JP2022168934A - 電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物及び成形体 - Google Patents

電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物及び成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】反射損失および透過損失が大きいだけなく、さらに流動性が良好であることで、成形体中での面内バラつきがなく均一な電磁波吸収性能が得られる熱可塑性樹脂組成物の提供。【解決手段】熱可塑性樹脂(A)と、カーボンナノチューブ(B)を含む熱可塑性樹脂組成物であり、カーボンナノチューブ(B)は、下記(1)および(2)を満たし、熱可塑性樹脂組成物から形成してなる厚み100μmのシートは、ISO25178に準拠して測定されるシート表面の最大高さSzが5μm以下であることを特徴とする電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物により解決される。(1)粉末X線回折分析において、(002)面の回折ピークの半価幅が2.0°~6.0°である。(2)ラマンスペクトルにおける1560~1600cm-1の範囲内での最大ピーク強度G、1310~1350cm-1の範囲内での最大ピーク強度Dの比率(G/D比)が0.5~2.0である。【選択図】なし

Description

本発明は、電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物、及び成形体に関する。
プラスチックは成形加工が容易なことから電気・電子機器部品、自動車部品、医療用部品、食品容器などの幅広い分野で使用されており、装飾性を高めるためや機能性を付与させるためにプラスチック成形品の着色が盛んに行われている。特に自動車分野では、機能性を付与させたものとして、電磁波吸収用途を目的とする用途で着色された成形体が流通している。
ラジオ、テレビ、無線通信などの通信機器からは電磁波が放射されているが、これに加え、最近の情報技術の進展により急増した携帯電話、パソコンなどの電子機器からも電磁波は放射されている。従来、電子機器、通信機器などの電磁波による誤作動を回避するための一手法として、効率よく電磁波を吸収し、吸収した電磁波を熱エネルギーに変換するという電磁波吸収体を電磁波発生部位近傍又は遠方に設置することが行われている。
電磁波発生部位より遠方に電磁波吸収体を設置して用いられる例としては、例えば高速道路の自動料金収受システム(ETC)用途がある。ETCは、高速道路の料金所出口を自動車が通過する際に、料金所に備えられた路側機アンテナと車載器側アンテナとの間で周波数5.8GHzのマイクロ波を使用して課金情報等を交換するシステムである。このETCシステムが導入された料金所では、アンテナから放射されたマイクロ波が料金所屋根等にあたって反射され、隣接するETCレーンから不要な電磁波が漏洩する等の理由により、通信に異常を引き起こすことがある。そこで料金所屋根やETCレーンの間に電磁波吸収体を設置することによって、通信異常を抑制することが行われている
また、近年では自動車分野において、車両の自動運転や衝突防止を目的としてミリ波レーダーが利用されており、多くの場合はミリ波レーダー装置が自動車の内部に取り付けられている。
ミリ波とは電磁波のうち、波長が1~10mm、周波数30~300GHzの電磁波であり、現在では車載レーダーや空港等で防犯チェックとして衣服の下を透視する全身スキャナー、列車のワンマン運転時において、プラットホーム上の監視カメラの映像伝送等にも使用されている。ミリ波レーダー装置は、ミリ波を飛ばして跳ね返ってくる波を受信し、障害物を認識できる装置であり、検出可能距離が大きいことや、太陽光、雨、霧による阻害を受けにくいこと等から、今日では自動車等の自動運転技術などに利用されている。
自動車のセンサーの場合、ミリ波レーダー装置は、アンテナからミリ波を送受信して、障害物との相対距離や相対速度等を検出することができる。
これらミリ波レーダー装置の送受信アンテナは、目的とする障害物以外の路面などに反射したものも受信することがあり、装置の検出精度が低下してしまう場合がある。このような問題を解決するため、ミリ波レーダー装置では、アンテナと制御回路との間に電磁波を遮蔽する遮蔽部材として、電磁波吸収体を設けている。
このような電磁波吸収体を構成するミリ波帯域の電磁波吸収材料としては、炭素系、金属炭素系、磁性体系が知られており、特に炭素系としてカーボンナノチューブ(CNT)が知られている。
カーボンナノチューブを含む樹脂組成物は高い導電性を有するため、自動車や家電製品、建築部材の分野で導電性が必要な部品(特許文献1)や、電磁波特性を生かした電磁波吸収体として使用されている(特許文献2、3)。
しかしこれらの樹脂組成物を用いた成形体では、周辺環境からレーダーを十分に保護するとともに、レーダーの信号伝達を阻害しないようにするためには、電磁波の反射損失及び透過損失について電磁波吸収性能が充分とはいえず、改善の余地がある。また電磁波吸収体として使用されるカーボンナノチューブは増粘効果があるため、樹脂組成物の流動性が低下することで分配不良が発生し、均一な電磁波吸収性能を達成することが難しいという問題がある。
特開2016-108524号公報 特表2017-512847号公報 特表2016-504471号公報
本発明は、反射損失および透過損失が大きいだけなく、さらに流動性が良好であることで、成形体中での面内バラつきがなく均一な電磁波吸収性能が得られる熱可塑性樹脂組成物、ならびに該熱可塑性樹脂組成物により形成される、電磁波吸収性能に優れた成形体の提供を目的とする。
すなわち本発明は、熱可塑性樹脂(A)と、カーボンナノチューブ(B)を含む熱可塑性樹脂組成物であり、カーボンナノチューブ(B)は、下記(1)および(2)を満たし、熱可塑性樹脂組成物から形成してなる厚み100μmのシートは、ISO25178に準拠して測定されるシート表面の最大高さSzが5μm以下であることを特徴とする電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物。
(1)粉末X線回折分析において、(002)面の回折ピークの半価幅が2.0°~6.0°である。
(2)ラマンスペクトルにおける1560~1600cm-1の範囲内での最大ピーク強度G、1310~1350cm-1の範囲内での最大ピーク強度Dの比率(G/D比)が0.5~2.0である。
本発明により、反射損失および透過損失が大きいだけなく、さらに流動性が良好であることで、成形体中での面内バラつきがなく均一な電磁波吸収性能が得られる熱可塑性樹脂組成物、ならびに該熱可塑性樹脂組成物により形成される、電磁波吸収性能に優れた成形体の提供が可能となる。
なかでも、特定周波数60~90GHz帯の反射損失および透過損失に優れるため、ミリ波吸収体用としても、好適に用いることができる成形体の提供が可能である。
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書で「フィルム」、および「シート」は同義である。
