθ方向の位置に適合する角度の印刷パターンを選択して印刷条件を設定する。
また、制御部43は、画像処理部41から送信された、錠剤Tに印刷された印刷パターンの印刷位置情報、形状情報及びサイズ情報(これらの情報は第2の画像に基づく情報である)に基づいて、印刷パターンが所定形状及び所定サイズで錠剤Tの所定位置に印刷されたか否か、すなわち印刷パターンが錠剤Tに正常に印刷されたか否かを判断し、錠剤Tの印刷良否情報を設定する(印刷状態検査)。例えば、制御部43は、印刷パターンの形状及びサイズ判断において、検査用の印刷パターンを記憶部42に登録しておき、その検査用の印刷パターンと実際の印刷後の錠剤T上の印刷パターン(錠剤Tに印刷された印刷パターン)とを比較する。
なお、制御部43は、適宜各種情報(例えば、錠剤Tの損傷や異物付着の有無情報や位置情報、錠剤Tの高さ情報、タイミング情報、印刷可否情報、印刷条件情報、印刷良否情報など)を記憶部42に保存するが、対象の錠剤Tが回収装置30により回収されると、例えば、搬送部21における搬送方向A1の下流側の端部から落下して所定時間(例えば数秒)が経過した時点で、記憶部42から各種情報を削除する。ただし、それらの情報が後工程などで必要となる場合には、錠剤Tごとの各種情報を消去せずに残しておいたり、装置外の保存用メディアに保存しておいたりすることも可能である。錠剤Tごとの各種情報を保存しておく場合には、この情報と製造日時やロット番号などと紐づけて保存しておき、印刷後の錠剤Tについて出荷後に不良品が発生した場合などに遡って原因追及ができるようにしてもよい。
(印刷工程)
次に、前述の錠剤印刷装置1が行う印刷工程について図10を参照して説明する。この印刷工程は、検査工程も含む。なお、印刷に要するデータやインクジェットヘッド24の退避に要するデータなどの各種情報は、記憶部42に予め記憶されている。
図10に示すように、ステップS1において、供給装置10のホッパ11に印刷対象の錠剤Tが多数投入されると、錠剤Tはホッパ11から整列フィーダ12に順次供給され始め、整列フィーダ12により一列に並べられて移動する。この一列で移動する錠剤Tは受渡フィーダ13により印刷装置20の搬送ベルト21aに順次供給される。搬送ベルト21aは、モータ21dによる駆動プーリ21b及び各従動プーリ21cの回転によって搬送方向A1に回転している。このため、搬送ベルト21a上に供給された錠剤Tは搬送ベルト21a上で一列に並んで所定の搬送速度で搬送されていく。
ステップS2において、搬送ベルト21a上の錠剤Tは、検出部22によって検出される。詳しくは、搬送ベルト21a上の錠剤Tが、検出部22の直下の検出位置(例えば、レーザ光の照射位置)に到達するタイミングで検出部22により検出され、その錠剤Tが検出されたタイミングに基づき、搬送ベルト21aにおいて錠剤TのX方向の位置が制御部43によって認識される。そして、その錠剤TのX方向の位置を示す位置情報が制御部43により生成され、記憶部42に保存される。また、搬送ベルト21a上の錠剤Tの高さが検出部22により検出され、その錠剤Tの高さに関する高さ情報が制御部43によって認識され、その錠剤Tの高さ情報が記憶部42に保存される。
ステップS3において、高さ情報に基づいて搬送ベルト21a上の錠剤Tの高さが異常であるか否かが判断される。例えば、搬送ベルト21a上の錠剤Tの高さが所定の閾値を超えるか否かが判断される。搬送ベルト21a上の錠剤Tの高さが所定の閾値を超えると判断されると、搬送ベルト21a上の錠剤Tの高さが異常であると判定され(ステップS3のYes)、処理はステップS11に進む。一方、搬送ベルト21a上の錠剤Tの高さが所定の閾値を超えないと判断されると、搬送ベルト21a上の錠剤Tの高さが正常であると判定され(ステップS3のNo)、処理はステップS4に進む。
ステップS4において、搬送ベルト21a上の錠剤Tが第1の撮像部23によって撮像される。詳しくは、搬送ベルト21a上の錠剤Tが、第1の撮像部23の直下の撮像位置に到達した第1の撮像タイミングで第1の撮像部23によって撮像され、その第1の撮像部23による撮像により得られた第1の画像が制御装置40に送信される。この第1の画像に基づいて、錠剤Tの損傷や異物付着の有無情報、また、錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置情報が画像処理部41により生成され、記憶部42に保存される。
