JP2007019287A - 誘電損失材料とそれを用いた電磁波吸収体 - Google Patents

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拓也 岡田
Masami Yamashita
正己 山下
Junji Sugino
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Abstract

【課題】 軽量で、高周波帯域で吸収周波数帯の広い優れた電磁波吸収特性を示す誘電損失材料およびそれを用いた電磁波吸収体を提供する。
【解決手段】 電気伝導度が5×10−6S/cm以上1×10S/cm以下である導電性材料10〜70体積%と絶縁性材料とを含有する誘電損失材料。前記導電性材料が炭化ホウ素、導電性カーボン粉末および炭化珪素の中から選ばれた少なくとも1種であり、導電性カーボン粉末がホウ素固溶カーボンブラックであることがより好ましく、絶縁性材料が熱硬化性樹脂であることが好ましい。さらに、前記誘電損失材料を用いた誘電損失を有するシートや、前記誘電損失を有するシートと磁性損失を有するシートを積層した電磁波吸収体である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、広帯域移動アクセスシステムなどに好適なギガヘルツ帯における吸収特性に優れる誘電損失材料とそれを用いた電磁波吸収体に関する。
近年、半導体やエレクトロニクス分野において、コンピューターや民生用電子機器、さらには携帯電話などのいわゆる情報家電に使用される電磁波の高周波化が顕著であり、1秒間に10億回以上振動するギガヘルツ(GHz)帯域の電磁波も頻繁に使用されるようになってきた。
また、高度道路交通システム(ITS)の世界では、専用狭域通信(DSRC)と呼ばれる通信方式を用い、路側機(路側に設置された無線装置)と車載器(車両に搭載された無線装置)の間で無線通信を行う。DSRCは現在、高速道路における自動料金収受システム(ETC)で実用化されているが、今後さらにガソリンスタンド、カーフェリーまたはサービスエリアにおける電子決済や、運行管理・物流管理、各種の情報提供等に応用が期待されている。
さらに、高速無線LAN、無線アクセス及びAV機器等の情報家電やパーソナルコンピューターなどを接続する無線ホームリンクを実現するために、中心周波数が数〜数10GHzで、かつ帯域に幅を持つ電磁波を用いた、広帯域移動アクセスシステムの導入が検討されている。
これらの用途で用いられる電磁波は、高周波であるために高出力・高密度の信号搬送を可能にする反面、ノイズとして他の機器に取り込まれると、情報漏洩、誤動作その他各種の電波障害を引き起こす懸念があるため、電子機器や通信機器が外部から侵入する電磁波に干渉されないように、あるいはこれらの機器が発生する電磁波が過剰に外部に漏洩しないように、電磁波シールド材や、電磁波吸収体が用いられる。とりわけ電磁波吸収体は、入射してきた電磁波を熱エネルギーに変換して、透過あるいは反射する電磁波の強度を大幅に減衰するものである。電磁波吸収体の材料として、従来フェライト或いは磁性金属などの磁性材料が使用されている。これらの材料は、粉末状として樹脂、ゴム或いは塗料などのマトリックス材料中に分散、複合化した状態とし、電磁波を吸収したい部位に貼付または塗布する形態で用いられている(特許文献1、2参照)。また、それら磁性損失型の電磁波吸収体以外に、多孔質炭化珪素を用いたGHz帯対応電磁波吸収体の技術も開示されている(特許文献3参照)。
特開平8−340191号公報 特開2002−185180号公報 特開2003−226579号公報
しかしながら、磁性材料は比重が大きいため、有機材料中に分散する際に比重差によって沈降が生じやすく均一な複合材料の成形性に難があると共に、電磁波吸収体の重量が大きくなり小型移動機器などに使用される場合に機動性が低下する。一方、特許文献3で開示されている多孔質炭化珪素を用いた電磁波吸収体は軽量ではあるが、その吸収性能は15dB以下であり、一般に電磁波吸収体として必要とされる20dBには不足している。
本発明は、特定の電気伝導度を有する導電性材料と絶縁性材料からなる誘電損失材料を用いた誘電損失シートと、磁性損失を有するシートを積層することにより、軽量で、高周波帯域で吸収周波数帯の広い優れた電磁波吸収特性を示す電磁波吸収体を提供する。
