JP2022117184A - 畜肉様食品用の補助材、畜肉様食品用の主材および畜肉様食品 - Google Patents

畜肉様食品用の補助材、畜肉様食品用の主材および畜肉様食品 Download PDF

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Takanori Shiraki
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Abstract

【課題】 加熱調理後でも、咀嚼時に繊維状植物蛋白が適度にほぐれて、ささみ肉の食感を再現できる畜肉様食品の補助材および畜肉様食品の主材とそれを用いた畜肉様食品を提供する。【解決手段】 繊維状大豆蛋白からなり、当該繊維状大豆蛋白はデンプンを含むとともに、ナトリウム、カルシウムおよびリンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含み、組織状大豆蛋白および結着原料とともに用いられる畜肉様食品用の補助材。【選択図】 図1

Description

本発明は、畜肉様食品の補助材、畜肉様食品用の主材およびこれらを使用した畜肉様食品に関する。
昨今、畜肉原料を取り巻く社会情勢は厳しくなる現状があり、畜肉の代替原料あるいは、増量剤として大豆蛋白質等の植物性蛋白が使用される傾向が強まっている。
植物性蛋白の中でも、脱脂大豆や粉末状大豆蛋白素材を原料として組織化した組織状大豆蛋白は多様な用途に用いられており、ハンバーグやミートボール等の畜肉加工食品には挽肉の増量剤として組織状大豆蛋白が用いられている。
一方、組織状大豆蛋白を用いた畜肉様食品の食感の特徴として、咀嚼時のほぐれが天然の畜肉に比べて劣るという点が挙げられる。特にささみ肉のような繊維のほぐれ感を十分に再現できないという問題があり、このような組織状大豆蛋白の食感改良について様々な研究がなされてきた。
例えば、特許文献1には、大豆蛋白原料、および水をエクストルーダーにより加熱、加圧下に反応させる際、カルシウムおよび澱粉類を併用して配合し、ダイより押し出して得られる、蛋白質含有量が40~85重量%で気泡直径1mm以下の繊維状蛋白食品が開示されている。
また、特許文献2には、大豆蛋白原料、カルシウム、澱粉類および水をエクストルーダーにより加熱、加圧下にダイより押し出し、該押し出し物を、食塩と酸で処理して得られる繊維状蛋白食品が開示されている。
特開2000-279099号公報 特許第6094184号公報
本発明者らは、このような組織状植物蛋白質を用いた畜肉様食品について加熱調理後の食感が十分でないとの知見を得た。
畜肉様食品の加熱調理後の食感が畜肉に劣る理由として、組織状植物蛋白質を用いて製造した畜肉様食品は、加熱調理すると蛋白質の架橋硬化により、繊維状蛋白同士の結合が進み、咀嚼時に蛋白繊維がほぐれにくくなるためであることを突き止めた。
本発明の目的は、加熱調理後でも、咀嚼時に繊維状植物蛋白が適度にほぐれて、ささみ肉の食感を再現できる畜肉様食品の補助材および畜肉様食品の主材とそれを用いた畜肉様食品を提供することである。
本発明は、加熱調理後でも畜肉の食感を忠実に再現でき、咀嚼時に繊維状蛋白がほぐれやすい畜肉様食品の補助材、畜肉様食品の主材および畜肉様食品である。
上記目的を達成するための本発明は、以下の通りである。
すなわち、本発明の畜肉様食品用の補助材は、繊維状大豆蛋白からなり、当該繊維状大豆蛋白はデンプンを含むとともに、ナトリウム、カルシウムおよびリンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含み、組織状大豆蛋白および結着原料とともに用いられる。
本発明の畜肉様食品用の補助材では、上記ナトリウムは、上記補助材100gあたり、500mg~2000mg含まれることが好ましい。