ステップS5において、錠剤Tの損傷や異物付着の有無情報に基づき、対象の錠剤Tへの印刷可否が制御部43により判断される。対象の錠剤Tへの印刷が可であると判断されると(ステップS5のYes)、処理はステップS6に進む。なお、錠剤TのX方向、Y方向及びθ方向の位置情報や印刷パターンなどの情報に基づき、印刷可に設定された錠剤T(印刷可の錠剤T)に対する使用ノズル範囲や印刷開始タイミングなどを含む印刷条件が記憶部42に設定される。前述の印刷開始タイミング(錠剤Tに対して印刷を開始するタイミング)に基づいて、錠剤Tに対する吐出タイミング(錠剤Tに対してインクを吐出するタイミング)が決定される。一方、対象の錠剤Tへの印刷が否であると判断されると(ステップS5のNo)、処理はステップS9に進み、対象の錠剤Tに対する印刷や検査に関する動作が制限される。なお、錠剤Tの印刷可否情報は、適宜記憶部42に保存される。なお、印刷や検査に関する動作の「制限」とは、少なくとも対象となる錠剤Tに対する印刷および検査に関する処理を行わないことを意味する。
ステップS6において、上記の印刷条件に基づいて印刷がインクジェットヘッド24により実行される。つまり、インクジェットヘッド24が、搬送ベルト21a上の印刷可の錠剤Tに所定の印刷パターンを印刷するように制御部43により制御される。詳しくは、第1の撮像部23の下方を通過した搬送ベルト21a上の印刷可の錠剤Tは、インクジェットヘッド24の直下の印刷位置に到達した印刷開始タイミングで、前述の印刷条件に基づいてインクジェットヘッド24によって印刷される。インクジェットヘッド24では、各ノズル24aからインクが適宜吐出され、錠剤Tの上面である被印刷面に印刷パターン(例えば、番号、アルファベット、片仮名、記号、図形)が印刷される。
ステップS7において、搬送ベルト21a上の印刷済の錠剤Tが第2の撮像部25によって撮像される。詳しくは、搬送ベルト21a上の印刷済の錠剤Tは、第2の撮像部25の直下の撮像位置に到達した第2の撮像タイミングで第2の撮像部25によって撮像され、その第2の撮像部25による撮像により得られた第2の画像が制御装置40に送信される。この第2の画像は、制御装置40の画像処理部41によって処理される。詳しくは、錠剤Tに印刷された印刷済の印刷パターンに関する情報、すなわち印刷済の印刷パターンの印刷位置や形状、サイズが画像処理部41により取得される。第2の撮像部25から送信された第2の画像が画像処理部41により処理され、錠剤Tにおいて印刷済の印刷パターンの印刷位置や形状、サイズを示す検査情報が生成され、記憶部42に保存される。
ステップS8において、上記の検査情報に基づいて印刷状態検査が制御部43により実行される。詳しくは、記憶部42に保存された前述の印刷位置や形状、サイズに係る検査情報に基づき、印刷パターンが錠剤Tに正常に印刷されたか否かが制御部43により判断され、錠剤Tの印刷良否を示す印刷良否情報が生成されて記憶部42に保存される。例えば、印刷状態検査では、印刷に使用した印刷パターンが検査用の印刷パターンとして記憶部42に保存され、検査用の印刷パターンの所定の印刷位置や形状、サイズに関する良品情報と、記憶部42に保存された実際の印刷済の印刷パターンの印刷位置や形状、サイズに関する検査情報とが比較され、印刷パターンが錠剤Tに正常に印刷されたか否か(合格又は不合格)が判断される。
ステップS9において、搬送ベルト21a上の錠剤Tが回収装置30により回収される。なお、錠剤Tに塗布されたインクは搬送中に自然乾燥するとともに、乾燥部28により乾燥する。詳しくは、再利用品の錠剤Tが搬送ベルト21aの移動に伴って再利用品回収部31に到達すると、噴射ノズル31aによって錠剤Tの上方から錠剤Tに気体が吹き付けられ、錠剤Tは搬送ベルト21aから落下して回収ボックス31bにより収容される。同様に、不良品の錠剤Tが搬送ベルト21aの移動に伴って不良品回収部32に到達すると、噴射ノズル32aによって錠剤Tの上方から錠剤Tに気体が吹き付けられ、錠剤Tは搬送ベルト21aから落下して回収ボックス32bにより収容される。また、良品の錠剤Tが搬送ベルト21aにおける各従動プーリ21c側の端部付近の位置に到達すると、錠剤Tに吸引作用が働かなくなり、噴射ノズル33aによって錠剤Tの上方から錠剤Tに気体が吹き付けられ、錠剤Tは搬送ベルト21aから落下して回収ボックス32bにより収容される。このような気体の吹き付けに関する制御は、例えば、錠剤Tの位置情報、錠剤Tの高さ情報、印刷可否情報、印刷良否情報などの各種の情報に基づいて制御部43により実行される。