すなわち、本発明は、(1)電気伝導度が5×10−6S/cm以上1×10S/cm以下である導電性材料と絶縁性材料とを含有する誘電損失材料、(2)導電性材料が炭化ホウ素、導電性カーボン粉末および炭化珪素の中から選ばれた少なくとも1種である(1)の誘電損失材料、(3)導電性カーボン粉末がホウ素固溶カーボンブラックである(2)の誘電損失材料、(4)絶縁性材料が熱可塑性樹脂である(1)〜(3)のいずれかの誘電損失材料、(5)(1)〜(4)のいずれかの誘電損失材料を用いた誘電損失を有するシートからなる電磁波吸収体、(6)(1)〜(4)のいずれかの誘電損失材料を用いた誘電損失を有するシートと磁性損失を有するシートを積層した電磁波吸収体、(7)誘電損失を有するシートの比誘電率実数部よりも磁性損失を有するシートの比誘電率実数部が小さい(6)の電磁波吸収体、(8)誘電損失を有するシートの比誘電率実数部よりも磁性損失を有するシートの比誘電率実数部が2/3以下である(7)の電磁波吸収体、(9)磁性損失を有するシートがNi系フェライト粉を含有する(6)〜(8)のいずれかの電磁波吸収体、(10)(5)〜(9)のいずれかの電磁波吸収体を使用した広帯域移動アクセスシステム、である。
本発明の誘電損失材料を用いた電磁波吸収体は、軽量で、高周波帯域で吸収周波数帯の広い優れた電磁波吸収特性を示す効果を奏する。
本発明は、電気伝導度が5×10−6S/cm以上1×10S/cm以下である導電性材料と絶縁性材料とを含有する誘電損失材料を用いた誘電損失を有するシートと磁性損失を有するシートを積層してなる電磁波吸収体である。
電磁波吸収特性は、材料の有する電気伝導性、誘電的性質あるいは磁気的性質が関与するとされ、具体的には、電磁波が電磁波吸収体に入射した際に生じる電気抵抗による損失や誘電損失や磁気損失によって、電磁波の有するエネルギーが熱に変換されて吸収される。誘電損失の場合は、誘電損失に対応する吸収体の複素比誘電率(εr=εr’−jεr”)の虚部(εr”)が、磁気損失の場合は磁気損失に対応する吸収体の複素比透磁率(μr=μr’−jμr”)の虚部(μr”)が、大きな値を有さなければならない。ここで、jは虚数単位を示す。
一方、広帯域移動アクセスシステムまたはITSにおける不要電磁波吸収の場合に見られるように、波源からの距離が遠い位置すなわち遠方界における電磁波吸収において、電磁波が電磁波吸収体に入射するためには、空間と電磁波吸収体のインピーダンスが整合しなければならない。インピーダンスが整合するためには、電磁波の波長(λ)、電磁波吸収体の厚さ(d)、電磁波吸収体の複素比誘電率および複素比透磁率の関係が、無反射条件と呼ばれる下式に示す一定の条件に近づかなければならない。
1=(εr/εr)1/2×tanh(j×(2πd/λ)×(εrμr)1/2
ここで、εr及び、μrは複素数でありそれぞれ実数部(εr’、μr’)および虚数部(εr”、μr”)からなるので、それぞれの実数部および虚数部も相互に特定の関係を有さなければならない。いずれにしろ、所望の周波数において、ある程度の誘電損失、あるいは磁性損失を有することが必要とされる。
本発明の電磁波吸収体が高周波帯域で吸収周波数帯の広い、具体的には、周波数数100MHz〜数100GHzの電磁波を吸収する理由のひとつは、前記高周波数帯域において、本発明の電磁波吸収体の構成要素となっている、電気伝導度が5×10−6S/cm以上1×10S/cm以下である導電性材料と絶縁性材料を含有する誘電損失材料が、驚くべきことに比較的大きな誘電損失(εr”値)を有することに基づいている。
本発明では、誘電損失を有するシートと磁性損失を有するシートを積層することにより、上述の電磁波を吸収するために必要とされる無反射条件に近い条件を満たす範囲を広くすることができる。このため、吸収体の整合周波数帯域が広くなり、より広帯域の電磁波に対応することができる。
また、積層される磁性損失を有するシートの誘電率の実数部εr’値が誘電損失を有するシートのεr’値と比べ小さい方が、吸収帯域がより広範囲になるため好ましく、さらに、その比が2/3以下であるとより好ましい。
本発明に用いる導電性材料としては、電気伝導度が5×10−6S/cm以上1×10以下のものを少なくとも1種を使用することが好ましい。導電性材料は前記電気伝導度を有するものであれば特に限定されないが、中でも炭化ホウ素、炭化珪素などの導電性セラミックス材料を使用すると、電気伝導度が適当な値を有しGHz帯域の吸収特性が優れていると共に、電磁波吸収体の軽量化が可能であるためより好ましい。金属のように非常に高い電気伝導度を有するものを使用すると、誘電損失が所望の数MHz〜数100GHz帯域では小さくなってしまうために好ましくない。
