JP2022028975A - 異物感改善用眼科組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】プラノプロフェン及び/又はその塩を含有し、優れた異物感改善効果を有する眼科用組成物を提供する。【解決手段】下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有する異物感改善用眼科組成物。(A)プラノプロフェン、及び/又は薬学的に許容されるその塩(B)ブチル基含有フェノール(C)トコフェロール、ピリドキシン、コンドロイチン硫酸、それらの誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種【選択図】なし

Description

本発明は、眼の異物感の改善に有用な眼科組成物に関する。
角膜は、外界から順に、角膜上皮、ボーマン膜、角膜実質、デスメ膜、及び角膜内皮の5層で形成された、眼球最表面に構成された組織である。外界と直接接する解剖学的特徴から、抗原、微生物、及び砂埃等、種々の異物が侵入しやすい。一方、角膜に分布している知覚神経は、その殆どが三叉神経とされている。角膜の知覚は人体の疼痛知覚の中でも最も鋭敏なものの一つとされており、その疼痛の程度はきわめて鋭いものとなっている。即ち、神経末端は最後に角膜上皮直下で終わっており、僅かな角膜上皮の欠損や剥離でも、角膜上皮直下の神経終末が露出して刺激を受けるため、強い痛みとして感じられることになる(非特許文献1)。
このため、角膜上皮の欠損や剥離により、角膜本来のバリア機能が低下すると、砂埃、花粉、過剰量のタンパク質、化粧料のような汚れなどが眼表面に付着した場合に、異物感をより強く感じるようになる。
ここで、プラノプロフェンは、優れた抗炎症作用、鎮痛作用、及び解熱作用を併せ持つプロピオン酸系の非ステロイド系抗炎症剤として知られており、安全性が高いことから、点眼剤などの眼科組成物や、内服剤として広く利用されている。
プラノプロフェンを含有する眼科組成物の効能としては、異物感、なみだ目、かゆみ、かすみ、結膜充血の改善などが知られている。
点眼剤などの眼科組成物には、非常に多数種類の成分が配合されるのが通常である。しかし、成分の組み合わせによっては、有効成分の薬効を低下させる場合もあり、予測できないのが現状である。
プラノプロフェンを含む水性組成物については、保存中、特に光照射下での保存中に白濁したり、プラノプロフェンが分解したりし易いため、ジブチルヒドロキシトルエンなどを配合することでプラノプロフェン含有水性組成物の安定性を向上させることが試みられている。
近藤武久、角膜の神経、月刊眼科診療プラクティス 72:30,2001
本発明者は、プラノプロフェン及び/又は薬学的に許容されるその塩(以下、「その塩」と略称することもある。)を含む眼科組成物に、ブチル基含有フェノール(ジブチルヒドロキシトルエンなど)を配合することにより、角膜バリア機能を低下させ、ひいては、プラノプロフェン又はその塩による異物感改善効果が低下するという新たな課題を見出した。
そこで、本発明は、プラノプロフェン及び/又はその塩を含有し、優れた異物感改善効果を有する眼科組成物を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明者らは研究を重ね、(A)プラノプロフェン及び/又はその塩と、(B)ブチル基含有フェノール(ジブチルヒドロキシトルエンなど)とを含む眼科組成物に、(C)トコフェロール、ピリドキシン、コンドロイチン硫酸、それらの誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種とを配合することにより、角膜バリア機能を向上させ、ひいては異物感を改善する組成物となることを見出した。
驚くべきことに、上記(C)成分を配合することにより、プラノプロフェンとブチル基含有フェノールの配合による角膜バリア機能及び異物感の悪化が抑制されるだけでなく、プラノプロフェン及び/又はその塩の単独の場合(即ち、ブチル基含有フェノールを含まない場合)よりも、角膜バリア機能及び異物感の改善効果が高くなる。
さらに予測外なことに、ブチル基含有フェノールは、角膜バリア機能を低下させ、プラノプロフェン及び/又はその塩の異物感の改善効果を低下させる成分であるにも拘わらず、プラノプロフェン及び/又はその塩と、上記(C)成分とを含む眼科組成物に、ブチル基含有フェノールを配合することにより、角膜バリア機能が向上し、異物感の改善効果が高くなる。
本発明は、上記知見に基づくものであり、下記の眼科組成物及び方法を提供する。
項1. 下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有する異物感改善用眼科組成物。
(A)プラノプロフェン、及び/又は薬学的に許容されるその塩
(B)ブチル基含有フェノール(ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなど)
(C)トコフェロール、ピリドキシン、コンドロイチン硫酸、それらの誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種
項2. 上記(A)成分の総含有量が、眼科組成物の全量に対して、0.04~0.15w/v%である、項1に記載の眼科組成物。
項3. 上記(C)成分の下記(i)、(ii)、及び(iii)のうち2以上を含有する、項1又は2に記載の眼科組成物。
(i)トコフェロール、その誘導体、及び/又はそれらの塩
(ii)ピリドキシン、その誘導体、及び/又はそれらの塩
(iii)コンドロイチン硫酸、その誘導体、及び/又はそれらの塩
項4. さらに、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、クロルフェニラミン、グリチルリチン酸、エデト酸、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、項1~3のいずれかに記載の眼科組成物。
項5. 眼科組成物に、(A)プラノプロフェン及び/又はその塩、(B)ブチル基含有フェノール、並びに(C)トコフェロール、ピリドキシン、コンドロイチン硫酸、それらの誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種、を含有させる、眼科組成物への異物感抑制(改善、又は緩和)作用の付与または向上方法。
項6. 眼科組成物に、(A)プラノプロフェン及び/又はその塩、(B)ブチル基含有フェノール、並びに(C)トコフェロール、ピリドキシン、コンドロイチン硫酸、それらの誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種、を含有させる、眼科組成物への涙目抑制(改善、又は緩和)作用の付与または向上方法。
プラノプロフェン及び/又はその塩を含む眼科組成物に、ブチル基含有フェノール(ジブチルヒドロキシトルエンなど)を配合することにより、角膜バリア機能が低下し、ひいては異物感改善効果が低下する。
この点、本発明の眼科組成物は、プラノプロフェン及び/又はその塩とブチル基含有フェノールとを含むにも拘わらず、優れた角膜バリア機能改善効果、ひいては優れた異物感改善効果を奏する。
その程度は、プラノプロフェン及び/又はその塩とブチル基含有フェノールを含む場合よりも高いだけでなく、プラノプロフェン又はその塩の単独の場合(即ち、ブチル基含有フェノールを含まない場合)よりも著しく高い。
また、ブチル基含有フェノールは、プラノプロフェン及び/又はその塩と共に含有される場合に、角膜バリア機能、及び異物感の改善効果を低下させる成分であるにも拘わらず、ブチル基含有フェノールを含有する本発明の眼科組成物は、プラノプロフェン及び/又はその塩と、上記(C)成分とを含む眼科組成物に比べて、優れた角膜バリア機能改善効果、ひいては異物感改善効果を奏する。
従って、本発明の眼科組成物は、角膜バリア機能の改善用、ひいては眼の異物感の改善用に好適に使用できる。また、角膜バリア機能が低下すると、異物感の中でも特にチクチクした異物感を強く感じるようになるため、本発明の眼科組成物は、チクチクする感じや、チクチクする異物感の改善に特に好適に使用できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の眼科組成物は、
(A)プラノプロフェン及び/又はその塩、
(B)ブチル基含有フェノール、並びに
(C)トコフェロール、ピリドキシン、コンドロイチン硫酸、それらの誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種、
を含有する異物感改善用の眼科組成物である。
プラノプロフェン及び/又はその塩((A)成分)
プラノプロフェンの塩は、薬学的又は生理学的に許容される塩であればよく、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩など)、アンモニウム塩、金属塩(アルミニウム塩など)のような無機塩基との塩、有機アミン塩(メチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、モルホリン塩、ピペラジン塩、ピロリジン塩、トリピリジン塩、ピコリン塩など)のような有機塩基との塩などが挙げられる。
プラノプロフェン及びその塩には、水和物の形態のものも含まれる。
