JP2022034920A - 適食化処理された直翅目昆虫由来食材並びにその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
そしてこれら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
以下、本発明の「適食化処理された直翅目昆虫由来食材並びにその製造方法」について図示の実施の形態に基づいて説明する。なおこの実施の形態では、まず「適食化処理された直翅目昆虫由来食材」について説明し、続いて「適食化処理された直翅目昆虫由来食材の製造方法」について説明する。
現状、前記原料素材2となる直翅目昆虫は、食材として低コストで大量確保・供給することができることを考慮すると、コオロギ科昆虫が最も適したものの一つとして挙げられる。またコオロギ科のうちではヨーロッパイエコオロギ、フタホシコオロギ、エンマコオロギ、ミツカドコオロギ、オカメコオロギ、ツヅレサセコオロギ等が挙げられる。
前記加熱処理の加熱手段としては、蒸煮、ヒートトンネル通過等の直加熱、スーパーヒート蒸気雰囲気通過等の加熱手段が取り得るものであり、原料素材2の成分流出を抑えるためには、ヒートトンネル通過等の直加熱、スーパーヒート蒸気雰囲気通過が好ましい。
また原料素材2の形態としては、固体のままでもよいし加熱処理後粉砕した粉末状として提供したものでもよい。
前記高圧抽出器3としては、適宜の通液可能な圧力容器を用いることができるが、この実施の形態では一例として、図1に示すエスプレッソコーヒーを抽出するためのエスプレッソコーヒーマシンを適用した高圧抽出器3が適用される。このものは本出願人が商業的量産に用いているものであり、特許第6548289号公報、特許4526155号公報及び特開2012-70652号公報等に開示されている装置と基本構成を同一とするものであり、以下その構成の概略を説明する。
また前記処理室32内には粉末を一例とする原料素材2を充填できるように、フィルタバスケット33が設けられるとともに、このフィルタバスケット33の上下にフィルタエレメント34が配される。
そして前記下蓋部31Aには給液管35が接続され、ここから温熱水等の処理水Wが供給される。一方、上蓋部31Bには排液管36が接続されここから原料素材2を処理した処理済水W1が排出される。
更に下蓋部31Aには、例えば加熱した蒸気や、処理済水W1を排出するための加圧空気を供給するための給気口37が設けられる。
以下、このような高圧抽出器3を用いた本発明の「適食化処理された直翅目昆虫由来食材の製造方法」について図2を参照しながら説明する。
まず前記原料素材2としては一例としてヨーロッパイエコオロギEの粉末が用いられるものであり、原料素材2の供給者によって肥育されたヨーロッパイエコオロギE(幼虫または成虫)が、加熱機6による加熱処理、粉砕機7による乾燥、粉末化が成されたものとして供給される。
なお後述する実施例において示すように本発明の検証においては、コスト面での現実的な原料素材2として、粉末化された原料素材2を専門の供給業者から購入したが、ヨーロッパイエコオロギEの肥育段階から加熱処理、乾燥、粉末化の全行程を行ってもよく、更には肥育されたヨーロッパイエコオロギEを購入して、加熱処理、乾燥、粉末化工程を行うこともできる。
そして原料素材2の平均粒径としては概ね500μmとされるものであるが、実際に使用できる粒径としては300μm~700μm程度であればよい。
次いで上述した原料素材2を高圧抽出器3を用いて水液通過処理を行う。
まず、耐圧密閉容器31に原料素材2を充填するに当たっては、処理室32内に配されるフィルタバスケット33に原料素材2が密に充填されるように、タンパーTやランマー等を用いて原料素材2を突き固めるタッピング処理を行うものとする。
なおタッピング処理後の原料素材2の嵩密度が、0.36g/cm3 程度となるようにする。このようなタッピング処理を行うことにより、処理水Wが原料素材2全域にムラなく作用し、均一に加熱することが可能となる。
もちろん原料素材2の性状によっては、前記タッピング処理を行わないようにしてもよい。
そしてフィルタバスケット33への原料素材2の充填が完了したら、フィルタバスケット33を耐圧密閉容器31内に設置し、上蓋部31Bを閉じて耐圧密閉容器31を密閉状態とするものであり、このときフィルタバスケット33の上下にはフィルタエレメント34が配された状態となる。