本発明に用いる炭化ホウ素の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、炭化ホウ素粉末の製造方法としては、炭化ホウ素塊を合成した後これを粉砕、篩い分けすることによって製造することができる。炭化ホウ素塊を合成する方法は、ホウ酸などのホウ素分と石油コークスなどの炭素分とを混合した原料を、アーク炉、抵抗加熱炉、高周波加熱炉などで2200℃程度の高温まで加熱して反応させる方法が代表的であるが、本発明ではいずれの製法によるものでも構わない。
炭化ホウ素粉末のホウ素と炭素のモル比は、4、6.5、8、10または25が知られているが、本発明では、前記特定の電気伝導性を有する限り、いずれのモル比のものであっても構わない。
本発明に用いる炭化珪素の製造方法は、特に限定されるものではない。炭化珪素は、主にアチソン法によって合成されるα型炭化珪素と、竪型反応炉を用いて合成されるβ型炭化珪素があるが、本発明では、前記特定の電気伝導性を有する限り、そのいずれであっても構わない。
本発明に用いる導電性カーボン粉末は、前記特定の電気伝導性を有する限り、特に限定されないが、ホウ素固溶カーボンブラックを用いると、マトリックスへの分散性が良好であるためより好ましい。
本発明に用いる導電性材料の電気伝導度の測定方法は次のとおりである。直径16mm、厚さ3mmのステンレス製円板を、内径16mm、外径24mmの樹脂(ポリアセタール)製円筒にはめ込み、その上に導電性材料粉末1.0〜1.5gと、もう1枚の直径16mm、厚さ3mmのステンレス製円板を載せる。上下のステンレス円板の外側に銅箔を敷いた後、油圧プレスを用いて14.7MPaの圧力を加えて導電性材料粉末を圧縮する。加圧したままデジタルマルチメーターで上下の銅箔間の抵抗値を計測し、加圧開始1分後の抵抗値と、加圧時の導電性材料粉末の充填高さおよび樹脂円筒内径寸法から、導電性材料粉末の比抵抗(Ωcm)を算出し、逆数を電気伝導度(S/cm)とする。この測定法による電気伝導度が5×10−6S/cm未満あるいは1×10S/cmを超える導電性材料を絶縁性材料と混合した場合、得られる誘電損失材料は数100MHzから数100GHz帯での誘電損失が十分でなく、電磁波吸収体としての性能が不充分である。
導電性材料粉末は、樹脂、ゴム、塗料あるいは無機材料などの絶縁性材料に分散、複合化した場合、10〜70体積%含有することが好ましく、10体積%未満では得られる電磁吸収体の電磁波吸収特性が不十分となって実用面で制限されることが多く、70体積%を超える場合には、多量に安定して分散、混合することが容易でなくなる。
本発明で用いる絶縁材料としては、電磁波吸収特性を阻害しない材料であれば特に限定されるものではない。
具体的な例として、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリオキサジアゾール、ポリピラゾール、ポリキノキサリン、ポリキナゾリンジオン、ポリベンズオキサジノン、ポリインドロン、ポリキナゾロン、ポリインドキシル、シリコン樹脂、シリコン−エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、ポリアミノビスマレイミド、ジアリルフタレート樹脂、フッ素樹脂、TPX樹脂(メチルペンテンポリマー「三井石油化学社製商品名」)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、66−ナイロンおよびMXD−ナイロン、アモルファスナイロンなどのポリアミド、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、マレイミド変性樹脂、ABS樹脂、AAS(アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル−エチレン・プロピレン・ジエンゴム−スチレン)樹脂などの樹脂類、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、ポリエステルエラストマー、ポリブタジエン、クロロプレン、天然ゴム、ポリイソプレンなどのエラストマー類およびこれらに必要に応じ、硬化剤、硬化促進剤、触媒、加硫剤、滑剤・離型剤、安定剤、光安定剤、着色剤、難燃剤、カップリング剤などを添加した有機材料が挙げられる。これら以外に蛙目粘土、木節粘土などの粘土類、セメント、アルミナセメント、モルタル、石膏などの無機材料も使用可能である。
本発明では、上記の中から選ばれた少なくとも1種を使用することができるが、取り扱いが簡便であること、コーター、ドクターブレードなどに成膜する方法、ロール成形、押出成形、射出成形、プレス成形など従来公知の成形方法や加工方法を、必要なら複数の方法を組み合わせて、適用できることからアクリル樹脂などの熱可塑性樹脂が好ましい。