本発明の畜肉様食品用の補助材では、上記カルシウムは、上記補助材100gあたり300mg~1500mg含まれることが好ましい。
本発明の畜肉様食品用の補助材では、上記リンは、上記補助材100gあたり200mg~1200mg含まれることが好ましい。
なお、上記ナトリウム、カルシウム、リンの含有量は、畜肉様食品用の補助材の乾燥重量100gあたりに含まれる量(mg)を意味する。
本発明の畜肉様食品用の補助材では、上記デンプンはコーンスターチであることが好ましい。
本発明の別の態様である、本発明の畜肉様食品は、組織状大豆蛋白と、畜肉様食品用の補助材と、結着原料とからなる畜肉様食品であって、上記補助材は、繊維状大豆蛋白からなり、当該繊維状大豆蛋白は、デンプンを含むとともに、ナトリウム、カルシウムおよびリンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含む。
本発明の畜肉様食品では、上記ナトリウムは、上記補助材100gあたり、500mg~2000mg含まれることが好ましい。
本発明の畜肉様食品では、上記カルシウムは、上記補助材100gあたり300mg~1500mg含まれることが好ましい。
本発明の畜肉様食品では、上記リンは、上記補助材100gあたり200mg~1200mg含まれることが好ましい。
なお、上記ナトリウム、カルシウム、リンの含有量は、畜肉様食品用の補助材の乾燥重量100gあたりに含まれる量(mg)を意味する。
本発明の畜肉様食品では、上記デンプンはコーンスターチであることが好ましい。
本発明の別の態様である本発明の畜肉様食品用の主材は、繊維状大豆蛋白からなり、当該繊維状大豆蛋白はデンプンを含むとともに、ナトリウム、カルシウムおよびリンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含み、結着原料とともに用いられる。
本発明の畜肉様食品用の主材では、上記ナトリウムは、上記主材100gあたり、500mg~2000mg含まれることが好ましい。
本発明の畜肉様食品用の主材では、上記カルシウムは、上記主材100gあたり300mg~1500mg含まれることが好ましい。
本発明の畜肉様食品用の主材では、上記リンは、上記主材100gあたり200mg~1200mg含まれることが好ましい。
なお、上記ナトリウム、カルシウム、リンの含有量は、畜肉様食品用の主材の乾燥重量100gあたりに含まれる量(mg)を意味する。
本発明の畜肉様食品用の主材では、上記デンプンはコーンスターチであることが好ましい。
本発明の別の態様である、本発明の畜肉様食品の別の態様では、畜肉様食品用の主材と結着原料とからなる畜肉様食品であって、上記主材は、繊維状大豆蛋白からなり、当該繊維状大豆蛋白は、デンプンを含むとともに、ナトリウム、カルシウムおよびリンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含む。
本発明の畜肉様食品の別の態様では、上記ナトリウムは、上記主材100gあたり、500mg~2000mg含まれることが好ましい。
本発明の畜肉様食品の別の態様では、上記カルシウムは、上記主材100gあたり300mg~1500mg含まれることが好ましい。
本発明の畜肉様食品の別の態様では、上記リンは、上記主材100gあたり200mg~1200mg含まれることが好ましい。
なお、上記ナトリウム、カルシウム、リンの含有量は、畜肉様食品用の主材の乾燥重量100gあたりに含まれる量(mg)を意味する。
本発明の畜肉様食品の別の態様では、上記デンプンはコーンスターチであることが好ましい。
本発明の畜肉様食品の補助材は、組織状大豆蛋白および結着原料とともに用いられ、畜肉様食品とされる。このように製造された畜肉様食品は、繊維状大豆蛋白のみで畜肉様食品を製造する場合に比べ、加熱調理後でも、咀嚼時に繊維がほぐれやすく、その一方で畜肉様食品を調理のために切断する場合でも、畜肉様食品の組織が崩れにくい。