ステップS10において、印刷が終了したか否かが制御部43により判断される。例えば、印刷済の錠剤Tの数がカウントされ、その数が所定の生産数に達すると、印刷が終了したと判断される。印刷が終了したと判断されると(ステップS10のYes)、処理が終了する。一方、印刷が終了していないと判断されると(ステップS10のNo)、処理はステップS1に戻る。なお、印刷終了の判断に関して、入力装置40aに対するユーザの入力操作に応じて、例えば、ユーザが印刷終了ボタンを押下することに応じて、印刷が終了したと判断されてもよい。
上記のステップS3において、搬送ベルト21a上の錠剤Tの高さが異常であると判定されると(ステップS3のYes)、ステップS11において、搬送ベルト21aの搬送速度が制御部43により下げられる。例えば、搬送速度は、所定の通常速度から一定の割合で徐々に又は段階的に下げられてもよく、また、ランダムな割合で徐々に又は段階的に下げられてもよい。所定の通常速度を所定の速度に低下させるが、この所定の速度は、通常速度の1/10程度の搬送速度であることが望ましい。
例えば、所定の速度は、搬送ベルト21a上における検出部22の直下の位置とインクジェットヘッド24の直下の位置との距離及びインクジェットヘッド24の吐出面が所定の通常位置H1から所定の退避位置H3に移動するのに要する時間に基づいて決定されている。なお、搬送ベルト21a上における検出部22の直下の位置とインクジェットヘッド24の直下の位置との距離とは、例えば、検出部22により搬送ベルト21a上の錠剤Tが検出される検出位置とインクジェットヘッド24の搬送方向A1の上流端の直下の位置との距離である。
ステップS12において、インクジェットヘッド24が移動機構26により上昇する。例えば、インクジェットヘッド24は、その吐出面が所定の通常位置H1から所定の退避位置H3に移動するまで上昇する(図9参照)。これにより、搬送ベルト21aの搬送面とインクジェットヘッド24の吐出面との間隔が所定の退避間隔まで広がる。この所定の退避間隔は、高さが異常な状態である錠剤Tが、その状態のまま搬送ベルト21aによりインクジェットヘッド24の直下に到達しても、インクジェットヘッド24に衝突することなく、インクジェットヘッド24の直下を通過することが可能な間隔である。
ステップS13において、高さが異常な状態である錠剤T、すなわち高さ異常錠剤Tを含む、その前後に位置する複数の錠剤Tに対する印刷が制御部43により制限される。例えば、インクジェットヘッド24は移動機構26により上昇させられるとともに、吐出を中断する。これにより、高さ異常錠剤T及びその前後に搬送される錠剤T(すなわち、インクジェットヘッド24が通常位置H1よりも高い位置に位置するときに、インクジェットヘッド24の直下を通過する錠剤T)が、インクジェットヘッド24によって印刷されることが無くなる。その結果、印刷不良(印刷不合格)の錠剤Tの発生を抑えることができる。つまり、制御部43は、インクジェットヘッド24を移動機構26により上昇させるタイミングで、同時に錠剤Tへのインクジェットヘッド24による印刷を停止させる。
ステップS14において、高さ異常錠剤Tがインクジェットヘッド24の直下を通過したか否かが制御部43により判断される。高さ異常錠剤Tがインクジェットヘッド24の直下を通過したと判断されると(ステップS14のYes)、処理はステップS15に進む。例えば、制御部43は、検出部22により搬送ベルト21a上の錠剤Tが検出されてから所定の時間を超えた場合、高さ異常錠剤Tがインクジェットヘッド24の直下を通過したと判定する。なお、高さ異常錠剤Tがインクジェットヘッド24の直下を通過したか否かは、位置検出器22eの検出によっても良い。
例えば、所定の時間は、錠剤Tの搬送速度(変化する搬送速度)、また、搬送ベルト21a上における検出部22の直下の位置とインクジェットヘッド24の直下の位置との距離、搬送ベルト21aの移動量(回転量)に基づいて決定されている。なお、ここでいう搬送ベルト21a上における検出部22の直下の位置とインクジェットヘッド24の直下の位置との距離は、例えば、検出部22により搬送ベルト21a上の錠剤Tが検出される検出位置とインクジェットヘッド24の搬送方向A1の下流端の直下の位置との距離である。