また処理水Wの温度は20℃~150℃の範囲で可能であるが、脱臭効果や処理時間の短縮化を考慮すると100℃~150℃の高温水(熱水)を用いることが好ましい。
このような通水速度で処理水Wが供給された状態の下、水液通過処理は5分~20分程度行われる。
結果的に原料素材2に対し作用する処理水Wは、原料素材2の重量比で8倍以上、好ましくは10倍以上、更に好ましくは30倍以上とする。なお後述するように、原料素材2に作用した後の処理済水W1を利用することを考慮すると、原料素材2に対し作用させる処理水Wの上限値は、原料素材2の重量比で50倍以下とすることが好ましい。
因みにタッピング処理による突き固めが好適に行われずに、原料素材2の厚さが均一になっていなかったり空洞ができてしまった場合、原料素材2の層の一定箇所から沢山の処理水Wが通り抜けてしまい(いわゆるチャネリング現象)、処理水Wが原料素材2全域に均等に作用しなくなってしまうことがある。
次いで上蓋部31Bを開けてフィルタバスケット33を取り出すとともに、フィルタバスケット33からケーキ状となった加圧済素材2Aを取り出す。
次いで加圧済素材2Aを適宜の小片にほぐした後、このものを乾燥機8を用いて乾燥する。
なお図2では撹拌型の乾燥機8を示しているが、被処理物を静置したまま乾燥する乾燥室型の乾燥機8等を用いることもできる。そして得られる乾燥品2Bの含水率を1%W.B.~5%W.B.とする。
次いで乾燥品2Bを粉砕機7にかけて、粒径(平均値)300μm~700μmとされた粉末状の直翅目昆虫由来食材1を得る。
このようにして得られた本発明の直翅目昆虫由来食材1は、タンパク質残留率が90%以上維持されており、且つ脱臭されていることが確認されている。
ここで「脱臭されている」とは、後述する官能試験において、一定以上(15点以上)の高評価が得られていることを意味するものである。
まず原料素材2の諸元を以下に示す。
原料素材:ヨーロッパイエコオロギの成虫
加熱温度: 95℃
加熱時間: 15m
粉末粒径(平均値): 500μm
タンパク質残留率: 90%
原料素材量: 1000g
タッピング処理後の嵩密度:0.36g/cm3
処理液供給圧力: 450kPa
処理液温度: 125℃
通水速度: 100リットル/時
通水時間: 18m
通水量 30リットル
水量(kg)/原料素材(kg)30
処理液供給圧力: 450kPa
処理液温度: 125℃
通水速度: 100リットル/時
通水時間: 6m
通水量 10リットル
水量(kg)/原料素材(kg)10
処理液供給圧力: 450kPa
処理液温度: 25℃
通水速度: 100リットル/時
通水時間: 18m
通水量 30リットル
水量(kg)/原料素材(kg)30
処理液供給圧力: 450kPa
処理液温度: 25℃
通水速度: 100リットル/時
通水時間: 6m
通水量 10リットル
水量(kg)/原料素材(kg)10
原料素材量: 50g
処理液温度: 98℃
使用水量: 1500ml
撹拌時間: 18m
水量(kg)/原料素材(kg) 30
原料素材量: 50g
処理液温度: 98℃
使用水量: 500ml
撹拌時間: 6m
水量(kg)/原料素材(kg) 10
原料素材量: 50g
処理液温度: 25℃
使用水量: 1500ml
撹拌時間: 18m
水量(kg)/原料素材(kg) 30
原料素材量: 50g
処理液温度: 25℃
使用水量: 500ml
撹拌時間: 6m
水量(kg)/原料素材(kg) 10
そして上記実施例1~4の直翅目昆虫由来食材1の官能試験(ブラインドテスト)を、十分に訓練された5人のパネラーによって行った。
具体的な評価方法は、直翅目昆虫由来食材1を少量手に取り、口に含んだ際の、味・においの総合評価を各人5点満点、合計25点満点として評価した。採点は以下に示す基準で行った。
不快ではない 5点
やや不快ではない 4点
どちらともいえない 3点
やや不快 2点
不快 1点
また比較例5~8及び水液通過処理が施されていない原料素材2についても同様の官能試験(ブラインドテスト)を行った。結果を下表1に示す。
また全体の傾向として、処理液温度が高く、通水量が多いほど、高い評価となることが確認された。
上記官能試験結果を踏まえ、実施例1の直翅目昆虫由来食材1の臭気成分を、ガスクロマトグラフィーにて分析を行った。また比較用に水液通過処理が施されていない原料素材2についても臭気成分の分析も行った。