本発明の畜肉様食品の主材は、結着原料とともに用いられ畜肉様食品とされる。このように製造された畜肉様食品は、繊維状大豆蛋白のみで畜肉様食品を製造する場合に比べ、加熱調理後でも、咀嚼時に繊維がほぐれやすく、その一方で畜肉様食品を調理のために切断する場合でも、畜肉様食品の組織が崩れにくい。
本発明の畜肉様食品の補助材および主材は、流通に際しては、乾燥して乾燥物とすることもでき、畜肉様食品の原材料としてはそのまま或いは乾燥物を湯戻しするなどして利用できる。
図1は、実施例2に係る繊維状大豆蛋白の写真である。
本発明の畜肉様食品は、組織状大豆蛋白と、畜肉様食品用の補助材と、結着原料とからなる畜肉様食品であって、上記補助材は、繊維状大豆蛋白からなり、当該繊維状大豆蛋白は、デンプンを含むとともに、ナトリウム、カルシウムおよびリンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含む。
また、本発明の畜肉様食品の別の態様は、畜肉様食品用の主材と結着原料とからなる畜肉様食品であって、上記畜肉様食品用の主材は、繊維状大豆蛋白からなり、当該繊維状大豆蛋白は、デンプンを含むとともに、ナトリウム、カルシウムおよびリンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含む。
本発明の畜肉様食品用の補助材および主材、並びに、本発明の畜肉様食品において、繊維状大豆蛋白は、繊維径が0.01~1000μmである。
本明細書において「畜肉様食品用の補助材」とは、畜肉様食品が組織状大豆蛋白及び繊維状大豆蛋白を含む場合において、畜肉様食品中の組織状大豆蛋白と繊維状大豆蛋白の合計重量に対する繊維状大豆蛋白の重量割合が50重量%未満となるように用いられる場合の繊維状大豆蛋白のことを意味する。
また、本明細書において、「畜肉様食品用の主材」とは、畜肉様食品が組織状大豆蛋白及び繊維状大豆蛋白を含む場合において、畜肉様食品中の組織状大豆蛋白と繊維状大豆蛋白の合計重量に対する繊維状大豆蛋白の割合が50重量%以上となるように用いられる場合の繊維状大豆蛋白のこと、および、畜肉様食品が組織状大豆蛋白を含まず、繊維状大豆蛋白を含むように用いられる場合の繊維状大豆蛋白のことを意味する。
本発明の畜肉様食品は、繊維状大豆蛋白である補助材または主材と結着原料とからなり、必要に応じて組織状大豆蛋白を使用する。
繊維状大豆蛋白は、結着原料と混合され、さらに必要に応じて組織状大豆蛋白と複合化されて畜肉様食品を構成する。
それ故、調理加熱しても繊維状大豆蛋白の構造が維持され、調理加熱後でも咀嚼時に蛋白繊維がほぐれやすい。その一方で蛋白繊維が絡まり合うことで、畜肉様食品を調理のために切断する場合でも、畜肉様食品の組織が崩れにくいという利点を有する。
まず、本発明の畜肉様食品用の補助材または主材となる繊維状大豆蛋白について説明する。
本発明の畜肉様食品用の補助材または畜肉様食品用の主材では、繊維状大豆蛋白は、デンプンを含むとともに、ナトリウム、カルシウムおよびリンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含む。そのため、畜肉様食品用の補助材または畜肉様食品用の主材では、大豆蛋白の繊維化が促進されている。
本発明の畜肉様食品用の補助材または畜肉様食品用の主材において使用されるデンプンは、コーンスターチであることが好ましい。コーンスターチは、小麦デンプンに比べて大豆蛋白を繊維化させやすいからである。
本発明の畜肉様食品用の補助材または畜肉様食品用の主材において、ナトリウムの含有量は、補助材または主材100gあたり、500mg~2000mgであることが好ましい。大豆蛋白を繊維化させやすいからである。
ナトリウムは、塩化ナトリウムや、クエン酸ナトリウム等のナトリウム塩の形で原料に添加したり、エクストルーダで加熱加圧しながら押出成形したデンプンを含む大豆蛋白をこれらのナトリウム塩水溶液中に含侵させることで付与してもよい。