また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。
また、カーボンナノチューブをCNTと表すことがある。
また、本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
《電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物》
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、電磁波吸収体を形成するために用いられる。
熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)と、カーボンナノチューブ(B)を含み、カーボンナノチューブ(B)は、下記(1)および(2)を満たし、
熱可塑性樹脂組成物から形成してなる厚み100μmのシートは、ISO25178に準拠して測定されるシート表面の最大高さSzが5μm以下である。
(1)粉末X線回折分析において、(002)面の回折ピークの半価幅が2.0°~6.0°である。
(2)ラマンスペクトルにおける1560~1600cm-1の範囲内での最大ピーク強度G、1310~1350cm-1の範囲内での最大ピーク強度Dの比率(G/D比)が0.5~2.0である。
熱可塑性樹脂組成物から形成してなる厚み100μmのシートは、表面の最大高さSzが5μm以下である。これにより反射損失および透過損失が大きくなり、かつ面内バラつきもない、電磁波吸収性能に優れた成形体を形成することが可能となる。
最大高さSzは、小さいほど好ましく、より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは4μm以下である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、X線回折ピークの半価幅、およびラマンスペクトルにおけるG/D比が特定の範囲にあるカーボンナノチューブ(B)を用い、かつシート表面の最大高さSzがこの範囲を満たすことにより、電磁波吸収性能に優れるだけでなく、樹脂組成物の流動性にも優れた樹脂組成物とすることができる。
シート表面の最大高さSzは、カーボンナノチューブの分散性により大きく変化し、この範囲にするためには、用いるカーボンナノチューブ(B)として、本発明のカーボンナノチューブ(B)と熱可塑性樹脂(A)を用いることに加え、成形体を形成するための樹脂の溶融混錬時の分散条件等により、カーボンナノチューブを高分散することで制御することが可能である。カーボンナノチューブの半価幅が6.0°より大きいとより単層のカーボンナノチューブに近くなる。単層のカーボンナノチューブに近づくほど、比表面積が大きく結晶性が高いカーボンナノチューブとなり、凝集力が非常に強く、樹脂中での分散性が悪くなってしまう。よって、半価幅が2.0°~6.0°であるカーボンナノチューブ(B)を用いることで最大高さSzを5μm以下に制御することが可能となる。
本発明のカーボンナノチューブ(B)を用いることによって、高分散としても樹脂組成物が流動性を保持し、シートの表面粗さも平滑であり、電磁波吸収特性に優れたものとすることができるものとなっている。
シート表面の最大高さSzを測定するための、シートの形成方法は、厚み100μmのシートを形成することができれば、どのような方法方であっても制限されない。
例えば、熱可塑性樹脂(A)と、カーボンナノチューブ(B)を含む熱可塑性樹脂組成物を加熱溶融し、Tダイ成形機によりシートを成形することができる。
具体的には、例えば、樹脂組成物に使用されている熱可塑性樹脂(A)の融点より30℃高い温度にてTダイ成形機を使用することにより厚み100μmシートを作製することができる。
シート表面の最大高さSzは、二次元の粗さパラメーターである最大高さRzを三次元に拡張したパラメーターであり、測定表面の最も高い点から最も低い点までの距離を表す。
最大高さSzは、ISO25178に準拠して測定し、求めることができる。
なお、ある表面について、その断面を抜き出し、粗さを議論する際には、SzとRzは同義とみなすことができる。
具体的には、例えば、作製した厚み100μmのシートをTaylor/Hobson社製、タリサーフCCI MP-HSを使用し、測定長が2.5mm×2.5mm、ロバストガウシアンフィルタが0.08mm、とした際の最大高さSz(μm)から求められる。
また、本発明の電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物は、MFRは、0.1~30g/10分が好ましく、5~30g/10分が更に好ましい。MFRが前記範囲内であることで、成形時にカーボンナノチューブが成形体中に均一に分配し、成形体において均一な電磁波吸収性能が得られる。
なお、本発明におけるMFRはJIS(日本工業規格)K-7210に従って測定し、求めることができる。
<熱可塑性樹脂(A)>
熱可塑性樹脂(A)は、加熱溶融により成形可能な樹脂であれば特に制限されるものではない。熱可塑性樹脂(A)は、例えば、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)などのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂(PS)、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂(ABS)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリウレタン樹脂(PU)、液状シリコーンゴム(LSR)等が挙げられる。
汎用性、機械物性の観点から、好ましくは、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂(ABS)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリエステル系樹脂などである。
熱可塑性樹脂(A)の重量平均分子量は、汎用性、機械物性の点で1,000~900,000であることが好ましく、より好ましくは2,000~500,000である。
なかでも、熱可塑性樹脂(A)として、重量平均分子量が50,000以上の熱可塑性樹脂(A1)と、50,000未満の熱可塑性樹脂(A2)を併用して用いることが好ましい。これにより、カーボンナノチューブ(B)と熱可塑性樹脂(A)を溶融混錬する際に、カーボンナノチューブの濡れ性が向上し、カーボンナノチューブを解し、高分散とすることができるために、電磁波吸収性能をより向上することができる。

なお、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC法)により測定された値(標準物質としてポリスチレン、溶離液としてテトラヒドロフランを用いて得られた測定値)である。
熱可塑性樹脂(A1)と熱可塑性樹脂(A2)の重量比は、(A1):(A2)=99:1~50:50であることが好ましく、より好ましくは90:10~50:50である。上記範囲内であることで、熱可塑性樹脂(A2)がカーボンナノチューブ(B)の濡れ性を向上させ、希釈樹脂である熱可塑性樹脂(A1)中でのカーボンナノチューブ(B)の分散性を向上させることができるために好ましい。