プラノプロフェン及びその塩は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
プラノプロフェン及びその塩の中で、最も好ましいのはプラノプロフェンである。
眼科組成物中のプラノプロフェン及び/又はその塩の総含有量は、組成物の全量に対して、0.03w/v%以上が好ましく、0.04w/v%以上がより好ましく、0.05w/v%以上がさらに好ましい。
また、プラノプロフェン及び/又はその塩の総含有量は、組成物の全量に対して、0.5w/v%以下が好ましく、0.2w/v%以下がより好ましく、0.1w/v%以下がさらに好ましく、0.08w/v%以下がさらにより好ましく、0.07w/v%以下が特に好ましく、0.06w/v%以下が最も好ましい。
上記範囲であれば、角膜バリア機能改善効果及び異物感改善効果を含む本願発明の効果が十分に得られる。
眼科組成物中のプラノプロフェン及び/又はその塩の総含有量としては、組成物の全量に対して、例えば、0.05w/v%、0.1w/v%が挙げられる。
ブチル基含有フェノール((B)成分)
ブチル基含有フェノールとしては、それには限定されないが、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)などが挙げられる。
中でも、ジブチルヒドロキシトルエンが好ましい。
眼科組成物中のブチル基含有フェノールの含有量は、組成物の全量に対して、0.00005w/v%以上が好ましく、0.0001w/v%以上がより好ましく、0.0005w/v%以上がさらにより好ましく、0.001w/v%以上がさらにより好ましく、0.005w/v%以上が特に好ましい。上記範囲であれば、角膜バリア機能改善効果及び異物感改善効果を含む本願発明の効果が十分に得られると共に、プラノプロフェン及び/又はその塩の眼科組成物中での安定性を実用上十分なものにすることができる。
また、ブチル基含有フェノールの含有量は、組成物の全量に対して、1w/v%以下が好ましく、0.1w/v%以下がより好ましく、0.05w/v%以下がさらにより好ましく、0.01w/v%以下がさらにより好ましく、0.005w/v%以下が特に好ましい。上記範囲であれば、角膜バリア機能改善効果及び異物感改善効果を含む本願発明の効果が十分に得られる。
眼科組成物中のブチル基含有フェノールの含有量は、プラノプロフェン及び/又はその塩の1重量部に対して、0.001重量部以上が好ましく、0.01重量部以上がより好ましく、0.05重量部以上がさらにより好ましく、0.09重量部以上がさらにより好ましい。上記範囲であれば、角膜バリア機能改善効果及び異物感改善効果を含む本願発明の効果が十分に得られると共に、プラノプロフェン及び/又はその塩の眼科組成物中での安定性を実用上十分なものにすることができる。
また、ブチル基含有フェノールの含有量は、プラノプロフェン及び/又はその塩の1重量部に対して、5重量部以下が好ましく、1重量部以下がより好ましく、0.5重量部以下がさらに好ましく、0.15重量部以下がさらにより好ましく、0.1重量部以下が特に好ましい。上記範囲であれば、角膜バリア機能改善効果及び異物感改善効果を含む本願発明の効果が十分に得られる。
トコフェロール類((C)成分)
本発明の眼科組成物の(C)成分は、トコフェロール、その誘導体、及び/又はそれらの塩であり得る。
トコフェロールとしては、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロールなどが挙げられる。
トコフェロールの誘導体としては、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロールなどが挙げられる。
トコフェロール又はその誘導体の塩は、薬学的又は生理学的に許容される塩であればよく、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩など)、アンモニウム塩、金属塩(アルミニウム塩など)のような無機塩基との塩、有機アミン塩(メチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、モルホリン塩、ピペラジン塩、ピロリジン塩、トリピリジン塩、ピコリン塩など)のような有機塩基との塩などが挙げられる。
眼科組成物中のトコフェロール、その誘導体、及び/又はそれらの塩の総含有量は、組成物の全量に対して、0.001w/v%以上が好ましく、0.005w/v%以上がより好ましく、0.01w/v%以上がさらにより好ましく、0.025w/v%以上がさらにより好ましい。
また、トコフェロール、その誘導体、及び/又はそれらの塩の総含有量は、組成物の全量に対して、1w/v%以下が好ましく、0.5w/v%以下がより好ましく、0.1w/v%以下がさらにより好ましく、0.05w/v%以下がさらにより好ましい。
上記範囲であれば、角膜バリア機能改善効果及び異物感改善効果を含む本願発明の効果が十分に得られる。
眼科組成物中のトコフェロール、その誘導体、及び/又はそれらの塩の総含有量は、プラノプロフェン及び/又はその塩の総含有量の1重量部に対して、0.01重量部以上が好ましく、0.1重量部以上がより好ましく、0.2重量部以上がさらにより好ましく、0.5重量部以上がさらにより好ましい。
また、トコフェロール、その誘導体、及び/又はそれらの塩の総含有量は、プラノプロフェン及び/又はその塩の総含有量の1重量部に対して、10重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましく、1.5重量部以下がさらにより好ましく、1重量部以下がさらにより好ましい。
上記範囲であれば、角膜バリア機能改善効果及び異物感改善効果を含む本願発明の効果が十分に得られる。
眼科組成物中のトコフェロール、その誘導体、及び/又はそれらの塩の総含有量は、ブチル基含有フェノールの1重量部に対して、0.01重量部以上が好ましく、0.1重量部以上がより好ましく、0.5重量部以上がさらにより好ましく、1重量部以上がさらにより好ましく、10重量部以上が特に好ましい。
また、トコフェロール、その誘導体、及び/又はそれらの塩の総含有量は、ブチル基含有フェノールの1重量部に対して、500重量部以下が好ましく、100重量部以下がより好ましく、50重量部以下がさらにより好ましく、10重量部以下がさらにより好ましい。
上記範囲であれば、角膜バリア機能改善効果及び異物感改善効果を含む本願発明の効果が十分に得られる。
ピリドキシン類((C)成分)
本発明の眼科組成物の(C)成分は、ピリドキシン、及び/又はそれらの塩であり得る。
ピリドキシン又はその塩は、薬学的又は生理学的に許容される塩であればよいが、例えば、塩酸塩などが挙げられる。
眼科組成物中のピリドキシン、その誘導体、及び/又はそれらの塩の総含有量は、組成物の全量に対して、0.001w/v%以上が好ましく、0.01w/v%以上がより好ましく、0.05w/v%以上がさらにより好ましく、0.1w/v%以上がさらにより好ましい。
また、ピリドキシン、その誘導体、及び/又はそれらの塩の総含有量は、組成物の全量に対して、5w/v%以下が好ましく、1w/v%以下がより好ましく、0.5w/v%以下がさらにより好ましく、0.1w/v%以下がさらにより好ましい。
上記範囲であれば、角膜バリア機能改善効果及び異物感改善効果を含む本願発明の効果が十分に得られる。
眼科組成物中のピリドキシン、その誘導体、及び/又はそれらの塩の総含有量は、プラノプロフェン及び/又はその塩の総含有量の1重量部に対して、0.01重量部以上が好ましく、0.1重量部以上がより好ましく、0.2重量部以上がさらにより好ましく、1重量部以上がさらにより好ましい。
また、ピリドキシン、その誘導体、及び/又はそれらの塩の総含有量は、プラノプロフェン及び/又はその塩の総含有量の1重量部に対して、10重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましく、3重量部以下がさらにより好ましく、2重量部以下がさらにより好ましい。
上記範囲であれば、角膜バリア機能改善効果及び異物感改善効果を含む本願発明の効果が十分に得られる。
眼科組成物中のピリドキシン、その誘導体、及び/又はそれらの塩の総含有量は、ブチル基含有フェノールの1重量部に対して、0.01重量部以上が好ましく、0.1重量部以上がより好ましく、1重量部以上がさらにより好ましく、10重量部以上がさらにより好ましい。
また、ピリドキシン、その誘導体、及び/又はそれらの塩の総含有量は、ブチル基含有フェノールの1重量部に対して、500重量部以下が好ましく、100重量部以下がより好ましく、50重量部以下がさらにより好ましく、20重量部以下がさらにより好ましい。
上記範囲であれば、角膜バリア機能改善効果及び異物感改善効果を含む本願発明の効果が十分に得られる。
コンドロイチン硫酸((C)成分)
本発明の眼科組成物の(C)成分は、コンドロイチン硫酸、その誘導体、及び/又はそれらの塩であり得る。
コンドロイチン硫酸は、D-グルクロン酸とN-アセチルグルコサミンが反復する糖鎖の水酸基の全部または一部に硫酸がエステル結合したものである。硫酸の結合位置や数は多様であり、また、N-アセチルグルコサミンの全部または一部がイズロン酸に置換されたものもある。