本発明の畜肉様食品用の補助材または畜肉様食品用の主材において、カルシウムは、補助材または主材100gあたり300mg~1500mg含まれていることが好ましい。大豆蛋白を繊維化させやすいからである。
カルシウムは、カルシウム塩が好ましく、わずかでも解離してカルシウムイオンとなる化合物であれば特に制限されるものではない。例えば、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム等を用いることができる。
また、カルシウムは、エクストルーダで加熱加圧しながら押出成形したデンプンを含む大豆蛋白をカルシウム塩の水溶液に浸漬させることで付与してもよい。
本発明の畜肉様食品用の補助材または畜肉様食品用の主材において、リンは、補助材または主材100gあたり200mg~1200mg含まれることが好ましい。大豆蛋白を繊維化させやすいからである。
リンは、リン酸やポリリン酸などを添加したり、エクストルーダで加熱加圧しながら押出成形したデンプンを含む大豆蛋白をリン酸等の水溶液中に含侵させることで付与してもよい。
次に、繊維状大豆蛋白の作製方法について説明する。
(大豆蛋白混合物準備工程)
まず、分離大豆蛋白などの大豆蛋白原料、デンプン(コーンスターチ)に加水し、さらに前述したナトリウム塩、カルシウム塩、リン酸等を加え、混練することにより繊維状大豆蛋白の原料混合物を準備する。
(繊維状大豆蛋白作製工程)
準備した大豆蛋白の原料混合物をエクストルーダー(押出成形機)に投入し、その後、加圧加熱処理し熱可塑性となった原料をスクリューの先端部に設けたダイ(口金)より押し出す。
次いで細断または破砕、乾燥・冷却、整粒工程を経て繊維状の大豆蛋白を作製する。この際、原料組成を分離大豆蛋白0~90重量%のように調整したり、加圧加熱条件をスクリュー回転数250~500rpm、加熱温度25~180℃、加水率10~40%のように調整することで、繊維状大豆蛋白の作製が可能である。
(水戻し)
エクストルーダー処理して得られた繊維状大豆蛋白は、水戻しされてもよい。さらに、水戻しする前に必要に応じて乾燥してもよい。水戻しする方法として、pH5以下のリン酸酸性溶液で水戻しする方法、ナトリウム塩や、カルシウム塩を含む水溶液で水戻しする方法がある。
pH5以下のリン酸の酸性溶液やナトリウム塩を含む水溶液で水戻しすることにより、繊維状大豆蛋白に、繊維感があり、硬さがあり、弾力が抑制され、歯切れ感の良い食感を付与する効果を得ることができる。
水戻しする際に、添加する水溶液の量は、エクストルーダー処理して得られた繊維状大豆蛋白の重量に対して、好ましくは5倍量以上、より好ましくは10倍量以上、さらにより好ましくは15倍量以上が適当である。
水戻しした後、酸味や塩分を除くために、繊維状大豆蛋白を水で洗浄してもよい。酸味や塩分を除く度合いは目的に応じて種々選択されるが、酸味や塩分に由来する風味の影響が少なくなる程度に洗浄することが好ましい。洗浄する水の量は、エクストルーダー処理して得られた繊維状大豆蛋白の重量に対して、好ましくは10倍量以上、より好ましくは50倍量以上、さらにより好ましくは80倍量以上が適当である。
繊維状大豆蛋白を水戻しした後、必要に応じて脱水してもよい。脱水する度合いは目的に応じて種々選択されるので特に限定されない。
以上の工程を経て、繊維状大豆蛋白を製造することができる。このようにして得られた繊維状大豆蛋白は、本発明の畜肉様食品用の補助材や、畜肉様食品用の主材として用いることができる。
次に、組織状大豆蛋白の作製方法について説明する。
(大豆蛋白混合物準備工程)
まず、分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白や脱脂大豆等の大豆蛋白原料に加水し、混練することにより大豆蛋白混合物を準備する。