<カーボンナノチューブ(B)>
カーボンナノチューブ(B)は、下記(1)および(2)を満たす。
(1)粉末X線回折分析において、(002)面の回折ピークの半価幅が2.0°~6.0°である。
(2)ラマンスペクトルにおける1560~1600cm-1の範囲内での最大ピーク強度G、1310~1350cm-1の範囲内での最大ピーク強度Dの比率(G/D比)が0.5~2.0以下である。
カーボンナノチューブは、グラフェンシートを丸めて円筒状にしたような構造をしており、それが単層の場合は単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層の場合は多層カーボンナノチューブ(MWCNT)と呼ばれ、電子顕微鏡等で1本1本のカーボンナノチューブを確認することができる。カーボンナノチューブは、カーボンナノチューブ繊維同士で一次凝集して、絡み合ったり、バンドル状の一次凝集体を形成したりするが、一次凝集体が凝集して二次以上の凝集体を形成することもある。
[X線回折ピークの半価幅]
カーボンナノチューブ(B)の(002)面の回折ピークの半価幅は、2.0°~6.0°であり、より好ましくは、2.0°~5.0°である。上記範囲であることで、電磁波吸収性が良好な電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物となる。
半価幅が2.0°以上であることで、カーボンナノチューブの層数が少なくなり、カーボンナノチューブのアモルファス部分が減り、結晶性が高まるため、カーボンナノチューブの電磁波吸収性能が向上する。また半価幅が6.0°以下であることでカーボンナノチューブ同士の凝集力を抑制したまま、比表面積が大きく結晶性が高いカーボンナノチューブとなるため高い分散性を維持したまま電磁波吸収性能を向上させることができる。
カーボンナノチューブ(B)の(002)面は2θが25°±2°の位置に検出され、炭素六角網面の面間距離によって変化し、ピーク位置が高角側であるほど炭素六角網面の距離が近いことから、構造の黒鉛的規則性が高いことが示される。また、上記ピークがシャープである(半値幅が小さい)ほど、結晶子サイズが大きく、結晶構造が発達していることを示すものである。
カーボンナノチューブ(B)の半価幅は次のように求められる。
まず、カーボンナノチューブ(B)を所定のサンプルホルダーに表面が平らになるように詰め、粉末X線回折分析装置にセットし、5°から80°までX線源の照射角度を変化させ測定する。X線源としては例えばCuKα線が用いられる。ステップ幅は0.010°、計測時間は1.0秒である。その時にピークが現れる回折角2θを読み取ることでカーボンナノチューブ(B)の評価が可能である。グラファイトでは通常2θが26°付近にピークが検出され、これが層間回折によるピークであることが知られている。カーボンナノチューブ(B)もグラファイト構造を有するため、この付近にグラファイト層間回折によるピークが検出される。ただし、カーボンナノチューブは円筒構造であるために、その値はグラファイトとは異なってくる。その値2θが25°±2°の位置にピークが出現することで単層ではなく、多層構造を有している組成物を含んでいることが判断できる。この位置に出現するピークは多層構造の層間回折によるピークであるため、カーボンナノチューブ(B)の層数を判断することが可能となる。単層カーボンナノチューブは層数が1枚しなないので、単層カーボンナノチューブのみでは25°±2°の位置にピークは出現しない。しかしながら、単層カーボンナノチューブであっても、100%単層カーボンナノチューブということはなく、多層カーボンナノチューブ等が混入している場合は2θが25°±2°の位置にピークが出現する場合がある。
本実施形態のカーボンナノチューブ(B)は、2θが25°±2°の位置にピークが出現する。また粉末X線回折分析により検出される25°±2°のピークの半価幅からも層構成を解析することができる。すなわち、このピークの半価幅が小さいほどカーボンナノチューブ(B)の層数が多いと考えられる。逆にこのピークの半価幅が大きいほど、カーボンナノチューブの層数が少ないと考えられる。
本実施形態のカーボンナノチューブ(B)は、粉末X線回折分析を行ったときに、回折角2θ=25°±2°にピークが存在し、この(002)面のピークの半価幅が2.0°~6.0°である。
[ラマンスペクトルのG/D比]
カーボンナノチューブ(B)は、ラマンスペクトルにおいて1560~1600cm-1の範囲内での最大ピーク強度をG、1310~1350cm-1の範囲内での最大ピーク強度をDとした際にG/D比が0.5~2.0である。特に好ましくは、0.5~1.0である。ラマンスペクトルにおいて1590cm-1付近に見られるラマンシフトは、グラファイト由来のGバンドと呼ばれ、1350cm-1付近に見られるラマンシフトはアモルファスカーボンやグラファイトの欠陥に由来のDバンドと呼ばれる。このG/D比が高いカーボンナノチューブほど、グラファイト化度が高い。G/D比が0.5未満では、アモルファスなカーボンナノチューブが多くなることで、カーボンナノチューブの電磁波吸収性能が低下し、G/D比が2.0よりも大きいと、カーボンナノチューブの結晶性が高いことで、樹脂中への分散性が低下し、結果として電磁波吸収性能が低下する。
G/D比は、顕微レーザーラマン分光光度計(日本分光(株)NRS-3100)に粉末試料を設置し、532nmのレーザー波長を用いて行う測定をもとに、1590cm-1付近のグラファイト構造由来のGバンドと1350cm-1付近の構造欠陥由来のDバンドのピークの積分値から算出できる。
[体積抵抗率]
さらに、カーボンナノチューブ(B)は、体積抵抗率が1.0×10-3~1.5×10-2Ω・cmであることが好ましく、体積抵抗率が1.0×10-3~1.0×10-2Ω・cmであることがより好ましい。カーボンナノチューブ(B)の体積抵抗率が上記範囲内にあることで、電磁波吸収性がより良好となる。カーボンナノチューブ(B)の体積抵抗率が1.0×10-3Ω・cm以上であることで、電磁波の反射を抑制したまま樹脂組成物の導電性が高くなるため、高い反射損失を維持したまま、透過損失を向上させることができるため好ましい。一方、カーボンナノチューブ(B)の体積抵抗率が1.0×10-2Ω・cm以下であることで、電磁波が吸収されやすくなり、透過損失が向上するために好ましい。
カーボンナノチューブ(B)の体積抵抗率は粉体抵抗率測定装置((株)三菱化学アナリテック社製:ロレスターGP粉体抵抗率測定システムMCP-PD-51))を用いて測定することができる。
[嵩密度]
カーボンナノチューブ(B)は、嵩密度が0.005~0.5g/mLであることが好ましい。上記範囲の嵩密度を有するカーボンナノチューブを使用した場合、熱可塑性樹脂(A)に対する分散性が良好となり、混練時の生産性に優れる。
なお、ここでいう嵩密度とは、測定装置としてスコットボリュームメータ(筒井理化学器機社製)を用い、カーボンナノチューブ粉末を測定装置上部より直円筒容器に流し入れ、山盛りになったところですり切った一定容積の試料質量を測定し、この質量と容器容積の比であり、下記の式[1]に基づいて算出される値である。
式[1]嵩密度(g/mL)=