ステップS15において、インクジェットヘッド24が移動機構26により下降する。例えば、インクジェットヘッド24は、その吐出面が所定の退避位置H3から所定の通常位置H1に移動するまで下降する(図9参照)。これにより、搬送ベルト21aの搬送面とインクジェットヘッド24の吐出面との間隔は、所定の通常間隔(インクジェットヘッド24が通常位置H1に位置するときの間隔)まで戻る。
ステップS16において、搬送ベルト21aの搬送速度が制御部43により元に戻され、処理はステップS9に進む。例えば、搬送速度は、所定の通常速度まで一定の割合で徐々に又は段階的に上げられてもよく、また、ランダムな割合で徐々に又は段階的に上げられてもよい。なお、所定の通常速度は、予め設定されており、例えば、記憶部42に記憶されている。ただし、所定の通常速度は、所定条件に応じて変更されてもよく、あるいは、入力装置40aに対するユーザの入力操作に応じて変更されてもよい。
このような印刷工程中も含み、冷却部61(図3参照)は常に外気を取り込んで第1領域R1に供給する動作を継続している。第1領域R1に供給される空気の温度は、少なくとも第2領域R2内の温度よりも低い。この第2領域R2内の温度よりも温度が低い空気は冷却用エアとなる。第1領域R1に冷却用エアを供給することにより、各インクジェットヘッド24に冷却用エアが触れ、各インクジェットヘッド24が冷却されるとともに、冷却用エアが各インクジェットヘッド24を経由した後に錠剤T保持用の吸引孔21gの方へ流れ込み、発熱源62側からの気流が吸引孔21gに吸われにくくなる。あるいは、発熱源62側からの空気が冷却用エアによって冷やされ、吸引孔21gに吸われる。これによって、吸引孔21g付近に流れ込む空気の温度が下がり、ひいてはインクジェットヘッド24近傍の温度が下がる。
ここで、インクジェットヘッド24近傍の目標温度は、例えば、20度~25度であることが望ましい。冷却部61による冷却を実行しない場合、インクジェットヘッド24近傍の温度は25度を超えてしまう。インクジェットヘッド24近傍の温度が25度を超えると、インクジェットヘッド24に不具合(インク粘度が下がって吐出不良が生じるなど)が生じる可能性が高まる。そこで、冷却部61による冷却用エアの供給により、インクジェットヘッド24近傍の温度を下げることによって、インクジェットヘッド24内のインクの粘度が低下することやノズル24a付近のインクが乾燥することを抑制することができ、吐出不良の発生を抑えることが可能となり、印刷不良の発生を抑えることができる。また、インクジェットヘッド24内のインクの温度の上昇を抑えることができ、インクを適切に保つことが可能となり、インクの劣化を抑えることができる。なお、実験によれば、冷却部61による冷却用エアの供給を実行することで、インクジェットヘッド24近傍の温度を28度~31度から23度程度に下げることができることが確認された。
さらに、インクジェットヘッド24近傍の温度を測定する測定器(不図示)を設け、この測定器の測定結果が所定の温度(例えば24度)を上回った場合には、冷却部61から供給する冷却用エアの量を増やすようにしても良い。あるいは、測定器による測定結果が所定の温度を上回った場合には、インクジェットヘッド24による印刷を停止するようにしても良い。このようにすることで、印刷不良の発生を防止することができる。なお、インクジェットヘッド24近傍の温度を測定する測定器は、インクジェットヘッド24の近傍に設けても良いし、インクジェットヘッド24自体に設け、インクジェットヘッド24自体の表面温度を測定するようにしても良い。つまり、インクジェットヘッド24近傍の温度とは、インクジェットヘッド24自体の温度も含む。
また、冷却部61は、移動機構26により移動する各インクジェットヘッド24の吐出面を避けて冷却用エアを吹き出すように設けられている。これにより、各インクジェットヘッド24が錠剤Tからの退避やメンテナンス時など移動機構26により移動しても、冷却部61から吹き出された冷却用エアは各インクジェットヘッド24の吐出面に直接当たらないので、ノズル24a付近のインクが乾燥して固着することを抑えることができる。したがって、吐出不良の発生を抑えることが可能となり、印刷不良の発生を抑えることができる。