(組織状大豆蛋白作製工程)
準備した大豆蛋白混合物をエクストルーダー(押出成形機)に投入し、その後、加圧加熱処理し熱可塑性となった原料をスクリューの先端部に設けたダイ(口金)より押し出し、組織を所望な程度に膨化させる。
次いで細断または破砕、乾燥・冷却、整粒工程を経て組織状大豆蛋白を作製する。この際、原料組成を脱脂大豆50~100重量%、分離大豆蛋白0~50重量%のように調整したり、加圧加熱条件をスクリュー回転数150~500rpm、加熱温度25~180℃、加水率20~40%のように調整することで、組織状大豆蛋白の作製が可能である。
また、エクストルーダーより押し出された組織状大豆蛋白は付帯されたプロペラカット機によりカットすることで、所望の形状とすることができる。
また、ダイの形状、細断または破砕方法、整粒条件を調整することにより、組織状大豆蛋白の平均長さや厚さを調整することができる。
加圧加熱処理は、混練が強く安定的に組織化しやすい二軸以上の軸を有するエクストルーダーを用いることが好ましい。
また、整粒方法としてはふるいや風力分級などの方法を採用することができる。さらに、パワーミルのように破砕とふるいによる整粒を同時に行う方法でもよい。
以上の工程を経て、組織状大豆蛋白を作製することができる。
次に、本発明の繊維状大豆蛋白からなる補助材または主材と結着原料を用いた畜肉様食品について説明する。
本発明の畜肉様食品は、組織状大豆蛋白と、畜肉様食品用の補助材と、結着原料とからなる畜肉様食品であって、上記補助材は、繊維状大豆蛋白からなり、当該繊維状大豆蛋白は、デンプンを含むとともに、ナトリウム、カルシウムおよびリンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含む。
本発明の別の態様の畜肉様食品は、畜肉様食品用の主材と結着原料とからなる畜肉様食品であって、上記畜肉様食品用の主材は、繊維状大豆蛋白からなり、当該繊維状大豆蛋白は、デンプンを含むとともに、ナトリウム、カルシウムおよびリンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含む。当該畜肉様食品は、さらに組織状大豆蛋白を含んでいてもよい。
このような、畜肉様食品は、上記本発明の畜肉様食品用の補助材または主材を用いているので、調理加熱しても繊維状大豆蛋白の構造が維持され、調理加熱後でも咀嚼時に蛋白繊維がほぐれやすい。その一方で蛋白繊維が絡まり合うことで、畜肉様食品を調理のために切断する場合でも、畜肉様食品の組織が崩れにくいという利点を有する。
結着原料としては、水や、油脂や、ペースト状植物性蛋白や、大豆蛋白カード等が好ましい。また、結着原料は、粉末状大豆蛋白を含んでいてもよい。
大豆蛋白カードは、水と粉末状大豆蛋白をミキサー等で攪拌混合し、さらにこれに必要に応じて油脂を添加してミキサー等で攪拌混合することで得られるエマルジョンである。大豆蛋白カード中、粉末状大豆蛋白は5~30重量%、必要があれば油脂は5~20重量%の濃度で含まれていることが好ましい。油脂としてはキャノーラ油などの植物性油脂を使用できる。
次に、本発明の畜肉様食品の製造方法について説明する。
畜肉様食品を製造するに当たり、繊維状大豆蛋白同士や後述する副材料をつなぎ合わせる役目を有する結着原料を加えた大豆蛋白生地の調製を行う。
例えば、繊維状大豆蛋白に、結着原料として粉末状大豆蛋白、水および油脂、必要に応じて組織状大豆蛋白を加えて混練することにより大豆蛋白生地を調製することができる。
繊維状大豆蛋白は、大豆蛋白生地中の重量割合が1~25重量%であることが好ましい。また、結着原料は、大豆蛋白生地中の重量割合が2~50重量%であることが好ましい。
大豆蛋白生地には、必要に応じて組織状大豆蛋白を加えてもよい。組織状大豆蛋白は、大豆蛋白生地中の重量割合が乾燥重量で1~50重量%であることが好ましい。