その結果、アルデヒド類、ピラジン類、カルボン酸類、アミン類等が検出され、実施例1の直翅目昆虫由来食材1において、いずれの成分も大幅に減少していることが確認された。
このうち、特に減少率が高く、且つ解析可能であった三物質を下表2に示す。
一方、浸漬撹拌処理機によって加工処理された原料素材2′(加圧済素材2A′)は、処理水W中に浮遊した状態となるため、網状部材によって濾し、更に十分に水を切ってからでないと、乾燥機に投入することができないものであり、網状部材に目詰まりする等、乾燥処理の前段階で非常に手間が掛かってしまうものであった。
また菓子工場等に直翅目昆虫由来食材1の製造装置を設けることができる場合には、乾燥前の加圧済素材2Aを直翅目昆虫由来食材1として他の材料に混入するような使い方も可能となる。
本発明は上述した実施例を基本となる実施例とするものであるが、本発明の技術的思想の範囲内で、例えば以下に示すような実施例を採ることもできる。
まず上述した基本となる実施例では、原料素材2を高圧下で水液通過処理し、タンパク質残留率90%以上で且つ脱臭された粉末とされた加圧済素材2Aを乾燥・粉砕し、これを直翅目昆虫由来食材1としたが、水液通過処理の際に用いた処理済水W1を利用することもできる。
すなわち原料素材2を水液通過処理した処理済水W1には、原料素材2の成分が多く含まれており、出汁と同様の用途が想定されるものである。
特に本発明の「適食化処理された直翅目昆虫由来食材の製造方法」は、上述したように耐圧密閉容器31を主要部材とした高圧抽出器3を用いたため、原料素材2の香気成分が蒸散してしまうのを防ぎ、風味豊かな処理水Wが得られるものである。
原料素材量:14g
通水時間:30s
通水速度:50L/h
使用水量:420ml
水量(kg)/原料素材(kg)30
結果は、イナゴ、オケラ共に、表1中の○に相当する良好な評価が得られることが確認された。
2 原料素材
2A 加圧済素材
2B 乾燥品
3 高圧抽出器
31 耐圧密閉容器
31A 下蓋部
31B 上蓋部
32 処理室
33 フィルタバスケット
34 フィルタエレメント
35 給液管
36 排液管
37 給気口
4 給液タンク
5 冷却器
6 加熱機
7 粉砕機
8 乾燥機
E ヨーロッパイエコオロギ
T タンパー
W 処理水
W1 処理済水
Claims (11)
- 乾燥状態の直翅目昆虫の原料素材が高圧下で水液通過処理を受けて、タンパク質残留率90%以上で且つ脱臭された粉末とされていることを特徴とする適食化処理された直翅目昆虫由来食材。
- 前記脱臭された粉末が、更に乾燥されていることを特徴とする請求項1記載の適食化処理された直翅目昆虫由来食材。
- 前記直翅目昆虫はコオロギ科昆虫であることを特徴とする請求項1または2記載の適食化処理された直翅目昆虫由来食材。
- 乾燥状態の直翅目昆虫の原料素材を、高圧抽出器において、水液通過処理を行うことを特徴とする適食化処理された直翅目昆虫由来食材の製造方法。
- 前記水液通過処理が行われた原料素材を、更に乾燥することを特徴とする請求項4記載の適食化処理された直翅目昆虫由来食材の製造方法。
- 前記乾燥状態の直翅目昆虫の原料素材は、コオロギ科昆虫の乾燥粉体であることを特徴とする請求項4または5記載の適食化処理された直翅目昆虫由来食材の製造方法。
- 前記高圧抽出器における直翅目昆虫の原料素材は粉末状のものがタッピング充填されるものであることを特徴とする請求項4、5または6いずれか記載の適食化処理された直翅目直翅目昆虫由来食材の製造方法。
- 前記高圧抽出機における処理圧力は200kPa~500kPaであることを特徴とする請求項4、5、6または7いずれか記載の適食化処理された直翅目昆虫由来食材の製造方法。
- 前記水液通過処理における通過処理水の温度は20℃~150℃であることを特徴とする請求項4、5、6、7または8いずれか記載の適食化処理された直翅目直翅目昆虫由来食材の製造方法。
- 前記水液通過処理における通過処理水の通過速度は50リットル/時~150リットル/時であることを特徴とする請求項4、5、6、7、8または9いずれか記載の適食化処理された直翅目昆虫由来食材の製造方法。
- 前記水液通過処理における通過処理水の通過量は、直翅目昆虫の原料素材の重量比10倍以上であることを特徴とする請求項4、5、6、7、8、9または10いずれか記載の適食化処理された直翅目昆虫由来食材の製造方法。
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