また、第2領域R2内の空気を冷却部161によって装置外部へ排出することで第2領域R2内を負圧としている。第2領域R2内が負圧となることで、第2領域R2内で発生した熱が第1領域R1に流れ込むことが抑制される。また、第2領域R2内が負圧となることで、冷却部61からの冷却ガスが第2領域R2へ流れ込み易くなる。
また、仕切り部材54のX方向の長さは、搬送部21のX方向の長さと同じである。これにより、搬送ベルト21aにおける錠剤Tを吸引していない吸引孔21gが第2領域R2の空気を流入させてしまうことを防止することができる。また、仕切り部材54は、その上端が筐体51の天井と接続されている。温かい空気は、空間の上の方に行きやすい。したがって、仕切り部材54の上端が筐体51の天井と接続されていることで、第2領域R2で温められた空気が第1領域R1に流れ込むことを防止することができる。
また、制御部43は、検出部22による高さ異常の検出に応じて、搬送ベルト21aの搬送速度を下げ、さらに、インクジェットヘッド24の搬送ベルト21a側の面と搬送ベルト21aのインクジェットヘッド24側の面との間隔を広げる。これにより、搬送ベルト21a上の高さが異常な状態の錠剤Tがインクジェットヘッド24に衝突せずに通過することができる。したがって、インクジェットヘッド24のダメージや錠剤Tの破損を抑制することが可能になるので、メンテナンス回数の増加やメンテナンス時間の延長、錠剤Tの破損などによる悪影響を抑え、効率よく錠剤Tに印刷を行うことができる。
制御部43は、インクジェットヘッド24を上昇させ、高さが異常な状態である錠剤Tがインクジェットヘッド24の直下を通過次第、インクジェットヘッド24を元の高さ位置(通常位置H1)に戻し、搬送ベルト21aの搬送速度を通常速度に戻し、通常の搬送速度での印刷を再開する。このインクジェットヘッド24の上昇、高さ異常錠剤Tのインクジェットヘッド24の下方通過及びインクジェットヘッド24の下降の間だけ、インクジェットヘッド24による印刷が中断され、インクジェットヘッド24が通常位置H1にある場合、印刷が行われるので、効率よく錠剤Tに印刷を行うことができる。すなわち、インクジェットヘッド24の搬送方向A1における長さ分の距離に存在する、高さ異常錠剤Tの後続の錠剤については印刷をすることができないが、高さ異常錠剤Tがインクジェットヘッド24の搬送方向A1における下流端を通過しきった後においては、印刷を再開することができ、高さ異常錠剤Tが搬送されてきたことにより非印刷錠となる錠剤Tを極力抑えることができる。なお、高さ異常錠剤Tの後続の錠剤Tについても印刷および検査に関する処理が制限されることとなり、これらの錠剤Tについても非印刷錠となる。
高さ異常錠剤Tおよびその後続の錠剤(インクジェットヘッド24の搬送方向A1における長さ分の距離に存在する錠剤)がインクジェットヘッド24を通過し、インクジェットヘッド24が通常位置H1に位置に戻りさえすれば、制御部43はインクジェットヘッド24による錠剤Tへの印刷を再開させることができる。搬送ベルト21aの搬送速度を低下させている場合には前述のとおり搬送速度を通常速度に戻してから印刷を再開させても良いが、搬送速度が低下したまま印刷を再開し、印刷を続行しながら搬送速度を元に戻すようにしても良い。
ここで、通常、供給装置10から搬送部21に錠剤Tを供給する供給速度(整列フィーダ12や受渡フィーダ13などのフィーダが錠剤Tを搬送する搬送速度)は、常に、搬送ベルト21aが錠剤Tを搬送する搬送速度より遅く設定されている。このため、制御部43は、供給装置10の供給速度と搬送ベルト21aの搬送速度との所定の速度差を保つよう、搬送ベルト21aの搬送速度を低下させた場合には、供給装置10の供給速度も低下させてもよい。これにより、錠剤Tが整列フィーダ12や受渡フィーダ13などのフィーダで詰まることを抑えることができる。