大豆蛋白生地には、繊維状大豆蛋白および結着原料以外の副材料として、水、油脂類糖類、調味料等の大豆蛋白生地の骨格を構成する材料のほか、人参、ごぼう、ごま、タマネギ等の野菜類や、ワカメ、ひじき等の海藻類、挽肉等の肉類等を大豆蛋白生地中に分散させる固形具材を加えてもよい。
次に、大豆蛋白生地を所定形状に成形して、焼成加熱、蒸し加熱、ボイル加熱、フライ加熱、電磁波加熱等を適宜組み合わせて加熱してもよい。これによって成形した大豆蛋白生地が加熱凝固し、形状が安定化される。
以上により得られた製品は、ハンバーグ、ミートボール等の畜肉様食品の形態として提供することができる。
(繊維状大豆蛋白の作製)
(実施例1)
分離大豆蛋白70重量部、コーンスターチ25重量部を混合し、さらにこの混合原料に対して硫酸カルシウム4重量部、粉末油脂1重量部を加えて混合した。この混合物100重量部、水28重量部を二軸エクストルーダーに供給して加熱、加圧処理を行い解砕した繊維状大豆蛋白を得た。なお、エクストルーダー処理は、スクリュー回転数200rpm、出口側120℃、ダイスリット7.5mm×1mmで行った。押出されたシート状の成形体は出口にて押出方向に対して垂直方向に、口金端面とカット刃のクリアランスを0.35mmとしてカットし、平均幅30mmの繊維状大豆蛋白を作製した。
得られた繊維状大豆蛋白1重量部に対し、6重量%の食塩水20重量部を添加してケンウッドミキサーで30分間撹拌し水戻しを行った後、水で流水洗浄を行った。次に、リン酸を使用してpH=3.6に調整した酸性溶液20重量部を添加してケンウッドミキサーで30分間撹拌し水戻しを行った後、酸味を除くため、100重量部の水で流水洗浄を行い、実施例1に係る繊維状大豆蛋白を作製した。
(実施例2)
分離大豆蛋白70重量部、コーンスターチ25重量部を混合し、さらにこの混合原料に対して硫酸カルシウム4重量部、粉末油脂1重量部(ナトリウムおよびリンを含む)を加えて混合した。この混合物100重量部、水28重量部を二軸エクストルーダーに供給して加熱、加圧処理を行い解砕した繊維状大豆蛋白を得た。なお、エクストルーダー処理は、スクリュー回転数200rpm、出口側120℃、ダイスリット15mm×1mmで行った。押出されたシート状の成形体は出口にて押出方向に対して垂直方向に、口金端面とカット刃のクリアランスを0.35mmとしてカットし、平均幅30mmである実施例2に係る繊維状大豆蛋白を作製した。
得られた繊維状大豆蛋白の外観写真を図1に示す。
図1は、実施例2に係る繊維状大豆蛋白の写真である。
(比較例1)
分離大豆蛋白(ニューフジプロE、蛋白含量92%、不二製油株式会社製)55重量部、脱脂大豆(蛋白含量53%)25重量部と小麦粉20重量部を混合し、さらにこの混合原料に対してカルシウム量が1.0重量部となるように硫酸カルシウムを混合した。
この混合物100重量部、水20重量部を二軸エクストルーダーに供給して加熱、加圧処理を行い解砕した大豆蛋白を得た。なお、エクストルーダー処理は、スクリュー回転数200rpm、出口側120℃、ダイスリット15mm×1mmで行った。押出されたシート状の成形体は長さ30mmで切断した。
このシート状大豆蛋白1重量部に対し、6重量%の食塩水中に30分間浸漬して水戻しを行った後、水で流水洗浄を行った。次に、リン酸を使用してpH=3.6に調整した酸性溶液中に30分間浸漬して水戻しを行った後、酸味を除くため、水で流水洗浄を行い、比較例1に係るシート状大豆蛋白を作製した。
(組織状大豆蛋白素材の製造)
粉末状大豆蛋白57重量部、脱脂大豆35重量部、コーンスターチ7重量部の主原料粉からなる粉末を混合して原料とし、二軸エクストルーダーに供給した。原料混合粉に対し26重量部の水を供給しながら出口温度120℃、スクリュー回転数300rpmの条件で厚み1mm幅7.5mmのスリットダイから押出して扁平なシート状組織状大豆タンパク素材を作製した。この扁平なシートをプロペラカット機にて長さ5mmにカットして粒状の組織状大豆蛋白素材を作製した。