(すり切った一定容積のカーボンナノチューブの質量(g))÷(容器容積(mL))
カーボンナノチューブ(B)は単層カーボンナノチューブ、2層またはそれ以上で巻いた多層カーボンナノチューブでも、これらが混在するものであってもよいが、コスト面および強度面から多層カーボンナノチューブであることが好ましい。また、カーボンナノチューブの側壁がグラファイト構造ではなく、アモルファス構造をもったカーボンナノチューブを用いても構わない。
カーボンナノチューブ(B)は、一般にレーザーアブレーション法、アーク放電法、化学気相成長法(CVD)、燃焼法などで製造できるが、どのような方法で製造したカーボンナノチューブでも構わない。特にCVD法は、通常、400~1000℃の高温下において、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、珪酸塩、珪藻土、アルミナシリカ、シリカチタニア、およびゼオライトなどの担体に鉄やニッケルなどの金属触媒を担持した触媒微粒子と、原料の炭素含有ガスとを接触させることにより、カーボンナノチューブを安価に、かつ大量に生産することができる方法であり、本発明に使用するカーボンナノチューブとしても好ましい。
<ワックス、脂肪族金属塩>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、さらにワックスおよび脂肪族金属塩の少なくともいずれかを用いることができる。
ワックスまたは脂肪族金属塩を用いることで、カーボンナノチューブ(B)と熱可塑性樹脂(A)を溶融混錬する際に、カーボンナノチューブの濡れ性が向上し、カーボンナノチューブを解し、高分散とすることができるために、電磁波吸収性能をより向上することができる。
ワックスとしては、天然ワックス、半合成ワックス、または合成ワックスが挙げられる。
天然ワックスとしては、パラフィンワックス、モンタンワックス、半合成ワックスとしてはエチレン-ビス-ステルアミド、アマイドワックス、合成ワックスとしてはポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。
ワックスの数平均分子量は、1,000~30,000であることが好ましく、より好ましくは1,000~1,0000である。
数平均分子量が1,000以上であると、カーボンナノチューブ(B)と熱可塑性樹脂(A)の混練の際、カーボンナノチューブの濡れ性が向上し、カーボンナノチューブを解すことができるために好ましい。数平均分子量が30,000以下であると、混練の際適度な溶融粘度となり、せん断力は強い状態で混練が可能となることで、カーボンナノチューブの再凝集を抑制しつつ、解すことが可能であるため、カーボンナノチューブが高分散となり電磁波吸収性能が向上するために好ましい。
なお、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC法)により測定された値(標準物質としてポリスチレン、溶離液としてテトラヒドロフランを用いて得られた測定値)である。
脂肪族金属塩としては、直鎖脂肪族モノカルボン酸の金属塩等が挙げられる。
直鎖脂肪族モノカルボン酸としては、ラウリル酸、パルチミン酸、ステアリン酸、オレイン酸、およびリシノレイン酸等が挙げられる。
金属としては、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、バリウム、およびアルミニウム等が挙げられる。
ワックスおよび脂肪族金属塩の含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、0.1~30質量部であることが好ましく、0.1~15質量部がより好ましい。0.1質量部以上であることで、カーボンナノチューブの分散性をより向上させることができ、30質量部以下であることで、最適な流動性が保てるため混練の際に、適切なせん断力をカーボンナノチューブに加えることができるため、分散性がより向上するために好ましい。
電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて耐候安定剤、帯電防止剤、染料、顔料、カップリング剤、結晶造核剤、樹脂充填材等を用いることができる。
なお、電磁波吸収材料としては、本発明の効果を損なわない範囲で、カーボンナノチューブ(B)以外のカーボンナノチューブやカーボンブラック等を含んでもよいが、電磁波吸収性能の点から、電磁波吸収材料100質量%中、カーボンナノチューブ(B)が多いほど好ましく、より好ましくは、50~100質量%、より好ましくは70~100質量%、さらに好ましくは90~100質量%である。
すなわち、カーボンナノチューブ(B)以外の電磁波吸収材料の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
カーボンナノチューブの分散性が悪い状態であると、実用範囲内の電磁波吸収性能を達成しようとすると、高添加量が必要となってしまう。しかし高添加になることで透過損失性能は向上するが、電磁波を反射してしまうため、電磁波吸収性能は低下する。また、カーボンナノチューブよりも導電性能の劣るカーボンブラックを使用する場合には、カーボンナノチューブ以上の高添加が必須となる。これら電磁波吸収材料が樹脂組成物中に高濃度となることで、樹脂組成物の流動性が低下し、分配不良によって成形品における均一な電磁波吸収性能が得られなくなる場合がある。
本発明の電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではない。
例えば、熱可塑性樹脂(A)と、カーボンナノチューブ(B)、更に必要に応じて添加剤等を加え、ヘンシェルミキサーやタンブラー、ディスパー等で混合しニーダー、ロールミル、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、シュギミキサー、バーティカルグラニュレーター、ハイスピードミキサー、ファーマトリックス、ボールミル、スチールミル、サンドミル、振動ミル、アトライター、バンバリーミキサーのような回分式混練機、二軸押出機、単軸押出機、ローター型二軸混練機等で混合や溶融混練し、ペレット状、粉体状、顆粒状あるいはビーズ状等の形状の樹脂組成物を得ることができる。
本発明では、溶融混錬に二軸押出機を用いるのが好ましい。
電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物は、揮発成分を含まないことが好ましい。
電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物100質量%中、溶剤や低分子量成分等の揮発成分は5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下がより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、カーボンナノチューブ(B)を用いることで、溶融混錬により、熱可塑性樹脂(A)中に、カーボンナノチューブが均一に分配され、面内バラつきのない、電磁波吸収能に優れた成形体が形成可能となる。