本発明で使用するコンドロイチン硫酸は、どのような構造を有するものであってもよい。例えば、コンドロイチン4硫酸(コンドロイチン硫酸A)、コンドロイチン6硫酸(コンドロイチン硫酸C)、N-アセチルグルコサミンの4位及び6位が硫酸化されたコンドロイチン硫酸Eなどが挙げられる。また、コンドロイチン硫酸は、動物から抽出されたものであってもよい。
コンドロイチン硫酸の塩は、薬学的又は生理学的に許容される塩であればよく、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩など)、アンモニウム塩、金属塩(アルミニウム塩など)のような無機塩基との塩、有機アミン塩(メチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、モルホリン塩、ピペラジン塩、ピロリジン塩、トリピリジン塩、ピコリン塩など)のような有機塩基との塩などが挙げられる。
好ましくは、アルカリ金属塩であり、さらに好ましくはコンドロイチン硫酸ナトリウムであり、中でも、日本局方外医薬品規格2002に掲載されたコンドロイチン硫酸ナトリウムが挙げられる。
眼科組成物中のコンドロイチン硫酸、その誘導体、及び/又はそれらの塩の総含有量は、組成物の全量に対して、0.001w/v%以上が好ましく、0.01w/v%以上がより好ましく、0.05w/v%以上がさらに好ましく、0.1w/v%以上がさらにより好ましく、0.5w/v%以上がさらにより好ましい。
また、コンドロイチン硫酸、その誘導体、及び/又はそれらの塩の総含有量は、組成物の全量に対して、5w/v%以下が好ましく、1w/v%以下がより好ましく、0.7w/v%以下がさらにより好ましく、0.5w/v%以下がさらにより好ましい。
上記範囲であれば、角膜バリア機能改善効果及び異物感改善効果を含む本願発明の効果が十分に得られる。
眼科組成物中のコンドロイチン硫酸、その誘導体、及び/又はそれらの塩の総含有量は、プラノプロフェン及び/又はその塩の総含有量の1重量部に対して、0.1重量部以上が好ましく、1重量部以上がより好ましく、2重量部以上がさらにより好ましく、9重量部以上がさらにより好ましい。
また、コンドロイチン硫酸、その誘導体、及び/又はそれらの塩の総含有量は、プラノプロフェン及び/又はその塩の総含有量の1重量部に対して、100重量部以下が好ましく、50重量部以下がより好ましく、20重量部以下がさらにより好ましく、10重量部以下がさらにより好ましい。
上記範囲であれば、角膜バリア機能改善効果及び異物感改善効果を含む本願発明の効果が十分に得られる。
眼科組成物中のコンドロイチン硫酸、その誘導体、及び/又はそれらの塩の総含有量は、ブチル基含有フェノールの1重量部に対して、1重量部以上が好ましく、5重量部以上がより好ましく、10重量部以上がさらにより好ましく、60重量部以上がさらにより好ましい。
また、コンドロイチン硫酸、その誘導体、及び/又はそれらの塩の総含有量は、ブチル基含有フェノールの1重量部に対して、5000重量部以下が好ましく、1000重量部以下がより好ましく、500重量部以下がさらにより好ましく、100重量部以下がさらにより好ましい。
上記範囲であれば、角膜バリア機能改善効果及び異物感改善効果を含む本願発明の効果が十分に得られる。
(C)成分の総含有量
眼科組成物中の(C)成分の総含有量は、組成物の全量に対して、0.0001w/v%以上が好ましく、0.001w/v%以上がより好ましく、0.05w/v%以上がさらにより好ましく、0.25w/v%以上がさらにより好ましい。
また、(C)成分の総含有量は、組成物の全量に対して、5w/v%以下が好ましく、2w/v%以下がより好ましく、1w/v%以下がさらにより好ましく、0.7w/v%以下がさらにより好ましい。
上記範囲であれば、角膜バリア機能改善効果及び異物感改善効果を含む本願発明の効果が十分に得られる。
眼科組成物中の(C)成分の総含有量は、プラノプロフェン及び/又はその塩の総含有量の1重量部に対して、0.01重量部以上が好ましく、0.1重量部以上がより好ましく、0.2重量部以上がさらにより好ましく、1重量部以上がさらにより好ましい。
また、(C)成分の総含有量は、プラノプロフェン及び/又はその塩の総含有量の1重量部に対して、500重量部以下が好ましく、50重量部以下がより好ましく、20重量部以下がさらにより好ましく、15重量部以下がさらにより好ましい。
上記範囲であれば、角膜バリア機能改善効果及び異物感改善効果を含む本願発明の効果が十分に得られる。
眼科組成物中の(C)成分の総含有量は、ブチル基含有フェノールの1重量部に対して、0.01重量部以上が好ましく、0.1重量部以上がより好ましく、0.5重量部以上がさらにより好ましく、1重量部以上がさらにより好ましい。
また、(C)成分の総含有量は、ブチル基含有フェノールの1重量部に対して、1000重量部以下が好ましく、500重量部以下がより好ましく、200重量部以下がさらにより好ましく、150重量部以下がさらにより好ましい。
上記範囲であれば、角膜バリア機能改善効果及び異物感改善効果を含む本願発明の効果が十分に得られる。
(C)成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
2種以上を組み合わせて使用する場合、(C)成分の3系列の成分(i)~(iii)((i)トコフェロール、その誘導体、及びそれらの塩、(ii)ピリドキシン、その誘導体、及びそれらの塩、並びに(iii)コンドロイチン硫酸、その誘導体、及びそれらの塩)のうちの2系列、又は3系列の成分を用いることができる。
また、1系列の成分に包含される2種以上の化合物を用いることもできる。
製剤
眼科組成物の性状は特に限定されず、例えば、液体状、流動状、ゲル状、又は半固形状などの何れの性状であってもよい。また、用時調製により、液体状、流動状、ゲル状、又は半固形状になったものも含まれる。半固形状は、例えば軟膏剤のように、力を加えることにより変形させ得る塑性を有する性状をいう。
また、眼科組成物は、水性組成物(基剤又は担体として水性ないしは親水性のものを主に含む)であってもよく、油性組成物(基剤又は担体として油性ないしは疎水性のものを主に含む)であっても良い。
水性組成物の場合の水の含有量は、製剤の全量に対して、50重量%以上が好ましく、75重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらにより好ましい。また、95重量%以上、又は98重量%以上であってもよい。また、基剤又は担体が水のみからなっていてもよい。
油性組成物の場合の水の含有量は、製剤の全量に対して、50重量%未満が好ましく、30重量%以下がより好ましく、20重量%以下がさらにより好ましい。
本発明の眼科組成物は、水性組成物であることが好ましい。
本発明の眼科組成物の剤型は特に限定されず、例えば、点眼剤(点眼液又は点眼薬ともいう。また、点眼剤にはコンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む)、洗眼剤、眼軟膏(水溶性眼軟膏、油溶性眼軟膏)、コンタクトレンズ装着液、眼内注射剤(例えば、硝子体内注射剤)、コンタクトレンズ用液(洗浄液、保存液、消毒液、マルチパーパスソリューション、パッケージソリューション)、移植用の角膜等の摘出眼組織の保存剤、手術時潅流液などが挙げられる。点眼剤、洗眼剤、眼軟膏には、コンタクトレンズ装着時に使用するものも含まれる。
なお、「コンタクトレンズ」は、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ(イオン性及び非イオン性の双方を包含し、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ及び非シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの双方を包含する)を含む。
本発明の眼科組成物の剤型として、好ましくは、点眼剤、洗眼剤、眼軟膏(水溶性眼軟膏、油溶性眼軟膏)、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ用液(洗浄液、保存液、消毒液、マルチパーパスソリューション、パッケージソリューション)などが挙げられ、さらに好ましくは点眼剤、洗眼剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ用液(洗浄液、保存液、消毒液、マルチパーパスソリューション)などが挙げられ、さらにより好ましくは点眼剤、洗眼剤が挙げられ、特に好ましくは点眼剤が挙げられる。
但し、本発明の眼科組成物は、コンタクトレンズ(ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ、中でもシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ)装用時又は装着時に適用する眼科組成物(特に、点眼剤、洗眼剤、又は眼軟膏)を除くものとすることができる。
本発明の眼科組成物は、使い切りのユニットドーズでも繰り返し使用できるマルチドーズでもよいが、保存効力に優れていることから、マルチドーズの形態で収容して使用されることが好ましい。
本発明の眼科組成物は、上記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を、薬学的に許容される基剤又は担体、必要に応じて、眼科組成物の薬学的に許容される添加剤やその他の有効成分と混合することにより、例えば第16改正日本薬局方解説書に記載の慣用の方法で調製できる。