(繊維状大豆蛋白中の元素の測定)
実施例1及び2に係る繊維状大豆蛋白、並びに、比較例1に係るシート状大豆蛋白に含まれるナトリウム、カルシウムおよびリンの同定と定量を、ICP(高周波誘導結合プラズマ)法により行った。結果を表1に示す。
測定は、繊維状大豆蛋白またはシート状大豆蛋白を80℃の恒温器にて乾燥を24時間行い、当該乾燥体100g中の元素量を測定することで行った。
Figure 2022117184000002
(畜肉様食品の製造:補助材としての使用)
実施例1に係る繊維状大豆蛋白5重量部、組織状大豆蛋白素材18.6重量部、水38重量部、大豆蛋白カード17.6重量部(キャノーラ油1.6重量部、粉末状大豆蛋白3.2重量部、水12.8重量部)、玉ねぎ20.8重量部、パン粉4.8重量部、塩0.5重量部、植物性野菜ブイヨン0.2重量部、ブラックペッパー0.05重量部、ココアパウダー0.1重量部を混合して混練し、ハンバーグ形状とし、畜肉様食品を製造した。畜肉様食品を160~180℃で焼成して焼成サンプル1-1を作製した。
実施例1に係る繊維状大豆蛋白に代え、実施例2に係る繊維状大豆蛋白を用いた以外は、同様にして、焼成サンプル1-2を作製した。
比較例1に係るシート状大豆蛋白を、160~180℃で焼成して焼成サンプル比較1とした。
焼成サンプル1-1、焼成サンプル1-2及び焼成サンプル比較1を、5人で食して評価した。
評価は、ささみ肉様の繊維のほぐれが全く感じらない:0点~ささみ肉様の繊維のほぐれが十分に感じられる:5点として、0点を含めて、繊維のほぐれやすさを6段階に分けて点数評価した。
点数は、各自の経験に基づいて付与されるが、基準としては以下の通り。
0点:ささみ肉様の繊維のほぐれが全く感じられない
1点:ささみ肉様の繊維のほぐれが殆ど感じられない
2点:ささみ肉様の繊維のほぐれがあまり感じられない
3点:ささみ肉様の繊維のほぐれがわずかに感じられる
4点:ささみ肉様の繊維のほぐれがある程度感じられる
5点:ささみ肉様の繊維のほぐれが感じられる
5人の平均値を表2に示す。
(畜肉様食品の製造:主材としての使用)
実施例1に係る繊維状大豆蛋白18重量部、組織状大豆蛋白素材5重量部、水38重量部、大豆蛋白カード17.6重量部(キャノーラ油1.6重量部、粉末状大豆蛋白3.2重量部、水12.8重量部)、玉ねぎ20.8重量部、パン粉4.8重量部、塩0.5重量部、植物性野菜ブイヨン0.2重量部、ブラックペッパー0.05重量部、ココアパウダー0.1重量部を混合して混練し、ハンバーグ形状とし、畜肉様食品を製造した。当該畜肉様食品を160~180℃で焼成して焼成サンプル2-1を作製した。
実施例1に係る繊維状大豆蛋白に代え、実施例2に係る繊維状大豆蛋白を用いた以外は、同様にして、焼成サンプル2-2を作製した。
焼成サンプル2-1、焼成サンプル2-2及び焼成サンプル比較1を、5人で食して評価した。
評価は、ささみ肉様の繊維のほぐれが全く感じらない:0点~ささみ肉様の繊維のほぐれが十分に感じられる:5点として、0点を含めて、繊維のほぐれやすさを6段階に分けて点数評価した。
点数は、各自の経験に基づいて付与されるが、基準としては以下の通り。
0点:ささみ肉様の繊維のほぐれが全く感じられない
1点:ささみ肉様の繊維のほぐれが殆ど感じられない
2点:ささみ肉様の繊維のほぐれがあまり感じられない
3点:ささみ肉様の繊維のほぐれがわずかに感じられる
4点:ささみ肉様の繊維のほぐれがある程度感じられる
5点:ささみ肉様の繊維のほぐれが感じられる
5人の平均値を表2に示す。
Figure 2022117184000003
表2に示すように、実施例1及び2に係る繊維状大豆蛋白を補助材または主材として用いた畜肉様食品は、ほぐれ食感が良好であることが判明した。比較例1は、デンプン成分として小麦を使用しており、大豆蛋白の繊維がほぐれにくく、また、結着材を使用していないので、単調な組織構造となり、天然の畜肉のような食感が得られなかった。