本発明に用いる磁性材料は、特に限定されるものではなく、軟磁性材料であれば良い。例えば、鉄(Fe)の他、ケイ素鋼(Fe−Si)、パーマロイ(Ni−Fe)、パーメンジュール(Fe−Co)、センダスト(Fe−Si−Al)、電磁ステンレス鋼、アモルファス鉄基合金(Fe−B−C系、Fe−Co系)などの鉄を含む合金や、マンガン−亜鉛(Mn−Zn)フェライト、ニッケル−亜鉛(Ni−Zn)フェライトなどからなる粉末である。特に、フェライト系材料を用いた場合、それを樹脂などに配合すると誘電率が比較的低く、かつ磁性損失を有することから好ましい。
磁性材料粉末は、樹脂、ゴム、塗料あるいは無機材料などの絶縁性材料に分散、複合化した場合、10〜70体積%含有することが好ましく、10体積%未満では得られる電磁吸収体の電磁波吸収特性が不十分となって実用面で制限されることが多く、70体積%を超える場合には、多量に安定して分散、混合することが容易でなくなる。
本発明の電磁波吸収体に用いる誘電損失材料は、前記導電性材料粉末の少なくとも1種を、樹脂、ゴム、塗料あるいは無機材料などの中から選ばれた少なくとも1種の前記絶縁性材料に分散、混合し複合化する。さらに、前記誘電損失材料を用いた誘電損失を有するシートに、Ni系フェライト粉末などの前記磁性材料を前記絶縁材料に分散、混合し複合化した磁性損失を有するシートを積層した形で用いることが好ましい。
本発明では、誘電損失材料や磁性材料の混合粉末を絶縁性材料に添加、混合し、用途に応じ膜、板などの成形品や、液状のままで塗料、充填材などの多用な形態で使用することができる。なお、本発明の電磁波吸収体を作製するに当たり、混合粉末を経由することなく、絶縁材料に炭化ホウ素粉末などの導電性材料あるいはNiフェライトなど磁性材料を所定量配合し複合化することもできる。
複合化した材料が液状の場合、混合は、少量のときは手混合でも良いが、多量のときにはプラネタリーミキサー、ハイブリッドミキサー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、ボールミル、ミキシングロールなどの一般的な混合機が用いられる。
本発明の電磁波吸収体は、通常、シート形状で使用される。その加工方法としては従来公知の方法、例えば、コーター法、ドクターブレード法、押出成形法、射出成形法、プレス成形法など、所望の厚さのシートが形成できる各種成形法を用いて作製することができる。また、コーター法など、成形できる厚さの最大値に制限がある成形法においても、薄いシートを成形したのち、それを積層することによって所望の厚さのシートとしてもよい。その際、粘着層を介することも可能である。
以下、実施例で説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
「導電性材料」
(1)ホウ酸粉末と石油コークス粉末を混合した後、抵抗加熱炉を用いアルゴン雰囲気中2200℃で5時間加熱して炭化ホウ素塊を合成した。これをローラーミルで粉砕して、篩網を用いて150μm以下に篩分け、さらに、硝酸水溶液で洗浄して鉄分を除去後、濾過・乾燥して炭化ホウ素粉末Aを作製した。
(2)同様に合成した炭化ホウ素塊を鉄製ボールのボールミルで粉砕して、篩網を用いて粒径45μm以下に篩分け、さらに、硝酸水溶液で洗浄して鉄分を除去後、濾過・乾燥して炭化ホウ素粉末Bを作製した。
(3)酸化マグネシウム粉末及びホウ酸粉末をモル比3:2の割合で混合した後、大気中で、850℃で2間加熱して得たホウ酸マグネシウムと、金属マグネシウム粉末及び炭素粉末を、モル比で2:6:1となるように混合してアルゴン雰囲気中1400℃で加熱して得られた炭化ホウ素塊を乳鉢で解砕後、篩網を通して150μm以下に篩い分け、炭化ホウ素粉末Cを作製した。
(4)アルゴン雰囲気中の加熱温度を1200℃とした以外は、炭化ホウ素粉末Cと同様なプロセスで炭化ホウ素粉末Dを作製した。
「導電性材料の電気伝導度測定」
合成した各種炭化ホウ素粉末、および市販の炭化珪素粉末(太平洋ランダム社製NG)、ホウ素固溶カーボンブラック(電気化学工業社製ホウ素固溶アセチレンブラック)、金属アルミニウム粉末(東洋アルミニウム社製AH粉)の電気伝導度を前述(段落番号0017に記載)の方法で測定した結果を表1に示す。
Figure 2007019287
「絶縁性材料」
次に、アクリルエマルジョン(高圧ガス工業社製FX−851、樹脂固形分55%)樹脂固形分100質量部、分散剤(サンノプコ社製SNディスパーサント2060)2質量部および消泡剤(サンノプコ社製SNデフォーマー314)0.2質量部からなる液状絶縁材料を用意した。
「誘電損失を有するシートの作製」