また、制御部43は、高さが異常な状態である錠剤Tを検出次第、新たな錠剤Tの供給を停止するように供給装置10を制御してもよい。これにより、高さが異常な状態の錠剤Tが発生したことに応じて、新たな錠剤Tが搬送ベルト21a上に供給されなくなる。インクジェットヘッド24のメンテナンス部27は、インクジェットヘッド24と搬送ベルト21aとの間に入り込んでメンテナンスを実施する。このとき、インクジェットヘッド24はメンテナンス部27が入り込むスペースを作るために、通常位置H1より高い位置に退避する。このため、搬送ベルト21a上の錠剤Tが回収され次第、新たな錠剤Tが搬送ベルト21aに供給されない状態となれば、インクジェットヘッド24のメンテナンス作業を行うことができる。また、インクジェットヘッド24のメンテナンスを実施するタイミングで、搬送ベルト21a(および吸引孔21g)のメンテナンスを実施するようにしても良い。
また、制御部43は、搬送ベルト21aの搬送速度を下げた期間に検出部22の直下を通過した錠剤Tに対するインクジェットヘッド24のインク吐出を制限し、その搬送ベルト21aの搬送速度を下げた期間に検出部22の直下を通過した錠剤Tを再利用可能な非印刷錠、すなわち再利用品として回収するように回収装置30を制御してもよい。これにより、搬送ベルト21aの搬送速度を下げた期間に検出部22の直下を通過した錠剤Tを再利用品として回収することができる。
また、搬送ベルト21aの載置面とインクジェットヘッド24の吐出面との間隔を変えるため、インクジェットヘッド24が移動機構26により移動するが、これに限定されるものではなく、例えば、搬送ベルト21aが移動機構26により移動してもよい。この搬送ベルト21aの移動は、搬送部21の全体が移動機構26により移動することで実現されてもよく、あるいは、インクジェットヘッド24に対向する搬送ベルト21aの一部が移動機構26により移動することで実現されてもよい。
ここで、搬送対象物が錠剤Tである場合には、例えば、搬送対象物が紙である場合と比較して、インクジェットヘッド24の下を通過するスピードが桁違いに速く、さらに、搬送対象物とインクジェットヘッド24との相対的な大きさの差が大きく、各搬送対象物の搬送間隔も狭い。したがって、単に搬送対象物とインクジェットヘッド24との衝突を防げばよいというものではなく、衝突を防ぎつつ、衝突を防ぐためにインクジェットヘッド24を退避させることにより印刷ができないなどの影響を受ける錠剤Tの数を極力減らす工夫が重要となる。また、高さが異常な状態である錠剤Tを検知したことによって装置全体の運転を停止し、搬送ベルト21a上の錠剤Tを未印刷(非印刷錠)のまま回収すると、生産性が著しく低下してしまう。したがって、上述したような本実施形態によれば、紙の印刷にはない錠剤特有の課題を解決することができる。なお、錠剤Tに印刷を行う場合には、紙に印刷を行う場合と異なり、搬送方向A1に水平面内で直交する方向に複数並ぶ錠剤Tに対して一つのインクジェットヘッド24を用いて印刷を行うことがある。
以上説明したように、実施形態によれば、錠剤印刷装置1は、第1領域R1に設けられ、錠剤Tを吸引孔21gに吸引保持して搬送する搬送部21と、第1領域R1に設けられ、搬送部21により搬送される錠剤Tに対して印刷を行うインクジェットヘッド24と、第1領域R1につながる第2領域R2に設けられた発熱源62と、第1領域R1に第2領域R2の温度より低い温度の気体を供給する冷却部61とを備える。これにより、第1領域R1に第2領域R2の温度より低い温度の気体を供給することが可能になるので、第1領域R1内のインクジェットヘッド24近傍の温度を下げることができる。したがって、インクジェットヘッド24内のインクの粘度が低下することやノズル24a付近のインクが乾燥することを抑制し、吐出不良の発生を抑えることが可能となるので、印刷不良の発生を抑えることができる。また、インクジェットヘッド24内のインクの温度の上昇を抑えることができ、インクを適切に保つことが可能となるので、インクの劣化を抑えることができる。
<他の実施形態>
前述の説明においては、実施の一形態に係る錠剤印刷装置1(錠剤印刷方法)を用いて錠剤Tに印刷を行うが、これは、実施の一形態に係る錠剤印刷装置1(錠剤印刷方法)を用いて錠剤Tに印刷を行い、印刷済の錠剤Tを製造すると言い換えることも可能である。すなわち、錠剤印刷装置1を錠剤製造装置に、錠剤印刷方法を錠剤製造方法に言い換えることができる。