本発明の電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物は、カーボンナノチューブ(B)を比較的高濃度に含有し、成形時に熱可塑性樹脂(A)で希釈されるマスターバッチとしてもよいし、カーボンナノチューブ(B)の濃度が比較的低く、熱可塑性樹脂(A)で希釈せずにそのままの組成で成形に供されるコンパウンドであってもよい。添加コストや在庫コスト等の点から、高濃度化できるマスターバッチであることが好ましい。マスターバッチは、取り扱いが容易なペレット状が好ましい。
カーボンナノチューブ(B)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、0.1~30質量部であることが好ましい。
マスターバッチの場合、カーボンナノチューブ(B)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、10~30質量部であることが好ましく、より好ましくは10~25質量部である。カーボンナノチューブ(B)の含有量が30質量部以下であることで、カーボンナノチューブの再凝集を抑制でき、分散性の良いマスターバッチを提供することが可能となる。
コンパウンドの場合、カーボンナノチューブ(B)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部がより好ましい。0.1質量部以上であれば、樹脂組成物の電磁波の吸収性能が上がることで透過損失がより向上し、カーボンナノチューブ(B)の含有量が10質量部以下であれば、電磁波の反射性を抑えつつ、吸収性能を向上させることができ、さらに良好な流動性を維持できるため、カーボンナノチューブの分配性が良く、均一な電磁波吸収性能を得ることが可能となるために好ましい。
《成形体》
本発明の成形体は、電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物から形成され、電磁波吸収体に用いられる。
成形体は、電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物であるコンパウンド、またはマスターバッチと希釈樹脂を、通常50℃~350℃に設定した成形機にて溶融混合後に成形体の形状を形成し冷却することで得ることができる。成形機の温度は、熱可塑性樹脂(A)が軟化する温度であれば問題ないが、好ましくは主成分となる熱可塑性樹脂の軟化点より30℃以上高い温度である。
成形体の形状は、板状、棒状、繊維、チューブ、パイプ、ボトル、フィルムなどを得ることができる。
電磁波吸収体は、入射した電磁波のエネルギーを吸収体内部で熱エネルギーに変換し、吸収する。電磁波シールド材とは異なり、電磁波吸収体では、成形体表面で電波を反射することなく、成形体内部で電波を吸収することを目的とする。
電磁波吸収体は、高速道路の自動料金収受システム(ETC)、または車載レーダーや空港等で防犯チェックとして衣服の下を透視する全身スキャナー、列車のワンマン運転時において、プラットホーム上の監視カメラの映像伝送等に用いられるミリ波レーダー装置、船舶マストのレーダー偽像防止等に用いられる。
なかでも、本発明における電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物により形成される成形体は、周波数60~90GHz帯のミリ波帯域の電磁波吸収性能にも優れるため、ミリ波レーダー装置にも好適に用いることができる。
成形体のカーボンナノチューブ(B)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部がより好ましい。0.1質量部以上であれば、樹脂組成物の電磁波の吸収性能が上がることで、成形体の透過損失がより向上し、カーボンナノチューブ(B)の含有量が10質量部以下であれば、電磁波の反射性を抑えつつ、吸収性能を向上させることができ、さらに良好な流動性を維持できるため、カーボンナノチューブの分配性が良く、均一な電磁波吸収性能を有する成形体を得ることが可能となるために好ましい。
また、成形方法は、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファー成形、T-ダイ成形やインフレーション成形のようなフィルム成形、カレンダー成形、紡糸等を用いることができる。
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明を何ら制限するものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。
なお、カーボンナノチューブの粉末X線回折分析、ラマン分光分析及び体積抵抗率と熱可塑性樹脂(A)の融点及び分子量とは次の方法で測定した。
<カーボンナノチューブの粉末X線回折分析>
アルミ試料板(外径φ46mm、厚さ3mm、試料部φ26.5mm、厚さ2mm)の中央凹部にカーボンナノチューブをのせ、スライドガラスを用いて、平坦化した。その後、試料を載せた面に薬包紙をのせ、さらにアルミハイシートパッキンをのせた面に対して、1トンの荷重をかけて平坦化した。その後、薬包紙とアルミハイシートパッキンを除去して、カーボンナノチューブの粉末X線回折分析用サンプルを得た。その後、X線回折装置(Ultima2100、株式会社リガク社製)にカーボンナノチューブの粉末X線回折分析用サンプルを設置し、15°から35°まで操作し、分析を行った。サンプリングは0.02°毎に行い、スキャンスピードは2°/分とした。電圧は40kV、電流は40mA、X線源はCuKα線とした。この時得られる回折角2θ=25°±2°に出現するカーボンナノチューブの(002)面のプロットをそれぞれ11点単純移動平均し、そのピークの半価幅をカーボンナノチューブの半価幅とした。ベースラインは2θ=16°および2θ=34°のプロットを結んだ線とした。
<カーボンナノチューブのラマン分光分析>
顕微レーザーラマン分光光度計(日本分光(株)NRS-3100)にカーボンナノチューブを設置し、532nmのレーザー波長を用いて測定を行った。測定条件は取り込み時間60秒、積算回数2回、減光フィルタ10%、対物レンズの倍率20倍、コンフォーカスホール500、スリット幅100μm、測定波長は100~3000cm-1とした。測定用のカーボンナノチューブはスライドガラス上に分取し、スパチュラを用いて平坦化した。得られたピークの内、スペクトルで1560~1600cm-1の範囲内で最大ピーク強度をG、1310~1350cm-1の範囲内で最大ピーク強度をDとし、G/Dの比をカーボンナノチューブのG/D比とした。
<カーボンナノチューブの体積抵抗率>
粉体抵抗率測定装置((株)三菱化学アナリテック社製:ロレスターGP粉体抵抗率測定システムMCP-PD-51))を用い、試料質量1.2gとし、粉体用プローブユニット(四探針・リング電極、電極間隔5.0mm、電極半径1.0mm、試料半径12.5mm)により、印加電圧リミッタを90Vとして、種々加圧下の導電性粉体の体積抵抗率[Ω・cm]を測定した。1g/cmの密度におけるカーボンナノチューブの体積抵抗率の値について評価した。
<カーボンナノチューブの比表面積>