基剤又は担体
基剤又は担体として、例えば、水;エタノールのような極性溶媒;油性基剤などが挙げられる。基剤又は担体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
添加剤
添加剤としては、例えば、非イオン界面活性剤、防腐剤、緩衝剤、pH調節剤、等張化剤、増粘剤又は粘稠化剤、安定化剤、油分、糖類、高分子化合物、多価アルコール、無機塩類、清涼化剤、抗酸化剤などが挙げられる。
添加剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。また、各添加剤について、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
添加剤の具体例を以下に例示する。
<非イオン界面活性剤>
本発明の眼科組成物は、非イオン界面活性剤を含むことが好ましい。
非イオン界面活性剤としては、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類;ポロクサマー407、ポロクサマー235、ポロクサマー188、ポロクサマー403、ポロクサマー237、ポロクサマー124等のPOE・POPグリコール類;POE硬化ヒマシ油40、POE硬化ヒマシ油50、POE硬化ヒマシ油60、POE硬化ヒマシ油80等のPOE硬化ヒマシ油;POEヒマシ油3、POEヒマシ油4、POEヒマシ油6、POEヒマシ油7、POEヒマシ油10、POEヒマシ油13.5、POEヒマシ油17、POEヒマシ油20、POEヒマシ油25、POEヒマシ油30、POEヒマシ油35、POEヒマシ油50等のPOEヒマシ油;モノステアリン酸ポリエチレングリコール(2E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(4E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(9E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(10E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(23E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(25E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(32E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40E.O.、ステアリン酸ポリオキシル40)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(45E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(55E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(75E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(140E.O.)等のモノステアリン酸ポリエチレングリコール;POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル類;POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE-POPアルキルエーテル類;POE(10)ノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類等が挙げられる。なお、上記例示した化合物において、POEはポリオキシエチレン、POPはポリオキシプロピレン、及び括弧内の数字は付加モル数を示す。
中でも、POEソルビタン脂肪酸エステル類;POE・POPグリコール類;POE硬化ヒマシ油;POEヒマシ油、モノステアリン酸ポリエチレングリコールが好ましく、ポリソルベート80、ポロクサマー407、POE硬化ヒマシ油40、POE硬化ヒマシ油60、POEヒマシ油3、POEヒマシ油10、POEヒマシ油35、ステアリン酸ポリオキシル40がより好ましく、ポリソルベート80、POE硬化ヒマシ油60がさらに好ましく、ポリソルベート80が特に好ましい。
本発明の眼科組成物に非イオン界面活性剤を配合する場合、その配合量の一例として、眼科組成物の全量に対して、非イオン界面活性剤の総量で、0.001w/v%以上、中でも0.005w/v%以上、中でも0.01w/v%以上、中でも0.05w/v%以上が挙げられる。また、眼科組成物の全量に対して、非イオン界面活性剤の総量で、5w/v%以下、中でも1w/v%以下、中でも0.5w/v%以下、中でも0.3w/v%以下が挙げられる。
<防腐剤>
防腐剤としては、塩化ポリドロニウム、アルキルポリアミノエチルグリシン類(例えば、塩酸アルキルジアミノエチルグリシンなど)、安息香酸ナトリウム、エタノール、第四級アンモニウム塩(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなど)、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル(例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルなど)、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(例えば、塩酸ポリヘキサニドなど)、及びグローキル(ローディア社製)などが挙げられる。
中でも、アルキルポリアミノエチルグリシン類(例えば、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン)、安息香酸ナトリウム、エタノール、第四級アンモニウム塩、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸エステル、ビグアニド化合物が好ましく、第四級アンモニウム塩、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ビグアニド化合物がより好ましく、塩化ベンザルコニウム、塩酸ポリヘキサニドがさらに好ましい。
本発明の眼科組成物に防腐剤を配合する場合、その配合量の一例として、眼科組成物の全量に対して、防腐剤の総量で、0.000001w/v%以上、中でも0.00001w/v%以上、中でも0.00005w/v%以上、中でも0.001w/v%以上、中でも0.005w/v%以上が挙げられる。また、眼科組成物の全量に対して、防腐剤の総量で、1w/v%以下、中でも0.1w/v%以下、中でも0.05w/v%以下、中でも0.02w/v%以下、中でも0.01w/v%以下が挙げられる。
<緩衝剤>
本発明の眼科組成物は、緩衝剤を含むことが好ましい。
緩衝剤としては、例えば、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤等が挙げられる。
ホウ酸緩衝剤の成分としては、ホウ酸、ホウ酸塩(ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂など)などが挙げられる。ホウ酸塩は水和物であっても良い。
リン酸緩衝剤の成分としては、リン酸、リン酸塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウムなど)などが挙げられる。リン酸塩は水和物であっても良い。
炭酸緩衝剤の成分としては、炭酸、炭酸塩(炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウムなど)などが挙げられる。炭酸塩は水和物であっても良い。
クエン酸緩衝剤の成分としては、クエン酸、クエン酸塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウムなど)などが挙げられる。クエン酸塩は水和物であっても良い。
酢酸緩衝剤の成分としては、酢酸、酢酸塩(酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウムなど)などが挙げられる。酢酸塩は水和物であっても良い。
中でも、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤が好ましく、ホウ酸緩衝剤がより好ましい。ホウ酸緩衝剤としては、ホウ酸とその塩との組合せが好ましく、ホウ酸とホウ酸のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩との組合せがより好ましく、ホウ酸とホウ酸のアルカリ金属塩との組合せが更に好ましく、ホウ酸とホウ砂との組合せが更により好ましい。
本発明の眼科組成物に緩衝剤を配合する場合、緩衝剤の配合量は、緩衝剤の種類、他の配合成分の種類や量等に応じて異なり、一律に規定することはできないが、例えば、眼科組成物の全量に対して、緩衝剤の総量で、0.001w/v%以上、中でも0.01w/v%以上、中でも0.05w/v%以上、中でも0.1w/v%以上が挙げられる。また、眼科組成物の全量に対して、緩衝剤の総量で、10w/v%以下、中でも5w/v%以下、中でも3w/v%以下、中でも2w/v%以下が挙げられる。