Claims (20)

  1. 繊維状大豆蛋白からなり、当該繊維状大豆蛋白はデンプンを含むとともに、ナトリウム、カルシウムおよびリンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含み、組織状大豆蛋白および結着原料とともに用いられる畜肉様食品用の補助材。
  2. 前記ナトリウムは、前記補助材100gあたり、500mg~2000mg含まれる請求項1に記載の畜肉様食品用の補助材。
  3. 前記カルシウムは、前記補助材100gあたり300mg~1500mg含まれる請求項1または2に記載の畜肉様食品用の補助材。
  4. 前記リンは、前記補助材100gあたり200mg~1200mg含まれる請求項1~3のいずれか1項に記載の畜肉様食品用の補助材。
  5. 前記デンプンはコーンスターチである請求項1~4のいずれか1項に記載の畜肉様食品用の補助材。
  6. 組織状大豆蛋白と、畜肉様食品用の補助材と、結着原料とからなる畜肉様食品であって、
    前記補助材は、繊維状大豆蛋白からなり、当該繊維状大豆蛋白は、デンプンを含むとともに、ナトリウム、カルシウムおよびリンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含む畜肉様食品。
  7. 前記ナトリウムは、前記補助材100gあたり、500mg~2000mg含まれる請求項6に記載の畜肉様食品。
  8. 前記カルシウムは、前記補助材100gあたり300mg~1500mg含まれる請求項6または7に記載の畜肉様食品。
  9. 前記リンは、前記補助材100gあたり200mg~1200mg含まれる請求項6~8のいずれか1項に記載の畜肉様食品。
  10. 前記デンプンはコーンスターチである請求項6~9のいずれか1項に記載の畜肉様食品。
  11. 繊維状大豆蛋白からなり、当該繊維状大豆蛋白はデンプンを含むとともに、ナトリウム、カルシウムおよびリンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含み、結着原料とともに用いられる畜肉様食品用の主材。
  12. 前記ナトリウムは、前記主材100gあたり、500mg~2000mg含まれる請求項11に記載の畜肉様食品用の主材。
  13. 前記カルシウムは、前記主材100gあたり300mg~1500mg含まれる請求項11または12に記載の畜肉様食品用の主材。
  14. 前記リンは、前記主材100gあたり200mg~1200mg含まれる請求項11~13のいずれか1項に記載の畜肉様食品用の主材。
  15. 前記デンプンはコーンスターチである請求項11~14のいずれか1項に記載の畜肉様食品用の主材。
  16. 畜肉様食品用の主材と結着原料とからなる畜肉様食品であって、
    前記主材は、繊維状大豆蛋白からなり、当該繊維状大豆蛋白は、デンプンを含むとともに、ナトリウム、カルシウムおよびリンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含む畜肉様食品。
  17. 前記ナトリウムは、前記主材100gあたり、500mg~2000mg含まれる請求項16に記載の畜肉様食品。
  18. 前記カルシウムは、前記主材100gあたり300mg~1500mg含まれる請求項16または17に記載の畜肉様食品。
  19. 前記リンは、前記主材100gあたり200mg~1200mg含まれる請求項16~18のいずれか1項に記載の畜肉様食品。
  20. 前記デンプンはコーンスターチである請求項16~19のいずれか1項に記載の畜肉様食品。
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