カーボンナノチューブを電子天秤(sartorius社製、MSA225S100DI)を用いて、0.03g計量した後、110℃で15分間、脱気しながら乾燥させた。その後、全自動比表面積測定装置(MOUNTECH社製、HM-model1208)を用いて、カーボンナノチューブの比表面積を測定した。
<熱可塑性樹脂の融点>
示差走査熱量測定(DSC)における融解ピーク温度であり、セイコーインスツルメンツ社製DSC6200を用いて加熱速度:10℃/分にて測定した。
<熱可塑性樹脂の重量平均分子量>
島津製作所製ProminenceGPCシステムを用いて、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)法により、分子量分布曲線を測定し、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を、ポリスチレン換算の値から算出した。分子量分布(Mw/Mn)は、得られた重量平均分子量及び数平均分子量の値から算出した。ポリスチレン換算に使用した標準ポリスチレンには、VARIAN社製ポリスチレンを用い、カラムは東ソー社製TSKgelGMH-HTを用い、測定時のキャリアにはオルトジクロロベンゼンを用いた。カラム温度は140℃、キャリア流速は1.0mLでおこなった。
実施例で使用した材料は以下のとおりである。
<熱可塑性樹脂(A)>
・(A-1)ノバテック MA1B(日本ポリプロ社製ポリプロピレン樹脂、融点165℃、重量平均分子量312,000)
・(A-2)カーネルKJ-640T(日本ポリエチレン社製ポリエチレン樹脂、融点58℃、重量平均分子量43,300)
・(A-3)UBEナイロン1030B(宇部興産社製ポリアミド樹脂、融点225℃、重量平均分子量54,000)
・(A-4)ジュラネックス700FP(ポリプラスチックス社製ポリエステル樹脂、融点224℃、重量平均分子量104,000)
・(A-5)ニチゴーポリエスターSP154(三菱ケミカル社製ポリエステル樹脂融点120℃、重量平均分子量19,000)
<ワックス>
・(C-1)ハイワックスNP056(三井化学社製、ポリエチレンワックス)
・(C-2)Licowax E(クラリアント社製、ポリエステルワックス)
<脂肪族金属塩>
・(D-1)ステアリン酸マグネシウム(淡南化学社製、脂肪族金属塩)
<カーボンナノチューブ>
・(B-1)CM‐130(Hanhwa Chemical hanos社製)
・(B-2)SMW210(SouthWest NanoTechnologies社製)
・(B-3)Flotube7010(CNano社製)
・(B-4)製造例1のカーボンナノチューブ
・(B-5)製造例2のカーボンナノチューブ
・(B-6)AMC(宇部興産社製)
・(B-7)製造例3のカーボンナノチューブ
・(B’-1)製造例4のカーボンナノチューブ
・(B’-2)製造例5のカーボンナノチューブ
・(B’-3)製造例6のカーボンナノチューブ
Figure 2022168934000001
(製造例1:B-4)
<カーボンナノチューブ(B-4)合成用触媒>
水酸化コバルト60質量部、酢酸マグネシウム・四水和物138質量部、炭酸マンガン16.2質量部、アエロジル(AEOSIL(登録商標)200、日本アエロジル株式会社製)4.0質量部をそれぞれ耐熱性容器に秤取り、電気オーブンを用いて、170±5℃の温度で1時間乾燥させて水分を蒸発させた後、粉砕機(ワンダークラッシャーWC-3、大阪ケミカル株式会社製)を用いてSPEEDのダイヤルを3に調整し、1分間粉砕した。その後、粉砕したそれぞれの粉末を粉砕機(ワンダークラッシャーWC-3、大阪ケミカル株式会社製)を用いて、SPEEDのダイヤルを2に調整し、30秒間混合してカーボンナノチューブ合成用触媒前駆体(B-4)を作製した。そして、カーボンナノチューブ合成用触媒前駆体(B-4)を耐熱性容器に移し替え、マッフル炉(FO510、ヤマト科学株式会社製)を使用し、空気雰囲気、450±5℃ の条件で30分間焼成した後、乳鉢で粉砕してカーボンナノチューブ合成用触媒(B-4)を得た。
<カーボンナノチューブ(B-4)の合成>
加圧可能で、外部ヒーターで加熱可能な、内容積が10Lの横型反応管の中央部に、前記カーボンナノチューブ合成用触媒(B-4)2gを散布した石英ガラス製耐熱皿を設置した。窒素ガスを注入しながら排気を行い、反応管内の空気を窒素ガスで置換し、横型反応管中の雰囲気を酸素濃度1体積%以下とした。次いで、外部ヒーターにて加熱し、横型反応管内の中心温度が680℃ になるまで加熱した。680℃に到達した後、炭素源としてプロパンガスを毎分2Lの流速で反応管内に導入し、1時間接触反応させた。反応終了後、反応管内のガスを窒素ガスで置換し、反応管内のガスを窒素ガスで置換し、反応管の温度を100℃以下になるまで冷却し取り出すことで、カーボンナノチューブ(B-4)を得た。
(製造例2:B-5)
<カーボンナノチューブ(B-5)の合成>
カーボンナノチューブ(B-1)を120Lの耐熱性容器に10kgを計量し、カーボンナノチューブ(B-1)が入った耐熱性容器を炉内に設置した。その後、炉内に窒素ガスを導入して、陽圧を保持しながら、炉内中の空気を排出した。炉内の酸素濃度が0.1% 以下になった後、30時間かけて、1600℃まで加熱した。炉内温度を1600℃に保持しながら、塩素ガスを50L/分の速度で50時間導入した。その後、窒素ガスを50L/分で導入して陽圧を維持したまま冷却し、カーボンナノチューブ(B-5)を得た。
(製造例3:B-7)
<カーボンナノチューブ(B-7)の合成>
カーボンナノチューブ(B-1)を120Lの耐熱性容器に10kgを計量し、カーボンナノチューブ(B-1)が入った耐熱性容器を炉内に設置した。その後、窒素ガスを注入しながら排気を行い、反応管内の空気を窒素ガスで置換し、横型反応管中の雰囲気温度が700℃になるまで加熱した。700℃に到達した後、炭化水素としてエチレンガスを毎分2Lの流速で反応管内に導入し、15分間接触反応させた。反応終了後、反応管内のガスを窒素ガスで置換し、反応管の温度を100℃以下になるまで冷却し取り出すことでカーボンナノチューブ(B-7)を得た。
(製造例4:B’-1)
<カーボンナノチューブ(B’-1)合成用触媒>
酢酸コバルト・四水和物200g、金属マンガン2.4g、および担持成分として酢酸マグネシウム・四水和物172gをビーカーに秤取り、水1488g加えて、均一になるまで撹拌した。耐熱性容器に移し替え、電気オーブンを用いて、190±5℃の温度で30分乾燥させ水分を蒸発させた後、乳鉢で粉砕してカーボンナノチューブ(B’-1)合成用触媒前駆体を得た。得られたカーボンナノチューブ(B’-1)合成用触媒前駆体400gを耐熱容器に秤取り、マッフル炉にて、空気中500℃±5℃雰囲気下で30分焼成した後、乳鉢で粉砕してカーボンナノチューブ(B’-1)合成用触媒を得た。
<カーボンナノチューブ(B’-1)の合成>