<pH調節剤>
pH調節剤としては、塩酸、硫酸、ポリリン酸、有機酸(プロピオン酸、シュウ酸、グルコン酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸など)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミンなどが挙げられる。
<等張化剤>
等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、グリセリン、及びプロピレングリコールなどが挙げられる。
<増粘剤ないしは粘稠化剤>
本発明の眼科組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、コンドロイチン硫酸、その誘導体、又はそれらの塩以外の増粘剤ないしは粘稠化剤を含むことができる。
増粘剤又は粘稠化剤としては、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、セルロース系高分子化合物(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど)、アラビアゴム、カラヤガム、キサンタンガム、寒天、アルギン酸、α-シクロデキストリン、デキストリン、デキストラン、ムコ多糖類(例えば、ヘパリン類似物質、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリノイド、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩(ナトリウム塩など)など)、デンプン、キチン及びその誘導体、キトサン及びその誘導体、カラギーナン、ソルビトール、ポリビニル系高分子化合物(ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメタアクリレート、カルボキシビニルポリマーなど)、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、及びカリウム塩など)、ポリアクリル酸のアミン塩(モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩など)、カゼイン、ゼラチン、コラーゲン、ペクチン、エラスチン、セラミド、流動パラフィン、グリセリン、ポリエチレングリコール、マクロゴール、ポリエチレンイミンアルギン酸塩(ナトリウム塩など)、アルギン酸エステル(プロピレングリコールエステルなど)、トラガント末、並びにトリイソプロパノールアミンなどが挙げられる。
<安定化剤>
安定化剤としては、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、及びモノステアリン酸グリセリンなどが挙げられる。
<油分>
油分としては、スクワラン、精製ラノリンのような動物油、流動パラフィン、白色ワセリンのような鉱物油、ヒマシ油、ゴマ油のような植物油などが挙げられる。
<糖類>
糖類としては、単糖類、二糖類、具体的にはグルコース、マルトース、トレハロース、スクロース、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなどが挙げられる。
<多価アルコール>
多価アルコールとしては、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、キシリトール、ジエチレングリコール、マンニトール、ソルビトール、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
<無機塩類>
無機塩類としては、それには限定されないが、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム(乾燥炭酸ナトリウムを含む)、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
中でも、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム(乾燥炭酸ナトリウムを含む)、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムが好ましく、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムがより好ましく、塩化カリウム、塩化ナトリウムがさらに好ましい。
<清涼化剤>
清涼化剤としては、メントール、アネトール、オイゲノール、カンフル、ゲラニオール、シネオール、ボルネオール、リモネン、リュウノウ等のテルペノイドが挙げられる。これらは、d体、l体又はdl体のいずれでもよい。これらは、d体、l体又はdl体のいずれでもよいまた、ハッカ油、クールミント油、スペアミント油、ペパーミント油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油等の精油も挙げられる。
<抗酸化剤>
本発明の眼科組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、ブチル基含有フェノール以外の抗酸化剤を含むことができる。
脂溶性の抗酸化剤としては、ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA);アスコルビン酸パルミテート、アスコルビン酸ステアレート、アスコルビン酸リン酸アミノプロピル、アスコルビン酸リン酸トコフェロール、アスコルビン酸トリリン酸、アスコルビン酸リン酸パルミテートのようなアスコルビン酸エステル;没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、没食子酸ドデシルのような没食子酸エステル;プロピルガラート; 3-ブチル-4-ヒドロキシキノリン-2オン;ルテイン、アスタキサンチンのようなカロテノイド類;アントシアニン類、カテキン、タンニン、クルクミンなどのポリフェノール類;レチノール、レチノールエステル(酢酸レチノール、プロピオン酸レチノール、酪酸レチノール、オクチル酸レチノール、ラウリル酸レチノール、ステアリン酸レチノール、ミリスチン酸レチノール、オレイン酸レチノール、リノレン酸レチノール、リノール酸レチノール、パルミチン酸レチノールなど)、レチナール、レチナールエステル(酢酸レチナール、プロピオン酸レチナール、パルミチン酸レチナールなど)、レチノイン酸、レチノイン酸エステル(レチノイン酸メチル、レチノイン酸エチル、レチノイン酸レチノール、レチノイン酸トコフェロールなど)、レチノールデヒドロ体、レチナールデヒドロ体、レチノイン酸デヒドロ体、プロビタミンA(α-カロチン、β-カロチン、γ-カロチン、δ-カロチン、リコピン、ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチン、エキネノンなど)、ビタミンAなどのビタミンA類;CoQ10などが挙げられる。
また、水溶性の抗酸化剤としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体(アスコルビン酸-2-硫酸2ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、アスコルビン酸-2-リン酸ナトリウムなど)、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、エデト酸又はその塩(エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウムなど)などが挙げられる。
本発明の眼科組成物は、エデト酸又はその塩を含むことが好ましい。
本願の眼科組成物がエデト酸及び/又はその塩を含む場合、眼科組成物中のエデト酸及び/又はその塩の総含有量は、組成物の全量に対して、好ましくは0.0001w/v%以上、より好ましくは0.001w/v%以上、さらにより好ましくは0.01w/v%以上とすることができる。また、例えば、0.5w/v%以下とすることができ、0.1w/v%以下とすることもでき、0.05w/v%以下とすることもできる。
その他の薬理活性成分又は生理活性成分
本発明の眼科組成物には、上記の(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の他に、薬理活性又は生理活性を有する成分を配合することができる。
薬理活性成分又は生理活性成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
このような薬理活性成分や生理活性成分として、一般用医薬品製造販売承認基準2012年版(一般社団法人レギュラトリーサイエンス学会監修)に記載された各種医薬における有効成分を例示できる。例えば、充血除去成分、眼筋調節薬成分、抗炎症薬成分、収斂薬成分、抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分、ビタミン類、アミノ酸類、抗菌薬又は殺菌薬、局所麻酔薬成分、無痛化剤などが挙げられる。これらの薬剤の具体例を以下に例示する。
<充血除去成分(血管収縮剤)>
本発明の眼科組成物は、充血除去成分を含むことが好ましく、これにより、本発明の効果がより顕著に奏される。