前記液状絶縁材料に、前記炭化ホウ素粉末、炭化珪素粉末、ホウ素固溶カーボンブラックを表2に示す割合で配合し、ハイブリッドミキサー(キーエンス社製HM−500)を用いて混合して各スラリーを作製した。
次に、各スラリーを表1の各厚さのシート形状に成形した後、70℃で乾燥固化させて、各種導電性粉末およびアクリル樹脂を含有する誘電損失材料のシートを得た。
「磁性損失を有するシートの作製」
同様に前記液状絶縁材料に、Niフェライト粉末(戸田工業製BSN714)を樹脂固形分100質量部に対して600質量部配合し、ハイブリッドミキサーで混合して得られたスラリーを塗工、乾燥固化させて厚さ0.4mmの磁性損失を有するシートを作製した。
次に、前記液状絶縁材料に、軟磁性金属粉末(三菱マテリアル社製JEM粉)を樹脂固形分100質量部に対して700質量部配合し、同様にハイブリッドミキサーで混合して得られたスラリーを塗工、乾燥固化させて厚さ0.4mmの磁性損失を有するシートを作製した。
「積層シートの作製」
前記誘電損失を有するシートを、必要に応じて粘着層を介して積層するなどして表2に記載の厚さとし、さらに各種磁性損失を有するシートと粘着層を介して積層することにより、各種電磁波吸収体を得た。
「電磁波吸収特性の測定」
前記の誘電損失を有するシート、磁性損失を有するシートについて、1〜110GHzの複素比誘電率(εr=εr’−iεr”)を、ネットワークアナライザーを用いて自由空間法で測定した結果、及び前記各種電磁波吸収体について、1〜110GHzの電磁波入射時における電磁波吸収特性を、金属板でシートを裏打ちして自由空間法で測定した結果を表2に示す。
Figure 2007019287
「測定結果」
誘電損失を有するシート単独でも高い吸収特性を示すが(実施例8)、磁性損失を有するシートを積層した電磁波吸収体は、反射減衰率が最大値の80%以上になる周波数帯域幅の整合周波数値(GHz)に対する割合がより広くなっていることが分かる(実施例1〜7)。
また、磁性損失を有するシートの複素比誘電率の実数部εr’が小さいNiフェライト系の磁性体を用いると、広帯域化が一層向上していることが分かる(実施例1〜6)。
一方、比較例で示すように、導電性材料の電気伝導度が所定の範囲を外れると、誘電損失を有するシート層の誘電損失が小さく、電磁波吸収特性が著しく低下していることが分かる(比較例1、2)。
本発明の電磁波吸収体は、帯域に幅を持つ電磁波に対して安定した吸収特性を発揮するので、特に広帯域移動アクセスシステム用の不要電磁波の吸収材料として適するが、それ以外にも自動車料金収受システム、車載レーダー、情報家電、無線LAN、超高帯域無線(UWB)、携帯電話基地局あいはテレビ受信時におけるゴースト発生防止用などの不要電磁波の吸収材料として、家屋の外装材、壁材あるいはカーテンなど広範な用途に適用できる。

Claims (10)

  1. 電気伝導度が5×10−6S/cm以上1×10S/cm以下である導電性材料と絶縁性材料とを含有する誘電損失材料。
  2. 導電性材料が炭化ホウ素、導電性カーボン粉末および炭化珪素の中から選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の誘電損失材料。
  3. 導電性カーボン粉末がホウ素固溶カーボンブラックである請求項2に記載の誘電損失材料。
  4. 絶縁性材料が熱可塑性樹脂である請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘電損失材料。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の誘電損失材料を用いた誘電損失を有するシートからなる電磁波吸収体。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の誘電損失材料を用いた誘電損失を有するシートと磁性損失を有するシートを積層した電磁波吸収体。
  7. 誘電損失を有するシートの比誘電率実数部よりも磁性損失を有するシートの比誘電率実数部が小さい請求項6に記載の電磁波吸収体。
  8. 誘電損失を有するシートの比誘電率実数部よりも磁性損失を有するシートの比誘電率実数部が2/3以下である請求項7に記載の電磁波吸収体。
  9. 磁性損失を有するシートがNi系フェライト粉を含有する請求項6〜8のいずれか1項に記載の電磁波吸収体。
  10. 請求項5〜9のいずれか1項に記載の電磁波吸収体を使用した広帯域移動アクセスシステム。
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