加圧可能で、外部ヒーターで加熱可能な、内容積が10Lの横型反応管の中央部に、カーボンナノチューブ(B’-1)合成用触媒1.0gを散布した石英ガラス製耐熱皿を設置した。アルゴンガスを注入しながら排気を行い、反応管内の空気をアルゴンガスで置換し、横型反応管中の雰囲気を酸素濃度1体積%以下とした。次いで、外部ヒーターにて加熱し、横型反応管内の中心部温度が700℃になるまで加熱した。700℃に到達した後、0.1L/分の流速で1分間、水素ガスを反応管内に導入し、触媒を活性化処理した。その後、炭素源としてエタノールを1L/分の流速で反応管内に導入し、4時間接触反応させた。反応終了後、反応管内のガスをアルゴンガスで置換し、反応管内の温度を100℃以下になるまで冷却し、得られたカーボンナノチューブを採取した。得られたカーボンナノチューブは、導電性、分散性を比較するため、80メッシュの金網で粉砕ろ過した。
(製造例5:B’-2)
<カーボンナノチューブ(B’-2)合成用触媒>
酢酸マグネシウム4水和物1000質量部を耐熱性容器に秤取り、電気オーブンを用いて、170±5℃の雰囲気温度で6時間乾燥させた後、粉砕機(サンプルミルKIIW-I型、株式会社ダルトン社製)を用いて、1mmのスクリーンを装着し、粉砕し、酢酸マグネシウム乾燥粉砕品を得た。酢酸マグネシウム乾燥粉砕品45.8部、炭酸マンガン8.1部、酸化珪素(SiO、日本アエロジル社製:AEROSIL(登録商標)200)1.0部、スチールビーズ(ビーズ径2.0mmφ)200部をSMサンプル瓶(株式会社三商製)に仕込み、レッドデビル社製ペイントコンディショナーを用いて、30分間粉砕混合処理を行った。その後、ステンレスふるいを使用し、粉砕混合した粉末とスチールビーズ(ビーズ径2.0mmφ)を分離し、カーボンナノチューブ(B’-2)合成用触媒担持体を得た。その後、水酸化コバルト(II)30質量部を耐熱性容器に秤取り、170±5℃の雰囲気温度で2時間乾燥させ、CoHOを含むコバルト組成物を得た。さらにその後、カーボンナノチューブ(B’-2)合成用触媒担持体54.9質量部とコバルト組成物29質量部を粉砕機(ワンダークラッシャーWC-3、大阪ケミカル株式会社製)に仕込み、標準フタを装着し、SPEEDダイヤルを2に調節し、30秒間粉砕混合し、カーボンナノチューブ(B’-2)合成用触媒前駆体を得た。カーボンナノチューブ(B’-2)合成用触媒前駆体を耐熱性容器に移し替え、マッフル炉(FO510、ヤマト科学株式会社製)を使用し、空気雰囲気、450±5℃の条件で30分間焼成した後、乳鉢で粉砕してカーボンナノチューブ(B’-2)合成用触媒を得た。
<カーボンナノチューブ(B’-2)の合成>
加圧可能で、外部ヒーターで加熱可能な、内容積が10Lの横型反応管の中央部に、カーボンナノチューブ(B’-2)合成用触媒1gを散布した石英ガラス製耐熱皿を設置した。窒素ガスを注入しながら排気を行い、反応管内の空気を窒素ガスで置換し、横型反応管中の雰囲気温度が680℃になるまで加熱した。680℃ に到達した後、炭化水素としてエチレンガスを2L/分の流速で反応管内に導入し、7分間接触反応させた。反応終了後、反応管内のガスを窒素ガスで置換し、反応管の温度を100℃以下になるまで冷却し取り出すことでカーボンナノチューブ(B’-2)前駆体を得た。カーボンナノチューブ(B’-2)前駆体をカーボン製の耐熱性容器に1000gを計量した。その後、カーボンナノチューブ(B’-2)前駆体が入ったカーボン製の耐熱性容器を炉内に設置した。その後、炉内を1Torr(133Pa)以下に真空排気し、更にカーボン製ヒーターに通電を行い、炉の内部を1000℃まで昇温させた。次に、アルゴンガスを炉内に導入して、炉内の圧力が70Torr(9.33kPa)となるように調整し、その後1L/分のアルゴンガスを炉内に導入した。その後、アルゴンガスに加えて、塩素ガスを導入し、炉内の圧力が90Torr(11.99kPa)となるように調整し、当該圧力となった後は0.3L/分の塩素ガスを炉内に導入した。そのままの状態で、1時間保持した後に通電を停止し、さらにアルゴンガスと塩素ガスとの導入を停止して、真空冷却した。最後に、1Torr(133Pa)以下の圧力で真空冷却を12時間行った後、炉内が室温まで冷却されていることを確認したうえで大気圧になるまで窒素ガスを炉内に導入し、耐熱性容器を取り出し、カーボンナノチューブ(B’-2)を得た。
(製造例6:B’-3)
<カーボンナノチューブ(B’-3)の合成>
カーボンナノチューブ(B-1)を120Lの耐熱性容器に10kgを計量し、カーボンナノチューブ(B-1)が入った耐熱性容器を炉内に設置した。その後、炉内に窒素ガスを導入して、陽圧を保持しながら、炉内中の空気を排出した。炉内の酸素濃度が0.1%以下になった後、30時間かけて、1800℃まで加熱した。炉内温度を1800℃に保持しながら、塩素ガスを50L/分の速度で50時間導入した。その後、窒素ガスを50L/分で導入して陽圧を維持したまま冷却し、カーボンナノチューブ(B’-3)を得た。
(実施例1)
(電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物の製造)
熱可塑性樹脂(A-1)88%、カーボンナノチューブ(B-1)3%、分散剤(C-1)9%となるように混合して溶融混錬し、二軸押出機(日本製鋼所社製)にて230℃で押出し、造粒し電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物を得た。
(成形体の作製)
得られた電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物をシリンダー設定温度220℃、金型温度40℃の射出成型機(東芝機械社製)にて成形し、縦90mm×横110mm×厚み4mmの成形体を作製した。
(実施例2~13)
表2に示す材料と配合量(質量部)にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様の方法で電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物および成形体をそれぞれ得た。
なお、実施例10~12では、二軸押出機(日本製鋼所社製)にて250℃で押出して電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物を製造し、シリンダー設定温度250℃、金型温度80℃の射出成型機(東芝機械社製)にて成形体を作製した。
(実施例14)
(電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物(マスターバッチ)の製造)
熱可塑性樹脂(A-1)55%、カーボンナノチューブ(B-1)15%、分散剤(C-1)30%となるように混合して溶融混錬し、二軸押出機(日本製鋼所社製)にて230℃で押出し、造粒し電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物のマスターバッチを得た。
(成形体の作製)
得られた電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物のマスターバッチをカーボンナノチューブ(B-1)3%となるように熱可塑性樹脂(A-1)で希釈し、シリンダー設定温度220℃、金型温度40℃の射出成型機(東芝機械社製)にて成形し、縦90mm×横110mm×厚み4mmの成形体を作製した。
(比較例1)
熱可塑性樹脂(A-1)80%、カーボンナノチューブ(B-1)5%、分散剤(C-1)15%となるように混合して溶融混錬し、単軸押出機(日本製鋼所社製)にて230℃で押出し、造粒し電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物を得た。