充血除去成分としては、例えば、α-アドレナリン作動薬、具体的にはオキシメタゾリン、テトラヒドロゾリン、ナファゾリン、又はそれらの塩酸塩、硝酸塩などの塩などの、イミダゾリン系の充血除去成分、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリン、酒石酸水素エピネフリンなどが挙げられる。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
血管収縮成分の中でも、イミダゾリン系血管収縮成分が好ましく、テトラヒドロゾリン、又はその塩がより好ましい。
イミダゾリン系血管収縮成分について詳述すると、イミダゾリン系血管収縮成分の塩は、薬学的又は生理学的に許容される塩であればよく、例えば、マレイン酸塩、フマル酸塩などの有機酸塩;塩酸塩、硫酸塩などの無機酸塩;金属塩などの塩が挙げられる。塩の中では、無機酸塩が好ましく、塩酸塩、又は硝酸塩がより好ましく、塩酸塩(塩酸テトラヒドロゾリン等)が特に好ましい。
本発明の眼科組成物がイミダゾリン系血管収縮成分を含む場合、眼科組成物中のイミダゾリン系血管収縮成分の総含有量は、組成物の全量に対して、好ましくは0.0001w/v%以上、より好ましくは0.0005w/v%以上、さらにより好ましくは0.001w/v%以上とすることができる。また、例えば、0.5w/v%以下とすることができ、0.1w/v%以下とすることもでき、0.05w/v%以下とすることもできる。
本願の眼科組成物がテトラヒドロゾリン及び/又はその塩を含む場合、眼科組成物中のテトラヒドロゾリン及び/又はその塩の総含有量は、組成物の全量に対して、好ましくは0.001w/v%以上、より好ましくは0.01w/v%以上、さらにより好ましくは0.025w/v%以上とすることができる。また、例えば、0.5w/v%以下とすることができ、0.1w/v%以下とすることもでき、0.05w/v%以下とすることもできる。
テトラヒドロゾリン及び/又はその塩の総含有量としては、0.05w/v%が特に好ましい。
<眼筋調節薬成分>
眼筋調節薬成分としては、例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン、及び硫酸アトロピンなどが挙げられる。
<抗炎症薬成分>
本発明の眼科組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、プラノプロフェン又はその塩以外の抗炎症薬成分を含むことができる。
このような抗炎症薬成分ないしは収斂薬成分として、例えば、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、アラントイン、インドメタシン、塩化リゾチーム、硝酸銀、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸又はその塩(グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸二アンモニウムなど)、ジクロフェナクナトリウム、ブロムフェナクナトリウム、塩化ベルベリン、及び硫酸ベルベリンなどが挙げられる。
グリチルリチン酸及び/又はその塩を含む場合について詳述すると、本願の眼科組成物がグリチルリチン酸及び/又はその塩を含む場合、眼科組成物中のグリチルリチン酸及び/又はその塩の総含有量は、組成物の全量に対して、好ましくは0.001w/v%以上、より好ましくは0.01w/v%以上、さらにより好ましくは0.05w/v%以上とすることができる。また、例えば、1w/v%以下とすることができ、0.5w/v%以下とすることもでき、0.25w/v%以下とすることもできる。
本発明の眼科組成物は、プラノプロフェン又はその塩以外の抗炎症薬成分を含まないこともできる。これにより、本発明の効果が向上する場合もある。
<抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分>
抗ヒスタミン薬(ヒスタミン受容体拮抗薬)として、ジフェンヒドラミン又はその塩酸塩などの塩、クロルフェニラミン又はそのマレイン酸塩などの塩、レボカバスチン又はその塩酸塩などの塩などが挙げられる。
また、ケミカルメディエーターの遊離抑制により抗アレルギー作用を発揮する抗アレルギー薬成分として、クロモグリク酸又はそのナトリウム塩などの塩、トラニラスト、イブジラスト、アシタザノラスト、タザノラスト、スプラタスト又はそのトシル酸塩などの塩、ペミロラスト又はそのカリウム塩などの塩などが挙げられる。
また、ヒスタミン受容体に拮抗すると共に、ケミカルメディエーターの遊離を抑制することにより抗アレルギー作用を発揮する抗ヒスタミン薬成分として、オロパタジン、フマル酸ケトチフェン、アンレキサノクス、オキサトミドなどが挙げられる。
但し、本発明の眼科組成物は、ケミカルメディエーターの遊離抑制により抗アレルギー作用を発揮する抗アレルギー薬成分(特に、トラニラスト、ペミロラスト又はそのカリウム塩などの塩)、及び/又はケミカルメディエーターの遊離抑制作用を有する抗ヒスタミン薬成分(特に、オロパタジン又はその塩酸塩などの塩)を含まないことが好ましい。これは、これらの成分を本発明の組成物に添加した場合に不快な刺激感が生じる場合があるからである。
本発明の眼科組成物は、ケミカルメディエーターの遊離抑制作用を有する抗ヒスタミン薬以外の抗ヒスタミン薬を含むことが好ましく、これにより、本発明の効果がより顕著に奏される。
中でも、クロルフェニラミン及び/又はその塩について詳述すると、クロルフェニラミンの塩は、薬学的又は生理学的に許容される塩であればよく、例えば、マレイン酸塩、フマル酸塩などの有機酸塩;塩酸塩、硫酸塩などの無機酸塩;金属塩などの塩が挙げられる。塩の中では、有機酸塩が好ましく、マレイン酸塩が特に好ましい。
クロルフェニラミン及びその塩は、水和物の形態であってもよく、また、d体、l体、dl体の何れであってもよい。
クロルフェニラミン及びその塩は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
クロルフェニラミン及び/又はその塩の中で、最も好ましいのはマレイン酸クロルフェニラミンである。
本願の眼科組成物がクロルフェニラミン及び/又はその塩を含む場合、眼科組成物中のクロルフェニラミン及び/又はその塩の総含有量は、組成物の全量に対して、好ましくは0.02w/v%以上、より好ましくは0.025w/v%以上、さらにより好ましくは0.03w/v%以上とすることができる。また、組成物の全量に対して、例えば、1w/v%以下とすることができ、0.1w/v%以下とすることもでき、0.05w/v%以下とすることもでき、0.04w/v%以下とすることもできる。
クロルフェニラミン及び/又はその塩の総含有量としては、0.03w/v%が特に好ましい。
<ビタミン類>
本発明の眼科組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、トコフェロール、ピリドキシン、これらの誘導体、又はこれらの塩以外のビタミン類を含むことができる。
このようなビタミン類としては、例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リン酸ピリドキサール、シアノコバラミン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、及びユビキノン誘導体などが挙げられる。
<アミノ酸類>
本発明の眼科組成物は、コンドロイチン硫酸、その誘導体、又はそれらの塩以外のアミノ酸類を含むことが好ましく、これにより、本発明の効果が一層顕著に奏される。
アミノ酸類としては、例えば、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、アスパラギン酸又はその塩(アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム・カリウム混合物など)、グルタミン酸又はその塩(グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸マグネシウムなど)、クレアチニン、イプシロン-アミノカプロン酸、グリシン、アラニン、アルギニン、リジン、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ吉草酸などが挙げられる。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
中でも、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸又はその塩(アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム・カリウム混合物など)、イプシロン-アミノカプロン酸が好ましく、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸又はその塩(アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム・カリウム混合物など)がより好ましい。