また、前述の説明においては、錠剤Tの片面を印刷することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、印刷装置20を一つのユニットし、そのユニットを上下に重ねて配置して、上側の印刷装置(第1の印刷装置)20で印刷した錠剤Tを反転して下側の印刷装置(第2の印刷装置)20に受け渡し、下側の印刷装置20による錠剤Tへの印刷を実行し、錠剤Tの両面を印刷するようにしてもよい。
また、前述の説明においては、錠剤Tを二列で搬送することを例示したが、これに限るものではなく、その列数は一例であってもよく、三列以上の複数列であってもよく、特に限定されるものではない。搬送ベルト21aの本数も二本以上であってもよく、特に限定されるものではない。また、インクジェットヘッド24の個数も一個であっても、三個以上であってもよく、特に限定されるものではない。
また、前述の説明においては、カバー53として、本体53bおよびドア部53cから形成されることを例示したが、これに限るものではない。例えば、カバー23aのインクジェットヘッド24側の側面とカバー25aのインクジェットヘッド24側の側面が本体53bの側面として機能してもよい。また、筐体51の保持部51aが本体53bの天井として機能してもよい。また、カバー23a、カバー25aおよび、カバー53の天井が一体であってもよい。また、カバー53は、本体53bとドア部53cの区別が無く、一体であっても良い。
また、前述の説明においては、第1の撮像部23を覆うカバー23aおよび第2の撮像部25を覆うカバー25aを例示したが、これに限るものではない。例えば、カバー23aとカバー25aは必須ではなく、カバー53は、少なくとも搬送部21の上でインクジェットヘッド24の周囲と上側を囲う構成であればよい。
また、前述の説明においては、仕切り部材54の開口54aとして、開口54aの形状が切り欠きであることを例示したが、これに限るものではない。例えば、保持部51aが無い場合には、開口54aは、メンテナンス部27が第1領域R1と第2領域R2とを行き来することができる程度の幅を有する孔であってもよい。この場合、開口54aの下端は、メンテナンス部27が第1領域R1と第2領域R2とを行き来することができる高さに位置するように設けられる。仕切り部材54が筐体51の天井と接続されている場合、第1領域R1と第2領域R2は、仕切り部材54によってほぼ仕切られた状態となる。この場合、第2領域R2で発生した熱の大部分は、開口54aを介して第1領域R1に流れ込もうとする。しかし、カバー53によって閉塞された空間には、冷却部61からの冷却ガスが供給されているので、第2領域R2で発生した熱が第1領域R1へ流れ込むことをより抑制することができる。
また、前述の説明においては、インクジェットヘッド24として、ノズル24aが一列に並ぶ印刷ヘッドを例示したが、これに限るものではなく、例えば、ノズル24aが複数列に並ぶ印刷ヘッドを用いるようにしてもよい。
また、前述の説明においては、インクジェットヘッド24をノズル24aが並ぶ方向が水平面内において搬送方向A1と直交する方向になるように設けることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、ノズル24aが並ぶ方向が水平面内において搬送方向A1と交差する方向になるように設けるようにしてもよい。
また、前述の説明においては、錠剤Tが搬送ベルト21a上に一定間隔ではなくランダムに供給されるとしたが、これに限るものではなく、一定間隔で供給されてもよい。また、前述の説明においては、搬送ベルト21a上に形成された吸引孔21gによって錠剤Tが吸引保持されるとしたが、これに限るものではなく、ポケットなどに収容保持され搬送されるようにしてもよく、あるいは、搬送ベルト21a上に自重により保持され搬送されるようにしてもよい。
また、前述の説明においては、制御部43は、検出部22により検出された錠剤Tの高さに関する高さ情報に基づいて錠剤Tの高さが異常であるか否かを判定することを例示したが、これに限られない。例えば、第1の撮像部23で得られた錠剤Tの画像に基づき、搬送ベルト21aに供給された錠剤Tを平面視したときの面積や長さ、形状を検出する(間接的に錠剤Tの高さを検出する)ことによって高さ情報を得るようにしても良い。すなわち、錠剤Tの平面視したときの面積や長さが閾値を下回ったときに錠剤Tの高さが異常であると判定するようにしても良い。あるいは、インクジェットヘッド24の通常位置H1を基準として、通常位置H1から1mm程度低い位置を閾値として設定しても良い。