(成形体の作製)
得られた電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物をシリンダー設定温度220℃、金型温度40℃の射出成型機(東芝機械社製)にて成形し、縦90mm×横110mm×厚み4mmの成形体を作製した。
(比較例2)
表3に示す材料と配合量(質量部)にそれぞれ変更した以外は、比較例1と同様の方法で電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物および成形体をそれぞれ得た。
なお、二軸押出機(日本製鋼所社製)にて250℃で押出して電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物を製造し、シリンダー設定温度250℃、金型温度80℃の射出成型機(東芝機械社製)にて成形体を作製した。
(比較例3)
熱可塑性樹脂(A-1)80%、カーボンナノチューブ(B-1)5%、分散剤(C-1)15%となるように混合して溶融混錬し、二軸押出機(日本製鋼所社製)にて230℃で押出し、造粒し電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物を得た。
(成形体の作製)
得られた電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物をシリンダー設定温度220℃、金型温度40℃の射出成型機(東芝機械社製)にて成形し、縦90mm×横110mm×厚み4mmの成形体を作製した。
(比較例4~6)
表1に示す材料と配合量(質量部)にそれぞれ変更した以外は、比較例3と同様の方法で電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物および成形体をそれぞれ得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物の物性値および評価結果を下記の方法で求めた。結果を表4に示す。
<シート表面の最大高さSz測定>
樹脂組成物に使用した主成分となる熱可塑性樹脂(A)の融点より30℃高い温度にてTダイ成形機を使用することにより厚み100μmのシートを作製した。
得られたシートを用い、Taylor/Hobson社製、タリサーフCCI MP-HSを用い、測定長が2.5mm×2.5mm、ロバストガウシアンフィルタが0.08mm、とした際の最大高さSz(μm)を測定した。
(電磁波吸収性能)
電磁波吸収性能の指標として、ミリ波周波数帯の反射損失、透過損失(dB)を以下の方法で測定した。
ミリ波送信装置として、E8257D+E8257DS12(出力:4dBm)、ミリ波受信装置としてN9030A+M1970V、ホーンアンテナとしてAAHR015(WR15、AET,INC)(すべてキーサイトテクノロジー社製)を用い、温度24.8℃、相対湿度48%の環境下で、実施例及び比較例で得られた成形体について、測定周波数77GHzにおける反射損失、透過損失を測定した。電磁波吸収性能の評価は下記の基準で行った。
[評価基準]
◎:反射損失が-8dB以下かつ透過損失が-15dB以下
○:反射損失が-5dB以下かつ透過損失が-10dB以下
×:反射損失が-5dBより大きいまたは透過損失が-10dBより大きい
(面内バラつき)
流動性を面内バラつきにより、成形体の4隅におけるミリ波周波数帯の透過損失(dB)から、以下の方法で測定、評価した。
ミリ波送信装置として、E8257D+E8257DS12(出力:4dBm)、ミリ波受信装置としてN9030A+M1970V、ホーンアンテナとしてAAHR015(WR15、AET,INC)(すべてキーサイトテクノロジー社製)を用い、温度24.8℃、相対湿度48%の環境下で、実施例及び比較例で得られた成形体について、測定周波数77GHzにおける透過損失を測定した。流動性の評価は下記の基準で行った。
[評価基準]
◎:成形体4隅における透過損失の最大値と最小値の差が1dB以下
○:成形体4隅における透過損失の最大値と最小値の差が1dBより大きく3dB以下
×:成形体4隅における透過損失の最大値と最小値の差が3dBより大きい
Figure 2022168934000002
Figure 2022168934000003
Figure 2022168934000004
上記の評価結果より、本発明の電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物ならびにそれを用いた成形体は、特定周波数60~90GHz帯の反射損失および透過損失が大きいだけでなく、流動性が高く、成形体中での面内バラつきがなく均一な電磁波吸収性能が得られる成形体を形成可能であることが確認できた。
そのため、一般的な電磁波吸収体に用いることができるだけでなく、ミリ波吸収を要求されるレーダー装置等にも好適に用いることができるといえる。

Claims (6)

  1. 熱可塑性樹脂(A)と、カーボンナノチューブ(B)を含む熱可塑性樹脂組成物であり、
    カーボンナノチューブ(B)は、下記(1)および(2)を満たし、
    熱可塑性樹脂組成物から形成してなる厚み100μmのシートは、ISO25178に準拠して測定されるシート表面の最大高さSzが5μm以下であることを特徴とする電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物。

    (1)粉末X線回折分析において、(002)面の回折ピークの半価幅が2.0°~6.0°である。
    (2)ラマンスペクトルにおける1560~1600cm-1の範囲内での最大ピーク強度G、1310~1350cm-1の範囲内での最大ピーク強度Dの比率(G/D比)が0.5~2.0である。
  2. カーボンナノチューブ(B)は、BET比表面積が200~600m/gであることを特徴とする請求項1記載の電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物。
  3. カーボンナノチューブ(B)は、体積抵抗率が1.0×10-3~3.0×10-2Ω・cmであることを特徴とする請求項1または2記載の電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物。
  4. さらに、ワックスおよび脂肪族金属塩の少なくともいずれかを含む請求項1~3いずれか1項記載の電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物。
  5. 熱可塑性樹脂(A)は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群より選ばれるいずれかを含むことを特徴とする請求項1~4いずれか1項記載の電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物。
  6. 請求項1~5いずれか1項記載の電磁波吸収体用熱可塑性樹脂組成物から形成してなる、成形体。
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