本発明の眼科組成物にアミノ酸を配合する場合その配合量の一例として、例えば、眼科組成物の全量に対して、アミノ酸の総量で、0.01w/v%以上、中でも0.05w/v%以上、中でも0.1w/v%以上、中でも0.3w/v%以上が挙げられる。また、眼科組成物の全量に対して、アミノ酸の総量で、10w/v%以下、中でも5w/v%以下、中でも1w/v%以下が挙げられる。
<抗菌薬成分又は殺菌薬成分>
抗菌薬成分又は殺菌薬成分としては、例えば、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾールジエタノールアミン、スルフイソキサゾールモノエタノールアミン、スルフイソメゾールナトリウム、スルフイソミジンナトリウムのようなサルファ剤、クロラムフェニコール、オフロキサシン、ノルフロキサシン、レボフロキサシン、塩酸ロメフロキサシン、及びアシクロビルなどが挙げられる。
但し、本発明の眼科組成物は、サルファ剤を含まないものにすることができる。
<局所麻酔薬成分>
局所麻酔薬成分としては、例えば、塩酸プロカイン、塩酸リドカインなどが挙げられる。
<無痛化剤>
無痛化剤としては、塩酸プロカインなどが挙げられる。
pH
本発明の眼科組成物のpHは、3以上が好ましく、4以上がより好ましく、5以上がさらにより好ましく、6以上がさらにより好ましい。また、10以下が好ましく、9以下がより好ましく、8.5以下がさらにより好ましく、8以下がさらにより好ましい。上記範囲であれば、眼への刺激が抑えられると共に、本願発明の上記効果が得られる。
浸透圧
本発明の眼科組成物の浸透圧比は、0.4以上が好ましく、0.6以上がより好ましく、0.8以上がさらにより好ましい。また、5以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がさらにより好ましい。上記範囲であれば、眼への刺激が抑えられると共に、本願発明の上記効果が得られる。
浸透圧比は、第16改正日本薬局方に基づき、286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)の浸透圧に対する試料の浸透圧の比とする。浸透圧は第16改正日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)に従い測定する。なお、浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)は、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500~650℃で40~50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いる。
容器
容器は、液を収容する容器本体部分、容器の抽出口を含む部分(ノズル、中栓)、吸い上げチューブ、キャップなど、製剤と接触する面を有する包装体を指す。
本発明の眼科組成物を収容する容器を構成する材質は、広い範囲から選択できる。
例えば、少なくとも眼科組成物との接触面の一部又は全部が、プラスチック(例えば、ポリオレフィン、アクリル酸樹脂、テレフタル酸エステル、2,6-ナフタレンジカルボン酸エステル、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリイミド、セルロースアセテート、ハロゲン原子で置換されていてよい炭化水素など)、金属(アルミニウムなど)、及びガラスからなる群より選ばれる少なくとも1種の材料で構成されている容器が挙げられる。
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどを含む)、ポリプロピレン(アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレンなどを含む)、及びエチレン・プロピレンコポリマーなどが挙げられる。
アクリル酸樹脂としては、アクリル酸メチルのようなアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t-ブチルシクロヘキシルのようなメタクリル酸エステルなどが挙げられる。
テレフタル酸エステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。
2,6-ナフタレンジカルボン酸エステルとしては、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどが挙げられる。
フッ素樹脂としては、フッ素置換ポリエチレン(ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレンなど)、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレンコポリマー、エチレン・四フッ化エチレンコポリマー、エチレン・クロロトリフルオロエチレンコポリマーなどが挙げられる。
ポリアミドとしては、ナイロンなどが挙げられる。
ポリアセタールとしては、オキシメチレン単位のみからなるものの他、一部にオキシエチレン単位を含むものが挙げられる。
変性ポリフェニレンエーテルとしては、ポリスチレン変性ポリフェニレンエーテルなどが挙げられる。
ポリアリレートとしては、非晶質ポリアリレートなどが挙げられる。
ポリイミドとしては、芳香族ポリイミド、例えばピロメリット酸二無水物と4,4’-ジアミノジフェニルエーテルとを重合させたものが挙げられる。
セルロースアセテートとしては、セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどが挙げられる。
本発明の眼科組成物を収容する容器としては、ポリオレフィン、テレフタル酸エステルが好ましく、テレフタル酸エステルがより好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートがさらに好ましく、ポリエチレンテレフタレートがさらにより好ましい。
本発明の眼科組成物を収容する容器としては、容器材質が前記ポリマー以外のポリマーとのブレンドポリマーでもよい。本発明の眼科組成物を収容する容器の容器材質が前記ポリマーとのブレンドポリマーある場合、前記ポリマーと、前記ポリマー以外のポリマーとの混合比は本発明の効果を奏すれば特に限定されないが、構成材質全体の総量に対し、前記ポリマーの合計重量が30w/w%以上であることが好ましく、50w/w%以上であることがさらに好ましく、65w/w%以上であることがさらにより好ましく、80w/w%以上であることが特に好ましい。
容器は、本願の眼科組成物と接触する面の少なくとも一部が上記材料で構成されていればよい。
例えば、容器内面に上記材料で構成された層又はフィルムが形成されていてもよく、容器自体が上記材料で成型されていてもよい。
また、容器の構成する部分(容器本体部分、容器の抽出口を含む部分(ノズル、中栓)、吸い上げチューブ、キャップなど)が上記材料で構成されていてもよく、容器の全部分が上記材料で構成されていてもよい。特に、容器本体部分が上記材料で構成されているのが好ましく、容器本体部分の全てが上記材料で構成されていること(容器本体を構成する一部の層が上記材料で構成されているのではない状態)がより好ましい。
対象疾患
本発明の眼科組成物は、角膜バリア機能の改善作用が優れることから、異物感(チクチクする感じ、コロコロする感じ等)等の緩和、改善、抑制、又は治療に有用である。
従って、本発明の眼科組成物は、角膜バリア機能の改善用、異物感(チクチクする感じ、コロコロする感じ等)の緩和、改善、抑制、又は治療用に好適に使用できる。
また、本発明の眼科組成物は、なみだ目(流涙症)の改善、抑制、又は治療用に好適に使用できる。なみだ目は、涙点から涙小管、涙嚢、鼻涙管に至る涙の排出路が目やに等で閉塞状態になったり、刺激により涙が過剰に作られたりした場合に起きる症状である。
本発明において、「緩和」は、症状の軽快、症状の進行抑制を包含し、「改善」、「抑制」、及び「治療」は、症状の軽快、症状の進行抑制、治癒ないしは完快を包含する。
使用方法
本発明の眼科組成物が点眼剤、洗眼剤、眼軟膏などの眼に適用する製剤である場合、その用法は、対象とする症状によって異なるが、例えば、1日1回以上、2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、又は6回以上とすることができる。また、1日9回以下、8回以下、7回以下、6回以下、5回以下、又は4回以下とすることができる。1日4回投与することが特に好ましい。
本発明の眼科組成物が点眼剤である場合、上記濃度で各成分を含む点眼剤を、例えば、1回当たり、1~3滴点眼すればよく、好ましくは1~2滴点眼すればよい。1滴とすることもできる。
本発明の眼科組成物が洗眼剤である場合、上記濃度で各成分を含む洗眼剤を、例えば、1回当たり、1~30mL用いて洗眼すればよく、好ましくは1~20mL、更に好ましくは4~6mL用いて洗眼すればよい。
本発明の眼科組成物が眼軟膏である場合、上記濃度で各成分を含む眼軟膏を、例えば、1回当たり、0.001~5g眼に塗布すればよい。
本発明の眼科組成物がコンタクトレンズ装着液である場合は、コンタクトレンズの装着時、脱着時に、例えば、1回当たり、1~3滴、好ましくは1~2滴を、コンタクトレンズの片面及び/又は両面に滴下して濡らした後に装用すればよく、好ましくはコンタクトレンズの両面を濡らした後に装用することが好ましい。
その他