また、前述の説明においては、制御部43は、検出部22により高さ異常錠剤Tが検出された場合には、インクジェットヘッド24に、インクジェットヘッド24が退避位置H3に移動するまで、あるいは高さ異常錠剤Tの1つ上流側に位置する錠剤Tまで印刷を行わせることを例示したが、これに限られない。例えば、検出部22により高さ異常錠剤Tが検出された時点でインクジェットヘッド24による印刷を中断するとともに、通常位置H1から退避位置H3へと移動させるようにしても良い。この場合には、搬送ベルト21aの搬送速度は、高さ異常錠剤Tが検出されてから当該高さ異常錠剤Tがインクジェットヘッド24に到達するまでの間に退避位置H3に移動することが可能な速度まで低下させれば足りる。あるいは、印刷が制限される錠剤Tが、高さ異常錠剤Tの前後数個(例えば10個程度。あるいは10個程度が搬送されると予測される時間)となるようにインクジェットヘッド24を退避位置H3に移動させるよう制御しても良い。この場合には、搬送ベルト21aの搬送速度低下前後の速度差が少なくて済み、単位時間当たりの印刷個数を増加させることができる。
また、前述の説明においては、搬送ベルト21aの搬送速度を徐々に又は段階的に低下させることを例示したが、これに限るものではなく、検出部22により錠剤Tの高さが所定の閾値を超えたと検出された時点で、目標とする搬送速度まで急速に搬送速度を低下させるようにしても良い。搬送ベルト21aの搬送速度を低下させた速度から通常の速度に戻す場合においても、低下させる場合と同様、徐々に又は段階的に戻してもよく、急速に戻しても良い。いずれの場合においても、徐々に又は段階的に搬送速度を変更した方が、錠剤Tが搬送ベルト21aからの離脱を防止することができる。
ここで、前述の錠剤Tとしては、医薬用、飲食用、洗浄用、工業用あるいは芳香用として使用される錠剤を含めることができる。また、錠剤Tとしては、裸錠(素錠)や糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠、多層錠、有核錠などがあり、硬カプセルや軟カプセルなど各種のカプセル錠も錠剤Tに含めることができる。さらに、錠剤Tの形状としては、円盤形やレンズ形、三角形、楕円形など各種の形状がある。また、印刷対象の錠剤Tが医薬用や飲食用である場合には、使用するインクとして可食性インクが好適である。この可食性インクとしては、合成色素インク、天然色素インク、染料インク、顔料インクのいずれを使用しても良い。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
本発明の実施形態に係る錠剤印刷装置は、第1領域に設けられ、錠剤を吸引孔に吸引保持して搬送する搬送部と、前記第1領域に設けられ、前記搬送部により搬送される前記錠剤に対して印刷を行うインクジェットヘッドと、前記搬送部により搬送される前記錠剤の搬送方向に直交する方向において前記第1領域と並ぶように設けられ、前記第1領域につながる第2領域に設けられた発熱源と、前記第1領域に前記第2領域の温度より低い温度の気体を供給する冷却部と、を備える。
本発明の実施形態に係る錠剤印刷方法は、第1領域に設けられた搬送部が、錠剤を吸引孔に吸引保持して搬送することと、前記第1領域に設けられたインクジェットヘッドが、前記搬送部により搬送される前記錠剤に対して印刷を行うことと、前記搬送部により搬送される前記錠剤の搬送方向に直交する方向において前記第1領域と並ぶように設けられ、前記第1領域につながる第2領域に発熱源が存在する状態において、冷却部が前記第1領域に前記第2領域の温度より低い温度の気体を供給することと、を含む。
ステップS14において、高さ異常錠剤Tがインクジェットヘッド24の直下を通過したか否かが制御部43により判断される。高さ異常錠剤Tがインクジェットヘッド24の直下を通過したと判断されると(ステップS14のYes)、処理はステップS15に進む。例えば、制御部43は、検出部22により搬送ベルト21a上の錠剤Tが検出されてから所定の時間を超えた場合、高さ異常錠剤Tがインクジェットヘッド24の直下を通過したと判定する。なお、高さ異常錠剤Tがインクジェットヘッド24の直下を通過したか否かは、位置検出器21eの検出によっても良い。