本発明は、眼科組成物に、(A)プラノプロフェン及び/又はその塩、(B)ブチル基含有フェノール、並びに(C)トコフェロール、ピリドキシン、コンドロイチン硫酸、それらの誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種、を含有させる、眼科組成物への異物感抑制(改善、又は緩和)作用の付与又は向上方法を包含する。
また、本発明は、(A)プラノプロフェン及び/又はその塩、及び(B)ブチル基含有フェノールを含む眼科組成物に、(C)トコフェロール、ピリドキシン、コンドロイチン硫酸、それらの誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有させる、上記眼科組成物への異物感抑制(改善、又は緩和)作用の付与又は向上方法を包含する。
また、本発明は、(A)プラノプロフェン及び/又はその塩、並びに(C)トコフェロール、ピリドキシン、コンドロイチン硫酸、それらの誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む眼科組成物に、(B)ブチル基含有フェノールを含有させる、上記眼科組成物への異物感抑制(改善、又は緩和)作用の付与又は向上方法を包含する。
また、本発明は、眼科組成物に、(A)プラノプロフェン及び/又はその塩、(B)ブチル基含有フェノール、並びに(C)トコフェロール、ピリドキシン、コンドロイチン硫酸、それらの誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種、を含有させる、眼科組成物へのなみだ目抑制(改善、又は緩和)作用の付与又は向上方法を包含する。
また、本発明は、(A)プラノプロフェン及び/又はその塩、及び(B)ブチル基含有フェノールを含む眼科組成物に、(C)トコフェロール、ピリドキシン、コンドロイチン硫酸、それらの誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有させる、上記眼科組成物へのなみだ目抑制(改善、又は緩和)作用の付与又は向上方法を包含する。
また、本発明は、(A)プラノプロフェン及び/又はその塩、並びに(C)トコフェロール、ピリドキシン、コンドロイチン硫酸、それらの誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む眼科組成物に、(B)ブチル基含有フェノールを含有させる、上記眼科組成物へのなみだ目抑制(改善、又は緩和)作用の付与又は向上方法を包含する。
本発明の各方法において、各成分の種類や濃度、剤型、pH、浸透圧、容器などは、本発明の眼科組成物について説明した通りである。
以下、実施例に記載する各表の成分量の単位は、全て、w/v%である。
試験例1(バリア機能改善効果)
表1~3の組成で各薬剤を有する培養液を用いて、これらの培養液が角膜バリア機能に与える影響を評価した。
即ち、ヒト角膜上皮細胞株HCE-T(理化学研究所バイオリソースセンター、No.RCB2280)をTranswell(登録商標,24ウェル,コーニング社製)のインサート内に1.0×10細胞/ウェル(200μL)で播種した(n=3)。リザーバー側のウェルに、培養液中の各薬剤の最終濃度が表1~3に示す濃度になるようにした各薬剤含有培養液600μLを入れ、37℃、5%CO条件下で30分間培養した。同時に、ジブチルヒドロキシトルエンを含有しないこと以外は比較例1-2と同じである、比較例1-1を作成し、同様に試験を行った。
培養後、MILLICELL(登録商標)-ERS(ミリポア社製)を用いて、経角膜上皮電気抵抗値(TER)を測定し、下記式(1)に基づいて、比較例1-1に対するTERの上昇率を算出した。TER上昇率が高いほど、角膜上皮細胞間のバリアが強固になり、バリア機能が亢進したことを意味する。
式(1):
比較例1-1に対するTER上昇率(%)
=[(各比較例又は実施例のTER値-比較例1-1のTER値)/
(比較例1-1のTER値)]×100
Figure 2022028975000001
Figure 2022028975000002
Figure 2022028975000003
プラノプロフェンにジブチルヒドロキシトルエンを配合した場合、プラノプロフェンのみの場合と比較して、比較例1-1に対するTER上昇率が低くなった。ジブチルヒドロキシトルエンの配合により、角膜バリアが低下し、異物感をより敏感に感じる状態になったことが分かる。
ここに、さらに酢酸トコフェロール、塩酸ピリドキシン、又はコンドロイチン硫酸ナトリウムを配合することにより、TER上昇率がプラスになった。このことから、酢酸トコフェロール、塩酸ピリドキシン、又はコンドロイチン硫酸ナトリウムの配合により、ジブチルヒドロキシトルエンによる角膜バリア機能の低下が抑制されたのみならず、むしろ角膜バリア機能が向上し、異物感を感じにくい状態になったことが分かる。
また、プラノプロフェンに、酢酸トコフェロール、塩酸ピリドキシン、又はコンドロイチン硫酸ナトリウムを配合することにより、TER上昇率は高くなった。即ち、角膜バリア能が向上し、異物感を感じにくい状態となった。
ここに、さらにジブチルヒドロキシトルエンを配合することにより、TER上昇率がさらに向上した。ジブチルヒドロキシトルエンの配合により、角膜バリア能が一層向上し、異物感を一層感じにくい状態となったことが分かる。
試験例2(ヒト点眼試験1)
表4に記載の処方に従い、各眼科組成物(点眼剤)を調製し、内容積14.2mLのポリエチレンテレフタレート製点眼容器(容器本体部分)に13mL充填した。充填後、点眼容器にポリエチレン製ノズルを装着した。「異物感」「チクチクする感じ(チクチク感)」を自覚する成人被験者3名に各点眼剤を、左右の眼に1滴ずつ点眼させ、表4に記載の症状に関する点眼後の実行感をVAS(Visual analog scale:視覚的評価スケール)によって評価した。
VASによる評価は次のように行った。100mmの線が引いてある自覚症状調査シート上に、異物感に対する改善効果が全く感じられない場合を0mm、強く感じる場合を100mmとして、被験者が感じた項目の程度のところに印を付けた。この長さ(mm)をVAS値とした。すなわち、VAS値が高いほど、各症状の改善効果の自覚スコアが高いということになる。
このVAS値を用いて、基準となる比較例に対する各被験例のVAS改善率(%)を下記式(2)を用いて求めた。
ここで、基準となる比較例とは、比較例2-1である。

式(2):
VAS改善率(%)
={(被験例のVAS値-基準となる比較例のVAS値)/基準となる比較例のVAS値}×100
Figure 2022028975000004
表4の結果から、プラノプロフェンと、ジブチルヒドロキシトルエンと、酢酸トコフェロール又はコンドロイチン硫酸ナトリウムとを組み合わせて使用した場合には、異物感、チクチクする感じの効果が顕著に改善したことが分かる。
試験例3(ヒト点眼試験2)
表5に記載の処方に従い、各眼科組成物(点眼剤)を調製し、基準となる比較例を比較例3-1としたこと以外は、試験例2と同様に、「異物感」「チクチクする感じ(チクチク感)」に対する点眼後の実行感を評価した。
Figure 2022028975000005
表5の結果から、プラノプロフェン、ジブチルヒドロキシトルエン、酢酸トコフェロール、塩酸ピリドキシン、及びコンドロイチン硫酸ナトリウムに更に、塩酸テトラヒドロゾリン、グリチルリチン酸二カリウム、マレイン酸クロルフェニラミン、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、及びエデト酸ナトリウムを組み合わせて使用した場合には、異物感、チクチクする感じに対する効果が顕著に改善したことが分かる。
製剤例
本願発明の眼科組成物を代表する点眼剤の処方例を、表6~9に例示する。表中の単位は全てw/v%である。
製剤例1~40で処方された点眼剤はポリエチレンテレフタレート製容器(容器本体部分)に充填された。また、製剤例1~40の点眼剤を、ポリエチレンテレフタレート製容器(容器本体部分)に充填し、ポリエチレン製のノズルを装着したものを製剤例1’~40’とした。また、製剤例1~40の点眼剤を、ポリエチレンテレフタレート製容器(容器本体部分)に充填し、ポリブチレンテレフタレート製のノズルを装着したものを製剤例1’’~40’’とした。
Figure 2022028975000006
Figure 2022028975000007
Figure 2022028975000008
Figure 2022028975000009
Figure 2022028975000010
本発明の眼科組成物は、角膜バリア機能を効果的に改善し、ひいては、異物感(チクチクする感じ、コロコロする感じ等)を効果的に予防、緩和、改善、抑制、又は治療できるため、非常に実用的な眼科組成物である。

Claims (1)

  1. 下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有する異物感改善用眼科組成物。
    (A)プラノプロフェン、及び/又は薬学的に許容されるその塩
    (B)ブチル基含有フェノール
    (C)トコフェロール、ピリドキシン、コンドロイチン硫酸、それらの誘導体、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種
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